(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る排ガス処理装置の構成について、
図1〜14を参照しながら説明する。排ガス処理装置1は、
図1に示すように、容器本体10と、保持部20と、下流側グリッド30と、触媒ユニット40と、第1シールプレート51と、第2シールプレート52と、複数の第1柱体61と、複数の第2柱体62と、上流側グリッド70と、グリッド押え80とを備える。
【0009】
容器本体10は、船舶等から排出される排ガスが流れるガス流路Rを形成する。本実施の形態に係る排ガス処理装置1は、ガス流路Rが上下方向である、いわゆる縦置きの排ガス処理装置である。容器本体10は、
図1及び2に示すように、例えば円筒形状であって、保持部20は、その内周に沿って設けられている。保持部20は、例えば金属製の厚板状のリングであって、このリングの外周は、全周に渡って容器本体10の内側と溶接されている。
図1に示すように、ガス流路Rにおける容器本体10よりも上流側には、その下端部が容器本体10の径と同じ径であって、上流側にいくほど径が小さくなるキャップ10aが設けられている。
【0010】
下流側グリッド30は、
図1に示すように、触媒ユニット40を載置するための載置領域31が上端面S1に形成されている。具体的には、下流側グリッド30は、
図2に示すように、複数のバー33が縦横斜めに組み合わされて形成される。これらのバー33は、載置領域31を形成するとともに、バー33のうちのいくつかは、載置領域31からはみ出すように形成されている。載置領域31からはみ出したバー33の先端は、容器本体10の内側の保持部20と溶接されている。
【0011】
触媒ユニット40は、
図3及び4に示すように、四角柱形状の複数の筒状ケース41と、筒状ケース41の内部に充填される触媒42(
図3参照)と、筒状ケース41の端部を保持する筒状のアタッチメント43(
図4参照)とを有する。触媒42は、例えばアンモニアを還元剤として排ガスに含まれるNOxと反応して脱硝するものである。触媒42は、水平方向の断面が、互いに平行な複数の平板と、その平板の間に設けられた波板とで構成されている、いわば、段ボールのような構造である。筒状ケース41は、
図4〜6に示すように、本体部41aと、本体部41aから下流側グリッド30(
図4および6参照)又は上流側グリッド70(
図4参照)に向かって突出する突出部41bとを有する。突出部41bは下流側グリッド30又は上流側グリッド70に嵌め込まれる。ここで、本体部41aと下流側グリッド30との間には弾性シール部材32が設けられている。具体的には、弾性シール部材32は、下流側グリッド30の上端面S1のうち、少なくとも載置領域31(
図1及び2参照)全体に貼り付けられ、具体的には、下流側グリッド30の上端面S1と筒状ケース41の端面S2との間に介在する。同様に、上流側グリッド70の下端面S3には、弾性部材72(
図4参照)が貼り付けられており、本体部41aの端面S2と上流側グリッド70の下端面S3との間に介在する。そして、複数の筒状ケース41が下流側グリッド30と上流側グリッド70との間で並べられる。また、触媒ユニット40は、筒状ケース41がアタッチメント43を介して上下に積み重ねられることによって2段構成になっている。
【0012】
アタッチメント43は、
図4及び7に示すように、筒状ケース41と同じ外寸の本体部43aと、その外寸よりも小さい2個の突出部43b、43cとを有する。突出部43bは、本体部43aから上方に突出して形成され、突出部43cは、本体部43aから下方に突出して形成される。これらの突出部43b、43cは、筒状ケース41の本体部41aの内側と嵌合するように構成されている。なお、アタッチメント43の内部には、触媒42が充填されていない。また、
図4に示すように、筒状ケース41の筒の厚さT1は、アタッチメント43の本体部43aの筒の厚さT2よりも小さい。これは、筒状ケース41を下流側グリッド30に載置するときに、人手で筒状ケース41を運びやすいように、内部に触媒42が充填される筒状ケース41の重量を軽減してハンドリングを容易にするためである。
【0013】
第1シールプレート51は、
図1及び8に示すように、載置領域31と同じ平面形状にくり抜かれた円形の板状部材であって、その外径は容器本体10の内径と略等しく、下流側グリッド30の上端面S1からはみ出した位置に設けられている。そして、第1シールプレート51の外周は、容器本体10の内側に溶接されている。また、第1シールプレート51は、下流側グリッド30の載置領域31を除く上端面S1上に寝かされた状態で配置されており、その状態で下流側グリッド30と溶接されている。
【0014】
複数の第1柱体61は、
図1に示すように、第1シールプレート51上に起立した状態で配置され、その状態で第1シールプレート51に溶接されている。第1柱体61は、例えば、
図8に示すように、断面が円形状の棒状部材であり、容器本体10の内周に沿って分散した状態で配置されている。第1柱体61の上端には、
図1に示すように、第2シールプレート52が寝かされた状態で配置されており、その状態で第1柱体61と溶接されている。ここで、第1柱体61が倒れないように、第1シールプレート51及び第2シールプレート52に第1柱体61の断面と同じ形状の窪みを設けて、この窪みに第1柱体61をはめ込むようにしても良い。
【0015】
第2シールプレート52は、
図1及び9に示すように、第1シールプレート51と同一形状である。第2シールプレート52の外周も容器本体10の内側と溶接されている。第2シールプレート52上には、
図9に示すように、複数のアングル材53が周方向に沿って分散した状態で固定されている。複数のアングル材53は、
図10に示すように、底板53aと側板53bとで構成されている。底板53aは、第2シールプレート52に溶接されている。側板53bは、底板53aと垂直に形成される部分であって、ボルトB1を通すための貫通孔が設けられる。ボルトB1の先端には押圧プレート54が取り付けられており、ボルトB1とナットN1とを締めることによって、押圧プレート54を介して触媒ユニット40のアタッチメント43を触媒ユニット40の外周側から押えることができる。これにより、触媒ユニット40は、ガス流路R(
図1参照)の方向と垂直な方向(水平方向)に固定される。
【0016】
また、押圧プレート54とアタッチメント43との間には、シール部材55が設けられている。シール部材55は、例えば金属製であり、底板55aと側板55bとで構成されるL字部材であって、
図6に示すように、触媒ユニット40の外周全周にわたって設けられている。底板55aは自重によって第2シールプレート52と接触する。側板55bは押圧プレート54から押圧されることによって、アタッチメント43と接触する。そのため、シール部材55は、第2シールプレート52及び触媒ユニット40の両方に接触することとなり、これら第2シールプレート52と触媒ユニット40との間の隙間をシールする。
【0017】
複数の第2柱体62は、
図1に示すように、第2シールプレート52上に起立した状態で配置され、その状態で第2シールプレート52と溶接されている。第2柱体62は、第2柱体62aと、第2柱体62bの2種類が使用されている。第2柱体62aは、
図11A及び11Bに示すように、板状の本体部62aaと、板状のサポート62abとで構成されている。本体部62aaが倒れないようにするために、サポート62abは、本体部62aaに垂直に取り付けられる。同様に、第2柱体62bは、
図12A、12B及び12Cに示すように、板状のサポート62bbが、板状の本体部62baに垂直に取り付けられている。また、第2柱体62bの本体部62baの上端には、プレート62bcが本体部62baに対して垂直な水平方向に取り付けられる。
【0018】
上流側グリッド70は、
図1に示すように、触媒ユニット40を挟んで下流側グリッド30の反対側、すなわち、触媒ユニット40上に設けられる。上流側グリッド70は、具体的には、
図13に示すように、複数のバー71が縦横斜めに組み合わされることによって形成される。また、上流側グリッド70は、複数のプレート73を有しており、各プレート73は、バー71上、又はバー71が交差する部分上に設けられる。
【0019】
上流側グリッド70上には、
図1に示すように、さらにグリッド押え80が設けられる。グリッド押え80は、
図14に示すように、容器本体10の中央で垂直に交差する2本のメインバー81と、2本のメインバー81から枝分かれしたブランチ82とで構成される。メインバー81は、その一方の端部及び他方の端部が一対の第2柱体62aによって挟み込まれた状態で支持されている。具体的には、
図11A及び11Bに示すように、メインバー81の端部と、一対の第2柱体62aの本体部62aaとが、ボルトB4及びナットN4で締結されている。一方、ブランチ82は、その端部が第2柱体62bによって支持される。具体的には、
図12Bに示すように、ブランチ82の端部が、第2柱体62bの水平方向のプレート62bc上に載置され、ブランチ82とプレート62bcとがボルトB5及びナットN5で締結される。これにより、グリッド押え80は、複数の第2柱体62a、62bによって固定されることとなる。
【0020】
また、
図14に示すグリッド押え80のメインバー81には、それぞれ上下方向の複数の内ネジが設けられており、ボルトB2は、これらの内ネジを通って、
図11B及び
図13に示す上流側グリッド70の水平方向のプレート73を上方から押える。さらに、第2柱体62bのプレート62bcにも上下方向の内ネジが設けられており、ボルトB3は、この内ネジを通って、
図12A及び
図13に示す上流側グリッド70のプレート73を上方から押える。これにより、ガス流路Rの方向において、触媒ユニット40が下流側グリッド30と上流側グリッド70とで挟まれるとともに、
図6に示すように、弾性シール部材32が押圧されて弾性変形する。弾性シール部材32は、弾性変形することによって下流側グリッド30と触媒ユニット40との間をシールする。また、同様に、弾性部材72も押圧されて弾性変形する。
【0021】
本実施の形態に係る排ガス処理装置1によれば、筒状ケース41の本体部41aと下流側グリッド30との間に弾性シール部材32が設けられているとともに、筒状ケース41の本体部41aと上流側グリッド70との間に弾性部材72が設けられており、これら弾性シール部材32、弾性部材72は、排ガスが流れる方向において押圧されて弾性変形している。これにより、排ガス処理装置1のガスシール性を向上させることができる。以下、詳細を説明する。
【0022】
例えば、従来の排ガス処理装置においては、筒状ケースとグリッドとの間に弾性部材が使用されておらず、船舶の揺動やエンジンの振動によってグリッドと触媒ユニットとの間に隙間が生じやすく、ひいては排ガス処理装置のガスシール性が低下してしまうという問題があった。この点について、本実施の形態に係る排ガス処理装置1によれば、弾性シール部材32および弾性部材72が弾性変形するため、船舶の揺動やエンジンの振動を吸収しつつ、弾性シール部材32が下流側グリッド30と触媒ユニット40との隙間をシールすることによって、触媒ユニット40の内部にガスをシールすることが可能となる。これにより、船舶の揺動やエンジンの振動によって隙間が生じる事態を抑制することができ、ひいては、排ガス処理装置のガスシール性を向上させることができる。さらに、弾性シール部材32及び弾性部材72によって、筒状ケース41の上下方向の寸法誤差を吸収できるという効果も期待できる。
【0023】
また、ボルトB1によって触媒ユニット40を外周側から押えることによって、ガス流路Rと垂直な方向(水平方向)に触媒ユニット40を固定することができるため、船舶の揺動やエンジンの振動によって、下流側グリッドと触媒ケースとの間に隙間が生じる事態を抑制することができ、ひいては、排ガス処理装置1のガスシール性を向上させることができる。ここで、触媒ユニット40を水平方向に固定するボルトB1は、触媒ユニット40のアタッチメント43の本体部43a(
図10参照)を押える構成となっている。触媒ユニット40をガス流路Rと垂直な方向に固定するためには、筒状ケース41を押える構成であってもよいが、筒状ケース41は、内部に触媒42が充填されており、さらに、ハンドリングを容易にするために、その筒の厚さT1が小さく形成されている。そのため、筒状ケース41に大きな力が加えられると、筒状ケース41が大きく変形して触媒42が破損するおそれがある。
【0024】
一方で、アタッチメント43の本体部43aの筒の厚さT2は、筒状ケース41の筒の厚さT1よりも大きく形成されているため、アタッチメント43の本体部43aにある程度の力を加えても容易に変形しない。さらに、アタッチメント43の内部には触媒42が充填されていないため、アタッチメント43の本体部43aがある程度変形しても、触媒42を破損することはない。また、
図4及び7に示すように、アタッチメント43は、その突出部43b、43cが筒状ケース41の本体部41aの内側と嵌合するように構成されているため、アタッチメント43が押えられても、筒状ケース41に力が加えられることはない。そのため、アタッチメント43の本体部43aを押えることによって、触媒ユニット40をより強固に固定することができる。
【0025】
さらに、本実施の形態に係る排ガス処理装置1では、押圧プレート54とアタッチメント43との間に、シール部材55が設けられており、シール部材55が第2シールプレート52と触媒ユニット40との隙間をシールすることとしている。すなわち、本実施の形態では、弾性シール部材32が下流側グリッド30でガスをシールすることに加えて、さらにその上流側の第2シールプレート52でシール部材55がガスをシールすることとしている。そのため、ガスシールが2段階で行われることとなるため、高いガスシール性が得られる。
【0026】
図15は、従来の排ガス処理装置と、本実施の形態に係る排ガス処理装置1とを比較した結果を示す。ここで、従来の排ガス処理装置は、本実施の形態に係る排ガス処理装置1の構造と異なり、弾性シール部材32、弾性部材72及びシール部材55が設けられていない構造である。横軸は、エンジン負荷である。縦軸は、還元剤としてアンモニアを用いた場合に、排ガス中のNOxと反応せずに下流側グリッド30の下流側で検出されたアンモニアの量(以下、NH
3スリップと称す。)である。
図15によれば、本実施の形態の構造において、エンジン負荷に関わらず、従来の構造と比較してNH
3スリップを減少させることができた。NH
3スリップが減少するということは、NOxと反応するNH
3の量が増加することとなり、その結果排ガス処理装置のガスシール性が向上したことを意味する。
【0027】
弾性シール部材32および弾性部材72の例としては、縦糸に金属(ステンレス鋼)線を使用し、横糸に金属(ステンレス鋼)線入りセラミックヤーンを使用して織り込んだものに耐熱性の材料を含侵し、エンドレス加工して形成され、耐熱温度が例えば800℃のガスケットが用いられ得る。また、弾性シール部材32および弾性部材72の形状としては、厚さが例えば3mmであって、例えば5.9MPaの圧力を加えたときの圧縮率が58%のものが使用され得る。しかしながら、本発明の弾性シール部材および弾性部材は、上記のような具体的なものに限定されない。ただし、容器本体10の内部は高温になるため、弾性シール部材および弾性部材としては、例えば500℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0028】
なお、本実施の形態に係る排ガス処理装置1は、筒状ケース41と下流側グリッド30との間の弾性シール部材32、及び筒状ケース41と上流側グリッド70との間の弾性部材72が両方とも設けられる態様であるが、本発明はこの態様に限られない。すなわち、筒状ケース41と下流側グリッド30との間に設けられる弾性シール部材32のみであっても、排ガス処理装置のガスシール性を向上させることが可能である。弾性シール部材32に加えてさらに弾性部材72が設けられる場合は、船舶等の揺動やエンジンの振動を吸収する効果を向上させることができる。
【0029】
また、本実施の形態に係る排ガス処理装置1では、触媒ユニット40が2段構成の筒状ケース41で形成される態様を述べたが、これに限られない。例えば、触媒ユニット40が1段構成であってもよく、3段以上の構成であってもよい。ここで、触媒ユニット40が複数段の構成である場合は、ガスシール性を向上させるため、触媒ユニット40の段数と同じ数だけシールプレート及び柱体を互い違いに配置し、筒状ケース41同士の間にアタッチメント43を設け、アタッチメント43を外周側から押えることが好ましい。
【0030】
また、本実施の形態に係る排ガス処理装置1では、ボルトB1、B2、B3によって触媒ユニット40を押えて固定する態様を述べたが、これに限られず、他の押え部材を使用してもよい。例えば、アングル材53とアタッチメント43との間にバネ等の押え部材を介在させることによっても触媒ユニット40をガス流路Rと垂直な方向に固定することが可能である。同様に、グリッド押え80と上流側グリッド70との間に押え部材を介在させることによって、触媒ユニット40をガス流路Rの方向に固定することが可能となる。
【0031】
ところで、本実施の形態では、弾性シール部材32とシール部材55とで2段階にガスをシールする態様であるが、本発明はこの態様に限られない。すなわち、シール部材55が設けられず、弾性シール部材32のみによって容器本体10の内部にガスをシールする態様であっても、弾性シール部材32及びシール部材55のいずれも設けられていない従来の排ガス処理装置の態様と比較すれば、ガスシール性を向上させることが可能である。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る排ガス処理装置について、実施の形態1に係る排ガス処理装置1と異なる点のみを説明する。実施の形態1に係る排ガス処理装置1では、
図1及び4に示すように、筒状ケース41同士の間にアタッチメント43が設けられている。これに対して、実施の形態2に係る排ガス処理装置2では、
図16及び17に示すように、筒状ケース41同士の間にアタッチメント43が設けられる他に、下流側グリッド30と筒状ケース41との間、及び上流側グリッド70と筒状ケース41との間にもアタッチメント43が設けられている。すなわち、アタッチメント43が3段構成になっている。
【0033】
筒状ケース41は、実施の形態1の態様と異なり、
図17に示すように、突出部を有しておらず、本体部41aのみで構成されている。ガス流路Rの下流側から1段目のアタッチメント43は、下方に突出する突出部43cが下流側グリッド30に嵌め込まれており、上方に突出する突出部43bが筒状ケース41に嵌め込まれている。2段目のアタッチメント43は、突出部43b、43cがそれぞれ筒状ケース41に嵌め込まれている。3段目のアタッチメント43は、上方に突出する突出部43bが上流側グリッド70に嵌め込まれており、下方に突出する突出部43cが筒状ケース41に嵌め込まれている。
【0034】
これらのアタッチメント43の、各本体部43aは、触媒ユニット40の外周側から押えられている。本体部43aを押えるための具体的な構成は、
図10を用いて説明した実施の形態1と同じ態様であるため省略する。
【0035】
本実施の形態に係る排ガス処理装置2によれば、アタッチメント43が3段に構成されており、それぞれが触媒ユニット40の外周側から水平方向に押えられる構成となっているため、1段のみのアタッチメント43を外周側から押える実施の形態1と比較して、より強固に触媒ユニット40を固定することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態に係る排ガス処理装置2によれば、筒状ケース41の傾きを抑制することができる。例えば、船体が水平方向から20°以上傾いた状態で筒状ケース41を取り付ける場合がある。このような場合に、アタッチメント43が筒状ケース41と下流側グリッド30との間になければ、
図18に示すように、筒状ケース41を下流側グリッド30に嵌めこむときに、筒状ケース41が傾くおそれがある。この状態でガス流路Rの方向に筒状ケース41が押えられても、弾性シール部材32に対して均一に圧力を加えることができず、ひいては、排ガス処理装置のガスシール性が低下してしまうこととなる。
【0037】
一方で、筒状ケース41と下流側グリッド30との間にアタッチメント43が設けられる場合、
図19に示すように、船体が水平方向から20°程度傾いた状態で、アタッチメント43が下流側グリッド30に嵌め込まれるときに、アタッチメント43はほとんど位置ずれしない。これは、筒状ケース41よりもアタッチメント43の方が高さが小さく、重心が下流側グリッド30に近いためである。筒状ケース41は、下流側グリッド30に嵌め込まれたアタッチメント43をボルトB1で固定した後に、アタッチメント43に最小限の隙間で嵌め込まれる。そのため、筒状ケース41の位置ズレを抑制することができるため、弾性シール部材32に対して均一に圧力を加えることができ、ひいては、排ガス処理装置のガスシール性を向上させることが可能となる。なお、この効果を奏するためには、少なくとも下流側グリッド30と筒状ケース41との間にアタッチメント43が設けられていれば足りる。すなわち、上流側グリッド70と筒状ケース41との間にアタッチメント43が設けられていなくともよい。
【0038】
さらに、本実施の形態に係る排ガス処理装置2によれば、筒状ケース41が突出部41bを有さず、本体部41aのみとすることができる。例えば、触媒ユニット40が3段構成である場合、実施の形態1のように筒状ケース41同士の間にのみアタッチメント43が設けられると、1段目及び3段目の筒状ケース41は突出部41bを有するが、2段目の筒状ケース41はアタッチメント43に挟まれるため突出部を有しない。このような場合、1段目及び3段目の筒状ケース41と2段目の筒状ケース41とで異なる部品を用意しなければならない。一方で、本実施の形態では、1段目〜3段目の筒状ケース41について、本体部41aのみの筒状ケース41を適用することができて、部品点数を削減することができる。
【0039】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3に係る排ガス処理装置3について
図20〜24を参照しながら説明する。実施の形態1及び2に係る排ガス処理装置1、2は、いわゆる縦置きの排ガス処理装置であるが、実施の形態3に係る排ガス処理装置3は、ガス流路Rが水平方向である、いわゆる横置きの排ガス処理装置である。基本的な構成については、縦置きの排ガス処理装置1を寝かせたものと同様であるが、以下の点で異なる。
【0040】
まず、本実施の形態に係る排ガス処理装置3は、実施の形態1で説明した第1柱体及び第2柱体を備えない。
図20、24に示すように、第1柱体及び第2柱体の代わりに、触媒ユニット40を下方から支持する複数の支持柱63が設けられている。また、グリッド押え80(
図24参照)は、例えば、容器本体10の内側に取り付けられる。さらに、
図21に示すように、シール部材55は、触媒ユニット40の外周全周にわたって設けられる必要はない。具体的には、触媒ユニット40の下方にはシール部材55は設けられておらず、触媒ユニット40の上方と側方にのみシール部材55が設けられている。これは、触媒ユニット40よりも下方においては、触媒ユニット40の自重によって、第2シールプレート52との隙間がほとんど生じないため、シール部材55を設けてシールする必要がないためである。同じ理由で、触媒ユニット40の下方には、アングル材53及び押圧プレート54も設けられていない。
【0041】
さらに、実施の形態1や2のような縦置きの排ガス処理ユニットの場合は、触媒ユニット40が下流側グリッド30の載置領域31に載置されたときに、触媒ユニット40の自重によって、ある程度弾性シール部材32が押圧されて触媒ユニット40の上下方向の位置が略均一となる。一方で、横置きの場合は、触媒ユニット40の自重が弾性シール部材32に作用しないため、触媒ユニット40の水平方向の位置は不均一になりやすい。そのため、実施の形態3では、筒状ケース41が一段配置される毎に筒状ケース41をガス流路Rの方向に押える構成となっている。
【0042】
具体的には、
図20に示すように、下流側グリッド30に嵌め込まれた1段目の筒状ケース41の上流側から中間押込みツール90を用いて1段目の筒状ケース41を押し込む。中間押込みツール90は、
図21に示すように、上下方向に長い2本の縦棒91と、左右にそれぞれ2本ずつ設けられる4本の横棒92と、2本の縦棒91又は2本の横棒92にわたって取り付けられる長板93とを備える。
【0043】
縦棒91は、それぞれ容器本体10の内周に取り付けられる。具体的には、
図22A及び22Bに示すように、縦棒91の端部が容器本体10の内周に設けられた一対の突出板11に挟み込まれた状態でボルトB6及びナットN6によって締結されている。
【0044】
横棒92は、一端が容器本体10の内周に取り付けられており、他端が縦棒91に取り付けられている。具体的には、横棒92の一端は、
図23A及び23Bに示すように、容器本体10の内周に設けられた一対の突出板12に挟み込まれた状態でボルトB7及びナットN7によって締結されている。また、横棒92の他端は、縦棒91の左右にそれぞれに設けられた突出板に挟み込まれた状態でボルト及びナットによって締結されている。
【0045】
また、縦棒91及び横棒92には、それぞれ水平方向の内ネジが設けられており、
図20及び21に示すように、この内ネジにボルトB9が通されており、このボルトB9の先端には、長板93が固定されている。ボルトB9を調整することによって、長板93は、筒状ケース41をガス流路Rの方向に押える。これにより、筒状ケース41と下流側グリッド30との間に介在する弾性シール部材32がガス流路Rの方向に押圧され、一段目の筒状ケース41の水平方向の位置を均一化することが可能となる。
【0046】
その後、中間押込みツール90を取り外して、1段目の筒状ケース41の上流側にアタッチメント43を配置し、さらにその上流側に2段目の筒状ケース41を配置する。
図24に示すように、2段目の筒状ケース41のさらに上流側には上流側グリッド70が設けられ、実施の形態1及び2と同様にグリッド押え80によって押えられている。これにより、筒状ケース41と上流側グリッド70との間に介在する弾性部材72がガス流路Rの方向に押圧される。グリッド押え80を容器本体10の内側に取り付ける具体的な方法は、例えば、
図22A、22B、23A及び23Bを用いて説明したように、中間押込みツール90を容器本体10の内側に取り付ける方法と同じ方法であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施の形態に係る排ガス処理装置3によれば、中間押込みツール90が一段毎に筒状ケース41をガス流路Rの方向に押える構成としたため、筒状ケース41の水平方向の位置を均一化することができる。これにより、実施の形態1で述べた効果と同様に、弾性シール部材32および弾性部材72が船舶の揺動やエンジンの振動を吸収しつつ、弾性シール部材32が触媒ユニット40の内部にガスをシールすることが可能となる。
【0048】
なお、実施の形態1、2及び3に係る排ガス処理装置1、2、3は、船舶における排ガス処理に使用されることを述べたがこれに限られない。船舶に限られず、揺動するものや、エンジンを含むものであって、排ガスの処理が必要な車両等にも使用され得る。