(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用される軽油留分は、直接蒸留からの軽油留分のみ又はコーキング装置から得られる少なくとも1種の留分との混合物、或いは接触分解からの少なくとも1種の留分又は残渣のマイルド水素化分解又は水素化処理等の他の転換方法からの少なくとも1種の軽油留分から選択される、請求項1に記載の方法。
前記触媒が少なくとも1種の第VIB族の金属を少なくとも1種の第VIII族の非貴金属と組み合わせて含む場合、第VIB族の金属の含有量は触媒の全質量に対して10〜35重量%の酸化物であり、及び第VIII族の非貴金属の含有量は触媒の全質量に対して1〜10重量%の酸化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記触媒は、リン、ホウ素、フッ素、又はケイ素から単独で又は混合物として選択される少なくとも1種のドーピング元素を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
前記担体は、容積により規定された、水銀ポロシメトリによって測定されるメソ細孔の直径中央値(median diameter)7〜12.5nmを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義及び測定方法
本明細書及び特許請求の範囲の以下において、分散度指数は、ポリプロピレン管中で3600Gにて10分間遠心分離することによって分散可能である解膠アルミナゲルの重量百分率として定義される。
【0026】
この分散度は、10%のベーマイト又はアルミナゲルを、ベーマイトの質量に対して10%の硝酸もまた含有する水の懸濁液中に分散させることによって測定される。続いて、この懸濁液を3600Grpmにて10分間遠心分離する。回収した沈殿物を100℃にて一晩乾燥させた後秤量する。
【0027】
IDで示される分散度指数は以下の計算式により得られる:ID(%)=100%−乾燥沈殿物の質量(%)
本明細書及び特許請求の範囲の以下において、触媒担体として使用されるアルミナの又は本発明による方法において使用される触媒の連結度は、所与の細孔に隣接する細孔の数として定義される。本発明による連結度は、窒素吸着/脱着等温線から決定され、アルミナ又は触媒の全多孔度及び特にアルミナのメソ多孔度全体、即ち、2〜50nmの平均直径を有する細孔全体を代表するものである。
【0028】
連結度は、Seatonによる出版物(Liu H.、Zhang L.、Seaton N.A.、ケミカル エンジニアリング サイエンス(Chemical Engineering Science)、第47巻、17−18号、4393−4404頁、1992年)に記載された手順に従って測定される相対的な値である。このような連結度は、窒素吸着/脱着等温線に基づいたモンテカルロシミュレーション(Monte-Carlo simulation)に関連する。これらの連結度パラメータはパーコレーションの理論に基づく。連結度は、隣接細孔の数と関連付けられ、高い連結度は、触媒反応中の処理すべき分子の拡散についての有利性を表す。
【0029】
本発明による方法において使用されるアルミナ及び触媒は更に特定の細孔分布を有し、ここでは、マクロ細孔及びメソ細孔容積は水銀の侵入によって測定され、及びミクロ細孔容積は窒素吸着によって測定される。
【0030】
用語「マクロ細孔」とはその開口が50nmよりも大きな細孔であると理解されるよう意図されている。
【0031】
用語「メソ細孔」はその開口が2nm〜50nm(限界値を含む)である細孔であると理解されるよう意図されている。
【0032】
用語「ミクロ細孔」はその開口が2nm未満である細孔であると理解されるよう意図されている。
【0033】
本発明の以下の記載において、水銀ポロシメトリによって測定される細孔分布は、ASTM標準D4284−83に従って、4000バール(400MPa)の最大圧力での水銀ポロシメータにおける侵入により、484ダイン/cmの表面張力及び140°の接触角を用いて測定される。出版物「Techniques de l‘ingenieur、traite analyse et caracterisation」(工学者の技術、分析論文及び特徴付け(Engineer techniques、analysis treatise and characterisation))、1050−5頁、Jean Charpin及びBernard Rasneur著の推奨に従い、濡れ角は140°であるとした。
【0034】
水銀が全粒間空隙を満たしこれを超えると水銀がアルミナの細孔中に導入されると考えられる値を0.2MPaに設定した。
【0035】
より高い正確性を得るためには、全細孔容積の値は、試料で測定された水銀ポロシメータにおける侵入によって測定される全細孔容積の値から、30psi(およそ0.2MPa)に相当する圧力について同じ試料で測定された水銀ポロシメータにおける侵入によって測定される全細孔容積の値を差し引いた値に相当する。
【0036】
触媒のマクロ細孔容積は、0.2MPa〜30MPaの圧力にて導入される水銀の累積体積として定義され、50nmよりも大きな見かけ直径を有する細孔中に含有される容積に相当する。
【0037】
触媒のメソ細孔容積は、30MPa〜400MPaの圧力にて導入される水銀の累積体積として定義され、2〜50nmの見かけ直径を有する細孔中に含有される容積に相当する。
【0038】
ミクロ細孔の容積は窒素ポロシメトリによって測定される。ミクロ細孔度の定量分析は、「t」法(Lippens-De Boer method、1965年)に基づき行われ、この方法は、出版物「Adsorption by powders and porous solids.Principles、methodology and applications(粉末及び多孔性固体による吸着。原理、方法論及び応用)」、F.Rouquerol、J.Rouquerol及びK.Sing著、アカデミック プレス(Academic Press)、1999年に記載されている、初期吸着等温線の変形に相当している。
【0039】
メソ細孔の直径中央値(median diameter)(Dp、単位nm)はまた、その直径よりも小さなサイズを有する全細孔が水銀ポロシメトリによって測定されるメソ細孔容積の50%を構成するような直径として定義される。
【0040】
窒素吸着法によって測定される細孔分布は、バレット・ジョイナー・ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda(BJH))モデルによって決定されてきた。BJHモデルに従う窒素吸着/脱着等温線は、定期刊行の「ザ ジャーナル オブ アメリカン ソサイエティ(The Journal of American Society)」、第73巻、373号、(1951年)、E.P.Barrett、L.G.Joyner及びP.P.Halenda著に記載されている。本発明の以下の記載において、窒素吸着容積との用語は、窒素が全細孔を満たしたことが認められる圧力であるP/P
0=0.99に対して測定された容積であると理解されることが意図されている。
【0041】
本発明の以下の記載において、用語「比表面積」とは、定期刊行の「ザ ジャーナル オブ アメリカン ソサイエティ(The Journal of American Society)」、第60巻、309頁、(1938年)に記載されているブルナー・エメット・テラー(BRUNAUER-EMMETT-TELLER)法に基づいて実施されるASTM標準D3663−78による窒素吸着法により決定される、B.E.T.比表面積であると理解されることが意図されている。
【0042】
以下において、化学元素族はCAS分類(CRCハンドブック オブ ケミストリ アンド フィジックス(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、CRC press編、編集長D.R.Lide、81版、2000−2001年)に従って付与される。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による第8、9及び10欄の金属に相当する。
発明の説明
本発明は、240℃〜350℃の平均加重温度(TMP)を有する少なくとも1種の軽油留分のための水素化処理方法、及び特に水素化脱硫方法に関する。
【0043】
TMPは、原料油の体積の5%、50%、及び70%が蒸留される温度に基づき、次式に従って定義される:TMP=(T5%+2×T50%+4×T70%)/7。TMPは疑似(simulated)蒸留値に基づいて計算される。処理される炭化水素含有原料油は一般に150℃〜500℃、好ましくは180〜450℃の蒸留範囲を有する。
【0044】
本明細書及び特許請求の範囲の以下において、この原料油を従来通り軽油と称するが、この表記は何ら制限的な性質を有さない。水素化処理を阻害する硫黄及び窒素含有化合物を含有しかつ軽油留分と類似のTMPを有するあらゆる炭化水素含有原料油が、本発明が関係する方法に関連し得る。炭化水素含有原料油はいかなる化学的性質を有するものであってもよく、即ち、異なる化学ファミリー間、特にパラフィン、オレフィン、ナフタレン、及び芳香族間において、いかなる分布を有していてもよい。
原料油
本発明による水素化処理方法に使用される原料油は硫黄を含有する軽油留分である。
【0045】
原料油中における硫黄含有量は一般に5重量%未満であり、好ましい態様においては0.2〜4重量%、更に好ましい態様においては0.25〜3重量%である。
【0046】
原料油中における全窒素含有量(中性及び塩基性)は50ppm以上、好ましくは200〜6000重量ppm、より好ましい態様においては300〜4000重量ppm、なおより好ましい態様においては400〜4000ppmである。塩基性窒素の含有量は全窒素含有量の少なくとも三分の一である。
【0047】
塩基性窒素の含有量は一般に、10ppm以上、より好ましい態様では65〜2000重量ppm、なおより好ましい態様では100〜2000ppmである。
【0048】
処理される原料油は一般に樹脂をほとんど含有せず、樹脂の含有量は一般に1重量%未満である。
【0049】
本発明による方法において使用される軽油留分は有利には、直接蒸留から生ずる軽油留分(即ち直留軽油)のみ又はコーキング装置から生ずる少なくとも1種の留分との混合物、或いは接触分解(流動接触分解)から生ずる少なくとも1種の留分又は残渣のマイルド水素化分解もしくは水素化処理等の他の転換方法から生ずる少なくとも1種の軽油留分から選択される。本発明による方法において使用される軽油留分は、化合物の少なくとも90%が有利には250℃〜400℃の沸点を有する留分である。
【0050】
本発明によれば、本発明による少なくとも1種の軽油留分の水素化処理方法又は水素化脱硫方法は、温度250℃〜400℃、好ましくは320℃〜380℃で、全圧2MPa〜10MPa、好ましくは3MPa〜9MPaにて、炭化水素含有原料油体積に対する水素体積の比100〜800リットル/リットル、好ましくは200〜400リットル/リットルで、及び反応器中に供給される触媒の体積に対する液体炭化水素含有原料油の体積流量の比によって定義される時間当り体積速度(HVR)1〜10h
−1、好ましくは2〜8h
−1にて実施される。
【0051】
本発明によれば、水素化処理方法又は水素化脱硫方法において使用される触媒は、少なくとも1種の周期律分類第VIB族の金属及び/又は少なくとも1種の同第VIII族の金属と、2.7よりも大きな連結度(Z)を有する非晶質メソ多孔質アルミナを含む、好ましくはそれにより構成される担体と含み、アルミナの前記連結度は窒素吸着/脱着等温線により規定される。
【0052】
本発明において使用される触媒はまた、有利には2.7よりも大きく、好ましくは2.7〜10、好ましい態様では2.8〜10、非常に好ましい態様では3〜9、より好ましい態様では3〜8、なおより好ましい態様では3及び7である、窒素吸着/脱着等温線から決定される連結度(Z)を有し、触媒の前記連結度は窒素吸着/脱着等温線から決定される。
【0053】
好ましくは、第VIII族の元素は、第VIII属の貴金属及び非貴金属から、好ましくは鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、又は白金から単独で又は混合物として選択される。
【0054】
第VIII族の元素が第VIII族の非貴金属から選択される場合、第VIII族の元素は有利にはコバルト、ニッケル、鉄から、好ましくはコバルト及びニッケルから選択され、単独で又は混合物として採用される。
【0055】
好ましくは第VIB族の元素はタングステン及びモリブデンから選択され、単独で又は混合物として採用される。水素化作用種が第VIII族の元素及び第VIB族の元素を含む場合、以下の金属の組合せが好ましい:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、鉄−モリブデン、鉄−タングステン、ニッケル−タングステン、コバルト−タングステン、非常に好ましい態様では:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン。例えばニッケル−コバルト−モリブデン等の、3種の金属の組合せを使用することも可能である。第VI族及び第VIII族の金属の組み合わせを使用する場合には、触媒は好ましくは硫化された形で使用される。
【0056】
以下の金属含有量は、その計量が焼成されているであろう固体上の蛍光X線によって行われ得る場合には、それらの酸化物等価形態で表されるが、触媒は硫化前に焼成されていても、されていなくてもよい。
【0057】
触媒が少なくとも1種の第VIB族の金属を、少なくとも1種の第VIII族の非貴金属と組み合わせて含む場合、その第VIB族の金属含有量は、有利には触媒の全質量に対して10〜35重量%の酸化物、好ましくは15〜30重量%の酸化物、非常に好ましい態様では18〜25重量%の酸化物であり、第VIII族の非貴金属含有量は有利には、触媒の全質量に対して1〜10重量%の酸化物、好ましくは1.5〜8重量%の酸化物、非常に好ましい態様では2〜6重量%の酸化物である。
【0058】
酸化物触媒における第VIB族の金属と比較した第VIII族の金属のモル比は、好ましくは0.1:1.0〜0.8:1.0、非常に好ましい態様では0.2:1.0〜0.6:1.0、更により好ましい態様では0.3:1.0〜0.5:1.0である。
【0059】
有利には、本発明による方法において使用される触媒は、リン、ホウ素、フッ素、又はケイ素から単独で又は混合物として選択される少なくとも1種のドーピング元素を含有していてよい。好ましくは、ドーピング剤はリン又はホウ素である。
【0060】
触媒がリンを含有する場合、酸化触媒におけるリンの含有量は、好ましくは0.5〜15重量%のP
2O
5、より好ましい態様では1〜10重量%のP
2O
5、非常に好ましい態様では2〜8重量%のP
2O
5である。リンの含有量はまた有利にはリンのモリブデンに対するモル比が0.1:1.0〜0.8:1.0、非常に好ましい態様では0.2:1.0〜0.6:1.0となるように選択される。
【0061】
触媒がホウ素を含有する場合、酸化物触媒におけるホウ素の含有量は、好ましくは0.2〜8重量%のB
2O
3、より好ましくは0.5〜5重量%のB
2O
3、非常に好ましい態様では1〜4重量%のB
2O
3である
。ホウ素の含有量はまた、有利にはホウ素のモリブデンに対するのモル比が0.1:1.0〜0.8:1.0、非常に好ましい態様では0.2:1.0〜0.6:1.0となるように選択される。
【0062】
触媒がケイ素を含有する場合、酸化物触媒におけるケイ素の含有量は好ましくは0.5〜30重量%のSiO
2、より好ましくは3〜10重量%のSiO
2である。
【0063】
触媒がフッ素を含有する場合、酸化物触媒におけるフッ素の含有量は好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
【0064】
好ましくは、本発明による方法において使用される触媒は、非晶質メソ多孔質アルミナを含む担体、好ましくはそれによって構成される担体を含み、該アルミナは本発明に従って調製される。
【0065】
好ましくは、本発明において使用される触媒の担体は、連結度(Z)が2.7〜10、好ましくは2.8〜10、非常に好ましい態様では3〜9、より好ましくは3〜8、更により好ましい態様では3〜7である非晶質メソ多孔質アルミナを含み、好ましくはそれによって構成される。
【0066】
本発明に従って使用される触媒において担体として使用されるアルミナは、良好な熱的及び化学的安定性を有する制御されたメソ多孔性を有するメソ多孔性アルミナであって、集中し(centred)、均一であり、且つ制御されたメソ細孔のサイズ分布を有する。
【0067】
アルミナ及び該アルミナを含む担体は、検定されて(calibrated)少なくとも1種の軽油留分の水素化処理方法におけるそれらの使用に適合された、比表面積及び細孔分布を有する。
【0068】
本発明による方法に使用される触媒において担体として使用されるアルミナ及び該触媒の担体は有利には、特定の細孔分布を有する。
【0069】
好ましくは、メソ多孔性アルミナはミクロ細孔を有さない。
【0070】
好ましくは、アルミナを含むメソ多孔性担体はミクロ細孔を有さない。
【0071】
好ましくは、アルミナ及び該アルミナを含む担体は、水銀ポロシメトリによって測定された以下の細孔分布を有する:
− 2〜6nmのサイズを有する細孔における容積百分率が、全細孔容積に対して、1〜25%であり、
− 6nmより大きく15nm未満のサイズを有する細孔における容積百分率が全細孔容積の60〜95%を示し、
− 15〜50nmのサイズを有する細孔における容積百分率が全細孔容積の0〜8%を示し、且つ
− マクロ細孔容積に相当する50〜7000nmのサイズを有する細孔における容積百分率が全細孔容積の0〜5%、好ましくは0〜2%を示す。
【0072】
容積に関して決定される、アルミナ及び担体の水銀ポロシメトリによって測定されるメソ細孔の直径中央値(median diameter)(Dp、単位nm)は、有利には7〜12.5nmである。
【0073】
好ましくは、水銀ポロシメトリにより測定されるアルミナ及び担体の全細孔容積は0.5〜0.85mL/gである。
【0074】
好ましくは、水銀ポロシメトリにより測定されるアルミナ及び担体のメソ細孔の容積は、0.5〜0.8mL/g、好ましくは0.55〜0,75であり、非常に好ましい態様では0.60〜0.75mL/gである。
【0075】
好ましくは、水銀ポロシメトリにより測定されるアルミナ及び担体のマクロ細孔の容積は、0〜0.04mL/g、好ましくは0〜0.02mL/gである。
【0076】
好ましくは、アルミナ及び担体は有利には180m
2/gよりも大きな、好ましくは220m
2/gよりも大きな比表面積を有する。
【0077】
好ましくは、本発明において使用されるアルミナ及び該アルミナを含む担体は、メソ構造化されていない。
【0078】
本発明による方法において使用される触媒の担体として使用されるアルミナは有利には、少なくとも以下の工程を含む調製方法に従って調製される:
a)アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体並びに硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸、及び硝酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体からの、水性反応媒体中における、少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程であって、前記塩基性又は酸性前駆体の少なくとも1種はアルミニウムを含み、前記酸性及び塩基性前駆体の相対的流量は8.5〜10.5の反応媒体のpHが得られるように選択され、及びアルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体の流量は40〜100%の第1工程の進捗率が得られるように調節され、前記進捗率は第1沈殿工程中にAl
2O
3等価物として形成されるアルミナの、1工程以上の沈殿工程の最後に形成されるアルミナの全量に対する割合として定義され、前記第1沈殿工程は10〜50℃の温度で2分〜30分の時間実施される工程、
b)温度50〜200℃に30分〜5時間の時間加熱される懸濁液の熱処理工程であって、アルミナゲルを得ることを可能にする工程、
c)熱処理工程b)の最後に得られる懸濁液のろ過工程であって、得られるゲルの少なくとも1回の洗浄工程が後に続く工程、
d)工程c)の最後に得られるアルミナゲルの乾燥工程であって、粉末を得るための工程、
e)工程d)の最後に得られる粉末の成形工程であって、粗材料を得るための工程、
f)工程e)の最後に得られる粗材料の温度500〜1000℃での熱処理工程であって、60体積%までの水を含有する空気流を用いる又は用いない工程。
【0079】
一般に、用語第nの沈殿工程の「進捗率」とは、n回目の工程においてAl
2O
3等価物(equivalent)として形成されるアルミナの、全沈殿工程の最後に、及びより一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に形成されるアルミナの全量に対する百分率であると理解されることが意図されている。
【0080】
沈殿工程a)の進捗率が100%である場合、沈殿工程a)は一般に、20〜100g/L、好ましくは20〜80g/L、好ましくは20〜50g/LのAl
2O
3濃度を有するアルミナ懸濁液を得ることを可能にする。
沈殿工程a)
少なくとも1種の塩基性前駆体及び少なくとも1種の酸性前駆体の水性反応媒体中の混合物は、少なくとも塩基性前駆体又は酸性前駆体がアルミニウムを含むか、又は塩基性及び酸性前駆体の両方がアルミニウムを含むことを必要とする。
【0081】
アルミニウムを含む塩基性前駆体はアルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウムである。好ましい塩基性前駆体はアルミン酸ナトリウムである。
【0082】
アルミニウムを含む酸性前駆体は硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、及び硝酸アルミニウムである。好ましい酸性前駆体は硫酸アルミニウムである。
【0083】
好ましくは、塩基性及び酸性前駆体は第1沈殿工程a)において該前駆体を含有する水溶液の形で添加される。
【0084】
好ましくは、塩基性及び酸性前駆体は第1沈殿工程a)において水溶液の形で添加される。
【0085】
好ましくは、水性反応媒体は水である。
【0086】
好ましくは、工程a)は攪拌下で行われる。
【0087】
好ましくは、工程a)は有機添加剤を用いずに行われる。
【0088】
酸性及び塩基性前駆体は、それらがアルミニウムを含有していても含有していなくても、好ましくは溶液の形で、水性反応媒体中に、生ずる懸濁液のpHが8.5〜10.5となるような割合で、混合される。
【0089】
本発明によると、酸性および塩基性前駆体がアルミニウムを含有していてもいなくても、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択されるものは、当該酸性および塩基性前駆体の相対流速である。
【0090】
酸性及び塩基性前駆体がそれぞれアルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムである好ましいケースでは、塩基性前駆体の酸性前駆体に対する質量比は有利には1.6〜2.05である。
【0091】
他の酸性及び塩基性前駆体に対しては、それらがアルミニウムを含有していても含有していなくても、塩基性/酸質量比は酸による塩基の中和曲線によって規定される。このような曲線は当業者によって容易に得られる。
【0092】
好ましくは、沈殿工程a)は8.5〜10、非常に好ましい態様では8.7〜9.9のpHにて行われる。
【0093】
酸性及び塩基性前駆体はまた、達成すべきアルミナの最終濃度に応じた所望の量のアルミナを含有する懸濁液を得ることを可能にする量で混合される。特に、工程a)は、沈殿工程(単数又は複数)の最後に、より一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に形成されるアルミナの全量に対して、Al
2O
3等価物として40〜100重量%のアルミナを得ることを可能にする。
【0094】
本発明によると、40〜100%の第1工程の進捗率を得るように調節されるものは、アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体(単数又は複数)の流量である。
【0095】
好ましくは、沈殿工程a)の進捗率は40〜99%、好ましくは45〜90%、及び好ましくは50〜85%である。
【0096】
沈殿工程a)の最後に得られる進捗率が100%未満である場合、形成されるアルミナの量を増大するために第2沈殿工程が必要とされる。この場合は、進捗率は、沈殿工程a)中にAl
2O
3等価物として形成されるアルミナの、本発明による調製方法の2回の沈殿工程の最後に、より一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に形成されるアルミナの全量に対する割合として定義される。
【0097】
この様にして、沈殿工程の最後に企図されるアルミナの濃度、好ましくは20〜100g/Lに応じて、酸性及び/又は塩基性前駆体により添加する必要のあるアルミニウムの量が計算され、且つ添加されるアルミニウム前駆体の濃度、反応媒体に添加される水の量、及び沈殿工程に必要とされる進捗率に応じて前駆体の流量が調節される。
【0098】
アルミニウムを含有する酸性及び/又は塩基性前駆体の流量は、使用される反応器の大きさ、及び従って反応媒体に添加される水の量に依存する。
【0099】
好ましくは、沈殿工程a)は10〜45℃、好ましくは15〜45℃、より好ましくは20〜45℃、及び非常に好ましい態様では20〜40℃の温度にて行われる。
【0100】
沈殿工程a)が低温にて行われることが重要である。本発明による調製方法が2回の沈殿工程を含む場合、沈殿工程a)は有利には第2沈殿工程の温度よりも低い温度で行われる。
【0101】
好ましくは、沈殿工程a)は5〜20分、好ましくは5〜15分の時間行われる。
熱処理工程b)
本発明によると、前記調製方法は、沈殿工程a)の最後に得られる懸濁液の熱処理工程b)を含み、この熱処理工程は、温度60〜200℃で30分〜5時間の時間、アルミナゲルを得るために実施される。
【0102】
好ましくは、熱処理工程b)は熟成工程である。
【0103】
好ましくは、熱処理工程b)は65〜150℃、好ましくは65〜130℃、好ましくは70〜110℃、非常に好ましい態様では70〜95℃の温度にて実施される。
【0104】
好ましくは、熱処理工程b)は40分〜5時間、好ましくは40分〜3時間、及び好ましくは45分〜2時間の時間行われる。
任意の第2沈殿工程
好ましい実施形態によれば、沈殿工程a)の最後に得られる進捗率が100%未満である場合、調製方法は好ましくは、第1沈殿工程の後に第2沈殿工程a’)を含む。
【0105】
第2沈殿工程は生成されるアルミナの割合を増大させる。
【0106】
第2沈殿工程a’)は有利には第1沈殿工程a)と熱処理工程b)との間に行われる。
【0107】
第2沈殿工程が行われる場合、2回の沈殿工程a)及びa’)の間に、沈殿工程a)の最後に得られる懸濁液の加熱工程を行うことが有利である。
【0108】
好ましくは、工程a)と第2沈殿工程a’)の間に行われる、工程a)の最後に得られる懸濁液の加熱工程は、20〜90℃、好ましくは30〜80℃、好ましくは30〜70℃、及び非常に好ましい態様では40〜65℃の温度で実施される。
【0109】
好ましくは、加熱工程は7〜45分、好ましくは7〜35分の時間行われる。
【0110】
加熱工程は有利には、当業者には公知の全ての加熱法に従い行われる。
【0111】
好ましい実施形態によれば、前記調製方法は、加熱工程の最後に得られる懸濁液の第2沈殿工程を含み、前記第2工程は、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の塩基性前駆体並びに硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸、及び硝酸から選択される少なくとも1種の酸性前駆体の懸濁液への添加によって行われ、前記塩基性又は酸性前駆体の少なくとも1種はアルミニウムを含み、前記酸性及び塩基性前駆体の相対的流量は8.5〜10.5の反応媒体のpHが得られるように選択され、及びアルミニウムを含有する前記酸性及び塩基性前駆体の流量は、0〜60%の第2工程の進捗率を得るように調節され、前記進捗率は、第2沈殿工程中にAl
2O
3等価物として形成されるアルミナの、2回の沈殿工程の最後に、より一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に、及び好ましくは本発明による調製方法の工程a’)の最後に、形成されるアルミナの全量に対する割合として定義され、この工程は温度40〜90℃で2分〜50分の時間実施される。
【0112】
第1沈殿工程a)の場合と同様に、少なくとも1種の塩基性前駆体及び少なくとも1種の酸性前駆体の加熱懸濁液の添加は、少なくとも塩基性前駆体又は酸性前駆体がアルミニウムを含むか、又塩基性及び酸性前駆体の両方がアルミニウムを含むかのいずれかを必要とする。
【0113】
アルミニウムを含む塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウムである。好ましい塩基性前駆体はアルミン酸ナトリウムである。
【0114】
アルミニウムを含む酸性前駆体は硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、及び硝酸アルミニウムである。好ましい酸性前駆体は硫酸アルミニウムである。
【0115】
好ましくは、塩基性及び酸性前駆体は第2沈殿工程a’)において水溶液の形で添加される。
【0116】
好ましくは、第2沈殿工程は攪拌下で行われる。
【0117】
好ましくは、第2工程は有機添加物を用いずに行われる。
【0118】
酸性及び塩基性前駆体は、それらがアルミニウムを含有していても含有していなくても、好ましくは溶液の形で、水性反応媒体中に、生ずる懸濁液のpHが8.5〜10.5となるような割合で、混合される。
【0119】
沈殿工程a)の場合と同様に、当該酸性及び塩基性前駆体がアルミニウムを含有していてもいなくても、8.5〜10.5の反応媒体のpHを得るように選択されるものは、酸性及び塩基性前駆体の相対的流量である。
【0120】
酸性及び塩基性前駆体がそれぞれアルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムである好ましいケースでは、塩基性前駆体の酸性前駆体に対する質量比は有利には1.6〜2.05である。
【0121】
他の酸性及び塩基性前駆体については、それらがアルミニウムを含有していても含有していなくても、塩基/酸の質量比は、酸による塩基の中和曲線によって規定される。このような曲線は当業者により容易に得られる。
【0122】
好ましくは、第2沈殿工程は8.5〜10、好ましい態様では8.7〜9.9のpHにて行われる。
【0123】
酸性及び塩基性前駆体はまた、到達すべきアルミナの最終濃度に応じた所望の量のアルミナを含有する懸濁液を得ることを可能にする量で混合される。特に、第2沈殿工程は、2回の沈殿工程の最後に形成されるアルミナの全量に対して、Al
2O
3等価物として0〜60重量%のアルミナを得ることを可能にする。
【0124】
沈殿工程a)の場合と同様に、0〜60%の第2工程の進捗率を得るように調節されるものは、アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体の流量である。
【0125】
好ましくは、沈殿工程a)の進捗率は10〜55%、好ましくは15〜55%である。
【0126】
この様にして、沈殿工程の最後に予想されるアルミナの濃度、好ましくは20〜100g/Lに応じて、酸性及び/又は塩基性前駆体により供給すべきアルミニウムの量が計算され、及び添加される前駆体のアルミニウム濃度に、反応媒体に添加される水の量に、及び各沈殿工程に必要とされる進捗率に応じて、前駆体の流量が調節される。
【0127】
沈殿工程a)の場合と同様に、アルミニウムを含有する酸性及び/又は塩基性前駆体の流量は、使用される反応器の大きさ、及び従って反応媒体に添加される水の量に依存する。
【0128】
例として、3Lの反応器で実施され、且つ50g/LのAl
2O
3最終濃度を有する1Lのアルミナ懸濁液が企図される場合には、目標の進捗率を第1沈殿工程についてAl
2O
3等価物として50%とする。この様に、全アルミナの50%を前記沈殿工程a)中に添加する必要がある。アルミナの前駆体は155g/LのAl
2O
3の濃度のアルミン酸ナトリウム及び102g/LのAl
2O
3の濃度の硫酸アルミニウムとする。第1工程の沈殿のpHは9.5に設定され、第2工程では9に設定される。反応器に添加される水の量は622mLである。
【0129】
30℃にて8分間実施される第1沈殿工程a)については、硫酸アルミニウムの流量は10.5mL/分としなければならず、アルミン酸ナトリウムの流量は13.2mL/分とする。アルミン酸ナトリウムの硫酸アルミニウムに対する質量比は、したがって1.91である。
【0130】
70℃で30分間実施される第2沈殿工程については、硫酸アルミニウムの流量は2.9mL/分としなければならず、アルミン酸ナトリウムの流量は3.5mL/分とする。アルミン酸ナトリウムの硫酸アルミニウムに対する質量比はしたがって1.84である。
【0131】
好ましくは、第2沈殿工程は40〜80℃、好ましくは45及び70℃、非常に好ましい態様では50〜70℃の温度で行われる。
【0132】
好ましくは、第2沈殿工程は5〜45分間、好ましくは7〜40分間の時間行われる。
【0133】
第2沈殿工程は一般に、20〜100g/L、好ましくは20〜80g/L、好ましくは20〜50g/LのAl
2O
3濃度のアルミナ懸濁液を得ることを可能にする。
【0134】
第2沈殿工程が実施される場合、調製方法はまた有利には、第2沈殿工程に続いて得られる懸濁液の、50〜95℃、好ましくは60〜90℃の温度での第2加熱工程を含む。
【0135】
好ましくは、第2加熱工程は7〜45分間の時間実施される。
【0136】
第2加熱工程は有利には当業者には公知の全ての加熱法に従い実施される。
【0137】
第2加熱工程は、得られる懸濁液を熱処理工程b)に供する前に反応媒体の温度を上げることを可能にする。
ろ過工程c)
本発明によると、本発明によるアルミナの調製方法はまた、熱処理工程b)の最後に得られる懸濁液のろ過工程c)であって、得られるゲルの少なくとも1回の洗浄工程が後に続く、ろ過工程を含む。このろ過工程は当業者には公知の方法に従って行われる。
【0138】
沈殿工程a)又は2回の沈殿工程の最後に得られる懸濁液のろ過性は、得られる懸濁液の最終熱処理工程b)の存在によって改善され、この熱処理工程は、調製方法の生産性及び本方法の工業レベルへのスケールアップにとって有益である。
【0139】
ろ過工程は有利には、少なくとも1回の水中での洗浄工程、好ましくはろ過される沈殿物の量と等しい水量を用いた1〜3回の洗浄工程が後に続く。
【0140】
一連の工程a)、b)及びc)、並びに場合によっては第2沈殿工程、第2加熱工程及び場合によってはろ過工程は、70%よりも大きな分散度指数、1〜35nmの結晶子径、並びに0.001%〜2重量%の硫黄含有量及び0.001%〜2重量%のナトリウム含有量を有する特定のアルミナゲルを得ることを可能にし、重量百分率はアルミナゲルの全質量に対して表される。
【0141】
この様にして得られるアルミナゲルは、ベーマイトとしても知られ、70〜100%、好ましくは80〜100%、非常に好ましい態様では85〜100%、更により好ましくは90〜100%の分散度指数を有する。
【0142】
好ましくは、この様にして得られるアルミナゲルは2〜35nmの結晶子径を有する。
【0143】
好ましくは、この様にして得られるアルミナゲルは、0.001%〜1重量%、好ましくは0.001〜0.40重量%、非常に好ましい態様では0.003〜0.33重量%、及びより好ましくはなお0.005〜0.25重量%の硫黄含有量を含む。
【0144】
好ましくは、この様にして得られるアルミナゲルは、0.001%〜1重量%、好ましくは0.001〜0.15重量%、非常に好ましい態様では0.0015〜0.10重量%、及び0.002〜0.040重量%のナトリウム含有量を含む。
【0145】
特に、本発明による粉末の形態のアルミナゲル又はベーマイトは、結晶方位(020)及び(120)におけるX線回折によりシェラーの式(Scherrer formula)を用いて得られるそのサイズがそれぞれ2〜20nm及び2〜35nmである、結晶子で構成される。
【0146】
好ましくは、本発明によるアルミナゲル、結晶方位(020)における結晶子径が2〜15nmであり、結晶方位(120)における結晶子径が2〜35nmである。
【0147】
アルミナゲル又はベーマイト上でのX線回折は、回折計を用いる従来の粉末法を用いて行った。
【0148】
シェラーの式は、多結晶粉末又は試料上でのX線回折において使用され、回折ピークの高さ中央における幅を結晶子のサイズに関連付ける式である。それは、参考出版物:Appl.Cryst.(1978年)、第11巻、102−113頁、Scherrer after sixty years(60年後のシェラー): A survey and some new results in the determination of crystallite size(結晶子径の決定における調査及び幾つかの新たな結果)、J.I.Langford及びA.J.C.Wilsonに詳細に記載されている。
【0149】
この様にして調製された高い分散度を有するアルミナゲルにより、当業者に公知の全ての方法による、特に混錬押出による、造粒による、及び油滴として知られる技術による、ゲルの成形工程が容易となる。
乾燥工程d)
本発明によると、ろ過工程c)の最後に得られるアルミナゲルは、乾燥工程d)において粉末を得るために乾燥される。
【0150】
乾燥工程は有利には、噴霧法(atomisation)によって温度20〜50℃にて1日〜3週間の時間行われる。
【0151】
乾燥工程d)を温度20〜50℃にて1日〜3週間の時間行う場合、該乾燥工程d)は有利には閉鎖した及び通気したオーブン中で行われ、好ましくは該乾燥工程は25〜40℃の温度で3日〜2週間の時間行われる。
【0152】
乾燥工程d)を噴霧法によって行う場合、熱処理工程と、場合によってはそれに続くろ過工程の最後に得られるケーキを再懸濁する。次いで、前記懸濁液は、垂直円柱状容器内において微細な液滴に微粒化され、熱空気の流れと接触させられ、当業者に周知の原理に従って水を蒸発させるようにする。得られた粉末は、粉末から空気を分離するためのサイクロン又はバグフィルターに関しては、熱空気によって運ばれる。好ましくは、乾燥工程d)を噴霧法により行う場合、該噴霧法は出版物Asep Bayu Dani Nandiyanto、Kikuo Okuyama、アドバンスト パウダー テクノロジー(Advanced Powder Technology)、第22号、1−19頁、2011年に記載の作業プロトコルに従って行われる。
成形工程e)
本発明によると、乾燥工程d)の最後に得られる粉末は、工程e)において粗材料を得るために成形される。
【0153】
用語「粗材料」とは、熱処理工程に供されていない成形された材料であると理解されることが意図されている。
【0154】
好ましくは、成形工程e)は、混錬押出によって、ペレット化によって、油滴法によって、回転板を用いた造粒によって、又は当業者に周知のいずれかの他の方法によって行われる。
【0155】
非常に好ましい態様では、成形工程e)は混錬押出によって行われる。
熱処理工程f)
本発明によると、成形工程e)の最後に得られる粗材料は続いて、500〜1000℃の温度にて2〜10時間の時間の、60体積%までの水を含有する空気流を用いた又は用いない、熱処理工程f)に供される。
【0156】
好ましくは、熱処理工程f)は540℃〜850℃の温度で実施される。
【0157】
好ましくは、熱処理工程f)は2時間〜10時間の時間実施される。
【0158】
熱処理工程f)はベーマイトから最終のアルミナへの転換を可能にする。
【0159】
本発明による方法において使用される触媒のための担体として使用されるアルミナのための調製方法は、2.7よりも大きな連結度及び制御されたメソ多孔性を有する非晶質メソ多孔質アルミナが得られることを可能にし、該アルミナは、良好な熱的及び化学的安定性を有し、集中し均一で且つ制御されたメソ細孔のサイズ分布と、検定された(calibrated)比表面積及び多孔性、特にメソ多孔性容積とを有し、並びに下記に記載するような特定の細孔分布を有する。
【0160】
本発明による水素化処理方法において使用される触媒はその後、有利には、活性相を構成する元素の添加によって得られる。
【0161】
本発明による触媒は、当業者には公知のいずれかの手法によって、特に第VIII族及び/又はVIB族の元素の、選択された担体上への含浸によって、調製することができる。金属塩の添加と同時にリン等のドーピング剤の添加を行うことができる。この含浸は、例えば当業者には乾式含浸との用語で知られる方法によって行われ、この方法では、担体の多孔をできるだけ精密に充填するように、所望される元素量のみが、選択された溶媒、例えば脱ミネラル水中に可溶性塩の形で導入される。含浸はまた、当業者が必要と考える場合には過剰に行うことができる。この様に溶液によって上述した1つ又は他の方法に従い充填された担体は好ましくは乾燥される。この工程の前に好ましくは熟成工程が行われ、この持続時間は72時間未満、好ましくは0〜24時間、非常に好ましい態様では1〜12時間である。これに続く乾燥工程は好ましくは空気又は不活性ガス下で50〜200℃、非常の好ましくは65〜180℃、及び更により好ましい態様では75〜160℃の温度で行われる。乾燥工程の後には場合によっては、一般には200℃〜550℃、好ましくは300℃〜500℃で焼成工程が行われる。その場合焼成は空気又は不活性ガスの存在下で行われる。
【0162】
幾つかの場合では、含浸を少なくとも2つの工程で行うことが有利であり得る。この解決策が好ましい場合も、中間の熟成及び乾燥、又は焼成の工程を行うことができる。
【0163】
第VIII族の金属の前駆体は有利には、酸化物、クエン酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカーボネート、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、酢酸塩、又は上述した化合物のいずれかの混合物から選択される。ニッケルヒドロキシカーボネート、硝酸コバルト又は硝酸ニッケル、炭酸コバルト、又は水酸化コバルト又は水酸化ニッケルが好ましい態様において使用される。
【0164】
使用されるモリブデン前駆体は当業者には周知である。例えば、モリブデンの供給源のうち、酸化物及び水酸化物、モリブデン酸及びそれらの塩、特にモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ホスホモリブデン酸(H
3PMo
12O
40)及びそれらの塩、及び場合によってはシリコモリブデン酸(H
4SiMo
12O
40)及び対応する塩を使用することが可能である。モリブデンの供給源はまた、例えばケギン(Keggin)、ラキュナリー(lacunary)ケギン、置換ケギン、ドーソン(Dawson)、アンダーソン(Anderson)、ストランドバーグ(Strandberg)型のいずれかのヘテロポリ化合物であり得る。好ましくは三酸価モリブデン、及び当業者に公知のストランドバーグ、ケギン、ラキュナリーケギン、又は置換ケギン型のヘテロポリアニオンが使用される。使用されるタングステンの前駆体は当業者には周知である。例えば、タングステンの供給源のうち、酸化物及び水酸化物、タングステン酸及びそれらの塩、特にタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ホスホタングステン酸(H
3PWo
12O
40)及びそれらの塩、及び場合によってはシリコタングステン酸(H
4SiW
12O
40)及びそれらの塩を使用することが可能である。タングステンの供給源はまた、例えばケギン、ラキュナリーケギン、置換ケギン、ドーソン型のいずれかのヘテロポリ化合物であってもよい。好ましくは酸化物、及びメタタングステン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、又は当業者には公知のケギン、ラキュナリーケギン、又は置換ケギン型のヘテロポリアニオンが使用される。
【0165】
当業者が必要と考える場合には、有機タイプのキレート剤を、使用される金属溶液中に導入することが有利であり得る。
【0166】
触媒が焼成工程に供されてもされていなくても、触媒は続いて有機タイプ又は水性タイプの溶媒中において単独で又は混合物として採用される1種以上の有機剤によって含浸されてもよい。その場合には、当業者は存在する豊富な文献を参照し得る。
【0167】
本発明による方法においてこの様にして得られ使用される触媒は有利には水銀ポロシメトリよって決定される以下の細孔分布を有する:
− 2〜6nmのサイズを有する細孔中に含有される容積百分率が、全細孔容積に対して1〜25%であり、
− 6nmより大きく15nm未満のサイズを有する細孔中に含有される容積百分率が、全細孔容積の60〜95%を構成し、
− 15〜50nmのサイズを有する細孔中に含有される容積百分率が全細孔容積の0〜15%を構成し、且つ
− マクロ細孔容積に相当する50〜7000nmのサイズを有する細孔中に含有される容積百分率が、全細孔容積の0〜5%、好ましくは0〜3%を構成する。
【0168】
最終的には、水銀ポロシメトリによって測定される容積によって規定される触媒のメソ細孔の直径中央値(median diameter)(Dp、単位nm)は有利には8〜14nmである。
【0169】
触媒はまた有利には、130m
2/gよりも大きい、好ましくは150m
2/gよりも大きい比表面積を有する。
【0170】
好ましくは、触媒はまた、0.35mL/g以上、好ましくは0.40mL/g以上の、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積を有する。
【0171】
好ましくは、本発明において使用される触媒は、2.7〜10、好ましい態様では2.8〜10、非常に好ましい態様では3〜9、より好ましい態様では3〜8、及びなおより好ましい態様では3〜7の連結度(Z)を有する。
【0172】
本発明による触媒の調製方法は有利には、本明細書において記載されたような水素化処理方法において触媒を使用するために、触媒の活性相をスルフィドの形態とするような少なくとも1種の硫化工程を含む。このような硫化による活性化の処理は当業者には周知であり及び当業者には公知のいずれかの方法によって行われ得る。硫化工程は、本発明による方法において使用される触媒を、H
2Sを生成する少なくとも1種の分解性硫黄含有有機化合物と接触するように配置することによって、又は触媒を、例えば水素中に希釈される、H
2Sのガス流と直接接触するように配置することによって行われる。前記硫黄含有有機化合物は有利には、ジメチルジスルフィド(DMDS)等のアルキルジスルフィド、ジメチルスルフィド等のアルキルスルフィド、n−ブチルメルカプタン等のメルカプタン、ARKEMA社により販売されているTPS−37又はTPS−54等のテルシオノニル(tertiononyl)ポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物、又は当業者には公知であり触媒の良好な硫化が得られることを可能にするいずれかの他の化合物から選択される。硫化工程は、200〜600℃、より好ましくは300〜500℃の温度で、インサイチュで(即ち、本発明による水素化処理方法の反応装置中に触媒を仕込んだ後)行っても、又はエクスサイチュで(即ち、本発明による水素化処理方法の反応装置中に触媒を仕込む前に)行ってもよい。硫化をエクスサイチュの様式で行う場合には、有機添加剤又は溶媒又はそれらの何れかの混合物を導入することも可能である。この代替法によってより高い活性がもたらされるか、又は触媒の仕込み及び使用が容易になる場合がある。
【0173】
本発明は以下の実施例のよって例示されるが、それらはいずれの場合にも限定的な性質を有するものではない。
【実施例1】
【0175】
米国特許第7790562(特許文献1)による担体AL−1(非適合)の調製
最初に、実施例1は米国特許第7790562に記載された調製方法に従って行われるという点において非適合のアルミナゲルの合成を行う。特に、実施例1によるアルミナゲルの調製方法は、沈殿工程の最後に得られる懸濁液のいかなる熱処理工程をも含まず、且つ該方法中、第1沈殿工程a)は、第2沈殿工程の最後に形成されるアルミナの全量に対して、Al
2O
3等価物として40%よりも多い量のアルミナを生成しない。
【0176】
7Lの反応器中で及び2回の沈殿工程において5Lの最終懸濁液にて合成を行う。反応器に添加される水の量は3868mLである。
【0177】
企図されるアルミナの最終濃度は30g/Lである。
【0178】
硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOの第1共沈殿工程は30℃及びpH=9.3にて8分の時間行う。以下のアルミニウム前駆体濃度を使用する:Al
2(SO
4)=102g/LのAl
2O
3、及びNaAlOO=155g/LのAl
2O
3。攪拌は合成全体を通して350rpmで行う。
【0179】
pHを9.3の値に調節するように塩基/酸質量比=1.80に従って、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)の溶液を、19.6mL/分の流速で8分間アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に連続添加する。反応媒体の温度は30℃に維持する。
【0180】
アルミナの沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0181】
企図されるアルミナの最終濃度は30g/Lなので、第1沈殿工程中に導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速はそれぞれ19.6mL/分及び23.3mL/分とする。
【0182】
アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体のこれらの流速は、第1沈殿工程の最後に30%の進捗率が得られることを可能にする。
【0183】
得られた懸濁液を続いて30から57℃へ昇温する。
【0184】
次いで、得られた懸濁液の第2共沈工程を、102g/LのAl
2O
3の濃度の硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)および155g/LのAl
2O
3の濃度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOを添加することによって実施する。したがって、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)の溶液を、第1沈殿工程の最後に得られた加熱された懸濁液に、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に対して塩基/酸質量比=1.68に従って、12.8mL/分の流速で30分間連続添加し、pHを8.7の値に調整するようにする。第2工程では、反応媒体の温度は、57℃で維持する。
【0185】
アルミナの沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
企図されるアルミナの最終濃度は30g/Lなので、第2沈殿工程中に導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速はそれぞれ12.8mL/分及び14.1mL/分とする。
【0186】
アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体のこれらの流速は、第2沈殿工程の最後の70%の進捗率が得られることを可能にする。
【0187】
この様にして得られる懸濁液はいずれの熱処理工程にも供さない。
【0188】
得られた懸濁液を続いて焼結ブフナー(Buchner)型の器具上で水の排出(displacement)によってろ過し、得られたアルミナゲルを70℃の蒸留水5Lで3回洗浄する。ろ過時間及び洗浄操作は4時間である。
【0189】
この様にして得られるアルミナゲルの特性を表1に記載する。
【0190】
【表1】
続いてこのアルミナゲルを250℃の入口温度及び130℃の出口温度の噴霧法により乾燥する。
【0191】
乾燥されたアルミナゲルをブフナー型のミキサーに導入する。ミキサー中に導入される乾燥ゲルの質量に対する重量により表される全酸比3%で硝酸により酸性化された水を20rpmで混合しながら5分で添加する。この酸性混合を15分間続ける。続いてミキサー中へのアンモニア性溶液の添加により、中和率50%で中和工程を行う。中和率は酸性化工程のためにミキサー中に導入された硝酸の量に対するアンモニアの重量で表される。混合を3分間続ける。
【0192】
得られるペーストを続いて2mmの3葉(three-lobed)金型を通して押し出す。得られる押出品を100℃にて一晩乾燥した後、600℃で2時間焼成する。
【0193】
形成されるアルミナの特性を表2に記載する。
【0194】
【表2】
【実施例2】
【0195】
(本発明による)担体AL−2及びAL−3(適合)の調製
本発明による調製方法に従って、2つのアルミナ担体AL−2及びAL−3を、7Lの反応器中で、2回の沈殿工程とそれに続く熟成工程との3工程において最終懸濁液5L中で合成する。
【0196】
企図されるアルミナの最終濃度は45g/Lである。反応器に添加される水の量は3267mLである。攪拌は合成の全体を通して350rpmとする。
【0197】
水、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)、及びアルミン酸ナトリウムNaAlOO中での第1共沈殿工程を30℃及びpH=9.5で8分間行う。以下のアルミニウム前駆体濃度を使用する:Al
2(SO
4)=102g/LのAl
2O
3、及びNaAlOO=155g/LのAl
2O
3。
【0198】
pHを9.5の値に調節するように塩基/酸質量比=1.84に従い、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)の溶液を69.6mL/分の流速で8分間、84.5mL/分の流速のアルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に連続添加する。反応媒体の温度は30℃に維持する。
【0199】
アルミナの沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0200】
企図されるアルミナの最終濃度は45g/Lなので、第1沈殿工程中に導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速はそれぞれ69.6mL/分及び84.5mL/分とする。
【0201】
アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体のこれらの流速は、第1沈殿工程の最後の72%の進捗率が得られることを可能にする。
【0202】
得られる懸濁液を続いて30から68℃へと昇温する。
【0203】
続いて、得られる懸濁液の第2共沈殿工程を、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)を102g/LのAl
2O
3の濃度で及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOを155g/LのAl
2O
3の濃度で添加することによって行う。したがって硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)の溶液を、第1沈殿工程の最後に得られた加熱懸濁液に、pHを9の値に調節するように塩基/酸質量比=1.86に従ってアルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に対して7.2mL/分の流速で、30分間、連続添加する。第2工程の反応媒体の温度は68℃に維持される。
【0204】
アルミナの沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0205】
企図されるアルミナの最終濃度は45g/Lなので、第2沈殿工程中に導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl
2(SO
4)及びアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速はそれぞれ、7.2mL/分及び8.8mL/分とする。
【0206】
アルミニウムを含有する酸性及び塩基性前駆体のこれらの流速は、第2沈殿工程の最後の28%の進捗率が得られることを可能にする。
【0207】
得られる懸濁液を続いて68から90℃に昇温する。
【0208】
懸濁液を続いて90℃で60分間維持される熱処理工程に供する。
【0209】
続いて、得られる懸濁液を焼結ブフナー型の器具上で水の排出によってろ過し、得られるアルミナゲルを5Lの蒸留水で3回洗浄する。ろ過時間及び洗浄操作は3時間の長さである。
【0210】
この様にして得られるアルミナゲルの特性を表3に記載する。
【0211】
【表3】
この様にして100%の分散度指数を有するゲルが得られる。
【0212】
得られるアルミナゲルを続いて250℃の入口温度及び130℃の出口温度で噴霧法により乾燥する。噴霧法により乾燥されたゲルをゲルNo.1と称する。
【0213】
実施例2により得られるアルミナゲルもまた、通気オーブン中35℃で4日間乾燥した。オーブン中で乾燥されたゲルをゲルNo.2と称する。
【0214】
続いて乾燥アルミナゲルNo.1及びNo.2をそれぞれ、ブラベンダー(Brabender)型のミキサーに導入する。ミキサー中に導入される乾燥ゲルの質量に対する重量により表される全酸含量3%で硝酸により酸性化された水を、20rpmで混合しながら5分以内に添加する。この酸性混合を15分間続ける。続いてミキサー中へのアンモニア性溶液の添加により、中和率50%で中和工程を行う。中和率は酸性化工程のためにミキサー中に導入された硝酸の量に対するアンモニアの重量で表される。混合を3分間続ける。
【0215】
得られるペーストを続いて2mmの3葉金型を通して押し出す。得られる押出品を100℃にて一晩乾燥した後、600℃で2時間焼成する。
【0216】
形成されるアルミナAL−2及びAL−3の特性を表4に記載する。
【0217】
【表4】
【実施例3】
【0218】
アルミナAL−1からの触媒C1及びC2(非適合)の調製、及びそれぞれアルミナ担体AL−2及びAL−3からの触媒C3及びC4(適合)の調製
触媒C1及びC2は、実施例1に従って調製される押出品の形態のアルミナ担体AL−1の乾式含浸によって得られ、含浸溶液は、酸化モリブデン及びコバルトヒドロキシカーボネートの、水溶液中の形でのリン酸溶液への温溶解によって調製される。含浸溶液の体積はそのアルミナ担体塊の細孔容積と厳密に等しい。含浸溶液中の前駆体の濃度は、所望の重量含量のMo、Co及びPがアルミナ担体上に担持(deposit)するように調節される。乾式含浸工程後に、押出品を水で飽和された雰囲気下で12時間、熟成状態に置き、次いでそれらを90℃で一晩乾燥した後、450℃で2時間焼成する。
【0219】
そして酸化物の形態で表され蛍光X線によって規定される触媒C1の最終組成は以下の通りであり:MoO
3=20.4±0.2(重量%)、CoO=3.6±0.1(重量%)、及びP
2O
5=5.9±0.1(重量%)、この組成はCo/Mo=0.34mol/mol及びP/Mo=0.59mol/molに相当する。
【0220】
そして酸化物の形態で表され蛍光X線によって規定される触媒C2の最終組成は以下の通りであり:MoO
3=25.6±0.2(重量%)、CoO=3.9±0.1(重量%)、及びP
2O
5=2.8±0.1(重量%)、この組成はCo/Mo=0.29mol/mol及びP/Mo=0.22mol/molに相当する。
【0221】
触媒C1及びC2については、パラメータZは依然としてそれぞれ2.4及び2.3を有するアルミナAL−1のものと同様である。
【0222】
触媒C3は、担体AL−2から調製されること以外は、触媒C1と同様にして調製される。それは6.4という触媒C1の値よりも大きなZの値を保持する。
【0223】
そして酸化物の形態で表され蛍光X線によって規定される触媒C3の最終組成は以下の通りであり:MoO
3=20.1±0.2(重量%)、CoO=3.4±0.1(重量%)、及びP
2O
5=6.0±0.1(重量%)、この組成はCo/Mo=0.33mol/mol及びP/Mo=0.60mol/molに相当する。
【0224】
触媒C4は、担体AL−3から調製されること以外は触媒C1と同様にして調製される。それはまた、6.1という、触媒C2の値よりも大きな値Zを保持する。
【0225】
そして酸化物の形態で表される触媒C4の最終組成は以下の通りであり:MoO
3=25.1±0.2(重量%)、CoO=3.6±0.1(重量%)、及びP
2O
5=2.9±0.1(重量%)、この組成はCo/Mo=0.28mol/mol及びP/Mo=0.23mol/molに相当する。
【実施例4】
【0226】
加圧下及びH
2S存在下でのシクロヘキサン中トルエンの水素化モデル分子試験における、触媒C1及びC2(非適合)及びC3及びC4(適合)の触媒性能レベルの評価
施行中の硫黄の目標値を達成するためには、4.6DMDBT等の難燃性(refractory)化合物の大部分を脱硫する必要がある水素化処理等の用途において、水素化脱水素化機能は重要である。トルエンの水素化試験はしたがって、こうした原料油の水素化処理用に企図された触媒の有利性を立証するために利用されてきた。
【0227】
上述した触媒C1〜C4は、Microcat型(製造業者:Vinci社)のパイロット装置が貫通している固定床管型反応器において動的態様でインサイチュで硫化され、流体は頂部から底部へと流れる。水素化活性の測定は硫化の直後に、加圧下で且つ空気中に置かれることなく、触媒を硫化するために使用された炭化水素の原料油を用いて、行われる。
【0228】
硫化及び試験の原料油は、5.88%のジメチルジスルフィド(DMDS)、20%のトルエン、及び74.12%のシクロヘキサン(重量基準)で構成される。DMDSは、メタン及びH
2Sへ分解される結果として、触媒を硫化形態に維持することを可能にする。
【0229】
硫化は、温度勾配2℃/分で周囲温度から350℃まで、HVR=4h
−1及びH
2/HC=450標準L/Lにて行う。350℃、HVR=2h
−1及び硫化の値と等価のH
2/HCで触媒試験を行い、少なくとも4試料/流出物についてのオンライン分析を用いてそれらの組成を立証する。
【0230】
こうして、トルエンの水素化反応における触媒と等しい体積の安定化した触媒活性を測定する。
【0231】
活性を測定するための詳細な条件は以下の通りである:
− 全圧:6.0MPa
− トルエン圧:0.37MPa
− シクロヘキサン圧:1.42MPa
− メタン圧:0.22MPa
− 水素圧:3.68MPa
− H
2S圧:0.22MPa
触媒床の密度を介した秤量により4cm
3に等しい触媒(2〜4mmの長さを有する押出品)の体積が供給される。
【0232】
非転換トルエンについてのモル濃度(T)及び水素化生成物(メチルシクロヘキサン(MCC6)、エチルシクロペンタン(EtCC5)、及びジメチルシクロペンタン類(DMCC5))についての濃度を立証することにより、下記によって定義されるトルエンの水素化率X
HYDの算出が可能となる:
【数1】
【0233】
トルエンの水素化反応は使用される試験条件下で1次反応であり、反応器は仮想ピストン反応器として挙動するとして、以下の式を用いて触媒の水素化活性A
HYDを計算する:
【数2】
【0234】
以下の表5は、含浸活性相及び連結度パラメータZによる、触媒C1〜C4の相対的な水素化活性の比較を可能にする。
【0235】
【表5】
表5に見られる結果は、本発明によって担体AL−2から調製され、従ってそのパラメータZが6.4である触媒C3の水素化活性に関する触媒性能レベルは、担体AL−1から得られ、従って2.4のパラメータZを有する非適合の触媒C1の触媒性能レベルよりも著しく大きいということを実証している。
【0236】
水素化活性におけるこの増大は、特に非適合触媒C2と同様の活性レベルを達成することを可能にするが、それが触媒C2での25%のMoO
3に対し、たった20%のMoO
3によって達成されるため、特に有利である。更に、モリブデンのこの含有量で、担体AL−3から本発明に従い調製された触媒C4はさらに高い水素化活性を有する。
【0237】
反応原料油の拡散限界がないため、この試験は気相において行われ、この結果は高い連結度を有する担体上での金属相の含浸の有利性を実証している。担持された活性相の量が改善されているものと思われる。
【実施例5】
【0238】
直接蒸留軽油の水素化処理に関する、触媒C1及びC2(非適合)並びに触媒C3及びC4(適合)の触媒性能レベルの評価
軽油の水素化脱硫(HDS)に関して評価するために、触媒C1〜C4を流通動床(flowthrough bed)型反応器(押出品の形態の触媒30cm
3を粒度0.8mmのSiC10cm
3と混合したもの)においてインサイチュの硫化工程に供する。30バール(3MPa)、HVR=2h
−1にて、入口H
2/HC比(体積流量)=250標準L/Lで硫化を行った。150℃に達したら硫化原料油(Arkema社製の2%のDMDS Evolution(登録商標)を添加された軽油)をH
2流下で反応器に導入する。150℃にて1時間後、勾配25℃/時で220℃まで昇温した後、勾配12℃/時で350℃程度に達するまで昇温し12時間維持する。
【0239】
硫化後、温度を330℃まで下げ、試験原料油を注入する(DMDS無し)。3MPaの全圧で、水素を排出しながら(with lost hydrogen)(循環せず)、HVR=2h
−1にて、入口におけるH
2/HC体積比、250標準L/L(流通H
2=24標準L.h
−1、原料油流=60cm
3.h
−1)、及び3つの異なる温度、330℃、次いで340℃及び350℃にて触媒試験を行うが、各点間で硫黄含有量が安定化するのに十分な時間をとる。
【0240】
HDSに関する触媒の性能レベルの評価を可能にするために、及び流出物中のH
2Sの存在を回避することを可能にするために、窒素を10L.h
−1の流速で用いて流出物を含有するポットのストリッピングを行う。
【0241】
ここで使用される軽油はraw Arab heavyからのものであり、0.89重量%の硫黄、150重量ppmの窒素を含有し、密度は0.848g/cm
3であり、原料油の体積の5%、50%及び70%が蒸発される温度に基づいて以下の式に従って定義される加重平均温度(TMP):TMP=(T
5+2T
50+4T
95)/7、は324℃である。
【0242】
触媒の触媒性能レベルを表6に記載する。それらは、触媒C1の活性は100に等しいものとし硫黄に関する見かけ次数は1.25であるとみなした相対的活性に関して表されている(3つの温度点において計算された平均活性が示されている)。増加を定量するための他の方法は、流出物が50ppmの硫黄を含有するための温度を採用するものである。同様に、触媒C1を基準として設定する。
【0243】
【表6】
*低温は活性の増加を示す。
【0244】
表6に見られる結果は、パラメータZが低い(2.4)担体を用いて調製された触媒C1に対する、本発明の方法に従い高いパラメータZ(6.4)を有する担体を含浸することによって調製された触媒C3上で得られる活性の大幅な増加を実証している。
【0245】
この効果はより高い金属含有量で確認される(本発明により調製された触媒C4に対する、先行技術方法による触媒C2)。
【0246】
より一般的な態様では、得られた結果は、本発明により調製された触媒が、先行技術の触媒に対して、流出物中の硫黄含有量を同じにするための装置の運転温度においておよそ2℃の減少を可能にするということを実証している。こうした向上は、より高い難燃性(refractory)を有し先行技術の触媒により必要とされる運転温度に適合しないと思われるが、本発明による触媒を用いれば適合可能となるような原料油を、精製業者が処理することを可能にし得る。