特許第6703896号(P6703896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000002
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000003
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000004
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000005
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000006
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000007
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000008
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000009
  • 特許6703896-袋ジャッキ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703896
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】袋ジャッキ
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20200525BHJP
   E02D 5/18 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   E02D17/04 Z
   E02D5/18 101
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-105227(P2016-105227)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-210813(P2017-210813A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博人
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅路
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宰
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−259097(JP,A)
【文献】 特開平03−059218(JP,A)
【文献】 特開2003−166242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0314494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E02D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤をプレロードする袋ジャッキであって、
流体が注入されて膨らむ袋体と、
前記袋体の内部に設けられ、前記流体が流入する空間を形成する空間保持部材と、を備え、
前記空間保持部材は、
鋼板若しくはチャンネルと層状に配置されたメッシュ板とを用いて、又は、2つのチャンネルを組合わせて形成される、袋ジャッキ。
【請求項2】
前記流体はセメントミルクとされ、前記袋体は織物で形成されている、請求項1に記載の袋ジャッキ。
【請求項3】
前記袋体は、前記地盤における根切り面の下方において、山留め壁を形成するソイルセメント列柱の芯材へ固定される、請求項1又は請求項2に記載の袋ジャッキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋ジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、地盤の内部に構築した壁体(山留め壁)の背側面側に袋体を配設し、この袋体に流体を注入することによって袋体を膨張させて背側面側地盤の変形を抑制する連続地中壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−22551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の袋体は背側面側地盤から土圧を受けて潰されており、内部に空間がないので流体の注入が容易ではない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、袋体に圧力が掛かった状態でも流体を注入して袋体を膨らませることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の袋ジャッキは、地盤をプレロードする袋ジャッキであって、流体が注入されて膨らむ袋体と、前記袋体の内部に設けられ、前記流体が流入する空間を形成する空間保持部材と、を備え、前記空間保持部材は、鋼板若しくはチャンネルと層状に配置されたメッシュ板とを用いて、又は、2つのチャンネルを組合わせて形成されている。
【0007】
請求項1に記載の袋ジャッキは、袋体の内部に空間保持部材を備えている。このため、袋体に圧力が掛かった状態でも、袋体には空間保持部材により流体が流入する空間が形成されているので、流体を注入して袋体を膨らませて地盤をプレロードすることができる。
【0008】
なお、袋ジャッキに掛かる圧力としては、地盤の土圧のほか、山留め壁を形成するソイルセメントへ袋体を挿入するとき、硬化前(フレッシュ性状時)のソイルセメントから受ける圧力が挙げられる。
【0009】
一態様の袋ジャッキは、前記空間保持部材は層状に配置されたメッシュ板とされている。
【0010】
一態様の袋ジャッキは、層状に配置されたメッシュ板の隙間を通って流体が流れる。このため、袋体をメッシュ板の積層方向へ均等に膨らませることができる。したがって、袋体の一部分に局所的に流体からの圧力が作用することを抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の袋ジャッキは、請求項1に記載の袋ジャッキにおいて、前記流体はセメントミルクとされ、前記袋体は織物で形成されている。
【0012】
請求項2に記載の袋ジャッキは、流体がセメントミルクとされているので、硬化させることで山留め壁や地盤をプレロードした状態を維持できる。これに対し例えば流体が水の場合は、プレロード状態を維持するためには水の流入口をバルブなどを用いて閉塞し続ける必要があり、施工管理に手間がかかる。また、最終的には袋ジャッキを剛性の高い物に置き換えて地盤をプレロードした状態を維持する必要がある。
【0013】
また、袋体は織物で形成されているため、セメントミルクの硬化に不要な水(ブリーディング水)が袋体の外部へ抜ける。このためセメントが早期に硬化し、山留め壁や地盤をプレロードした状態を保持することができる。
請求項3に記載の袋ジャッキは、請求項1又は請求項2に記載の袋ジャッキにおいて、前記袋体は、前記地盤における根切り面の下方において、山留め壁を形成するソイルセメント列柱の芯材へ固定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る袋ジャッキは、袋体に圧力が掛かった状態でも流体を注入して袋体を膨らませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキが埋設された山留め壁を示す平面図であり、(B)は立断面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキの構成を示す横断面図であり、(B)は正面図であり、(C)は側断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る袋ジャッキにおけるメッシュ板の構成を示す斜視図である。
図4】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキが山留め壁の内部に埋設された状態を示す横断面図であり、(B)は正面図である。
図5】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキにおいて剛性板を設置した場合に袋ジャッキ内部の空間が均等に膨張した状態を示した部分拡大側断面図であり、(B)は剛性板を配置しない場合の袋ジャッキ内部の空間が不均等に膨張した状態を示した部分拡大側断面図である。
図6】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキにおける剛性板に代えてチャンネルを配置した状態を示す断面図であり、(B)はチャンネルを複数配置した変形例を示す断面図であり、(C)は剛性板を袋体の外側に配置した変形例を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る袋ジャッキにおける袋体をアングル材で固定した状態を示す断面図である。
図8】(A)は掘削前の地盤に形成されたソイルセメント柱の芯材に取付けた本発明の実施形態に係る袋ジャッキにセメントミルクを注入した状態を示す立断面図であり、(B)は一次根切り面まで地盤を掘削した状態を示す立断面図であり、(C)は一次根切り面の上方に腹起し・切梁を設置した状態を示す立断面図であり、(D)は二次根切り面まで地盤を掘削した状態を示す立断面図であり、(E)は二次根切り面の上方に腹起し・切梁を設置した状態を示す立断面図である。
図9】(A)は本発明の実施形態に係る袋ジャッキを根切り面の上方と下方に設置した変形例を示す立断面図であり、(B)は袋ジャッキを山留め壁の芯材の地山側へ配置した変形例を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)、(B)に示すように、本実施形態の袋ジャッキ20は、地盤10を掘削する際に構築する山留め壁12の内部に埋設され、山留め壁12の根入れ部分を地山側へ押圧するプレロード部材である。
【0017】
(山留め壁)
山留め壁12は、土の流出、移動及び地盤10の根切り面14からの湧水を防ぐために、ソイルセメント柱列工法によって、図1(B)に示すように地表面10Aから支持層10Bの中まで構築されている。山留め壁12を構成するソイルセメント柱12Aは、掘削オーガ等により地盤を掘削しながら先端からセメントミルク等を噴出し、掘削土とセメントミルクを地盤10中で撹拌、混合することで形成されている。隣接するソイルセメント柱12Aは壁状に隙間なく連接され、掘削地盤の周囲を取り囲むように配置されている。
【0018】
図1(A)に示すように、各ソイルセメント柱12Aの内部には芯材18が埋設されている。芯材18は各ソイルセメント柱12Aを構成するソイルセメントの硬化前(フレッシュ性状時)に各ソイルセメント柱12Aの内部に埋設され、後述する袋ジャッキ20が取付けられたH形鋼で、ソイルセメント柱12Aの略全長に亘って埋設されている。芯材18は、H形鋼の強軸方向(ウェブ部18Bの延設方向)が山留め壁12の面外方向(矢印J方向)に沿うように配置されている。この芯材18によって山留め壁12に面外剛性(矢印J方向の剛性)が付与されている。
【0019】
なお、本実施形態では、芯材18としてH形鋼を用いたが、山形鋼、T形鋼、ボックス鋼等を用いても良い。また、芯材18は、必ずしも全てのソイルセメント柱12Aに埋設する必要はなく、芯材18の数や配置(ピッチ)は、山留め壁12に求められる面外剛性に応じて適宜変更可能である。
【0020】
ソイルセメント柱12Aの硬化後、図1(B)に示すように、山留め壁12の内側の地盤10を根切り面14まで掘削する。このとき、山留め壁12の掘削側面に略水平方向に沿ってH形鋼の腹起し17を設置して、対向する山留め壁12の掘削側面にそれぞれ設置した腹起し17間にH形鋼の切梁19を架け渡す。これにより、背面側地盤10Mから受ける土圧による山留め壁12の変位が抑制される。
【0021】
なお、本実施形態において山留め壁12はソイルセメント柱列工法によって構築されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、掘削した現地発生土を主原料としてセメントミルクと混錬し、遮水性の高いソイルセメントとして山留め壁・地下壁に利用する掘削土再利用連壁工法や、親杭横矢板工法、シートパイル工法等によって構築した山留め壁としてもよい。親杭横矢板工法の場合、袋ジャッキ20はH形鋼で形成した親杭のフランジに取付けられる。また、シートパイル工法の場合、袋ジャッキ20はシートパイルの表面に取付けられる。
【0022】
(袋ジャッキ)
袋ジャッキ20は、図2(A)〜(C)に示すように、長尺の袋体22と、袋体22の内部に層状に配置された空間保持部材としてのメッシュ板30と、メッシュ板30に重ねて配置された剛性板40と、を備えている。
【0023】
(袋体)
図2(A)に示すように、袋体22は、2枚の布24の四辺部を重ねあわせ、重ね代部分を縫合することにより内部に空間Vが形成されている。なお、2枚の布24は、一方が幅広に形成されており、2枚の布24の端部を重ねて縫合することで、後述するメッシュ板30と剛性板40とを配置可能な空間Vが形成される。布24の縫合部分22Sは図2(A)〜(C)においてハッチングで示している。図2(B)に示すように袋体22の一辺は一部解放されており、非透水性の案内ホース25が袋体22の中へ挿入されている。この案内ホース25の外周部は袋体22に縫合されている。
【0024】
袋体22の空間Vには、層状に配置された複数のメッシュ板30と剛性板40とが配置されている。詳しくは後述するが、互いに隣接するメッシュ板30の間には隙間が形成されるので、これらの隙間が空間Vと連通している。布24はポリエステル繊維の非伸縮性織物で形成され、繊維の織目をセメントミルクの水成分は通過できるが、セメントミルクのセメント成分は容易に通過することができない。なお、セメントミルクは本発明における流体の一例である。
【0025】
袋体22に縫合された案内ホース25には、地上からソイルセメント柱12Aの芯材18に沿って差し込まれた注入管50が挿入されている。注入管50は塩ビ管とされ、土圧や硬化前のソイルセメントから圧力を受けても潰れない強度を備えている。なお、注入管50の材質としては鉄管などの金属管を用いてもよい。
【0026】
なお、案内ホース25はソイルセメント柱12Aの中に埋設されるが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば案内ホース25を長尺とし、挿入口25Aが地表面10A(図1(B)参照)の上部まで延長してもよい。案内ホース25をこのように形成することで、注入管50から袋体22の内部に注入されるセメントミルクによって袋体22から押し出された空気が注入管50の外周面と案内ホース25の内周面との間を通って地上へ排出される。これにより、袋体22の内部に空気溜りが発生することを抑制できる。
【0027】
また、袋体22の内部に空気溜りが発生することを抑制するためには、例えば案内ホース25とは別に空気排出用の空気抜きホースを袋体22の上部に挿入、縫合しておき、この空気抜きホースの上端部を地表面10Aまで延設してもよい。このようにすれば、案内ホース25をソイルセメント柱12Aの中に埋設しても、袋体22内部の空気が速やかに排出される。
【0028】
(メッシュ板)
図3に示すように、メッシュ板30は互いに平行に配置された複数の縦材30Aと、縦材30Aと直交する方向に配置された複数の横材30Bとが、格子状に組まれて形成されている。縦材30A及び横材30Bは共にポリエチレン製の棒材で、互いに融着されている。
【0029】
メッシュ板30は袋体22(図2(A)参照)の内部で縦材30Aと横材30Bとが交互に配置されるように層状に複数配置され、これにより縦材30A同士の間に隙間VAが形成され、また横材30B同士の間に隙間VBが形成され、さらにこれらの隙間VA、VBが連通した空間Vが形成される。また、図2(B)に示すようにメッシュ板30は袋体22の内部に略全長に亘って配置されているが、袋体22に縫合された案内ホース25を避けるように角部が矩形状に切り取られている。
【0030】
なお、メッシュ板30を構成する素材としては、ポリエチレンのほか、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド、カーボンなどの有機素材のほか、鉄やアルミなどの金属材料、及びこれらを組み合わせた物を用いてもよい。また、本実施形態においてメッシュ板30は複数配置されているが、少なくとも1枚配置すればよい。
【0031】
(剛性板)
図2(C)に示すように、剛性板40は、メッシュ板30と布24との間に配置された平板状の鋼板である。剛性板40は、メッシュ板30と同様に袋体22の内部に略全長に亘って配置されており、角部が矩形状に切り取られている。注入管50から袋体22の内部の空間Vへセメントミルクが注入されると、剛性板40はメッシュ板30の間の隙間VA、VB(図3参照)を通過したセメントミルクによって矢印M方向から押圧される。なお、剛性板40は、地盤10から矢印N方向から土圧を受けた状態でセメントミルクによって押圧されても大きく撓まない程度の剛性を備えている。
【0032】
(施工方法)
図4(A)、(B)に示すように、袋ジャッキ20はソイルセメント柱12Aに挿入される芯材18のフランジ部18Aに対して、袋体22の縫合部分22Sが、クリップ52を用いて留め付けられる。クリップ52は金属とされ、縫合部分22Sをフランジ部18Aに押圧固定している。また、袋体22とクリップ52との間には袋体22を保護する目的で固定布28が取付けられている。固定布28は図4(B)に示すようにクリップ52の留め付け箇所のみに取付けてもよいし、縫合部分22S全体を被覆するように取付けてもよい。なお、固定布28は金属板や樹脂板などとすることができる。なお、袋ジャッキ20は剛性板40がメッシュ板30よりも外側に配置されるようにして芯材18に取付けられる。
【0033】
袋ジャッキ20が芯材18に取付けられた後、図1(B)に示すように、芯材18はソイルセメント柱12Aの内部へ埋設される。このとき袋ジャッキ20は、注入管50が接続された状態で、根切り面14よりも深い根入れ部分で掘削側地盤10V側のフランジ部18Aに配置される。袋ジャッキ20は全ての芯材18に設けてもよいが、本実施形態においては3本の芯材18毎に1箇所ずつ、概ね1.0m〜2.0mの間隔で設けている。なお、芯材18の埋設時、ソイルセメント柱12Aは硬化前の状態である。このため、図4(A)に示すように、袋体22は硬化前のソイルセメントの圧力によって芯材18へ押し付けられた状態となるが、メッシュ板30により空間Vが保持される。
【0034】
芯材18を山留め壁12の内部へ埋設し、ソイルセメント柱12Aが硬化した後、注入管50から袋ジャッキ20へセメントミルクが注入される。図4(A)に破線22E及び矢印Mで示すように、セメントミルクによって袋ジャッキ20の内部の空間Vを膨張させるためには、袋体22と地盤10の間で硬化しているソイルセメントを、空間Vへ注入するセメントミルクの注入圧によって破壊する。袋体22は織物により形成されているため空間Vの内部の空気が抜けやすく、袋体22へセメントミルクを注入すると、空間Vには速やかにセメントミルクが充填される。このため、ソイルセメントを破壊するために必要なセメントミルクの注入圧を小さくすることができる。
【0035】
(作用・効果)
本実施形態の袋ジャッキ20は、図1(B)に点線で示すように、注入管50から内部の空間Vへセメントミルクが注入されて膨らむことにより、掘削側地盤10Vを矢印Mで示した方向に押圧する。このとき、掘削側地盤10Vが反力となり、山留め壁12が背面側地盤10M側へプレロードされる。
【0036】
また、本実施形態の袋ジャッキ20は、図2(A)〜(C)に示すように、袋体22の内部に複数のメッシュ板30を備えている。このため、袋ジャッキ20に対して、掘削側地盤10Vからの土圧や硬化前(フレッシュ性状時)のソイルセメントの圧力が作用した状態でも空間Vが保持され、セメントミルクを注入することができる。
【0037】
さらに、メッシュ板30は袋体22の略全長に亘って配設されているため、空間Vも袋体22の略全長に亘って形成される。このため、セメントミルクを袋体22の全長に亘って均等に注入することができる。また、空間Vをメッシュ板30の積層方向へ均等に膨らませることができる。
【0038】
なお、本実施形態においては空間保持部材としてメッシュ板30を用いたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば編み込まれた樹脂繊維の間に空隙を備えたマット状素材、ポーラスコンクリート、三次元メッシュ構造体など、外部からの圧力に対して変形しにくく内部に空間が連通しているものであればよい。
【0039】
図5(A)において大きさの異なる矢印N1、N2、N3で示したように、掘削側地盤10Vから受ける土圧は、地下水の状況、地盤の固さなどの諸条件により掘削側地盤10Vの高さ方向(深さ方向)で一定とならないことがある。このとき、空間Vは図5(B)に示すように土圧の低い部分(例えば土圧が矢印N2で示された部分)で矢印M方向に膨張しやすく、地盤10の高さ方向で均一に膨張しにくい。このため、布24にも矢印T1で示すような局所的な変形が加わる場合がある。
【0040】
本実施形態の袋ジャッキ20では、布24は局所的な変形が加えられても破れない程度の強度を備えており、セメントミルクが袋体22から漏れ出すことが抑制されている。なお、図5(B)において空間Vが膨張した状態は説明のために誇張して示している。その他の図についても構成を説明するために適宜形状等を誇張して示している。
【0041】
なお、本実施形態の袋ジャッキ20は、メッシュ板30と布24との間に剛性板40を備えている。また、剛性板40は、セメントミルクからの矢印M方向の押圧力及び地盤10からの矢印N方向の土圧を受けても大きく撓まない剛性を備えている。したがって、空間Vは掘削側地盤10Vの土圧が不均一な状況においても高さ方向で均等に膨張することができる。したがって、布24に局所的な変形が加えられることが抑制されており、袋体22は破れにくくなっている。
【0042】
なお、袋ジャッキ20が設置される地盤が均質であり土圧も高さ方向で比較的均等な場合は、剛性板40は省略してもよい。
【0043】
また、本実施形態の袋ジャッキ20は、図5(A)に示すように芯材18のフランジ部18Aに固定した状態で、注入管50のセメントミルク排出口50Bが剛性板40よりも芯材18側に配置される。このため、排出口50Bから排出されたセメントミルクは剛性板40と外側(芯材18と反対側)の布24との間に流入しにくく、外側の布24はセメントミルクから直接押圧されず剛性板40によって押圧されるので局所的な力を受けにくくなっている。
【0044】
なお、本実施形態においては剛性板40と外側の布24とは互いに接着されていないが、剛性板40による布24の押圧効果を高めるため、剛性板40と外側の布24とを接着し、剛性板40と外側の布24との間へのセメントミルクの流入をさらに抑制してもよい。
【0045】
また、本実施形態において剛性板40は平板状の鋼板とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6(A)に示すように断面C型のチャンネル42としてもよい。この場合、チャンネル42のフランジ部42Aによって、ウェブ部42Bと内側(芯材18側)の布24との間に空間Vが形成される。すなわち、チャンネル42が空間保持部材として機能する。これにより、メッシュ板30の数を減らしたり、あるいはメッシュ板30を省略できる。
【0046】
さらに、例えば図6(B)に示すように、チャンネル42に加えて、チャンネル42よりウェブ幅が小さいチャンネル44をチャンネル42と内側の布24との間に配置してもよい。このとき、チャンネル44のウェブ部44Bを内側の布24に接着し、チャンネル42の両フランジ部42Aを、チャンネル44の両フランジ部44Aの外側から挟み込むように配置することで、チャンネル42とチャンネル44との間に空間Vが形成される。また、空間Vにセメントミルクが注入されて空間Vが膨張する際には、膨張方向はフランジ部42A、44Aの延設方向(矢印M方向)に規制することができる。
【0047】
また、本実施形態において剛性板40は袋体22の内側に配置されていたが本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6(C)に示した剛性板46のように、外側の布24の外側に接着することで袋体22の外側に配置してもよい。このようにしても、袋体22の内部の空間Vを高さ方向に均等に膨張させることができる。
【0048】
このとき、剛性板46の表面には、硬化したソイルセメント柱12Aを破壊し易くするため、クラック誘発機構としての割裂爪46Aを設けてもよい。割裂爪46Aは、剛性板46の表面から突出した線状突起であり、先端が尖って形成されている。また、剛性板46を設けない場合は、例えば布24の表面を加工して突起を形成してもよい。
【0049】
また、本実施形態の袋ジャッキ20は、図4(A)に示すように、2枚の布24が縫合され、さらに縫合部分22Sがクリップ52で芯材18に固定されることにより、両端部の剛性が向上している。このため、空間Vにセメントミルクが注入された際、セメントミルクは、剛性の低い矢印M方向へ移動しやすいが、剛性の高い矢印Q方向へは移動しにくい。このため袋ジャッキ20が地盤10を押圧する押圧方向が山留め壁12の延設方向と略直交する方向となり、山留め壁12の面外剛性(図1(B)に示す矢印J方向の剛性)が高められる。
【0050】
なお、固定布28及びクリップ52に代えて、図7に示すように、山形鋼である固定アングル29及びボルト53を用いてもよい。このとき、固定アングル29のフランジ部29Aと芯材18のフランジ部18Aとの間で袋体22の端部を挟み込んだ状態で、固定アングル29を芯材18にボルト53を用いて固定することで、袋体22を芯材18に強固に固定することができる。さらに、固定アングル29のフランジ部29Bにより空間Vの膨張方向を規制することもできる。
【0051】
また、本実施形態の袋ジャッキ20は、袋体22に注入する流体としてセメントミルクを用いている。このため、セメントミルクの硬化後、山留め壁12をプレロードした状態を維持することができる。また、袋体22は透水性の織物で形成されているため、セメントミルクの硬化に不要な水(ブリーディング水)が袋体22の外部へ抜ける。このためセメントミルクを早期に硬化させることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては袋体22に注入する流体としてセメントミルクを用いているが、例えば水等の流動性の高い液体を用いることもできる。この場合、布24を非透水性の生地やフィルムなどで構成すればよい。流動性の高い液体を用いることで、プレロードが不要になった際には容易にプレロードを解除できる。
【0053】
また、布24の材質としては、非伸縮性の材質に限らず、ポリウレタン等、伸縮性のある材質を使用してもよい。例えば布24を伸縮性のある材質で形成した織物とすることで、セメントミルクによって袋体22内部の空間Vを膨張させやすくなる。
【0054】
また、本実施形態の袋ジャッキ20は、図1(A)、(B)に示すように、山留め壁12の内部に配置されている。このため、山留め壁12を形成するための地盤掘削作業とは別に、袋ジャッキ20を埋設するための地盤掘削作業を行う必要がなく、施工効率が高い。
【0055】
また、袋ジャッキ20は、芯材18の掘削側地盤10V側のフランジ部18Aに固定されている。このため、袋ジャッキ20が膨張することにより、掘削側地盤10Vを反力として芯材18、山留め壁12を介して背面側地盤10Mが押圧される。この押圧力が広い面積に作用することにより、背面側地盤10Mの掘削側地盤10V側への変位を抑制することができる。
【0056】
ここで、袋ジャッキ20を掘削側地盤10Vの根切り面14よりも深い根入れ部分に配置する効果について説明する。
【0057】
図8(A)には、芯材18が挿入された山留め壁12を地盤10に打設し、ソイルセメント柱12Aが硬化した状態が示されている。この状態において袋ジャッキ20にセメントミルクを注入すると、袋ジャッキ20内部の空間Vが膨張し、袋ジャッキ20が膨らむことで山留め壁12が変位線δ1で示したように変位する。
【0058】
これにより背面側地盤10Mは、袋ジャッキ20によってプレロードされた山留め壁12を介して、掘削側地盤10Vから背面側地盤10Mへ向かう方向(矢印N方向)に変位し、変位線δ1で示した形状になる。なお、変位線δ1の形状は説明のため誇張して描かれている。なお図8(A)では、プレロード前の山留め壁12の中心線を基準線δ0で示している。
【0059】
次に図8(B)に示すように、一次根切り面14Aより上方における掘削側地盤10Vを掘削する。このとき一次根切り面14Aより上方では、掘削側地盤10Vによる土圧がなくなるので、背面側地盤10Mが矢印M方向(掘削側地盤10V側)へ変位する。これにより、背面側地盤10Mの形状は変位線δ2で示したように、掘削側地盤10V側へ変位する。
【0060】
このため、袋ジャッキ20が設けられていない場合の背面側地盤10Mの形状(変位線δ3)と比較して、袋ジャッキ20が設けられている場合の背面側地盤10Mの形状(変位線δ2)は、掘削側地盤10V側への変位が抑制されている。
【0061】
なお、掘削側地盤10Vの掘削に伴い掘削側地盤10Vの土圧は小さくなるので、袋ジャッキ20が掘削側地盤10Vから受ける反力は、図8(A)に示した掘削前の反力と比較して小さくなる。例えば掘削側地盤10Vを地盤改良して地盤剛性を高くすることで、反力の低減を抑制することができる。反力の低減を抑制することができれば、掘削に伴う背面側地盤10Mの矢印M方向への変位を小さくすることができる。
【0062】
次に、一次根切り面14Aより上方における背面側地盤10Mの矢印M方向への変位を抑制するため、図8(C)に示すように、山留め壁12の掘削側地盤10V側の表面に略水平方向に沿って一段目のH形鋼の腹起し17を設置し、さらに対向する山留め壁12の腹起し17間に一段目の切梁19を架け渡す。なお、一次根切り面14Aより下方では、袋ジャッキ20による山留め壁12のプレロード状態が維持され、背面側地盤10Mは基準線δ0よりも矢印N方向へ変位している。
【0063】
次に、図8(D)に示すように、二次根切り面14Bより上方における掘削側地盤10Vを掘削する。このとき二次根切り面14Bより上方では、掘削側地盤10Vによる土圧がなくなるので、背面側地盤10Mが矢印M方向(掘削側地盤10V側)へ変位する。これにより、背面側地盤10Mの形状は変位線δ4で示したように、掘削側地盤10V側へ変位する。なお、袋ジャッキ20が設けられていない場合は、二次根切り面14Bより下方での掘削側地盤10Vからの反力が小さいので、変位線δ5で表されるように、腹起し17及び切梁19のみでは背面側地盤10Mの掘削側地盤10V側への変位を抑制することが難しい。
【0064】
次に、図8(E)に示すように、山留め壁12の掘削側地盤10V側の表面に略水平方向に沿って二段目のH形鋼の腹起し17を設置し、さらに対向する山留め壁12の腹起し17間に二段目の切梁19を架け渡す。なお、本実施形態では、二次根切りの後、最終の根切りをして、掘削側地盤10V上に構造物の基礎底面(床付け面)を形成して、根切り工事は完了するが、さらに深部に床付け面を有する構造物を構築する場合は、公知の工法により、三次根切り及び三段目の腹起しと切梁、四次・・・を繰り返し実施して、床付け面を形成することができる。
【0065】
なお、H形鋼の腹起し及び切梁を用いない別の実施形態として、自立した山留め壁(自立山留め壁と云う。)の場合は、前述した図8(A)、及び図8(B)の工程だけで好適に実施できる。この場合も、袋ジャッキ20が設けられているので、背面側地盤10Mの形状(変位線δ2)は、掘削側地盤10V側への変位が抑制されている。
【0066】
なお、本実施形態において袋ジャッキ20は、二次根切り面14Bよりも深い根入れ部分に配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らず、二次根切り面14Bよりも浅い部分に設けてもよい。例えば図9(A)に示すように、袋ジャッキ20は二次根切り面14Bの上方(一次根切り面14Aの下方)と下方とにそれぞれ設けることができる。このようにすれば、掘削深さが深い場合にも、背面側地盤10Mの掘削側地盤10V側への変位を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態において袋ジャッキ20は山留め壁12における芯材18の掘削側地盤10V側のフランジ部18Aに固定されているが、本発明の実施形態はこれに限らず、図9(B)に示すように背面側地盤10M側のフランジ部18Aに固定してもよい。このようにすれば、例えば背面側地盤10Mに地下構造物Sが埋設されている場合、地下構造物Sに対して最も近接した位置に袋ジャッキ20を設けることで、袋ジャッキ20は背面側地盤10Mを局所的に押圧することができる。このため、地下構造物Sの地盤掘削に伴う変位を効果的に抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態において袋ジャッキ20は山留め壁12の内部に埋設されているが、本発明の実施形態はこれに限らず、例えば、図1(A)、(B)に破線で示したように掘削側地盤10Vに山留め壁12と隙間を空けて地盤改良体60を構築し、該隙間にボーリング孔62を形成してこのボーリング孔62へ袋ジャッキ20を挿入してもよい。また、図1(A)では地盤改良体60が左右方向(山留め壁12に囲まれた部分の長手方向)に構築されているが、上下方向(山留め壁12に囲まれた部分の短手方向)に構築してもよい。さらに、これらを組み合わせても好適に実施できる。
【0069】
地盤改良体60を構築することで、袋ジャッキ20が膨らんだ際に、山留め壁12を強く押圧することができる。なお、地盤改良体60は対向する山留め壁12の間に亘って配置してもよく(地盤改良体60A)、山留め壁12の控え壁として部分的に配置してもよい(地盤改良体60B)。
【符号の説明】
【0070】
10 地盤
20 袋ジャッキ
22 袋体
30 メッシュ板(空間保持部材)
42 チャンネル(空間保持部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9