(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703798
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ映像生成方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/14 20060101AFI20200525BHJP
G01S 7/282 20060101ALI20200525BHJP
G01S 13/72 20060101ALI20200525BHJP
G01S 13/937 20200101ALI20200525BHJP
【FI】
G01S7/14
G01S7/282 200
G01S13/72
G01S13/93 210
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-501050(P2018-501050)
(86)(22)【出願日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2017001684
(87)【国際公開番号】WO2017145588
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-34967(P2016-34967)
(32)【優先日】2016年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 達也
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−112674(JP,A)
【文献】
特開2009−092555(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/190232(WO,A1)
【文献】
特開2014−025727(JP,A)
【文献】
特開2007−333482(JP,A)
【文献】
特開2000−206225(JP,A)
【文献】
特開2014−081241(JP,A)
【文献】
特開2016−017785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方位でない角度範囲を少なくとも1つ設定する角度範囲設定部と、
電波放射方向が前記角度範囲外のとき、第1パルス幅の第1送信信号を送信し、電波放射方向が前記角度範囲内のとき、前記第1送信信号と、第1パルス幅よりもパルス幅が短い第2パルス幅の第2送信信号と、を送信する、送信信号制御部と、
前記第1送信信号及び前記第2送信信号が物標で反射した信号を受信信号として受信する受信部と、
前記第1送信信号の受信信号のみに基づく、自装置全周の領域のレーダ映像である第1レーダ映像と、前記第2送信信号の受信信号のみに基づく、前記角度範囲内の少なくとも一部の領域であって自装置全周でない領域のレーダ映像である第2レーダ映像と、を生成するレーダ映像生成部と、
前記第1レーダ映像と、前記第2レーダ映像と、を同時に表示する表示部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記角度範囲設定部は、前記第1レーダ映像上の位置の指定を受け付け、受け付けた位置に基づいて前記角度範囲を設定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記角度範囲設定部は、ユーザが指定した位置を受け付けることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記受信信号に基づいて物標の追尾処理を行う物標追尾部を備え、
前記角度範囲設定部が受け付けた位置は、前記物標追尾部が追尾している物標、又は、追尾している物標の中から選択された物標の位置であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のレーダ装置であって、
前記送信部は、自装置から前記角度範囲設定部が受け付けた位置までの距離に基づいて決定された前記第2送信信号を送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のレーダ装置であって、
前記送信部は、前記角度範囲において、第1送信信号の送信間隔を変えずに第2送信信号を送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載のレーダ装置であって、
前記送信部は、前記角度範囲において、第1送信信号の送信間隔を長くして第2送信信号を送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第2レーダ映像は、前記第1レーダ映像に重畳して表示されることを特徴とするレーダ装置。
【請求項9】
請求項1又は8に記載のレーダ装置であって、
前記表示部のうち前記第2レーダ映像が占める部分は、前記第1レーダ映像が占める部分より小さいことを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のレーダ装置であって、
第2送信信号の受信信号を待機する時間は、第1送信信号の受信信号を待機する時間よりも短いことを特徴とするレーダ装置。
【請求項11】
全方位でない角度範囲を少なくとも1つ設定する角度範囲設定工程と、
電波放射方向が前記角度範囲外のとき、第1パルス幅の送信信号を送信し、電波放射方向が前記角度範囲のとき、前記第1送信信号と、第1パルス幅よりもパルス幅が短い第2パルス幅の第2送信信号と、を送信する、送信信号制御工程と、
前記第1送信信号及び前記第2送信信号が物標に反射した信号を受信信号として受信する受信工程と、
前記第1送信信号の受信信号のみに基づく、自装置全周の領域のレーダ映像である第1レーダ映像と、前記第2送信信号の受信信号のみに基づく、前記角度範囲内の少なくとも一部の領域であって自装置全周でない領域のレーダ映像である第2レーダ映像と、を生成するレーダ映像生成工程と、
前記第1レーダ映像と、前記第2レーダ映像と、を同時に表示する表示行程と、
を含むことを特徴とするレーダ映像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス幅の異なる2以上の送信信号を送信するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば船舶用のレーダ装置において、ユーザは、表示レンジが異なるレーダ映像を目的に応じて使い分けている。ユーザは、自船の近傍の様子を確認したい場合 には、狭い表示レンジのレーダ映像を利用し、遠方の様子を確認したい場合には、広い表示レンジのレーダ映像を利用する。
【0003】
この種のレーダ装置においては、レーダ映像の表示レンジに応じて、送信信号のパルス幅を異ならせることがある。例えば、レーダ映像の表示レンジが狭い場 合、パルス幅が短い送信信号を送信することで、分解能を向上させることができる。また、レーダ映像の表示レンジが広い場合、パルス幅が長い送信信号を送信 することで、エコー信号のSN比が向上するため視認性を向上させることができる。特許文献1及び2は、パルス幅の異なる送信信号を送信するレーダ装置を開 示する。
【0004】
特許文献1及び2は、表示レンジが異なる2つのレーダ映像を1つの画面上に表示する。レーダ装置は、狭い表示レ ンジのレーダ映像を生成するための短いパルス幅の送信信号と、広い表示レンジのレーダ映像を生成するための長いパルス幅の送信信号と、を送信する。レーダ 装置は、パルス幅が異なる2種類の送信信号の反射波に対して、それぞれ異なる処理を行って個別にレーダ映像を生成する。
【0005】
特許文献3のレーダ装置は、表示レンジを自動的に変更可能に構成されている。このレーダ装置は、警戒すべき物標が検出された場合に、レーダ映像の表示レン ジの略半分の位置にこの物標が位置するように表示レンジが設定される。例えば3NMの位置に警戒すべき物標が位置する場合は、表示レンジが6NMになるよ うに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5231721号公報
【特許文献2】特許第3493107号公報
【特許文献3】特開平4−98179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーダ装置では受信と送信を同時行うことができないので、送信信号の送信後は、反射波を受信するために待機する必要がある。従って、送信信号は、所定の送 信間隔で送信する必要がある。ここで、特許文献1及び2のレーダ装置は、全方位にわたってパルス幅の異なる送信信号を交互に送信する。従って、同種の送信 信号同士の送信間隔が長くなってしまうため、レーダ映像が粗くなることがある。特に、送信信号は放射状に送信されるため、遠距離の物標を検出できなくなる 可能性もある。
【0008】
また、特許文献3のレーダ装置は、表示レンジが自動的に変更される。そのため、例えば遠距離の物標にユーザが注目していた場合、当該物標がレーダ映像に表示されなくなる可能性がある。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、遠距離の物標を確認するためのレーダ映像の粗さを抑えつつ、近距離の物標を詳細に確認可能なレーダ装置を提供することにある。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のレーダ装置が提供される。即ち、このレーダ装置は、角度範囲設定部と、送信部と、受信部と、レーダ映像生成部 と、を備える。前記角度範囲設定部は、全方位でない角度範囲を少なくとも1つ設定する。前記送信部は、第1パルス幅の第1送信信号を送信するとともに、前 記角度範囲設定部が設定した角度範囲では、第1パルス幅よりもパルス幅が短い第2パルス幅の第2送信信号を送信する。前記受信部は、前記送信部が送信した 前記第1送信信号及び前記第2送信信号が物標で反射した信号を受信信号として受信する。前記レーダ映像生成部は、前記第1送信信号の受信信号に基づいて第 1レーダ映像を生成するとともに、前記第2送信信号の受信信号に基づいて、前記角度範囲の第2レーダ映像を生成する。
【0012】
これにより、送信部は設定された角度範囲で第2送信信号を送信するため、他の角度範囲においては第1送信信号の送信間隔を長くならない。そのため、第1レーダ映像の粗さを抑えつつ、第2レーダ映像を生成することができる。
【0013】
前記のレーダ装置においては、前記角度範囲設定部は、第1レーダ映像上の位置の指定を受け付け、受け付けた位置に基づいて前記角度範囲を設定することが好ましい。
【0014】
これにより、ユーザ又は他の機器が位置を指定するだけで、当該位置を含む角度範囲を設定することができる。
【0015】
前記のレーダ装置においては、前記第2レーダ映像は、前記角度範囲設定部が受け付けた位置を含む領域の映像であることが好ましい。
【0016】
これにより、ユーザ又は他の機器が指定した位置を含む第2レーダ映像が生成されるので、ユーザは重要な物標等について詳細に確認できる。
【0017】
前記のレーダ装置においては、前記角度範囲設定部は、ユーザが指定した位置を受け付けることが好ましい。
【0018】
これにより、ユーザが注目した物標(例えば衝突の可能性がある他船等)が含まれた第2レーダ映像を生成できる。
【0019】
前記のレーダ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このレーダ装置は、前記受信信号に基づいて物標の追尾処理を行う物標追尾部を備え る。前記角度範囲設定部が受け付けた位置は、前記物標追尾部が追尾している物標、又は、追尾している物標の中から選択された物標の位置である。
【0020】
これにより、追尾処理中の物標はユーザにとって重要な物標であることが多いため、この物標を含むように第2レーダ映像を生成することで、ユーザは注目すべき物標を詳細に確認することができる。
【0021】
前記のレーダ装置においては、前記送信部は、自装置から前記角度範囲設定部が受け付けた位置までの距離に基づいて決定された前記第2送信信号を送信することが好ましい。
【0022】
これにより、距離に応じてパルス幅を決定することで分解能及び視認性が高い第2レーダ映像を作成することができる。
【0023】
前記のレーダ装置においては、前記送信部は、前記角度範囲において、第1送信信号の送信間隔を変えずに第2送信信号を送信することが好ましい。
【0024】
これにより、第1レーダ映像の品質を低下させることなく第2レーダ映像を生成することができる。
【0025】
前記のレーダ装置においては、前記送信部は、前記角度範囲において、第1送信信号の送信間隔を長くして第2送信信号を送信することが好ましい。
【0026】
これにより、第1送信信号の送信間隔が短い場合であっても、この送信信号の代わりに第2送信信号を送信することで、第2レーダ映像を生成することができる。
【0027】
前記のレーダ装置においては、前記第1レーダ映像及び前記第2レーダ映像を同時に表示する表示部を備えることが好ましい。
【0028】
これにより、ユーザは、自船の周囲の全体的な物標の様子を確認しつつ、所定の角度範囲の物標について詳細な様子を確認することができる。
【0029】
前記のレーダ装置においては、前記第2レーダ映像は、前記第1レーダ映像に重畳して表示されることが好ましい。
【0030】
これにより、第1レーダ映像の表示領域をあまり小さくすることなく、第2レーダ映像を表示することができる。
【0031】
前記のレーダ装置においては、前記表示部のうち前記第2レーダ映像が占める部分は、前記第1レーダ映像が占める部分より小さいことが好ましい。
【0032】
これにより、第1レーダ映像の表示領域をあまり小さくすることなく、第2レーダ映像を表示することができる。特に、第2レーダ映像は設定された角度範囲のレーダ映像なので、小さく表示しても十分な視認性を発揮できる。
【0033】
前記のレーダ装置においては、第2送信信号の受信信号を待機する時間は、第1送信信号の受信信号を待機する時間よりも短いことが好ましい。
【0034】
第2送信信号は、近距離の物標を検知できれば十分であるので、受信信号を待機する時間を短くすることで、単位時間あたりの送信信号の送信回数を多くすることができる。
【0035】
本発明の第2の観点によれば、以下のレーダ映像生成方法が提供される。即ち、このレーダ映像生成方法は、角度範囲設定工程と、送信工程と、受信工程と、 レーダ映像生成工程と、を含む。前記角度範囲設定工程は、少なくとも1つの角度範囲を設定する。前記送信工程は、第1パルス幅の送信信号を送信するととも に、前記角度範囲設定工程で設定した角度範囲では、少なくとも第2パルス幅の送信信号を送信する。前記受信工程は、前記送信工程で送信した送信信号が物標 に反射した信号を受信信号として受信する。前記レーダ映像生成工程は、第1パルス幅の受信信号に基づいて前記角度範囲を含む領域の第1レーダ映像を生成す るとともに、第2パルス幅の受信信号に基づいて前記角度範囲の第2レーダ映像を生成する。
【0036】
これにより、送信工程では設定された角度範囲で第2送信信号を送信するため、他の角度範囲においては第1送信信号の送信間隔を長くならない。そのため、第1レーダ映像の粗さを抑えつつ、第2レーダ映像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図。
【
図2】設定された角度範囲のみに第2送信信号を送信する処理を示すフローチャート。
【
図3】危険物標の検出前に送信するパルスと、危険物標の検出中に送信するパルスと、を示す図。
【
図4】危険物標の検出前に表示されるレーダ映像を示す図。
【
図5】危険物標の検出中に表示されるレーダ映像を示す図。
【
図6】危険物標の検出中に表示されるレーダ映像の別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、レーダ装置1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置1の構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態のレーダ装置1は、船舶用に搭載され、他船等を検出して表示する。レーダ装置1は、パルス幅の長い電波(送信信号)を送信するとともに、その受 信信号にパルス圧縮処理を行って解析することで、物標の位置を検出することができる。
図1に示すように、レーダ装置1は、アンテナユニット10と、レーダ 指示器20と、を備えている。
【0040】
アンテナユニット10は、アンテナ部11と、送信回路(送信部)12と、受信回路(受信部)13と、角度検出部14と、を備えている。
【0041】
アンテナ部11は、送信信号(電波)を送信可能であるとともに、送信信号が物標等で反射した反射波を受信可能である。アンテナ部11は、水平面内を所定周 期で回転しながら信号の送受信を繰り返すように構成されている。なお、本実施形態のレーダ装置1に代えて、アンテナ部11を回転させずに周囲の探知を行う レーダ装置を用いることもできる。
【0042】
送信回路12は、レーダ指示器20からの指示に応じて送信信号を生成して、アンテナ部 11へ出力する。送信回路12は、パルス幅が異なる送信信号を生成可能に構成されている。送信回路12は、レーダ指示器20からの指示に応じて異なるパル ス幅の送信信号を生成して送信することができる。
【0043】
受信回路13は、アンテナ部11が受信した反射波を受信信号として受信する。受信回路13は、この受信信号に対して、周波数のダウンコンバート及び増幅等を行う。受信回路13は、変換後の反射波をレーダ指示器20へ出力する。
【0044】
角度検出部14は、アンテナ部11の回転軸に取り付けられており、アンテナ部11の回転角度を検出する。角度検出部14の検出結果は、レーダ指示器20へ出力される。
【0045】
レーダ指示器20は、信号処理部21と、物標追尾部22と、レーダ映像生成部23と、表示部24と、操作部25と、送信信号設定部26と、送信信号制御部27と、を備える。
【0046】
信号処理部21は、受信回路13から入力された受信信号に対して、A/D変換、パルス圧縮処理、ゲイン調整、及び海面反射の除去処理等を行う。なお、信号 処理部21が行う処理の少なくとも一部をアンテナユニット10側で行っても良いし、受信回路13が行う処理の少なくとも一部を信号処理部21側で行っても 良い。信号処理部21は、信号処理後の受信信号を物標追尾部22及びレーダ映像生成部23へ出力する。
【0047】
物標追尾部22 は、TT(Target Tracking、目標追尾)機能を実現するためのものである。このTT(又はARPA)機能は公知であるので詳細な説明は省略 するが、アンテナユニット10から入力された受信信号に基づいて物標の位置を自動的に検出・捕捉するとともに、時間の推移に基づいて当該物標の移動を追尾 することにより物標の速度ベクトルを推定するものである。物標追尾部22が算出したTT情報は、レーダ映像生成部23へ出力される。
【0048】
また、物標追尾部22は、算出したTT情報に基づいて、追尾中の物標の衝突可能性が高いか否かを判定する。具体的には、物標追尾部22は、「CPA」、 「BCR」、「TCPA」、及び「BCT」等を用いて衝突可能性が高いか否かを判定する処理を行う。CPAとはClosest Point of Approachの略であり、自船と物標とが最も接近した際の距離を示す。また、TCPAはTime to CPAの略であり、自船と物標とが最接近する までの時間を示す。BCRとはBow Crossing Rangeの略であり、自船の船首方向を物標が横切るときの、自船と物標との距離を示す。BCT はBow Crossing Timeの略であり、物標が自船の船首方向を横切るまでの時間を示す。
【0049】
これらの値は、衝突 の可能性を判定する際に良く用いられ、値が小さい程、物標と自船との距離が小さかったり、近接するまでの時間が短かったりする。物標追尾部22は、追尾中 の物標に対してこれらの値を求め、その結果に基づいて衝突可能性が高いか否かを判定する。以下では、衝突可能性が高いと物標追尾部22が判定した物標を衝 突危険物標と称する。
【0050】
レーダ映像生成部23は、信号処理後の受信信号に基づいてレーダ映像を生成する。具体的には、レー ダ映像生成部23は、アンテナ部11が送信信号を送信したタイミングと、受信信号を受信したタイミングと、の時間差に基づいて物標までの距離を取得する。 また、レーダ映像生成部23は、送信信号を送信したときのアンテナ部11の向きに基づいて、物標が存在する方向を取得する。以上により、レーダ映像生成部 23は、
図4に示すようなレーダ映像を生成することができる。また、レーダ映像生成部23は、物標追尾部22から入力されたTT情報をレーダ映像上に表示 させることができる。
【0051】
図4に示すように、レーダ映像(第1レーダ映像40)には、自船マーク41と、エコー42a,42b,42cと、TTシンボル43と、が表示されている。
【0052】
自船マーク41は、自船(自装置、レーダ装置1)の位置を示すマークである。エコー42a,42b,42cは、上記のように受信信号に基づいて距離と方位が算出された物標である。エコー42aは陸地のエコーであり、エコー42b,42cは他船を示すエコーである。
【0053】
また、エコー42cが示す他船は物標追尾部22が追尾中であるため、その近傍にTTシンボル43が表示されている。TTシンボル43は、物標追尾部22が 算出したTT情報に基づいて作成されるマークである。TTシンボル43は、船舶(物標)の位置を示す円形のマークと、船舶(物標)の速度を示す線分(速度 ベクトル)と、から構成される。
【0054】
表示部24は、液晶等ディスプレイ等で構成されている。表示部24は、上記のレーダ映像を表示することができる。
【0055】
操作部25は、ユーザがレーダ指示器20に対して指示を行うために操作する部分である。操作部25は、レーダ指示器20の筐体に配置されたキーであっても 良いし、当該筐体に接続されたトラックボール等であっても良い。また、表示部24及び操作部25は、タッチパネルであっても良い。
【0056】
送信信号設定部26は、送信信号のパルス幅及びタイミング等を算出して送信信号制御部27に設定する処理を行う。送信信号制御部27には、角度検出部14 からアンテナ部11の回転角度が入力されている。送信信号制御部27は、アンテナ部11の回転角度と、送信信号設定部26が設定した内容とに基づいて、送 信信号を生成するように送信回路12を制御する。
【0057】
本実施形態のレーダ装置1は、通常は1種類の送信信号のみを送信する。 そして、物標追尾部22が衝突危険物標を検出した場合、レーダ装置1は、衝突危険物標が存在する方向に第1送信信号に加え第2送信信号を送信するように設 定する。そして、表示部24には、
図5に示すように、第1レーダ映像40に加え、第2送信信号の送受信により得られた第2レーダ映像50が表示される。以 下、衝突危険物標がある方向に第2送信信号を送信する処理について、
図2のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0058】
上 述のように物標追尾部22は、追尾中の物標(即ち第1レーダ映像40に表示されている物標)が衝突危険物標か否かを判定する。物標追尾部22は、衝突危険 物標が存在する場合、衝突危険物標の位置(相対位置)を送信信号設定部26へ出力する。送信信号設定部26は、物標追尾部22からの入力に基づいて、追尾 中の物標に衝突危険物標があるか否かを判定する(S101)。
【0059】
また、ユーザは、第2レーダ映像に表示する物標を指定する ことができる。具体的には、ユーザは、表示部24の第1レーダ映像40に表示されているエコー42a,42b,42c又はTTシンボル43等を操作部25 を用いて選択することで、物標を指定することができる。ユーザが指定した物標の位置は、送信信号設定部26へ出力される。なお、ユーザは、物標ではなく位 置を直接指定しても良い。この場合、ユーザが選択した位置が送信信号設定部26へ出力される。送信信号設定部26は、操作部25からの入力に基づいて、 ユーザによる位置の指定があるか否かを判定する(S102)。
【0060】
送信信号設定部26は、追尾中の危険物標がなく、ユーザに よる位置の指定もない場合、送信信号として、第1送信信号のみを設定する(S103)。
図3の「危険物標の検出前」と記載された部分には、第1送信信号の みが設定された場合に送信される送信信号の例が示されている。
図3に示すように、第1パルス幅の送信信号(第1送信信号)が送信され、その後に当該第1送 信信号の受信信号を受信するために待機する時間(受信待機時間)がある。この第1送信信号を受信する期間の経過後に、次の第1送信信号が送信される。表示 部24には、この第1送信信号の受信信号により得られた第1レーダ映像40が表示される。
【0061】
送信信号設定部26の角度範囲 設定部26aは、衝突危険物標又はユーザによる位置の指定がある場合、衝突危険物標又は指定された位置を含む角度範囲を設定する(S104)。具体的に は、角度範囲設定部26aは、衝突危険物標が存在する角度(水平面における角度、方位)に基づいて、当該角度を含むように(かつ全方位とならないように) 角度範囲を設定する。例えば、送信信号設定部26は、衝突危険物標等が存在する角度をθとした場合、θ−αからθ+αまでの角度範囲を送信信号制御部27 に設定する。
【0062】
次に、送信信号設定部26の第2パルス幅設定部26bは、衝突危険物標又は指定された位置までの距離(r) に応じて、第2送信信号の第2パルス幅を設定する(S105)。上述したように、近距離のレーダ映像を作成するときはパルス幅を短くすることで分解能を向 上させることができ、遠距離のレーダ映像を作成するときはパルス幅を長くすることで視認性を向上させることができる。
【0063】
従って、第2パルス幅設定部26bは、衝突危険物標又は指定された位置までの距離が近くなる程、短いパルス幅を第2パルス幅として送信信号制御部27に設 定する。また、第2送信信号は、近距離の物標をより詳細に探知するために用いられるため、第2パルス幅は第1パルス幅よりも短い値が設定される。
【0064】
また、第2送信信号は、衝突危険物標又は指定された位置の周囲が検出できれば十分であるので、反射波の受信待機時間を長くする必要がない。従って、本実施形態では、第2送信信号の受信待機時間は、第1送信信号の受信待機時間よりも短い。
【0065】
次に、送信信号制御部27は、設定された角度範囲に送信信号を送信するタイミングか否かを判定する(S106)。具体的には、送信信号制御部27には、ア ンテナ部11の回転角度が角度検出部14から入力されている。送信信号制御部27は、入力された回転角度が、送信信号設定部26が設定した角度範囲に入っ ているか否かに基づいて、S106の判定を行う。
【0066】
送信信号制御部27は、設定された角度範囲に送信信号を送信するタイミングでない場合、衝突危険物標が存在しない場合と同様に、第1送信信号のみを送信する(S103、
図3の中央の波形図)。
【0067】
また、送信信号制御部27は、設定された角度範囲に送信信号を送信するタイミングである場合、第1送信信号と第2送信信号を切り替えながら送信する (S107、
図3の下の波形図)。本実施形態では、第1送信信号と第2送信信号とを交互に送信する構成であるが、何れか一方の送信信号を2回送信する毎に 他方の送信信号を1回送信する構成等であっても良い。
【0068】
また、本実施形態では、設定した角度範囲では、それ以外の角度より も、第1送信信号の送信間隔が長くなっている。換言すれば、設定した角度範囲では、第1送信信号を間引いて第2送信信号が送信される。なお、第1送信信号 の送信間隔が長いのであれば、設定した角度範囲とそれ以外の角度範囲とで、第1送信信号の送信間隔が同じであっても良い。
【0069】
以上により、衝突危険物標等が存在する方向においては、第1送信信号と第2送信信号とが交互に送信され、それ以外の方向においては、第1送信信号のみが送 信される。レーダ映像生成部23は、第1送信信号の受信信号に基づいて第1レーダ映像40を生成するとともに、第2送信信号の受信信号に基づいて更に第2 レーダ映像50を生成する。
【0070】
図5には、第1レーダ映像40に加え第2レーダ映像50が表示されたときの表示部24の表示画面が示されている。第2レーダ映像50は、表示画面の右下であって、第1レーダ映像40に重畳するように、第1レーダ映像40の手前に配置されている。
【0071】
第2レーダ映像50は、矩形の枠内に表示された扇形の部分である。第2レーダ映像50の扇形の部分は、第1レーダ映像40に表示された破線の扇形(第2 レーダ映像領域表示部44)と対応している。第2レーダ映像50では、第1レーダ映像40よりも短いパルス幅でレーダ映像が生成されているので、より分解 能が高いレーダ映像が表示される。更に、第2レーダ映像50は第1レーダ映像40よりも拡大して表示される。従って、ユーザは衝突危険物標について、より 詳細な情報を取得することができる。
【0072】
なお、第2レーダ映像の表示位置は任意であり、右下に限られず、四隅の何れに表示されていても良い。また、第2レーダ映像50の形状も扇形に限られず、
図6に示すように矩形状であっても良い。
【0073】
以上に説明したように、このレーダ装置1は、角度範囲設定部26aと、送信回路12と、受信回路13と、レーダ映像生成部23と、を備え、レーダ映像生成 方法を行う。角度範囲設定部26aは、全方位でない角度範囲を少なくとも1つ設定する(角度範囲設定工程)。送信回路12は、第1パルス幅の第1送信信号 を送信するとともに、角度範囲設定部26aが設定した角度範囲では、第1パルス幅よりもパルス幅が短い第2パルス幅の第2送信信号を送信する(送信工 程)。受信回路13は、送信回路12が送信した第1送信信号及び第2送信信号が物標で反射した信号を受信信号として受信する(受信工程)。レーダ映像生成 部23は、第1送信信号の受信信号に基づいて第1レーダ映像を生成するとともに、第2送信信号の受信信号に基づいて、角度範囲の第2レーダ映像を生成する (レーダ映像生成工程)。
【0074】
これにより、送信回路12は設定された角度範囲で第2送信信号を送信するため、他の角度範囲においては第1送信信号の送信間隔を短くしなくて良い。そのため、第1レーダ映像の粗さを抑えつつ、第2レーダ映像を生成することができる。
【0075】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
上記の実施形態では、角度範囲が1つのみ設定される例を示したが、2以上の角度範囲が設定され、2以上の第2レーダ映像50が表示されていても良い。この 場合、1つ目の角度範囲と2つ目の角度範囲とで、パルス幅を異ならせても良い。ここで、1つ目の角度範囲と2つの角度範囲とが重複しており、それぞれで異 なるパルス幅が設定された場合、2つの角度範囲が重なる方向では、衝突の可能性が高い方の角度範囲に対応するパルス幅の送信信号を送信することができる。
【0077】
上記の実施形態では、物標追尾部22は衝突の可能性が高い物標を選択して送信信号設定部26へ出力するが、別の観点から物標を選択して送信信号設定部26へ出力しても良い。また、追尾中の物標が少ない場合等は、追尾中の物標全てを送信信号設定部26へ出力しても良い。
【0078】
上記の実施形態では、第1レーダ映像40よりも拡大して第2レーダ映像50を表示しているが、同じ縮尺又は第1レーダ映像40よりも縮小して第2レーダ映 像50を表示しても良い。また、上記の実施形態では、第1レーダ映像40と第2レーダ映像50で基準方位(レーダ映像の上方向の方位)が同一であるが、異 ならせることもできる。例えば第1レーダ映像40をノースアップ(レーダ映像の上方向が北)で表示し、第2レーダ映像50をヘディングアップ(レーダ映像 の上方向が船首方位)で表示することができる。衝突を避けるために利用される第2レーダ映像をヘディングアップとすることで、衝突の回避を直感的に行うこ とができる。
【0079】
上記の実施形態では、物標追尾部22が行ったTT処理に基づいて、衝突危険物標が存在するか否かを検出して いる。これに代えて、例えばAIS(Univeral Shipborne Automatic Identification System:船舶自動 識別システム)を用いて他船の位置及び速度を取得して、それらに基づいて衝突危険物標か否か判定しても良い。
【0080】
上記の実施 形態では、船舶に搭載されるレーダ装置を例に挙げて説明したが、他の移動体(例えば航空機)に搭載されるレーダ装置にも、本構成を適用することができる。 また、例えば灯台、海峡、及び港湾等に設置され、周囲の状況をレーダエコーによって検出する構成のレーダ装置にも本構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 レーダ装置
10 アンテナユニット
11 アンテナ部
12 送信回路(送信部)
13 受信回路(受信部)
20 レーダ指示器
21 信号処理部
22 物標追尾部
23 レーダ映像生成部
24 表示部
25 操作部
26 送信信号設定部
27 送信信号制御部
40 第1レーダ映像
50 第2レーダ映像