特許第6703815号(P6703815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許6703815-架構構造 図000002
  • 特許6703815-架構構造 図000003
  • 特許6703815-架構構造 図000004
  • 特許6703815-架構構造 図000005
  • 特許6703815-架構構造 図000006
  • 特許6703815-架構構造 図000007
  • 特許6703815-架構構造 図000008
  • 特許6703815-架構構造 図000009
  • 特許6703815-架構構造 図000010
  • 特許6703815-架構構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703815
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】架構構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/18 20060101AFI20200525BHJP
   E04B 1/36 20060101ALI20200525BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   E04B1/18 A
   E04B1/36 Z
   E04H9/02 331Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-182685(P2015-182685)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-57621(P2017-57621A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】梁田 真史
(72)【発明者】
【氏名】井出 豊
(72)【発明者】
【氏名】村田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】橘 保宏
(72)【発明者】
【氏名】吉川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 和久
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 諭
(72)【発明者】
【氏名】川上 大樹
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−42050(JP,A)
【文献】 特開2010−106612(JP,A)
【文献】 特開2015−36482(JP,A)
【文献】 特開平5−311757(JP,A)
【文献】 特開2002−39266(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3141151(JP,U)
【文献】 特開2012−36612(JP,A)
【文献】 特開2007−197916(JP,A)
【文献】 特開2004−69067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00−1/36
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれも剛接合とされている架構構造。
【請求項2】
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれもピン接合とされている架構構造。
【請求項3】
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、片側のみのピン接合とされている架構構造。
【請求項4】
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、片側のみの剛接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれもピン接合とされている架構構造。
【請求項5】
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、片側のみの剛接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、片側のみのピン接合とされている架構構造。
【請求項6】
前記柱の柱脚部は、
浮き上がりを許容する弾性部材を介して、前記建物の基礎部に接合された免震装置に支持されている
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の架構構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の架構構造においては、耐震性能の向上と共に、建物内のレイアウトの自由度を高くする技術が求められている。しかし、一般的な方法で耐震性能を向上させれば、建物内における架構構成部材が占める割合が増し、室内空間は狭くなり、建物内のレイアウトの自由度が低下する。
建物の架構を、地震力を負担する剛接架構部と、地震力を負担しない柔接架構部(ピン接架構部)に分け、柔架構部において、建物内のレイアウトの自由度を高くする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、多層建物の架構構造を、剛なラーメン架構の剛架構部(剛接架構部)と、柔なラーメン架構の柔架構部(柔接架構部)を連接して構築する構成である。これにより、地震力を剛接架構部のみに負担させることが可能となり、剛接架構部にピン接合された柔接架構部は、剛接架構部よりも柱径及び梁成を小さくできる。この結果、柔接架構部の建物内のレイアウトの自由度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−32635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、剛接架構部に柔接架構部をそのまま連設した構成である。このため、剛接架構部のレイアウトの自由度は低いままであり、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、室内空間のレイアウトの自由度が高い架構構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る建物の架構構造は、柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させている。
【0008】
この架構構造によれば、柱の断面積は、柱が受ける鉛直荷重と、梁から受ける曲げモーメントに抵抗できる大きさに設計される。
柱の柱梁接合部の第一方向には、第一方向梁が接合され、第一方向梁からの、鉛直方向下向きの荷重に基づくモーメントが作用する。この結果、柱の第一方向には、両側のモーメントの差(不釣り合い)による第一方向曲げモーメントが作用する。
一方、柱の柱梁接合部の第二方向には、第二方向梁が接合され、第二方向梁からの、鉛直方向下向きの荷重に基づくモーメントが作用する。この結果、柱の第二方向には、両側のモーメントの差による、第二方向曲げモーメントが作用する。
ここで、柱の断面形状が楕円又は長方形とされているので、第一方向曲げモーメントが第二方向曲げモーメントより大きい場合、柱の水平断面の長軸の方向を第一方向に一致させる。これにより、長軸側が、柱に作用する曲げモーメントの大きな方を負担し、短軸側が、曲げモーメントの小さな方を負担する。
この結果、建物の架構構造の必要強度を確保できる。同時に、柱の短軸側で囲まれた室内空間を広くし、室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る架構構造において、前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれも剛接合とされている。
【0010】
この架構構造によれば、柱の長軸側の一方が剛接合され、他方がピン接合される。また、柱の短軸側の両側が剛接合される。
これにより、柱と梁が剛接合されて地震力を負担する剛接架構部と、剛接架構部に連接して構築され、地震力を負担しないピン接架構部を構築することができる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る架構構造において、前記柱の柱脚部は、浮き上がりを許容する弾性部材を介して、前記建物の基礎部に接合された免震装置に支持されている。
【0012】
この架構構造によれば、柱の柱脚部が免震装置で支持され、免震装置は、浮き上がりを許容する弾性部材を介して、建物の基礎部に接合されている。
これにより、剛接架構部に引抜き力が作用しても、弾性部材が引抜き力を吸収し、免震装置の損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としてあるので、室内空間のレイアウトの自由度が高い架構構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る架構構造の基本構成を示す平面図である。
図2】(A)は、図1のX1−X1線断面図であり、(B)は、図1のX2−X2線断面図である。
図3】(A)は、本発明の第1実施形態に係る柱の断面図であり、(B)は、従来の柱の断面図であり、(C)は、楕円柱を組み込んだ柱梁架構の平面図である。
図4】(A)は、本発明の柱梁接合部の平面図であり、(B)は、図4(A)のX1−X1線断面図である。
図5】(A)は、本発明の柱梁接合部の柱に生じる曲げモーメントを模式的に説明するための正面図であり、(B)は、その側面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るピン接架構部の基本構成を示す断面図である。
図7】(A)は、本発明の第2実施形態に係る柱梁接合部の基本構成を模式的に示す平面図であり、(B)は、本発明の第3実施形態に係る柱梁接合部の基本構成を模式的に示す平面図である。
図8】(A)は、本発明の第4実施形態に係る柱梁接合部の基本構成を模式的に示す平面図であり、(B)は、本発明の第5実施形態に係る柱梁接合部の基本構成を模式的に示す平面図であり、(C)は、本発明の第6実施形態に係る柱梁接合部の基本構成を模式的に示す平面図である。
図9】(A)は、本発明の第7実施形態に係る柱の基本構成を示す平面図であり、(B)は、その柱を用いた柱梁架構の基本構成を示す平面図である。
図10】(A)は、本発明の第8実施形態に係る架構構造の免震装置の取付け状態を示す斜視図であり、(B)は、その取付部を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る架構構造について、図1図6を用いて説明する。
図1は、建物12の基準階の平面図であり、図2(A)は、図1のX1−X1線断面図、図2(B)は、図1のX2−X2線断面図である。図3(A)は、本発明の柱の水平断面図であり、(B)は従来の柱の水平断面図であり、(C)は、建物12の部分平面図である。図4(A)は、柱梁接合部の水平断面図であり、(B)は、図4(A)のX1−X1線断面図である。図5(A)は、柱に作用する曲げモーメントを模式的に示す正面図であり、(B)は、その側面図である。図6は、ピン接架構部の基本構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る架構構造は、建物12のY軸方向(第一方向)の中央部に剛接架構部10が構築され、剛接架構部10のY軸方向の両側に、ピン接架構部20が構築された構成である。
【0017】
建物12は、X軸方向(第二方向)が長手方向とされている。建物12の架構を構成する、内部の柱14と外周の柱24は、いずれも格子状に配列されている。即ち、柱24は、Y1線上及びY4線上を、X軸方向へ連続して配置され、柱14は、Y2線上及びY3線上を、X軸方向へ連続して配置されている。
【0018】
ここに、Y1線上の柱24とY2線上の柱14、及びY3線上の柱14とY4線上の柱24は、Y軸方向に距離L1あけて配置され、Y2線上の柱14とY3線上の柱14は、Y軸方向に距離L2あけて配置されている。また、柱14及び柱24は、同じX軸線上に配置され、隣り合う柱14及び柱24は、距離Wあけて配置されている。
【0019】
剛接架構部10は、柱14、大梁(第一方向梁)16、及び大梁(第二方向梁)18で構築されている。
即ち、Y2線上の柱14とY3線上の柱14との間には、Y軸方向の大梁16が接合され、Y2線上の柱14同士、及びY3線上の柱14同士の間には、X軸方向の大梁18が接合されている。また、大梁16同士の間には、X軸方向に小梁19が接合されている。
【0020】
柱14と大梁16の接合部、及び柱14と大梁18の接合部(部分拡大図の黒丸部)は、いずれも、剛接合とされている。ここに、剛接合とは、鉛直荷重とモーメント荷重のいずれも伝達する接合構造をいう。柱14と大梁16、18が高い接合強度で接合され、大梁16、18から柱14へ、鉛直荷重及びモーメント荷重が伝達される。この結果、剛接架構部10に、地震時の水平荷重を負担させることができる。
【0021】
また、ピン接架構部20は、柱14、柱24、梁(第一方向梁)26、梁28、及び大梁18で構築されている。
即ち、Y1線上の柱24とY2線上の柱14との間、及びY3線上の柱14とY4線上の柱24との間には、Y軸方向の梁26が接合され、Y1線上の柱24同士、及びY4線上の柱24同士の間には、X軸方向の梁28が接合されている。また、大梁18と梁28との間には、Y軸方向へ、梁29が架けられている。なお、梁29は、ピン接合であることを示すため、両端部を梁18、28と離して記載している。
【0022】
柱14と梁26の接合部(部分拡大図の白丸部)は、ピン接合とされている。ここに、ピン接合とは、鉛直荷重は伝達するが、モーメント荷重は伝達しない接合構造をいう。即ち、梁26から柱14へは、鉛直荷重は伝達されるが、モーメント荷重は伝達されない。ピン接架構部20には、地震時の水平荷重を負担させることはできない。
なお、柱24と梁26の接合部、及び柱24と梁28の接合部も、ピン接合とされている。更に、大梁18と梁29の接合部、梁28と梁29の接合部も、ピン接合とされている。
【0023】
図2(A)に示すように、建物12は、高さ方向に複数階が構築されている。また、建物12は免震建物とされ、柱14の柱脚部14Dと基礎部44との間、及び柱24の柱脚部24Dと基礎部44との間には、それぞれ免震装置42が設けられている。
【0024】
本実施形態においては、地震時の水平荷重は剛接架構部10が負担し、ピン接架構部20は、地震時の水平荷重を負担しないので、柱24の小径化、梁26、28、29の細径化を図ることができる。即ち、ピン接架構部20の梁26の梁成は、剛接架構部10の大梁16の梁成より低くされている。
【0025】
図2(B)に示すように、剛接架構部10には、ブレース40が、中央部を挟んで対に設けられている。ブレース40は、いずれも、大梁16に沿ってY軸方向に、斜めに配置され、上下方向に複数配置されている。一方のブレース40は、一端が柱14Aの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁16に固定されている。他方のブレース40は、一端が柱14Bの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁16に固定されている。
【0026】
また、剛接架構部10には、ブレース40と直交させて、ブレース41が設けられている。即ち、図1に示すように、破線で示すブレース41は、破線で示すブレース40と直交させて、大梁18に沿ってX軸方向に設けられている。ブレース41も、ブレース40と同様に、対に設けられ、一方のブレース41は、一端が柱14Aの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁18に固定されている。他方のブレース41は、一端が柱14Bの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁18に固定されている。
【0027】
ブレース40とブレース41は、Y軸上に配置された柱14A、14Bに、それぞれ対称形に取付けられる構成である。耐震強度上必要な数量が、X・Y軸方向の任意な位置にバランス良く配置されている。
これにより、剛接架構部10の耐震強度をより高めることができる。
【0028】
図3(A)に示すように、柱14は、水平断面が楕円形の鋼管柱90の内部にコンクリート86が充填された、コンクリート充填鋼管柱である。柱14の断面形状は、長軸側が幅A、短軸側が幅B(幅A>幅B)の楕円形状とされている。幅A、幅Bの値は、後述するように、柱に作用する鉛直荷重、曲げモーメント、地震力等により決定される。
【0029】
図3(B)に示す、一般に用いられている断面形状が円形の円形柱50と、同一条件で対比しながら説明する。
円形柱50も、鋼管92の内部にコンクリート86が充填されたコンクリート充填鋼管柱とした場合、同一の設計条件では、円形柱50では、直径Cは900mmとなる。一方、断面形状が楕円形の柱14の場合には、長軸側の幅Aが800mm、短軸側の幅Bが600mmとなる。即ち、柱径を小さくできる。
【0030】
これは、円形柱50の場合には、最大の負荷が作用する方向の寸法で、柱径が決定されるためである。これに対し、柱の断面形状を楕円形状とすることにより、負荷の大きい方向と小さい方向の寸法を異ならせることができる。
この結果、楕円形にする手間は生じるが、柱14の、負荷が小さい方向の不要な部分を削除して、その分、室内空間を広く確保することができる。
【0031】
例えば、図3(C)に示すように、建物12は、矢印66で示すY軸方向への人の移動が多いことが予測されており、このY軸方向が、矢印67で示す、建物12の室内空間を広く確保したい方向と一致している。このY軸方向に、長軸の方向を一致させている。
即ち、楕円形状とされた柱14の長軸方向をY軸方向に一致させることにより、X軸方向が短軸の方向となる。この結果、柱14の剛接架構部10の室内空間への突き出しが抑制され、剛接架構部10のX軸方向の幅XWを広く確保でき、剛接架構部10の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0032】
また、後述するように、剛接架構部10に連接させてピン接架構部20を構築することで、ピン接架構部20の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。即ち、剛接架構部10及びピン接架構部20の、両者の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0033】
図4(A)、(B)には、柱梁接合部22における柱14と大梁16の接合例、及び柱14と梁26の接合例を示している。
柱梁接合部22には、大梁16と接合される、上ダイアフラム46Uと下ダイアフラム46Lが柱14に固定されている。上ダイアフラム46Uと下ダイアフラム46Lは、いずれも、柱14の外周面から、大梁16と接合される端面が突き出されている。
【0034】
柱14の長軸方向(Y軸方向、第一方向)の大梁16側においては、上ダイアフラム46Uと、大梁16の上フランジ16Uが溶接接合され、下ダイアフラム46Lと、大梁16の下フランジ16Lが溶接接合されている。また、大梁16のウェブ16Wは、柱14から突出されたシアプレート48に、ボルト接合されている。
この結果、柱14と大梁16の接合が剛接合となっている。
【0035】
柱14の長軸方向の梁26側においては、梁26の上下フランジは、いずれも、上側の上ダイアフラム46U、及び下側の下ダイアフラム46Lには接合されず、梁26のウェブ26Wが、柱14から突出されたシアプレート49にボルト接合されている。
この結果、柱14と梁26の接合がピン接合となっている。
【0036】
また、柱14の短軸方向(X軸方向、第二方向)には、大梁18と接合される、上ダイアフラム46Uと中ダイアフラム46Mが柱14の両側に固定されている。上ダイアフラム46Uと中ダイアフラム46Mは、いずれも、柱14の外周面から、大梁18と接合される端面が突出されている。
【0037】
これにより、上ダイアフラム46Uと、大梁18の上フランジ18Uが溶接接合され、中ダイアフラム46Mと、大梁18の下フランジ18Lが溶接接合されている。また、大梁18のウェブ18Wは、柱14から突出されたシアプレート47に、ボルト接合され、柱14と大梁18の接合が剛接合とされている。
これらの溶接接合とブレース補強を併せて、剛接架構部10の耐震強度が確保されている。
【0038】
ここで、柱14に作用する曲げモーメントについて、図5(A)、(B)を用いて説明する。図5(A)は、図4(A)のX1−X1線断面を模式的に示した正面図である。
柱14のY軸方向の一方の側面には、大梁16が剛接合され、他方の側面には、梁26がピン接合されている。これにより、柱14には、大梁16から、大梁16の鉛直方向下向きの荷重に基づいて発生する曲げモーメントMY1が、時計回りに作用する。
一方、梁26はピン接合とされているため、梁26から柱14へ伝達される曲げモーメントMY2の大きさは、無視できる程小さい(MY2≒0)。
【0039】
この結果、柱14のY軸方向には、曲げモーメントMY1とMY2の差である、Y軸方向曲げモーメントΔMY(ΔMY=MY1−MY2≒MY1)が作用する。
即ち、柱14は、長期荷重としては、鉛直荷重に加え、Y軸方向に作用する、Y軸方向曲げモーメントΔMYに抵抗する強度を確保すれば良いといえる。
【0040】
図5(B)は、図4(A)のY1−Y1線断面を模式的に示した正面図である。
柱14のX軸方向の両側面には、大梁18がそれぞれ剛接合されている。しかし、大梁18の梁成はいずれも等しく、いずれの梁長もほぼ等しい。これにより、大梁18の鉛直方向下向きの荷重は、いずれもほぼ等しくなり、大梁16に、時計回りに作用する曲げモーメントMX1と、反時計回りに作用するMX2は、ほぼ等しくなる。
【0041】
この結果、柱14のX軸方向には、曲げモーメントMX1とMX2の差である、X軸方向曲げモーメントΔMX(ΔMX=MX1−MX2≒0)が作用する。
即ち、柱14は、長期荷重としては、大きな曲げモーメントは作用せず、鉛直荷重を確保する寸法であれば良いといえる。
【0042】
本実施形態では、Y軸方向曲げモーメントΔMY>X軸方向曲げモーメントΔMXとなる。この結果、柱14の長軸方向を適切な幅Aに設計して、Y軸方向に一致させることで、大きな曲げモーメントが作用するY軸方向の要求強度を確保することができる。
【0043】
上述したように、本実施形態の架構構造は、柱梁接合部22のY軸方向に大梁16、梁26が接合され、大梁16、梁26と直交するX軸方向に大梁18が接合され、建物12の架構を構成する断面形状が楕円の柱14において、大梁16、梁26の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、大梁16、梁26から柱14のY軸方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差をY軸方向曲げモーメントΔMYとし、Y軸方向曲げモーメントΔMYを大梁18、18の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、大梁18、18から柱14のX軸方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差であるX軸方向曲げモーメントΔMXより大きくし、柱14の水平断面の長軸方向をY軸方向に一致させている。
【0044】
この結果、柱14の短軸方向がX軸方向に一致するので、柱14のX軸方向への突出しが抑えられる。これにより、剛接架構部10の両側にあるピン接架構部20同士を結ぶ、剛接架構部10の内部空間を広くすることができる。この結果、剛接架構部10のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0045】
また、図6のピン接架構部20の断面構造に示すように、ピン接架構部20は、地震力を負担しないので、柱24の径や梁26の成を、剛接架構部10に比べ小さくできる。例えば、梁26の成を小さくした分、天井板72と上階の床スラブ70との間の天井裏空間88において、ダクト74や設備機器76等の設置空間の確保が容易となる。また、梁26への梁貫通をしなくても、ダクト74や設備機器76の設置が可能となり、設備レイアウトの自由度を高くすることができる。即ち、ピン接架構部20の、レイアウトの自由度を高くすることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、柱14は、鋼管柱90にコンクリート86を充填したコンクリート充填鋼管柱で説明した。しかし、これに限定されることはなく、水平断面が楕円形状であれば、中空の鋼管柱や鉄筋コンクリート柱等でもよい。
また、図1に示す剛接架構部10とピン接架構部20の配置は一例であり、これに限定されることはなく、他の配置でも良い。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る架構構造について、図7(A)を用いて説明する。
図7(A)は、柱14の柱梁接合部30を模式的に示した断面図である。図7(A)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第2実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部30において、柱14の短軸方向と大梁18との接合が、両側共にピン接合とされている点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0048】
図7(A)に示すように、柱14の柱梁接合部30には、Y軸方向に、大梁16が柱14と剛接合され、梁26が、柱14とピン接合とされている。これは第1実施形態と同じ構成であり、柱14のY軸方向には、大梁16に基づくY軸方向曲げモーメント(第一方向曲げモーメント)ΔMYが作用する。
【0049】
一方、X軸方向には、柱14の両側に大梁18が接合されている。しかし、大梁18の接合はピン接合であることから、柱14へ伝達されるX軸方向曲げモーメント(第二方向曲げモーメント)ΔMXは小さく、ほぼゼロとなる。
【0050】
即ち、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、柱14のY軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態では、柱14の長軸方向はY軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る架構構造について、図7(B)を用いて説明する。
図7(B)は、柱14の柱梁接合部32を模式的に示した断面図である。図7(B)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第3実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部32において、柱14の短軸方向の片側にのみ、大梁18がピン接合されている点において、第2実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0052】
図7(B)に示すように、柱14の柱梁接合部32には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26がピン接合されている。これは、第2実施形態と同じ構成であり説明は省略する。
【0053】
一方、柱14の柱梁接合部32のX軸方向には、柱14の片側にのみ、大梁18がピン接合されている。しかし、大梁18は、柱14とピン接合とされているため、柱14に生じるX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、ほぼゼロとなる。
【0054】
即ち、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、柱14のY軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態では、柱14の長軸方向はY軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第2実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第2実施形態と同じであり説明は省略する。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る架構構造について、図8(A)を用いて説明する。
図8(A)は、柱14の柱梁接合部34を模式的に示した断面図である。図8(A)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第4実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部34において、柱14の長軸方向の一方に、大梁16が剛接合されているものの、他方には梁26が接合されていない点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0056】
図8(A)に示すように、柱14の柱梁接合部34には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。また、柱14の柱梁接合部34のX軸方向には、柱14の両側に、大梁18が剛接合されている。
【0057】
これにより、大梁16から柱14へ伝達される曲げモーメントMY1が、Y軸方向曲げモーメントΔMY(ΔMY=MY1)となる。なお、第1実施形態の梁26は、ピン接合されていたため、柱14へ及ぼす影響は小さく(MY2≒0)、Y軸方向曲げモーメントΔMYの値は、第1実施形態の場合とほぼ等しい。
【0058】
一方、X軸方向は、柱梁接合部34の両面に大梁18が剛接合されている。これは第1実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0059】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る架構構造について、図8(B)を用いて説明する。
図8(B)は、柱14の柱梁接合部36を模式的に示した断面図である。図8(B)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第5実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部36において、柱14の短軸方向の両側に接合される大梁18が、いずれもピン接合とされている点において、第4実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0060】
図8(B)に示すように、柱14の柱梁接合部36には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。これは第4実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
また、柱14の柱梁接合部36のX軸方向には、柱14の両側に、大梁18がピン接合されている。これは、第2実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
【0061】
この結果、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく(ΔMX≒0)、Y軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第4実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第4実施形態と同じであり説明は省略する。
【0062】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る架構構造について、図8(C)を用いて説明する。
図8(C)は、柱14の柱梁接合部38を模式的に示した平面図である。図8(C)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第6実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部38において、柱14の短軸方向の片側にのみ大梁18がピン接合されている点において、第5実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0063】
図8(C)に示すように、柱14の柱梁接合部38には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。これは第4実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。また、柱14のX軸方向には、柱梁接合部38の片側にのみ、大梁18がピン接合されている。これは第3実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
【0064】
即ち、X軸方向においては、柱14の片側にのみ大梁18がピン接合されているが、ピン接合であるため、柱14へ伝達されるX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく(ΔMX≒0)、Y軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第5実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第5実施形態と同じであり説明は省略する。
【0065】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係る架構構造について、図9(A)、(B)を用いて説明する。ここで、図9(A)は、柱梁接合部80における断面図を示し、(B)は、建物の基準階における平面図を示している。
第7実施形態に係る架構構造は、柱78の断面形状が長方形である点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0066】
図9(A)に示すように、柱78は、長軸方向が幅D、短軸方向が幅Eの長方形柱である。柱78の長軸方向は、Y軸方向に一致させ、柱78の短軸方向は、X軸方向に一致させている。また、柱78は、断面が長方形の鋼管柱84の内部に、コンクリート86が充填されたコンクリート充填鋼管柱とされている。
【0067】
柱78の柱梁接合部80には、上ダイアフラム82Uと下ダイアフラム82Lが設けられている。柱78と大梁16の接合は、第1実施形態と同様に、上ダイアフラム82Uと下ダイアフラム82Lを利用した剛接合とされ、柱78と梁26の接合は、第1実施形態と同様に、ピン接合とされている。
【0068】
これにより、図9(B)に示すように、剛接架構部10の柱を長方形の柱78とし、長軸方向をY軸方向に一致させることで、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
即ち、柱78の短軸側を、建物12の剛接架構部10の内部空間側に向けることで、柱78の、内部空間への突出しが抑えられる。これにより、剛接架構部10の内部空間の柱78間の幅XWを大きく確保でき、剛接架構部10の内部空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、柱78と大梁16との接合が剛接合とされ、柱78と梁26との接合がピン接合とされている。また、柱78と大梁18との接合は、いずれも剛接合とされている。これにより、剛接架構部10にのみ地震力を負担させ、剛接架構部10に連接して構築されたピン接架構部20には、地震力を負担させない構成とすることができる。これにより、ピン接架構部20の柱24の径や梁26の成を、剛接架構部10に比べ小さくできる。
【0070】
この結果、図6に示したように、ピン接架構部20の内部を、例えば、天井板72と上階の床スラブ70との間の天井裏空間88において、梁26の成を小さくできる分、ダクト74や設備機器76等の設置空間の確保が容易となる。また、梁26への梁貫通をしなくても、ダクト74や設備機器76の設置が可能となり、設備レイアウトの自由度を高くすることができる。
即ち、剛接架構部10及びピン接架構部20の、両者の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、柱78は、コンクリート充填鋼管柱で説明した。しかし、これに限定されることはなく、水平断面が長方形であれば、中空の鋼管柱や鉄筋コンクリート柱等でもよい。他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
また、本実施形態は、第2実施形態〜第6実施形態に適用してもよい。
【0072】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態に係る架構構造について、図10(A)、(B)を用いて説明する。第8実施形態に係る架構構造は、複数の免震装置42の中の一部の免震装置42を、引抜力に耐える構成で据付けた点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
ここで、図10(A)は、免震装置42の据付状態を示す斜視図であり、(B)は、免震装置42の下フランジ52と、建物12の基礎部54の取り付け部を示す分解正面図である。
【0073】
図10(A)に示すように、建物12の基礎部54の上面には、免震装置42が載置されている。免震装置42の下フランジ52と基礎部54は、複数のボルト60で固定されている。免震装置42の上には、図示しない柱14、24の柱脚部が載せられている。
免震装置42は、建物12を支持する全ての柱14、24の下に設けられている。これにより、建物12が免震装置42で支持され、建物12の免震化が図られている。
【0074】
第1実施形態で説明したように、複数の柱14の中には、ブレース40とブレース41の両方が取り付けられた、柱14A、14Bが複数存在する。
本実施形態の免震装置42は、この、ブレース40とブレース41の両方が取り付けられた、柱14A、14Bを対象としている。柱14A、14Bを支持する免震装置42は、免震装置42の浮上りが可能な構成で取り付けられている。
【0075】
図10(B)にように、具体的には、免震装置42は、下フランジ52を用いて、建物12の基礎部54にボルト60で固定される。このとき、ボルト60の頭の下側と、下フランジ52の上面との間に、ゴム部材62と抑え金具64を介在させている。
即ち、下フランジ52の上に、ゴム部材62と抑え金具64を置いた状態で、ボルト60を基礎部54のネジ穴58にねじ込んで、免震装置42を固定している。
ここに、ゴム部材62は、免震装置42の免震ゴム部56より柔らかいゴムで筒状に形成され、内部にはボルト60を挿通させる貫通孔が設けられている。
【0076】
これにより、柱14A、又は柱14Bが引抜力を受けたとき、免震装置42は、免震ゴム部56が引抜力を受けて下フランジ52を持ち上げる。
このとき、下フランジ52は、ボルト60の頭との間に設けられたゴム部材62を圧縮しながら持ち上げられる。ゴム部材62は、免震ゴム部56より柔らかいので、圧縮されて免震ゴム部56より先に変形する。下フランジ52が持ち上げられる分、免震装置42の免震ゴム部56に作用する引張力を抑制でき、免震装置42の損傷を抑制できる。
【0077】
なお、本実施形態では、ブレース40とブレース41の両方が接続された柱14A、14Bを支持する免震装置42のみを、浮上り可能な取付け方法で取り付けた。
しかし、これに限定されることはなく、必要に応じて、他の柱14の柱脚部の免震装置42を、浮上り可能な取付け方法で取り付けても良い。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
なお、本実施形態は、第2実施形態〜第7実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 剛接架構部
12 建物
14 柱(断面形状が楕円、剛接架構部)
16 大梁(第一方向梁)
18 大梁(第二方向梁)
20 ピン接架構部
22、30、32、34、36、38 柱梁接合部
24 柱(ピン接架構部)
26 梁(第一方向梁)
28 梁(ピン接架構部)
42 免震装置
54 基礎部
62 ゴム部材(弾性部材)
78 柱(断面形状が長方形、剛接架構部)
ΔMY 第一方向曲げモーメント
ΔMX 第二方向曲げモーメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10