(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703921
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 23/00 20060101AFI20200525BHJP
F04C 18/356 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
F04C23/00 F
F04C18/356 H
F04C18/356 M
F04C18/356 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-179607(P2016-179607)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-44489(P2018-44489A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】畑山 昌宏
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/065706(WO,A1)
【文献】
特開2008−14150(JP,A)
【文献】
特開2006−177225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケースと、前記密閉ケース内の上部に収容された極数が6極以上の電動機と、前記密閉ケース内の下部に収容されて前記電動機に連結された回転軸を介して駆動される圧縮機構部と、前記密閉ケースの上部に設けられた吐出管とを有し、
前記圧縮機構部は、上下両端が閉塞されて内部にシリンダ室が形成された2つのシリンダを有し、前記シリンダ室内で前記回転軸に嵌合されたローラが偏心回転することにより作動流体を圧縮し、前記シリンダ室内で圧縮された作動流体を前記密閉ケース内に吐出し、
前記電動機は、前記回転軸と一体に回転する回転子とこの回転子の外周を囲む固定子とを有し、前記シリンダ室内から吐出された作動流体を前記吐出管側に導く吐出流路が形成され、
作動流体の最大吐出圧力が3MPa以上となる回転式圧縮機において、
前記シリンダ室の内径をD1、
前記2つのシリンダのシリンダ室の合計高さをH、
前記固定子の上端部から前記密閉ケースの上部内壁面までの距離をL1、
前記密閉ケースの内側断面積をAc、
前記吐出流路の総断面積をAd、
前記固定子の固定子鉄心の厚みをTとしたとき、
下記関係式(1)〜(3)が全て成り立つことを特徴とする回転式圧縮機。
(1)0.85×D1<H<L1
(2)0.06<Ad/Ac<0.13
(3)1.2<T/H<1.5
【請求項2】
前記密閉ケース内の前記シリンダの位置における水平断面において、前記シリンダ室の外側に形成されて上下方向に伸びる空間の平均断面積をAv、
前記電動機の前記回転子の下端部から前記密閉ケースの下部内壁面までの距離をL2としたとき、
下記関係式(4)及び(5)が成り立つことを特徴とする請求項1記載の回転式圧縮機。
(4)Av/Ac>0.1
(5)H<L2/2
【請求項3】
前記回転軸は、一方の前記シリンダの前記電動機側の端面側に設けられた一方の軸受と、他方の前記シリンダの前記電動機と反対側の端面側に設けられた他方の軸受とにより軸支され、前記軸受の内径をD2としたとき、
下記関係式(6)が成り立つことを特徴とする請求項1又は2記載の回転式圧縮機。
(6)0.3<D2/H<0.4
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の回転式圧縮機と、前記回転式圧縮機に接続される放熱器と、前記放熱器に接続される膨張装置と、前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続される吸熱器とを備えた冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機及びこの回転式圧縮機を用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉ケース内に電動機とこの電動機に連結された回転軸を介して駆動される圧縮機構部とを収容し、冷媒等の作動流体を圧縮する回転式圧縮機において、圧縮されて吐出される作動流体の吐出容量を増大させるために様々な対策が講じられており、例えば、下記特許文献1に記載されたような対策が講じられている。
【0003】
特許文献1に記載された回転式圧縮機では、シリンダ室の内径をD、シリンダ室の高さをHとしたとき、1シリンダ型はH/D≦0.4、2シリンダ型はH/D≦0.3としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4864572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された回転式圧縮機では、吐出容量を増大させるためには、シリンダ室の内径を大きくする必要があり、それに伴い、密閉ケースの内径も大きくなるので耐圧性が低下する。特に、吐出圧力が高い場合には、密閉ケースの肉厚をアップすることが必要となり、回転式圧縮機の大型化、重量増大、省資源性の悪化を招いている。そのため、H/Dを大きくし、密閉ケースの内径を大きくすることなく吐出容量を大きくすることが考えられるが、その場合、電動機の径を大きくできないことから、従来一般に用いられている4極電動機では圧縮負荷トルクが過大になり、圧縮機効率が低下していた。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、小型でありながら吐出容量が大きい回転式圧縮機及びこの回転式圧縮機を用いた冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の回転式圧縮機によれば、密閉ケースと、密閉ケース内の上部に収容された極数が6極以上の電動機と、密閉ケース内の下部に収容されて電動機に連結された回転軸を介して駆動される圧縮機構部と、密閉ケースの上部に設けられた吐出管とを有し、圧縮機構部は、上下両端が閉塞されて内部にシリンダ室が形成された2つのシリンダを有し、シリンダ室内で回転軸に嵌合されたローラが偏心回転することにより作動流体を圧縮し、シリンダ室内で圧縮された作動流体を密閉ケース内に吐出し、電動機は、回転軸と一体に回転する回転子とこの回転子の外周を囲む固定子とを有し、シリンダ室内から吐出された作動流体を吐出管側に導く吐出流路が形成され、作動流体の最大吐出圧力が3MPa以上となる回転式圧縮機において、シリンダ室の内径をD1、2つのシリンダのシリンダ室の合計高さをH、固定子の上端部から密閉ケースの上部内壁面までの距離をL1、密閉ケースの内側断面積をAc、吐出流路の総断面積をAd、固定子の固定子鉄心の厚みをTとしたとき、
下記関係式(1)〜(3)が全て成り立つ。
(1)0.85×D1<H<L1
(2)0.06<Ad/Ac<0.13
(3)1.2<T/H<1.5
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】断面図で示した回転式圧縮機を含む冷凍サイクル装置の概略図である。
【
図2】4極電動機と6極電動機とにおける、シリンダ室の高さと内径の比を変えた場合のCOP比を示すグラフである。
【
図3】Ad/Acと潤滑油の吐油量との関係を示すグラフである。
【
図4】Ad/Acと電動機の効率比との関係を示すグラフである。
【
図5】T/Hと電動機の効率比との関係を示すグラフである。
【
図6】T/Hと吐出流路の圧力損失の割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の冷凍サイクル装置の概略について、
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された放熱器である凝縮器3と、凝縮器3に接続された膨張装置4と、膨張装置4に接続された吸熱器である蒸発器5とを有している。回転式圧縮機2にはアキュムレータ6が設けられている。この冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体状のガス冷媒と液体状の液冷媒とに相変化しながら循環し、ガス冷媒から液冷媒に相変化する過程で放熱され、液冷媒からガス冷媒に相変化する過程で吸熱され、これらの放熱や吸熱を利用して暖房、冷房、加熱、冷却等が行われる。
【0010】
なお、回転式圧縮機2では、ガス冷媒の圧縮が行われる。凝縮器3では、圧縮されたガス冷媒が凝縮されて液冷媒となる。膨張装置4では、凝縮された液冷媒が減圧される。蒸発器5では、減圧された液冷媒が蒸発してガス冷媒となる。回転式圧縮機2のアキュムレータ6では、蒸発器5で蒸発したガス冷媒中に液冷媒が含まれていた場合、その液冷媒が除去される。
【0011】
回転式圧縮機2は、上下両端が閉塞されて気密状態とされる円筒状の密閉ケース7を有し、この密閉ケース7内の上部に電動機8が収容され、密閉ケース7内の下部にガス冷媒を圧縮する部分である圧縮機構部9が収容されている。電動機8には回転軸10が連結され、この回転軸10を介して圧縮機構部9が駆動されるようになっている。圧縮機構部9で圧縮されたガス冷媒は密閉ケース7内に吐出され、密閉ケース7内は高圧のガス冷媒で満たされる。密閉ケース7の上部には吐出管11が設けられ、密閉ケース7内の高圧のガス冷媒は吐出管11内を通って凝縮器3に導かれるようになっている。また、密閉ケース7内の底部には潤滑油12が貯留されている。
【0012】
電動機8は、回転軸10に固定されて回転軸10と一体に回転する回転子13とこの回転子13の外周を囲む固定子14とを有しており、極数が6極以上とされている。回転子13は、電磁鋼板を積層した回転子鉄心13aと、回転子鉄心13aの内部に挿入された複数の永久磁石13bとを有している。固定子14は、電磁鋼板を積層した固定子鉄心14aと、固定子鉄心14aに巻回された界磁巻線14bとを有している。また、電動機8には、圧縮機構部9から密閉ケース7内に吐出されたガス冷媒を密閉ケース7内の上部側である吐出管11側に導く複数の吐出流路15、例えば、回転子13に上下方向に貫通して形成された貫通孔、密閉ケース7の内周面と固定子14の外周面間の隙間及び回転子13外周面と固定子14の内周面間の隙間等が形成されている。
【0013】
圧縮機構部9は、上下方向に配置された2つのシリンダ16a、16bと、シリンダ16a、16bの間に配置されてそれらのシリンダ16a、16bの一方の端面を閉塞する仕切板17と、一方のシリンダ16aの上方側である電動機8側に配置されてこのシリンダ16aの上方側の端面を閉塞する一方の軸受である主軸受18と、他方のシリンダ16bの下方側である電動機8の反対側に配置されてこのシリンダ16bの下方側の端面を閉塞する他方の軸受である副軸受19とを有している。そして、両端面を主軸受18と仕切板17とにより閉塞されたシリンダ16aの内部にシリンダ室20aが形成され、両端面を仕切板17と副軸受19とにより閉塞されたシリンダ16bの内部にシリンダ室20bが形成されている。これらのシリンダ16a、16bには回転軸10が挿通されており、この回転軸10は主軸受18と副軸受19とにより軸支されている。
【0014】
回転軸10には、円柱状の2つの偏心部21a、21bが形成されており、一方の偏心部21aはシリンダ室20a内に配置され、他方の偏心部21bはシリンダ室20b内に配置されている。偏心部21aにはローラ22aが嵌合され、偏心部21bにはローラ22bが嵌合されている。これらのローラ22a、22bは、回転軸10の回転に伴い外周面をシリンダ室20a、20bの内周面に摺接させながら偏心回転ように設けられている。また、シリンダ16aには往復摺動可能なブレード23aが設けられ、シリンダ16bには往復摺動可能なブレード23bが設けられ、これらのブレード23a、23bは先端部をローラ22a、22bの外周面に当接させることによりシリンダ室20a、20b内を、低圧のガス冷媒を吸込む吸込室と吸込んだガス冷媒を圧縮する圧縮室とに区画している。
【0015】
主軸受18には、シリンダ室20a内で圧縮されたガス冷媒を密閉ケース7内に吐出させるための吐出孔24aと吐出弁25aとが設けられている。副軸受19には、シリンダ室20b内で圧縮されたガス冷媒を密閉ケース7内に吐出させるための吐出孔24bと吐出弁25bとが設けられている。
【0016】
また、主軸受18には、吐出弁25aを囲む位置にマフラケース26aが取付けられ、吐出弁25aを開弁して吐出したガス冷媒はマフラケース26a内に吐出された後、マフラケース26aに形成された吐出孔27から密閉ケース7内に吐出されるようになっている。副軸受19には、吐出弁25bを囲む位置にマフラケース26bが取付けられ、吐出弁25bを開弁して吐出されたガス冷媒はマフラケース26b内に吐出された後、図示しない連通路を通ってマフラケース26a内に流入し、マフラケース26aの吐出孔27から密閉ケース7内に吐出されるようになっている。
【0017】
ここで、この回転式圧縮機2は、作動時におけるガス冷媒の最大吐出圧力が3メガパスカル(MPa)以上となるように設定されており、この回転式圧縮機2における各部の寸法について以下に詳しく説明する。
【0018】
シリンダ室20a、20bの内径は同じ寸法であり、これらのシリンダ室20a、20bの内径はD1とされている。
【0019】
一方のシリンダ室20aの高さはH1、他方のシリンダ室20bの高さはH2、2つのシリンダ室20a、20bの合計高さがH(H=H1+H2)とされている。
【0020】
固定子14の上端部から密閉ケース7の上部内壁面までの距離は、L1とされている。
【0021】
密閉ケース7の内側断面積は、Acとされている。
【0022】
吐出流路15の総断面積は、Adとされている。
【0023】
固定子14の固定子鉄心14aの厚みは、Tとされている。
【0024】
以上説明した各寸法は、下記関係式(1)〜(3)が全て成り立つように設定されている。
(1)0.85×D1<H<L1
(2)0.06<Ad/Ac<0.13
(3)1.2<T/H<1.5
つぎに、密閉ケース7内のシリンダ16a、16bの位置における水平断面において、シリンダ室20a、20bの外側に形成されて上下方向に伸びる空間の平均断面積は、Avとされている。
【0025】
また、電動機8の回転子13の下端部から密閉ケース7の下部内壁面までの距離はL2とされている。
【0026】
そして以上説明した各寸法は、下記関係式(4)及び(5)が成り立つように設定されている。
(4)Av/Ac>0.1
(5)H<L2/2
つぎに、主軸受18と副軸受19との内径は、D2とされている。
【0027】
そして、以上説明した各寸法は、下記関係式(6)が成り立つように設定されている。
(6)0.3<D2/H<0.4
このような構成において、電動機8に通電されることにより回転子13と回転軸10とが回転し、回転軸10が回転することにより圧縮機構部9が駆動される。圧縮機構部9が駆動されることにより、低圧のガス冷媒がアキュムレータ6を通過してシリンダ室20a、20b内に吸込まれ、吸込まれたガス冷媒はシリンダ室20a、20b内で圧縮される。
【0028】
シリンダ室20a内で圧縮されて高圧になったガス冷媒は、吐出弁25aからマフラケース26a内に吐出され、マフラケース26aの吐出孔27から密閉ケース7内に吐出される。また、シリンダ室20b内で圧縮されて高圧になったガス冷媒は、吐出弁25bからマフラケース26b内に吐出され、図示しない連通路を通ってマフラケース26a内に流入した後、マフラケース26aの吐出孔27から密閉ケース7内に吐出される。吐出孔27から密閉ケース7内に吐出されたガス冷媒は、電動機8に形成された吐出流路15を通って密閉ケース7内の上部側である吐出管11側に導かれ、吐出管11を通って凝縮器3に導かれる。
【0029】
図2は、作動時の最大吐出圧力が3MPa以上となる冷媒(例えば、R410A、R32、二酸化炭素)を用いた定格条件において、シリンダ室20a、20bの内径“D1”、密閉ケース7の内径を同一にしたまま、シリンダ室20a、20bの合計高さ“H”を大きくしてガス冷媒の吐出容量を増大した場合の、“H/D1”と、4極電動機使用時と6極電動機使用時とのCOP(成績係数)比(6極電動機使用時のCOP/4極電動機使用時のCOP)の関係を示している。
【0030】
この
図2から、0.85<H/D1の領域、即ち、圧縮負荷トルクが大きい領域になると、COP比が1以上となり、6極電動機のほうが、大電流時における銅損抑制効果や鉄心間ピーク磁束減による鉄損低減効果により効率が高くなることが分かる。よって、0.85×D1<Hの場合には、6極電動機を使用することにより、密閉ケース7の細径化、吐出容量の増大、高効率化を両立することができ、高耐圧であり、小型軽量で吐出容量が大きく、省資源性の高い回転式圧縮機2を提供することができる。
【0031】
なお、
図2では4極電動機に対して6極電動機を比較した場合を例に挙げて説明しているが、6極以上の電動機、例えば、8極電動機や10極電動機等においても同様の効果が得られる。
【0032】
図3は、0.85×D1<Hを満たし、かつ、固定子14の上端部から密閉ケース7の上部内壁面までの距離L1をシリンダ室20a、20bの合計高さHより大きくしたとき(H<L1)の、Ad/Acに対する吐出管11からの潤滑油12の吐油量を計測した結果を示している。吐油量は、ガス冷媒の循環量に対する重量比で表している。シリンダ室20a、20bの内径、密閉ケース7の内径を変えずにシリンダ室20a、20bの合計高さ“H”を変えてガス冷媒の吐出容量を増大していくと、電動機8の吐出流路15におけるガス冷媒の流速が大きくなるため、吐出流路15においてガス冷媒から潤滑油が分離しにくくなり、特に、Ad/Ac<0.06においては吐油量が急増することが分かる。
【0033】
図4は、Ad/Acに対する6極の電動機8の効率比を示している。電動機8の効率比は、Ad/Ac=0.13における電動機効率に対する比で表している。この
図4から、Ad/Ac>0.13においては、吐出流路15の面積を確保するために界磁巻線14bの占積率低下や永久磁石13bの断面積低下等を招き、電動機8の効率が大幅に低下することが分かる。これらのことから、H<L1と、0.06<Ad/Ac<0.13(関係式2)とを満たすことにより、電動機効率の悪化を抑制しつつ吐油量を少なくすることができる。
【0034】
図5は、0.85×D1<H<L1、0.06<Ad/Ac<0.13を満たすときの、T/Hに対する6極の電動機8の効率比を示している。電動機8の効率比は、T/H=1.2における電動機効率に対する比で表している。T/H<1.2においては、圧縮負荷トルクに対し固定子鉄心14aの厚み“T”が小さく、電動機8の効率低下を招いていることが分かる。
【0035】
図6は、シリンダ室20a、20bの合計高さHに対する固定子14の固定子鉄心14aの厚みTの割合(T/H)と、圧縮機理論仕事Wthに対する電動機8の吐出流路15におけるガス冷媒の圧力損失Wdの割合との関係を示している。1.5<T/Hにおいては、Wd/Wthが急増する。これらのことから、1.2<T/H<1.5(関係式3)により、電動機効率の悪化を抑制しながら吐出流路15の圧力損失を低減することができる。したがって、以上の関係式1〜関係式3を全て満たすことにより、高耐圧であり、小型軽量で吐出容量が大きく、省資源性が高く、しかも、吐油量が少なく信頼性の高い回転式圧縮機2を提供することができる。
【0036】
また、密閉ケース7の細径化と吐出容量の増大化とを図った場合、Av/Ac>0.1(関係式4)、かつ、H<L2/2(関係式5)とすることにより、密閉ケース7の底部に十分な量の潤滑油12を貯留することができ、潤滑油12が吐油された場合においても密閉ケース7内における潤滑油12の油面の急激な低下を防止することができ、より信頼性の高い回転式圧縮機2を提供することができる。
【0037】
図7は、主軸受18と副軸受19との内径D2と、シリンダ室20a、20bの合計高さHの比であるD2/Hに対する定格条件におけるCOP比を示している。COP比は、D2/H=0.3のときのCOPに対する比で表している。D2/H<0.3の領域では、Hを大きくすることで主軸間距離が大きくなるのに対し、回転軸10の剛性が不十分となり、回転軸10のたわみが過大になることによりCOPが大きく低下する。一方、D2/H>0.4の領域では、圧縮負荷トルクに対して回転軸10の径が必要以上に大きくなり、軸摺動損失の増大を招いてCOPが低下する。これらのことから、0.3<D2/H<0.4(関係式6)とすることにより、より一層高効率となる回転式圧縮機2を提供することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…冷凍サイクル装置、2…回転式圧縮機、3…凝縮器(放熱器)、4…膨張装置、5…蒸発器(吸熱器)、8…電動機、9…圧縮機構部、10…回転軸、11…吐出管、13…回転子、14…固定子、14a…固定子鉄心、15…吐出流路、16a、16b…シリンダ、18、19…軸受、20a、20b…シリンダ室、22a、22b…ローラ