(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る基礎構造について説明する。
【0014】
図1の正面断面図に示すように、基礎構造10は、地盤12に埋設された杭としてのPHC杭14(Pretensioned Spun High Strength Concrete Piles;プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)と、プレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bと、PHC杭14の上部に支持されるとともに基礎梁16A、16Bが接合された仕口部18と、フーチング20とを有して構成されている。
【0015】
フーチング20は、応力伝達管としての円筒状の鋼管22と、この鋼管22の内部(中空部)に充填されて硬化した充填材としてのコンクリートVとを有して構成されている。鋼管22は、下部がPHC杭14の杭頭部24を取り囲むとともに、上部が仕口部18に位置している。すなわち、フーチング20の上部が、仕口部18を構成している。地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH1は、大きくなっている。なお、鋼管22は、筒状の鋼管であればよく、例えば、角形鋼管であってもよい。
【0016】
仕口部18は、鉄筋コンクリート製の柱26を支持している。基礎梁16A、16Bは、仕口部18と基礎梁16A、16Bとの間の接合部28A、28Bに場所打ちされたコンクリートVにより、仕口部18に接合されている。基礎梁16A、16Bの上には床スラブ30が設けられている。
【0017】
杭頭部24を取り囲む鋼管22下部の内周面の周方向には、シアコッターとして機能する応力伝達手段としての鋼棒34が、上下方向に対して複数取り付けられている。また、PHC杭14の杭頭部24の外周面、仕口部18に位置する鋼管22上部の内周面、及び仕口部18に位置する鋼管22上部の外周面の周方向には、シアコッターとして機能する鋼棒32、36、38が、上下方向に対してそれぞれ複数取り付けられている。なお、鋼棒32、34、36、38は、応力を伝達するシアコッターとして機能するものであればよい。例えば、鉄筋、フラットプレート、スタッド、溝としてもよい。
【0018】
鋼管22内には、PHC杭14の杭頭部24を取り囲むようにして鉄筋籠40が設けられ、柱26から下方へ突出した柱主筋42を取り囲むようにして鉄筋籠44が設けられている。PHC杭14の杭頭部24の外周面と鋼管22の内周面とは離れており、杭頭部24の外周面と鋼管22の内周面との間に完全に行き渡らせるようにして、鋼管22の内部(中空部)の全てにコンクリートVが充填されて硬化している。これにより、鋼管22、杭頭部24、柱主筋42、鉄筋籠40、44、鋼棒32、34、36、及びコンクリートVが一体化されている。なお、鉄筋籠40、44は適宜設ければよく、十分なコンクリート強度が得られれば鉄筋籠40、44は設けなくてもよい。
【0019】
基礎構造10の施工手順の一例としては、まず、地盤12にPHC杭14を打設する。次に、鉄筋籠40を設置し、この後に鋼管22を設置する。次に、鉄筋籠44を設置し、この後に柱26の柱主筋42を配筋する。次に、場所打ちによって、鋼管22の内部(中空部)、接合部28A、28BにコンクリートVを打設するとともに、床スラブ30のコンクリートVを打設し、これらのコンクリートVを硬化させて、基礎構造10を構築する。なお、鋼管22を搬送して設置する為の工夫を鋼管22に設けてもよい。例えば、クレーン等により吊下する為の吊り環を鋼管22に設けてもよいし、鉄筋等の棒状部材を差し込んで鋼管22を持ち上げる貫通孔を鋼管22に形成してもよい。
【0020】
次に、本発明の第1実施形態に係る基礎構造の作用と効果について説明する。
【0021】
第1実施形態の基礎構造10では、
図1に示すように、鋼管22上部の内周面に取り付けられた鋼棒36、38がシアコッターとして機能して、鋼管22上部の内部(中空部)及び外部に充填され硬化したコンクリートVと、鋼管22との間で応力が伝達される。また、鋼管22下部の内周面に取り付けられた鋼棒34がシアコッターとして機能して、鋼管22と、鋼管22下部の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVとの間で応力が伝達される。さらに、PHC杭14の杭頭部24の外周面に取り付けられた鋼棒32がシアコッターとして機能して、鋼管22下部の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVと、杭頭部24との間で応力が伝達される。
【0022】
これらにより、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重及び引抜荷重による応力を、鋼管22上部の内部(中空部)及び外部に充填され硬化したコンクリートV、鋼棒36、38、鋼管22、鋼棒34、鋼管22下部の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートV、及び鋼棒32をこの順に介して、PHC杭14の杭頭部24へ伝達し、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重及び引抜荷重に対してPHC杭14を抵抗させることができる。また、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重による応力を、フーチング20を介してPHC杭14の杭頭部24へ伝達し、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重に対してPHC杭14を抵抗させることができる。
【0023】
また、地盤12上面に対する鋼管22の根入れ深さH1は大きくなっており、これによって、鋼管22下部の上下方向に対する長さを長くすることができ、鋼管22下部の内周面に多くの数の鋼棒34が取り付けられているので、鋼管22と、鋼管22の下部に充填され硬化したコンクリートVとの間で応力を効率よく伝えることができる。よって、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する引抜荷重に対してPHC杭14を効果的に抵抗させることができる。
【0024】
さらに、鋼管22上部の外周面に取り付けられた鋼棒38がシアコッターとして機能して、鋼管22と接合部28A、28Bとの間で応力を効率よく伝えることができる。
【0025】
また、第1実施形態の基礎構造10では、
図1に示すように、PHC杭14の杭頭部24を取り囲むように鋼管22を設置し、この鋼管22の内部(中空部)にコンクリートVを充填することにより、基礎構造10を構築することができるので、現場における基礎構造10の施工手間を低減することができる。
【0026】
以上、本発明の第1実施形態に係る基礎構造について説明した。
【0027】
なお、第1実施形態の基礎構造10では、
図1に示すように、仕口部18に位置する鋼管22上部の内周面、及び仕口部18に位置する鋼管22上部の外周面に、シアコッターとして機能する鋼棒36、38を取り付けた例を示したが、シアコッターとして機能する鋼棒は、仕口部18に位置する鋼管22上部の内周面、及び仕口部18に位置する鋼管22上部の外周面の少なくとも一方に取り付けられていればよい。
【0028】
また、第1実施形態では、
図1に示すように、地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH1を大きくした例を示したが、地盤12上面に対する鋼管22の根入れ深さは、根入れ深さH1よりも小さくしてもよいし、大きくしてもよい。
【0029】
例えば、
図2の正面断面図に示す基礎構造46のように、地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH2を根入れ深さH1よりも小さくしてもよい。
【0030】
基礎構造46は、基礎構造10と比べて鋼管22下部の上下方向に対する長さが短くなっており、これに伴って、シアコッターとして機能する応力伝達手段としての鋼棒34の数が少なくなっている。また、PHC杭14の杭頭部24から仕口部18へ渡って芯鉄筋48が設けられている。
【0031】
基礎構造46では、仕口部18に作用する引抜荷重による応力を、鋼管22及び芯鉄筋48を介してPHC杭14に伝達することにより、仕口部18に作用する引抜荷重にPHC杭14を抵抗させることができる。すなわち、シアコッターとして機能する鋼棒34の数が少なくなって不足する、引抜荷重に対する抵抗力を芯鉄筋48によって付与している。
【0032】
また、基礎構造46では、地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH2が小さいので、地盤12の掘削作業や掘削土の運搬作業にかかる手間を減らすことができる。
【0033】
なお、基礎構造46において、仕口部18に作用する引抜荷重を芯鉄筋48によって十分に負担できれば、鋼棒34は無くてもよい。
【0034】
また、例えば、
図3の正面断面図に示す基礎構造50のように、地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH3を根入れ深さH2よりも小さくしてもよい。
【0035】
基礎構造50は、基礎構造46と比べて鋼管22下部の上下方向に対する長さが短くなっている。また、PHC杭14の杭頭部24から仕口部18へ渡って芯鉄筋52が設けられている。
【0036】
基礎構造50では、仕口部18に作用する引抜荷重による応力を、芯鉄筋52を介してPHC杭14に伝達することにより、仕口部18に作用する引抜荷重にPHC杭14を抵抗させることができる。
【0037】
また、基礎構造50では、地盤12の上面に対する鋼管22の根入れ深さH3が小さいので、地盤12の掘削作業や掘削土の運搬作業にかかる手間を減らすことができる。
【0038】
なお、基礎構造50において、PHC杭14に引抜荷重を負担させない設計の場合には、芯鉄筋52は無くてもよい。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る基礎構造について説明する。以降の説明において、本発明の第1実施形態に係る基礎構造と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0040】
図4の正面断面図に示すように、基礎構造54は、地盤12に埋設された杭としてのPHC杭14と、プレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bと、PHC杭14の上部に支持されるとともに基礎梁16A、16Bが接合された仕口部18と、フーチング56とを有して構成されている。
【0041】
フーチング56は、応力伝達管としての中空のプレキャストコンクリート製筒体58と、このプレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)に充填されて硬化した充填材としてのコンクリートVとを有して構成されている。すなわち、フーチング56の外周部の全てがプレキャストコンクリート製筒体58によって構成されている。
【0042】
プレキャストコンクリート製筒体58は、下部がPHC杭14の杭頭部24を取り囲むとともに、上部が仕口部18に位置している。すなわち、フーチング56の上部が、仕口部18を構成している。地盤12の上面に対するプレキャストコンクリート製筒体58の根入れ深さH4は、小さくなっている。
【0043】
プレキャストコンクリート製筒体58の内周面の周方向には、シアコッターとして機能する溝60が、上下方向に対して複数形成されている。これにより、プレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVと、プレキャストコンクリート製筒体58との間で応力が伝達される。また、PHC杭14の杭頭部24から仕口部18へ渡って芯鉄筋62が設けられている。なお、溝60は、応力を伝達するシアコッターとして機能するものであればよい。例えば、鋼棒、鉄筋、フラットプレート、スタッドとしてもよい。
【0044】
PHC杭14の杭頭部24の外周面とプレキャストコンクリート製筒体58の内周面とは離れており、杭頭部24の外周面とプレキャストコンクリート製筒体58の内周面との間に完全に行き渡らせるようにして、プレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)の全てにコンクリートVが充填されて硬化している。これにより、プレキャストコンクリート製筒体58、杭頭部24、柱主筋42、鉄筋籠44、芯鉄筋62、及びコンクリートVが一体化されている。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係る基礎構造の作用と効果について説明する。
【0046】
第2実施形態に係る基礎構造54では、
図4に示すように、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重による応力を、プレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートV、及びプレキャストコンクリート製筒体58を介して、PHC杭14の杭頭部24へ伝達し、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重に対してPHC杭14を抵抗させることができる。
【0047】
また、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する引抜荷重による応力を、芯鉄筋62を介してPHC杭14に伝達することにより、仕口部18に作用する引抜荷重にPHC杭14を抵抗させることができる。さらに、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重による応力を、フーチング56を介してPHC杭14の杭頭部24へ伝達することにより、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重にPHC杭14を抵抗させることができる。
【0048】
また、第2実施形態に係る基礎構造54では、
図4に示すように、PHC杭14の杭頭部24を取り囲むようにプレキャストコンクリート製筒体58を設置し、このプレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)にコンクリートVを充填することにより、基礎構造54を構築することができるので、現場における基礎構造54の施工手間を低減することができる。
【0049】
例えば、プレキャストコンクリート製筒体58を中空の部材にすることにより、軽量化を図ることができ、プレキャストコンクリート製筒体58の運搬手間を低減することができる。また、プレキャストコンクリート製筒体58の内部(中空部)にコンクリートVを充填することにより、コンクリートVを打設するための型枠を別途設置する必要がなくなり、さらには、現場で打設するコンクリートVの量を減らすことができる。
【0050】
以上、本発明の第2実施形態に係る基礎構造について説明した。
【0051】
なお、第2実施形態では、
図4に示すように、地盤12の上面に対するプレキャストコンクリート製筒体58の根入れ深さH4を小さくした例を示したが、地盤12上面に対するプレキャストコンクリート製筒体58の根入れ深さは、根入れ深さH4よりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。基礎構造54では、地盤12の上面に対するプレキャストコンクリート製筒体58の根入れ深さH4が小さいので、地盤12の掘削作業や掘削土の運搬作業にかかる手間を減らすことができる。基礎構造54において、PHC杭14に引抜荷重を負担させない設計の場合には、芯鉄筋62は無くてもよい。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態に係る基礎構造について説明する。以降の説明において、本発明の第1実施形態に係る基礎構造と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0053】
図5の正面断面図に示すように、基礎構造64は、地盤12に埋設された杭としてのPHC杭14と、プレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bと、PHC杭14の上部に支持されるとともに基礎梁16A、16Bが接合された仕口部18と、フーチング66とを有して構成されている。
【0054】
フーチング66は、応力伝達管としての中空部材68と、この中空部材68の内部(中空部)に充填されて硬化した充填材としてのコンクリートVとを有して構成されている。また、中空部材68は、PHC杭14の杭頭部24を取り囲む円筒状の下鋼管70と、仕口部18に位置し、下鋼管70の上端部に下端部が接合されて下鋼管70と一体となった中空のプレキャストコンクリート製上筒体72とを有して構成されている。また、下鋼管70の中空部と、プレキャストコンクリート製上筒体72の中空部とは、連通している。すなわち、フーチング66の上部が、仕口部18を構成している。地盤12の上面に対する下鋼管70の根入れ深さH1は、大きくなっている。
【0055】
また、下鋼管70上端部の内周面には、周方向に対して杭頭鉄筋74が複数取り付けられており、杭頭鉄筋74の下鋼管70から上方へ突出した部分がプレキャストコンクリート製上筒体72中に埋設されている。これにより、杭頭鉄筋74を介してプレキャストコンクリート製上筒体72から下鋼管70へ応力が伝達される。
【0056】
杭頭部24を取り囲む下鋼管70の内周面の周方向には、シアコッターとして機能する応力伝達手段としての鋼棒34が、上下方向に対して複数取り付けられている。また、PHC杭14の杭頭部24の外周面の周方向には、シアコッターとして機能する鋼棒32が、上下方向に対してそれぞれ複数取り付けられている。さらに、プレキャストコンクリート製上筒体72の内周面の周方向には、シアコッターとして機能する溝60が、上下方向に対して複数形成されている。なお、鋼棒32、34や溝60は、応力を伝達するシアコッターとして機能するものであればよい。例えば、鋼棒、鉄筋、フラットプレート、スタッド、溝としてもよい。
【0057】
PHC杭14の杭頭部24の外周面と下鋼管70の内周面とは離れており、杭頭部24の外周面と下鋼管70の内周面との間に完全に行き渡らせるようにして、中空部材68の内部(中空部)の全てにコンクリートVが充填されて硬化している。これにより、中空部材68(下鋼管70、プレキャストコンクリート製上筒体72)、杭頭部24、柱主筋42、鉄筋籠40、44、鋼棒32、34、及びコンクリートVが一体化されている。
【0058】
基礎構造64の施工手順の一例としては、まず、地盤12にPHC杭14を打設する。次に、鉄筋籠40を設置し、この後に中空部材68を設置する。次に、鉄筋籠44を設置し、この後に柱26の柱主筋42を配筋する。次に、場所打ちによって、中空部材68の内部(中空部)、接合部28A、28BにコンクリートVを打設するとともに、床スラブ30のコンクリートVを打設し、これらのコンクリートVを硬化させて、基礎構造64を構築する。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態に係る基礎構造の作用と効果について説明する。
【0060】
第3実施形態に係る基礎構造64では、
図5に示すように、プレキャストコンクリート製上筒体72の内周面に形成された溝60がシアコッターとして機能して、プレキャストコンクリート製上筒体72の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVと、プレキャストコンクリート製上筒体72との間で応力が伝達される。また、下鋼管70の内周面に取り付けられた鋼棒34がシアコッターとして機能して、下鋼管70と、下鋼管70の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVとの間で応力が伝達される。さらに、PHC杭14の杭頭部24の外周面に取り付けられた鋼棒32がシアコッターとして機能して、下鋼管70の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVと、杭頭部24との間で応力が伝達される。また、杭頭鉄筋74により、プレキャストコンクリート製上筒体72から下鋼管70へ応力が伝達される。
【0061】
これらにより、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重及び引抜荷重による応力を、プレキャストコンクリート製上筒体72の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートV、プレキャストコンクリート製上筒体72、杭頭鉄筋74、下鋼管70、鋼棒34、下鋼管70の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートV、及び鋼棒32をこの順に介して、PHC杭14の杭頭部24へ伝達し、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する鉛直荷重及び引抜荷重に対してPHC杭14を抵抗させることができる。また、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重による応力を、フーチング66を介してPHC杭14の杭頭部24へ伝達し、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する水平荷重に対してPHC杭14を抵抗させることができる。
【0062】
また、地盤12上面に対する下鋼管70の根入れ深さH1は大きくなっており、これによって、下鋼管70の上下方向に対する長さを長くすることができ、下鋼管70の内周面に多くの数の鋼棒34が取り付けられているので、下鋼管70と、下鋼管70の内部(中空部)に充填され硬化したコンクリートVとの間で応力を効率よく伝えることができる。よって、柱26及び基礎梁16A、16Bから仕口部18へ作用する引抜荷重に対してPHC杭14を効果的に抵抗させることができる。
【0063】
また、第3実施形態に係る基礎構造64では、
図5に示すように、PHC杭14の杭頭部24を取り囲むように中空部材68を設置し、この中空部材68の内部(中空部)にコンクリートVを充填することにより、基礎構造64を構築することができるので、現場における基礎構造64の施工手間を低減することができる。
【0064】
以上、本発明の第3実施形態に係る基礎構造について説明した。
【0065】
なお、第3実施形態では、
図5に示すように、地盤12の上面に対する下鋼管70の根入れ深さH1を大きくした例を示したが、地盤12上面に対する下鋼管70の根入れ深さは、根入れ深さH1よりも小さくしてもよいし、大きくしてもよい。
【0066】
例えば、
図6の正面断面図に示す基礎構造76のように、地盤12の上面に対する下鋼管70の根入れ深さH2を根入れ深さH1よりも小さくしてもよい。
【0067】
基礎構造76は、基礎構造64と比べて下鋼管70の上下方向に対する長さが短くなっており、これに伴って、シアコッターとして機能する応力伝達手段としての鋼棒34の数が少なくなっている。また、PHC杭14の杭頭部24から仕口部18へ渡って芯鉄筋48が設けられている。
【0068】
基礎構造76では、仕口部18に作用する引抜荷重による応力を、プレキャストコンクリート製上筒体72、下鋼管70、及び芯鉄筋48を介してPHC杭14に伝達することにより、仕口部18に作用する引抜荷重にPHC杭14を抵抗させることができる。すなわち、シアコッターとして機能する鋼棒34の数が少なくなって不足する、引抜荷重に対する抵抗力を芯鉄筋48によって付与している。
【0069】
また、基礎構造76では、地盤12の上面に対する下鋼管70の根入れ深さH2が小さいので、地盤12の掘削作業や掘削土の運搬作業にかかる手間を減らすことができる。
【0070】
基礎構造76において、仕口部18に作用する引抜荷重を芯鉄筋48によって十分に負担できれば、鋼棒34は無くてもよい。また、基礎構造76において、PHC杭14に引抜荷重を負担させない設計の場合には、芯鉄筋48は無くてもよい。
【0071】
また、第3実施形態では、基礎構造76の施工において、下鋼管70とプレキャストコンクリート製上筒体72とが一体化された中空部材68を設置する例を示したが、
図7の正面断面図に示す基礎構造78のように、下鋼管70とプレキャストコンクリート製上筒体72とを別々に設置した後に、下鋼管70の内部(中空部)とプレキャストコンクリート製上筒体72の内部(中空部)とにコンクリートVを充填して硬化させて、下鋼管70とプレキャストコンクリート製上筒体72とが一体となった応力伝達管80を構成するようにしてもよい。このようにすれば、中空部材68よりも軽い、下鋼管70とプレキャストコンクリート製上筒体72とを別々に運搬できるので、運搬性能を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明した。
【0073】
なお、第1〜第3実施形態では、
図1〜7に示すように、鋼管22、プレキャストコンクリート製筒体58、及びプレキャストコンクリート製上筒体72に、接合部28A、28Bを介して、プレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bを接合した例を示したが、鋼管22、プレキャストコンクリート製筒体58、及びプレキャストコンクリート製上筒体72に切欠き部を形成し、この切欠き部にプレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bの端部を挿入するようにして、鋼管22、プレキャストコンクリート製筒体58、及びプレキャストコンクリート製上筒体72の内部で、仕口部18に基礎梁16A、16Bの端部を接合するようにしてもよい。
【0074】
例えば、
図8の正面断面図、及び
図8のA−A断面図である
図9に示す基礎構造82のように、応力伝達手段としての円筒状の鋼管84に、鋼管84の上端面から下方へ切欠き部86を形成し、この切欠き部86にプレキャストコンクリート製の基礎梁16A、16Bの端部を挿入し、鋼管84の内部で、仕口部18に基礎梁16A、16Bの端部を接合するようにしてもよい。
【0075】
基礎梁16A、16Bの端部は、基礎梁16A、16Bに設けられ基礎梁16A、16Bの端面から突出するとともに端部に機械式定着具88を備える主筋90の端部と、床スラブ30に設けられ端部に機械式定着具88を備える主筋92の端部とを、鋼管84の内部(中空部)に充填させ硬化させた繊維補強コンクリートW中に埋設することにより、仕口部18に接合されている。なお、主筋90、92の端部に機械式定着具88を備えないで、主筋90の端部と主筋92の端部とを機械式継手で繋ぐようにしてもよい。この場合には、鋼管84の内部(中空部)に普通コンクリート(コンクリートV)を充填し硬化させる。主筋90、92を取り囲むようにして基礎梁16A、16Bに複数埋設されたせん断補強筋の配置ピッチは、第1〜第3実施形態の基礎構造10、54、64と同じになっている。
【0076】
切欠き部86の縁部は、基礎梁16A、16Bに埋設された固定プレート94に溶接によって接合されている。切欠き部86の縁部は、固定プレート94にボルトによって接合してもよい。また、仕口部18に位置する鋼管84の内周面の周方向には、シアコッターとして機能する鋼棒が、上下方向に対してそれぞれ複数取り付けられている(不図示)。
【0077】
また、第1〜第3実施形態では、
図1〜7に示すように、仕口部18が柱26を支持している例を示したが、鋼管22、プレキャストコンクリート製筒体58、及びプレキャストコンクリート製上筒体72に柱を直接つないで、この柱を支持するようにしてもよい。
【0078】
例えば、
図10の正面断面図に示す基礎構造96のように、応力伝達管としての中空部材102を、円筒状の鋼管98と、この鋼管98の上端部に接合され上方へ向かって縮径された円筒状の連結鋼管100とを有して構成し、連結鋼管100の上端部に柱104の下端部を接合することにより、仕口部18に柱104を支持させるようにしてもよい。
【0079】
さらに、第1〜第3実施形態では、
図1〜7に示すように、鋼管22、プレキャストコンクリート製筒体58、中空部材68の内部(中空部)に充填する充填材をコンクリートVとした例を示したが、充填材は、硬化した後に応力を確実に伝達できる仕口部18を構成できるものであればよく、モルタル等のセメント系固化材であってもよい。
【0080】
また、第1〜第3実施形態では、
図1〜7に示すように、杭をPHC杭14とした例を示したが、杭は、鋼杭、コンクリート杭、既製杭、場所打ち杭等のどのような構造の杭であってもよい。
【0081】
さらに、第1〜第3実施形態では、
図1〜7に示すように、柱26を鉄筋コンクリート製とし、基礎梁16A、16Bをプレキャストコンクリート製とした例を示したが、柱26や基礎梁16A、16Bは、フルプレキャストコンクリート製としてもよいし、場所打ちコンクリートによって形成してもよいし、どのような構造のものであってもよい。例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、プレキャストコンクリート造、それらの混合構造などであってもよい。
【0082】
例えば、
図11の正面断面図に示すように、応力伝達管としての鋼管22の側面に鉄骨製の基礎梁108A、108Bが接合された基礎構造106としてもよい。鋼管22にコンクリートVを充填して構成された仕口部18は、柱110を支持している。
【0083】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。