(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オゾン接触工程の前に前記被処理水の水質を監視する被処理水水質監視工程をさらに含み、前記合計オゾン供給量は、前記被処理水水質監視工程で取得した前記被処理水の水質に基づいて決定され、
前記合計オゾン供給量が増加した場合に、追従して前記促進酸化処理工程での前記過酸化水素の供給量を増加させる、
請求項2に記載の促進酸化処理方法。
【背景技術】
【0002】
従来、オゾンが強い酸化力を有するという特性を利用して、オゾンガスを被処理水中に散気するオゾン処理により、被処理水中の有機物、無機物、及びカビ臭物質等を酸化除去する水処理が広く実施されてきた。オゾン処理では、オゾン分子による酸化分解反応と、オゾン分子が分解して生成したヒドロキシラジカルによる酸化分解反応とが行われる。近年、特に、ヒドロキシラジカルの酸化力が非常に高いことが見出され、オゾンに過酸化水素などを組み合わせることで、ヒドロキシラジカルの生成を促進させることで、オゾン分子では分解し難い難分解性物質を分解することができる、促進酸化処理という水処理方法が着目されている。
【0003】
そこで、ヒドロキシラジカルを効率よく生成するために、被処理水中におけるオゾン濃度を一定の範囲内に維持するように、被処理水に対して供給するオゾン量及び過酸化水素量を調節する促進酸化処理方法が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の促進酸化処理方法によれば、ヒドロキシラジカルを効率よく生成できる濃度範囲に、被処理水中のオゾン濃度を制御する。
【0004】
また、被処理水中の溶存オゾン濃度に基づいて、過酸化水素の注入量を決定する促進酸化処理方法も提案されてきた(例えば、特許文献2参照)。具体的には、特許文献2に記載の促進酸化処理方法では、過酸化水素及びオゾンを添加してこれらを反応させた後の被処理水中の溶存オゾン濃度を低減するように、過酸化水素の注入量を制御していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、促進酸化処理方法では、被処理水中に臭素を含有する成分(以下、臭素含有成分とも称する)が存在する場合に、オゾンやヒドロキシラジカルによる酸化分解反応の副生成物として、臭素酸イオンが生じる虞があった。既知の臭素酸イオンの生成の流れは以下の通りである。即ち、臭素酸イオンは、被処理水中の臭素イオン(Br
−)が、オゾンと反応して次亜臭素酸イオン(OBr
−)を生成し、次亜臭素酸イオンがオゾンによりさらに酸化されて臭素酸イオン(BrO
3−)となることで生成される。ここで、臭素酸イオンは、発がん性物質であり、水質基準において基準値が定められている規制物質である。このため、被処理水中における臭素酸イオン量を低減することが求められてきた。
【0007】
そして、促進酸化処理の対象とする被処理水中における溶存オゾン量が同じ場合であっても、溶存オゾン量に対する臭素酸イオンの生成比率は、被処理水の水温、pH、被処理水中に含有される臭素含有成分の量などの各種条件が変動することに応じて大きく異なる。したがって、被処理水中における溶存オゾン量に応じて過酸化水素の供給量を調節する上記従来の促進酸化方法では、条件の変動があった場合に臭素酸イオンの発生を十分に抑制することができなかった。
【0008】
そこで、本願発明は、被処理水の条件の変動にかかわらず、臭素酸イオンの生成を十分に抑制することができる、促進酸化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、上記従来の方法に従って、溶存オゾン濃度の上昇を制御することにより臭素酸イオンの生成リスクを低減するためには、(1)オゾンの供給量自体を抑制する、或いは、(2)過酸化水素を過剰投入するという方途をとりうることを検討した。しかし、本発明者らがさらに検討を進めたところ、オゾンの供給量を抑制すれば、分解対象物質の分解効率を十分に担保することができない虞があり、酸化水素の過剰投入は、コスト面でのデメリットが大きいことが明らかとなった。さらに、上述のように、溶存オゾン量が同じ場合であっても、被処理水に関する各種条件が変動することに応じて、臭素酸イオンの生成リスクが大きく異なる。このため、上記(1)の方途に従って、分解効率の低下を許容して溶存オゾン濃度を低減させたとしても、臭素酸イオンの生成を十分に抑制できない場合があった。また、上記(2)の方途に従って、コスト上昇を許容して溶存オゾン濃度を低減させたとしても、臭素酸イオンが生成されにくい被処理水の条件の場合には、溶存オゾン濃度を不必要に低減させるためにコストを投じるような状況となりうることが想定された。
【0010】
そこで、本願発明者らは、臭素酸イオン濃度に基づいて促進酸化処理において供給する過酸化水素の量を調節することで、被処理水の条件の変動にかかわらず、臭素酸イオンの生成を十分に抑制しうることを見出し、本願発明を完成させた。
【0011】
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の促進酸化処理方法は、被処理水に対してオゾン及び過酸化水素を供給して被処理水を酸化処理する促進酸化処理方法であって、前記被処理水に対して、過酸化水素及びオゾンを接触させる、促進酸化処理工程と、前記促進酸化処理工程を経た前記被処理水中における臭素酸イオン濃度を測定する、臭素酸イオン濃度測定工程と、を含み、前記臭素酸イオン濃度の測定値に基づいて、前記促進酸化処理工程での前記過酸化水素の供給量を調節することを特徴とする。このような促進酸化処理方法によれば、被処理水の条件の変動にかかわらず、臭素酸イオンの生成を抑制することができる。
【0012】
ここで、本発明の促進酸化処理方法において、前記促進酸化処理工程の前に、前記被処理水に対してオゾンを接触させるオゾン接触工程を含み、該オゾン接触工程及び前記促進酸化処理工程における合計オゾン供給量を、前記臭素酸イオン濃度の測定値とは独立して調節することが好ましい。このような促進酸化処理方法により、被処理水の処理効率の向上と、臭素酸イオンの生成の抑制とを、高いレベルで両立することができるからである。
【0013】
また、本発明の促進酸化処理方法において、前記オゾン接触工程の前に前記被処理水の水質を監視する被処理水水質監視工程をさらに含み、前記合計オゾン供給量は、前記被処理水水質監視工程で取得した前記被処理水の水質に基づいて決定され、前記合計オゾン供給量が増加した場合に、追従して前記促進酸化処理工程での前記過酸化水素の供給量を増加させることが好ましい。このような促進酸化方法により、被処理水の水質の変動に対する応答性を向上させるとともに、臭素酸イオンの生成を効率的に抑制することができるからである。
【0014】
さらに、本発明の促進酸化処理方法において、前記促進酸化処理工程での前記過酸化水素の供給量が増加した後に、前記臭素酸イオン濃度測定工程にて得た臭素酸イオン濃度の測定値が所定の閾値超である場合に、前記合計オゾン供給量を一定に保ちつつ、前記オゾン接触工程における前記オゾン供給量を減少させ、前記促進酸化処理工程におけるオゾン供給量を増加させるように調節することが好ましい。このような促進酸化処理方法によれば、臭素酸イオンの生成を一層効率的に抑制することができるからである。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の促進酸化処理装置は、被処理水に対してオゾン及び過酸化水素を供給して被処理水を酸化処理する促進酸化処理装置であって、被処理水に対して、過酸化水素及びオゾンを接触させる、促進酸化処理槽と、前記促進酸化処理槽を経た前記被処理水中における臭素酸イオン濃度を測定する、臭素酸イオン濃度測定装置と、前記臭素酸イオン濃度測定装置により得た臭素酸イオン濃度の測定値に基づいて、前記促進酸化処理槽での前記過酸化水素の供給量を調節する過酸化水素供給量制御装置とを備えることを特徴とする。このような構成により、被処理水の条件の変動にかかわらず、臭素酸イオンの生成を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の促進酸化処理装置及び促進酸化処理方法によれば、被処理水の条件の変動にかかわらず、臭素酸イオンの生成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。本発明の促進酸化処理方法及び促進酸化処理装置は、特に限定されることなく、例えば、浄水場等において、被処理水中の有機物、無機物、及び臭気物質等を除去するための高度処理に用いられうる。また、近年利用が拡大されている下水再生水利用プロセスにおいてオゾン処理、促進酸化処理を用いる場合は、特に人の直接接触リスクの高い場合は快適性、安全性確保の観点から本発明が好適に適用しうる。
【0019】
(促進酸化処理方法及び促進酸化処理装置)
図1に、本発明に従う促進酸化処理方法を行う代表的な促進酸化処理装置の一例の概略構成を示す。ここで、
図1に示す促進酸化処理装置100は被処理水を処理する。促進酸化処理装置100は、促進酸化処理槽20、及び臭素酸イオン濃度測定装置50を備える。促進酸化処理装置100は、自然流下又はポンプ送水により導入口(図示しない)を経て装置100内に被処理水を導入し(
図1の矢印1)、促進酸化処理槽20にて被処理水に対して過酸化水素及びオゾンを接触させた後に、排出口(図示しない)より系外へと排出する(
図1の矢印2)。このとき、促進酸化処理槽20に注入される過酸化水素の量は、臭素酸イオン濃度測定装置50により得た臭素酸イオン濃度の測定値に基づいて、調節される。なお、以下において、促進酸化処理装置100において導入口側を「前段側」、排出口側を「後段側」と称することがある。
【0020】
好ましくは、促進酸化処理装置100は、促進酸化処理槽20の前段側にオゾン接触槽10を備え、促進酸化処理槽20の後段側に活性炭処理槽30を備え、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾンを発生させるオゾン発生装置40を備える。さらに、促進酸化処理装置100は、溶存オゾン濃度測定装置51や、被処理水水質監視装置52等を備えることが好ましい。以下、これらの各構成部や各構成部における処理について詳述する。なお、本明細書では、本発明にかかる促進酸化処理方法に含まれるオゾン接触工程を、オゾン接触槽10において生じる工程として記載し、促進酸化処理工程を促進酸化処理槽20において生じる工程として記載するが、本発明にかかる促進酸化処理方法はあらゆる物理的な構成部の有無によって何ら制限されるものではない。即ち、例えば、促進酸化処理が生じうる「水槽」の有無にかかわらず、被処理水に対してオゾン及び過酸化水素が供給されて促進酸化処理が生じうるのであれば、「管」状の構成部において促進酸化処理が生じる構成であっても、かかる促進酸化処理において供給される過酸化水素の量が促進酸化処理後の臭素酸イオンの濃度の測定値に応じて調節される限りにおいて、本発明にかかる促進酸化処理方法の範疇に含まれる。
【0021】
<被処理水>
促進酸化処理装置100の処理対象である被処理水としては、特に限定されることなく、例えば、水道水用の原水が挙げられる。具体的には、被処理水としては、ダムや河川等から取水した水、湖沼水、井戸水、湧水、及び地下水等が挙げられる。さらに、被処理水は、有機物や、臭素含有成分を含有する分解対象物質を含む。被処理水中における臭化物イオンの濃度は、例えば、被処理水が海水や工業排水等の影響を受けやすい場合や、塩分を含む地下水等の場合には、高くなる傾向がある。
【0022】
<被処理水水質監視装置>
導入口を経てオゾン接触槽10内に導入される被処理水の水質は、被処理水水質監視装置52によって監視されることが好ましい。被処理水水質監視装置52により取得した被処理水の水質は、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程において供給する合計オゾン供給量の決定に用いられうる。被処理水水質監視装置52は、特に限定されることなく、例えば、温度計、COD(Chemical Oxygen Demand)測定装置、UV(Ultra Violet)計、及びpH計などの、既知のあらゆる水質測定センサにより実装することができる。これらのセンサは複数を組み合わせて用いることももちろん可能である。
【0023】
<オゾン接触槽>
オゾン接触槽10は、被処理水に対してオゾンを接触させるオゾン接触工程を行う。オゾン接触槽10は、オゾン発生装置40により生成されたオゾンを、第1オゾン散気装置41を介して槽内へと導入する。なお、オゾン接触槽10は、通常使用される一般的なオゾン接触槽でありうる。被処理水とオゾンとの接触は、例えば、微小な気泡として槽内へ導入されたオゾンが被処理水内を流動することにより行われる。この際、被処理水とオゾンとの接触効率を向上すべく、撹拌、気泡の微小化や、オゾン導入速度の調節等を適宜実施することができる。このようにして、被処理水と接触されたオゾンは、一部が被処理水中の分解対象物質と反応してこれらを分解し、残りは被処理水中に溶解する。
【0024】
ここで、一般に、オゾンが臭化物イオン(Br
−)を含有する臭素含有成分と反応すると、臭素酸イオン(BrO
3−)が発生する。
図1に示した促進酸化処理装置では、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20にて被処理水中にオゾンが供給される。オゾン接触槽10以降の各構成部に滞留し、又はこれらを通過する被処理水中において臭素酸イオンが発生しうる。ここで、臭素酸イオンの発生にはある程度の反応時間を要する。本発明者らが検討を進めたところ、標準的な水質の被処理水を標準的な処理量で処理する場合、促進酸化処理工程に先立ってオゾン接触工程を実施する水処理方法では、オゾン処理工程に要する時間は短時間で十分であることが明らかとなった。よって、促進酸化処理工程に先立ってオゾン接触工程を実施する促進酸化処理方法では、オゾン接触工程の所要時間を促進酸化工程の所要時間よりも短くすることができる。これにより、オゾン接触工程における臭素酸イオンの発生確率を低減することができる。
【0025】
<溶存オゾン濃度測定装置>
オゾン接触槽10を経た被処理水中における溶存オゾン濃度は、オゾン接触槽10の後段側であって促進酸化処理槽20の前段側に備えられた溶存オゾン濃度測定装置51によって測定される。溶存オゾン濃度測定装置51は、被処理水中に溶解したオゾン濃度を測定可能な限りにおいて特に限定されることなく、既知のあらゆる溶存オゾン計により実装することができる。
【0026】
<促進酸化処理槽>
オゾン接触槽10においてオゾンと接触された被処理水は、促進酸化処理槽20へと供給される。促進酸化処理槽20は、オゾン接触槽10と同様に、オゾン発生装置40により生成されたオゾンを、第2オゾン散気装置42を介して槽内へと導入する。そして、促進酸化処理槽20は、過酸化水素注入装置60により供給された過酸化水素及びオゾンを、被処理水と接触させる。このとき、促進酸化処理槽20内では、オゾンと過酸化水素とが反応することで、オゾンよりも酸化力の強いヒドロキシラジカルが生成される。かかるヒドロキシラジカルにより、被処理水中における分解対象物質、特に、オゾン接触槽10にて分解しきれなかった難分解性物質が分解されうる。さらに、上記ヒドロキシラジカルの生成によりオゾンが分解されるので、オゾンが過剰となり臭素含有成分とオゾンとが反応して臭素酸イオンが生成されることを抑制することができる。なお、促進酸化処理槽20及び過酸化水素注入装置60としては、一般的なものを使用することができる。
【0027】
<過酸化水素注入装置>
過酸化水素注入装置60は、臭素酸イオン濃度測定装置50により得られた、促進酸化処理槽20を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度の測定値に基づいて、促進酸化処理槽20に対して過酸化水素を供給する。
図1では、促進酸化処理槽20の前段側で過酸化水素を被処理水中に供給する態様を示すが、オゾン接触水槽及び溶存オゾン濃度測定位置の後段側であって、促進酸化処理槽20までの位置において被処理水中に過酸化水素を供給可能な限りにおいて、特に限定されることなく、あらゆる配置とすることができる。例えば、過酸化水素を促進酸化処理槽20に対して直接投入するように、過酸化水素注入装置60を構成することももちろん可能である。なお、過酸化水素注入装置60は、特に限定されることなく、水処理装置に設置可能な一般的な薬品注入手段として実装することができ、例えば、過酸化水素貯蔵タンク、供給ポンプ及び流量調節バルブ等により実装することができる。
【0028】
<オゾン発生装置>
オゾン発生装置40は、オゾン供給管80を介して第1オゾン散気装置41及び第2オゾン散気装置42と連通されており、これらを介してオゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に対してオゾンガスを供給する。第1オゾン散気装置41及び第2オゾン散気装置42は、例えば、空孔を有する散気管やメンブレン散気管などにより構成することができる。そして、オゾン供給管80は、第1オゾン量調節装置81及び第2オゾン量調節装置82を備えることが好ましい。第1及び第2オゾン量調節装置81及び82は、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾン量をそれぞれ調節できる限りにおいて特に限定されることなく、例えば、流量調節バルブとして構成されうる。第1及び第2オゾン量調節装置81及び82が流量調節バルブとして構成される場合には、流量調節バルブの開度を種々変更することにより、各槽10及び20に供給するオゾン量を調節することができる。また、オゾン発生装置40への制御信号(電気信号)を用いて、オゾンガス流量は変えずに発生オゾンガスの濃度を制御する方法も適用可能である。なお、オゾン発生装置40としては、特に限定されることなく、例えば、放電現象により発生する電子により酸素をオゾンに変換する既知のオゾン発生装置を用いることができる。
【0029】
<活性炭処理槽>
活性炭処理槽30では、促進酸化処理槽20を経た被処理水中に残留した有機物等を活性炭に吸着させることも可能である。活性炭処理槽30としては、特に限定されることなく、例えば、活性炭吸着池のような一般的に使用されうる構成を採用することができる。
【0030】
<臭素酸イオン濃度測定装置>
臭素酸イオン濃度測定装置50は、促進酸化処理槽20を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度を測定する。ここで、
図1では、1台の臭素酸イオン濃度測定装置50を活性炭処理槽30の後段に配置して、活性炭処理槽30における処理を経た後の被処理水中における臭素酸イオン濃度を測定する態様を図示している。しかし、本実施形態による促進酸化処理装置100は、少なくとも促進酸化処理槽20の後段側における臭素酸イオン濃度を測定するための機構を有する限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる位置に1台又は複数台の臭素酸イオン濃度測定装置50を配置することができる。例えば、2台の臭素酸イオン濃度測定装置50を促進酸化処理装置100に実装する場合には、1台は
図1に示した臭素酸イオン濃度測定装置50のように配置して、もう1台は、オゾン接触槽10の後段であって促進酸化処理槽20の前段における被処理水中の臭素酸イオンの濃度を測定可能な位置に配置することができる位置に配置することができる。例えば、臭素酸イオン濃度測定装置50を2台備える構成においては、測定位置の異なる2つの測定装置により得られた測定値を比較することで、臭素酸イオンの発生位置を絞り込み、臭素酸イオンの発生が大きい位置でのオゾン量を低減するように調節することができる。
【0031】
臭素酸イオン濃度測定装置50としては、オンサイトの臭素酸イオン濃度を自動測定可能な測定装置を用いることができる。そのような臭素酸イオン濃度測定装置50としては、例えば、臭素酸イオンを選択的に吸着する陰イオン交換体に被処理水を通水する第1工程と、臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を含む塩酸溶液を陰イオン交換体に通水する第2工程と、陰イオン交換体を通過した塩酸溶液に含まれる蛍光物質の蛍光強度を計測する第3工程と、蛍光物質の蛍光強度と臭素酸イオン濃度との対応関係を示す検量線を用いて、計測された蛍光強度に対応する臭素酸イオン濃度を算出する第4工程と、を含み、第3工程にて、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する、臭素酸イオン濃度測定装置が挙げられる。
【0032】
<制御装置>
さらに、促進酸化処理装置100は、制御装置70を備えることが好ましい。制御装置70は、さらに、オゾン供給量制御装置71及び過酸化水素供給量制御装置72を備えることが好ましい。制御装置70、オゾン供給量制御装置71及び過酸化水素供給量制御装置72は、特に限定されることなく、CPU(Central Processing Unit)等により構成することができ、図示しないが内蔵又は外付けの記憶部(例えば、メモリ)等を備えうる。
【0033】
オゾン供給量制御装置71は、溶存オゾン濃度測定装置51により測定したオゾン濃度の測定値に基づいて、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾン量をそれぞれ制御する。好ましくは、オゾン供給量制御装置71は、被処理水水質監視装置52によりモニタリングされた、オゾン接触槽10の前段側における被処理水の水質に応じて、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾンの合計量を決定する。例えば、被処理水のpHや温度が変動すると被処理水に対するオゾンの溶解性も変動するため、溶存オゾン量を一定に保つようにあらかじめオゾン供給量を増減させる。そして、オゾン供給量制御装置71は、溶存オゾン濃度測定装置51の測定結果に基づくフィードバック制御を行って、溶存オゾン量が最適化されるように、オゾン供給量を微調整することが好ましい。
【0034】
過酸化水素供給量制御装置72は、臭素酸イオン濃度測定装置50により測定された促進酸化処理槽20の後段側における被処理水中の臭素酸イオン濃度の測定値に基づいて、促進酸化処理槽20に供給する過酸化水素の量を制御する。具体的には、例えば、促進酸化処理後の臭素酸イオンの濃度をオンサイトで自動監視して、臭素酸イオンの発生量が増加した場合には、促進酸化処理における過酸化水素量を増加させる。
【0035】
ここで、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程にて供給するオゾンの合計量は、臭素酸イオン濃度測定装置50により測定された臭素酸イオン濃度とは独立して調節されることが好ましい。オゾン接触工程及び促進酸化処理工程にて供給するオゾンの合計量を、促進酸化処理工程後の臭素酸イオン濃度の測定値とは独立して調節することで、臭素酸イオンの発生抑制と、オゾン分解処理効率の向上とを高いレベルで両立することができるからである。
【0036】
一方、本実施形態によれば、オゾン接触工程におけるオゾン供給量は、臭素酸イオン濃度に応じて調節することもできる。具体的には
図2を参照して後に詳述するが、促進酸化処理槽20に供給する過酸化水素の量を増加させても臭素酸イオン濃度測定装置50により測定した臭素酸イオン濃度が所定の閾値以下とならない場合には、オゾン接触槽10に供給するオゾン量を減少させることができる。これにより、臭素酸イオン濃度測定装置50により検出された高濃度の臭素酸イオンが、オゾン接触槽10におけるオゾンと被処理水との接触に起因して生じたものである場合に、応答性良く良好に対処することができる。オゾン接触槽10に供給するオゾン量を減少させた場合には、減少分を促進酸化処理槽20に追加して供給することで、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾンの合計量は維持する。これにより、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20における処理全体を通じての分解対象物質の分解効率を担保することができる。
【0037】
このようにして、本実施形態によれば、臭素酸イオンの発生を十分に抑制しつつ、被処理水の水質が変動した場合にはオゾン供給量を増加させて分解対象物質の分解能を強化させることができるので、結果的に、被処理水の水質が変動した場合にも、良好な水処理効率を達成することができる。
【0038】
以下、
図2を参照して、制御装置70に備えられるオゾン供給量制御装置71及び過酸化水素供給量制御装置72による制御の流れの一例を概略的に説明する。
まず、あらかじめ蓄積されているデータ等に基づいて、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程において供給するオゾン量の合計量、かかる合計量についてオゾン接触工程(本例では、オゾン接触槽10)及び促進酸化処理工程(本例では、促進酸化処理槽20)への分配比率、並びに促進酸化処理工程での過酸化水素投入量等を決定する。また、同様に、所与のデータ等に基づいて、オゾン接触処理後促進酸化処理前における被処理水中の溶存オゾン量の好適範囲を決定する。さらに、促進酸化処理後における臭素酸イオンの許容濃度は、要求される水質基準に応じてあらかじめ決定する。
【0039】
オゾン供給量制御装置71は、決定された分配比率に応じて、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程にてそれぞれ供給するオゾン(O
3)量を調節する(ステップS01)。そして、オゾン供給量制御装置71は、オゾン接触処理後促進酸化処理前における被処理水中の溶存オゾン量が、事前に決定した上記好適範囲内であるかを確認する(ステップS02)。その結果、溶存オゾン量が好適範囲内であれば、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程にて供給するオゾン量を維持し(ステップS02のYes)、被処理水水質に変動がないかを判断する(ステップS03)。あるいは、溶存オゾン量が好適範囲外であれば(ステップS02のNo)、ステップS01に戻りオゾン接触工程にて供給するオゾン量を調節する。なお、好ましくは、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程における合計オゾン供給量は直前の合計オゾン供給量を維持するため、ステップS02のNoにおいてオゾン接触処理後促進酸化処理前における被処理水中の溶存オゾン量が上記好適範囲内となるように、オゾン接触工程において供給するオゾン量を増減させた場合には、それに追従して促進酸化処理工程における供給オゾン量を調節する。
【0040】
オゾン供給量制御装置71は、上述した被処理水水質監視装置52等によりオゾン接触工程前の被処理水水質の変動が検知された場合に(ステップS03のYes)、変動後の被処理水水質に適したオゾン供給量を所与のデータ等に基づいて算出する(ステップS04)。その結果、算出したオゾン供給量の値が、現状よりも大きいのであれば(ステップS05のYes)、過酸化水素供給量制御装置72は、促進酸化処理工程における過酸化水素(H
2O
2)供給量を増加させる(ステップS06)。このときの増加量は、オゾンと過酸化水素の反応効率が良好となるような比率となるように適宜決定することができる。かかる比率は、特に限定されることなく、次亜臭素酸イオンを還元して臭素酸イオンの生成を効率的に抑制することもできるオゾン:過酸化水素の比率とすることができる。例えば、被処理水を入れた促進酸化処理槽20に対して、オゾンと、過酸化水素とを比率を変えて添加して行う事前実験により、最も良好な結果が得られる比率を決定することができる。なお、ステップS03において被処理水水質の変動が検知されなければ(ステップS03のNo)、オゾンの供給量は現状を維持する(ステップS09)。
【0041】
そして、過酸化水素供給量制御装置72は、促進酸化処理後の被処理水中における臭素酸イオン濃度の測定値が、許容濃度以下であるか否かを判定する(ステップS07)。その結果、臭素酸イオン濃度の測定値が許容濃度以下であれば(ステップS07のYes)、促進酸化処理工程における過酸化水素供給量を維持する(ステップS08)。一方、臭素酸イオン濃度の測定値が許容濃度超であれば(ステップS07のNo)、ステップS01に戻り、オゾン供給量制御装置71により、オゾン接触工程におけるオゾン供給量を減少させる。かかる制御に伴い、オゾン供給量制御装置71は、促進酸化処理工程におけるオゾン供給量を増加させて、オゾン接触工程及び促進酸化処理工程においてオゾンの合計量が、促進酸化処理工程におけるオゾン供給量を増加させる直前の合計オゾン供給量となるように制御する。
【0042】
特に、ステップS06〜S07のNo〜S01のフローでは、促進酸化処理工程における過酸化水素の供給量を増加させても、臭素酸イオン濃度の測定値が許容濃度以下とならない場合に、オゾン接触工程におけるオゾン供給量を減少させている。かかる制御によれば、促進酸化処理工程後の被処理水中に含まれる臭素酸イオンが、促進酸化処理工程ではなく、オゾン接触工程にて生じたものである場合に、オゾン接触工程におけるオゾン供給量を抑制することで、オゾン接触工程における臭素酸イオンの発生を抑制することができる。このように、
図2に示したような制御によれば、促進酸化処理工程にて発生しうる臭素酸イオンについてはステップS06にて促進酸化処理工程における過酸化水素供給量を増加することにより対処し、オゾン接触工程にて発生しうる臭素酸イオンについてはステップS07のNoを経てステップS01にてオゾン接触工程におけるオゾン供給量を抑制することにより対処することができる。
【0043】
また、ステップS07にて、臭素酸イオン濃度の測定値が許容濃度以下であると判定された場合において(ステップS07のYes)、さらなる判断ステップを設けることもできる。そのような判断ステップは、例えば、臭素酸イオン濃度の前回測定値との差分が、所定の値以上であるかを判断するステップでありうる。かかる判断ステップの結果、臭素酸イオン濃度が前回測定値よりも所定以上低下していると判断された場合、過酸化水素供給量を低下させることができる。かかる方法によれば、過酸化水素供給量を必要最小限とすることで、運転コストを削減することができる。
【0044】
なお、ここまで、
図2に示す制御はすべて制御装置70に備えられた各制御装置71及び72のいずれかにより実施されるものとして説明してきた。しかし、促進酸化処理装置100は制御装置70を備えることなく、例えば、監視者がマニュアル操作することにより、上述したような各種制御を行うように構成することももちろん可能である。
【0045】
以上、一例を用いて本発明の促進酸化処理装置及び促進酸化処理方法について説明したが、本発明の促進酸化処理装置及び促進酸化処理方法は、上記一例に限定されることはなく、適宜変更を加えることができる。例えば、オゾン接触槽10の前段において、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加及び混和し、膜ろ過する工程を実施するための凝集剤添加手段、混和手段、及び膜ろ過装置を配置することももちろん可能である。