(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、線形補間により入力画像を拡大する場合、拡大された画像には、入力画像に表れない細部の特徴を再現することはできない。特許文献1に開示された技術のように、線形補間により得られ得た画像に高周波成分を加算した場合、線形補間によりぼけたエッジを先鋭化することはできるが、入力画像に表れない細部の特徴を再現することはできない。
本発明の目的は、原画像に表れない細部の特徴を再現可能な超解像装置、超解像方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、超解像装置は、原画像
を複数の部分画像に分割する分割部と、前記複数の部分画像のそれぞれについて、当該部分画像に基づいて、前記
部分画像より大きく、かつ縮小操作により前記
部分画像と同じ画像が得られる複数の候補画像を生成する候補生成部と、前記複数の候補画像のそれぞれのフラクタル次元数、および前記
複数の部分画像の
それぞれのフラクタル次元数を算出する次元数算出部と、前記複数の候補画像ごとに、前記候補画像の前記フラクタル次元数と
、前記複数の部分画像のうち対応する前記
部分画像の前記フラクタル次元数の差が小さいほど大きい値を示すフラクタル評価値を算出する評価値算出部と、
前記複数の部分画像それぞれについて、前記フラクタル評価値に基づいて、前記複数の候補画像の中から
当該部分画像に対応する部分超解像画像を決定する決定部と
、前記複数の部分超解像画像を結合することで、超解像画像を生成する結合部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る超解像装置は、前記候補生成部が、前記
部分画像を構成する画素のそれぞれを、平均明度が前記画素の明度と等しい所定の正方画素パターンに置換することで、前記複数の候補画像を生成する。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る超解像装置は、前記評価値算出部が、前記複数の候補画像ごとに、前記フラクタル評価値と他の評価値とを算出し、前記決定部が、前記複数の候補画像のうち、前記フラクタル評価値と前記他の評価値の和が最も大きいものを前記
部分超解像画像に決定する。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3の何れかの態様に係る超解像装置は、前記次元数算出部が、前記
部分画像または前記候補画像の明度のヒストグラムに基づいて画素数が一定数となる明度の範囲を特定し、
特定した前記明度の範囲に含まれる画素と他の画素とで前記部分画像を二値化し、目の粗さが異なる複数の正方格子について、二値化された前記部分画像を前記正方格子で区切った場合に黒の画素が含まれる格子の数をカウントし、前記黒の画素が含まれる格子の数に基づいて、前記フラクタル次元数を算出する。
【0010】
本発明の
第5の態様によれば、超解像方法は、原画像
を複数の部分画像に分割するステップと、前記複数の部分画像のそれぞれについて、当該部分画像に基づいて、前記
部分画像より大きく、かつ縮小操作により前記
部分画像と同じ画像が得られる複数の候補画像を生成するステップと、前記複数の候補画像のそれぞれのフラクタル次元数、および前記
複数の部分画像の
それぞれのフラクタル次元数を算出するステップと、前記複数の候補画像ごとに、前記候補画像の前記フラクタル次元数と
、前記複数の部分画像のうち対応する前記
部分画像の前記フラクタル次元数の差が小さいほど大きい値を示すフラクタル評価値を算出するステップと、
前記複数の部分画像それぞれについて、前記フラクタル評価値に基づいて、前記複数の候補画像の中から
当該部分画像に対応する部分超解像画像を決定するステップと
、前記複数の部分超解像画像を結合することで、超解像画像を生成するステップとを有する。
【0011】
本発明の
第6の態様によれば、プログラムは、コンピュータを、原画像
を複数の部分画像に分割する分割部、前記複数の部分画像のそれぞれについて、当該部分画像に基づいて、前記
部分画像より大きく、かつ縮小操作により前記
部分画像と同じ画像が得られる複数の候補画像を生成する候補生成部、前記複数の候補画像のそれぞれのフラクタル次元数、および前記
複数の部分画像の
それぞれのフラクタル次元数を算出する次元数算出部、前記複数の候補画像ごとに、前記候補画像の前記フラクタル次元数と
、前記複数の部分画像のうち対応する前記
部分画像の前記フラクタル次元数の差が小さいほど大きい値を示すフラクタル評価値を算出する評価値算出部、
前記複数の部分画像それぞれについて、前記フラクタル評価値に基づいて、前記複数の候補画像の中から
当該部分画像に対応する部分超解像画像を決定する決定部
、前記複数の部分超解像画像を結合することで、超解像画像を生成する結合部として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、超解像装置は、原画像に近いフラクタル次元数を有する超解像画像を得ることができる。これにより、原画像に表れない細部の特徴が表れる超解像画像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、一実施形態による超解像装置の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態に係る超解像装置1は、グレイスケールの入力画像の2倍の解像度を有する出力画像を生成する。なお、本明細書において「解像度をX倍にする」とは、画像の1辺当たりの画素数をX倍にすることをいう。つまり、解像度をX倍にすると、画素数はX
2倍になる。超解像装置1は、画像入力部101、分割部102、候補生成部103、次元数算出部104、外部明度順位特定部105、内部明度順位特定部106、評価値算出部107、決定部108、結合部109を備える。
【0015】
画像入力部101は、超解像処理の対象となる入力画像の入力を受け付ける。
分割部102は、画像入力部101に入力された入力画像を複数の部分画像に分割する。分割部102は、例えば入力画像をPピクセル×Pピクセル(例えば、8×8)の部分画像に分割する。
候補生成部103は、分割部102が分割した部分画像それぞれについて、当該部分画像の各画素を、2ピクセル×2ピクセルの平方画素パターンに置換することで、部分画像の2倍のサイズ(すなわち、2Pピクセル×2Pピクセル)を有する候補画像を生成する。なお、候補画像は、部分画像と同じ解像度に縮小することで部分画像と同じ画像が得られる画像である。本実施形態において、部分画像は原画像の一例である。
【0016】
次元数算出部104は、分割部102が生成した部分画像および候補生成部103が生成した候補画像のフラクタル次元数を算出する。本実施形態に係る次元数算出部104は、例えばボックスカウント法により、フラクタル次元数を算出する。具体的には、次元数算出部104は、以下の手順でフラクタル次元数を算出する。まず、次元数算出部104は、部分画像および候補画像の明度のヒストグラムを生成する。次に、次元数算出部104は、当該ヒストグラムに含まれる画素数をQ等分(例えば、8等分)する明度の範囲を特定する。次に、次元数算出部104は、特定した範囲に含まれる画素と他の画素とで分割画素を二値化し、二値化画像を得る。例えば、次元数算出部104は、特定した範囲に含まれる画素を黒とし、他の画素を白とする二値化処理を行う。次に、次元数算出部104は、目の粗さが異なる複数の正方格子について、二値化画像をその正方格子で区切った場合に黒の画素が含まれる格子の数をカウントする。そして、次元数算出部104は、格子のサイズの対数と黒の画素が含まれる格子の数の対数との関係を一次関数で近似し、その傾きを、フラクタル次元数として特定する。つまり、次元数算出部104は、ヒストグラムをQ等分する各範囲に係るフラクタル次元数を特定する。
【0017】
外部明度順位特定部105は、部分画像を構成する各画素について、その画素に隣接する画素である隣接画素(左上隣接画素、右上隣接画素、左下隣接画素、および右下隣接画素)の平均明度の順位を特定する。左上隣接画素とは、対象画素の左、左上および上に隣接する画素をいう。右上隣接画素とは、対象画素の右、右上および上に隣接する画素をいう。左下隣接画素とは、対象画素の左、左下および下に隣接する画素をいう。右下隣接画素とは、対象画素の右、右下および下に隣接する画素をいう。
内部明度順位特定部106は、候補画像を構成する各平方画素パターンについて、その平方画素パターンを構成する4つの画素(左上画素、右上画素、左下画素、および右下画素)の明度の順位を特定する。
【0018】
評価値算出部107は、フラクタル次元数に基づくフラクタル評価値と、隣接画素どうしの明度変化の滑らかさを評価するスムース評価値との加重和を求めることで、超解像評価値を算出する。フラクタル評価値は、部分画像と候補画像のフラクタル次元数の差が小さいほど大きい値を示す。スムース評価値は、外部明度順位特定部105が特定した順位と内部明度順位特定部106が特定した順位との差が小さいほど大きい値を表す。なお、フラクタル評価値およびスムース評価値は0以上1以下の値であり、大きいほど適性が高いことを示す。
決定部108は、評価値算出部107が算出した超解像評価値が最も大きい候補画像を、部分超解像画像に決定する。つまり、本実施形態において部分超解像画像は、超解像画像の一例である。
結合部109は、複数の部分画像それぞれに対応する部分超解像画像を結合することで、画像入力部101に入力された入力画像に対応する出力画像を生成する。
【0019】
ここで、平方画素パターンについて説明する。
図2は、一実施形態に係る平方画素パターンの例を示す図である。
本実施形態に係る平方画素パターンは、部分画像の対応する画素に第1の明度B1を加算する画素p
+B1、部分画像の対応する画素の明度に第2の明度B2を加算する画素p
+B2、部分画像の対応する画素の明度に第1の明度B1を減算する画素p
−B1、および部分画像の対応する画素の明度に第2の明度B2を減算する画素p
−B2の4つの画素の組み合わせによって表される。そのため、平方画素パターンの各画素の平均値は、部分画像の対応する画素の明度と等しくなる。なお、第1の明度および第2の明度としては、例えば−25以上25以下の値が挙げられる。
本実施形態に係る平方画素パターンは、画素p
+B1、画素p
+B2、画素p
−B1、および画素p
ーB2の配置型として、6種類の画素の配置型を有する。第1の配置型は、
図2(A)に示すように、左上の画素が画素p
−B1、右上の画素が画素p
+B1、左下の画素が画素p
+B2、かつ右下の画素が画素p
−B2となる配置型である。第2の配置型は、
図2(B)に示すように、左上の画素が画素p
+B1、右上の画素が画素p
−B2、左下の画素が画素p
−B1、かつ右下の画素が画素p
+B2となる配置型である。第3の配置型は、
図2(C)に示すように、左上の画素が画素p
−B2、右上の画素が画素p
+B2、左下の画素が画素p
+B1、かつ右下の画素が画素p
−B1となる配置型である。第4の配置型は、
図2(D)に示すように、左上の画素が画素p
+B2、右上の画素が画素p
−B1、左下の画素が画素p
−B2、かつ右下の画素が画素p
+B1となる配置型である。第5の配置型は、
図2(E)に示すように、左上の画素が画素p
+B2、右上の画素が画素p
+B1、左下の画素が画素p
−B1、かつ右下の画素が画素p
−B2となる配置型である。第6の配置型は、
図2(F)に示すように、左上の画素が画素p
+B1、右上の画素が画素p
+B2、左下の画素が画素p
−B2、かつ右下の画素が画素p
−B1となる配置型である。
したがって、平方画素パターンは、配置型、第1の明度、および第2の明度を格納するデータ構造で表現することができる。
【0020】
次に、本実施形態による超解像装置1の動作について説明する。本実施形態では、超解像装置1が遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)に基づいて部分超解像画像を特定する例について説明する。なお、他の実施形態に係る超解像装置1は、遺伝的アルゴリズムに限られず、他の解探索手法を用いて部分超解像画像を特定してもよい。
図3は、一実施形態に係る超解像装置の動作を示す第1のフローチャートである。
図4は、一実施形態に係る超解像装置の動作を示す第2のフローチャートである。
まず、利用者は、超解像処理の対象となる入力画像を超解像装置1に入力する。画像入力部101が入力画像の入力を受け付けると(ステップS1)、分割部102は、入力された入力画像を複数の部分画像に分割する(ステップS2)。
【0021】
次に、超解像装置1は、分割部102が生成した部分画像を1つずつ選択し、選択した部分画像について以下に示すステップS4〜ステップS21の処理を実行する(ステップS3)。
まず、次元数算出部104は、選択された部分画像のフラクタル次元数を、ヒストグラムをQ等分する明度範囲ごとに算出する(ステップS4)。また、外部明度順位特定部105は、部分画像を構成する各画素について、隣接画素の平均明度の順位(外部明度順位)を特定する(ステップS5)。なお、外部明度順位は、0から3の整数により表される。次に、候補生成部103は、分割部102が生成した部分画像の各画素を、ランダムな平方画素パターンに置換することで、N個の候補画像を生成する(ステップS6)。NはGAの個体数であり、2以上の整数(例えば、100)である。
【0022】
次に、次元数算出部104は、候補生成部103が生成した各候補画像のフラクタル次元数を、ヒストグラムをQ等分する明度範囲ごとに算出する(ステップS7)。また、内部明度順位特定部106は、各候補画像を構成する各平方画素パターンについて、画素の明度の順位(内部明度順位)を特定する(ステップS8)。なお、内部明度順位は、0から3の整数により表される。次に、評価値算出部107は、次元数算出部104が算出した部分画像のフラクタル次元数と、候補画像のフラクタル次元数とに基づいて、フラクタル評価値を算出する(ステップS9)。具体的には、評価値算出部107は、次に示す式(1)に従ってフラクタル評価値f
Dを算出する。
【0024】
変数D
kinは、部分画像のk番目の明度範囲に係るフラクタル次元数である。変数D
koutは、候補画像のk番目の明度範囲に係るフラクタル次元数である。
【0025】
次に、評価値算出部107は、外部明度順位特定部105が特定した外部明度順位と、内部明度順位特定部106が特定した内部明度順位とに基づいて、スムース評価値を算出する(ステップS10)。具体的には、評価値算出部107は、次に示す式(2)に従ってスムース評価値f
Sを算出する。
【0027】
変数R
mninは、部分画像のあるm番目の画素の第n方向の隣接画素の平均明度の順位である。なお、第0方向は左上、第1方向は右上、第2方向は左下、第3方向は右下を示す。変数R
mnoutは、候補画像のm番目の平方画素パターンの第n方向の画素の明度の順位である。
【0028】
次に、評価値算出部107は、フラクタル評価値とスムース評価値の加重和を、超解像評価値として算出する(ステップS11)。フラクタル評価値の重みとスムース評価値の重みは、いずれも0以上1以下であって、その和が1となる値である。
【0029】
次に、候補生成部103は、上記のステップS7からステップS11の処理を、M回繰り返し実行したか否かを判定する(ステップS12)。MはGAの世代数であり、2以上の整数(例えば、20000)である。
【0030】
ステップS7からステップS11の処理の繰り返し回数がM回に満たない場合(ステップS12:NO)、候補生成部103は、以下のステップS14からステップS19の処理をN回繰り返し実行することで、次の世代の候補画像をN個生成する(ステップS13)。
まず、候補生成部103は、選択、交叉、突然変異の何れの操作により次の世代の候補画像を生成するかを、ランダムに決定する(ステップS14)。
【0031】
候補生成部103は、交叉操作を行うことを決定した場合(ステップS14:交叉)、評価値算出部107が超解像評価値を算出した複数の候補画像の中から、その超解像評価値に応じた重みによってランダムに2つの候補画像を選択する(ステップS15)。次に、候補生成部103は、選択した2つの候補画像の任意の範囲の平方画素パターンを入れ替えることにより、新たな候補画像を生成する(ステップS16)。
【0032】
また、候補生成部103は、ステップS14で突然変異操作を行うことを決定した場合(ステップS14:突然変異)、評価値算出部107が超解像評価値を算出した複数の候補画像の中から、その超解像評価値に応じた重みによってランダムに1つの候補画像を選択する(ステップS17)。次に、候補生成部103は、選択した候補画像の任意の範囲の平方画素パターンを、ランダムに変更することで、新たな候補画像を生成する(ステップS18)。
【0033】
また、候補生成部103は、ステップS14で選択操作を行うことを決定した場合(ステップS14:選択)、評価値算出部107が超解像評価値を算出した複数の候補画像の中から、その超解像評価値に応じた重みによってランダムに1つの候補画像を次の世代の候補画像として抽出する(ステップS19)。
【0034】
上述したステップS13〜ステップS19の処理により、候補生成部103がN個の候補画像を生成すると、超解像装置1は処理をステップS7に戻し、生成された各候補画像の超解像評価値を算出する。
【0035】
他方、ステップS7からステップS12の処理の繰り返し回数がM回に達した場合、決定部108は、候補生成部103が生成した候補画像のうち、評価値算出部107が算出した超解像評価値が最も大きいものを、ステップS3で選択された部分画像に対応する部分超解像画像に決定する(ステップS20)。
決定部108が全ての部分画像について対応する部分超解像画像を決定すると、結合部109は、複数の部分超解像画像を結合することで、入力画像に対応する出力画像を生成する(ステップS21)。
【0036】
このように、本実施形態に係る超解像装置1は、入力画像に近いフラクタル次元数を有する出力画像を得ることができる。これにより、超解像装置1は、入力画像に表れない細部の特徴が表れる出力画像を得ることができる。
【0037】
ここで、入力画像と出力画像のフラクタル次元数が近いことにより、出力画像に入力画像に表れない細部の特徴が表れる理由について説明する。自然物の形状には、自己相似性を有するものがあることが知られている。つまり、自然物によっては、その一部分の形状が全体の形状と略相似の関係にある場合がある。このような場合に、その自然物のフラクタル次元数は、拡大倍率に依存しない。したがって、超解像装置1は、入力画像と近いフラクタル次元数を有する出力画像を生成することで、解像度の小ささから入力画像に表れない細部の特徴が表れる出力画像を得ることができる。
【0038】
ここで、本実施形態に係る超解像装置1により生成される画像の例を示す。
図5は、一実施形態に係る超解像処理の例を示す図である。
本実施例では、
図5(A)に示すように、入力画像として64ピクセル×64ピクセルの、グレイスケール256階調の画像を用いた。また、本実施例では、フラクタル次元数の計算対象となる明度の範囲を、ヒストグラムに含まれる画素数を8等分する明度の範囲とした。また、候補生成部103がGAの1世代に生成する候補画像の数Nを100とし、繰り返し世代数Mを20000とした。また、候補生成部103によるGAの交叉率を0.8、突然変異率は0.03とした。また、超解像評価値の算出に用いるフラクタル評価値の重さを0.6とし、スムース評価値の重さを0.4とした。
これらの条件により超解像装置1が生成した出力画像を、
図5(B)に示す。また、従来の超解像手法である線形補間処理(バイリニア法)により生成した拡大画像を、
図5(C)に示す。
図5(C)に示すように、バイリニア法で生成された拡大画像は、細部の特徴が写っておらず、ぼやけた画像となっている。これに対し、本実施形態に係る超解像装置1が生成した出力画像は、
図5(B)に示すように、入力画像に写らない細部の特徴が表れ、またエッジが明瞭に表れている。
このように、本実施形態に係る超解像装置1は、解像度の小ささから入力画像に表れない細部の特徴が表れる出力画像を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、超解像装置1は、部分画像を構成する画素のそれぞれを、平均明度が画素の明度と等しい正方画素パターンに置換することで、候補画像を生成する。これにより、超解像装置1は、少ない計算量で候補画像を生成することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、超解像装置1は、候補画像のうちフラクタル評価値とスムース評価値の荷重和が最も大きいものを部分超解像画像に決定する。これにより、超解像装置1は、細部の特徴が表れ、かつ正方画素パターン間に生じるエッジが小さいスムースな画像を、部分超解像画像に決定することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、超解像装置1は、画像のヒストグラムに基づいて、画素数が一定数となる明度の範囲を特定し、明度が所定の範囲内に存在する画素の数に基づいてフラクタル次元数を算出する。これにより、超解像装置1は、画像のコントラストによらず図形を構成する画素を適切に特定することができる。そのため、超解像装置1は、ボックスカウント法により適切にフラクタル次元数を算出することができる。
【0042】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、入力画像を複数の部分画像に分割し、複数の部分画像を部分超解像画像に変換し、これらを結合することで、出力画像を得る。これにより、超解像装置1は、入力画像にフラクタル次元数の異なる複数の物体が写っている場合にも、それぞれのフラクタル次元数に基づいて適切に超解像処理を施すことができる。
【0043】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、部分画像を構成する画素のそれぞれを、平均明度が画素の明度と等しい正方画素パターンに置換することで、候補画像を生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態において、解像度をS/T倍に拡大する場合、超解像装置1は、部分画像を構成するTピクセル×Tピクセルの画素群を、平均明度が対応する画素群の平均明度と等しいSピクセル×Sピクセルの正方画素パターンに置換してもよい。また、他の実施形態において超解像装置1は、正方画素パターンへの置換以外の方法により候補画像を生成してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、候補画像のうちフラクタル評価値とスムース評価値の荷重和が最も大きいものを部分超解像画像に決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る超解像装置1は、フラクタル評価値のみに基づいて部分超解像画像を決定してもよい。また、他の実施形態に係る超解像装置1は、フラクタル評価値に加え、スムース評価値でない他の評価値に基づいて部分超解像画像を決定してもよい。
他の評価値の例としては、部分画像が人物を含む場合に画像に写る物体の人物らしさを評価する評価値が挙げられる。具体的には、予め人物の部分が写った画像を複数用意しておき、これらとの類似度のうち最も高い物を、評価値として用いてもよい。
また、他の評価値の例としては、部分画像がエッジ上の点である場合に部分超解像画像にそのエッジが保存されているか否かを評価する評価値が挙げられる。具体的には、部分画像からエッジ成分を抽出し、部分超解像画像のうち抽出したエッジ成分に相当する部分のコントラストの強さを、評価値として用いてもよい。
また、他の評価値の例としては、部分画像の細部に、自己相似性を有する構造が表れているか否かを評価する評価値が挙げられる。具体的には、入力画像において解像度が小さいために細部の構造が写らない範囲(例えば、2ピクセル×2ピクセルの範囲)に対応する部分画像の範囲と、入力画像に写る自己相似性を有する構造との類似度を、評価値として用いてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、ボックスカウント法に基づいてフラクタル次元数を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る超解像装置1は、フラクタル次元としてハウスドルフ次元、レニー次元、パッキング次元、または相関次元を算出してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、入力画像を複数の部分画像に分割し、複数の部分画像を部分超解像画像に変換し、これらを結合することで、出力画像を得るが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る超解像装置1は、入力画像を拡大した候補画像を生成し、入力画像と同じフラクタル次元数を有する出力画像を直接生成してもよい。
【0047】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、入力画像をPピクセル×Pピクセルの部分画像に分割するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る超解像装置1は、パターン認識により認識された物体ごとに画像を分割してもよい。この場合、分割部102は、物体ごとのフラクタル次元数に基づいて超解像を行うことができる。
【0048】
また、上述した実施形態によれば、超解像装置1は、グレイスケールの画像を超解像処理したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る超解像装置1は、カラー画像を超解像処理してもよい。この場合、超解像装置1は、RGB空間の赤成分、緑成分、および青成分のそれぞれの明度、HSV空間の明度、またはYUV空間の輝度に基づいてフラクタル次元数を算出する。また、この場合、超解像装置1は、拡大後の画素分布の平均色が入力画像の対象画素の色と等しくなるように候補画像を生成する。このとき、超解像装置1は、HSV空間またはYUV空間など、色彩と明るさとが別に定義された体系に基づいて候補画像を生成することが好ましい。
【0049】
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ9は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の超解像装置1は、コンピュータ9に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0050】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ9に配信される場合、配信を受けたコンピュータ9が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0051】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。