【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多糖鎖由来の治療効果は保持するとともに、低い抗凝固効果を有している、選択的に調製された化学修飾ヘパリンに関する。
【0012】
本発明に関しては、ヘパリンの抗凝固活性は、ATによる凝固因子Xa及びIIa(トロンビン)の阻害を強化する臨床機能に関係する。他の用語は、以下の記載の関係する文脈において定義されるものとする。
【0013】
一態様において、本発明は、10 IU/mg未満の抗因子II活性と、10 IU/mg未満の抗因子Xa活性と、及び約6.5乃至約9.5kDaの平均分子量(重量平均、Mw)とをもつ化学修飾ヘパリンを調製する方法に関する。方法は一般に、水溶液中に存在するヘパリンを、非硫酸化糖残基を酸化できる酸化剤にさらすことにより選択的に酸化すること、及び次に、得られた酸化糖残基を還元すること、の工程を含んでなる。方法はまた一般に、約3乃至約4の酸性pHにおける加水分解により、酸化されかつ還元されたヘパリン鎖を解重合することを含んでなる。方法は、一般的な順序で、今述べたばかりの方法で連続的に酸化すること、還元すること、及び加水分解によって解重合することにより実行し得るが、他の補足的な工程段階を任意の適当な順序で加えてもよい。
【0014】
解重合は、所望の分子量をもつ適切に分画された鎖を得る目的で、少なくとも約20℃の温度において実施する。所望の鎖の選択を支持するため、方法はまた一般に、約5.5乃至約10.5kDaの分子量を有する多糖鎖を富化する工程を含み得る。富化工程は一般に、バイオポリマー製造の当業者には周知の、通常のクロマトグラフ法か、濾過法か、又は篩分け法を含む。
【0015】
本発明による方法は、さらに、残留酸化剤を除去する少なくとも1つの工程を含んでなっていてもよい。
【0016】
加えて、本発明による方法は、還元型の酸化剤を取り除くことを含む、少なくとも1つの除去工程を含んでなっていてもよい。この状況において、還元型とは、ヘパリン中の標的糖残基の酸化に寄与した後に、還元された形態へ変換された酸化剤を意味する。またこの状況において、還元工程は、残留酸化剤の消費(還元)に寄与する、酸化ヘパリンを還元することとは別の還元剤を添加する工程を含んでなっていてもよい。
【0017】
一態様においては、本発明による方法は、記載された還元工程と記載された解重合工程との間で、いかなる残留酸化剤も除去しかつ還元型の酸化剤を取り除く工程を含んでなる。解重合は、pH3.0乃至3.5における加水分解により実施し得る。
【0018】
したがって、一態様においては、本発明は未分画ヘパリンを選択的に酸化する連続的な工程を含んでなる方法であって、非硫酸化糖類を酸化することができる酸化剤にそれをさらすこと;得られた酸化された糖類を還元すること;残留酸化剤及び還元型の酸化剤を除去すること;及び約3乃至約3.5の酸性pHにおける加水分解により、ヘパリン鎖を解重合することによる、該方法を対象とする。
【0019】
除去の工程は、化学修飾ヘパリンを沈殿させるのに充分な量のアルコールを添加することを含んでなっていてもよい。アルコールは、メタノール、エタノール、又は同様のアルコールでよく、化学修飾ヘパリンが沈殿されるようにするとともに、酸化剤及びその還元型がアルコールによって取り除かれるようにする。
【0020】
除去の工程はまた、酸化剤がヘパリンに対しさらなる酸化効果を及ぼすのを化学的に不活性化させ得るクエンチ剤の添加も含むことができる。そのように記載された除去工程又は複数の除去工程は、本発明らによって、ヘパリンの非特異的な解重合、即ち酸性加水分解の予測可能な結果に帰すことができない解重合作用を、妨害するか又は最小限にするのに寄与するものと一般的にみなされる。非特異的解重合は、結果として、予測不能な分子量減少、変色した生成物(不安定な吸収値)、安定性に関する他の問題、及びヘパリン又は低分子量ヘパリンにおいて到達することが予測されなかった未確認の残基の出現をもたらし得る。
【0021】
酸化工程後の除去工程の導入は、任意の非特異的解重合に対し、改良されたコントロールを可能にする。非特異的解重合をコントロールする、任意の前述の方法に適用可能な別の方法は、アルコールを添加する際の、前の沈殿工程又は複数の工程を通じて温度を周囲温度(室温)より著しく下げることである。例えば、結果として非特異的解重合をもたらす望ましくない反応を防止するためには、温度を約5℃まで下げてもよい。
【0022】
本発明によれば、ヘパリンは選択的に酸化され、それによりATと特異的な五糖との間の相互作用により媒介される抗凝固作用を阻害する。酸化は、2つの隣接した遊離のヒドロキシルをもつグリコールを選択的に分割し、得られた生成物は「グリコール分割」生成物と称される。このため、未分画ヘパリンの組成物は、例えば米国特許第4,990,502号明細書の開示に従い、適当な反応媒体中で、メタ過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩化合物で処理される。他の酸化剤は、それらが非硫酸化残基に対し、最終生成物において要求されるような硫酸塩のクリティカルレベルを損なうことなく、同様の化学的インパクトを与える場合には有用となる。過ヨウ素酸化合物が酸化剤として使用される場合、それはヨウ素酸塩へ、続いて還元工程において、集合的に「ヨウ素化合物」と称される別の不活性型のヨウ素へ還元される。本発明のプロセスの除去工程は、いかなるヨウ素化合物の酸化作用も除去又は最小限にするため、及び非特異的解重合を妨害する( )最小限にする方法で、プロセスからヨウ素化合物を取り除くために役立つ。この理由から、除去工程はアルコールを用いた1つ又は2つの沈殿工程を含んでなり得る。それはまた、化学的及び選択的に酸化剤を除去する目的で、2つの近接したヒドロキシル基をもつクエンチ剤、例えばエチレングリコール、グリセロール、及び同様の薬剤を添加することも含み得る。
【0023】
酸化されたヘパリンはその後、例えばアルコール沈殿による単離の後、還元剤、適切にはホウ素化水素ナトリウムを用いて、例えば米国特許第4,990,502号明細書に従って処理される。他の還元剤は、酸化されたグルクロン/イズロン酸残基の同様の還元を、ホウ素化水素ナトリウムのように他の糖残基の硫酸基を不必要に修飾又は破壊することなく実行し得る場合には、使用してもよい。そのように還元された鎖は、例えばアルコール沈殿により単離可能であり、解重合工程へ移される。
【0024】
そのように記載された方法において未分画ヘパリンを用いることは、廃棄物を減らすこと及び費用効果を高めることに寄与しかつ、望ましい多糖鎖長と保持された硫酸基とをもつ組成物製品の供給を支持し得ることから、一般に本発明に有利であると考えられる。
【0025】
解重合工程は、水溶液中で、約15乃至約25%w/vの修飾ヘパリン濃度において実施し得る。次いで、強力な酸性化剤を、約3乃至約4のpHまで混合する。適切なpH範囲は、約3.0乃至約3.5である。約3.0のpH値は、本発明の方法によれば適切であるが、pH3.5もまた適することが判明しており、概説された分子量範囲内の化学修飾ヘパリンを産生することができる。本発明のプロセスは、4乃至10時間の時間枠内で操作する場合、加水分解工程のプロセス時間によってコントロール可能な、このpH範囲内のフレキシビリティを許すことが判明している。塩酸は、本発明のプロセスにとり適切な酸であるが、他の強酸も、それらが硫酸基を実質的に破壊しない場合には有用であると判定し得る。上記に規定した条件を適用することにより、適切な鎖長と貯蔵安定性とをもつ製品が、薬学的に有用な組成物へのその後のワークアップのために回収される。
【0026】
方法は、非硫酸化グルクロン/イズロン酸が化学的に修飾され、かつ主として還元末端、レムナント末端として生じることから、多糖鎖長内の硫酸基の全体的な富化をもたらす。方法はしたがって、硫酸基を保持すること、及びそれ故、天然ヘパリンの硫酸化されたドメインを保持する条件を含む。方法はまた、望ましい治療効力を支持し、かつ他の記載された低抗凝固性ヘパリンに比較して治療指数を改善するとみなされる、有利なサイズ分布をもつ鎖をもたらす。本発明は、総括的に言えば、列挙した方法により調製された化学修飾ヘパリンまで拡張される。
【0027】
本発明は、記載された方法で製造し得る、10 IU/mg未満の抗因子II活性、10 IU/mg未満の抗因子Xa活性と、及び約6.5乃至約9.5kDaの平均分子量(Mw)とをもつ、化学修飾ヘパリンを対象とする。本発明による化学修飾ヘパリンは、少なくとも90%の硫酸基を保持する多糖鎖を有する。本発明による化学修飾ヘパリンは、ヘパリンが二糖単位あたり平均2.4個の硫酸基を含有し、かつイズロン酸、I2Sあたり1個の硫酸基が、また主なグルコサミン変異体、GlcNSに2個の硫酸基があるとすれば、100個の二糖単位からなる二糖単位あたり、約1個の硫酸基を失っており、全硫酸基含量の1%未満の硫酸基の減少に相当する。
【0028】
本発明の一態様は、10 IU/mg未満の抗因子II活性と、10 IU/mgまでの抗因子Xa活性と、及び約6.5乃至約9.5kDaの平均分子量とをもつ、化学修飾ヘパリンであり、これにおいて多糖鎖は:
(i)対応する天然ヘパリンの硫酸基の少なくとも90%を保持し;
(ii)1.2乃至15kDaの分子量に相当する、2乃至25個の二糖単位を含んでなり;
(iii)天然ヘパリンの多糖鎖に比較して、アンチトロンビン媒介性の抗凝固作用を与える化学的にインタクトな糖配列に減少があり;かつ
(iv)天然ヘパリンに比較して、非硫酸化グルクロン及び/又はイズロン酸単位に減少がある。
【0029】
化学修飾ヘパリンは、約1.2乃至約15kDaの分子量に相当する、2乃至25個の二糖単位を含んでなる。化学修飾ヘパリンは、天然ヘパリンの多糖鎖に比較して、アンチトロンビン(AT)媒介性の抗凝固作用に関与する化学的にインタクトな五糖配列に減少があり、かつ天然ヘパリンに比較して、非硫酸化グルクロン及びイズロン酸残基に減少がある多糖鎖を有する。
【0030】
本発明の一態様は、分子量3.6乃至9.6kDaの、6乃至16個の二糖単位をもつ、主に生じる多糖鎖を含んでなる化学修飾ヘパリンである。用語「主に」は、この文脈では「しばしば最も多く存在する」多糖鎖の意味をもつ。
【0031】
本発明の一態様は、少なくとも分子量8kDaの、少なくとも30%の多糖鎖をもつ化学修飾ヘパリンである。
【0032】
本発明の一態様は、スレオニン残基により、又はスレオニンの誘導体、例えばそのエステルもしくはアミドにより終端する鎖を含んでなる、化学修飾ヘパリンである。スレオニン残基は、以下に末端基として図示される。
【0033】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の3乃至15%は、少なくとも15kDaの分子質量を有する。
【0034】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の25乃至47%は、少なくとも9kDaの分子質量を有する。
【0035】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の40乃至60%は、少なくとも7kDaの分子質量を有する。
【0036】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の60乃至80%は、少なくとも5kDaの分子質量を有する。
【0037】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の85%は、少なくとも3kDaの分子質量を有する。
【0038】
本発明の一態様においては、化学修飾ヘパリンの多糖鎖の95%は、少なくとも2kDaの分子質量を有する。
【0039】
さらなる一態様においては、本発明の化学修飾ヘパリンは、以下の表による、重量の累積%で表わされた、多糖の分布及びその対応する分子質量を有する:
【0040】
【表1】
【0041】
さらなる一態様においては、本発明の化学修飾ヘパリンは、以下の表による、重量の累積%で表わされた、多糖の分布及びその対応する分子質量を有する:
【0042】
【表2】
【0043】
本発明による化学修飾ヘパリンは、主な構造として、末端スレオニン残基と共に以下に図示した二糖をもつ多糖鎖を有する。主な二糖は、約600Daの分子量を有する。
【0044】
【化1】
【0045】
(式中、nは2−25の整数である)
本発明のさらなる一態様においては、本発明による化学修飾ヘパリンは、以下の化学構造を有するグリコール分割残基を含んでなる:
【0046】
【化2】
【0047】
グリコール分割残基は、方法及び特異的な加水分解工程に関する文脈において先に議論されたような、酸化及び還元プロセスの結果として、化学修飾ヘパリンの多糖鎖中に出現する。それらはまた、先に記載された解重合(加水分解)工程の有効性の指標とみなし得る。それはさらに、グリコール分割残基の出現の化学的言及に関する米国特許第4,990,502号明細書が参照される。図示されたグリコール分割残基は、非硫酸化イズロン酸及びグルクロン酸の酸化及び還元に由来する。
【0048】
本発明による化学修飾ヘパリンは、5.0乃至6.5ppmの範囲内に
1H−NMRスペクトルを有しており、これは、何ら0.1(mol)%を上回る大きさのプロトンシグナルがないことにより、天然ヘパリンからの
1H−NMRスペクトルに適合する。
【0049】
本発明の一態様においては、本明細書に記載されたような化学修飾ヘパリンは、欧州評議会、欧州医薬品品質部門(EDQM)、2012により設定されたヘパリン承認基準に合致する
1H−NMRスペクトルを有すること、例えば、0.10−2.00ppm、2.10−3.10ppm、及び5.70−8.00ppmの範囲において、5.42ppmにおけるヘパリンシグナルの高さに比較して、4パーセントを超えて大きい任意の未確認のシグナルがないことにより、現在承認されているヘパリン基準に適合する。
【0050】
一態様においては、本発明による化学修飾ヘパリンは、2,000乃至15,000ダルトンの間に約90%が分布する、約7,500ダルトンの相対平均分子質量範囲を有する;硫酸化の程度は、二糖単位あたり2乃至2.5である。
【0051】
本発明の一態様においては、本明細書に記載されたような化学修飾ヘパリンは、ATへの結合部位以外の別のヘパリン領域に関連して既に開示された療法にとり、有用であり得る。例としては、制限するものではないが、炎症の治療、神経変性性疾患の治療、組織修復、卒中、ショック特に敗血症性ショックの予防及び治療、並びに転移の発生防止などの領域を包含する。
【0052】
本発明の一態様は、マラリアの治療において有用な、化学修飾ヘパリンである。本明細書において開示されたような化学修飾ヘパリンは、血液の異常な粘着作用により引き起こされる、マラリア由来の閉塞性作用を予防又は治療することにおいて有用であり得る。
【0053】
本発明の一態様は、本明細書に開示されたような化学修飾ヘパリンと、別のマラリア薬との併用である。本発明の一態様においては、かかる併用は、化学修飾ヘパリンと、アトバクオン/プログアニル又はアルテスネート(非経口)とを含んでなる。本発明の併用態様における、マラリア薬の例は、単独で又は互いに組合せて使用するための薬剤であり、アルテメテール、ルメファントリン、アモジアキン、メフロキン、スルファドキシン、ピリメタミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ダプソン、クリンダマイシン、キニン、テトラサイクリン、アトバキノン、プログアニル、クロロキン、プリマキン、スルファドキシン、アモジアキン、ジヒドロアルテミシニ、ピペラキン、ジヒドロアルテミシニン、及びピペラキンである。
【0054】
本発明のさらなる一態様においては、本明細書に開示されたような化学修飾ヘパリンは、マラリア薬と同時に又は連続的に、即ちマラリア薬との補助療法において投与し得る。
【0055】
用語「マラリア薬」は、寄生虫感染症を治療するために既に確立された薬剤などの、マラリアの治療用に通常使用される薬剤を包含する。本発明のさらなる一態様は、マラリアを治療するための方法であって、治療有効量の本明細書に記載されたような化学修飾ヘパリンを、かかる治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、該方法である。
【0056】
本発明のさらなる一態様は、本明細書に記載されたような化学修飾ヘパリンを、薬学的及び薬理学的に許容される担体と一緒に含んでなる医薬組成物である。本発明のさらなる一態様においては、本明細書に記載されたような医薬組成物は、皮下又は静脈内注射によるなど、非経口的投与によって全身投与してもよい。さらなる一態様においては、本明細書に記載されたような医薬組成物は、経口的に投与してもよい。非経口投与用には、活性化合物は溶液又は懸濁液中に取り込まれていてもよく、それはまた、無菌の希釈剤、例えば注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、緩衝剤、及び浸透圧を調整するための薬剤などの、1つ以上のアジュバントも含有する。非経口用の製剤は、アンプル、バイアル、また自己投与用のプレフィルド又はディスポーザブルシリンジ、或いは静脈内又は皮下注入用などの注入装置として送達し得る。本発明による化学修飾ヘパリンは、皮下に、かつ適切な自己投与式の用具、例えばインジェクタを用いて投与してもよい。
【0057】
本明細書に記載のような化学修飾ヘパリンを含んでなる医薬組成物は、1つ又はいくつかの、通常の薬学的に許容される担体の組合せを含んでなっていてもよい。担体又は賦形剤は、活性物質のためのビヒクルとしての役割を果たし得る、固体、半固体、又は液状の物質であってよい。組成物は、単回用量で、24時間ごとに、1−30、好ましくは1−10日の期間にわたり投与し得る。用量は、所与の体重あたり0.5−6mg/kgでよく、静脈内に6又は8時間ごとに、又は皮下に毎日1−4回のいずれかで与えられる。推算される単回用量は、25−100mg/日の化学修飾ヘパリンであるが、1gまで、又はそれより多くてもよい。用量は、投与の形態に関連する。記載された医薬組成物はさらに、先のセクションで概説したような補足的又は相補的療法を用いてマラリアを治療するのに適した、追加の薬剤を含んでなっていてもよい。本発明の化学修飾ヘパリンは、例えば、P.ファルシパルム(falciparum)赤血球膜タンパク質1(PfEMP1)を標的とすることにより、抗凝固作用に無関係な治療活性を及ぼす目的で、天然の形態に含まれる充分量の硫酸基を保持すること、及び、同時に五糖に固有の抗凝固活性を廃止又は大部分を低減させることが必要となる。また、本発明らは、セレクチン阻害、並びに他のヘパリン依存性の生物学的作用が、多糖鎖長と相関しており、それ故、化学修飾が結果として天然分子の高度のフラグメント化をもたらし得ないことを理解している。皮下投薬後の長鎖ヘパリンのバイオアベイラビリティは低く、かつヘパリン誘発性の血小板減少症(HIT)の可能性は、明確に鎖長と相関しており、本発明による化学修飾ヘパリン誘導体は、完全長のものであってはならない。本化学修飾ヘパリンは、いくつかの重要な配慮の結果である:1.最初に、プロセス効率の基準を満たすため、標的ヘパリンは、未分画ヘパリンから製造可能でなければならなかった。2.治療効果は、充分に長い糖鎖長と明確に相関することから、プロセスは多すぎる短鎖をもたらすことはできない。3.望ましい皮下投薬レジームは、長鎖を以てしては不可能であるため、プロセスは多すぎる長鎖をもたらしてはならない。4.同様に、長い鎖長は、HITなどの望ましくない副作用と相関する。5.プロセスは、AT結合性五糖に固有の抗凝固作用を除去するべきである。6.プロセスは、ポリマーの脱硫酸化を避けるものとなるが、治療効果は陰性の電荷密度を与える硫酸化の程度と明確に相関することから、硫酸化された残基の割合はむしろ増大するべきである。上記に記載され、かつ以下の詳細な実験のセクションにおいて記載される本発明は、上記に概説された障害を克服すること、及びそれ故、マラリアを治療するための有用な薬物候補を製造することが可能であることを証明する。