(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
・本発明の実施形態の説明
最初に本発明の実施態様を列記して説明する
【0014】
<1>実施形態に係る接合部品は、第一部材と第二部材とが当接する接合界面をロウ材によって接合することで構成され、前記接合界面の外周輪郭線よりも内方の位置に前記第一部材と前記第二部材とが接触しない非接触領域が形成される接合部品である。この接合部品における前記第一部材は、前記第一部材と前記第二部材との接合の際に溶融したロウ材が貯留される貯留凹部を有し、その貯留凹部によって前記非接触領域が形成されている。この貯留凹部には、前記溶融したロウ材の一部が凝固したロウ材溜まりが形成されている。
【0015】
上記接合部品では、第一部材における外周輪郭線の位置に、当該外周輪郭線から溢れたロウ材の垂れ、または垂れたロウ材の除去痕が存在しない。これは、第一部材に貯留凹部を形成しているからである。後述する接合部品の製造方法で詳しく説明するように、第一部材に貯留凹部を形成しておけば、両部材を接合する際に溶融したロウ材は、貯留凹部に貯留されてから接合界面に流れ込む。その結果、接合界面に溶融したロウ材が圧入されることを抑制でき、第一部材と第二部材との接合界面に対する過剰なロウ材の浸入が抑制され、上記ロウ材の垂れを抑制できる。
【0016】
<2>実施形態に係る接合部品として、前記ロウ材溜まりの表面に、前記接合界面以下の高さとなる部分が存在する形態を挙げることができる。
【0017】
ロウ材溜まりの表面に、接合界面以下の高さとなる部分が存在するということは、後述する実施形態に示すように、貯留凹部から接合界面への過剰なロウ材の浸入がなかったことの明確な証拠の一つである。
【0018】
<3>実施形態に係る接合部品として、前記貯留凹部の深さは0.3mm以上である形態を挙げることができる。
【0019】
貯留凹部の深さ(最深部)が0.3mm以上であれば、第一部材と第二部材との接合の際に、溶融したロウ材を貯留凹部に十分に貯留させることができる。その結果、貯留凹部から接合界面への過剰なロウ材の浸入を抑制することができる。
【0020】
<4>実施形態に係る接合部品として、前記第二部材は、前記貯留凹部に対応する位置に形成される対応凹部または対応孔部を有する形態を挙げることができる。
【0021】
第二部材に対応凹部または対応孔部を形成することで、接合部品を製造する際に貯留凹部の上方にロウ材を配置するための十分な空間を確保することができる。そのため、接合部品を製造する際に貯留凹部の位置に十分な量のロウ材を配置することができる。
【0022】
<5>実施形態に係る接合部品として、前記接合界面に繋がる前記貯留凹部の側壁面が傾斜面である形態を挙げることができる。
【0023】
貯留凹部の側壁面を傾斜面とすることで、第一部材と第二部材との接合の際、貯留凹部から接合界面へのロウ材の移動を円滑にすることができる。
【0024】
<6>実施形態に係る接合部品として、前記第一部材と前記第二部材が焼結体である形態を挙げることができる。
【0025】
第一部材と第二部材とが焼結体である接合部品は、種々の分野に適用することができる。焼結体は、優れた耐熱性と強度を備えるからである。また、焼結体には多数の空孔が形成されており、その空孔にロウ材が入り込むことで、第一部材と第二部材とが極めて強固に接合された接合部品となる。
【0026】
<7>実施形態に係る接合部品の製造方法は、第一部材の一面である第一接合面と、第二部材の一面である第二接合面と、をロウ材にて接合する接合部品の製造方法であって、下記工程α〜工程γを備える。
・前記第一接合面に貯留凹部を有する前記第一部材を用意する工程α。
・前記第一部材のうち、前記貯留凹部の外周輪郭線よりも内方側の領域に前記ロウ材を載置すると共に、前記第一部材の前記第一接合面上に前記第二部材の前記第二接合面を当接させる工程β。
・熱処理によって前記ロウ材を溶融させる工程γ。
ここで、前記工程γで前記貯留凹部に一旦貯留される溶融したロウ材が、前記第一接合面と前記第二接合面との隙間に浸入し、前記第一接合面と前記第二接合面とが前記ロウ材で接合される。
【0027】
上記接合部品の製造方法によれば、第一接合面と第二接合面との隙間(接合界面)に過剰なロウ材が浸入することを抑制することができる。それは、上記接合部品の製造方法では、熱処理の際に溶融したロウ材が一旦、貯留凹部に貯留され、その貯留凹部から接合界面に溶融したロウ材が供給される構成となっているからである。接合界面への過剰なロウ材の浸入を抑制することで、接合界面の外周輪郭線からのロウ材の溢れ出しを効果的に抑制でき、当該外周輪郭線の位置にロウ材の垂れが無い接合部品を製造することができる。
【0028】
<8>実施形態に係る接合部品の製造方法として、前記ロウ材の真密度をD、前記工程βで前記第一部材上に載置する前記ロウ材の質量をW、前記貯留凹部の容積をVとしたとき、1.5≦W/(V×D)≦5を満たす形態を挙げることができる。但し、Dの単位はg/cm
3、Wの単位はg、Vの単位はmm
3。
【0029】
上記不等式を満たすように、第一部材上に載置するロウ材の投入量を調整することで、接合界面の全面にわたってロウ材を行き渡らせることができる。
【0030】
<9>実施形態に係る接合部品の製造方法として、前記貯留凹部の深さは0.3mm以上である形態を挙げることができる。
【0031】
貯留凹部の深さ(最深部)が0.3mm以上であれば、溶融したロウ材を貯留凹部に十分に貯留させることができ、接合界面に一気に溶融したロウ材が浸入することを抑制できる。その結果、貯留凹部から接合界面への過剰なロウ材の浸入を抑制することができる。
【0032】
・本発明の実施形態の詳細
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
<実施形態1>
≪接合部品≫
図1に示す接合部品1αは、第一部材1と第二部材2とをロウ材で接合することで構成されている(
図1では、両部材1,2が離隔された状態で示されている)。この接合部品1αにおける従来の接合部品との主な相違点は、[1]第一部材1に貯留凹部10が形成されていること、[2]第一部材1と第二部材2との接合界面の外周輪郭線の位置でロウ材の垂れ、または垂れたロウ材の除去痕が存在しないこと、の二点である。以下、接合部品1αの各構成部材を詳細に説明する。
【0034】
[第一部材]
図1に示す第一部材1は、円環の一面側に三本の柱状部を設けた構成である。もちろん、第一部材1の形状は、
図1に示す形状に限定されるわけではない。この第一部材1では、柱状部の端面が、後述する円環状の第二部材2と接合される第一接合面1Sとなっている。つまり、第一接合面1Sは、第二部材2との接合領域(
図2を参照して後述する非接触領域R1以外の領域)である。この第一接合面1Sの中央には貯留凹部10が形成されている。貯留凹部10は、第一接合面1Sの接合領域における最も低い部分よりも凹んだ部分のことである。例えば、第一接合面1Sには、特許文献1に示すような溝が形成されていても構わないが、その場合、貯留凹部10はその溝よりも凹んでいる。
【0035】
第一部材1に形成される貯留凹部10の数と位置、各貯留凹部10を平面視したときの輪郭形状は特に限定されない。平面視したときの貯留凹部10の輪郭形状は、例えば、
図1に示すような円形を含む楕円形状とすることの他、矩形を含む多角形状や星形などの異形形状でも良い。また、後述する実施形態3,4(
図5、
図6)に示すように、平面視したときにリング形状となる貯留凹部10とすることもできる。
【0036】
接合界面の延長面から貯留凹部10の最深部までの深さは0.3mm以上とすることが好ましい。貯留凹部10の深さが浅いと、第一部材1と第二部材2との接合時に、貯留凹部10に十分にロウ材を貯留することができない恐れがある。
【0037】
貯留凹部10は、その形状が開口部から底部にかけて一様でも良いし、すり鉢状に形成されていても良い。本例の貯留凹部10は、後述する
図2に示すように、すり鉢状に形成されている。その場合、接合界面に繋がる貯留凹部10の側壁面の傾斜、即ち接合界面の延長面と側壁面とのなす角(傾斜角)は、30°以上85°以下程度とすることが好ましい。より好ましい傾斜角は、40°以上80°以下、さらに好ましい傾斜角は、50°以上75°以下である。
【0038】
第一部材1は、粉末成形体を焼結させた焼結体でも良いし、鋳造体であっても良い。焼結体としては、例えば、Fe−Cu−C系の焼結体を挙げることができる。
【0039】
[第二部材]
図1に示す第二部材2は、円環状の部材である。この第二部材2には、第一部材1のブリッジ部の端部が係合する窪みが形成されている。この窪みの底面が、第一部材1に当接する第二接合面2Sとなり、その第二接合面2Sにおける第一部材1の貯留凹部10に対応する位置に、円環の厚み方向に貫通する貫通孔(対応孔部)20が形成されている。
【0040】
第二部材2も、第一部材1と同様、粉末成形体を焼結させた焼結体でも良いし、鋳造体であっても良い。焼結体としては、例えば、Fe−Cu−C系の焼結体を挙げることができる。
【0041】
[ロウ材]
第一部材1の第一接合面1Sと、第二部材2の第二接合面2Sと、を接合させるロウ材は、溶融状態で両部材1,2に対して親水性であれば特に限定されない。溶融したロウ材が両部材1,2に対して親水性であれば、溶融したロウ材の表面は、中央が低く、外周側が高い凹型のメニスカスとなる。そのようなロウ材としては、例えば、Ni−Cu−Mn−Fe系のロウ材や、Ni−Cu−Mn−Si−B系のロウ材を利用することができる。具体的には、40質量%Ni−40質量%Cu−15質量%Mn−1.7質量%Si−1.5質量%Bで、真密度が8.4g/cm
3のロウ材を利用することが挙げられる。Cuを多く含むロウ材の溶融時の粘度は、水と同程度か、それよりも低い。
【0042】
[接合状態]
第一部材1と第二部材2との接合状態については、
図2を参照する。
図2は、
図1の第一部材1と第二部材2とを接合したときのII−II断面の模式図である。
図2では、便宜上、第一部材1と第二部材2との接合界面に隙間があるように示しているが、実際には両部材1,2の接合面1S,2Sは当接している。また、この
図2には、第一部材1と第二部材2とを接合させるロウ材3の量が異なる三つの状態を示している。
【0043】
図2の上段図に示すように、第一部材1と第二部材2とを接合した接合部品1αでは、第一部材1と第二部材2とが接触しない非接触領域R1が形成されている。非接触領域R1は、貯留凹部10に対応する部分に形成される。ロウ材3は、貯留凹部10に溜まったロウ材溜まり30と、第一接合面1Sと第二接合面2Sとの間の接合境界に入り込んだロウ材接合部31と、に分けられる。ロウ材溜まり30の表面は、貯留凹部10の底部の形状にほぼ沿って窪んだ形状となっており、その窪みの部分が接合界面よりも低くなっている。一方、ロウ材接合部31は、接合界面の隅々に行き渡り、接合界面全体で第一部材1と第二部材2とを強固に接合させている。
【0044】
第一部材1における外周輪郭線の位置(白抜き矢印参照)には、ロウ材3の垂れ、または垂れたロウ材の除去痕が存在しない。これは、後述する接合部品1αの製造方法で説明するように、第一部材1に貯留凹部10が形成されていることで、第一部材1と第二部材2との接合界面に対する過剰なロウ材3の浸入が抑制されるからである。
【0045】
図2の中段図に示す接合部品1αでは、貯留凹部10に溜まったロウ材溜まり30の表面が、接合境界とほぼ面一の状態となっている。貫通孔20におけるロウ材溜まり30の表面の縁は盛り上がった状態となっている。これは、第一部材1と第二部材2とを接合する際、溶融したロウ材3の表面張力に起因して形成される。このロウ材溜まり30以外の部分は、
図2の上段図と同じである。
【0046】
図2の下段部に示す接合部品1αでは、貯留凹部10に溜まったロウ材溜まり30の表面が、接合境界よりも0.5mm程度高くなっている。ロウ材溜まり30の高さが接合境界よりも高くなり過ぎる(例えば、1mm以上)と、外周輪郭線の位置(白抜き矢印参照)にロウ材3の垂れが生じている可能性が高くなる。この下段図の例でも、貫通孔20におけるロウ材溜まり30の表面の縁は盛り上がった状態となっている。ロウ材溜まり30以外の部分は、
図2の上段図と同じである。
【0047】
≪接合部品の製造方法≫
上記接合部品1αは、下記工程α〜工程γを備える接合部品の製造方法によって製造することができる。ここでは、
図2の上段図に示す接合部品1αを製造する例を説明する。その説明にあたっては
図3を参照する。
【0048】
[工程α]
図3の上段図に示すように、工程αでは、第一接合面1Sに貯留凹部10を有する第一部材1を用意する。第一部材1は、焼結体でも良いし、鋳造体でも良い。また、第一部材1は、焼結前の圧粉成形体であっても良い。第一部材1の貯留凹部10の深さは、0.3mm以上とすることが好ましい。
【0049】
[工程β]
工程βでは、第一部材1における貯留凹部10の外周輪郭線よりも内方の領域にロウ材3を載置すると共に、第一部材1の第一接合面1S上に第二部材2の第二接合面2Sを当接させる(
図3では、両部材1,2に隙間があるように図示している)。ここで、本例では、第二部材2のうち、第一部材1の貯留凹部10に対応する位置に、第二部材2の厚み方向に貫通する貫通孔(対応孔部)20が形成されている。そのため、第一部材1に第二部材2を当接させた後に、貫通孔20を介してロウ材3を貯留凹部10に載置することができる。もちろん、第一部材1の貯留凹部10にロウ材3を載置した後、第一部材1に第二部材2を当接させても構わない。貫通孔20の存在により、貯留凹部10の深さよりも大きな厚みのロウ材3を貯留凹部10内に容易に配置できる。
【0050】
第二部材2は、焼結体でも良いし、焼結前の圧粉成形体でも良いし、鋳造体でも良い。第二部材2に形成する貫通孔20の大きさは、両部材1,2の接合面積を確保する観点から、第一部材1の貯留凹部10の開口部と同じか、それ以下とすると良い。
【0051】
工程βで貯留凹部10に載置するロウ材3の量は、接合界面の面積に合わせて適宜選択すれば良い。載置するロウ材3の量は、接合界面の全面に、後述する溶融したロウ材3が行き渡るだけの量(以下、必要量)があれば良いが、接合面積を確実に確保するという観点から、上記必要量の1.1倍〜2倍の量とすることが好ましい。また、載置するロウ材3の量として、1.5≦W/(V×D)≦5の不等式を満たすようにロウ材3の量を選択しても良いし、貯留凹部10の容積と同等あるいはそれ以上の量を選択しても良い。但し、『D』はロウ材3の真密度(g/cm
3)、『W』はロウ材3の質量(g)、Vは貯留凹部10の容積(mm
3)である。
【0052】
[工程γ]
図3の中段図に示すように、工程γでは、熱処理によってロウ材3を溶融させる。この熱処理によって溶融したロウ材3は、一旦貯留凹部10に貯留される。つまり、溶融したロウ材3が直接的に接合界面に供給されるのではなく、まず貯留凹部10内に一時的に貯えられる。溶融したロウ材3のうち、第一部材1の側壁面に接触する外縁部は、濡れによってロウ材3の中央部よりも盛り上がっている(ロウ材3の表面が凹状のメニスカスになっている)。本例では、ロウ材3の溶融開始から接合界面へロウ材3が充填されて凝固されるまでの過程において、溶融したロウ材3(未凝固部分は除く)の液面の外縁部以外は接合界面より低くなっている。この溶融したロウ材3の外縁部が、第一部材1と第二部材2との接合界面に到達すると、毛管現象によって溶融したロウ材3が接合界面に吸い込まれる。上記液面の外縁部以外が接合界面よりも低くても、外縁部が接合界面に達することができれば、毛管現象により接合界面にロウ材3は供給される。つまり、貯留凹部10に貯留されたロウ材3の液面が貯留凹部10内で上昇して、表面張力で接合界面まで到達することにより接合界面にロウ材3が供給されるという過程を経ている。この過程、即ち溶融したロウ材3の液面が接合界面の下方から上昇して接合界面に到達するという過程が重要で、溶融開始の時点から溶融したロウ材3の液面が接合界面と同一又は上方に位置して接合界面に溶融したロウ材3が供給されるわけではない。これに対して、本例と異なり、ロウ材3の液面が接合界面よりも過度に高いと、溶融したロウ材3の液圧により接合界面にロウ材3が圧入されてしまい、第一部材1における外周輪郭線の位置(白抜き矢印参照)にロウ材3の垂れが生じる恐れがある。
【0053】
上記熱処理は、ロウ材3の溶融温度よりも高くする。例えば、熱処理温度は、溶融温度よりも10℃以上高くすることが好ましい。ここで、第一部材1と第二部材2を圧粉成形体とした場合、熱処理温度を、第一部材1と第二部材2が焼結される温度とする。例えば、Fe−Cu−C系の圧粉成形体であれば、1100℃以上1200℃で、10分以上30分以下の熱処理とすることが挙げられる。焼結温度は、ロウ材3の融点よりも高いと考えて良いので、焼結温度に合わせて熱処理温度を決定すると良い。
【0054】
以上説明したように、
図3の中段図に示すように、熱処理の際に溶融したロウ材3が一旦、貯留凹部10に貯留され、その貯留凹部10から接合界面に溶融したロウ材が供給される構成であれば、
図3の下段図に示すように、接合界面への過剰なロウ材3の浸入を抑制することができる。その結果、第一部材1における外周輪郭線の位置(白抜き矢印参照)にロウ材3の垂れがない接合部品1αを作製することができる。また、この接合部品1αには、ロウ材3の垂れがないため、垂れたロウ材の除去痕も存在しない。
【0055】
<実施形態2>
実施形態2では、第二部材2における第一部材1の貯留凹部10に対応する位置に対応凹部21を形成した例を
図4に基づいて説明する。
図4の上段図、中段部、および下段図はそれぞれ、貯留凹部10のロウ材溜まり30の高さが接合界面よりも低い接合部品1β、接合界面とほぼ面一の接合部品1β、および接合界面よりも若干高い接合部品1βである。これらの接合部品1βのロウ材溜まり30の高さ以外の構成は共通である。
【0056】
第二部材2に対応凹部21を形成することで、ロウ材3を外部から見えなくすることができる。対応凹部21の深さは適宜選択することができる。対応凹部21の深さを深くすることで、第一部材1と第二部材2とを接合する際、第一部材1の貯留凹部10に大きなロウ材3を配置することができる。
【0057】
図4の接合部品1βを作製する場合、第一部材1の貯留凹部10にロウ材3を載置した後、第一部材1の第一接合面1Sに、第二部材2の第二接合面2Sを当接させる。そして、熱処理を施すことで、第一部材1と第二部材2とをロウ材3(ロウ材接合部31)で接合する。
【0058】
<実施形態3>
実施形態3では、第一部材1の貯留凹部10をリング状に形成した例を
図5に基づいて説明する。
図5の上段図、中段部、および下段図はそれぞれ、貯留凹部10のロウ材溜まり30の高さが接合界面よりも低い接合部品1γ、接合界面とほぼ面一の接合部品1γ、および接合界面よりも若干高い接合部品1γである。これらの接合部品1γのロウ材溜まり30の高さ以外の構成は共通である。
【0059】
貯留凹部10をリング状に形成することで、貯留凹部10に残るロウ材溜まり30の量を少なくすることができる。つまり、第一部材1と第二部材2との接合に関与しないロウ材3の量を減らすことができる。
【0060】
リング状の貯留凹部10の外周側の内壁面は、実施形態1,2と同様に傾斜面とすることが好ましい。また、リング状の貯留凹部10の内周側の内壁面も、傾斜面とすることができる。
【0061】
図5の接合部品1γを作製する場合、第一部材1における貯留凹部10に囲まれる隆起部にロウ材3を配置することが好ましい。この隆起部にロウ材3を載置することで、溶融したロウ材3がリング状の貯留凹部10の全周に分散して流れ込む。その結果、貯留凹部10に局所的にロウ材3の量が多くなる部分が形成されることを回避することができ、貯留凹部10に溶融したロウ材3が十分に貯留されてから、接合界面にロウ材3が導入されるようにすることができる。ここで、リング状の貯留凹部10の内周側の内壁面が傾斜面となっていれば、隆起部から貯留凹部10へのロウ材3の流れ込みを、貯留凹部10の全周にわたってほぼ均等にすることができる。ここで、本例の隆起部の高さは、接合界面と同じ高さとしたが、接合界面よりも高くても低くても良い。
【0062】
<実施形態4>
図6に示すように、実施形態3(
図5参照)のリング状の貯留凹部10を備える第一部材1と、実施形態2の対応凹部21を備える第二部材2と、を組み合わせた接合部品1δとすることもできる。
図6の上段図、中段部、および下段図はそれぞれ、貯留凹部10のロウ材溜まり30の高さが接合界面よりも低い接合部品1δ、接合界面とほぼ面一の接合部品1δ、および接合界面よりも若干高い接合部品1δである。これらの接合部品1δのロウ材溜まり30の高さ以外の構成は共通である。
【0063】
本例の場合、実施形態2の効果と実施形態3の効果の両方を得ることができる。
【0064】
<試験例>
試験例では、
図2に示す第一部材1と第二部材2とをロウ材3で接合した接合部品1αを実際に作製した。具体的には、貯留凹部10の深さを変化させて、第一部材1と第二部材2とを接合した接合部品1α(試料No.2〜6)を複数作製した。また、比較として、貯留凹部を形成していない第一部材と第二部材とを接合した接合部品(試料No.1)を作製した。これらの接合部品について、接合界面におけるロウ材の浸透状態、接合界面の開放端(
図1の白抜き矢印で示す外周輪郭線に同じ)からのロウ材の溢れ、ロウ材の表面高さを確認した。
【0065】
試料No.2〜6における貯留凹部10を平面視したときの貯留凹部10の面積は40mm
2、接合界面の面積は2.77cm
2とした。また、貯留凹部がない試料No.1における接合界面の面積も2.77cm
2とした。一方、ロウ材3は、Ni−Cu−Mn−Fe系で、その真密度Dは約8.4g/cm
3であった。各試料の作製条件を表1に示す。
【0067】
表1の各項目の意味は以下の通りである。
・深さH(mm)は、接合界面を非接触領域R1に延長した延長面から貯留凹部10の最深部までの最短距離である。
・容積V(mm
3)は、上記延長面と貯留凹部10とで囲まれる部分の体積、即ち貯留凹部10の容積である。
・貯留凹部相当量V×D(g)は、貯留凹部10の容積分のロウ材3の質量である。
・投入量W(g)は、接合部品の作製時に第一部材1の上に載置するロウ材3の質量であって、本例では0.50gである。
・必要量Wth(g)は、第一部材1と第二部材2との接合界面全体(面積は2.77cm
2)を十分に接合させるために必要なロウ材の質量であって、本例では0.30gである。
・関係式は、好ましいロウ材3の投入量を決定するための指標となるものであって、投入量W(g)を相当量V×D(g)で除したものである。
【0068】
各試料は、実施形態1に示す接合部品の製造方法に従って製造した。ここで、接合前の第一部材1と第二部材2は圧粉成形体とし、第一部材1と第二部材2を焼結する過程でロウ材3の熱処理を行った。熱処理の温度(焼結温度)は、1100〜1200℃で15分とした。
【0069】
得られた各試料について、接合界面に直交する断面で切断し、接合界面の全面にロウ材が十分に行き渡っているか否かを確認した。試料断面における接合界面においてロウ材が無い部分があれば、接合状態は不十分であると判断した。一方、試料断面における接合界面全体にロウ材が存在していれば、接合状態は十分であると判断した。また、各試料の接合界面の開放端を目視にて確認し、開放端からロウ材が溢れているか否かを確認した。さらに、試料断面を観察し、ロウ材3のうちのロウ材溜まり30の中央部の表面の高さが、接合界面に対してどのような状態にあるのかを確認した。これらの結果を表2に示す。
【0071】
表2に示すように、試料No.1では、接合界面の全体にロウ材が行き渡っているものの、開放端からロウ材が溢れてしまい、ロウ材が垂れてしまっていた。これは、第一部材に貯留凹部が無いため、熱処理の際に溶融したロウ材が自重によって接合界面に押し込まれてしまうからであると考えられる。その証拠に、試料No.1では、凝固したロウ材の表面が接合界面よりも高い位置になっている。溶融時のロウ材の表面は、凝固時よりも高い位置にあるため、接合界面に対して過剰なロウ材の浸入があると考えられる。
【0072】
試料No.2〜No.5では、接合界面の全体にロウ材が行き渡り、かつ開放端からのロウ材の漏れもなかった。これらの試料のW/(V×D)の値は、表1に示すように、1.5〜5の間であった。一方、試料No.6では、接合界面の一部にロウ材が行き渡っていないところがあったものの、開放端からのロウ材の漏れはなかった。この試料のW/(V×D)の値は、表1に示すように、1.3であった。これらの結果から、W/(V×D)の値は、1.5〜5の範囲が好ましいことが明らかになった。
【0073】
次に、各試料に対して、第一部材と第二部材の剥離試験を行なった。具体的には、第一部材と第二部材とを接合界面に対して垂直方向に、かつ互いに離れる方向に引っ張る試験を行った。その結果、試料No.1〜No.5については第一部材から第二部材を剥離するのに同程度の力が必要であった。また、その剥離の際、接合界面近傍の第一部材と第二部材の一部が破壊される程に、第一部材と第二部材とが強固に接合されていた。即ち、第一部材と第二部材の接合強度は、第一部材・第二部材の母材強度よりも高かった。一方、試料No.6については、試料No.1〜No.5の90%程度の力で第一部材から第二部材を剥離することができた。この試料No.6についても、接合界面近傍の第一部材と第二部材の一部が破壊される程に、第一部材と第二部材とが強固に接合されていた。つまり、試料No.6においてもかなりの接合強度が保持されていることが伺えるので、ロウ材の漏れが無いという点で、試料No.1よりも優れていると見做すこともできる。