(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれも剛接合とされている架構構造。
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれもピン接合とされている架構構造。
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、一方が剛接合、他方がピン接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、片側のみのピン接合とされている架構構造。
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、片側のみの剛接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、いずれもピン接合とされている架構構造。
柱梁接合部の第一方向に第一方向梁が接合され、前記第一方向梁と直交する第二方向に第二方向梁が接合され、建物の架構を構成する断面形状が楕円又は長方形の柱において、
前記第一方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第一方向梁から前記柱の前記第一方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差を第一方向曲げモーメントとし、
前記第一方向曲げモーメントを、前記第二方向梁の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、前記第二方向梁から前記柱の前記第二方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差である第二方向曲げモーメントより大きくし、
前記柱の水平断面の長軸方向を前記第一方向に一致させ、
前記柱梁接合部と前記第一方向梁との接合は、片側のみの剛接合とされ、
前記柱梁接合部と前記第二方向梁との接合は、片側のみのピン接合とされている架構構造。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る架構構造について、
図1〜
図6を用いて説明する。
図1は、建物12の基準階の平面図であり、
図2(A)は、
図1のX1−X1線断面図、
図2(B)は、
図1のX2−X2線断面図である。
図3(A)は、本発明の柱の水平断面図であり、(B)は従来の柱の水平断面図であり、(C)は、建物12の部分平面図である。
図4(A)は、柱梁接合部の水平断面図であり、(B)は、
図4(A)のX1−X1線断面図である。
図5(A)は、柱に作用する曲げモーメントを模式的に示す正面図であり、(B)は、その側面図である。
図6は、ピン接架構部の基本構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る架構構造は、建物12のY軸方向(第一方向)の中央部に剛接架構部10が構築され、剛接架構部10のY軸方向の両側に、ピン接架構部20が構築された構成である。
【0017】
建物12は、X軸方向(第二方向)が長手方向とされている。建物12の架構を構成する、内部の柱14と外周の柱24は、いずれも格子状に配列されている。即ち、柱24は、Y1線上及びY4線上を、X軸方向へ連続して配置され、柱14は、Y2線上及びY3線上を、X軸方向へ連続して配置されている。
【0018】
ここに、Y1線上の柱24とY2線上の柱14、及びY3線上の柱14とY4線上の柱24は、Y軸方向に距離L1あけて配置され、Y2線上の柱14とY3線上の柱14は、Y軸方向に距離L2あけて配置されている。また、柱14及び柱24は、同じX軸線上に配置され、隣り合う柱14及び柱24は、距離Wあけて配置されている。
【0019】
剛接架構部10は、柱14、大梁(第一方向梁)16、及び大梁(第二方向梁)18で構築されている。
即ち、Y2線上の柱14とY3線上の柱14との間には、Y軸方向の大梁16が接合され、Y2線上の柱14同士、及びY3線上の柱14同士の間には、X軸方向の大梁18が接合されている。また、大梁16同士の間には、X軸方向に小梁19が接合されている。
【0020】
柱14と大梁16の接合部、及び柱14と大梁18の接合部(部分拡大図の黒丸部)は、いずれも、剛接合とされている。ここに、剛接合とは、鉛直荷重とモーメント荷重のいずれも伝達する接合構造をいう。柱14と大梁16、18が高い接合強度で接合され、大梁16、18から柱14へ、鉛直荷重及びモーメント荷重が伝達される。この結果、剛接架構部10に、地震時の水平荷重を負担させることができる。
【0021】
また、ピン接架構部20は、柱14、柱24、梁(第一方向梁)26、梁28、及び大梁18で構築されている。
即ち、Y1線上の柱24とY2線上の柱14との間、及びY3線上の柱14とY4線上の柱24との間には、Y軸方向の梁26が接合され、Y1線上の柱24同士、及びY4線上の柱24同士の間には、X軸方向の梁28が接合されている。また、大梁18と梁28との間には、Y軸方向へ、梁29が架けられている。なお、梁29は、ピン接合であることを示すため、両端部を梁18、28と離して記載している。
【0022】
柱14と梁26の接合部(部分拡大図の白丸部)は、ピン接合とされている。ここに、ピン接合とは、鉛直荷重は伝達するが、モーメント荷重は伝達しない接合構造をいう。即ち、梁26から柱14へは、鉛直荷重は伝達されるが、モーメント荷重は伝達されない。ピン接架構部20には、地震時の水平荷重を負担させることはできない。
なお、柱24と梁26の接合部、及び柱24と梁28の接合部も、ピン接合とされている。更に、大梁18と梁29の接合部、梁28と梁29の接合部も、ピン接合とされている。
【0023】
図2(A)に示すように、建物12は、高さ方向に複数階が構築されている。また、建物12は免震建物とされ、柱14の柱脚部14Dと基礎部44との間、及び柱24の柱脚部24Dと基礎部44との間には、それぞれ免震装置42が設けられている。
【0024】
本実施形態においては、地震時の水平荷重は剛接架構部10が負担し、ピン接架構部20は、地震時の水平荷重を負担しないので、柱24の小径化、梁26、28、29の細径化を図ることができる。即ち、ピン接架構部20の梁26の梁成は、剛接架構部10の大梁16の梁成より低くされている。
【0025】
図2(B)に示すように、剛接架構部10には、ブレース40が、中央部を挟んで対に設けられている。ブレース40は、いずれも、大梁16に沿ってY軸方向に、斜めに配置され、上下方向に複数配置されている。一方のブレース40は、一端が柱14Aの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁16に固定されている。他方のブレース40は、一端が柱14Bの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁16に固定されている。
【0026】
また、剛接架構部10には、ブレース40と直交させて、ブレース41が設けられている。即ち、
図1に示すように、破線で示すブレース41は、破線で示すブレース40と直交させて、大梁18に沿ってX軸方向に設けられている。ブレース41も、ブレース40と同様に、対に設けられ、一方のブレース41は、一端が柱14Aの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁18に固定されている。他方のブレース41は、一端が柱14Bの柱梁接合部に固定され、他端が下階の大梁18に固定されている。
【0027】
ブレース40とブレース41は、Y軸上に配置された柱14A、14Bに、それぞれ対称形に取付けられる構成である。耐震強度上必要な数量が、X・Y軸方向の任意な位置にバランス良く配置されている。
これにより、剛接架構部10の耐震強度をより高めることができる。
【0028】
図3(A)に示すように、柱14は、水平断面が楕円形の鋼管柱90の内部にコンクリート86が充填された、コンクリート充填鋼管柱である。柱14の断面形状は、長軸側が幅A、短軸側が幅B(幅A>幅B)の楕円形状とされている。幅A、幅Bの値は、後述するように、柱に作用する鉛直荷重、曲げモーメント、地震力等により決定される。
【0029】
図3(B)に示す、一般に用いられている断面形状が円形の円形柱50と、同一条件で対比しながら説明する。
円形柱50も、鋼管92の内部にコンクリート86が充填されたコンクリート充填鋼管柱とした場合、同一の設計条件では、円形柱50では、直径Cは900mmとなる。一方、断面形状が楕円形の柱14の場合には、長軸側の幅Aが800mm、短軸側の幅Bが600mmとなる。即ち、柱径を小さくできる。
【0030】
これは、円形柱50の場合には、最大の負荷が作用する方向の寸法で、柱径が決定されるためである。これに対し、柱の断面形状を楕円形状とすることにより、負荷の大きい方向と小さい方向の寸法を異ならせることができる。
この結果、楕円形にする手間は生じるが、柱14の、負荷が小さい方向の不要な部分を削除して、その分、室内空間を広く確保することができる。
【0031】
例えば、
図3(C)に示すように、建物12は、矢印66で示すY軸方向への人の移動が多いことが予測されており、このY軸方向が、矢印67で示す、建物12の室内空間を広く確保したい方向と一致している。このY軸方向に、長軸の方向を一致させている。
即ち、楕円形状とされた柱14の長軸方向をY軸方向に一致させることにより、X軸方向が短軸の方向となる。この結果、柱14の剛接架構部10の室内空間への突き出しが抑制され、剛接架構部10のX軸方向の幅XWを広く確保でき、剛接架構部10の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0032】
また、後述するように、剛接架構部10に連接させてピン接架構部20を構築することで、ピン接架構部20の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。即ち、剛接架構部10及びピン接架構部20の、両者の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0033】
図4(A)、(B)には、柱梁接合部22における柱14と大梁16の接合例、及び柱14と梁26の接合例を示している。
柱梁接合部22には、大梁16と接合される、上ダイアフラム46Uと下ダイアフラム46Lが柱14に固定されている。上ダイアフラム46Uと下ダイアフラム46Lは、いずれも、柱14の外周面から、大梁16と接合される端面が突き出されている。
【0034】
柱14の長軸方向(Y軸方向、第一方向)の大梁16側においては、上ダイアフラム46Uと、大梁16の上フランジ16Uが溶接接合され、下ダイアフラム46Lと、大梁16の下フランジ16Lが溶接接合されている。また、大梁16のウェブ16Wは、柱14から突出されたシアプレート48に、ボルト接合されている。
この結果、柱14と大梁16の接合が剛接合となっている。
【0035】
柱14の長軸方向の梁26側においては、梁26の上下フランジは、いずれも、上側の上ダイアフラム46U、及び下側の下ダイアフラム46Lには接合されず、梁26のウェブ26Wが、柱14から突出されたシアプレート49にボルト接合されている。
この結果、柱14と梁26の接合がピン接合となっている。
【0036】
また、柱14の短軸方向(X軸方向、第二方向)には、大梁18と接合される、上ダイアフラム46Uと中ダイアフラム46Mが柱14の両側に固定されている。上ダイアフラム46Uと中ダイアフラム46Mは、いずれも、柱14の外周面から、大梁18と接合される端面が突出されている。
【0037】
これにより、上ダイアフラム46Uと、大梁18の上フランジ18Uが溶接接合され、中ダイアフラム46Mと、大梁18の下フランジ18Lが溶接接合されている。また、大梁18のウェブ18Wは、柱14から突出されたシアプレート47に、ボルト接合され、柱14と大梁18の接合が剛接合とされている。
これらの溶接接合とブレース補強を併せて、剛接架構部10の耐震強度が確保されている。
【0038】
ここで、柱14に作用する曲げモーメントについて、
図5(A)、(B)を用いて説明する。
図5(A)は、
図4(A)のX1−X1線断面を模式的に示した正面図である。
柱14のY軸方向の一方の側面には、大梁16が剛接合され、他方の側面には、梁26がピン接合されている。これにより、柱14には、大梁16から、大梁16の鉛直方向下向きの荷重に基づいて発生する曲げモーメントMY1が、時計回りに作用する。
一方、梁26はピン接合とされているため、梁26から柱14へ伝達される曲げモーメントMY2の大きさは、無視できる程小さい(MY2≒0)。
【0039】
この結果、柱14のY軸方向には、曲げモーメントMY1とMY2の差である、Y軸方向曲げモーメントΔMY(ΔMY=MY1−MY2≒MY1)が作用する。
即ち、柱14は、長期荷重としては、鉛直荷重に加え、Y軸方向に作用する、Y軸方向曲げモーメントΔMYに抵抗する強度を確保すれば良いといえる。
【0040】
図5(B)は、
図4(A)のY1−Y1線断面を模式的に示した正面図である。
柱14のX軸方向の両側面には、大梁18がそれぞれ剛接合されている。しかし、大梁18の梁成はいずれも等しく、いずれの梁長もほぼ等しい。これにより、大梁18の鉛直方向下向きの荷重は、いずれもほぼ等しくなり、大梁16に、時計回りに作用する曲げモーメントMX1と、反時計回りに作用するMX2は、ほぼ等しくなる。
【0041】
この結果、柱14のX軸方向には、曲げモーメントMX1とMX2の差である、X軸方向曲げモーメントΔMX(ΔMX=MX1−MX2≒0)が作用する。
即ち、柱14は、長期荷重としては、大きな曲げモーメントは作用せず、鉛直荷重を確保する寸法であれば良いといえる。
【0042】
本実施形態では、Y軸方向曲げモーメントΔMY>X軸方向曲げモーメントΔMXとなる。この結果、柱14の長軸方向を適切な幅Aに設計して、Y軸方向に一致させることで、大きな曲げモーメントが作用するY軸方向の要求強度を確保することができる。
【0043】
上述したように、本実施形態の架構構造は、柱梁接合部22のY軸方向に大梁16、梁26が接合され、大梁16、梁26と直交するX軸方向に大梁18が接合され、建物12の架構を構成する断面形状が楕円の柱14において、大梁16、梁26の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、大梁16、梁26から柱14のY軸方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差をY軸方向曲げモーメントΔMYとし、Y軸方向曲げモーメントΔMYを大梁18、18の鉛直方向下向きの荷重に基づいて、大梁18、18から柱14のX軸方向へ作用する、それぞれの曲げモーメントの差であるX軸方向曲げモーメントΔMXより大きくし、柱14の水平断面の長軸方向をY軸方向に一致させている。
【0044】
この結果、柱14の短軸方向がX軸方向に一致するので、柱14のX軸方向への突出しが抑えられる。これにより、剛接架構部10の両側にあるピン接架構部20同士を結ぶ、剛接架構部10の内部空間を広くすることができる。この結果、剛接架構部10のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0045】
また、
図6のピン接架構部20の断面構造に示すように、ピン接架構部20は、地震力を負担しないので、柱24の径や梁26の成を、剛接架構部10に比べ小さくできる。例えば、梁26の成を小さくした分、天井板72と上階の床スラブ70との間の天井裏空間88において、ダクト74や設備機器76等の設置空間の確保が容易となる。また、梁26への梁貫通をしなくても、ダクト74や設備機器76の設置が可能となり、設備レイアウトの自由度を高くすることができる。即ち、ピン接架構部20の、レイアウトの自由度を高くすることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、柱14は、鋼管柱90にコンクリート86を充填したコンクリート充填鋼管柱で説明した。しかし、これに限定されることはなく、水平断面が楕円形状であれば、中空の鋼管柱や鉄筋コンクリート柱等でもよい。
また、
図1に示す剛接架構部10とピン接架構部20の配置は一例であり、これに限定されることはなく、他の配置でも良い。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る架構構造について、
図7(A)を用いて説明する。
図7(A)は、柱14の柱梁接合部30を模式的に示した断面図である。
図7(A)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第2実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部30において、柱14の短軸方向と大梁18との接合が、両側共にピン接合とされている点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0048】
図7(A)に示すように、柱14の柱梁接合部30には、Y軸方向に、大梁16が柱14と剛接合され、梁26が、柱14とピン接合とされている。これは第1実施形態と同じ構成であり、柱14のY軸方向には、大梁16に基づくY軸方向曲げモーメント(第一方向曲げモーメント)ΔMYが作用する。
【0049】
一方、X軸方向には、柱14の両側に大梁18が接合されている。しかし、大梁18の接合はピン接合であることから、柱14へ伝達されるX軸方向曲げモーメント(第二方向曲げモーメント)ΔMXは小さく、ほぼゼロとなる。
【0050】
即ち、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、柱14のY軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態では、柱14の長軸方向はY軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る架構構造について、
図7(B)を用いて説明する。
図7(B)は、柱14の柱梁接合部32を模式的に示した断面図である。
図7(B)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第3実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部32において、柱14の短軸方向の片側にのみ、大梁18がピン接合されている点において、第2実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0052】
図7(B)に示すように、柱14の柱梁接合部32には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26がピン接合されている。これは、第2実施形態と同じ構成であり説明は省略する。
【0053】
一方、柱14の柱梁接合部32のX軸方向には、柱14の片側にのみ、大梁18がピン接合されている。しかし、大梁18は、柱14とピン接合とされているため、柱14に生じるX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、ほぼゼロとなる。
【0054】
即ち、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく、柱14のY軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態では、柱14の長軸方向はY軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第2実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第2実施形態と同じであり説明は省略する。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る架構構造について、
図8(A)を用いて説明する。
図8(A)は、柱14の柱梁接合部34を模式的に示した断面図である。
図8(A)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第4実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部34において、柱14の長軸方向の一方に、大梁16が剛接合されているものの、他方には梁26が接合されていない点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0056】
図8(A)に示すように、柱14の柱梁接合部34には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。また、柱14の柱梁接合部34のX軸方向には、柱14の両側に、大梁18が剛接合されている。
【0057】
これにより、大梁16から柱14へ伝達される曲げモーメントMY1が、Y軸方向曲げモーメントΔMY(ΔMY=MY1)となる。なお、第1実施形態の梁26は、ピン接合されていたため、柱14へ及ぼす影響は小さく(MY2≒0)、Y軸方向曲げモーメントΔMYの値は、第1実施形態の場合とほぼ等しい。
【0058】
一方、X軸方向は、柱梁接合部34の両面に大梁18が剛接合されている。これは第1実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0059】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る架構構造について、
図8(B)を用いて説明する。
図8(B)は、柱14の柱梁接合部36を模式的に示した断面図である。
図8(B)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第5実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部36において、柱14の短軸方向の両側に接合される大梁18が、いずれもピン接合とされている点において、第4実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0060】
図8(B)に示すように、柱14の柱梁接合部36には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。これは第4実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
また、柱14の柱梁接合部36のX軸方向には、柱14の両側に、大梁18がピン接合されている。これは、第2実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
【0061】
この結果、柱14のX軸方向に作用するX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく(ΔMX≒0)、Y軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第4実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第4実施形態と同じであり説明は省略する。
【0062】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る架構構造について、
図8(C)を用いて説明する。
図8(C)は、柱14の柱梁接合部38を模式的に示した平面図である。
図8(C)において、剛接合部は黒丸印で示し、ピン接合部は白丸印で示している。
第6実施形態に係る架構構造は、柱梁接合部38において、柱14の短軸方向の片側にのみ大梁18がピン接合されている点において、第5実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0063】
図8(C)に示すように、柱14の柱梁接合部38には、Y軸方向に大梁16が剛接合され、梁26は接合されていない。これは第4実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。また、柱14のX軸方向には、柱梁接合部38の片側にのみ、大梁18がピン接合されている。これは第3実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
【0064】
即ち、X軸方向においては、柱14の片側にのみ大梁18がピン接合されているが、ピン接合であるため、柱14へ伝達されるX軸方向曲げモーメントΔMXは小さく(ΔMX≒0)、Y軸方向に作用するY軸方向曲げモーメントΔMYの方が大きい。
本実施形態においては、柱14の長軸方向は、Y軸方向へ向けられており、本実施形態においても、第5実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
本実施形態の他の構成は、第5実施形態と同じであり説明は省略する。
【0065】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係る架構構造について、
図9(A)、(B)を用いて説明する。ここで、
図9(A)は、柱梁接合部80における断面図を示し、(B)は、建物の基準階における平面図を示している。
第7実施形態に係る架構構造は、柱78の断面形状が長方形である点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0066】
図9(A)に示すように、柱78は、長軸方向が幅D、短軸方向が幅Eの長方形柱である。柱78の長軸方向は、Y軸方向に一致させ、柱78の短軸方向は、X軸方向に一致させている。また、柱78は、断面が長方形の鋼管柱84の内部に、コンクリート86が充填されたコンクリート充填鋼管柱とされている。
【0067】
柱78の柱梁接合部80には、上ダイアフラム82Uと下ダイアフラム82Lが設けられている。柱78と大梁16の接合は、第1実施形態と同様に、上ダイアフラム82Uと下ダイアフラム82Lを利用した剛接合とされ、柱78と梁26の接合は、第1実施形態と同様に、ピン接合とされている。
【0068】
これにより、
図9(B)に示すように、剛接架構部10の柱を長方形の柱78とし、長軸方向をY軸方向に一致させることで、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
即ち、柱78の短軸側を、建物12の剛接架構部10の内部空間側に向けることで、柱78の、内部空間への突出しが抑えられる。これにより、剛接架構部10の内部空間の柱78間の幅XWを大きく確保でき、剛接架構部10の内部空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、柱78と大梁16との接合が剛接合とされ、柱78と梁26との接合がピン接合とされている。また、柱78と大梁18との接合は、いずれも剛接合とされている。これにより、剛接架構部10にのみ地震力を負担させ、剛接架構部10に連接して構築されたピン接架構部20には、地震力を負担させない構成とすることができる。これにより、ピン接架構部20の柱24の径や梁26の成を、剛接架構部10に比べ小さくできる。
【0070】
この結果、
図6に示したように、ピン接架構部20の内部を、例えば、天井板72と上階の床スラブ70との間の天井裏空間88において、梁26の成を小さくできる分、ダクト74や設備機器76等の設置空間の確保が容易となる。また、梁26への梁貫通をしなくても、ダクト74や設備機器76の設置が可能となり、設備レイアウトの自由度を高くすることができる。
即ち、剛接架構部10及びピン接架構部20の、両者の室内空間のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、柱78は、コンクリート充填鋼管柱で説明した。しかし、これに限定されることはなく、水平断面が長方形であれば、中空の鋼管柱や鉄筋コンクリート柱等でもよい。他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
また、本実施形態は、第2実施形態〜第6実施形態に適用してもよい。
【0072】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態に係る架構構造について、
図10(A)、(B)を用いて説明する。第8実施形態に係る架構構造は、複数の免震装置42の中の一部の免震装置42を、引抜力に耐える構成で据付けた点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
ここで、
図10(A)は、免震装置42の据付状態を示す斜視図であり、(B)は、免震装置42の下フランジ52と、建物12の基礎部54の取り付け部を示す分解正面図である。
【0073】
図10(A)に示すように、建物12の基礎部54の上面には、免震装置42が載置されている。免震装置42の下フランジ52と基礎部54は、複数のボルト60で固定されている。免震装置42の上には、図示しない柱14、24の柱脚部が載せられている。
免震装置42は、建物12を支持する全ての柱14、24の下に設けられている。これにより、建物12が免震装置42で支持され、建物12の免震化が図られている。
【0074】
第1実施形態で説明したように、複数の柱14の中には、ブレース40とブレース41の両方が取り付けられた、柱14A、14Bが複数存在する。
本実施形態の免震装置42は、この、ブレース40とブレース41の両方が取り付けられた、柱14A、14Bを対象としている。柱14A、14Bを支持する免震装置42は、免震装置42の浮上りが可能な構成で取り付けられている。
【0075】
図10(B)にように、具体的には、免震装置42は、下フランジ52を用いて、建物12の基礎部54にボルト60で固定される。このとき、ボルト60の頭の下側と、下フランジ52の上面との間に、ゴム部材62と抑え金具64を介在させている。
即ち、下フランジ52の上に、ゴム部材62と抑え金具64を置いた状態で、ボルト60を基礎部54のネジ穴58にねじ込んで、免震装置42を固定している。
ここに、ゴム部材62は、免震装置42の免震ゴム部56より柔らかいゴムで筒状に形成され、内部にはボルト60を挿通させる貫通孔が設けられている。
【0076】
これにより、柱14A、又は柱14Bが引抜力を受けたとき、免震装置42は、免震ゴム部56が引抜力を受けて下フランジ52を持ち上げる。
このとき、下フランジ52は、ボルト60の頭との間に設けられたゴム部材62を圧縮しながら持ち上げられる。ゴム部材62は、免震ゴム部56より柔らかいので、圧縮されて免震ゴム部56より先に変形する。下フランジ52が持ち上げられる分、免震装置42の免震ゴム部56に作用する引張力を抑制でき、免震装置42の損傷を抑制できる。
【0077】
なお、本実施形態では、ブレース40とブレース41の両方が接続された柱14A、14Bを支持する免震装置42のみを、浮上り可能な取付け方法で取り付けた。
しかし、これに限定されることはなく、必要に応じて、他の柱14の柱脚部の免震装置42を、浮上り可能な取付け方法で取り付けても良い。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
なお、本実施形態は、第2実施形態〜第7実施形態に適用してもよい。