(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
又、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
[実施の形態]
(高温保護回路)
図1は、実施の形態に係る高温保護回路に入力される音声信号の入力ゲインGiと出力ゲインGoとの関係(入出力特性)を模式的に例示する。実施の形態に係る高温保護回路においては、例えば、
図1に示すように、入力ゲインGi=Gi1において、出力ゲインGo=Gthとなるように、ダイナミックレンジコンプレッション(DRC:Dynamic Range Compression)機能が保持されている。
【0015】
図2は、入力音声信号の周波数fと出力ゲインGoとの関係を模式的に例示する。実施の形態に係る高温保護回路においては、DRC機能を有することによって、例えば、
図2に示すように、周波数帯域毎に出力ゲインGoを制御可能である。例えば、
図2に示す例では、周波数0〜f1までの帯域ΔF1の範囲内では、出力ゲインGoは、山型のピークレベルを有するように変動しているが、周波数f1〜f2までの帯域ΔF2の範囲内では、帯域ΔF1の範囲内における出力ゲインGoに比べて、出力ゲインGoの変動幅は狭い。
【0016】
また、
図3(a)は、変動が大きな振幅特性を有する音声信号例を模式的に示し、
図3(b)は、同程度の振幅特性を有する音声信号例を模式的に示す。一般に、オーディオデータは、
図3(b)に例示するような正負に同程度(単一)の信号レベルのデータであることは少なく、
図3(a)に例示するような不規則な変動振幅特性を有する。しかしながら、設計上の出力制限のレベル以上の大きさのオーディオデータが続いた場合には、スピーカなどのデバイス等が発熱し、その温度が設計上の上限値を超えてしまう可能性がある。
【0017】
そのような、信号の大きさ(信号レベル)が不規則に変動するオーディオ信号に対して、スムーズに(聴取者にとって聴感上の違和感がないように)出力制限をかける機能として、ダイナミックレンジコンプレッション(DRC:Dynamic Range Compression)がある。
【0018】
DRCは、
図1および
図2に例示するように、所定のスレッショルド(閾値)Gth以上のデータが入力された場合にゲインを下げることで閾値Gth以上のデータが出力されないようにする機能である。すなわち、オーディオ信号のダイナミックレンジを所定の閾値レベルGthの範囲内に圧縮する(音量の強弱幅を縮める)ことにより、後段のパワーMOS等への過大入力を抑制する。
【0019】
図4は、実施の形態に係る音声信号出力装置の保護処理の流れの一例を模式的に示す。実施の形態に係る高温保護回路は、
図4に例示するように、出力ショート保護、高温ワーニング、高温保護、減電保護、スピーカ直流電圧印加保護、および過電保護を1サイクルとした各種保護処理を実行する。
【0020】
図5は、実施の形態に係る高温保護回路の概略構成を模式的に例示する。実施の形態に係る高温保護回路は、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)ブロック110と、パワーステージ350とを備える。パワーステージ350は、デバイスの温度が所定の温度値に達したことを検出すると、高温ワーニング信号OTWを出力する温度検出回路360を備え、DSPブロック110は、高温ワーニング信号OTWを受信すると、オーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮するための所定の閾値レベルGthを引き下げ、引き下げられた閾値レベルGthに基づいてオーディオ信号の音量の強弱幅を圧縮するDRC回路114を備える。
【0021】
DRC回路114は、高温ワーニング信号OTWが解除され続けると(高温ワーニング信号OTWを受信しなくなる)と、所定の閾値レベルGthを引き上げ、引き上げられた閾値レベルGthに基づいてオーディオ信号の音量の強弱幅を復元する。
【0022】
パワーステージ350には、DSPブロック110からコマンド(Command)とPWM信号が送信される。DSPブロックには、パワーステージ350からエラー信号ERRORが入力され、時分割でパワーステージのフラグが送信される。パワーステージ350内のデバイス(チップ)の温度が所定の温度値(例えば125℃)に達したことを温度検出回路360が検出すると、パワーステージ350からDSPブロック110に高温ワーニング信号OTWが出力される。
【0023】
さらに、デバイス(チップ)の温度が所定の温度値(例えば150℃)に達したことを温度検出回路360が検出すると、パワーステージ350からDSPブロック110に高温エラー信号OTPが出力され、パワーステージ350などの動作の一部もしくは全部が停止される。具体的には、高温エラー信号OTPが出力されると、スピーカ等への出力は、ミュートを経て消音され、熱的暴走を防ぐ。
【0024】
DRC回路114は、パワーステージ350から高温ワーニング信号OTWを受信すると、オーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮するための所定の閾値レベルGthを引き下げて、音量の強弱幅を圧縮する。また、DRC回路114は、高温ワーニングOTWが解除され続けると(パワーステージ350から高温ワーニングOTWが送信されない場合が続くと)、所定の閾値レベルGthを引き上げ、音量の強弱幅を復元する。
【0025】
図5に例示した、DRC回路114を備えるDSPブロック110と、温度検出回路360を備えるパワーステージ350とは、1つの半導体装置として一体化されて構成されても良いし、DSPブロック110とパワーステージ350とがそれぞれ単体の半導体装置として構成されても良い。
【0026】
また、DRC回路114は、DSPブロック110の外部に設置される形で、DSPブロック110と一体化された半導体装置として構成されても良い。また、温度検出回路360は、パワーステージ350の外部に設置される形で、パワーステージ350と一体化された半導体装置として構成されても良い。
【0027】
図6は、DRC回路114の所定の閾値レベルGthの調整例を模式的に示す。
【0028】
図6に例示するように、通常状態が続いているところに、パワーステージ350から高温ワーニング信号OTWが出力されると(時刻t1)、DRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔGだけ引き下げ、高温ワーニング信号OTWが出力されている限り(時刻t3まで)、所定の時間(ΔT)毎にDRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG引き下げて、音量の強弱幅を圧縮する。
【0029】
その後、高温ワーニング信号OTWが所定の時間(ΔT’)(すなわち、時刻t3からt4まで)解除され続けると、高温ワーニング信号OTWが解除され続けている所定の時間(ΔT)毎に(時刻t4からt6まで)DRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG引き上げて、音量の強弱幅を復元する。
【0030】
以上説明したように、実施の形態に係る高温保護回路によれば、パワーステージ350(出力段のパワーMOSなど)の状態をモニタし、温度が一定以上になった際に、DRC回路114の所定の閾値レベルGthの設定値を変更することで、温度上昇をスムーズに(聴取者にとって聴感上の違和感がないように)抑えることができる。
【0031】
また、実施の形態に係る高温保護回路によれば、DRC回路114の所定の閾値レベルGthの設定値を変更可能にしているため、閾値レベルGthの値を比較的大きめに設定することができるので、DRC処理による音圧の低下を抑制することができる。
【0032】
また、実施の形態に係る高温保護回路によれば、デバイス(チップ)温度が上昇し過ぎないように制御できるため、システム全体の信頼性が向上する。
【0033】
また、実施の形態に係る高温保護回路によれば、DRC回路114のゲインを変更するのではなく、DRC回路114の閾値レベルGthを変更(調整)するため、出力される音に違和感がなく、出力音の音圧を安定的に維持することができる。
【0034】
(音声信号出力装置)
図7は、実施の形態に係る高温保護回路を適用した音声信号出力装置のブロック構成例を模式的に示す。
【0035】
音声信号出力装置は、ロジックブロックと、アナログ信号(正弦波信号)ブロックと、アナログ信号(PWM信号)ブロックとを備える。
【0036】
ロジックブロックは、PCMデータが入力されるDSP110と、DSP110に接続されたロジック部の8倍オーバーサンプリングフィルタ(OVS)120と、DSP110に接続されたエラー制御回路140とを備える。出力FET320A・320Bが備える温度検出回路360から出力される高温ワーニング信号OTWや高温エラー信号OTPは、エラー制御回路140を通じて、DSP110に供給される。また、DCデータによるスピーカ等の劣化や破損を未然に防ぐための過電流保護信号OCPもエラー制御回路140に供給される。エラー制御回路140は、高温ワーニング信号OTW、高温エラー信号OTP、過電流保護信号OCPなどを受けると、必要に応じて、エラー信号ERRORをセンサ等のCPUやエンジン制御ユニット(ECU)のCPUなどに出力する。センサ等のCPUやECUのCPUは、エラー信号ERRORに呼応して、必要に応じてシステムを保護するための処理(機能の停止、機能の縮小など)を実行する。
【0037】
アナログ信号(正弦波信号)ブロックは、8倍OVS120に接続されたMUTE回路220と、MUTE回路220に接続された反転アンプ230と、反転アンプ230の出力とBIASフリップ240の出力とを入力するPサイド出力帰還制御(FBC)回路250Aと、MUTE回路220の出力とBIASフリップ240の出力とを入力するNサイド出力帰還制御(FBC)回路250Bと、PサイドFBC回路250Aに接続されたパルス幅変調(PWM)回路270Aと、NサイドFBC回路250Bに接続されたPWM回路270Bとを備える。MUTE回路220は、電源投入時などに生じるポップ音などを防止するための回路である。
【0038】
アナログ信号(PWM信号)ブロックは、PWM回路270Aに接続されたタイミング制御(TCP)回路310Aと、PWM回路270Bに接続されたタイミング制御(TCN)回路310Bと、TCP回路310Aに接続された出力FET320Aと、TCN回路310Bに接続された出力FET320Bとを備える。出力FET320A・320Bの出力は、それぞれ、出力端子P・Nから、外部の負荷(スピーカ190など)に出力される。
【0039】
(DRC回路)
図8(a)は、DSPブロック110内のDRC回路部の内部構成例を模式的に示す。
【0040】
図8(a)に例示するように、DSPブロック110は、各部を制御するCPU111と、閾値レベルGthを変更するスレッショルド制御回路112と、ダイナミックレンジを圧縮/復元するDRC回路114とを備える。スレッショルド制御回路112は、
図6を参照しながら説明したように、通常状態が続いているところに、パワーステージ350から高温ワーニング信号OTWが出力されると、DRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔGだけ引き下げ、高温ワーニング信号OTWが出力されている限り、所定の時間(ΔT)毎にDRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG引き下げる。
【0041】
その後、高温ワーニング信号OTWが所定の時間(ΔT’)解除され続けると、スレッショルド制御回路112は、高温ワーニング信号OTWが解除され続けている所定の時間(ΔT)毎にDRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG引き上げる。
【0042】
DRC回路114は、スレッショルド制御回路112によって変更(調節)される閾値レベルGthにしたがって、オーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮したり、復元したりする。
【0043】
なお、
図8(a)に示した例では、スレッショルド制御回路112とDRC回路114とがそれぞれ個別に構成されているが、スレッショルド制御回路112とDRC回路114とを、DRC回路114として一体化してもよい。
【0044】
図8(b)は、音声信号処理部(ディジタル信号処理部)113に接続されたDRC回路114の例を模式的に示す。音声信号処理部113は、オーディオデータを入力するスケーラ回路1131と、スケーラ回路1131に接続されたボリューム回路1132と、ボリューム回路1132に接続されたバランス回路1133と、バランス回路1133に接続されたエコライザ回路1134とを備え、DRC回路114は、エコライザ回路1134に接続される。
【0045】
図9は、実施の形態に係る高温保護回路を適用した音声信号出力装置の別のブロック構成例を模式的に示す。
【0046】
図9に例示する音声信号出力装置は、PCMデータが入力されるDSPブロック110と、DSPブロック110に接続されたオーバーサンプリングおよびノイズシェイパブロック410と、オーバーサンプリングおよびノイズシェイパブロック410に接続されたPWM信号生成ブロック420と、PWM信号生成ブロック420に接続され、温度検出回路360(
図9では図示省略)を備えたドライバ出力段ブロック430とを備える。DSPブロック110は、イコライザやボリュームなどのディジタル信号処理部113と、DRC回路114と、ポストスケジューラ/ハイパスフィルタ(HPF)処理部115とを備える。
【0047】
ドライバ出力段ブロック430内の温度検出回路360から出力された高温ワーニング信号OTWは、DSPブロック110(DRC回路114)に供給される。高温ワーニング信号OTWに呼応して、DRC回路114の所定の閾値レベルGthが所定の値ΔGだけ引き下げられ、高温ワーニング信号OTWが出力されている限り、所定の時間(ΔT)毎にDRC回路114の所定の閾値レベルGthは所定の値ΔGだけ引き下げられる。その後、高温ワーニング信号OTWが所定の時間(ΔT’)解除され続けると、高温ワーニング信号OTWが解除され続けている所定の時間(ΔT)毎にDRC回路114の所定の閾値レベルGthは、所定の値ΔGだけ引き上げられる。
【0048】
図10は、DRC回路114の動作(遷移)例を模式的示す波形図である。DRCは、所定のスレッショルド(閾値)Gth以上のデータが入力された場合にゲインを下げることで閾値Gth以上のデータが出力されないようにする機能であり、オーディオ信号のダイナミックレンジを所定の閾値レベルGthの範囲内に圧縮する(音量の強弱幅を縮める)ことにより、後段のパワーMOS等への過大入力を抑制する。
【0049】
図10に例示するように、期間ATIMEは、所定の閾値Gth以上のデータが入力されたことを検出した検出時間(時刻t1〜t2)である。期間ATIMEの間(時刻t1〜t2の間)所定の閾値Gth以上のデータが入力されると、期間A_RATEをかけて(時刻t2〜t3の間)ゲインを引き下げ(圧縮し)、出力データレベルを閾値レベルAGC_TH程度に調整する。
【0050】
その後、期間R_TIMEの間(時刻t4〜t5の間)所定の閾値Gth以下のデータが入力され続けたら(出力データレベルが閾値レベルAGC_THを下回る状態が続いたら)、期間R_RATEの間(時刻t5〜t6の間)をかけてゲインを引き上げ(復元し)、出力データレベルを閾値レベルAGC_TH程度に調整する。
【0051】
図11は、実施の形態に係る高温保護回路におけるDRC入出力ゲインG
o特性を模式的に例示する。
【0052】
図11におけるDRC圧縮レベルの傾きαを求める式(1)を以下に例示する。
【0053】
傾きαは、計算で求めた値を2の補数の8ビットHexデータに変換する。
【0054】
α=(10
(y/20)−10
(x/20))/(10
(TH/20)−10
(x/20))×128 (1)
ここで、THは、閾値AGC_TH1であり、xは入力レベルであり、yは出力レベルである。
【0055】
例えば、閾値AGC_TH1=−12dB、x=0dB、y=−6dBである場合のαを次式(2)〜(3)で求める。
【0056】
α=(10
(-6/20)−10
(0/20))/(10
(-12/20)−10
(0/20))×128 (2)
α=85.266→55
H (3)
ここで、求めた55
Hをコマンドに設定する。
【0057】
(複数のバンド毎のDRC回路)
図12は、実施の形態に係る高温保護回路において、複数の所定のバンド毎にDRC回路114を適用した構成例を模式的示す。
【0058】
図12における高温保護回路は、複数のバンド毎に設けられたフィルタ116a・116b・116cと、フィルタ116a・116b・116cにそれぞれ接続された複数のDRC回路114a・114b・114cと、複数のDRC回路114a・114b・114cにそれぞれ接続された加算器とを備える。フィルタ116a・116b・116cは、入力されたオーディオ信号を、複数のバンド(
図12お例では3バンド)に分割する。複数のDRC回路114a・114b・114cは、それぞれ、対応するバンドに対してDRC処理を行う。加算器18は、複数のDRC回路114a・114b・114cの出力を加算(再合成)して出力する。このように構成することで、より音圧を上げた状態でDRCをかけることができる。例えば、スピーカ保護や大きなオーディオ信号のクリップ出力を防止する目的で、このような複数のバンド毎のDRC回路114a・114b・114cを用いる。
【0059】
DRC回路114a・114b・114cの3つのバンドそれぞれに対してノンクリップ出力が可能である。また、DRC回路114a・114b・114cの圧縮レベルの傾きαを設定することもできる。
【0060】
また、
図13に例示するように、複数のバンド毎のDRC回路114a・114b・114cの閾値Gth1・Gth2・Gth3をそれぞれ設定することができる。
【0061】
(高温保護回路の動作例)
図14は、実施の形態に係る高温保護回路の動作例を模式的に示すタイミングチャートであり、
図14(a)は、高温ワーニング信号OTW、
図14(b)は出力ゲインG
o、
図14(c)は、チップ温度TEMPを示す。
【0062】
時刻t1〜t2の間に高温ワーニング信号OTWが出力されると、出力ゲインG
oは傾きOTARで下降され、チップ温度TEMPも下降する。チップ温度TEMPは、所定の期間(この場合、時刻t1〜t11)毎にΔTだけ下降する。
【0063】
時刻t2〜t3まで高温ワーニング信号OTWが出力されなくなると、出力ゲインG
oは傾きOTRRで上昇され、チップ温度TEMPも上昇する。
【0064】
時刻t3〜t4の間に高温ワーニング信号OTWが再度出力されると、出力ゲインG
oは再び下降され、チップ温度TEMPも再び下降する。
【0065】
図15は、実施の形態に係る高温保護回路の動作例(高温ワーニング信号OTWとDRC回路114の閾値Gth)を示す模式的タイミングチャートである。
【0066】
図15に例示するように、通常状態が続いているところに、高温ワーニング信号OTWが時刻t1において出力され、時刻t3まで出力され続けると、時刻t2〜t3においてDRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG(時刻t2〜t3の傾きで)引き下げる。高温ワーニング信号OTWが時刻t3において解除され、そのまま解除され続けると、時刻t4〜t5まで閾値レベルGthを所定の値ΔG(時刻t4〜t5の傾きで)引き上げる。時刻t5において閾値レベルGthは、オリジナルのレベルまで復元されているため、時刻t5以降、高温ワーニング信号OTWが解除され続けても、閾値レベルGthは、オリジナルのレベルまま維持される。
【0067】
時刻t1〜t2の高温ワーニング信号OTW出力検出時間、時刻t3〜t4の高温ワーニング信号OTW解除検出時間、時刻t2〜t3の傾き、および時刻t4〜t5の傾きは、コマンド入力等により外部から設定可能である。
【0068】
図16は、実施の形態に係る高温保護回路における温度検出回路360の概略構成例を模式的に示す。温度検出回路360は、
図16に示すように、電流源Iによる定電流が導通するダイオードD1・D2の直列回路と、所定のリファレンス電圧Eoとが入力されるダイオードコンパレータC1によって、基準電圧Vrefを発生することができる。
【0069】
また、
図17は、実施の形態に係る高温保護回路における温度検出回路360とDSPブロック110との接続例を模式的に示す。ダイオードコンパレータC1の出力である基準電圧Vrefの温度特性を利用してコンパレートする。リファレンス電圧Eoにより検出温度を設定することができる。
【0070】
(高温保護回路の動作方法)
図18は、実施の形態に係る高温保護回路の動作方法を概略的に例示する。
【0071】
ステップS101において、オーディオ信号の処理を開始する。
【0072】
ステップS102において、DSPブロック110のDRC回路114は、パワーステージ350からのフラグを参照する。
【0073】
ステップS103において、パワーステージ350から高温エラー信号OTPが出力されると、ステップS104において、パワーステージ350の一部もしくは全部の動作が停止される。具体的には、高温エラー信号OTPが出力されると、スピーカ等への出力は、ミュートを経て消音され、熱的暴走を防ぐ。
【0074】
ステップS105において、パワーステージ350から高温ワーニング信号OTWが出力されると、スレッショルド制御回路112は、オーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮するための所定の閾値レベルGthを引き下げ(ステップS106)、DRC回路114は、音量の強弱幅を圧縮する(ステップS109)。所定の時間(ΔT)経過するまで、DRC回路114の処理が実行される(ステップS111→S109)。
【0075】
所定の時間(ΔT)経過すると(ステップS110)、再度ステップS102に戻り、パワーステージ350からのフラグを参照する。
【0076】
その後、パワーステージ350からの高温ワーニング信号OTWが所定の時間(ΔT’)出力されなくなる(解除される)と(ステップS105→S107)、スレッショルド制御回路112は、DRC回路114の所定の閾値レベルGthを所定の値ΔG引き上げ(ステップS108)、DRC回路114は、音量の強弱幅を復元する(ステップS109)。所定の時間(ΔT)経過するまで、DRC回路114の処理が実行される(ステップS111→S109)。
【0077】
所定の時間(ΔT)経過すると(ステップS110)、再度ステップS102に戻り、上記と同様の処理が繰り返される(ステップS102〜S110)。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、出力段のパワーMOSの状態をモニタし、温度が所定の値以上になった際に、DRC回路の設定を変更し、温度上昇をスムーズに(聴取者にとって聴感上の違和感がないように)抑えることができる高温保護回路およびその動作方法、半導体装置、および音声信号出力装置を提供することができる。
【0079】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0080】
例えば、実施の形態において、高温保護回路や音声信号出力装置は、車載用の電子機器に限らず、様々な用途に用いられる電子機器に適用することができる。
【0081】
このように、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。