(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記工作機械を制御する加工プログラムが選択された場合、当該加工プログラムによって指定されている工具が取り付けられている工具ステーションを前記展開状態で表示し、前記加工プログラムが実行された場合、加工に使用されている工具が取り付けられている工具ステーションを前記展開状態で表示する、請求項1、2または3に記載の工具管理装置。
前記制御手段は、前記工作機械を制御する加工プログラムによって指定されている全ての工具と、前記工具ステーションに取り付けられている全ての工具とを比較し、前記加工プログラムに必要な工具が前記工具ステーションに取り付けられていない場合、及び前記加工プログラムに不要な工具が前記工具ステーションに取り付けられている場合、の少なくとも一方の場合に、前記表示手段に警告を表示する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工具管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る工具管理装置およびこれを備えた工作機械の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態の工具管理装置1は、
図1に示すように、数値制御装置10によって制御される工作機械11と接続され、当該工作機械11の刃物台12に設けられた複数の工具ステーション121に着脱可能な工具13を管理するためのものである。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
工作機械11は、工作機械旋盤、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機、ターニングセンタ等のようにワークに対して旋削等の加工を施す機械である。本実施形態において、工作機械11は、数値制御装置10によってコンピュータ数値制御(CNC:Computer Numerical Control)可能に構成されており、加工に使用する工具13を取り付けるための刃物台12を備えている。
【0020】
刃物台12は、工作機械11においてワークに加工を施す際に、工具13を取り付ける台である。本実施形態において、刃物台12は、
図1に示すように、複数の工具ステーション121が放射状に設けられたタレットによって構成されている。また、工具ステーション121のそれぞれは、図示しないホルダによって、複数の工具13を着脱可能に構成されている。そして、タレットは、数値制御装置10から供給される駆動信号に基づいて旋回し、任意の工具13を割り出すようになっている。
【0021】
なお、本実施形態において、工作機械11は、刃物台12に新たな工具13が取り付けられた際、当該工具13を識別するID(工具管理番号)と、その取り付け位置(ステーション番号、取付位置番号)とを検出し、工具管理装置1に通知するようになっている。また、工作機械11は、刃物台12から工具13が取り外された際、当該工具13が取り付けられていた位置(ステーション番号、ホルダ取付位置)を工具管理装置1に通知するようになっている。
【0022】
また、本実施形態では、一つの刃物台12を備えた工作機械11について説明するが、この構成に限定されるものではなく、複数の刃物台12を備えた工作機械11にも適用可能である。さらに、本実施形態では、刃物台12としてタレットを使用しているが、これに限定されるものではなく、工具13を取り付ける台であればよい。例えば、四角刃物台、くし形刃物台、回転工具刃物台等の刃物台12にも適用可能である。
【0023】
工具管理装置1は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末またはスマートフォン等のコンピュータによって構成されており、
図1に示すように、主として、ユーザからの入力を受け付ける入力手段2と、後述する工具管理画面6等を表示する表示手段3と、本実施形態の工具管理プログラム1aや各種データを記憶する記憶手段4と、各種の演算処理を実行し後述する各構成部として機能する制御手段5とから構成されている。以下、各構成手段について詳細に説明する。
【0024】
なお、本実施形態において、工具管理装置1は、数値制御装置10および工作機械11とは別体のハードウエアによって構成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、数値制御装置10に、本発明に係る工具管理装置1の機能を実装して一体化し、工具管理装置1として構成してもよく、工作機械11に本発明に係る工具管理装置1の機能を実装して一体化し、工具管理装置1として構成してもよい。
【0025】
入力手段2は、ユーザからのデータや情報の入力を受け付けるためのものである。本実施形態において、入力手段2は、後述する工具13を管理するための工具管理画面6上において、ユーザによって指定された位置情報や、ユーザから入力されたデータ等を制御手段5へ出力するようになっている。
【0026】
表示手段3は、後述する表示制御部51から入力された表示内容を表示させるものである。本実施形態において、表示手段3は、
図6に示すような工具管理画面6や、選択中または実行中の加工プログラム、および後述する警告等を表示するようになっている。
【0027】
本実施形態において、入力手段2および表示手段3は、タッチパッド等による入力手段2としての位置入力機能と、液晶ディスプレイ等による表示手段3としての表示機能とを兼ね備えたタッチパネルによって構成されている。そして、当該タッチパネル上のタッチ位置に基づいて、各種のデータや情報を制御手段5へ受け渡すようになっている。なお、タッチパネルの方式は限定されるものではなく、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式等のように、タッチ位置に基づいてデータ入力可能なものであればよい。
【0028】
また、入力手段2および表示手段3は、タッチパネルに限定されるものではなく、マウス等のポインティングデバイスからなる入力手段2と、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段3とをそれぞれ別体として有していてもよい。この場合、表示手段3にはマウスポインタが表示されるため、左クリック等がされたときのマウスポインタの位置に基づいて、各種のデータや情報を制御手段5へ提供することとなる。
【0029】
記憶手段4は、各種のデータを記憶するとともに、制御手段5が各種の演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段4は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュメモリ等によって構成されており、
図1に示すように、プログラム記憶部41と、加工プログラム記憶部42と、テーブルデータ記憶部43と、GUIデータ記憶部44とを有している。
【0030】
プログラム記憶部41には、本実施形態の工具管理装置1を制御するための工具管理プログラム1aがインストールされている。そして、制御手段5が、当該工具管理プログラム1aを実行することにより、工具管理装置1としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0031】
なお、工具管理プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD−ROMやUSBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に工具管理プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式等で利用してもよい。
【0032】
加工プログラム記憶部42は、工作機械11の駆動を制御する加工プログラムを記憶するものである。本実施形態において、加工プログラムは、工作機械11を数値制御するためのNCコードによって記述されている。また、当該NCコードは、アルファベットと数値とからなる文字列で構成されており、主として、加工を行うための準備機能を指定するGコード、Gコードの補助的役割を果たすMコード、工具13および補正番号を指定するTコード等が用意されている。
【0033】
テーブルデータ記憶部43は、工具13を管理するのに必要なテーブルデータを記憶するものである。本実施形態において、テーブルデータ記憶部43には、
図1に示すように、刃物台データと、工具データと、刃先データと、補正値データとが記憶されている。以下、各データについて説明する。
【0034】
刃物台データは、刃物台12に取り付けられている全ての工具13を管理するためのデータである。本実施形態において、刃物台データとしては、
図2に示すように、工具ステーション121を識別するステーション番号と、各工具ステーション121における工具13の取り付け位置を識別する取付位置番号と、当該取付位置番号における工具13の有無(「ON」または「OFF」)を表す取付位置有効フラグと、取り付けられた工具13を識別する工具管理番号とが記憶されている。
【0035】
なお、ステーション番号の最大値は、刃物台12に設けられている工具ステーション121の総数に一致し、取付位置番号の最大値は、1つの工具ステーション121に取り付け可能な工具13の本数と一致する。このため、任意の工具ステーション121において、取付位置有効フラグが「OFF」の数が当該工具ステーション121に追加可能な工具13の本数として自動判定されるようになっている。
【0036】
また、本実施形態では、上述したとおり、刃物台12に工具13が取り付けられた際、当該工具13の工具管理番号、ステーション番号および取付位置番号が工作機械11から工具管理装置1へ通知される。一方、刃物台12から工具13が取り外された際、当該取り外された工具ステーション121のステーション番号および取付位置番号が工作機械11から工具管理装置1へ通知される。そして、これらの通知に基づいて、テーブルデータ記憶部43内の刃物台データが自動的に更新されるようになっている。
【0037】
工具データは、工具13に関する工具情報を管理するためのテーブルデータである。本実施形態において、主な工具データとしては、
図3に示すように、工具管理番号に対応付けて、同じ工具13ごとにグループ分けするためのグループ番号と、工具13の現在の状態を表す寿命現在値と、工具13の寿命(上限値)を表す寿命設定値と、工具13のステータスとが記憶されている。また、これらの工具情報以外にも、図示しない各種の工具情報が工具管理番号に対応付けて記憶されている。
【0038】
なお、グループ番号は、工具13の寿命をグループごとに管理するためのものであり、同一の工具13ごとに同一のグループ番号が割り当てられている。このため、加工プログラムによって指定された工具13が寿命を迎えた場合、当該工具13と同一のグループ番号が付された工具13が予備工具として自動的に呼び出されるようになっている。
【0039】
また、寿命現在値は、加工に使用された時間や回数等に応じた寿命計算式に基づいて、後述する工具寿命管理部56よって自動的に算出されるものである。寿命設定値は、工具13を加工に使用できる寿命を表すものとして、寿命現在値の上限となる値が設定されている。そして、ステータスとしては、寿命設定値に対する寿命現在値に応じて、正常、警告(寿命が尽きそうな状態)、異常(寿命が尽きた状態)等が、工具寿命管理部56によって設定される。なお、ステータスは目安に過ぎないため、ユーザが工具13を目視確認して問題がなければ、継続して使用してもよい。この際、手動で寿命現在値を減少させたり、寿命設定値を増加させれば、工具13のステータスが正常に復帰する。
【0040】
刃先データは、工具13に着脱可能な刃先を管理するためのデータである。本実施形態において、刃先データとしては、
図4に示すように、工具管理番号のそれぞれについて、すなわち異なる工具13ごとに、当該工具13に取り付けられている刃先を識別する刃先番号と、補正値を参照するための補正番号と、Tコードとが記憶されている。
【0041】
なお、本実施形態において、Tコードは、「T」と4桁の数字とから構成されており、当該数字の上2桁がステーション番号を表し、下2桁が補正番号を表している。そして、刃物台データに新たな工具13が登録されるたびに、当該工具13が取り付けられているステーション番号と補正番号とに基づいて、自動的にTコードが付与されるようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、工具13ごとに1または複数の刃先が着脱可能に構成されているため、刃先データを使用している。しかしながら、刃先を着脱できない工具13のみを使用する場合には、刃先データが不要となり、補正番号およびTコードを工具データに含めて管理すればよい。
【0043】
補正値データは、工具13の形状に基づく補正値(オフセット値)を管理するためのデータである。本実施形態において、補正値データとしては、
図5に示すように、補正値を識別する補正番号に対応付けて、形状補正量と摩耗補正量とからなる補正値が記憶されている。
【0044】
GUIデータ記憶部44は、表示手段3上で入力手段2による直感的な操作を可能にするグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface)を表示するためのGUIデータを記憶するものである。本実施形態において、GUIデータ記憶部44には、
図6に示すような工具管理画面6等を表示するためのデータが記憶されている。
【0045】
工具管理画面6は、工具ステーション121のそれぞれに取り付けられる工具13に関する工具情報をツリー状に表示するものである。具体的には、
図6に示すように、各工具ステーション121に取り付けられている工具13のうち、全ての工具13に関する工具情報を展開して表示する展開状態と、所定の工具13に関する工具情報のみに折り畳んで表示する折畳状態とを同一画面内で切り替え表示するようになっている。
【0046】
本実施形態では、各工具ステーション121に対応するステーション番号61が、工具管理画面6の左端部近傍に太字で表示されており、当該ステーション番号61の左側に、展開状態と折畳状態との切り替えを指示するための表示領域62として工具用表示切替アイコン62が配置されている。そして、任意の工具ステーション121に対応する工具用表示切替アイコン62が、入力手段2を介して選択されるたびに、当該選択された工具ステーション121に取り付けられている工具13の工具情報が、展開状態と折畳状態とに切り替えられて表示されるようになっている。
【0047】
なお、本実施形態において、工具用表示切替アイコン62は、展開状態の場合、
図6に示すように、下向きの三角形で表示され、折畳状態の場合、右向きの三角形で表示されるようになっている。しかしながら、任意の工具ステーション121を指定するための表示領域62は、工具用表示切替アイコン62に限定されるものではなく、任意の表示領域62を適宜割り当ててもよい。
【0048】
また、本実施形態において、工具ステーション121が展開状態で表示される場合、
図6に示すように、最上位となるステーション番号61の右側に、工具ステーション121に設定されている取付位置番号63が上から下に向けて順に表示される。そして、各取付位置番号63に対応付けて、工具情報を表示するための工具表示領域64が下位層として並列表示される。
【0049】
本実施形態において、工具情報としては、
図6に示すように、グループ番号と、補正番号と、Tコードと、工具名と、スキップ(上段)/負荷(下段)と、寿命(上段)/使用中(下段)と、カウント方法と、寿命現在値/寿命設定値とが表示される。一方、工具13が取り付けられていない取付位置番号63に対応する工具表示領域64は、各種の工具情報が空欄のまま表示される。
【0050】
なお、本実施形態において、スキップ/負荷および寿命/使用中は、
図6に示すように、円形状のステータスアイコン65の色によって、その状態が識別可能となっている。例えば、以下に示すとおりである。
スキップ:黒=OFF(加工に使用される)、緑=ON(加工に使用されない)
負荷:黒=負荷監視未使用、緑=負荷監視使用中、黄=負荷警告状態、赤=負荷異常状態
寿命:緑=正常状態、黄=寿命が尽きそうな状態、赤=寿命が尽きた状態
使用中:黒=加工に未使用、緑=加工に使用中
【0051】
なお、本実施形態において、上述した工具情報は、テーブルデータ記憶部43内に工具データとして記憶されている。また、工具情報として表示される項目は、上記の内容に限定されるものではなく、工具13を管理する上で必要な各種の工具情報を表示してもよい。
【0052】
一方、本実施形態において、工具ステーション121が折畳状態で表示される場合、
図6に示すように、当該工具ステーション121に取り付けられている工具13のうち、いずれか一つの工具13(例えば、取付位置番号が「1」の工具)に関する工具表示領域64のみが表示される。そして、当該工具表示領域64の左端部近傍には、当該工具ステーション121に取り付けられる全ての工具13の状態が簡易的に表示されている。
【0053】
具体的には、
図6に示すように、四角形状の小さな簡易表示アイコン66が、各工具ステーション121に設定されている取付位置番号63と対応するように、上から順に表示されている。そして、簡易表示アイコン66の色によって、該当する取付位置番号63における工具13の有無や、工具13の寿命等を識別表示するようになっている。
【0054】
例えば、簡易表示アイコン66の色に対応付けて、以下のように設定することができる。
白色:工具13が未登録であること
黒色:工具13が登録されていること
赤色:登録されている工具13の寿命が尽きた状態であること
黄色:登録されている工具13の寿命が尽きそうな状態であること
【0055】
以上のような簡易表示アイコン66を表示させることにより、折畳状態で表示されている工具ステーション121についても、当該工具ステーション121に取り付けられている工具13の有無や寿命等の状態が、展開状態で表示されている工具ステーション121と同様、一目で視認される。このため、工具管理画面6を有効に利用でき、画面をスクロール等させることなく、より多くの工具ステーション121の状況を把握することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態では、簡易表示アイコン66の色によって工具13の状態を識別しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、簡易表示アイコン66の形状(円形、三角形等)や点滅状態等を異ならせることにより、工具13の状態を識別するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態において、工具管理画面6は、工具13のそれぞれに取り付けられる刃先に関する刃先情報についても、ツリー状に表示する機能を有している。具体的には、
図7における工具ステーション121の「1」に示すように、工具13に取り付けられている刃先のうち、全ての刃先に関する刃先情報を展開して表示する展開状態と、所定の刃先に関する刃先情報のみに折り畳んで表示する折畳状態とを同一画面内で切り替え表示するようになっている。
【0058】
本実施形態では、
図7に示すように、各工具13の工具表示領域64における右端部に、展開状態と折畳状態との切り替えを指示するための表示領域67としての刃先用表示切替アイコン67が配置されている。そして、任意の工具13に対応する刃先用表示切替アイコン67が、入力手段2を介して選択されるたびに、当該選択された工具13に取り付けられている刃先の刃先情報が、展開状態と折畳状態とに切り替えられて表示されるようになっている。
【0059】
なお、本実施形態において、刃先用表示切替アイコン67は、
図7に示すように、略V字形状で表示されている。しかしながら、任意の工具13を指定するための表示領域67は、刃先用表示切替アイコン67に限定されるものではなく、任意の表示領域67を適宜割り当てててもよい。
【0060】
また、本実施形態において、工具13が展開状態で表示される場合、
図7における工具ステーション121の「1」に示すように、上位層となる工具表示領域64の下側に、刃先情報を表示するための刃先表示領域68が下位層として並列表示される。各刃先表示領域68は、工具表示領域64よりも左端部が短く表示されており、工具13の下位層であることが直感的に把握されるようになっている。
【0061】
また、各刃先表示領域68は刃先番号の数だけ表示されるとともに、刃先データとして登録されている補正番号およびTコードが表示される。このため、同一の工具13においても、異なるTコードを有する刃先が取り付けられていることが認識される。なお、工具13が展開状態で表示されている場合、工具表示領域64における補正番号およびTコードは表示されずに空欄となる。
【0062】
一方、本実施形態において、工具13が折畳状態で表示される場合、
図7に示すように、刃先表示領域68は表示されない。その代わりに、当該工具13に取り付けられている刃先のうち、いずれか一つの刃先(例えば、刃先番号が「1」の刃先)に関する刃先情報(補正番号およびTコード)のみが工具表示領域64に表示される。
【0063】
なお、工具13が折畳状態で表示される場合、上述した簡易表示アイコン66と同様、工具表示領域64内における任意の位置に、各工具13に設定されている刃先番号と対応するように、刃先の有無等を簡易表示するためのアイコンを表示してもよい。これにより、折畳状態で表示されている工具13についても、当該工具13に取り付けられている刃先の有無等が一目で認識される。このため、工具管理画面6を有効に利用でき、画面をスクロール等させることなく、より多くの工具13の状況を把握することが可能となる。
【0064】
制御手段5は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成されており、記憶手段4にインストールされた工具管理プログラム1aを実行することにより、
図1に示すように、表示制御部51と、ユーザ入力検出部52と、表示状態判定部53と、アクティブ表示部54と、工具チェック部55と、工具寿命管理部56と、補正番号編集部57として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0065】
表示制御部51は、表示手段3の表示内容を制御するためのものである。本実施形態において、表示制御部51は、ユーザが工具管理画面6を呼び出すと、テーブルデータ記憶部43から各種のデータを読み出すとともに、GUIデータ記憶部44からGUIデータを読み出し、
図6および
図7に示すような工具管理画面6を表示手段3に表示させる。
【0066】
また、本実施形態において、表示制御部51は、任意の工具ステーション121を指定するための表示領域62(工具用表示切替アイコン)が入力手段2を介して表示手段3上で選択されるたびに、
図6に示すように、当該選択された工具ステーション121の表示状態を同一画面内で展開状態と折畳状態とに切り替えるようになっている。
【0067】
具体的には、表示制御部51は、工具用表示切替アイコン62が選択されるたびに、当該選択された工具ステーション121の現在の表示状態を表示状態判定部53に判定させる。そして、現在の表示状態が折畳状態であれば、表示制御部51は、テーブルデータ記憶部43を参照し、選択された工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13の工具情報を取得する。そして、表示制御部51は、取り付け位置の数だけ工具表示領域64を並列に配置し、取付位置有効フラグが「ON」の工具13の工具表示領域64には工具情報を表示するとともに、取付位置有効フラグが「OFF」の工具13の工具表示領域64を空欄で表示する。
【0068】
一方、選択された工具ステーション121の現在の表示状態が展開状態であれば、表示制御部51は、テーブルデータ記憶部43を参照し、選択された工具ステーション121に取り付けられている工具13のうち、いずれか一つの工具情報を取得する。そして、表示制御部51は、工具表示領域64を一つだけ表示し、当該工具表示領域64内に取得した工具情報を表示するようになっている。
【0069】
また、本実施形態において、表示制御部51は、折畳状態で表示されている工具ステーション121に対応付けて、当該工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13の状態を簡易的に表示する。具体的には、表示制御部51は、テーブルデータ記憶部43を参照し、折畳状態で表示されている工具ステーション121の取付位置有効フラグと、取り付けられている各工具13のステータスを取得する。そして、表示制御部51は、取得したデータに基づいて、簡易表示アイコン66の色を異ならせて表示するようになっている。
【0070】
さらに、本実施形態において、表示制御部51は、任意の工具13を指定するための表示領域67(刃先用表示切替アイコン)が入力手段2を介して表示手段3上で選択されるたびに、
図7に示すように、当該選択された工具13の表示状態を同一画面内で展開状態と折畳状態とに切り替えるようになっている。
【0071】
具体的には、表示制御部51は、刃先用表示切替アイコン67が選択されるたびに、当該選択された工具13の現在の表示状態を表示状態判定部53に判定させる。そして、現在の表示状態が折畳状態であれば、表示制御部51は、テーブルデータ記憶部43を参照し、選択された工具13に取り付けられている全ての刃先の刃先情報を取得する。そして、表示制御部51は、刃先の数だけ刃先表示領域68を並列に配置し、対応する刃先表示領域68に取得した刃先情報を表示するようになっている。
【0072】
一方、選択された工具13の現在の表示状態が展開状態であれば、表示制御部51は、テーブルデータ記憶部43を参照し、選択された工具13に取り付けられている刃先のうち、いずれか一つの刃先情報を取得する。そして、表示制御部51は、刃先表示領域68を表示せず、選択された工具表示領域64内に取得した刃先情報を表示するようになっている。
【0073】
ユーザ入力検出部52は、入力手段2を介してユーザから入力された表示手段3上の選択位置を検出するものである。本実施形態において、ユーザ入力検出部52は、工具管理画面6上での選択位置を常時監視する。そして、工具用表示切替アイコン62が選択されたとき、当該工具用表示切替アイコン62に対応するステーション番号61を検出する。また、刃先用表示切替アイコン67が選択されたとき、当該刃先用表示切替アイコン67に対応する工具管理番号を検出するようになっている。
【0074】
また、ユーザ入力検出部52は、ユーザによって任意の加工プログラムが選択されたとき、当該選択された加工プログラムを検出する。さらに、ユーザ入力検出部52は、工具チェックボタン(図示せず)が選択されたとき、後述する工具チェックが指示されたことを検出するようになっている。
【0075】
表示状態判定部53は、ユーザによって選択された工具ステーション121または工具13について、現在の表示状態を判定するものである。本実施形態において、表示状態判定部53は、ユーザ入力検出部52がステーション番号61または工具管理番号を検出すると、対応する工具ステーション121または工具13の現在の表示状態(展開状態または折畳状態)を判定する。なお、当該判定に際しては、刃物台データや工具データに、展開状態か折畳状態かを示す表示状態フラグを記憶させておき、当該表示状態フラグを参照すればよい。
【0076】
アクティブ表示部54は、加工プログラムに必要な工具13や、加工に使用されている工具13を自動的に工具管理画面6上に表示するものである。本実施形態において、アクティブ表示部54は、ユーザによって任意の加工プログラムが選択された場合、当該加工プログラム内のTコードによって指定されている全ての工具13を加工プログラム記憶部42を参照して抽出する。そして、アクティブ表示部54は、抽出した各工具13が取り付けられている工具ステーション121のうち、工具管理画面6に表示できる限りの工具ステーション121を展開状態で表示するように表示制御部51へ指示する。
【0077】
また、本実施形態において、アクティブ表示部54は、ユーザによって選択された加工プログラムが実行された場合、実行中のブロックを常時監視する。そして、加工プログラムが実行されている間、現在加工に使用されている工具13が取り付けられている工具ステーション121をTコードによって判別し、当該工具ステーション121を展開状態で表示するように表示制御部51へ指示するようになっている。
【0078】
なお、アクティブ表示部54は、展開状態で表示されている工具ステーション121による加工が終わり次第、当該工具ステーション121を自動的に折畳状態に切り替え表示するようにしてもよい。これにより、工具管理画面6の表示スペースが有効に利用され、より多くの工具ステーション121が表示される。
【0079】
工具チェック部55は、工具ステーション121に取り付けられている工具13をチェックするものである。本実施形態において、工具チェック部55は、ユーザによって工具チェックが指示された場合、その時点で選択されている加工プログラムによって指定されている全ての工具13と、各工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13とを比較する。そして、加工プログラムに必要な工具13が工具ステーション121に取り付けられていない場合、および/または加工プログラムに不要な工具13が工具ステーション121に取り付けられている場合、表示手段3に警告を表示するように表示制御部51へ指示する。
【0080】
具体的には、工具チェック部55は、加工プログラム記憶部42を参照し、選択されている加工プログラムに含まれるTコード(必要Tコード)を抽出する。また、工具チェック部55は、テーブルデータ記憶部43を参照し、現在、工具ステーション121に取り付けられている工具13またはその刃先のTコード(現在Tコード)を取得する。そして、工具チェック部55は、必要Tコードに対する現在Tコードの過不足によって工具13の登録状況をチェックするようになっている。
【0081】
なお、表示手段3に表示させる警告としては、
図8に示すように、メッセージウィンドウ等に、加工に必要な工具13が取り付けられていない旨を表示させてもよい。また、加工に不要な工具13が取り付けられている場合は、
図8に示すように、当該工具13の工具表示領域64における目立つ位置に警告マーク69を表示させてもよく、上述した簡易表示アイコン66によって、不要な工具13であることを識別可能に表示してもよい。さらに、不要な工具13の属する工具ステーション121が折畳状態であれば、展開状態に切り替えた上で、警告を表示するようにしてもよい。
【0082】
工具寿命管理部56は、工具13の寿命を管理するためのものである。本実施形態において、工具寿命管理部56は、実行中の加工プログラムにおいて、工具13を指定するTコードが指令されたことを検知すると、当該検知した時刻から、指定された工具13による加工が終了するまでの時間(切削時間)を数値制御装置10から取得する。そして、工具寿命管理部56は、取得した切削時間と寿命計算式とに基づいて寿命現在値に加算すべき値を算出し、テーブルデータ記憶部43内の寿命現在値を更新するようになっている。なお、複数の刃先が取り付けられている工具13の寿命現在値については、各刃先の合算値が表示される。
【0083】
また、工具寿命管理部56は、更新した寿命現在値と寿命設定値との関係から工具13の状態を判別し、テーブルデータ記憶部43の工具データにおけるステータスを更新するようになっている。これにより、T0199(上2桁はグループ番号)のような、従来の特殊なTコードを用いることなく、工具13を指定するためのTコードによって寿命の管理が可能となる。このため、特殊なTコードの入れ忘れによる寿命の管理ミスが防止され、正確かつ確実に寿命が管理される。
【0084】
また、本実施形態において、工具寿命管理部56は、ツールプリセッタ(図示せず)によって工具13の寸法が計測されたことを検知したとき、当該工具13の寿命現在値を初期値にリセットする。これにより、新しい工具13が工具ステーション121に取り付けられたタイミングで、寿命現在値が自動的にリセットされるため、寿命の管理が容易になる。なお、本実施形態において、工具寿命管理部56は、切削時間に基づいて寿命現在値を算出しているが、切削回数や切削条件等を適宜組み合わせて算出してもよい。
【0085】
補正番号編集部57は、工具13または刃先ごとに設定された補正番号を編集するものである。本実施形態において、補正番号編集部57は、例えば、工具管理画面6上において、任意の工具13の補正番号が書き換えられると、当該補正番号によって、テーブルデータ記憶部43内の補正番号を更新する。このように、補正番号によって工具13または刃先ごとの補正値を管理することにより、補正値を直接手作業で編集する場合と比較して、編集作業が容易になり、入力ミスが低減する。
【0086】
つぎに、本実施形態の工具管理装置1およびこれを備えた工作機械11による作用について説明する。
【0087】
本実施形態の工具管理装置1を用いて工具13を管理する場合、事前準備として、テーブルデータ記憶部43に上述した各種のデータを登録する。これにより、ステーション番号61に工具管理番号が関連付けられ、当該工具管理番号に刃先番号が関連付けられるため、工具ステーション121、工具情報および刃先情報の順に階層をなすデータ構造が形成される。
【0088】
各種のデータが登録された後、ユーザからの入力指示に応じて、
図9に示すように、表示制御部51が、表示手段3に工具管理画面6を表示する(ステップS1)。これにより、表示手段3には、
図6および
図7に示すように、各工具ステーション121に取り付けられている工具13の工具情報や、各工具13に取り付けられている刃先の刃先情報が表示される。
【0089】
つぎに、ユーザ入力検出部52が、ユーザによる工具管理画面6上のタッチ位置に基づいて、工具ステーション121または工具13が選択されたか否かを判定する(ステップS2)。当該判定の結果、タッチ位置が工具用表示切替アイコン62または刃先用表示切替アイコン67でなければ、工具ステーション121または工具13が選択されていないと判定し(ステップS2:NO)、後述するステップS6の処理へと進む。
【0090】
一方、ユーザ入力検出部52が、工具ステーション121または工具13が選択されたと判定した場合(ステップS2:YES)、当該選択された工具ステーション121または工具13について、表示状態判定部53が現在の表示状態を判定する(ステップS3)。当該判定の結果、選択された工具ステーション121または工具13が折畳状態であれば(ステップS3:折畳状態)、表示制御部51が、当該工具ステーション121または工具13を展開状態に切り替えて表示する(ステップS4)。
【0091】
これにより、手動で選択された工具ステーション121については、取り付けられている全ての工具13に関する工具情報が、同一画面内でツリー状に一覧表示される。このため、工具管理画面6とは別の画面に切り替えることなく、任意の工具ステーション121における工具13の状況が簡単かつ選択的に確認される。従って、必要な工具13の取り付け忘れや、不要な工具13の取り外し忘れ等のミスに気がつき易くなるため、当該ミスに起因する、加工のストップ、加工不良および工具寿命管理機能の不作動等の発生が防止される。
【0092】
同様に、手動で選択された工具13については、取り付けられている全ての刃先に関する刃先情報が、同一画面内でツリー状に一覧表示される。このため、工具管理画面6とは別の画面に切り替えることなく、任意の工具13における刃先の状況が簡単かつ選択的に確認される。従って、必要な刃先の取り付け忘れや、不要な刃先の取り外し忘れ等のミスが抑制される。
【0093】
一方、ステップS3における判定の結果、選択された工具ステーション121または工具13の表示状態が展開状態であれば(ステップS3:展開状態)、表示制御部51が、
図6および
図7に示すように、当該工具ステーション121または工具13の表示状態を折畳状態に切り替えて表示する(ステップS5)。
【0094】
これにより、確認不要な工具ステーション121や工具13については、簡単かつ選択的に折畳状態で表示される。このため、不要な工具情報や刃先情報によって工具管理画面6の表示スペースが無駄に占領されることがなく、他の工具情報や刃先情報がより多く表示される。また、確認したい工具情報や刃先情報を表示させる際に、工具管理画面6上で必要となるスクロール操作量が低減する。
【0095】
また、本実施形態において、折畳状態で表示される工具ステーション121については、表示制御部51が、当該工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13の状態を簡易表示アイコン66によって簡易的に表示する。これにより、工具ステーション121が折畳状態であっても、取り付けられている工具13の有無や寿命等のように、必要最低限の状態が把握されるため、工具管理上のミスが低減する。
【0096】
つぎに、ユーザ入力検出部52が、ユーザからの入力操作に基づいて、加工プログラムが選択されたか否かを判定する(ステップS6)。当該判定の結果、加工プログラムが選択されていなければ(ステップS6:NO)、後述するステップS14の処理へと進む。
【0097】
一方、ステップS6における判定の結果、任意の加工プログラムが選択された場合(ステップS6:YES)、アクティブ表示部54が、当該加工プログラムで使用する工具13が取り付けられている工具ステーション121を展開状態で表示する(ステップS7)。これにより、加工プログラムを実行する前に、使用する工具13の状態が容易に把握されるため、工具13の確認作業が効率化する。
【0098】
つづいて、ユーザ入力検出部52が、ユーザからの入力操作に基づいて、工具チェックの指示がされたか否かを判定する(ステップS8)。当該判定の結果、工具チェックの指示があれば(ステップS8:YES)、工具チェック部55が、加工プログラムで使用する全ての工具13と、工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13とを比較し、不要・不足の工具13があるか否かをチェックする(ステップS9)。
【0099】
当該チェックの結果、加工プログラムで使用する工具13が工具ステーション121に取り付けられていない場合、および/または加工プログラムで使用しない工具13が工具ステーション121に取り付けられている場合(ステップS9:YES)、工具チェック部55が表示手段3に警告を表示させる(ステップS10)。これにより、必要な工具13の取り付け忘れや、不要な工具13の取り外し忘れが確実にユーザに認識されるため、工具管理の信頼性が向上する。
【0100】
つづいて、アクティブ表示部54が、ステップS6で選択された加工プログラムの実行が開始されたか否かを判定する(ステップS11)。なお、上記ステップS8で工具チェックの指示がされなかった場合(ステップS8:NO)、およびステップS9における工具チェックの結果、不要・不足の工具13がなかった場合も(ステップS9:NO)、本ステップS11へ進むこととなる。
【0101】
ステップS11における判定の結果、加工プログラムの実行が開始されてなければ(ステップS11:NO)、後述するステップS14の処理へと進む。一方、加工プログラムが開始された場合(ステップS11:YES)、当該加工プログラムの指令によって使用する工具13が切り替えられるたびに、アクティブ表示部54が、当該工具13が取り付けられている工具ステーション121を展開状態で表示する(ステップS12)。そして、加工プログラムが終了しない限り(ステップS13:NO)、ステップS12の処理が繰り返される。これにより、加工プログラムが実行されている間、使用中の工具13が自動的に工具管理画面6に表示されるため、工具13の確認作業が効率化する。
【0102】
その後、加工プログラムが終了すると(ステップS13:YES)、工具管理画面6が閉じられない限り(ステップS14:NO)、ステップS2へと戻り、上述したステップS2からステップS13の処理が繰り返される。
【0103】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.各工具ステーション121に取り付けられている全ての工具13を簡単かつ選択的に確認でき、必要な工具13の取り付け忘れや、不要な工具13の取り外し忘れを抑制することができる。
2.工具管理上のミスを抑制することで、加工途中での停止、加工不良の発生、および工具寿命管理機能が働かない等の問題を防止することができる。
3.折畳状態で表示されている工具ステーション121についても、取り付けられている工具13の有無や寿命を視認し、工具管理画面6の表示スペースを有効に利用しつつ、工具管理上のミスを低減することができる。
4.加工プログラムに必要な工具13や、加工に使用されている工具13の確認作業を効率化することができる。
5.必要な工具13の取り付け忘れや、不要な工具13の取り外し忘れを確実にユーザに認識させることができる。
6.各工具13に取り付けられている全ての刃先を簡単かつ選択的に確認でき、必要な刃先の取り付け忘れや、不要な刃先の取り外し忘れを抑制することができる。
7.工具ステーション121、工具情報および刃先情報をツリー状の階層構造で表示し、直観的に把握しやすいグラフィカルユーザインターフェースを提供することができる。
8.工具13または刃先ごとの補正値を直接入力せず、補正値にひも付けた補正番号を割り当てて管理することで、補正値の編集作業を容易化でき、入力ミスを低減することができる。
9.工具13を指定するTコードのみで寿命管理機能を機能させることができ、従来の特殊なTコードを使い分ける必要がなく、加工プログラムの作成が容易になる。
【0104】
なお、本発明に係る工具管理装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0105】
例えば、上述した本実施形態では、工具13の着脱に際して工作機械11から受信する通知に基づいて、テーブルデータ記憶部43内の各種データが自動更新されている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、工具13を着脱するたびに、手動で各種のデータを更新してもよい。