(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
新トリンダー試薬が、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、又はN−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
L−グルタミン測定キットにおいて、L−グルタミンの溶液を標準液として使う限り、常温で長期間安定なキット製品とすることはできない。L−グルタミン測定のために、溶液状態でも常温で長期間安定な標準物質があれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のキットは、L−グルタミンをL−グルタミン酸オキシダーゼによりL−グルタミン酸に変換して比色分析(溶液中の物質の濃度を色調変化から決定する)により測定するものであるが、本発明者はL−グルタミン酸が非常に安価で安定であることに着目した。そして、L−グルタミン酸は、L−グルタミンとは異なり、溶液状態で37℃、10週間置いても分解が認められないこと等を確認した。その結果、L−グルタミン酸が、L−グルタミン酸オキシダーゼを用いるL−グルタミン測定のための標準物質として適していることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下を提供する。
[1] L−グルタミン酸オキシダーゼを含む、 L−グルタミン測定のためのキットであって、検量線を作成するための標準物質としてL−グルタミン酸を含む 、キット。
[2] 1に記載のキットであって、L−グルタミン酸オキシダーゼを含む下記の反応液Iと、下記の反応液IIを含有する、キット:
(反応液I)L−グルタミン酸オキシダーゼ、及びカタラーゼを含み、
(反応液II)グルタミナーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む。
ただし、反応液I及びIIは、下記も満たす:
・いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含み、
・いずれか一方がペルオキシダーゼを含む。
[3] L−グルタミン酸が、溶液の形態である、1又は2に記載のキット。
[4] 反応液Iと反応液IIを予め混合した後にさらにL−グルタミン酸を混合するとの、検量線を作成するための指示を含む、1〜3のいずれか1項に記載のキット。
[5]カプラー化合物が、4−アミノアンチピリンである、1〜4のいずれか1項に記載の測定キット。
[6] 新トリンダー試薬が、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、又はN−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)である、1〜5のいずれか1項に記載のキット。
[7] 反応液Iが、さらにアスコルビン酸オキシダーゼを含む、1〜6のいずれか1項に記載のキット。
[8] 下記(1)、(2)、及び(3)を含む、試料中のL−グルタミンを測定する方法:
(1)容器内で、試料中のL−グルタミン酸に、L−グルタミン酸オキシダーゼ、及びカタラーゼを作用させ、L−グルタミン酸を分解し、かつ所望により、試料中のアスコルビン酸又はエリソルビン酸に、アスコルビン酸オキシダーゼを作用させ、アスコルビン酸又はエリソルビン酸を分解する工程;
(2)(1)に続いて同じ容器内で行われる工程であって、該カタラーゼに、カタラーゼ失活剤を作用させ、カタラーゼを失活させ、かつ試料中のL−グルタミンに、グルタミナーゼを作用させ、L−グルタミン酸を生成し、生成したL−グルタミン酸に、Lグルタミン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カプラー化合物、及び新トリンダー試薬を作用させ、色素を形成させる工程;及び
(3)L−グルタミン酸を含む標準液に、L−グルタミン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カプラー化合物、及び新トリンダー試薬を作用させ、色素を形成させる工程。
[9](1)、(2)及び(3)の工程が、15〜35℃で行われる。8に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、L−グルタミン測定において、標準物質を溶液としても室温で安定に保存できる。
本発明により、L−グルタミン測定のキット製品全体を室温で長期間安定なものとできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、L−グルタミン酸オキシダーゼを用いる、L−グルタミンの測定方法、及びそのためのキットを提供する。本発明により提供されるL−グルタミン酸オキシダーゼを用いる、L−グルタミンの測定方法、及びそのためのキットは、検量線を作成するための標準物質としてL−グルタミン酸を含む。以下では、本発明について、キットを例に説明するが、そのキットのための説明は、当業者であれば、測定方法のための説明として適宜理解できる。
【0013】
本発明のキットは、L−グルタミン酸を標準物質として含むほか、L−グルタミン酸オキシダーゼを含む下記の反応液Iと、下記の反応液IIを含有する。
(反応液I)L−グルタミン酸オキシダーゼ、及びカタラーゼを含む。
(反応液II)グルタミナーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む。
ただし、反応液I及びIIは、下記も満たす:
・いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含み、
・いずれか一方がペルオキシダーゼを含む。
【0014】
本発明のキットを用いて分析される試料としては、特に限定されず、具体的には、血清、血漿、尿、羊水、組織抽出物等の生体試料、組織・細胞・微生物等の培養液、食品、食品原料等を挙げることができる。試料は、L−グルタミン酸を含んでいてもよい。
【0015】
[L−グルタミン標準液]
本発明のキットは、L−グルタミンの測定のための標準物質として、L−グルタミン酸を含む。L−グルタミン酸は、好ましくは水に溶解した溶液の形態、すなわち標準液としてキットに含まれる。
【0016】
本発明のキットにおいてL−グルタミン酸標準液を用いる場合、その濃度は、適宜とすることができるが、測定の際に検量線を作製するために系列希釈するとの観点からは、キットの測定上限前後の濃度であることが好ましい。具体的には、例えば50〜1000mg/mLとすることができ、50〜750mg/Lとしてもよく、100〜500mg/mLとしてもよい。
【0017】
前掲特許文献1の方法は、酵素を用いた比色分析(溶液中の物質の濃度を色調変化から決定する)によりL−グルタミンの濃度を測定するためのキットを提供するものであるが、このキットにおいては、標準物質としてL−グルタミンを凍結乾燥物の形態で付属させ、使用の際に純水を加えて溶解して標準液とする構成とすることもできる。しかし、L−グルタミンの酵素的測定のための標準液として必要なL−グルタミン濃度は比較的低い。そのため少量のL−グルタミンを凍結乾燥するに際しては賦形剤を用いる必要があり、キット製造上、凍結乾燥の手間に加えてコストの面でも好ましくない。一方、L−グルタミンを標準液として付属させると、L−グルタミンは溶液状態では不安定であるため、冷蔵保存することが必要である。標準液の安定性は、溶液の状態の試薬で構成されるキットにおいて、極めて重大な問題である。
【0018】
一方、本発明者らは、L−グルタミン酸の溶液が37℃で10週間安定であることを確認した(本明細書の実施例の項の実験1参照)。また、後述する反応液I及び反応液IIが37℃で10週間安定であることが既に分かっている(特許文献1参照)。したがって、標準液にL−グルタミン酸溶液を使用することで、L−グルタミン測定キットを構築する3種類のすべての試薬が安定な溶液であるキットとすることができる。
【0019】
なお、L−グルタミン酸とL−グルタミンの分子量はそれぞれ順に、147.13、146.14であり、ほぼ同等であるといえる(1:0.99327)。分子量に基づき濃度を補正することは当業者であれば容易であるし、また本発明者らの検討によるとトマトや日本酒におけるL−グルタミンの測定においては、L−グルタミン標準液を用いて検量線を作成した場合も、L−グルタミン酸を用いて検量線を作成した場合も、得られた濃度に大差はなかった(実施例の項の実験3参照)。簡易測定であれば、この差は無視できる。
【0020】
[反応液I]
本発明で用いられる反応液Iは、L−グルタミン酸オキシダーゼ及びカタラーゼを含有することができる。これらを含有させる液としては、各種緩衝液を利用することができる。緩衝液としては、酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸、トリスアミノメタン、HEPES、MES、Bis−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、MOPS、BES、TES、DIPSO、TAPSO、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS及びこれらの塩などを利用することが可能である。
【0021】
本発明で用いられるL−グルタミン酸オキシダーゼ及びカタラーゼは、公知のものを利用することができる。具体的には、L−グルタミン酸オキシダーゼの例として、Streptomyces sp. X-119-6、Streptomyces violascens、及び Streptomyces endusなどの微生物由来のL−グルタミン酸オキシダーゼを挙げることができる。カタラーゼの例として、ウシ肝臓由来カタラーゼの他、Aspergillus nigerやCorynebacterium glutamicumなどの微生物由来のカタラーゼを挙げることができる。
【0022】
反応液Iにおける緩衝液等への各酵素の含有量は、L-グルタミン酸オキシダーゼ0.05〜2U/mL、カタラーゼ100〜3000U/mLの範囲にあることが好ましく、特にL-グルタミン酸オキシダーゼ0.2〜0.8U/mL、カタラーゼ500〜2000U/mLの範囲にあることがより好ましい。
【0023】
[反応液II]
本発明で用いられる反応液IIは、L−グルタミナーゼ(単に、グルタミナーゼということもある。)及びカタラーゼ失活剤を含有することができる。上記酵素及びカタラーゼ失活剤を含有させる液としては、各種緩衝液を利用することができる。緩衝液の例としては、酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸、トリスアミノメタン、HEPES、MES、Bis−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、MOPS、BES、TES、DIPSO、TAPSO、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS及びこれらの塩などを利用することが可能である。
【0024】
本発明で用いられるL−グルタミナーゼは、公知のものを利用することができる。具体的には、グルタミナーゼの例として、Bacillus amyloriquefaciens由来のグルタミナーゼなどを挙げることができる。
【0025】
カタラーゼ失活剤としては、カタラーゼを速やかに失活させる作用を有する物質であれば任意のものを用いればよく、例えばアジ化ナトリウムや3−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどを用いることができる。
【0026】
[トリンダー試薬、カプラー化合物、ペルオキシダーゼ、その他]
本発明のキットが反応液I及びIIを含む場合、反応液I及びIIは、下記を満たす:
・いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含み、
・いずれか一方がペルオキシダーゼを含む。
【0027】
本発明で用いられる新トリンダー試薬としては、発色試薬として公知のものを使用することができ、例えばN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン(TOPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3,5−ジメトキシアニリン(CEDB)、又はN−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3−メトキシアニリン(CEMO)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAPS)などを利用することが可能である。中でも、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)又はN−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン(TOPS)のいずれかを用いるのが好ましい。
【0028】
本発明で用いられるカプラー化合物としては、新トリンダー試薬との組み合わせで発色を生ずる化合物として任意のものを用いればよく、例えば4−アミノアンチピリン(4−AA)、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)、アミノジフェニルアミン、1−(4−スルホフェニル)−2,3−ジメチル−4−アミノ−5−ピラゾロン(CP2−4)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン又はその誘導体などを用いることができる。中でも、4−アミノアンチピリン(4−AA)を用いるのが好ましい。
【0029】
好ましい態様の一つにおいては、反応液Iが新トリンダー試薬を含み、反応液IIがカプラー化合物を含む。反応液Iはカプラー試薬を含まないことが好ましく、反応液IIは、新トリンダー試薬を含まないことが好ましい。
【0030】
反応液I又はIIの新トリンダー試薬の含有量は、新トリンダー試薬が含まれる反応液の他の成分の濃度がいずれの場合であっても、0.01〜2μmol/mLの範囲にあることが好ましく、0.4〜0.8μmol/mLの範囲にあることがより好ましい。
【0031】
反応液I又はIIのカプラー化合物の含有量は、カプラー化合物が含まれる反応液の他の成分の濃度がいずれの場合であっても、0.01〜2μmol/mLの範囲にあることが好ましく、0.2〜0.8μmol/mLの範囲にあることがより好ましい。
【0032】
本発明で用いられるペルオキシダーゼは、公知のものを利用することができる。具体的には、ペルオキシダーゼの例として西洋わさび由来のペルオキシダーゼを挙げることができる。好ましい態様の一つにおいては、反応液IIがペルオキシダーゼを含む。
【0033】
ペルオキシダーゼは、反応液II反応液I又はIIのペルオキシダーゼの含有量は、ペルオキシダーゼが含まれる反応液の他の成分の濃度がいずれの場合であっても、1〜30U/mLの範囲にあることが好ましく、5〜20U/mLの範囲にあることがより好ましい。
【0034】
本発明で使用する反応液I、IIには、上記の各試薬のほかに防腐剤等を含んでいても良い。防腐剤としては、プロクリン300、プロクリン950、クロラムフェニコールなど公知のものを用いることができる。
【0035】
好ましい態様の一つにおいては、反応液Iは、アスコルビン酸オキシダーゼを含んでいてもよい。通常、試料中にアスコルビン酸又はエリソルビン酸が存在すると発色反応が阻害されてしまうが、このような反応液Iにより構成されるキットは、試料中にそれらのいずれかが共存する場合であっても、アスコルビン酸オキシダーゼの作用によりそれらを分解除した後、L−グルタミンの測定を行うことができるものである。用いることのできるアスコルビン酸オキシダーゼの例として、カボチャ、キュウリ由来のアスコルビン酸オキシダーゼを挙げることができる。反応液Iのアスコルビン酸オキシダーゼの含有量は、反応液Iの他の成分の濃度がいずれの場合であっても、1〜30U/mLの範囲にあることが好ましく、2〜20U/mLの範囲にあることがより好ましい。
【0036】
[キットの用途、特徴]
本発明のL−グルタミン測定キットは、長期間安定に保存することが可能である。
【0037】
本発明のキットにより、試料にL−グルタミンとともにL−グルタミン酸が共存する場合であても、その影響を受けることなく、L−グルタミンを測定することができる。
【0038】
本発明のキットにより分析できる試料としては、L−グルタミンを含有することが予想されるものであれば、特に限定されない。具体的には、血清、血漿、尿、羊水、組織抽出物等の生体試料、組織・細胞・微生物等の培養液、食品及び飲料(例えば、トマト、日本酒、等)、食品原料等を挙げることができる。
【0039】
本発明のキットは、上記の標準物質としてのL−グルタミン酸、反応液I、及び反応液IIのほかに、吸光度測定用の96穴プレート又はセル、検体希釈液、溶液を比色測定するためのLED光源を用いた装置を含んでもよい。
【0040】
[測定手順]
本発明では、L−グルタミンを測定するため、まず試料に反応液Iを添加する。試料中に内在性のL−グルタミン酸が存在する場合、当該工程によりこれを除去する。当該反応条件は、使用する酵素の至適pH、至適温度にしたがって設定すればよいが、おおむね、pH6.0〜8.0、温度15〜30℃の条件下で、5〜20分ほど実施することができる。
【0041】
次に、上記反応液Iによる反応が十分進行した後、反応液IIをさらに添加することにより、L−グルタミンをL−グルタミン酸に変換させ、さらにこれを分解し、過酸化水素を生じせしめ、当該過酸化水素と発色剤、ペルオキシダーゼを反応させることにより発色を生じる。当該反応条件は、使用する酵素の至適pH、至適温度にしたがって設定すればよいが、おおむね、pH6.0〜8.0、温度15〜30℃の条件下で、5〜30分ほど実施することができる。
【0042】
最後に、生じた発色の程度を、吸光度によって測定し、試料中のL−グルタミン濃度を算出する。吸光度測定において、測定する波長は用いる発色試薬の種類に応じて選択すればよい。
【実施例】
【0043】
[実験1:L-グルタミン標準液とL-グルタミン酸標準液の安定性の確認]
(実験方法)
L-グルタミン標準液(100mg/L)とL-グルタミン酸標準液(100mg/L)を調製した日を
0タイムとし、37℃に1週間〜10週間保管して、継時的にそれぞれL-グルタミンとL-グルタミン酸の濃度を、前掲特許文献1(特許第6049795号)及び特許文献2(特許第6218894号)に記載のL-グルタミン測定キットとL-グルタミン酸測定キットで発色して吸光度を測定した。0タイムの吸光度を100%として、継時的に測定した吸光度を%表示でグラフ化した。
【0044】
(結果)
L-グルタミン溶液は不安定であることが知られているが、
図1に示すように、本実験でもL-グルタミン標準液(100mg/L)の吸光度は37℃、1週間で約10%減少し、4週間で約20%、10週間で約40%減少した。
【0045】
一方、L-グルタミン酸標準液(100mg/L)は、37℃で10週間保管しても、全く吸光度が低下しなかった。従って、L-グルタミン測定キットの標準液として、L-グルタミン標準液(100mg/L)の替りに 、L-グルタミン酸標準液(100mg/L)を用いることで、キットを構成する3種の試薬溶液が非常に安定である測定キットが商品化できることになる。
【0046】
[実験2:L-グルタミン測定キットにおけるL-グルタミン酸標準溶液の使用]
(実験方法)
L-グルタミン測定キット(GN)(前掲特許文献1)のA液及びB液を調製した。その4日後に、正確に各々200mg/Lになるように調製したL-グルタミン溶液とL-グルタミン酸溶を調製した。さらにその5日後に、先に調製した200mg/Lの液を用いて、各々200mg〜12.5mg/Lの濃度の標準液を調製した。A液及びB液の組成を下表に示した。なお、以下の実験では、特に記載した場合を除き、L-グルタミン測定キットというときは本実験で用いたキットと同じものを指す。
【0047】
【表1】
【0048】
検量線作成のための測定の手順は、以下に示す2-1、2-2、及び2-3の、3つの方法で行った。また、得られた検量線を利用して、トマト及び日本酒に含まれるL-グルタミン酸を測定した。
【0049】
2-1 L-グルタミン標準液による、L-グルタミン測定のための従来の方法(10分−10分)による検量線作成
(1)0.05mlの各濃度のGNのL-グルタミン標準液を6本の試験管に採り、そこへ30秒間隔でGN-A液0.5mlを加える。
(2)10分後、各試験管へ30秒間隔でGN-B液を加える。
(3)最初の試験管にGN-B液を加えてから10分経過したら、30秒おきにOD555nmを測定する
【0050】
【化1】
【0051】
2-2 予めA液とB液を混合しておき、そこへL-グルタミン標準液を加える方法(0分−10分)による検量線作成
(1)GN-A液0.5mlとGN-B液0.5mlを試験管に採りよく混ぜる。
(2)そこへ0.05mlの各濃度のGNの L-グルタミン標準液を、30秒毎に加える。
(3)最初の試験管にL-グルタミン標準液を加えてから10分経過したら、30秒おきにOD555nmを測定する。
【0052】
【化2】
【0053】
2-3 予めA液とB液を混合しておき、そこへL-グルタミン酸標準液を加える方法(0分−10分)による検量線作成
(1)GN-A液0.5mlとGN-B液0.5mlを試験管に採りよく混ぜる。
(2)そこへ0.05mlの各濃度のL-グルタミン酸標準液を、30秒毎に加える。
(3)最初の試験管にL-グルタミン酸標準液を加えてから10分経過したら、30秒おきにOD555nmを測定する。
【0054】
【化3】
【0055】
2-4 トマトと日本酒の分析
冷凍保存していたトマトの抽出液(20gのトマトを200mlの水でミキサーし、コーヒーフィルターで濾過した濾液を試料とした。)10試料と、冷蔵保存してある日本酒(原液を試料とした)10試料を、L-グルタミン測定キット(前掲特許文献1)を用いて測定した。検量線は、L-グルタミン標準液による2-1、及びL-グルタミン酸による2-3を用いた。
【0056】
(結果)
結果を各々の表に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
L-グルタミン測定キットの標準測定方法(10分−10分)によるL-グルタミン標準液検量線(
図2−1)と、L-グルタミン測定キットにおける標準液としてL-グルタミン酸溶液を使用した方法(0分−10分)の検量線(
図2−3)は、一致した。また、L-グルタミン標準液で(0分−10分)の反応時間による検量線(
図2−2)も、試験1及び3と一致した。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
また、トマトと日本酒の測定を行い、L-グルタミン酸標準液による定量値は、L-グルタミン標準液による定量値と同等になった。
【0063】
L-グルタミン酸とL-グルタミンの分子量は、MW:147.13対MW:146.15であり、その差は0.67%である。一般的な比色測定キットの測定誤差範囲といえるので、分子量差を無視して、L-グルタミン酸標準液によるL-グルタミン測定キットは成立する。特に、食品等を測定するための、L-グルタミン簡易測定キットとしては十分に実用的である。
【0064】
[実験3: L-グルタミン酸標準溶液を使用する場合の時間の影響の確認]
L-グルタミン測定キット(GN)の構成で、L-グルタミン酸標準溶液を使用する場合、B液添加後、A液添加までの時間の影響がどの程度あるかを確認した。
【0065】
(実験方法)
L-グルタミン酸標準溶液(100mg/L)に、L-グルタミン測定キットのB液を添加後、直
ちにA液を添加する(0分)か、又はB液添加後2分〜20分後にA液を添加して、A液を添加してから10分間発色反応を行った後の吸光度を測定した。すなわち、B液添加後にA液添加までの時間を空けるとどうなるかを検討した。
【0066】
(1)L-グルタミン酸標準液100mg/Lを0.05mlずつ試験管11本に採る。
(2)0.5mlのGN-B液を1分毎に加えていき、GN-B液添加後、0分、2分、4分〜20分の間をあけて、GN-A液を加える。
(3)最初の試験管にGN-A液を加えてから10分経過したら、それぞれの間隔でOD555nmを測定する。
【0067】
【化4】
【0068】
(結果)
OD555nmの測定値を下表と
図4に示した。
【0069】
【表6】
【0070】
A液を加えるまでの時間経過により、発色反応後の吸光度が減少して行った。この現象は、非特許文献1によると、グルタミナーゼ(A液に含まれている)による、L-グルタミン酸からγ-アミノ酪酸(GABA)を生成する、副反応の可能性がある。実際に、L-グルタミン測定キットに使用されているグルタミナーゼをL-グルタミン酸に作用させた反応液中のGABAを測定したところ、反応時間の経過に伴いGABAの生成が継時的に増大した(後掲の参考実験及び
図4参照)。
【0071】
したがって、グルタミン酸オキシダーゼとグルタミナーゼを用いるL-グルタミン測定において、L-グルタミン酸標準液を使用する場合は、グルタミン酸オキシダーゼを含む反応液I(A液)とグルタミナーゼを含む反応液II(B液)の混合液にL-グルタミン酸標準液を添加するか、又はL-グルタミン酸標準液へA液とB液の混合液を添加するか、どちらの順であっても良いが、予めA液とB液を混合してから、L-グルタミン酸標準液と混ぜることが重要である。
【0072】
[参考実験]
L-グルタミン酸溶液(6.7mM / 0.1Mリン酸バッファー pH6.0)0.54 mLに、L-グルタミン測定キットに使用されているグルタミナーゼ(10 U/mL)を0.06 mL加えて30℃でインキュベーションし、GABA測定キット((株)エンザイム・センサ、特許文献3参照)を用いてGABAの生成を555 nmの吸光度で測定した。
【0073】
GABA測定キットに含まれる反応液I、IIの組成を下表に示した。結果を
図4に示した。
【0074】
【表7】
【0075】
L-グルタミン測定キットにおいて、L-グルタミン酸を標準液として使用する場合であっても、参考実験で示すグルタミナーゼの副反応の影響は無視できる。すなわち、原理的には、予めL-グルタミン測定キットのA液(反応液I)とB液(反応液II)を混ぜておくと、カタラーゼの活性はNaN
3で完全に阻害されており、グルタミナーゼのL-グルタミン酸に対する反応よりも、L-グルタミン酸に親和性が高い強力なGLODの活性が勝って、標準L-グルタミン酸から速やかに過酸化水素が生成する。結果として、L-グルタミン酸標準液はL-グルタミン標準液の代わりになる。
【0076】
L-グルタミン測定キットのA液(反応液I)とB液(反応液II)を順次試料に添加した場合の反応様式を以下に示す。
【0077】
【化5】
【0078】
L-グルタミン酸標準液+(反応液I+反応液II)の反応様式は、L-グルタミンが存在しないので、以下のようになる。
【0079】
【化6】
【0080】
[実施例中で引用した文献]
特許文献2:特開2017−12169号公報(特許第6218894号)
特許文献3:特許第6585244号公報
非特許文献1:Biochem. Biophys.Res. Commun., 448, 361-364 (2014)
【解決手段】L−グルタミン酸オキシダーゼを含む、 L−グルタミン測定のためのキットであって、検量線を作成するための標準物質としてL−グルタミン酸を含む 、キットを提供する。具体的には、検量線を作成するための標準物質としてL−グルタミン酸を用い、かつ下記の反応液Iと、下記の反応液IIを含有する、キットを提供する。(反応液I)L−グルタミン酸オキシダーゼ、及びカタラーゼを含む。(反応液II)グルタミナーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む。ただし、反応液I及びIIは、いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含み、いずれか一方がペルオキシダーゼを含む。