(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2孔部には、先端側に前記溶融領域で溶融された半田の流下方向の投影面よりも大きい断面を有する部分が設けられている請求項8から請求項11のいずれかに記載の半田鏝の鏝先。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる半田付け装置の一例の斜視図である。
図2は
図1に示す半田付け装置のC1−C1線で切断した断面図である。なお、
図1では、筐体および支持部1の一部を切断し、半田付け装置の内部を表示するようにしている。また、
図1および
図2ともに、糸半田を半田片に切断する前の状態を示している。
【0029】
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板BdのランドLdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子Ndとに溶融半田を供給し、接続固定を行う。
図1に示すように半田付け装置Aは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4(鏝先保持部)、半田鏝の鏝先5および半田送り機構6を備えている。ヒーターユニット4と、半田鏝の鏝先5とで半田鏝を形成している。なお、以下の説明において、便宜上、半田鏝の鏝先を単に鏝先と称する場合がある。
【0030】
支持部1は、支持壁11と、摺動ガイド12とを有している。支持壁11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。支持壁11は、半田付け装置Aの支持部材としての役割を果たしている。以下の説明においては、X方向、Y方向、Z方向と説明する場合があり、その場合、
図1を基準としている。すなわち、
図1において、支持壁11に沿う上下方向をZ方向、支持壁11に沿う方向でZ方向と直交する方向をX方向、X方向およびZ方向と直交する方向をY方向とする。
図1において、摺動ガイド12は、支持壁11に固定されている。
【0031】
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断するものである。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23(
図2に図示)とを備えている。カッター下刃22は摺動ガイド12とともに支持壁11に固定される。カッター上刃21は、カッター下刃22の上部に、X方向に摺動可能に配置されている。カッター上刃21は、摺動ガイド12によって移動方向が規制(ガイド)されている。また、カッター上刃21は、摺動ガイド12によってZ方向の移動が規制されている。プッシャーピン23は、カッター上刃21の後述するピン孔212の内部に配置されている。そして、プッシャーピン23は、駆動機構3の後述する第2アクチュエーター32によって、上下方向(カッター上刃21の摺動方向と交差する方向)に移動される(
図2参照)。
【0032】
カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入管222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。ガス流入管222は、下刃孔221不活性ガスを下刃孔221に流入させる配管である。ガス流入管222は、カッター下刃22の側面から下刃孔221に連通している。また、ガス流入管222の外側には、不活性ガスを供給するためのガス配管Gp1が接続されている。
【0033】
ここで、不活性ガスとは、ガスを共有する対象である溶融した半田が参加するのを抑制するために用いられるものである。つまり、不活性ガスを供給することで、対象が酸素と触れるのを抑制する不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。
【0034】
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔であり、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は上刃孔211に対してX方向にずれた位置に設けられており、同じくカッター上刃21をZ方向に貫通し、プッシャーピン23が挿入されている。
【0035】
カッター上刃21がX方向に摺動可能であるとともに、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置と、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置との間を摺動する。そして、カッター上刃21の上刃孔211とカッター下刃22の下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21をX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
【0036】
カッター上刃21が、糸半田Wを切断した後に摺動を継続することで、下刃孔221とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔221と重なっている状態で、プッシャーピン23をピン孔212からZ方向下方に突出させると、プッシャーピン23の一部が下刃孔221に挿入される。下刃孔221の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
【0037】
駆動機構3は、第1アクチュエーター31と、第2アクチュエーター32とを備えている。第1アクチュエーター31は、流体圧力(ここでは、空気圧)を用いた駆動源であり、シリンダー311と、ピストンロッド312とを備えている。シリンダー311は、カッター下刃22に固定されている。ピストンロッド312は、シリンダー311の軸方向に摺動可能に収容されており、先端がシリンダー311の外部に突出する。ピストンロッド312の先端がカッター上刃21に固定されている。
【0038】
シリンダー311には、所定の圧力の空気が供給されており、空気圧を利用して、ピストンロッド312をシリンダー311から押し出す、または、収容する。そして、第1アクチュエーター31は、シリンダー311の軸がX軸と平行に配置されており、空気圧を調整することで、ピストンロッド312がX方向に伸縮する。ピストンロッド312の伸縮によってカッター上刃21がX方向に摺動する。
【0039】
なお、
図2に示す半田付け装置Aでは、第1アクチュエーター31のピストンロッド312がシリンダー311から最も突出したとき、カッター上刃21が図中左端にあり、上刃孔211が下刃孔221と上下に重なるようになっている。また、図示はしないが、ピストンロッド312がシリンダー311に収納されたとき、カッター上刃21が図中右端に移動し、ピン孔212が下刃孔221と上下に重なるようになっている。
【0040】
下刃孔221にはガス流入管222から不活性ガスが供給されている。下刃孔221は、上刃孔211またはピン孔212とZ方向に重なっていないときには、上端部をカッター上刃21で覆われる。これにより、下刃孔221の上端から不活性ガスが漏れるのを抑制している。なお、カッター上刃21とカッター下刃22との接触面とは、円滑に摺動することができるとともに、下刃孔221の上端から不活性ガスが漏れにくく形成されていることが好ましい。
【0041】
第2アクチュエーター32も第1アクチュエーター31と実質上同じ構成を有している。すなわち、シリンダー321と、ピストンロッド322とを備えている。シリンダー321はカッター上刃21に固定されている。シリンダー321の中心軸がZ軸と平行である。ピストンロッド322は、シリンダー321の軸方向に摺動可能に収容されており、先端がシリンダー321の外部に突出する。ピストンロッド322の先端には、プッシャーピン23が固定されている。
【0042】
第2アクチュエーター32のシリンダー321は、ピストンロッド322が、ピン孔212とZ方向に重なるように、カッター上刃21に固定されている。つまり、ピストンロッド322が伸縮することで、プッシャーピン23がピン孔212内を軸方向に摺動する。そして、第2アクチュエーター32が移動して、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なっているとき、ピストンロッド322を伸長させることで、プッシャーピン23を下刃孔221に挿入する。また、ピストンロッド322をシリンダー321に収容することでプッシャーピン23を下刃孔221から抜く。なお、ピストンロッド322の動作は、第1アクチュエーター31と同じく、空気圧で行われている。
【0043】
第1アクチュエーター31は、カッター上刃21を摺動させ、第2アクチュエーター32はプッシャーピン23を摺動させている。プッシャーピン23が下刃孔221に挿入されている状態で、第1アクチュエーター31を駆動すると、プッシャーピン23やカッター上刃21およびカッター下刃22が傷ついてしまう。そのため、第2アクチュエーター32は、第1アクチュエーター31と同期して動作しており、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ピストンロッド322を伸長するように動作する。
【0044】
第1アクチュエーター31および第2アクチュエーター32の駆動は、空気圧に限定されず、油圧等の流体を用いるものであってもよい。さらには、流体を用いるものに限定されるものではなく、モータやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。また、上述のように、第1アクチュエーター31と第2アクチュエーター32とが、同期して駆動されるものであるため、カム、リンク、歯車等を用いた連動機構を備え、1個のアクチュエーターで駆動するようにしてもよい。
【0045】
次に、カッターユニット2に糸半田Wを供給する半田送り機構6について説明する。半田送り機構6は、糸半田Wを供給するものである。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
【0046】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
【0047】
ヒーターユニット4は、糸半田Wを切断した半田片Whが溶融する温度に鏝先5を加熱する加熱装置である。ヒーターユニット4は、カッター下刃22の下部に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42と、ヒーターブロック固定板43とを備えている。
【0048】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、ヒーターブロック42には軸方向の端部(先端)に鏝先5を取り付けるための断面円形状の凹部421が設けられている。そして、ヒーターブロック42には、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422が設けられている。ヒーターブロック42は、ヒーターブロック固定板43に固定される。
【0049】
ヒーターブロック固定板43は、カッター下刃22の下面に固定されている。平板状の本体部に設けられた貫通孔である固定孔430を備えている。ヒーターブロック固定板43の固定孔430にヒーターブロック42の凹部421と反対側の端部を圧入することでヒーターブロック42はヒーターブロック固定板43を介してカッター下刃22に固定される。なお、
図2に示すように、ヒーターブロック42の固定孔430に圧入される部分は、小径の段差が形成されているが、これに限定されるものではなく、段差無しの形状であってもよい。また、ヒーターブロック42の固定方法は圧入に限定されるものではない。ヒーターブロック42をヒーターブロック固定板43に精度よく、且つ、しっかり固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0050】
図2に示すように、半田付装置Aでは、ヒーターブロック42がヒーターブロック固定板43を介してカッター下刃22に取りつけられる。これにより、カッター下刃22の下刃孔221とヒーターブロック42の半田供給孔422とが連通する。なお、上述のとおり、下刃孔221にはガス流入孔222を介して不活性ガスが供給されている。この不活性ガスが半田供給孔422に供給されるときに漏えいが少ないことが好ましい。そのために、例えば、ガスケットやシール材等の不活性ガスの漏れを抑制する部材を介在させてもよい。
【0051】
ヒーター41は、ヒーターブロック42の外周に巻きつけられている。ヒーター41はコイルに電流を流すことで、ヒーターブロック42を加熱する。ヒーター41は、誘導加熱によってヒーターブロック42を加熱する構成である。なお、ヒーター41は、誘導加熱による加熱に限定されず、電熱線等の電気を直接熱に変換し、ヒーターブロック42を加熱する構成であってもよい。
【0052】
ヒーターブロック42の先端の凹部421には、鏝先5が着脱可能に取り付けられる。鏝先5は、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。 鏝先5は、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。
【0053】
ここで、本発明の要部である鏝先5について新たな図面を参照して説明する。
図3は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図4は
図3に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図3に示す鏝先5は、ヒーターブロック42から突出する部分を示しており、
図4に示す鏝先5は、半田付けを行っている状態を示している。
図4には、基板Bd、基板Bdの表面に設けられたランドLd、基板Bdに実装された電子部品Epおよび電子部品Epの端子Ndも表示している。
【0054】
図3、
図4に示すように、鏝先5は、筒50を有している。筒50は、半田孔51と、ガス供給孔52とを有している。
図2に示すようには、筒50は円筒形状の部材であり、中心部分に軸方向に延びる半田孔51が設けられている。半田孔51は鏝先5の後端の開口511、先端の開口512を有する貫通孔である。半田孔51の後端の開口511および先端の開口512との間の部分は、カッターユニット2で切断された半田片Whを溶融する溶融領域510を有している。
【0055】
ガス供給孔52は、半田孔51から筒50の外面に貫通する貫通孔である。ガス供給孔52は、筒50の軸方向において、溶融領域510よりも先端側、ここでは、先端の開口512に近接した位置に設けられている。そして、ガス供給孔52には、不活性ガスが流れるガス配管Gp2が接続される。このガス配管Gp2は、ガス流入配管222に接続されるガス配管Gp1と分岐して設けられた配管であってもよいし、ガス配管Gp1とは別系統で設けられた配管であってもよい。ガス配管Gp1とガス配管Gp2とは、同じ気体(不活性ガス)が流れる。
【0056】
筒50は、ヒーターブロック42の凹部421に取り付けられていることで、ヒーターブロック42と接触している。これにより、鏝先5が、ヒーターユニット4に加熱される。このとき、筒50は、半田孔51の少なくとも溶融領域510が、半田片Whを溶融する温度(例えば、鉛フリー半田の場合、約220℃以上)に昇温される。
【0057】
図4に示す鏝先5では、溶融領域510で、先端側の断面積が小さくなるような傾斜を有する形状(テーパ形状)を有している。テーパ形状を有することで、半田片Whを半田孔51の中心に導くとともに、半田片Whを一時停止させて、半田片Whと鏝先5(筒50)とを接触させ、鏝先5(筒50)の熱を半田片Whに効果的に伝達させることができる。なお、半田孔51を通過するときに、半田片Whが溶融する場合や端子Ndと接触して停止した半田片Whを確実に溶融させることができる場合にはテーパ形状は省略してもよい。例えば、半田孔Whが全長に渡り均一な断面を有する貫通孔であってもよいし、異径の貫通孔を直接連結した形状であってもよい。異径の貫通孔を直接連結する構成の場合、先端側を後端側よりも小径とすることで、接続部分で段が形成され、半田片Whを一時的に停止させることが可能である。
【0058】
筒50の後端を、ヒーターブロック42の凹部421に挿入して固定することで、半田孔51は半田供給孔422と連通する。このとき、半田供給孔422から半田孔51に流入する不活性ガスが接続部分からの漏れを極力抑えるため、ガスケットやシール材等を介在させるようにしてもよい。
【0059】
半田付け装置Aにおいて、ヒーターブロック42の凹部421に取り付けられた鏝先5の半田孔51には、後端の開口511から半田片Whとともに不活性ガスが供給される。また、ガス供給孔52にガス配管Gp2からの不活性ガスが直接供給されている。そのため、半田孔51の先端の開口512の近傍には、ガス供給孔52を介して不活性ガスが直接流入している。
【0060】
半田付け装置Aで半田付けを行う動作について説明する。半田付け装置Aで半田付けを行う場合、筒50の先端を配線基板BdのランドLdに接触させる。そして、筒50で、ランドLdおよび電子部品Epの端子を囲む。このとき、鏝先5には、ヒーターユニット4からの熱が伝達されており、筒50の先端が接触することでランドLdおよび電子部品Epの端子は、半田付けに適した温度に加温(プレヒート)される。
【0061】
なお、ヒーター41は常時同じ熱量を鏝先5に供給するように制御されていてもよいし、ランドLdおよび電子部品Epの端子を加熱する間は熱量を小さくし、半田片Whが鏝先5の半田孔51に到達した後、供給する熱量を大きくするように制御されるものであってもよい。このように、糸半田Wの有無によって、ヒーター41から鏝先5に供給される熱量を変更することで、配線基板Bdや電子部品Epの過熱による不具合の発生を抑制することができる。
【0062】
そして、鏝先5によるプレヒートに前後して、半田送り機構6が糸半田Wを所定量送るとともに、カッターユニット2で糸半田Wを切断する。これにより、所定量の半田片Whが糸半田Wから切り取られる。ここで、所定量は、半田付けを行う部材の大きさ(面積、形状等)によって決められており、一対の送りローラ61で正確に計量されている。カッターユニット4で切断された半田片Whは、自重により落下する。
【0063】
半田片Whがカッターユニット2に残る場合がある。そのため、半田付け装置Aでは、プッシャーピン23を下刃孔221に挿入して、半田片Whを確実に押し落としている。なお、プッシャーピン23が、糸半田Wを切断するごとに下刃孔221に挿入されるようにしているが、センサ等の検知装置をつけて、半田片Whが残っているときだけプッシャーピン23を下刃孔221の挿入するようにしてもよい。
【0064】
下刃孔221から落下した半田片Whは、半田供給孔422を介して半田孔51に供給される。鏝先5はヒーターユニット4からの熱で昇温しており、半田片Whは、半田孔51の溶融領域510で加熱されて溶融される。そして、溶融された半田片Whは、先端の開口512からランドLdおよび端子Ndに供給され、ランドLdと端子Ndとが接続される(半田付けされる)。
【0065】
半田孔51の大きさによっては、半田片Whが溶融して液状になると、半田孔51が半田片Whで塞がれる場合がある。このような場合、溶融した半田片Whが先端の開口512から外部に流出するまで、半田孔51が塞がれた状態が続く。半田孔51の後端の開口511からだけ不活性ガスを供給している場合、半田孔51が塞がれたときには、溶融した半田片Whの先端側には、不活性ガスが行き届かない。
【0066】
通常半田には、フラックスと呼ばれる添加剤が含まれている。熱で溶融したフラックスが空気中の酸素と結びつくと、すなわち、酸化すると、フラックスヒュームと呼ばれる異物となる。フラックスヒュームは、半田鏝の鏝先5を劣化させる原因物質である。
【0067】
本発明にかかる鏝先5では、溶融した半田片Whによって半田孔51が塞がれた場合にも、半田孔51の半田片Whよりも後端側には、ガス流入孔222、下刃孔221、半田供給孔422を介して不活性ガスが供給される。また、半田片Whよりも先端側にはガス供給孔52を介して不活性ガスが供給される。溶融した半田片Whは溶融したフラックスを含んでいるが、本発明に係る鏝先5を用いることで、溶融した半田片Whが先端の開口512から流出するまで、不活性ガスで囲まれており、酸素との接触が抑制されていている。そのため、鏝先5では、半田孔51内でのフラックスヒュームの発生が抑制されている。
【0068】
これにより、付着したフラックスヒュームを落とすための清掃が不要または頻度を減らすことができるので清掃のために半田付け作業を中止する時間を無くすまたは減らすことができる。
【0069】
また、本発明の鏝先5では、半田孔51内のフラックスヒュームの発生を抑制するので、鏝先5の交換を不要とするまたは交換頻度を減らすことができる。これにより、鏝先の消費を減らすとともに、鏝先を交換するための半田付け作業を中止する時間を無くすまたは減らすことができる。
【0070】
以上のことから、本発明にかかる鏝先5を用いることで、清掃作業および鏝先の交換を無くすまたは頻度を減らすことで、半田付け作業の作業性を高めることが可能である。また、清掃作業によって、半田孔51が削られてまたは内面にフラックスヒュームが付着することで内径が変化するのを抑制することができる。これにより、本発明にかかる半田鏝の鏝先を用いることで、長期間に渡って、精度のよい半田付けを行うことが可能である。
【0071】
(第2実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先の他の例について図面を参照して説明する。
図5は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図6は
図5に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図5、
図6に示す鏝先5Aは、ガス供給部53が異なる以外、
図3、
図4に示す鏝先5と同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先5Aの事実上、鏝先5と同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図5は、
図3と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図6は、
図4と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0072】
図5、
図6に示すように、鏝先5Aは、ガス供給部53を備えている。ガス供給部53は、ガス流出孔531と、ガス供給孔532と、バイパス配管533とを備えている。ガス流出孔531は、半田孔51から外面に貫通する貫通孔である。ガス流出孔531は、筒50の軸方向において、溶融領域510よりも後端側に設けられている。ガス供給孔532は、ガス供給孔52と同様の構成を有する貫通孔であり、筒50の軸方向において、溶融領域510よりも先端側、ここでは、先端の開口512に近接した位置に設けられている。バイパス配管533は、不活性ガスを流通可能な管体である。バイパス配管533の両端は、それぞれ、ガス流出孔531およびガス供給孔532に接続されている。
【0073】
鏝先5Aは、鏝先5と同様、ヒーターブロック42の凹部に取り付けられることで、半田供給孔422から、半田片Whとともに不活性ガスも供給されている。
図6に示すように、鏝先5Aでは、半田片Whが溶融領域510で溶融され半田孔51が閉塞された場合、図示を省略している後端の開口511から流入した不活性ガスは、ガス流出孔531に分流する。そして、バイパス配管533を通ってガス供給孔532から半田孔51の先端の開口512の近傍に流出される。溶融した半田片Whが溶融領域510よりも先端側で半田孔51を塞いでも、溶融した半田片Whの後端側および先端側に不活性ガスを供給できるため、酸素と接触するのを抑制することができる。これにより、鏝先5Aでは、半田孔51の内部でフラックスの酸化によるフラックスヒュームの発生を抑えることができる。
【0074】
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
【0075】
本発明にかかる鏝先5Aは、後端の開口から供給された不活性ガスをガス供給部53を利用して、半田孔51の先端の開口512の近傍に供給する構成である。本発明にかかる鏝先5Aを用いることで、半田付け装置Aに、鏝先に直接、不活性ガスを供給するガス配管(
図1、
図2では、ガス配管Gp2)を省略することが可能である。本発明にかかる鏝先5Aを用いることで、半田付け装置Aの構成を簡略化することが可能である。なお、以下の各実施形態で説明する半田鏝の鏝先も同様に、鏝先に直接、不活性ガスを供給するガス配管を省略した半田付け装置に用いられるものである。
【0076】
(第3実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図7は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図8は
図7に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図7、
図8に示す鏝先5Bは、ガス供給部53bがガス供給部53と異なる以外、
図5、
図6に示す鏝先5Aと同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先5Bの事実上、鏝先5Aと同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図7は、
図5と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図8は、
図6と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0077】
図7、
図8に示すように、鏝先5Bは、ガス供給部53bを備えている。ガス供給部53bは、ガス流出凹部534と、ガス供給凹部535と、バイパス路536と、蓋部材537とを備えている。
【0078】
ガス流出凹部534は、ガス流出孔531と同様に、筒50の軸方向において、溶融領域510より後端側に設けられている。ガス流出凹部534は、半田孔51から外面に貫通した貫通孔を有している。そして、貫通孔の外面側の開口には、蓋部材537が気密に装着されている。ガス供給凹部535は、ガス供給孔532と同様に、筒50の軸方向において、溶融領域510よりも先端側、ここでは、先端の開口512に近接した位置に設けられている。ガス供給凹部535は、半田孔51から外面に貫通した貫通孔を有している。そして、貫通孔の外面側の開口には、蓋部材537が気密に装着されている。
【0079】
バイパス路536は、筒50の肉厚部に形成された凹穴であり、先端側に開口を有している。バイパス路536は、ガス供給凹部535の半田孔51に面する開口と蓋部材537の間を貫通している。また、バイパス路536は、ガス流出凹部534の半田孔51に面する開口と蓋部材537の間に接続している。蓋部材537は、ガス流出凹部534およびガス供給凹部535から外部への不活性ガスの漏れを抑制するための部材である。蓋部材537はガス流出凹部534およびガス供給凹部535のそれぞれの貫通孔の外面側の開口を気密に塞ぐため、圧入されているがこれに限定されない。例えば、ねじ込み式の蓋でもよい。
【0080】
ガス供給部53bでは、図示を省略している後端の開口511から流入した不活性ガスは、ガス流出凹部534に分流する。そして、バイパス路536を通ってガス供給凹部545から半田孔51の先端の開口512の近傍に流出される。本実施形態の鏝先5Bは、筒50の外部にガスが流れる配管を形成することなく、溶融領域50の後端および先端に不活性ガスを供給することが可能である。これ以外の特徴については、第1実施形態〜第2実施形態と同じである。
【0081】
なお、本実施形態にかかる鏝先5Bでは、ガス流出凹部534およびガス供給凹部535として、貫通孔を蓋部材537で塞ぐ構成としている。これは、鏝先5Bを構成する材料および製造上の理由であり、半田孔51から外面に貫通しない凹部を形成し、その凹部を繋ぐ構成であってもよい。このとき、バイパス路536も先端に開口が形成されない構成とすることができる場合、先端に開口を形成せずにガス流出凹部534とガス供給凹部535とを連通させる構成であってもよい。
【0082】
(第4実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図9は本発明にかかる鏝先の分解斜視図である。
図10は
図9に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図9、
図10に示す鏝先5Cは、ガス供給部54がガス供給部53と異なる以外、
図5、
図6に示す鏝先5Aと同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先5Cの事実上、鏝先5Aと同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図9は、
図5と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図10は、
図6と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0083】
図9、
図10に示すように、鏝先5Cは、ガス供給部54を備えている。ガス供給部54は、小径部541と、外装管542と、ガス流出孔543と、ガス供給孔544とを備えている。小径部541は、筒50cの一部であり、筒50cの他の部分よりも外径が小さい。なお、小径部541は、筒50cの軸方向において、溶融領域510よりも後端側から先端側にかかるように形成されている。すなわち、筒50cの軸方向において、溶融領域510は小径部541に収まるように設けられている。
【0084】
外装管542は小径部541を囲む管体である。外装管542は、筒50cの小径部541の先端側および後端側と気密に接触する。これにより、外装管542は小径部541の外面を気密に覆う。ガス流出孔543は、半田孔51から小径部541の外面に貫通する貫通孔である。ガス流出孔543は、筒50cの軸方向において、溶融領域510よりも後端側に設けられている。ガス供給孔544は、半田孔51から小径部541の外面に貫通する貫通孔である。ガス供給孔544は、筒50cの軸方向において、溶融領域510よりも先端側に設けられている。
【0085】
図9、
図10に示すように、鏝先5Cには、小径部541と、外装管542と、筒50cの小径部541の先端側および後端側で隣接する部分とで外部と気密に保たれた隙間が形成される。ガス流出孔543およびガス供給孔544はこの隙間と半田孔51とを連結しており、ガス流出孔543から分流された不活性ガスは、この隙間を通ってガス供給孔544から半田孔51の先端の開口512の近傍に流入する。
【0086】
鏝先5Cでは、細かな部材の接合等を行うことなく製造することができるため、製造が簡単である。これ以外の特徴については、第1実施形態〜第3実施形態と同じである。
【0087】
鏝先5Cでは、小径部541の全周に隙間が形成されている。
図9、
図10に示す鏝先5Cでは、ガス流出孔543およびガス供給孔544を1個ずつ設けたものとしているが、周方向に複数個ずつ設けられていてもよい。
【0088】
(第5実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図11は本発明にかかる鏝先の分解斜視図である。
図12は
図11に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図11、
図12に示す鏝先5Dは、ガス供給部55がガス供給部53と異なる以外、
図5、
図6に示す鏝先5Aと同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先5Dの事実上、鏝先5Aと同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図11は、
図5と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図12は、
図6と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0089】
図11、
図12に示すように、鏝先5Dは、ガス供給部55を備えている。ガス供給部55は、スリット551と、蓋部材552とを備えている。
図12に示すように、スリット551は、半田孔51から筒50dの外面に貫通している。そして、スリット551は、溶融領域510のよりも後端側から先端側に軸方向に延びる長孔である。換言すると、筒50dの軸方向において、スリット551が形成されている部分と重なる位置に溶融領域510が形成されている。
【0090】
蓋部材552は、スリット551の筒50dの外面側の開口を気密に塞ぐ。
図12に示すように、蓋部材552はスリット551の筒50dの径方向の一部を塞ぐように取り付けられる。蓋部材552の半田孔51方向への突出量は、スリット551の半径方向長さよりも短く設定されている。これにより、蓋部材552をスリット551に取り付けると、スリット551が半田孔51の内周面から半径方向外方向に奥まった溝となり、このスリット551による溝が、半田孔51の溶融領域510と並列なバイパス流路としての役割を果たす。つまり、ガス供給部55では、図示を省略している後端の開口511から流入した不活性ガスは、溶融領域510の後端側でスリット551による溝に分流し、半田孔51の先端の開口512の近傍に流出される。
【0091】
スリット551の幅について説明する。溶融した半田は表面張力が高い液体であるため、幅が狭い隙間には流入しない、あるいは、流入しにくい。そこで、スリット551の幅は、使用される半田の溶融時の表面張力に基づいて、決定されており、溶融した半田が流入しない幅を有している。
【0092】
蓋部材552のスリット551への取り付けは、スリット551を隔てて対向するように形成された貫通孔553と係止穴554との間に、蓋部材552に形成されて貫通孔5521が同一軸上で重なるようにスリット551に対して蓋部材552を嵌め入れ、そしてピンPを貫通孔553から差し込み係止穴554に至るまで押し入れることによって行う。ピンPによる蓋部材の取り付けは複数箇所であっても構わない。また、接着剤等を併用しても構わない。もちろん、蓋部材552のスリット551への取り付けは、前記取り付け方法に限定されるものではなく、ネジ止めやバンド止めなど従来公知の方法を用いることができるが、蓋部材552やスリット551,半田孔51内のクリーニングが可能になる点で蓋部材552を着脱可能に取り付ける方法が望ましい。
【0093】
このように、鏝先5Dは、スリット551と、スリット551を覆う蓋部材552を設けるだけであるため、構造が簡単であり、製造にかかるコストを低減することが可能である。これ以外の特徴については、第1実施形態〜第3実施形態と同じである。
【0094】
また、蓋部材552を透明材料で構成すれば、半田孔51内における半田片Whの溶融状態や内周壁の汚れなどを目視やカメラなどで外部から観察できる。加えて、不活性ガスがスリット551による溝内を常に流れているので、半田片Whの溶融の際にフラックスヒュームによる蓋部材552の内側面の曇りの発生が抑制され、半田片Whの溶融してゆく過程も含めて外部から観察できる。蓋部材552に使用できる透明材料としては、耐熱性(温度300℃以上が好ましい)を有する材料であれば特に限定はなく、例えば耐熱ガラス、透明マイカ、透明セラミックス(YAGセラミックス)、単結晶サファイアなどが挙げられる。
【0095】
(第6実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図13は本発明にかかる鏝先の分解斜視図である。
図14は
図13に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図13、
図14に示す鏝先5Eは、ガス供給部56がガス供給部53と異なる以外、
図5、
図6に示す鏝先5Aと同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先5Eの事実上、鏝先5Aと同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図13は、
図5と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図14は、
図6と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0096】
図13、
図14に示すように、鏝先5Eは、ガス供給部56を備えている。ガス供給部56は、筒50eの先端部に形成された円弧筒状部501の平面部501aと、スリット561と、蓋部材562とを備えている。
図14に示すように、スリット561は、半田孔51から円弧筒状部501の平面部501aの外面に貫通している。そして、スリット561は、溶融領域510のよりも後端側から先端側に軸方向に延びる長孔である。換言すると、筒50eの軸方向において、スリット561が形成されている部分と重なる位置に溶融領域510が形成されている。
【0097】
蓋部材562は、円弧筒状部501の平面部501aとほぼ同じ平面形状を有し、スリット561の平面部501aの外面側の開口を気密に塞ぐ。
図14に示すように、蓋部材562は円弧筒状部501の平面部501aに密着するように取り付けられる。スリット561が、半田孔51の溶融領域510と並列なバイパス流路としての役割を果たす。つまり、ガス供給部56では、図示を省略している後端の開口511から流入した不活性ガスは、溶融領域510の後端側でスリット561に分流し、半田孔51の先端の開口512の近傍に流出される。
【0098】
スリット561の幅については前述の
図11及び
図12に示した実施形態と同様に、使用される半田の溶融時の表面張力に基づいて決定され、溶融した半田が流入しない幅を有している。
【0099】
蓋部材562の円弧筒状部501の平面部501aへの取り付けは、平面部501aの対角線状に形成された係止穴502,503に、蓋部材562に対角線状に形成された貫通孔5621,5622を重ね合わせ、ピンPを貫通孔5621,5622にそれぞれ差し入れ係止穴502,503に押し入れることにより行う。蓋部材562の平面部501aへの取り付けは、前記取り付け方法に限定されるものではなく、接着剤による貼着、ネジ止め、バンド止めなど従来公知の方法を用いることができる。
【0100】
このように、鏝先5Eは、円弧筒状部501の平面部501aに蓋部材562を取り付けるだけであるため、構造が簡単であり、製造にかかるコストを低減することが可能である。これ以外の特徴については、第1実施形態〜第3実施形態と同じである。
【0101】
また、
図11及び
図12に示した実施形態と同様に、蓋部材562を透明材料で構成すれば、半田孔51内における半田片Whの溶融状態や内周壁の汚れなどを目視やカメラなどで外部から観察できる。そしてまた、不活性ガスがスリット561内を常に流れているので、半田片Whの溶融の際にフラックスヒュームによる蓋部材562の内側面の曇りの発生が抑制され、半田片Whの溶融してゆく過程も含めて外部から観察できる。蓋部材552に使用できる透明材料は、前記実施形態の例示材料がここでも使用できる。
【0102】
(第7実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図15は本発明にかかる鏝先の平面図である。
図16は
図15に示す鏝先をC2−C2線で切断した断面図である。
図17は
図15に示す鏝先をC3−C3線で切断した断面図である。
【0103】
図15、
図16、
図17に示す鏝先7Aは、筒70を有している。筒70は鏝先5の筒50と同様の構成を有しており、中心部分に軸方向に延びる半田孔71が設けられている。
【0104】
鏝先7Aは、鏝先5と同様、ヒーターブロック42の凹部421に取り付けられるものであり、ヒーターブロック42から熱を受ける。そして、後端の開口(不図示)から供給される半田片Whを溶融領域710で溶融し、溶融した半田片Whを先端の開口712から外部に供給する。
【0105】
半田孔71は、後端の開口(不図示)から軸方向に延びる第1孔部72と、第1孔部71の先端側と連通する第2孔部73とを備えている。第1孔部72は、先端側の端部の近傍に供給された半田片Whを溶融する溶融領域710を備えている。溶融領域710は筒50の溶融領域710と同様の構成を有しており、先端側が細いテーパ状に形成されている。第1孔部72は、半田片Whの軸と直交する面で切断した断面の断面形状よりも大きな円形断面を有する円柱状である。第1孔部72の断面をこのように半田片Whの断面よりも大きくすることで、半田片Whが円滑に、すなわち、途中で止まることなく、溶融領域710まで落下する。
【0106】
溶融した半田は、外部からの圧力等が付与されていないとき、球形状になる。本発明にかかる半田鏝の鏝先7Aでは、溶融した半田片Whが半田孔71を流下するものであり、半田孔71が鉛直方向に延びるように構成されている。そのため、半田孔71の溶融領域710で溶融した半田片Whは、球形を鉛直方向に伸ばした形状となる。そして、溶融半田は、表面張力が高いため、狭い部分に流入しにくい。
【0107】
このような溶融した半田の性質を利用して、第2孔部73は、溶融した半田片Whの軸方向の投影面と同じ断面形状を有する第1領域731と、第1領域731と径方向に連設された第2領域732とを有している。
【0108】
本実施形態の鏝先7Aの第2孔部73では、第1領域731の断面形状が楕円(円形)であり、第2孔部73の断面形状を第1領域731よりも大きい長方形状としている。そして、第2孔部73の断面の長手方向の長さは、第1領域731の断面の長径よりも長く形成されている。第2孔部73の長方形状の断面の第1領域731の外側の部分が第2領域732である。
【0109】
鏝先7Aが正確に取り付けられ、半田付け装置Aが安定して動作しているときは、半田孔71が鉛直方向に延びるものであり、半田片Whは第1孔部72の溶融領域710のテーパに誘導されるため、半田孔71の中心を流下する。このとき、溶融した半田片Whには、重力と表面張力が作用しているので、第2孔部73内において、第1領域731内からずれることなく流下する。
【0110】
溶融領域710で溶融された半田片Whは、第2孔部73に流入するとき、第1領域731を先端の開口712まで流下する。すなわち、第2孔部73の第1領域731は溶融した半田片Whで閉塞される。このとき、溶融した半田片Whは第2領域732に流入しないため、後端の開口から供給された不活性ガスは、溶融した半田片Whが第2孔部73の第1領域731を閉塞しても、第2領域732を通って先端の開口712の近傍に流入する。
【0111】
このように、第2孔部73が、半田片Whを溶融したときに流下する領域である第1領域731と、第1領域731の径方向外側に設けられ、半田片Whが流入しない第2領域732を形成することで、半田片Whが溶融されたときでも、不活性ガスを先端の開口712に流入させることができる。これにより、鏝先7A内において、半田片Whが酸素に触れるのを抑制し、フラックスヒュームの発生を抑えることができる。
【0112】
第2孔部73について図面を用いてさらに詳しく説明する。
図18は第2孔部の他の例の拡大図である。
図18に示す第2孔部73の断面は、第1領域731の断面である楕円が内接する長方形状としている。そして、第1領域731の断面と接する第2孔部73の断面のうち、隣合う接点における接線を、線733、線734とする。
【0113】
溶融した半田は、表面張力が大きい、すなわち、接触角が大きくなっている。そのため、第2孔部73と接触する面のうち、隣合う面のなす内角が接触角よりも小さいと、溶融した半田は、それ以上、角部側に移動できない。つまり、第2孔部73の断面と第1領域731の断面との接触する点のうち、隣合う接点における接線である、線733、線734がなす角度θが、溶融した半田の接触角度よりも小さい場合、溶融した半田は、その接触点よりも先に進入しない。
【0114】
第2孔部73の断面形状を、第1領域731の断面と2点以上で接触可能な構成であり、隣合う2点から第1領域731の断面の接線がなす角度が溶融した半田の接触角度よりも小さい角度を有する形状とすることで、溶融した半田片Whの流入が抑制される第2領域732を備えた第2孔部73を形成することができる。
【0115】
なお、本実施形態では、第2孔部73の断面形状として長方形状を示しているが、これに限定されるものではなく、上述のような条件を満たす形状(例えば、三角形、ひし形、星形等)を広く採用することが可能である。
【0116】
以上のように、本実施形態の鏝先7Aは、半田孔71の断面形状を変更することで、溶融した半田片Whが、半田孔71の途中に留まる場合でも、不活性ガスを溶融領域710よりも先端の開口712の近傍に送ることができる。これにより、本発明の鏝先7Aは、製造が簡単であるとともに、長期間に渡って、半田孔71内でのフラックスヒュームの発生及び付着を抑制できる。
【0117】
(第8実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図19は本発明にかかる鏝先の平面図である。
図20は
図19に示す鏝先をC4−C4線で切断した断面図である。
図21は
図19に示す鏝先をC5−C5線で切断した断面図である。本実施形態にかかる鏝先7Bは、溶融領域710の構成が異なる以外、鏝先7Aと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0118】
図19、
図20、
図21に示すように、鏝先7Bは、半田孔71の第1孔部72の先端側に設けられた溶融領域710に段が形成されている。このように段が設けられていることで、落下した半田片Whが一旦、段で止まるため、半田片Whの加熱を効果的に行うことが可能である。
【0119】
これ以外の特徴については、第7実施形態と同じである。
【0120】
(第9実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図22は本発明にかかる鏝先の平面図である。
図23は
図22に示す鏝先をC6−C6線で切断した断面図である。
図24は
図22に示す鏝先をC7−C7線で切断した断面図である。本実施形態にかかる鏝先7Cは、第1孔部72cの構成が異なる以外、鏝先7Aと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0121】
鏝先7Cは、第1孔部72cと、第2孔部73とを備えている。第2孔部73は、第1領域731と、第2領域732とを有している。第2孔部73の軸と直交する面で切断した断面は、第1孔部72cの円形の断面からはみ出る大きさを有して形成されている。そして、第1孔部72cは、円形断面の第1領域721と、第1領域721の断面から突出した断面を有する第2領域722とを組み合わせた形状を有している。すなわち、第1孔部72cの第2領域722と、第2孔部73の第2領域732とが連通するように設けられている。
【0122】
換言すると、鏝先7Cには、筒70の軸方向に第2孔部73と同じ断面を有する孔が貫通しているとともに、溶融領域710よりも後端側には、半田片Whの断面よりも大きな円形断面を有する孔が、貫通している孔と一部が重なって形成されている。
【0123】
このように形成されていることで、第1孔部72cの第2領域722と、第2孔部73の第2領域732とが連通される。これにより、溶融領域710で溶融された半田片Whが、半田孔71の途中に留まる場合でも、不活性ガスを溶融領域710よりも先端の開口712の近傍に送ることができる。これにより、本実施形態の鏝先7Cは構造が簡単であるとともに、フラックスヒュームの発生を抑制できる。
【0124】
(第10実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図25は本発明にかかる鏝先の平面図である。
図26は
図25に示す鏝先をC8−C8線で切断した断面図である。
図27は
図25に示す鏝先をC9−C9線で切断した断面図である。本実施形態にかかる鏝先7Dは、溶融領域710の構成が異なる以外、鏝先7Cと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0125】
図25、
図26、
図27に示すように、鏝先7Dは、半田孔71の第1孔部72cの第1領域721の先端側に設けられた溶融領域710に段が形成されている。このように段が設けられていることで、落下した半田片Whが一旦、段で止まるため、半田片Whの加熱を効果的に行うことが可能である。
【0126】
これ以外の特徴については、第9実施形態と同じである。
【0127】
(第11実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図28は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図29は
図28に示す鏝先をC10−C10線で切断した断面図である。
図30は、
図28に示す鏝先をC11−C11線で切断した断面図である。本実施形態にかかる鏝先7Eは、第2孔部73eの形状が異なる以外、鏝先7Cと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には同じ符号を付して説明するとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0128】
図28、
図29、
図30に示すように、鏝先7Eの筒70eは、第2孔部73eを備えている。第2孔部73eは、溶融領域710の先端側に第1領域731、第2領域732に加えて、第1孔部72cの第1領域721と同じ外径の円形断面を重ねた断面形状となっている。第2孔部73eでは、円筒形状を軸と平行な面で切断した形状の第3領域733を備えている。そして、第3領域733は、溶融領域710の先端側の断面が大きいテーパ状に形成されている。
【0129】
このような構成とすることで、溶融領域710の先端側で半田孔71eが広くなるため、溶融された半田片Whを素早く先端の開口712に流下させることができる。これ以外の特徴については、第9実施形態と同じである。
【0130】
(第12実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図31は本発明にかかる鏝先を軸を含む平面で切断した断面図である。
図32は本発明にかかる鏝先を軸を含み
図31の切断面と直交する面で切断した断面図である。本実施形態にかかる鏝先7Fは、溶融領域710の構成が異なる以外、鏝先7Eと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0131】
図31、
図32に示すように、鏝先7Fは、半田孔71fの第1孔部72cの第1領域721の先端側に設けられた溶融領域710に段が形成されている。また、溶融領域710と第2孔部73eの間に段が形成されている。このように段が設けられていることで、落下した半田片Whが一旦、段で止まるため、半田片Whの加熱を効果的に行うことが可能である。
【0132】
これ以外の特徴については、第11実施形態と同じである。
【0133】
(第13実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図33は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図34は
図33に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。また、
図33は、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図34は、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0134】
図33、
図34に示す鏝先8は、筒80を有している。筒80は鏝先5の筒50と同様の構成を有しており、中心部分に軸方向に延びる半田孔81と、半田孔81の内面に形成された溝82とを有している。
【0135】
鏝先8は、鏝先5と同様、ヒーターブロック42の凹部421に取り付けられるものであり、ヒーターブロック42から熱を受ける。そして、後端の開口(不図示)から供給される半田片Whを溶融領域810で溶融し、溶融した半田片Whを先端の開口812から外部に供給する。
【0136】
半田孔81は、筒80の中心に軸方向に貫通して設けられている。半田孔81は、中間部分に溶融領域810を備えている。溝82は半田孔81と同様に、筒80を軸方向に貫通している。これにより、溝82は、半田孔81の溶融領域810と並列なバイパス流路としての役割を果たす。つまり、図示を省略している後端の開口から流入した不活性ガスは、溶融領域810の後端側で溝82に分流し、半田孔81の先端の開口812の近傍に流出される。
【0137】
溝82の幅について説明する。溶融した半田は表面張力が高い液体であるため、幅が狭い隙間には流入しない、あるいは、流入しにくい。そこで、スリットの幅は、使用される半田の溶融時の表面張力に基づいて、決定されており、溶融した半田が流入しない幅を有している。
【0138】
これにより、溶融領域810で溶融された半田片Whが、半田孔81の途中に留まる場合でも、不活性ガスを溶融領域810よりも先端の開口812の近傍に送ることができる。溶融した半田片Whが酸素と接触するのを抑制できる。これにより、本実施形態の鏝先7Cは構造が簡単であるとともに、フラックスヒュームの発生を抑制できる。
【0139】
また、鏝先8は、半田孔81に沿って形成された溝82を設けるだけの構成であるため、既存の鏝先に加工を施して製造することも可能である。
【0140】
なお、本実施形態の鏝先8は、周方向に1個の溝82が設けられたものを例に説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、周方向に複数個設けられる構成であってもよい。さらには、筒80の軸と平行でなくてもよい。例えば、半田孔81の内面をらせん状に延びる構成であってもよい。
【0141】
(第14実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図35は本発明にかかる鏝先の平面図である。
図36は
図35に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。
図36は、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。本実施形態の鏝先8Aは、筒80aの溝82aが異なる以外は、鏝先8と同じ構成を有している。そのため、鏝先8と実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0142】
図35、
図36に示すように、鏝先8Aは溝82aを備えている。溝82aは、半田孔81の中心軸を挟んで反対の位置となるように、合計2個形成されている。鏝先8Aでは、半田孔81の内径が変化しない構成となっており、半田片Whは、半田孔81を通過するときに加熱され溶融される。
【0143】
このような構成の場合、半田片Whの溶融が始まる部分から一定の距離に到達するまで、半田片Whは完全に溶融されない。そのため、溝82aは筒80aの先端から、後端に向かって所定の深さを有する構成となっている。なお、ここで所定の深さとしては、溶融された半田片Whが溶融して半田孔81を塞ぐ位置の半田孔81の先端の開口812からの深さよりも深い。このような深さの溝82aを有することで、溶融した半田片Whが半田孔81を塞いでも、溶融した半田片Whが塞いでいる半田孔81よりも後端側に溝82aが到達しているため、溝82aを介して不活性ガスを半田孔81に先端の開口812の近傍に供給することが可能である。
【0144】
また、鏝8Aは、後端側まで溝82aが到達していないので、ヒーターブロック42から熱が伝達されたときにも、熱の歪みによる応力集中が発生しにくく、温度変化による劣化または破損が発生しにくい。
【0145】
これ以外の特徴については、第13実施形態と同じである。
【0146】
(第15実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図37は本発明にかかる鏝先の斜視図である。
図38は
図37に示す鏝先の先端側から見た部分斜視図である。
図39は
図37に示す鏝先の軸に沿って切断した断面図である。
図39は、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。本実施形態の鏝先8Bは、筒80bの溝82bが異なる以外は、鏝先8と同じ構成を有している。そのため、鏝先8と実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0147】
図37、
図38、
図39に示すように、鏝先8Bは、筒80bを備えている。筒80b中心に形成され軸方向に貫通する半田孔81bと、半田孔81bの内面に設けられた溝82bを備えている。また、筒80bの先端には、筒80bよりも断面が小さい接触部83が形成されている。接触部83には、溝82bと軸方向に連通するスリット84が設けられている。
【0148】
鏝先8Bは、半田付けを行うとき、接触部83がランドLd等の半田付けの対象に接触する。鏝先8Bでは、筒80bよりも断面積が小さい接触部83がランドLdと接触するため、基板Bd上のランドLdの近傍に電子部品が配置される場合であっても、鏝先8Bを電子部品に接触させることなく、ランドLdおよび端子Ndのプレヒートを行うことができる。
【0149】
また、鏝先8Bでは、接触部83に形成されたスリット84から基板Bdの周囲に向かって不活性ガスを噴き出す。これにより、基板Bd(ランドLd)に供給された、溶融した半田片Whの周囲に不活性ガスを供給するため、ランドLdに供給された溶融された半田片Whに酸素が接触するのを抑制することができる。
【0150】
(第16実施形態)
本発明にかかる半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図40は本発明にかかる鏝先の先端側から見た部分斜視図である。
図41は、
図40に示す鏝先の軸に沿って切断した断面図である。
図40は、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。本実施形態の鏝先8Cは、筒80cの先端に形成される接触部83cの形状が異なる以外は、鏝先8Bと同じ構成を有している。そのため、鏝先8Bと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0151】
図40及び
図41に示すように、鏝先8Cは、筒80cを備えている。筒80c中心に形成され軸方向に貫通する半田孔81cと、半田孔81cの内面に設けられた溝82cを備えている。また、筒80cの先端には、筒80cよりも断面が小さい、より詳細には、半円筒形状の接触部83cが形成されている。接触部83cには、溝82cと軸方向に連通するスリット84cが設けられている。
【0152】
鏝先8Cは、半田付けを行うとき、接触部83cがランドLd等の半田付けの対象に接触する。鏝先8Cでは、半円筒形状の接触部83cがランドLdと接触するため、基板Bd上のランドLdの近傍に電子部品が配置される場合であっても、鏝先8Bを電子部品に接触させることなく、ランドLdおよび端子Ndのプレヒートを行うことができる。また鏝先8Cでは、
図35〜
図37に示した鏝先8Bに比べて接触部83cにおけるランドLdとの接触面積が大きいので、ランドLdのプレヒートがより迅速に行える。
【0153】
また、鏝先8Cでは、前述の鏝先8Bと同様に、接触部83cに形成されたスリット84c及び溝82cから基板Bdの周囲に向かって不活性ガスを噴き出す。これにより、基板Bd(ランドLd)に供給された、溶融した半田片Whの周囲に不活性ガスを供給するため、ランドLdに供給された溶融された半田片Whに酸素が接触するのを抑制することができる。
【0154】
(その他)
(第1例)
半田鏝の鏝先の他の例について図面を参照して説明する。
図42は鏝先の分解斜視図である。
図43は
図42に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図42、
図43に示す鏝先9Aは、ガス管Gp2及びガス供給孔52を有していない以外、
図3、
図4に示す鏝先5と同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先9Aの事実上、鏝先5と同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図42は、
図3と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図43は、
図4と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0155】
図42、
図43に示すように、鏝先9Aの筒90aにはスリット91が形成されている。スリット91は、半田孔51から筒90aの外面に貫通しており、溶融領域510よりも後端側から先端側に軸方向に延びている。換言すると、筒90aの軸方向において、スリット91が形成されている部分と重なる位置に溶融領域510が形成されている。
【0156】
一方、蓋部材92はスリット91の空間と同一形状を有し、
図43に示すように、スリット91の全体を塞ぐように取り付けられる。これにより、蓋部材92の半田孔51に臨む面は、半田孔51の内周面と面一となる。
【0157】
蓋部材92のスリット91への取り付けは、スリット91を隔てて対向するように形成された貫通孔93と係止穴94との間に、蓋部材92に形成された貫通孔921が同一軸上で重なるようにスリット91に対して蓋部材92を嵌め入れ、そしてピンPを貫通孔93から差し込み係止穴94に至るまで押し入れることによって行う。ピンPによる蓋部材92の取り付けは複数箇所であっても構わない。また、接着剤等を併用しても構わない。もちろん、蓋部材92のスリット91への取り付けは、前記取り付け方法に限定されるものではなく、ネジ止めやバンド止めなど従来公知の方法を用いることができるが、蓋部材92やスリット91,半田孔51内のクリーニングが可能になる点で蓋部材92を着脱可能に取り付ける方法が望ましい。
【0158】
また、蓋部材92は透明材料で構成されている。これにより、半田孔51内における半田片Whの溶融状態や内周壁の汚れなどを目視やカメラなどで外部から観察できる。蓋部材92に使用できる透明材料としては、耐熱性(温度300℃以上が好ましい)を有する材料であれば特に限定はなく、例えば耐熱ガラス、透明マイカ、透明セラミックス(YAGセラミックス)、単結晶サファイアなどが挙げられる。
【0159】
(第2例)
半田鏝の鏝先のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図44は鏝先の分解斜視図である。
図45は
図44に示す鏝先を中心軸に沿う面で切断した断面図である。なお、
図44、
図45に示す鏝先9Bは、ガス管Gp2及びガス供給孔52を有していない以外、
図3、
図4に示す鏝先5と同じ構成を有している。そのため、本実施形態にかかる鏝先9Bの事実上、鏝先5と同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。また、
図44は、
図3と同様、ヒーターブロック42から突出した部分を示している。また、
図45は、
図4と同様、基板Bd、ランドLd、電子部品Epおよび端子Ndも表示している。
【0160】
図44、
図45に示すように、鏝先9Bは、筒90bの先端部に円弧筒状部901が形成され、その平面部901aに鏝先9Bの中心軸と平行な方向に等間隔で複数の貫通孔95が形成されている。
図45に示すように、貫通孔95は、半田孔51から円弧筒状部901の平面部901aの外面に貫通している。そして、貫通孔95の形成されている領域は、溶融領域510のよりも後端側から先端側までの領域である。
【0161】
蓋部材96は、円弧筒状部901の平面部901aとほぼ同じ平面形状を有し、複数の貫通孔95の平面部501aの外面側の開口を気密に塞ぐ。
図45に示すように、蓋部材96は円弧筒状部901の平面部901aに密着するように取り付けられる。
【0162】
蓋部材96の円弧筒状部901の平面部901aへの取り付けは、平面部901aの対角線状に形成された係止穴97,98に、蓋部材96に対角線状に形成された貫通孔961,962を重ね合わせ、ピンPを貫通孔961,962にそれぞれ差し入れ係止穴97,98に押し入れることにより行う。なお、蓋部材96の平面部901aへの取り付けは、前記取り付け方法に限定されるものではなく、接着剤による貼着、ネジ止め、バンド止めなど従来公知の方法を用いることができる。
【0163】
また、
図42及び
図43に示した実施形態と同様に、蓋部材96は透明材料で構成されているので、半田孔51内における半田片Whの溶融状態や内周壁の汚れなどを目視やカメラなどで外部から観察できる。蓋部材96に使用できる透明材料は、前記の第1例の例示材料がここでも使用できる。
【0164】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。例えば、本発明の半田鏝の鏝先は、円柱状の素材から中央に穴加工して製造するのが一般的であるが、中心軸で2つに分割した形状のものにそれぞれ加工を施した後、合体させて円柱状にすることも可能である。すなわち、
図22のC6−C6線あるいはC7−C7線で分割した形状のものに穴や溝加工を行った後、合体させて円柱状とし、その外周を固定するようにして鏝先を製造する。このような鏝先の製造方法によれば溝部の加工が容易であるばかりでなく、2つに分解して内面をブラシ等で容易にクリーニングすることができる。