(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.第1の実施の形態のタッチパネル装置の構成>
<2.センシング動作>
<3.第2の実施の形態>
<4.第3の実施の形態>
<5.第4の実施の形態>
<6.第5の実施の形態>
<7.実施の形態の効果及び変形例>
【0017】
なお実施の形態では、請求項でいうタッチパネル装置に対応するものとしてタッチパネル装置1を挙げる。
また請求項でいうタッチパネル駆動装置に対応するものとしてタッチパネル駆動装置3を挙げる。
但し、実施の形態ではタッチパネル駆動装置3はセンサIC4とMCU(Micro Control Unit)5を有するものとしているが、請求項でいうタッチパネル駆動装置は、この構成に限らない。例えばセンサIC4のみであっても請求項でいうタッチパネル駆動装置を構成する。
【0018】
<1.第1の実施の形態のタッチパネル装置の構成>
実施の形態のタッチパネル装置1の構成例を
図1に示す。
タッチパネル装置1は、各種機器においてユーザインターフェース装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、その他非常に多様な分野の機器が想定される。タッチパネル装置1は、これらの多様な機器製品においてユーザの操作入力に用いる操作入力デバイスとして採用される。
図1ではタッチパネル装置1と製品側MCU90を示しているが、製品側MCU90とは、タッチパネル装置1が装着される機器における制御装置を示しているものである。タッチパネル装置1は製品側MCU90に対してユーザのタッチパネル操作の情報を供給する動作を行うことになる。
【0019】
タッチパネル装置1は、タッチパネル2と、タッチパネル駆動装置3を有する。
タッチパネル駆動装置3はセンサIC(Integrated Circuit)4とMCU5を有する。
タッチパネル駆動装置3は、タッチパネル側接続端子部31を介してタッチパネル2と接続される。この接続を介してタッチパネル駆動装置3はタッチパネル2の駆動(センシング)を行う。
また操作入力デバイスとして機器に搭載される際には、タッチパネル駆動装置3は製品側接続端子部32を介して製品側MCU90と接続される。この接続によりタッチパネル駆動装置3は製品側MCU90にセンシングした操作情報を送信する。
【0020】
タッチパネル駆動装置3におけるセンサIC4は、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、インターフェース・レジスタ回路44、電源回路45、ノイズフィルタ46を有する。
【0021】
センサIC4の送信回路41は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子に対して送信信号を出力する。また受信回路42は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子から信号を、ノイズフィルタ46を介して受信し、必要な比較処理等を行う。
【0022】
図2に、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、ノイズフィルタ46とタッチパネル2の接続状態を模式的に示す。
タッチパネル2は、タッチ面を形成するパネル平面に、送信側の電極としてのn本の送信信号線21−1から21−nが配設される。
また同じくパネル平面に、受信側の電極としてのm本の受信信号線22−1から22−mが配設される。
なお送信信号線21−1・・・21−n、受信信号線22−1・・・22−mを特に区別しない場合は、総称として「送信信号線21」「受信信号線22」と表記する。
【0023】
送信信号線21−1・・・21−nと、受信信号線22−1・・・22−mは、図示するように交差して配設される場合もあれば、いわゆるシングルレイヤ構造として、上述の特許文献2のように交差が生じないように配設される場合もある。いずれにしても送信信号線21と受信信号線22が配設される範囲内でタッチ操作面が形成され、タッチ操作時の容量変化により操作位置が検出される構造となる。
図では送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量を一部のみ例示している(容量C22,C23,C32,C33)が、タッチ操作面の全体に、送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量(例えば交差位置における容量)が存在し、タッチ操作により容量変化が生じた位置が受信回路42により検出されることとなる。
【0024】
図の例では、マルチプレクサ43として送信側マルチプレクサ43Tと受信側マルチプレクサ43Rを示している。
送信回路41は、送信側マルチプレクサ43Tにより選択された送信信号線21−1・・・21−nに対して送信信号を出力する。本実施の形態では、送信側マルチプレクサ43Tが各タイミングで2本ずつ隣接する送信信号線21を選択していく走査を行う。
受信回路42は、受信側マルチプレクサ43Rにより選択された、受信信号線22−1・・・22−mからの受信信号を受信する。
本実施の形態では、受信側マルチプレクサ43Rが各タイミングで2本ずつ隣接する受信信号線22を選択していく。
またこの場合、受信側マルチプレクサ43Rと受信回路42の間には2本の受信信号線23a,23bが形成されることになるが、この受信信号線23a,23b上にそれぞれ、ノイズフィルタ46a,46bが挿入されている。
【0025】
なお、「ノイズフィルタ46」は、ノイズフィルタ46a,46bや、第2の実施の形態で述べるノイズフィルタ46−1〜46−mの個々を特に区別する必要が無い場合に総称する表記、もしくはノイズフィルタ46a,46bの全体やノイズフィルタ46−1〜46−mの全体を表す表記として用いる。
送信回路41、受信回路42によるセンシング動作については後述する。
【0026】
図1に戻って説明する。センサIC4のインターフェース・レジスタ回路44には、送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45、ノイズフィルタ46に対する各種の設定情報がMCU5によって書き込まれる。送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45、ノイズフィルタ46は、それぞれインターフェース・レジスタ回路44に記憶された設定情報によって動作が制御される。
またインターフェース・レジスタ回路44には、受信回路42により検出された検出値(説明上「RAW値」ともいう)を記憶し、MCU5が取得できるようにしている。
【0027】
電源回路45は、駆動電圧AVCCを生成し、送信回路41,受信回路42に供給する。後述するが、送信回路41は駆動電圧AVCCを用いたパルスをマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21に印加する。
また受信回路42は、センシング動作の際に、マルチプレクサ43によって選択された受信信号線22に対して駆動電圧AVCCを印加することも行う。
【0028】
MCU5はセンサIC4の設定、制御を行う。具体的にはMCU5はインターフェース・レジスタ回路44に対して必要な設定情報を書き込むことで、センサIC4の各部の動作を制御する。
またMCU5は受信回路42からのRAW値をインターフェース・レジスタ回路44から読み出すことで取得する。そしてMCU5は、RAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を製品側MCU90に送信する処理を行う。
【0029】
<2.センシング動作>
以上の構成のタッチパネル装置1によるセンシング動作について説明する。
まず
図3によりタッチパネル2に対する送信回路41,受信回路42の動作を説明する。図ではタッチパネル2において2つの送信信号線21−2、21−3と、2つの受信信号線22−2、22−3を示している。
なお、マルチプレクサ43(送信側マルチプレクサ43T、受信側マルチプレクサ43R)を省略しているが、受信側マルチプレクサ43Rによって2つの受信信号線22−2、22−3と接続される、受信側マルチプレクサ43Rから受信回路42までの経路を、受信信号線23a,23bとしている。
【0030】
本実施の形態の場合、先の
図2に示したような送信信号線21、受信信号線22に対して、送信回路41と受信回路42が、それぞれ隣接する2本ずつ送信、受信を行っていくことでタッチ操作の検出を行うものとなる。つまり送信信号線21、受信信号線22の2本×2本を基本セルとして、順次セル単位で検出走査を行う。
図3では、その1つのセル部分を示していることになる。
【0031】
送信回路41は、2本の送信信号線21(図の場合では21−2,21−3)に対して、ドライバ411,412から駆動電圧AVCC1を出力する。つまりドライバ411,412の出力である送信信号T+、T−がマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21−2,21−3に供給される。
なお、駆動電圧AVCC1は、
図1の電源回路45が生成する駆動電圧AVCC自体、もしくは駆動電圧AVCCに基づく電圧である。
この場合、送信回路41は、ドライバ411からの送信信号T+は図示のように、アイドル(Idle)期間(電位安定化期間)をロウレベル(以下「Lレベル」と表記)とする。例えば0Vとする。そして続くアクティブ(Active)期間(センシング期間)にはハイレベル(以下「Hレベル」と表記)とする。この場合、Hレベルの信号として具体的には駆動電圧AVCC1の印加を行う。
また送信回路41は、もう一つのドライバ412からの送信信号T−は、アイドル期間をHレベル(駆動電圧AVCC1の印加)とし、続くアクティブ期間はLレベルとする。
ここで、アイドル期間は受信信号R+、R−の電位を安定させる期間であり、アクティブ期間は受信信号R+、R−の電位変化をセンシングする期間となる。
【0032】
このアイドル期間、アクティブ期間において、受信回路42はマルチプレクサ43によって選択された2つの受信信号線22(図の場合では22−3,22−2)からの受信信号R+、R−を、受信信号線23a,23bを介してコンパレータ421で受信する。
なお受信信号線23a,23bにはそれぞれ、抵抗R、コンデンサCを用いたパッシブ回路としてのLPFを構成するノイズフィルタ46a,46bが挿入されており、コンパレータ421には、ノイズフィルタ46a,46bで高域カットされた受信信号R+、R−が入力されることになる。
この場合、ノイズフィルタ46aとノイズフィルタ46bにおける抵抗Rは同じ抵抗値で、コンデンサCは同じ容量値とされる。これによりノイズフィルタ46a,46bで同じフィルタ特性(遮断周波数、減衰特性)のフィルタ処理が行われることになる。
そしてコンパレータ421は、受信信号R+、R−の電位を比較して、その比較結果をHレベル又はLレベルで出力する。
【0033】
受信回路42は、コンパレータ421の他に基準容量部422、スイッチ423,425、計測用容量部424を備えている。
基準容量部422を構成するコンデンサの一端には駆動電圧AVCC2が印加されている。駆動電圧AVCC2は、
図1の電源回路45が生成する駆動電圧AVCC自体、もしくは駆動電圧AVCCに基づく電圧である。基準容量部422を構成するコンデンサの他端はスイッチ423の端子Taを介してコンパレータ421の+入力端子に接続されている。
また計測用容量部424の一端には駆動電圧AVCC2が印加されている。この計測用容量部424の他端はスイッチ425の端子Taを介してコンパレータ421の−入力端子に接続されている。
【0034】
スイッチ423、425は、アイドル期間には端子Tiが選択される。従ってアイドル期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22−3)、−入力端子(受信信号線22−2)がグランド接続され、受信信号R+、R−はグランド電位となる。
スイッチ423、425は、アクティブ期間には端子Taが選択される。従ってアクティブ期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22−3)、−入力端子(受信信号線22−2)には基準容量部422又は計測用容量部424を介して駆動電圧AVCC2が印加される。
【0035】
図3では当該セルが非タッチ状態の場合の受信信号R+、R−の波形を実線で示している。アイドル期間ではスイッチ423、425が端子Tiを選択していることで、受信信号R+、R−は、或る電位(グランド電位)で安定されている。
アクティブ期間になるとスイッチ423、425が端子Taを選択することで、受信信号線22−3,22−2に駆動電圧AVCC2が印加される。これにより受信信号R+、R−の電位がΔV上昇する。非タッチの状態では、このΔVの電位上昇は、受信信号R+、R−共に発生する。
一方、送信回路41側では、アクティブ期間となると、上述のように送信信号T+が立ち上がり、送信信号T−が立ち下がる。これにより、タッチ操作があった場合には、受信信号R+、R−の電位上昇の程度が変化する。
仮に容量C22に影響を与えるA1位置がタッチされた場合、受信信号R−の電位がアクティブ期間において破線で示すようにΔVHだけ上昇する。
また仮に容量C32が変化するA2位置がタッチされた場合、受信信号R−の電位がアクティブ期間において破線で示すΔVLだけ上昇する。
これらのように当該セルに対するタッチ操作位置に応じて、受信信号R−の電位変化量が受信信号R+の電位変化量(ΔV)よりも大きくなったり小さくなったりする。
コンパレータ421はこのような受信信号R+、R−を比較することになる。
【0036】
なお、このように変化する受信信号R+、R−の電位差分自体をRAW値(検出結果)として出力するようにしてもよいが、本実施の形態では受信回路42は、受信信号R+、R−の電圧バランスがとれるように計測用容量部424の設定変更を行い、RAW値を得るようにしている。
【0037】
以上の
図3において可変容量コンデンサの記号で示した計測用容量部424は、例えば
図4のように複数のコンデンサCM(CM0〜CM7)とスイッチSW(SW0〜SW7)により構成されている。スイッチSW0〜SW7は、それぞれ例えばFET(Field effect transistor)等のスイッチ素子を用いて構成される。
なお
図4はスイッチ423,425が端子Taに接続された状態(アクティブ期間)での等価回路として示しており、スイッチ423,425の図示は省略している。
各コンデンサCM0〜CM7は、駆動電圧AVCC2の電位とコンパレータ421の−入力端子の間に並列に接続されている。また各コンデンサCM0〜CM7に対してはそれぞれ直列にスイッチSW0〜SW7が接続されている。つまりスイッチSW0〜SW7のオン/オフにより、受信信号R−に影響を与えるコンデンサを変更できる構成である。
【0038】
そして各コンデンサCM0〜CM7の容量値は、例えばコンデンサCM0=2fF(フェムトファラッド)、CM1=4fF、CM2=8fF、CM3=16fF、CM4=32fF、CM5=64fF、CM6=128fF、CM7=256fFとされる。
コンデンサCM0からCM7は、ビット“0”からビット“7”の8ビットの値で選択される。コンデンサCM0及びスイッチSW0がビット0、コンデンサCM1及びスイッチSW1がビット“1”、・・・コンデンサCM7及びスイッチSW7がビット“7”として機能する。
そして8ビットの値として0(=「00000000」)から255(=「11111111」)の容量設定値が与えられる。容量設定値はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込む設定情報の一つである。
受信回路42では、この8ビットの容量設定値に応じてスイッチSW0〜SW7がオン/オフされる。即ちスイッチSW0〜SW7は対応するビットが「0」であればオフ、「1」であればオンとなる。これにより計測用容量部424の全体の容量値が0fF〜510fFの範囲で256段階に可変されることになる。
【0039】
一方、受信信号R+側の基準容量部422のコンデンサの容量値は例えば256fFとされる。
【0040】
上述のように受信信号R−は、タッチの有無及び位置によってアクティブ期間の波形の電位上昇の程度が変わる。受信信号R+の波形上昇程度(ΔV)より大きくなったり小さくなったりする。
図4の構成では、計測用容量部424の容量設定値を変更していくことで受信信号R−の波形の電位上昇程度を変化させることができ、例えば受信信号R+と同等となる計測用容量部424の容量設定値を見つけ出すことができる。
例えば
図4の受信信号R−の破線で示す波形Sg1が初期状態であったとしたときに、計測用容量部424の容量を小さくすれば受信信号R−は波形Sg2のように波形Sg1より小さくなる。また、計測用容量部424の容量を大きくすれば受信信号R−は波形Sg3のように波形Sg1より大きくなる。
つまり、コンパレータ421で受信信号R+、R−の電圧レベルが同等となったときの計測用容量部424の容量設定値は、タッチによる受信信号R−の電圧変化に相当する値と等価となる。従って、コンパレータ421の出力をみながら計測用容量部424の容量設定値を変化させていき、受信信号R+、R−のアクティブ期間の電圧が同等となる容量設定値を探索する。すると探索された容量設定値を、タッチ操作のセンシング情報としてのRAW値とできることになる。
【0041】
以上のセンシング動作の具体的な手順を
図5で説明する。この
図5はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込んだ各種の設定情報に基づいて送信回路41、受信回路42で行われる処理を示したものである。
図5においてステップS100からS109のループ処理は、1つのセル(2つの送信信号線21と2つの受信信号線22の組)に対するセンシングの手順を示している。なお、RAW値を得るまでに容量設定値は8段階の異なる値を取る(初期状態から7回変更される)。
【0042】
ステップS100でまず変数nが初期値としてn=7に設定される。また受信回路42はMCU5の指示(容量設定値)に基づいて計測用容量部424の容量値を256fFに設定する。つまり容量設定値=128(=10000000)とされ、ビット“7”のみが「1」であることでスイッチSW7のみがオンとされる。
【0043】
ステップS101ではアイドル期間の設定が行われる。
送信回路41ではドライバ411からの送信信号T+はLレベル、送信信号T−はHレベル(=駆動電圧AVCC1)とする。
受信回路42では、スイッチ423,425が端子Tiに接続される。これによりコンパレータ421の+入力端子、−入力端子はグランド接続される。
【0044】
次にステップS102では所定の期間経過により、アイドル期間からアクティブ期間への切り替えが行われる。
送信回路41ではドライバ411からの送信信号T+はHレベル(=駆動電圧AVCC1)、ドライバ412からの送信信号T−はLレベルとする。
受信回路42では、スイッチ423,425が端子Taに接続される。これによりコンパレータ421の+入力端子は基準容量部422を介して駆動電圧AVCC2に接続され、−入力端子は計測用容量部424を介して駆動電圧AVCC2に接続される。
【0045】
アクティブ期間となると受信信号R+、R−がΔV上昇するが、送信信号T+が立ち上がり送信信号T−が立ち下がることで、検出中のセルに対するタッチ操作の有無やタッチ操作位置に応じた受信信号R−の変化が生じる(上昇量がΔVHやΔVLとなる)。
ステップS103ではコンパレータ421が受信信号R+、R−を比較し、比較結果を出力する。コンパレータ421からは、(受信信号R+)>(受信信号R−)であればHレベル出力が得られ、(受信信号R+)<(受信信号R−)であればLレベル出力が得られる。
【0046】
ステップS104はコンパレータ421の出力に応じて処理が分岐される。
コンパレータ421の出力がHレベルであれば、ステップS105で計測用容量部424の容量切替が行われる。この場合、ビット“n”のスイッチをオンにしたまま、ビット“n−1”のスイッチをオンとする。
それまで上記のように初期状態で容量設定値=「10000000」とされてビット“7”のみオンとしていたときは、続いて容量設定値=「11000000」とされてビット“7”とビット“6”がオンとされる。即ちスイッチSW7,SW6がオンとされ、計測用容量部424の容量値は384fFとなる。
そしてステップS107で変数n>0であれば、ステップS108で変数nをデクリメントしてステップS101に戻る。つまり、計測用容量部424の容量を大きくした上で、アイドル期間、アクティブ期間の動作を行ってコンパレータ421の出力を確認する。
【0047】
またステップS104においてコンパレータ421の出力がLレベルであれば、ステップS106で計測用容量部424の容量切替が行われる。この場合、ビット“n”のスイッチをオフにして、ビット“n−1”のスイッチをオンとする。
それまで初期状態で容量設定値=「10000000」とされてビット“7”のみオンとしていたとすると、続いて容量設定値=「01000000」とされてビット“7”がオフとされ、ビット“6”がオンとされる。即ちスイッチSW7がオフとされスイッチSW6がオンとされ、計測用容量部424の容量値は128fFとなる。
そしてステップS107で変数n>0であれば、ステップS108で変数nをデクリメントしてステップS101に戻る。つまり、計測用容量部424の容量を小さくした上で、アイドル期間、アクティブ期間の動作を行ってコンパレータ421の出力を確認する。
【0048】
この処理を変数n=0となるまで行うことで、受信信号R−のアクティブ期間の電圧値と受信信号R+のアクティブ期間の電圧値とのバランスがとれたときの容量設定値が判定される。
なお変数n=0のときのステップS105,S106においては、ビット“n−1”は存在しないので、ビット“n−1”の処理は行わない。
ステップS107で変数n=0となっていたらステップS109に進み、受信回路42はRAW値を算出する。これは計測用容量部424においてオンとなっているスイッチSWのビットの2のべき乗の総和をとるという処理となる。例えば仮に最終的にスイッチSW5、SW3、SW2がオンになっていたとしたら、2
5+2
3+2
2=44ということになり、RAW値=44となる。
【0049】
このように求められたRAW値はインターフェース・レジスタ回路44を介して1つのセルの検出値としてMCU5に取得される。
タッチパネル2における各セル(2本の送信信号線21と2本の受信信号線22の組)について同様に
図5の処理が行われ、RAW値が求められる。
MCU5は各セルについてのRAW値を取得し、タッチ操作位置の座標計算を行い、求めた座標値を製品側MCU90に送信する。
【0050】
本実施の形態では以上のようなセンシング動作として、受信信号R+、R−の差分をとることで、取得されるRAW値が、外部環境からの影響を受けにくいようにすることができ、タッチ操作の検出精度を向上できる。
特に非タッチ時には受信信号R+、R−の電位のバランスがとれているようにし、タッチによる容量変化によって受信信号R+、R−の電位に差が生ずるようにしている。これを計測用容量部424の容量を順次変化させて受信信号R+、R−のバランスがとれる容量値を探索し、その容量値を指定する容量設定値からRAW値を得るようにしている。これによりタッチ操作による容量変化に起因する受信信号R+、R−の差分を正確に検出できる。
【0051】
なお受信回路42から駆動電圧AVCC2を印加して、選択された受信信号線22を充電する理由としては主に2つがある。
1つはタッチパネル2がシングルレイヤ構造の場合の事情である。シングルレイヤ構造の場合、非タッチの状態では、送信信号線21と受信信号線22の間で容量がほとんど生じない。つまり送信信号線21と受信信号線22の間(電極間)は絶縁状態にある。しかし非タッチ状態でも、アクティブ期間に受信信号波形が立ち上がるようにすることが必要である。このために駆動電圧AVCC2を送信することによって、シングルレイヤの場合にも対応して上記のセンシング動作が良好にできるようにしている。
またもう1つの理由はシングルレイヤに限ったことではない。上記のセンシング方式ではアクティブ期間に移行したときからの、受信信号R−の電位上昇幅を見ることになるが、送信信号T−の立ち下がりによる影響も把握したい。つまり
図3に破線で示したΔVLの電位上昇も観測する必要がある。もしアクティブ期間での非タッチ状態での受信信号R+、R−の電位が0Vだと、立ち下がりの影響を受ける場合、受信信号R−の電位がマイナス値になってしまい、受信回路42において扱いにくいものとなる。そこで受信信号R−の電位が0V以下にならないように持ち上げておくようにし、送信信号T−の立ち下がりの影響による受信波形の電位を容易かつ適切に観測しやすくするために駆動電圧AVCC2を印加している。
【0052】
以上の動作を行う第1の実施の形態では、受信信号線23a,23bにノイズフィルタ46a,46bが挿入されている。
これにより受信信号R+、R−に乗る外来の電磁ノイズ成分を低減することができるため、誤タッチを低減し、センシング精度のよいタッチパネル装置を実現できる。
また、センシング動作は上記のようにコンパレータ421を用いた差分検出方式である。この場合に、受信信号線23a,23bの両方に、同じ定数の抵抗R、コンデンサCを用いていることで、容量挿入による影響は受信信号線23a,23bで同等である。従って差分検出方式の場合に、検出精度の影響を与えずに、ノイズ低減を行うことが可能となっている。
【0053】
<3.第2の実施の形態>
第2の実施の形態を
図6,
図7で説明する。
図6は
図1と同様にタッチパネル装置1の構成例を示している。この
図6の例では、ノイズフィルタ46をタッチパネル駆動装置3の外部に配置している。
【0054】
図7は
図2と同様に、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、ノイズフィルタ46、タッチパネル2の接続状態を模式的に示している。
図から理解されるように、ノイズフィルタ46としては、抵抗R及びコンデンサCを用いたLPFとしてのノイズフィルタ46−1〜46−mが、タッチパネル2における受信信号線22−1〜22−mのそれぞれに対して設けられている。
【0055】
受信信号線22−1〜22−mのそれぞれに対応してノイズフィルタ46を設けることによっても、第1の実施の形態と同様、受信信号R+、R−に乗る外来の電磁ノイズ成分を低減することができ、センシング精度のよいタッチパネル装置を実現できる。
特にこの場合は、各受信信号線22−1〜22−mの個別の事情に応じた調整を行うことも可能である。例えばタッチパネル2の形状や、配線レイアウトの事情などにより、各受信信号線22−1〜22−mには、線長や線幅が異なる部分が生ずることがある。これによって配線抵抗に差が生じることもある。
図7のように受信信号線22−1〜22−m毎にノイズフィルタ46を設けることで、各信号線の差を吸収して同じフィルタ特性のフィルタ処理ができる。
【0056】
またこのような構成例によれば、タッチパネル2側でノイズフィルタ46を形成すればよいため、ノイズフィルタ46を備えていない従来のセンサICを用いても構成可能である。
なお、第1の実施の形態ではセンサIC4内にノイズフィルタ46を設ける場合に、受信信号線23a、23b上に挿入するものとしたが、例えば
図6のタッチパネル側接続端子部31とマルチプレクサ43の間におけるm本の受信信号線22−1〜22−mのそれぞれにノイズフィルタ46を挿入しても良い。つまり、センサIC46内にノイズフィルタ46を設ける場合でも、各受信信号線22−1〜22−mのそれぞれに対してノイズフィルタ46を設ける構成は想定される。
【0057】
<4.第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、ノイズフィルタ46においてフィルタ特性を可変とした例である。
図8にフィルタ特性を可変としたノイズフィルタ46の構成例を示す。なお
図8は、第1の実施の形態のようにマルチプレクサ43と受信回路42の間の受信信号線23a、23b上にノイズフィルタ46a、46bを挿入した例に従って示している。
【0058】
ノイズフィルタ46a,46bは同一の構成である。図ではノイズフィルタ46b側に構成を示している。以下、ノイズフィルタ46b側で説明する。
ノイズフィルタ46bは、抵抗R1,R2,R3,R4,コンデンサC0,C1、スイッチS0,S1,S2,S3,S4,SC0,SC1を有する。
スイッチS0は受信信号線23b上に設けられた、フィルタをバイパスするためのスイッチである。
スイッチS1〜S4は、それぞれ抵抗R1〜R4を選択するスイッチである。
これらのスイッチS0,S1,S2,S3,S4の1つがオンとされることで、受信信号線23bに挿入される抵抗値が選択される。
スイッチSC0,SC1は、それぞれコンデンサC0,C1を選択するスイッチである。
この構成によりノイズフィルタ46bは、LPFとしての特性を規定する抵抗値を抵抗R1,R2,R3,R4のうちから選択でき、容量値をコンデンサC0,C1から選択できる。
抵抗値は、例えばR1=5KΩ、R2=10KΩ、R3=20KΩ、R4=50KΩなどとされる。容量値は、例えばC0=2pF、C1=10pFなどとされる。
【0059】
スイッチS0,S1,S2,S3,S4,SC0,SC1は、インターフェース・レジスタ回路44に書き込まれた設定値に従った制御信号FCによりオン/オフ制御される。
図9に設定値の内容の例を示す。
ノイズフィルタ46(46a,46b)の制御のための設定値は、“LPFEN”“LPFR[1]”“LPFR[0]”“LPFC”として示した各1ビットによる4ビットで表現される。これらはインターフェース・レジスタ回路44の所定アドレスに書き込まれる1バイトのコマンドに含まれるビットである。
図では、これらの各ビットの値に対応して、フィルターセッティング、インターナルセッティングを示している。フィルターセッティングは、ノイズフィルタ46として機能する抵抗値、容量値である。インターナルセッティングはスイッチS0,S1,S2,S3,S4,SC0,SC1のオン/オフ状態を示している。
【0060】
“LPFEN”のビットはイネーブルを示すものとされる。
この“LPFEN”=0の場合、スイッチS0がオンとされ、他のスイッチS1,S2,S3,S4,SC0,SC1はオフとされる。このため抵抗R1〜R4はバイパスされ、コンデンサC0,C1はオープンとなるため、ノイズフィルタ46はオフとなりフィルタ動作は行われない。
【0061】
“LPFEN”=1の場合、“LPFR[1]”“LPFR[0]”の2ビットによりスイッチS1,S2,S3,S4が制御され、“LPFC”によりスイッチSC0,SC1が制御される。
“LPFR[1]”“LPFR[0]”の2ビットが「00」であればスイッチS1がオン、スイッチS0,S2,S3,S4がオフとなり、抵抗R1が選択されて抵抗値は5KΩとなる。
“LPFR[1]”“LPFR[0]”の2ビットが「01」であればスイッチS2がオン、スイッチS0,S1,S3,S4がオフとなり、抵抗R2が選択されて抵抗値は10KΩとなる。
“LPFR[1]”“LPFR[0]”の2ビットが「10」であればスイッチS3がオン、スイッチS0,S1,S2,S4がオフとなり、抵抗R3が選択されて抵抗値は20KΩとなる。
“LPFR[1]”“LPFR[0]”の2ビットが「11」であればスイッチS4がオン、スイッチS0,S1,S2,S3がオフとなり、抵抗R4が選択されて抵抗値は50KΩとなる。
【0062】
“LPFC”のビットが「0」であればスイッチSC0がオン、スイッチSC1がオフとされてコンデンサC0が選択され、容量値は2pFとなる。
“LPFC”のビットが「1」であればスイッチSC1がオン、スイッチSC0がオフとされてコンデンサC1が選択され、容量値は10pFとなる。
【0063】
このようにノイズフィルタ46においてフィルタ特性が可変とされていることで、例えばタッチパネル駆動装置2を接続するタッチパネル2や、タッチパネル使用環境に応じて、適切なフィルタ特性を設定することが可能となる。
なお、ノイズフィルタ46a,46bは同じフィルタ特性で動作する。従って、以上の設定値はノイズフィルタ46a,46bの両方に共通に反映されることになる。
【0064】
ところでこのようにフィルタ特性が可変とされた構成を採る場合、例えば
図10のような処理でフィルタ特性を制御することが考えられる。
図10は例えばMCU5によるノイズフィルタ46の制御処理を示している。但し、センサIC4内においてこのような制御を行うプロセッサが設けられていてもよい。
MCU5(又はセンサIC4内のプロセッサ)は、ノイズフィルタ機能を用いる処理を開始した後、例えばRAW値を取得するタイミング毎に
図10の処理を行うようにする。
【0065】
MCU5は、ステップS151でRAW値を取得すると、ステップS152で今回のRAW値からノイズレベルを算出する。
ノイズレベルは、例えば前フレームの同じセルのRAW値の変化量として求めることができる。
又はノイズレベルは、RAW値の積算変化量としてもよい。
【0066】
ここでいうRAW値の積算変化量について
図12で説明しておく。
図12Aは環境ノイズが無い場合の各検出箇所のRAW値を例示している。左側に各セルのRAW値を濃淡で表し、右側にRAW値の変化量を示している。RAW値は「1」〜「255」の値をとるとする。変化量は、RAW値の中心値「128」を「0」として、「−127」〜「127」で示す。
【0067】
指Fでタッチした箇所では、対応する4つのセルのRAW値の変化量が「127」「−127」「127」「−127」となる。他のセルは全て「0」である。結果、全セルのRAW値の変化量の積算値は「0」である。
【0068】
図12Bは環境ノイズがある場合を示している。この場合、指Fでタッチしている箇所以外にも、高周波ノイズによってRAW値が変化する箇所が生じている。
つまり全RAW値の変化量を積算すると、その値は+または−に変動する。またその値はノイズレベルが大きい程、「0」から離れる。
【0069】
図10の処理では例えばこのような指標によりノイズレベルを判定する。
そして算出したノイズレベルと、予め決めた設定範囲と比較する。設定範囲とはノイズレベルが適正(センシングに影響を与えない範囲)と判定される範囲に決められる。
ノイズレベルが設定範囲より大きい場合は、MCU5はステップS153からS155に進み、フィルタ機能設定値を+1する。
一方ノイズレベルが設定範囲より小さい場合は、MCU5はステップS154からS156に進み、フィルタ機能設定値を−1する。
【0070】
ここでいうフィルタ機能設定値とは、例えば
図11に示すようにフィルターセッティングの種別を表す値である。この例では設定値として「0」〜「8」の9段階が設定され、フィルタ機能設定値「0」はノイズフィルタオフ、フィルタ機能設定値「1」〜「8」はノイズフィルタオンでフィルタ特性又は定数が異なるものとされる。
この
図11の例では、フィルタ機能設定値が大きい程、LPFの遮断周波数が低くなり、つまりフィルタ機能が強化されるものとなる。
図10のステップS155,S156ではこのようにフィルタ機能設定値を増減する、つまりフィルタ特性を切り換えるようにしている。
【0071】
なお設定値(レジスタ値)とは、インターフェース・レジスタ回路44の所定アドレスに書き込まれる1バイト(8ビット)のコマンドの値を示している。当該8ビットのコマンドは、各ビットがMSB側から“RSV”“RSV”“RSV”“RSV”“LPFC”“LPFR[1]”“LPFR[0]”“LPFEN”となる(“RSV”はリザーブを示す)。「0x」は16進表記であることを示している
例えばフィルタ機能設定値「1」のレジスタ値「0x01」=「00000001」であり、これは“LPFC”=0、“LPFR[1]”=0、“LPFR[0]”=0、“LPFEN”=1であり、
図9から、5KΩの抵抗R1と2pFのコンデンサC0が選択される場合となる。
【0072】
図10のステップS157でMCU5は、フィルタ機能設定値の変更後のRAW値を取得する。そしてステップS158でMCU5は、RAW値からノイズレベルを上記同様に算出する。
そしてステップS153,S154のチェックを行う。
【0073】
MCU5は。ステップS153,S154でいずれも否定結果となるとき、つまりノイズレベルが設定範囲内であるときは、
図10の処理を終える。
つまり
図10の処理は、ノイズレベルが設定範囲となるように、フィルタ機能設定値を上下に調整し、調整できた段階で、処理を終える。以降、調整された最後のフィルタ機能設定値によるノイズフィルタ動作が行われる。
このような制御を行うことで、ノイズフィルタ46の挿入による受信信号R+、R−の応答性の低下を最小限にしつつ、必要なレベルのノイズ除去ができるようにすることができる。
なお
図11の例では、設定値「5」「6」は遮断周波数が同じである。従って実際には、いずれか一方を除いて8段階のフィルタ機能設定値の切替を行うことができるようにするとよい。
【0074】
<5.第4の実施の形態>
第4の実施の形態を説明する。これは第3の実施の形態のように、ノイズフィルタ46がフィルタ特性を可変とした構成を採る場合に採用できる例である。
【0075】
先にも言及したように
図12Aは、環境ノイズがない場合であるが、この場合ノイズフィルタ機能がオフとされていても問題ない。図示するように、タッチ箇所以外のRAW値は変化しない。
ところが環境ノイズが発生し、ノイズフィルタ機能がオフであると、
図12Bのようにタッチ箇所以外でもRAW値が変化する箇所が表れる。特に指Fでタッチした箇所P1に対して、同等の変化量の箇所P2が発生すると、誤タッチとして検出してしまいやすくなる。
この
図12Bのような状況において、ノイズフィルタ機能をオンとすることにより、
図12Cのようにノイズ状況を改善できる。つまり、タッチ箇所P1以外でもRAW値がノイズにより変化してしまう箇所はあるが、高周波ノイズが減衰することで、それらの箇所のRAW値の変化量は下がる。例えば箇所P2のRAW値の変化量は、タッチ箇所P1と比べて小さくなる。これによりS/N比が向上し、誤検出しにくくなる。
全RAW値の変化量の積算値でいえば、
図12Cの状態での積算値は、
図12Bの状態の積算値よりもゼロに近くなる。
【0076】
ここで、例えば
図12Aのように環境ノイズがなければ、ノイズフィルタ機能は、逆に受信信号R+、R−の立ち上がりをなまらせる方向に働くため、検出動作にとって不利になる場合が有り得る。一方で、環境ノイズがあるときは、
図12Cに示したようにノイズフィルタ機能によって高周波ノイズを低減させることが、センシング精度の向上につながる。
そこで第4の実施の形態では、初期状態ではノイズフィルタ機能をオフとする。そして必要に応じてノイズフィルタ機能をオンとする。
【0077】
例えばMCU5(又はセンサIC4内のプロセッサ)は、
図13の処理を行うようにする。
ステップS200でMCU5は、フィルタ機能設定値=0とする。つまり初期状態としてノイズフィルタ機能をオフとする。
【0078】
MCU5は、ステップS201でRAW値を取得すると、ステップS202で今回のRAW値からノイズレベルを算出する(
図10のステップS151,S152と同様)。
そしてMCU5はステップS203で、算出したノイズレベルが、或る設定範囲よりも大きいか否かを判定する。
ノイズレベルが設定範囲より大きい場合は、MCU5はステップS203からS204に進み、フィルタ機能設定値(
図11参照)を+1する。即ち最初は、初期値から+1することで、フィルタ機能設定値=1としてノイズフィルタ機能を実行させる。
【0079】
ステップS205でMCU5は、フィルタ機能設定値の変更後のRAW値を取得する。そしてステップS206でMCU5は、RAW値からノイズレベルを上記同様に算出する。
そしてステップS203で、算出したノイズレベルが、或る設定範囲よりも大きいか否かを判定する。
結局、ノイズレベルが、設定範囲より大きいという状態が解消されるまでは、フィルタ機能設定値が1,2,3・・・と変化されていく。つまり徐々にLPFの遮断周波数を低くし、フィルタ機能を強化していく。
【0080】
ステップS203で否定結果となった場合、つまりノイズレベルが設定範囲内であるときは、
図10の処理を終える。
つまり
図10の処理は、フィルタ機能オフの状態から、ノイズレベルに応じて必要な段階だけフィルタ機能を強化する処理となる。
従って、ノイズレスな環境にあるときは、ノイズフィルタ機能はオフとされた初期状態のままでセンシングが行われる。少々ノイズの影響がある場合は、比較的緩やかなノイズフィルタ機能とされ、一方、ノイズが大きな環境では、強力なノイズフィルタ機能とされることになる。
このような制御を行うことで、ノイズフィルタ46の挿入による受信信号R+、R−の応答性の低下を最小限にしつつ、必要なレベルのノイズ除去ができるようにすることができる。
【0081】
<6.第5の実施の形態>
図14,
図15により第5の実施の形態を説明する。
第5の実施の形態は、ノイズフィルタ46の素子が、タッチパネル2における送信信号線21又は受信信号線22の走査タイミングに応じて可変制御される例である。
【0082】
図14Aは長方形状のタッチパネル2と、送信信号線21−1〜21−nと、受信信号線22−1〜22−mを模式的に示している。
上述のように送信信号線21−1〜21−nは順次一対づつ選択されるように走査が行われるが、走査ラインとして、マルチプレクサ43より遠い方から近い方に領域AR1、AR2,AR3を設定する。
【0083】
領域AR1の走査のタイミングでは、操作位置からノイズフィルタ46までの受信信号線22−1〜22−mの配線長は長くなり、領域AR3の走査のタイミングでは、操作位置からノイズフィルタ46までの受信信号線22−1〜22−mの配線長は短くなる。
つまり1フレームの期間内で、フィルタ動作に影響を与える配線抵抗が変化する。そこで、例えば
図8のように複数の抵抗を選択可能な構成とする。ここではエリアAR1、AR2,AR3に対応して3種類の抵抗値の抵抗を選択可能な構成とする。そして走査ラインに応じて抵抗を切り換えるようにする。なおこの場合の複数の抵抗の抵抗値は、配線抵抗の差分を吸収するための抵抗値とする。
【0084】
そして例えばMCU5(又はセンサIC4内のプロセッサ)は、
図15の処理を、走査継続中、つまりタッチパネル2のセンシング動作を行っている間、繰り返すようにする。
ステップS301でMCU5は走査終了を監視する。
スキャン終了でなければ、ステップS302で、現在がエリアAR1内の走査タイミングであるか否かを確認する。現在がエリアAR1内の走査タイミングである場合は、ステップS304に進んで、エリアAR1用の設定値を選択する。この場合の設定値とは、例えば抵抗を選択する設定値である。
現在がエリアAR1内の走査タイミングではない場合は、MCU5はステップS303に進んで、現在がエリアAR2内の走査タイミングであるか否かを確認する。現在がエリアAR2内の走査タイミングである場合は、ステップS305に進んでエリアAR2用の設定値を選択する。
現在がエリアAR2内の走査タイミングでない場合は、エリアAR3の走査タイミングであるので、ステップS306に進んでエリアAR3用の設定値を選択する。
【0085】
例えばこのように1フレーム期間内に抵抗値を切替制御していくことで、走査ラインによって配線抵抗の差を吸収したフィルタ動作が実行できる。
もちろん3つのエリアAR1〜AR3としたのは一例にすぎない。エリアは2段階でも、より多段階でも良い。
特にこの処理は、走査位置による受信信号線22−1〜22−mの配線抵抗の変化に応じたものであるため、受信信号線22が非常に長いような場合に有効となる。
このような第5の実施の形態では、受信側マルチプレクサ43Rで選択される一対の受信信号線22の受信信号R+、R−に対して同じ定数の抵抗R及びコンデンサCによる同じフィルタ特性のフィルタ処理が施されることは、第1〜第4の実施の形態と変わるところはないが、さらに、配線抵抗を含めたフィルタ特性が、タッチパネル2の面内(エリアAR1〜AR3)でも変化しないようにできることになる。これによって面内でフィルタ特性を均一化できる。
【0086】
なお、同様の処理を、受信信号線22−1〜22−m側の走査に対応して行っても良い。
図14Bは、例えばタッチパネル2が台形状とされて受信信号線22−1〜22−mのそれぞれに配線長の差がある場合の例である。
受信信号線22−1〜22−mのレイアウトや、タッチパネル2の形状により、受信信号線22−1〜22−mには図の例のように配線長が大きく異なる場合が有り得る。
そこで
図14Bに例示するように、受信信号線22−1〜22−mを、その配線長の別によりエリアAR1,AR2,AR3に区分する。
そして受信信号線22−1〜22−m側の走査(一対の受信信号線の選択)のタイミングに応じて、例えば抵抗を切り換えるようにする。
即ち
図15の処理を行う。この場合、ステップS302,S303の走査タイミングとは、受信信号線22−1〜22−mの選択タイミングとし、選択された一対の受信信号線22が、どのエリアに該当するかを判断すればよいものとなる。
これにより、受信信号線22−1〜22−mの配線長の差を吸収したフィルタ動作が実現される。
【0087】
なお、以上では抵抗値を切り換えることを述べたが、送信信号線21又は受信信号線22の走査エリアに応じて容量値を切り換えることも考えられる。
【0088】
<7.実施の形態の効果及び変形例>
以上の構成のタッチパネル装置1又はタッチパネル駆動装置3によれば次のような効果が得られる。
実施の形態のタッチパネル装置1又はタッチパネル駆動装置3は、タッチパネル2の一対の受信信号線22からの、操作に伴う容量変化によって波形が変化する各受信信号R+、R−を受信して、各受信信号の比較動作を行ってタッチパネル操作監視のための検出値を生成する受信回路42と、タッチパネル2における受信信号線22から受信回路42に至る信号経路上で、受信回路42に供給される一対の受信信号線22からの各受信信号R+、R−のそれぞれに対して互いに同じフィルタ特性のフィルタ処理を行う複数のノイズフィルタ46を備える。
受信回路42に供給される受信信号R+、R−に対してフィルタ処理を行うノイズフィルタ46(例えばノイズフィルタ46a、46bや、ノイズフィルタ46−1〜46−m)が設けられることで、外来ノイズ(電磁ノイズ)の影響による誤検出を低減できる。これによりタッチパネルのセンシング精度を向上させることができる。
ここで、一般に容量変化を検出する検出方式の場合、受信信号線に容量素子を加えることは、なるべく避けるべきとされる。挿入する容量素子により容量変化の検出精度が低下する場合があるためである。これに対し実施の形態の場合、受信信号R+、R−の差分検出を行うものであるため、それぞれの受信信号R+、R−に対して同じフィルタ特性の処理を行うようにすれば、検出精度に影響はないことになる。つまり差分検出であるがゆえに、CRフィルタ回路としてのフィルタ部46を受信信号線22に設けても問題がなく、これによって簡易な回路で有効なノイズ低減が可能となる。さらには、一般に行われているような信号増幅した後にノイズ除去を行う手法でもないため、ノイズ成分が増幅されてしまうということもなく、受信信号線22にのったノイズ成分そのものの低減を行うことができる。これも簡易な構成で有効なノイズ低減を可能とする要因の1つとなっている。
【0089】
実施の形態では、各ノイズフィルタ26は、それぞれ、互いに同じ定数の抵抗と同じ定数の容量素子を有して構成されることが考えられる。これにより簡易な構成のCR回路として各フィルタを実現しつつ、同じフィルタ特性でのフィルタ処理が行われるようにすることができる。
最も単純には、第1の実施の形態の
図3、
図7のようにノイズフィルタ46a、46b(又は46−1〜46−m)が同じ抵抗値の抵抗Rと同じ容量値の容量Cで構成されるようにする。
また第3の実施の形態のように各ノイズフィルタ46が複数の抵抗(R1〜R4)やコンデンサ(C0,C1)を選択可能な構成の場合も、ノイズフィルタ46a、46bが同じ定数のものを備えることで、同じフィルタ特性でのフィルタ処理が可能となる。
【0090】
第1の実施の形態では、タッチパネル2に配設されたm本の受信信号線22−1〜22−mのうちの2本を、受信回路42に受信信号R+、R−を供給する2本の受信信号線23a,23bに順次電気的に接続するマルチプレクサ43(選択回路)を備える。そしてノイズフィルタ46は、マルチプレクサ43と受信回路42の間の2本の受信信号線23a,23bのそれぞれの信号経路上に設けられている例を述べた。
これにより、多数(m本)の受信信号線22からの受信信号に対応するノイズフィルタを、2つ形成するのみで良く、ノイズフィルタ46のための回路負荷を最小にできる。従ってタッチパネル駆動装置3の構成の簡易化、製造コストの低減が実現できる。また
図1のようにノイズフィルタ46はセンサIC4に内蔵するようにすることで、実質的にタッチパネル駆動装置3の回路規模の増大は殆ど生じない。
【0091】
第3の実施の形態では、ノイズフィルタ46が、定数の異なる複数の抵抗(R1〜R4)、定数の異なる複数のコンデンサC0,C1が切替可能な構成とした例を述べた。
これにより、ノイズフィルタはフィルタ特性、即ちLPFとしての遮断周波数を選択できるものとなる。よって、例えば耐ノイズ環境性と感度を任意に選択できる。また接続するタッチパネルに応じて最適なフィルタ特性を選択するということも可能になる。
なお、
図8の構成に限らず、複数の抵抗を選択可能とし、コンデンサは1つとする例や、抵抗は1つのみとして、複数のコンデンサを選択可能とする構成例も考えられる。
また
図8の例ではノイズフィルタオフ(抵抗バイパス、コンデンサオープン)も選択可能としたが、ノイズフィルタ機能をオフとすることは選択できない構成例も考えられる。
【0092】
第3,第4の実施の形態においては、
図10又は
図13の処理として、ノイズフィルタ46は、受信回路42で検出されるノイズレベルに応じて、抵抗R又はコンデンサCが切替制御される例を述べた。
例えばノイズレベルが大きいと、タッチ位置の検出におけるエラー頻度が高くなる。この場合に各ノイズフィルタ46の抵抗、コンデンサの定数を変更して遮断周波数を下げることで、ノイズ除去機能を強化する。一方でノイズレベルが小さくエラー頻度が低い場合、遮断周波数を上げたり、或いはフィルタ機能をオフとする。これにより、必要に応じて適切なノイズフィルタ動作を実行できる。
またLPFとしてのノイズフィルタを挿入することで、受信信号R+、R−の信号波形の立ち上がりが若干遅くなることもあるため、不要な場合にはノイズフィルタ46をオフとすることは、受信回路42の無意味な感度低下を無くすることになり、検出動作に有利となる。
図10,
図13ではノイズレベルを用いて判定する例としたが、間接的なノイズレベル判定でもよい。例えば検出におけるエラーレートを判定して、それに応じてノイズフィルタ46の特性を可変制御するようにしてもよい。
【0093】
第5の実施の形態では、ノイズフィルタ46は、タッチパネル2における送信信号線21又は受信信号線22の走査タイミングに応じて抵抗又は容量素子が切替制御される構成を述べた。
例えば送信信号線21や受信信号線22について複数のエリア(AR1〜AR3)を設定し、走査対象となっている送信信号線21や受信信号線22のエリア毎にフィルタ動作を行う素子を切り換える。
これにより、例えば信号線長による抵抗成分の差を吸収したフィルタ動作が実行できる。従って接続されたタッチパネル2内で,耐ノイズ環境性と感度のバランスをとることができる。
【0094】
第2の実施の形態では、ノイズフィルタ46は、タッチパネル2に配設されたm本の受信信号線22−1〜22−mのそれぞれに対応して設けられている例を述べた。
即ちタッチパネルに配設される受信信号線の1本1本に対して、CR回路としてのノイズフィルタが設けられる。
これにより、多数(m本)の受信信号線22−1から22−mのそれぞれの特性差(例えば配線抵抗の差)を吸収するようなノイズフィルタを設けることが可能となる。例えば各受信信号線22−1から22−mの配線長の差に応じてノイズフィルタの抵抗値を調整することで、結果的に各受信信号線22−1から22−mについて、同じフィルタ特性のノイズフィルタ処理が実行されるようにすることができる。
【0095】
なお実施の形態の構成や動作は一例である。本発明は他に様々な構成例、動作例が考えられる。
特にノイズフィルタ46の具体的な構成、配置箇所、切替制御方式等はより多様に考えられる。