特許第6703854号(P6703854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6703854-可変バンドパスフィルタ 図000002
  • 特許6703854-可変バンドパスフィルタ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703854
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】可変バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20200525BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20200525BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H03H7/09 Z
   H03H7/01 B
   H01F17/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-26865(P2016-26865)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-147542(P2017-147542A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】横野 聡
(72)【発明者】
【氏名】千葉 隆
(72)【発明者】
【氏名】足立 誠幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 和郎
【審査官】 志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−076936(JP,A)
【文献】 実開昭50−128648(JP,U)
【文献】 実公昭43−029075(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00−H01F17/08
H03H7/00−H03H7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振インダクタと可変キャパシタンスを有する共振コンデンサを並列にそれぞれ備える2個の同調回路を互いに磁界結合させた複同調器を備え、
2個の前記共振インダクタが、1以上100未満の比透磁率を有する共通のトロイダルコアに巻き付けられるとともに、2個の前記共振インダクタの前記共通のトロイダルコアへの巻き範囲の間に、2個の前記共振インダクタが前記共通のトロイダルコアに巻き付けられないギャップ範囲が設けられ、
前記共通のトロイダルコアの断面を囲み込むメタルリングが、2個の前記共振インダクタのインダクタンスがほぼ等しくなるように、2個の前記共振インダクタが巻き付けられない2か所の領域のうち範囲の広い領域に配置される、
ことを特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項2】
2個の前記共振コンデンサの可変キャパシタンスは、2個の前記同調回路の並列共振周波数がほぼ等しくなるように、個別に可変に設定される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の可変バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複同調器を備える可変バンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
帯域通過フィルタとして、共振インダクタと共振コンデンサを並列に備える複数の同調回路を互いに磁界結合させた複同調器を備えるものが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−027690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、共振インダクタ同士の間の磁界結合を調整するために、空間距離を調整する方法や結合窓付きの金属遮蔽板等を配置する方法を採用していた。よって、空間距離の調整ずれや金属遮蔽板等の寸法ずれにより、共振インダクタ同士の間の磁界結合を、安定に維持することができないとともに、小型かつ少部品で実現することができなかった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、並列共振を用いる同調回路を備える可変バンドパスフィルタにおいて、共振インダクタ同士の間の磁界結合を、安定に維持するとともに小型かつ少部品で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、(1)2個の共振インダクタが、複同調器における減衰特性と挿入損失の間のトレードオフが最適化されるように、低透磁率を有する共通のトロイダルコアに巻き付けられるとともに、(2)共通のトロイダルコアの断面を囲み込むメタルリングが、2個の共振インダクタの固定インダクタンスがほぼ等しくなるように、2個の共振インダクタが巻き付けられない2か所の領域のうち角度の大きい領域に配置される。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明は、並列共振を用いる同調回路を備える可変バンドパスフィルタにおいて、共振インダクタ同士の間の磁界結合を、安定に維持するとともに小型かつ少部品で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の磁界結合を示す図である。
図2】本発明のトロイダルコアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0010】
本発明の磁界結合を図1に示す。可変バンドパスフィルタは、固定インダクタンスを有する共振インダクタLr1、Lr2と可変キャパシタンスを有する共振コンデンサCr1、Cr2を並列にそれぞれ備える2個の同調回路を互いに磁界結合させた複同調器を備える。
【0011】
図1及び図2(本発明のトロイダルコアを示す。)において、共振インダクタLr1は、a端及びa’端を有する。共振インダクタLr2は、b端及びb’端を有する。
【0012】
複同調器における減衰特性と挿入損失の間のトレードオフを最適化するためには、共振インダクタLr1、Lr2の間の磁界結合(結合係数k)を疎結合(例えば、k〜0.1)にすることが望ましい。ここで、「トレードオフの最適化」は、両方の特性を最適化することのみならず、一方の特性を犠牲にしても他方の特性を優先することも意味する。
【0013】
複数の同調回路の並列共振周波数(f01=1/2π√(Lr1r1)、f02=1/2π√(Lr2r2))を等しくするためには、第1段階として、共振インダクタLr1、Lr2の固定インダクタンスの間でばらつきを抑えて、第2段階として、共振コンデンサCr1、Cr2の可変キャパシタンスを個別に可変に設定する。
【0014】
本発明のトロイダルコアを図2に示す。共振インダクタLr1、Lr2は、共通のトロイダルコア1に巻き付けられる。トロイダルコア1の比透磁率は、1又は10のオーダーである。共振インダクタLr1、Lr2の巻き角度は、それぞれ、θr1、θr2である。共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度は、θg1、θg2(θg1>θg2)である。
【0015】
トロイダルコア1の断面を取り囲むメタルリング2は、共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度のうち、より大きいギャップ角度θg1の領域に配置される。メタルリング2の材質は、例えば、スティール、ステンレス、アルミニウム又は銅等であり、リング形状への曲げ加工を行いやすくトロイダルコア1を傷つけないものであることが望ましい。
【0016】
低透磁率のトロイダルコア1の比透磁率は、上述したように1又は10のオーダーであるため、共振インダクタLr1、Lr2の間の磁界結合(結合係数k)を疎結合にするときであっても、共振インダクタLr1、Lr2の巻き角度θr1、θr2は、共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度θg1、θg2より、十分に大きいことが望ましい。
【0017】
図1における第1段階では、共振インダクタLr1、Lr2で発生する磁束がメタルリング2で発生する渦電流により遮蔽される電磁誘導を利用する。(1)共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度のうち、より小さいギャップ角度θg2の領域を調整することにより、共振インダクタLr1、Lr2の間の磁界結合を調整したうえで、(2)共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度のうち、より大きいギャップ角度θg1の領域でメタルリング2を移動させることにより、共振インダクタLr1、Lr2の間の磁界結合に影響することなく、共振インダクタLr1、Lr2の間のばらつきを抑えることができる。
【0018】
つまり、メタルリング2を共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度θg1の中間に配置したときに、Lr1>Lr2であったときには、メタルリング2を図2における左回りに少しずつ移動させて、共振インダクタLr1へと近づけて、共振インダクタLr2から遠ざけて、Lr1〜Lr2とすればよい。一方で、メタルリング2を共振インダクタLr1、Lr2の間のギャップ角度θg1の中間に配置したときに、Lr1<Lr2であったときには、メタルリング2を図2における右回りに少しずつ移動させて、共振インダクタLr1から遠ざけて、共振インダクタLr2へと近づけて、Lr1〜Lr2とすればよい。
【0019】
図1における第2段階では、共振コンデンサCr1、Cr2の可変キャパシタンスを個別に可変に設定する。つまり、メタルリング2を共振インダクタLr1、Lr2の間で調整した後でも、f01>f02であったときには、Cr1〜Cr2の状態からCr1>Cr2の状態へと設定を変更して、f01=f02とすればよい。一方で、メタルリング2を共振インダクタLr1、Lr2の間で調整した後でも、f01<f02であったときには、Cr1〜Cr2の状態からCr1<Cr2の状態へと設定を変更して、f01=f02とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の可変バンドパスフィルタは、送受信のフロントエンド等に適用することができ、所定の帯域幅を透過させるのみならず、インピーダンスを整合させることもできる。
【符号の説明】
【0021】
r1、Lr2:共振インダクタ、Cr1、Cr2:共振コンデンサ、1:トロイダルコア、2:メタルリング

図1
図2