(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703919
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】紙おむつ支持体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/64 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
A61F13/64
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-175594(P2016-175594)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-38655(P2018-38655A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】507223074
【氏名又は名称】石塚 紀元
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】石塚 紀元
【審査官】
長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−092600(JP,A)
【文献】
特表2012−514528(JP,A)
【文献】
特表2013−529953(JP,A)
【文献】
特表平09−504194(JP,A)
【文献】
特開2011−025008(JP,A)
【文献】
特開2011−025007(JP,A)
【文献】
特開平05−076567(JP,A)
【文献】
特表平11−504825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙おむつの外面に密着配置されて、前記紙おむつの股下部の中央から左右方向に離間しながら前記紙おむつの前身頃と後身頃に向けて延びる二つの支持体と、
前記股下部の中央で左右方向に延びて、前記二つの支持体に連結する第三支持体と、
前記紙おむつの内面において前記前身頃から前記後身頃にわたって配置される吸収体と、
を備え、
前記第三支持体は、前記装着者の会陰部を覆う部位を装着者の会陰部に密着させて、排泄物の前後方向の移動を阻止することを特徴とする紙おむつ支持体。
【請求項2】
前記第三支持体は、前記吸収体の前身頃側で吸収しきれなかった尿を会陰部で堰き止めることを特徴とする請求項1に記載の紙おむつ支持体。
【請求項3】
前記二つの支持体は、前記紙おむつのウエスト部にそれぞれ連結されることを特徴とする請求項1または2に記載の紙おむつ支持体。
【請求項4】
前記二つの支持体は、前記ウエスト部の腰側部において端部同士が交差することを特徴とする請求項3に記載の紙おむつ支持体。
【請求項5】
前記前身頃と前記後身頃の中央で左右に延びて、前記二つの支持体に連結する伸縮体を備えることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の紙おむつ支持体。
【請求項6】
前記二つの支持体は、前記伸縮体が接続する部位から左右外側方向に離間しながら上方に向けて延びることを特徴とする請求項5に記載の紙おむつ支持体。
【請求項7】
前記二つの支持体は、その裏面に粘着層を有し、前記紙おむつの外面に接着されることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の紙おむつ支持体。
【請求項8】
前記紙おむつに対して着脱可能であることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の紙おむつ支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつの垂下りを抑える紙おむつ支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつは、吸収体を有する不織布により形成され、着用者の股部を立体的に覆う形状を有する。紙おむつは、下腹部を覆う前身頃、腰臀部を覆う後身頃、陰股部を覆う股下部からなる。
いわゆるテープタイプの紙おむつでは、後身頃の上端の両側を前身頃に覆い被せて、テープや面ファスナーで後身頃と前身頃を連結する。いわゆるパンツタイプの紙おむつでは、後身頃の上端の両側と前身頃の上端の両側が予め連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−62616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙おむつは、頻尿や尿漏れ、軟便に対応するために、介護が不要な高齢者が着用することもある。
しかし、紙おむつは、吸収体が尿や軟便を吸収すると、その重みで下方に垂下り、着用感が損なわれる。つまり、密着感や支持感がなくなって不快になる。介護が不要な高齢者にとっては、紙おむつが垂下って不快になるという恐れが外出しようとする気持ちを減退させてしまう。また、紙おむつが垂さ下がった状態で歩行し続けると、着用者の内股と干渉して擦れによる皮膚障害が発生することもある。そして、外出先では紙おむつを交換することが困難なことが多いため、介護が不要な高齢者にとっては、紙おむつが垂下ることが、精神的・物理的に外出を妨げる要因となっている。
【0005】
また、介護が必要な高齢者にとっては、紙おむつが垂下ると尿と糞が触れて、微生物の繁殖や刺激物質の生成により悪臭を放つようになる。これらの誘引となり、皮膚障害と合わせ股部皮膚の衛生環境を悪化してしまう。
【0006】
本発明は、紙おむつの吸収体が尿や軟便を吸収したときに、股下部の重みによる垂下りを防止して、着用感を維持したり、陰部皮膚の衛生環境を維持したりできる紙おむつ支持体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紙おむつ支持体の第一実施態様は、紙おむつの外面に密着配置されて、前記紙おむつの股下部の中央から左右方向に離間しながら、前記紙おむつの前身頃と後身頃に向けて延びる二つの支持体を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る紙おむつ支持体の第二実施態様は、第一実施態様において、前記支持体は、前記紙おむつのウエスト部にそれぞれ連結されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る紙おむつ支持体の第三実施態様は、第二実施態様において、前記支持体は、前記ウエスト部の腰側部において端部同士が交差することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る紙おむつ支持体の第四実施態様は、第一から第三実施態様のいずれかにおいて、前記股下部の中央で左右方向に延びて、前記支持体に連結する第三支持体を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る紙おむつ支持体の第五実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、前記前身頃と前記後身頃の中央で左右に延びて、前記支持体に連結する伸縮体を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る紙おむつ支持体の第六実施態様は、第五実施態様において、前記支持体は、前記伸縮体が接続する部位から左右方向に大きく離間しながら上方に向けて延びることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る紙おむつ支持体の第七実施態様は、第一から第六実施態様のいずれかにおいて、前記支持体は、その裏面に粘着層を有し、前記紙おむつの外面に接着されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る紙おむつ支持体の第八実施態様は、第一から第六実施態様のいずれかにおいて、前記紙おむつに対して着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る紙おむつ支持体は、紙おむつの股下部を上方に支持するため、吸収体が尿や軟便を吸収したときに、股下部の重みによる垂下りを防止できる。これにより、紙おむつの密着感や支持感が損なわれることなく、快適な着用感を維持できる。また、着用者の内股と干渉して擦れによる皮膚障害が発生することも防止できる。
さらに、本発明に係る紙おむつ支持体は、股下部を装着者に密着させることにより、前後方向における排泄物の移動を阻止できる。これにより、尿と糞が触れて雑菌が急激に繁殖することがなく、悪臭が抑えられて、股部皮膚の衛生環境を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す斜視図である。
【
図2】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す正面図である。
【
図3】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す背面図である。
【
図4】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す左側面図である。
【
図5】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す平面図である。
【
図6】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す底面図である。
【
図7】紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す展開外面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る紙おむつ支持体1について説明する。
図1から
図7は、紙おむつ支持体1および紙おむつ20を示す図である。
【0018】
紙おむつ20は、着用者の下腹部から会陰部を経て臀部を覆う不織布21を有し、この不織布21の内側に吸収体22が配置される。不織布21の外側には防水材が配置される。
不織布21は、着用者の下腹部を覆う前身頃25、腰臀部を覆う後身頃26、陰股部を覆う股下部27からなる。つまり、不織布21は、体の前面(陰部の含まれる部分)、体の後面(臀裂の部分)、体の左右外側部分(右臀部から右下腹部にかけての体側面、左臀部から左下腹部にかけての体側面)を覆う。
【0019】
前身頃25と後身頃26は、左右方向に延びる帯状の形状を有する。前身頃25は、着用者の左右の腰側部まで延びる。後身頃26は、着用者の左右の腰側部を超えて、下腹部の近傍まで延びる。
股下部27は、前身頃25の下端側中央と後身頃26の下端側中央の間に配置される。
股下部27の左右両側から前身頃25と後身頃26の下端側にかけて、紙おむつ20は、大腿部の内側付着部を通るように湾曲する。
【0020】
後身頃26は、ウエスト部29の左右方向の両端にテープ(不図示)を備える。ウエスト部29の左右両側を、前身頃25のウエスト部28の左右両端に覆い被せて、テープで連結することにより、紙おむつ20がパンツ形状になる。
【0021】
紙おむつ20の表面(外面)には、紙おむつ支持体1が装着(密着配置)される。
紙おむつ支持体1は、股下部27から前身頃25と後身頃26に向けてそれぞれ延びる二つの支持体11,12を備える。二つの支持体11,12は、帯状、索状または紐状等であり、不織布21の表面に接着等により予め固定される。支持体11,12は、左右方向に離間しながら前身頃25と後身頃26の上端まで延びる。
紙おむつ支持体1(支持体11,12)は、紙おむつ20とは異なる材料により形成することが望ましい。水分を吸収しずらい材料、または、水分を吸収しても伸びない材料が好ましい。例えば、耐水紙や樹脂、ゴム等により形成することが好ましい。
【0022】
支持体11は、着用者の右下腹部から右大腿内側付着部を通り、会陰部右側を経て臀裂左下部から左腰部へ至る。支持体11の両端は、前身頃25と後身頃26の上端側(ウエスト部28,29)までそれぞれ延びる。
支持体12は、着用者の左下腹部から左大腿内側付着部を通り、会陰部左側を経て臀裂右下部から右腰部へ至る。支持体12の両端は、前身頃25と後身頃26の上端側(ウエスト部28,29)までそれぞれ延びる。
【0023】
股下部27のほぼ中央には、左右に延びて支持体11,12同士の間に架け渡される支持体13が配置される。
支持体13は、二つの支持体11,12と同様に、帯状、索状または紐状等であり、不織布21の表面に接着等により予め固定される。支持体11,12は、支持体13の両端から左右方向に離間しながら前身頃25と後身頃26に向けて延びる。
【0024】
前身頃25と後身頃26のそれぞれのほぼ中央には、左右に延びて支持体11,12同士の間に架け渡される伸縮体14,15が配置される。
伸縮体14,15は、帯状、索状または紐状等弾性体であり、支持体11,12,13と同様に不織布21の表面に接着等により予め固定される。伸縮体14,15は、例えばゴム等である。支持体11,12は、伸縮体14,15が接続する部位から、左右方向に大きく離間しながら前身頃25と後身頃26の上端に向けて延びる。
【0025】
紙おむつ20の前方側と後方側には、支持体11,12と伸縮体14,15により区画された領域が形成される。この区画された領域の内面側には、吸収体22(吸収体22A,22B)が配置される。吸収体22は、支持体13を基準(中央)にして前後に延びるように配置される。
【0026】
紙おむつ20を装着するときは、前身頃25、後身頃26、股下部27により、着用者の下腹部、腰臀部、陰股部をそれぞれ覆う。そして、後身頃26の左右方向の両端を前身頃25の左右方向の両端に覆い被せて(重ねて)、テープで後身頃26と前身頃25を連結する。つまり、ウエスト部28,29の両端を接続する。これにより、紙おむつ20がパンツ形状になって、股間に装着される。そして、支持体11,12,13は、不織布21と吸収体22を上方に向けて引っ張り上げるように支持する。
【0027】
紙おむつ支持体1は、紙おむつ22の股下部27を上方に支持するため、吸収体22が尿や軟便を吸収したときに、股下部27の重みによる垂下りを防止できる。これにより、紙おむつ20の密着感や支持感が損なわれることなく、快適な着用感を維持できる。また、着用者の内股と股下部27が干渉して擦れによる皮膚障害が発生することも防止できる。
【0028】
さらに、紙おむつ支持体1は、股下部27を装着者の会陰部に密着させるように支持するので、紙おむつ22の内部で排泄物が前後方向に移動することを阻止する。つまり、股下部27の前方側で吸収体22Aに吸収しきれなかった尿は、会陰部で堰き止められて、徐々に吸収体22Aに吸収される。
このため、尿が股下部27の後方側まで移動して、吸収体22Bに付着した糞に触れることが抑止される。したがって、尿と糞が触れて雑菌が急激に繁殖することがなく、悪臭が抑えられて、股部皮膚の衛生環境を維持できる。
【0029】
伸縮体14が支持体11,12に連結(接続)し、さらに支持体11,12が大きく左右方向に離間するので、支持体11,12に掛かる力を分散することできる。このため、紙おむつ支持体1の耐久性が向上して、紙おむつ20の着用感を長期間に亘って維持できる。
【0030】
後身頃26と前身頃25を重ねて、テープで後身頃26と前身頃25を連結すると、支持体11,12同士がウエスト部28,29において交差する。このため、支持体11,12を上方に向けて引っ張り上げることができる。したがって、紙おむつ20による股間の支持感が向上する。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0032】
紙おむつ支持体1は、紙おむつ20の表面(不織布21)に接着等により予め固定される場合に限らない。
紙おむつ支持体1は、その裏面に粘着層を有し、紙おむつ1の外面に接着される場合であってもよい。つまり、紙おむつ支持体1は、紙おむつ1に対して後付けされる場合であってもよい。
【0033】
紙おむつ支持体1は、紙おむつ20に対して着脱可能であってもよい。つまり、繰り返し使用できるものであってもよい。
【0034】
支持体13を備える場合に限らず、支持体11,12が股下部27の中央でX字形やY字形に交差する場合であってもよい。
【0035】
紙おむつ20は、いわゆるテープタイプに限らず、いわゆるパンツタイプであってもよい。紙おむつ支持体1は、紙おむつ20に限らず、いわゆる尿漏れパンツ(失禁パンツ)に対しても装着することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 紙おむつ 11,12 支持体(二つの支持体) 13 支持体(第三支持体) 14,15 伸縮体 20 紙おむつ 21 不織布 22,22A,22B 吸収体 25 前身頃 26 後身頃 27 股下部 28,29 ウエスト部