特許第6703792号(P6703792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703792内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703792
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/14 20060101AFI20200525BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20200525BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20200525BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20200525BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F02D41/14
   F02D45/00 345
   F02D45/00 368A
   F02D15/02 Z
   F02D43/00 301B
   F02D43/00 301S
   F02D43/00 301H
   F02D41/04
   F02D45/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-519740(P2017-519740)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公表番号】特表2017-520723(P2017-520723A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】CN2014000624
(87)【国際公開番号】WO2015196315
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2017年6月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516388252
【氏名又は名称】ヤン、ゾンリー
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ゾンリー
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−500481(JP,A)
【文献】 特開2004−028022(JP,A)
【文献】 特開2002−188468(JP,A)
【文献】 特開2004−360552(JP,A)
【文献】 特開2010−084618(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/205809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D41/00−45/00
F02D13/00−28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの吸気容積を第一吸気容積と第二吸気容積とに分けて、第一吸気容積に基づき圧縮比を設計し、該設計圧縮比は低出力モード下の内燃機関の圧縮比であり、該第一吸気容積は低出力モード下の吸気容積であり、該第二吸気容積は高出力モード下の吸気容積であり、絞り弁を開弁し、吸気容積が第一吸気容積に達する、ステップ1と、
絞り弁の開度を大きくして吸気量が増加し、第二吸気容積が吸気し、前記第二吸気容積が前記第一吸気容積より大きく、前記圧縮比が吸気容積の増加に伴い上がり、前記混合気の圧縮密度が圧縮比の上昇に伴い上がり、前記空燃比が混合気の圧縮密度の上昇に伴い上がる、ステップ2と、
エレクトロニックコントロールユニットがノッキングセンサからフィードバックされた爆轟信号に応じて点火時期をリアルタイムに補正し、油噴射量をリアルタイムに制御することで希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度を確保する、ステップ3と、を含む、内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【請求項2】
前記内燃機関は4ストローク内燃機関とし、前記4ストローク内燃機関の圧縮比の可変範囲が10:1−26.7:1、空燃比の可変範囲が15:1−32:1であることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【請求項3】
前記内燃機関は4ストローク内燃機関とし、前記4ストローク内燃機関の圧縮比の可変範囲が14:1−40:1、空燃比の可変範囲が18:1−50:1であることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【請求項4】
前記内燃機関は4ストローク内燃機関とし、前記4ストローク内燃機関の圧縮比の可変範囲が20:1−48:1、空燃比の可変範囲が16:1−60:1であることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【請求項5】
前記内燃機関は2ストローク内燃機関とし、前記2ストローク内燃機関の圧縮比の可変範囲が25:1−60:1、空燃比の可変範囲が30:1−70:1であることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【請求項6】
酸素センサが取得した排出ガス中の酸素含有量に応じて 油噴射パルス幅を変更し、油噴出量を変更することなく、ノッキングセンサのノッキング信号に応じて油噴射パルス幅を調整することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関、特に内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に経済性の向上が求められ、内燃機関排出ガス規制がより厳しくなるに伴い、内燃機関の設計及び製造において、燃費及び排出ガス低減性能の向上が強く求められている。
従来の内燃機関では、燃焼温度を高めることにより燃焼圧力を上げるものが主流となっており、しかしながら、燃焼温度が高いほど、排出ガスにより持ち去られる熱エネルギーが多くなる。従来の内燃機関では、燃焼温度が2200−2500℃と高く、排気温度も1000−1200℃と高いため、利用されなかったガスが必然的に炎の形で排出され、これに伴い大量の熱エネルギーが持ち去れる。これにより、従来の内燃機関の熱効率が30%程度にとどまり、燃焼熱の70%が仕事をすることなく直接大気へ排出される。
中国特許CN200580008399.7は超膨張仕事を実現する内燃機関を開示し、超膨張仕事による膨張容積の増加は、排気圧を下げるすることができるが、排気温度が更に下がることはできず、その根本的原因としては、従来の内燃機関において燃焼温度が高いという固有の欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法を提供することにより、燃焼温度を下げ、燃焼圧力を高め、燃焼熱の利用率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法であって、前記方法は
シリンダの吸気容積を第一吸気容積と第二吸気容積とに分けて、第一吸気容積に基づき圧縮比を設計し、絞り弁を開弁し、吸気容積が第一吸気容積に達する、ステップ1と、
絞り弁の開度を大きくして吸気量が増加し、第二吸気容積が吸気し、第二吸気容積が第一吸気容積を超え、前記圧縮比が吸気容積の増加に伴い上がり、前記混合気の圧縮密度が圧縮比の上昇に伴い上がり、前記空燃比が混合気の圧縮密度の上昇に伴い下がる、ステップ2と、
エレクトロニックコントロールユニットがノッキングセンサからフィードバックされた爆轟信号に応じて点火時期をリアルタイムに補正し、油噴射量をリアルタイムに制御することで希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度を確保する、ステップ3と、を含む。
好ましくは、前記設計圧縮比は内燃機関の低出力モード下の圧縮比、前記第一吸気容積は内燃機関の低出力モード下の吸気容積、前記第二吸気容積は内燃機関の高出力モード下の吸気容積とする。
好ましくは、前記第二吸気容積が前記第一吸気容積より大きい。
好ましくは、前記内燃機関は4ストローク機関とし、前記4ストローク機関の圧縮比の可変範囲は10:1−26.7:1、空燃比の可変範囲は15:1−32:1とする。
好ましくは、前記内燃機関は4ストローク機関とし、前記4ストローク機関の圧縮比の可変範囲は14:1−40:1、空燃比の可変範囲は18:1−50:1とする。
好ましくは、前記内燃機関は4ストローク機関とし、前記4ストローク機関の圧縮比の可変範囲は20:1−48:1、空燃比の可変範囲は16:1−60:1とする。
好ましくは、前記内燃機関は2ストローク機関とし、前記2ストローク機関の圧縮比の可変範囲は25:1−60:1、空燃比の可変範囲は30:1−70:1とする。
好ましくは、前記内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法において、酸素センサの閉ループ制御を取り除き、ノッキングセンサのノッキング信号に応じて油噴射パルス幅を調整する。
本発明の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法は、シリンダの吸気容積を第一吸気容積と第一吸気容積とに分けて、第一吸気容積に応じて圧縮比を設計し、第二吸気容積が第一吸気容積を超え、燃焼室容積が変わらないため、圧縮比が上がり、混合気の圧縮密度が上がり、空燃比が下がり、排気温度が従来の内燃機関の1200℃から180−300℃まで下がり、内燃機関の熱効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1は、本発明の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現構造の模式図である。
図2は、従来の理論空燃比での燃料分子密度の模式図である。
図3は、希薄混合気燃料での分子密度の模式図である。
図4は、本発明の高圧縮密度の希薄混合気燃料での分子密度の模式図である。
図5は、本発明の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の実施例に係る技術的解決手段及び利点をより明瞭にすべく、以下では、本発明の実施例における図面を参照し、本発明の実施例における技術的解決手段について明白、且つ完全的に説明する。説明する実施例は、本発明の実施例のすべてではなく、その一部でしかないことは自明である。当業者が本発明の実施例に基づき、進歩性を要することなく獲得した他の実施例は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1に示すように、内燃機関はシリンダ1、ピストン2を含み、そのうちシリンダ1は行程容積Vと燃焼室容積V1とを含み、行程容積Vは低出力モード下の吸気容積V2と高出力モード下の吸気容積V3とを含み、高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2より小さい。
従来の内燃機関において、シリンダの行程容積Vに基づき圧縮比(V:V1)を設計し、従来の火花点火内燃機関では、低出力モード下の実吸気容積が極めて小さく、実圧縮比が低く、熱効率が極めて低く、高出力モード下の吸気容積が大きく、実圧縮比が高く、熱効率が高く、従来の速度型内燃機関では、低出力モード下の吸気容積が大きく、圧縮仕事の消費が大きく、始動させにくい。自然吸気内燃機関の充填効率が0.8程度にとどまり、設計圧縮比に達することができない。これに鑑みて、いかにして0.8の充填効率でも設計圧縮比に達することができるが課題になる。
本発明は、0.8の充填効率に基づき圧縮比を設計し(該シリンダの容積を0.8とする)、充填効率が0.8に達すると、設計吸気容積、即ち設計圧縮比に達するとみなす。シリンダの充填効率が0.8を超え、0.9、1.0、1.1又は更にそれ以上になる場合、0.8の充填効率に基づき圧縮比を設計したため、充填効率が0.8以上になると吸気容積を超えるとみなし、即ち設計圧縮比を超えることに相当し、これにより可変圧縮比が実現するとする。しかし、充填効率が0.8以上になることはできないため、この仮説は実現に至らずにいた。
とはいえ、上記仮設は、0.8の充填効率に基づき圧縮比を設計することができる以上、それと同様に、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、該シリンダの容積をV2とし、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2に達すると、設計吸気容積に達するとみなし、設計圧縮比に達することに相当するという可変圧縮比を実現するという逆の方向性の解決手段を提供している。
本発明に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法のカギとなることは、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比(V2:V1)を設計することである。これにより、シリンダの容積が低出力モード下の吸気容積V2に達すると、設計吸気容積に達するとみなし、設計圧縮比に達することに相当し、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、設計吸気容積を超えるとみなし、設計圧縮を超えることに相当する。
本発明の低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計する方法の利点としては、
低出力モード下で、火花点火内燃機関及び速度型内燃機関は低出力モード下の吸気容積がV2に達すると、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計するため設計吸気容積に達するとみなし、設計圧縮比に達することに相当し、これにより低出力モード下で比較的高い圧縮比を得ることができ、低出力モード下の圧縮仕事が減少し、始動させやすい。
高出力モード下で、火花点火内燃機関及び速度型内燃機関の高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超え、燃焼容積V1が変わらないため吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、設計吸気容積を超えるとみなし、設計圧縮比を超えることに相当し、圧縮比が吸気容積の持続的増加に伴い上がり、これにより可変圧縮比が実現する。
本発明の技術的解決手段により可変圧縮比が実現し、希薄混合気の燃焼速度が高められるが、燃焼速度の向上により、爆轟の発生が発生するおそれがある。爆轟の発生には、比較的高い温度と、比較的高い圧縮比と、比較的高い混合気濃度という3つの要件が必要である。これら3つの要件のうち、いずれか1つを下げると爆轟を解消することができ、言うまでもないが、比較的高い作動温度及び比較的高い圧縮比は熱効率の向上に有利である。
本発明において、混合気濃度を下げることにより爆轟を解消し、前記高出力モード下では可変圧縮比が実現し、圧縮比が高出力モード下の吸気容積V3の持続的増加に伴い上がり、圧縮比が上がり続けることに相当し、高出力モード下の空燃比が圧縮比の持続的増加に伴い下がり、これにより可変空燃比が実現する。
図2に示すように、理論空燃比の場合、燃焼分子10間の距離がL1、混合気中の燃料密度が燃焼に必要な密度であり、該燃料密度下では点火しやすく、正常に燃焼することができる。
図3に示すように、希薄混合気の場合、燃焼分子10間の距離がL2で、L2>L1であり、燃料密度が燃焼要件を満たさず、これにより点火できず、正常に燃焼することもできない。
図4に示すように、高圧濃縮密度の希薄混合気の場合、燃焼分子10間の距離がL3で、L3=L1であり、混合気が極めて希薄であるが、更なる圧縮を経ると、希薄混合気は燃焼に必要な圧縮密度に達することができ、これにより希薄混合気体を点火でき、正常に燃焼することができる。
上記内容から分かるように、燃焼を圧縮できないものの、空気を圧縮することができるため、希薄混合気を更に圧縮させる過程で、燃料の圧縮密度が上がり、燃焼に必要な密度に達する。これにより、希薄混合気は燃焼に必要な圧縮密度に達すると、正常に燃焼することができる。
【0007】
例1:燃料1gと、空気14.7gとを混合し、圧縮比10:1とし(従来の理論空燃比)、前記混合気が10:1で圧縮され、該燃料は正常に燃焼することができる。
例2:燃料1gと、空気29.4gとを混合し、圧縮比10:1とし、混合燃料が燃焼に必要な密度に達せず、正常に燃焼することはできず、圧縮比を20:1に引き上げ、混合気が極めて希薄であるが、燃焼に必要な圧縮密度に達しているため、正常に燃焼することができる。これにより、混合気が極めて希薄な場合でも、燃焼に必要な圧縮密度に達すると、その物理的性質が変わるため、正常に燃焼することができる。
実験1:ガソリン1gと空気14.7gとを混合し、圧縮比10:1とする理論空燃比燃焼方式とし、点火後の燃焼温度が2500℃、燃焼圧力が6Mpaで、仕事をすることができる。
実験2:ガソリン1gと、空気14.7gから抽出した酸素ガスとを混合する純酸素燃焼方式とし、圧縮比10:1とし、点火後の燃焼温度が3000℃、燃焼圧力が1Mpaで、燃焼温度が高く、爆轟が発生し、燃焼圧力が低く、仕事をすることができない。
実験3:ガソリン1gと14.7g×2の空気とを混合し、圧縮比10:1とする希薄燃焼方式とし、点火できず、仕事をすることができない。
実験4:ガソリン1gと14.7g×2の空気とを混合し、圧縮比20:1とする高圧縮密度下の希薄混合気燃焼方式とし、点火後の燃焼温度が1500℃、燃焼圧力が9Mpaで、爆轟が発生せず、燃焼圧力が上がるため、出力が上がる。
実験5:ガソリン1gと14.7g×4の空気とを混合し、圧縮比40:1とする高圧縮密度下の希薄混合気燃焼方式とし、点火後の燃焼温度が1000℃、燃焼圧力が15Mpaで、爆轟が発生せず、燃焼圧力が上がるため、出力が大幅に上がる。
実験分析:実験2、3、4、5を実験1と比較する。
実験2:純酸素燃焼で、燃焼速度が極めて速く、媒体として燃焼過程で吸熱、膨張する他のガスが存在しなかったため、燃焼温度が高く、燃焼圧力が極めて低く、仕事をすることができない。
実験3:希薄混合気中の燃料の密度が燃焼要件を満たさないため、燃料を点火できず、仕事をすることができない。
実験4:希薄混合気が燃焼に必要な圧縮密度に達しており、正常に燃焼することができ、大量の他のガスが燃焼過程で吸熱するため、燃焼温度が下がる。また、大量の他のガスが吸熱後に急速に膨張するため、燃焼圧力が上がり、出力が高められる。
実験5:混合気が燃焼に必要な圧縮密度に達しており、正常に燃焼することができ、且つ大量の他のガスが燃焼過程で吸熱するため、燃焼温度が更に下がる。また、大量の他のガスが吸熱後に、急速に膨張するため、燃焼圧力が更に上がり、出力が大幅に向上する。
実験結果から明らかなように、理論空燃比の定義は、燃料1gの燃焼には空気14.3−14.7gを必要とするのに対し、実際上の意義としては、理論空燃比下の燃焼効果が最も優れるのではなく、燃料1gの燃焼にはちょうどこの量の空気中の酸素ガスを必要とするだけである。それは、燃焼過程に関与したのは空気中の酸素ガスだけで、大量の他のガスが燃焼過程で吸熱するために燃焼温度が下がり、大量の他のガスが吸熱後に急速に膨張し、これにより燃焼圧力が上がり、出力が大幅に向上するからである。
図5に示すように、内燃機関の低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計する。高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超えて増加し続け、圧縮圧力が上がり続ける。ECU(エレクトロニックコントロールユニット)は油噴射量が圧縮密度に適合するようにリアルタイムに制御し、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度をリアルタイムに確保する。内燃機関の作動過程で、絞り弁の開度の変化、回転数の変化、温度の変化はいずれも燃焼速度に影響を与え、ノッキングセンサがノッキング信号を検出後に、ECUにリアルタイムにフィードバックし、ECUはノッキング信号が次第に減衰するまで油噴射量を減らし、ノッキングセンサが軽微なノッキングを検出することが好ましい(従来の内燃機関では、酸素センサが取得した排出ガス中の酸素含有量に応じて油噴射パルス幅を変更し、油噴出量を変更する)。軽微なノッキング信号が次第に減衰すると、燃焼速度が下がることを示し、ECUは、ノッキングセンサが軽微なノッキング信号を検出するまで、油噴射量を適宜増やして燃焼速度を上げ、これにより内燃機関がいつでもノッキング発生限界状態下で作動する。最終的に低い燃焼温度、高い燃焼圧力が実現する。
急加速機能:内燃機関の出力が最大になると、燃焼温度が最低に、燃焼圧力が最高になり、内燃機関が最高効率点で作動する。このとき、混合気濃度のわずかな増減は爆轟につながらず、このような特性により油噴射量を適宜増やすことで出力を上げて、急加速機能を実現することができる。内燃機関を自動車に使用し、追い越しや登坂など急加速が必要な場合、排気性能に影響を与えない前提下で急加速機能をオンにすることができる。
急加速機能の利用:絞り弁の開度が最大になり、出力が最大になっており、急加速が必要な場合、手作業で操作して絞り弁を1回動かし、絞り弁位置センサ又は他の方法により急加速信号を発生させ、油噴射量を適宜増やし、急加速機能をオンにし、これにより内燃機関の実用的価値を更に向上することができる。
本発明の可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法において、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度を確保する。これにより、シンプルな方法で可変圧縮比及び可変空燃比という高度な技術を実現し、前記可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法はシンプルで、実用的で、信頼性が高い。
本発明は高圧縮密度下の希薄混合気燃焼方式を採用し、希薄混合気の燃焼温度が下がり、酸素ガスが十分で、十分に燃焼でき、これによりCO(一酸化炭素)及びTHC(炭化水素)の排出量が従来の内燃機関の1/10だけで、燃焼温度の下降によりNOx(窒素酸化物)の生成要件としての高温を満たさなくなり、結果としてNOxの排出量が従来の内燃機関の1/6だけになる。以上から分かるように、油消費量の大幅な低減に加え、汚染物の排出が大幅に削減され、内燃機関の燃焼学における大きな進歩といえる。
【0008】
実施例1:
本実施例は4ストローク機関である。
シリンダの行程容積が400mlで、燃焼室容積V1は15mlとする。
低出力モード下の吸気容積V2が150mlである。
低出力モード下の圧縮比が10:1である。
低出力モード下の空燃比が15:1である。
高出力モード下の吸気容積V3が250mlである。
高出力モード下の可変圧縮比の範囲が10:1−26.7:1である。
高出力モード下の可変空燃比の範囲が15:1−32:1である。
本実施例において、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、吸気容積がV2に達すると、設計圧縮比に達するとみなす。低出力モード下の吸気容積V2が150mlで、燃焼室容積V1は15mlとし、低出力モード下の圧縮比が10:1、空燃比が15:1である。内燃機関は低出力モード下で比較的高い圧縮比に達することができ、低出力モード下の単位面積あたりの実圧力が高められ、圧縮仕事が減少し、始動させやすい。
内燃機関が低出力モードから高出力モードへ移行し、絞り弁の開度を大きくし、高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超え、燃焼室容積V1が変わらず吸気容積が増加するため、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、圧縮比の上昇に相当する。圧縮比が高出力モード下の吸気容積V3の持続的増加に伴い上がり、圧縮比の可変範囲が10:1−26.7:1である。
高出力モード下の内燃機関の単位面積あたりの実圧力が高められ、混合気の圧縮密度が上がり、燃焼速度が上がり、ECUによりノッキングセンサからフィードバックされた信号に応じてリアルタイムに油噴射量を減らし、混合気の濃度を下げることで、混合気の濃度が圧縮密度に適合するようにリアルタイムに確保し、且つ点火時期をリアルタイムに制御する。空燃比が圧縮比の持続的上昇に伴い下がり、空燃比の可変範囲が15:1−32:1である。
本実施例は可変圧縮比及び可変空燃比の方法を用いることにより、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度、作動に必要な燃焼速度を確保する。高い圧縮密度により生じた高い燃焼圧力は出力を高めることができ、希薄混合気により生じた低い燃焼温度は汚染物の排出を低減することができ、内燃機関の熱効率を高める効果的な手段である。
本実施例において、排気温度が300℃まで下がり、これにより熱効率が大幅に向上する。
【0009】
実施例2:
本実施例は4ストローク機関である。
シリンダの行程容積が600mlで、燃焼室容積V1は15mlとする。
低出力モード下の吸気容積V2が210mlである。
低出力モード下の圧縮比が14:1である。
低出力モード下の空燃比が18:1である。
高出力モード下の吸気容積V3が360mlである。
高出力モード下の可変圧縮比の範囲が14:1−40:1である。
高出力モード下の可変空燃比の範囲が18:1−50:1である。
本実施例において、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、吸気容積がV2に達すると、設計圧縮比に達するとみなす。低出力モード下の吸気容積V2が210mlで、燃焼室容積V1は15mlとし、低出力モード下の圧縮比が14:1、空燃比が18:1である。内燃機関は低出力モード下で比較的高い圧縮比に達することができ、低出力モード下の単位面積あたりの実圧力が高められ、圧縮仕事が減少し、始動させやすい。
内燃機関が低出力モードから高出力モードへ移行し、絞り弁の開度を大きくし、高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超え、燃焼室容積V1が変わらず吸気容積が増加するため、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、圧縮比の上昇に相当する。圧縮比が高出力モード下の吸気容積V3の持続的増加に伴い上がり、圧縮比の可変範囲が14:1−40:1である。
内燃機関は高い出力モード下の単位面積あたりの実圧縮圧力が高められ、混合気の圧縮密度が上がり、燃焼速度が上がり、ECUによりノッキングセンサからフィードバックされた信号に応じてリアルタイムに油噴射量を減らし、混合気の濃度を下げることで、混合気の濃度が圧縮密度に適合するようにリアルタイムに確保し、且つ点火時期をリアルタイムに制御する。空燃比が圧縮比の持続的上昇に伴い下がり、空燃比の可変範囲が18:1−50:1である。
本実施例は可変圧縮比及び可変空燃比の方法を用いることにより、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度、作動に必要な燃焼速度を確保する。高い圧縮密度により生じた高い燃焼圧力は出力を高めることができ、希薄混合気により生じた低い燃焼温度は汚染物の排出を低減することができ、内燃機関の熱効率を高める効果的な手段である。
本実施例において、排気温度は250℃まで下がり、これにより熱効率が大幅に向上する。
【0010】
実施例3:
本実施例は4ストローク機関で、絞り弁を増設する必要がある。
シリンダの行程容積が1200mlで、燃焼室容積V1は25mlとする。
低出力モード下の吸気容積V2が500mlである。
低出力モード下の圧縮比が20:1である。
低出力モード下の空燃比が16:1である。
高出力モード下の吸気容積V3が700mlである。
高出力モード下の可変圧縮比の範囲が20:1−48:1である。
高出力モード下の可変空燃比の範囲が16:1−60:1である。
本実施例において、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、吸気容積がV2に達すると、設計圧縮比に達するとみなす。低出力モード下の吸気容積V2が500mlで、燃焼室容積V1は25mlとし、低出力モード下の圧縮比が20:1、空燃比が16:1である。内燃機関は低出力モード下で比較的高い圧縮比に達することができ、低出力モード下の単位面積あたりの実圧力が高められ、圧縮仕事が減少し、始動させやすい。
内燃機関が低出力モードから高出力モードへ移行し、絞り弁の開度を大きくし、高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超え、燃焼室容積V1が変わらず吸気容積が増加するため、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、圧縮比の上昇に相当する。圧縮比が高出力モード下の吸気容積V3の持続的増加に伴い上がり、圧縮比の可変範囲が20:1−48:1である。
内燃機関は高い出力モード下の単位面積あたりの実圧縮圧力が高められ、混合気の圧縮密度が上がり、燃焼速度が上がり、ECUによりノッキングセンサからフィードバックされた信号に応じてリアルタイムに油噴射量を減らし、混合気の濃度を下げることで、混合気の濃度が圧縮密度に適合するようにリアルタイムに確保し、且つ点火時期をリアルタイムに制御する。空燃比が圧縮比の持続的上昇に伴い下がり、空燃比の可変範囲が16:1−60:1である。
本実施例は可変圧縮比及び可変空燃比の方法を用いることにより、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度、作動に必要な燃焼速度を確保する。高い圧縮密度により生じた高い燃焼圧力は出力を高めることができ、希薄混合気により生じた低い燃焼温度は汚染物の排出を低減することができ、内燃機関の熱効率を高める効果的な手段である。
本実施例において、排気温度は200℃まで下がり、これにより熱効率が大幅に向上する。
【0011】
実施例4:
本実施例は2ストローク機関で、絞り弁を増設する必要がある。
シリンダの行程容積が420Lで、燃焼室容積V1は7Lとする。
低出力モード下の吸気容積V2が175Lである。
低出力モード下の圧縮比が25:1である。
低出力モード下の空燃比が30:1である。
高出力モード下の吸気容積V3が245Lである。
高出力モード下の可変圧縮比の範囲が25:1−60:1である。
高出力モード下の可変空燃比の範囲が30:1−70:1である。
本実施例において、低出力モード下の吸気容積V2に基づき圧縮比を設計し、吸気容積がV2に達すると、設計圧縮比に達するとみなす。低出力モード下の吸気容積V2が175Lで、燃焼室容積V1は7Lとし、低出力モード下の圧縮比が25:1、空燃比が30:1である。内燃機関は低出力モード下で比較的高い圧縮比に達することができ、低出力モード下の単位面積あたりの実圧力が高められ、圧縮仕事が減少し、始動させやすい。
内燃機関が低出力モードから高出力モードへ移行し、絞り弁の開度を大きくし、高出力モード下の吸気容積V3が低出力モード下の吸気容積V2を超え、燃焼室容積V1が変わらず吸気容積が増加するため、吸気容積が低出力モード下の吸気容積V2を超えると、圧縮比の上昇に相当する。圧縮比が高出力モード下の吸気容積V3の持続的増加に伴い上がり、圧縮比の可変範囲が25:1−60:1である。
内燃機関は高い出力モード下の単位面積あたりの実圧縮圧力が高められ、混合気の圧縮密度が上がり、燃焼速度が上がり、ECUによりノッキングセンサからフィードバックされた信号に応じてリアルタイムに油噴射量を減らし、混合気の濃度を下げることで、混合気の濃度が圧縮密度に適合するようにリアルタイムに確保し、且つ点火時期をリアルタイムに制御する。空燃比が圧縮比の持続的上昇に伴い下がり、空燃比の可変範囲が30:1−70:1である。
本発明に記載の内燃機関における可変圧縮比及び可変空燃比の実現方法においては、酸素センサの閉ループ制御を取り除き、ノッキングセンサのノッキング信号に応じて油噴射パルス幅を調整する。
本実施例は可変圧縮比及び可変空燃比の方法を用いることにより、希薄混合気の燃焼に必要な圧縮密度、作動に必要な燃焼速度を確保する。高い圧縮密度により生じた高い燃焼圧力は出力を高めることができ、希薄混合気により生じた低い燃焼温度は汚染物の排出を低減することができ、内燃機関の熱効率を高める効果的な手段である。
本実施例において、排気温度は180℃まで下がり、これにより熱効率が大幅に向上する。
なお、上記実施例は本発明の技術的解決手段についての説明のみであり、それを限定するためのものではない。前記実施例を参照して本発明について詳しく説明したが、前記実施例に記載の技術的解決手段に修正を加え、又はその一部の技術的特徴について同等の置換を行うことができ、また、これらの修正又は置換により、対象となる技術的解決手段の趣旨が本発明の各実施例の技術的解決手段の趣旨及び範囲から逸脱することはないということは、当業者にとって自明である。











図1
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図3
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図5