【実施例】
【0099】
1−自己免疫疾患を患っている患者におけるリンパ球のHLA−I膜複合体の成分の分析
理論に束縛されないが、本発明者らはHC/β2m比が上昇すると自己免疫タイプの反応が生じる恐れがあるという作業仮説を展開した。特に、本発明者らはMHC−I複合体のレベルでのHCの過剰及び/またはβ2mの低下によりTcRに対する「自己」の露出過度の現象が生じ得ると考えた。β2mはHCのある領域を保護し、CD 8 T−細胞に対する「非自己」の提示を特異的に決定することに注目されたい[Hill,D.M.ら(2003),A dominant negative mutant β2−microgobulin blocks the extracellular folding of major histocompatibility complex class I heavy chain,JBC,278:5630−5638]。
【0100】
この仮説を確かめるために、4人の患者のリンパ球から抽出したMHC I複合体中のHC及びβ2mのモル量を測定する第1の分析を行った。これらの分析の結果を表1に示し、注釈を加えた。
【0101】
リンパ球を健康なドナー及び患者の血液からHofman F.M.ら[Ann.J.Clin.Pathol.(1982),77:710−716]が改変したLightbody J.[Manual of Clinical Immunology,Rose NR.,Friedman H.編集者,American Society for Microbiology,Washington(DC),1976,p.851−857]の方法に従って単離した。MHC−I複合体を全リンパ球または少し改変したWarley A.ら[Biochim.Biophys−Acta(1973),323:55−66]の方法に従って作成した血漿膜上で検出する。MHC−Iのタンパク質成分の検出はLaemmli U.K.[Nature(1970),227:680−685]に従って電気泳動(SDS−PAGE系)することにより、次いでTowbin H.ら[Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979),76:4350−4354]の方法に従ってPVDFの膜に電気伝達し、イムノブロッティングすることにより実施した。暴露はNBT−DCIP混合物を用いてアルカリホスファターゼにカップリングした二次抗体により実施した。
【0102】
血漿膜を単離し、後記するグルタルアルデヒドへの結合方法を使用することにより多くの重鎖が実際膜起源であることを確認した。
【0103】
先に示したように、MSの4つの他の症例及びクローン病の2つの症例はHC/β2m>1の細胞比を示す。これらの所見は、出願人に特にリポソームを使用することによりHC/β2m(MHC−I)のバランスを戻すことができる実験的アプローチを開発することを刺激した。
【0104】
2−β2mを負荷したリポソームの作成
2.1 患者にデリバリーしようとするβ2mの量の評価
リンパ球の表面上のβ2mを過剰とするためには、増殖の可能性を有する細胞上のシグナリングチャネルをトリガーしないように血液中のその濃度を「合理的」限界の範囲内で上昇させなければならない。
【0105】
β2mが膜から脱離して、血液及び腎臓系中を循環する能力を考えると、血液β2m濃度を3mg/l〜8mg/l(正常濃度は約2mg/l−血液で変わる)の範囲内としなければならない。このように上昇させると、β2mは細胞の表面に吸着する。
【0106】
I型の主要組織適合遺伝子複合体はモル/モルの重鎖(MW≒43kDa)及びβ2m(MW≒12kDa)から構成されていることに注目されたい。よって、複合体(MW≒55kDa)は重量基準で79%の重鎖及び21%の軽鎖から構成される。
【0107】
リンパ球の平均タンパク質含量は650×10
−12gであり、その血漿膜のタンパク質含量はその全含量の1%のみ、すなわち6.5×10
−12gに相当する。MHC−Iのみは静止期リンパ球の膜タンパク質の全含量の多くとも1%に相当し、よってβ2m含量は約1.4×10
−14g/リンパ球であると考えられる。
【0108】
平均生理学的パラメーター2×10
6リンパ球/ml−血液及び5リッターの血液/個人を採用することにより、全MHC−I/個人(リンパ球に関して)の「重量」範囲は1.4×10
−6g〜1.8×10
−6gのリンパ球β2mである。これらの数字は、我々の最初の推定が優先的に患者において平均で0.2×10
−9〜500×10
−9gの範囲の値を示している最大数てある。血液中の平均量は10mgのβ2m/個人、すなわちリンパ球の表面上に存在するより非常に実質的に多い量であるので、正常な状態では実質的に1未満の比が既に膜β2mと血清β2m間で存在すると思われる。よって、β2mの膜欠乏を補うために血液循環中のβ2mの比を上昇させる(そのコロイド浸透分圧を高める)ことは合理的である。
【0109】
β2mの投与は2つの方法で実施し得る:
(1)β2mを負荷したリポソームの投与。このタイプの医薬担体はペプチド、抗体、遺伝物質等の投与のために流通している。リポソーム(「人工」または合成膜)を使用すると、細胞表面と活性成分間の接触が促進される;
(2)食塩水形態の活性成分を投与前に患者の血清とインキュベートする。このインキュベーションの目的は、血清のリポタンパク質をりポソームのようにベクターとして働かせることである。
【0110】
方法1または2による投与のためのβ2mのリンパ球への取り込みの程度を対照の投与と比較し得る。後者の場合、β2m食塩水潅注を0.10mg/ml(全容量150ml)で投与し、これにより3mgのβ2m/L−血液(“バッチ15”と称される15mgのβ2m/150mlのリポソーム溶液のバッチ)が与えられる。
【0111】
2.2 リポソームの製剤化
リポソーム(1mlの場合)を製造するために、成分を含有するジクロロメタン(CH
2Cl
2)を窒素下で蒸発乾固させた後、場合によりコレステロールを添加して、場合によりスフィンゴミエリンを添加して、またはコレステロール及びスフィンゴミエリンを添加して、ホスファチジルコリンを含有するフィルムを形成する。3つの化合物(ホスファチジルコリン、コレステロール及びスフィンゴミエリン)について、割合はそれぞれ10M、2M及び1M、すなわち最終溶液1mlにつき7.60mg、0.76mg及び0.38mgである。このフィルムに対して2mgのβ2mを含有する食塩水溶液(PBS 10mM,pH=7.4;ハンクス,トリス/グリシンまたはDMEM)を1ml添加する。リポソームをホスファチジルコリン(10M)、ホスファチジルコリン(10M)及びコレステロール(2M)、ホスファチジルコリン(10M)及びスフィンゴミエリン(1M)から作成したならば、各化合物に対するモル濃度は同一のままである。しかしながら、脂質成分に対して他のモル濃度を使用してもよい。タンパク質の量は異なっていてもよく、pHはケースに応じて7.4超でもよい。脂質フィルムの分散は20〜37℃の間の温度で最長3時間撹拌することにより実施する。
【0112】
リポソームを所謂「洗浄剤/透析」方法により、または所謂「抽出」方法により形成する。後者の場合、溶液(Lipofast(登録商標),Sodexim S.A.,51140 ミュイゾン,フランス国)を69バールの圧力下でポリカーボネート中に100nmのフィルター膜を介して41回通す。得られたリポソームは均質なサイズを有している。この場合、リポソームを4℃で2日間保持し、リンパ球懸濁液(直径<100nm;
図4)に添加する。より大規模では、溶液(3l/時;sodexim 2770;emulsifflex c3;sodexim s.a.)を450バールの圧力下で4回通して、SUV(単ラメラ小胞)を得る。
【0113】
「プレパイロット」アッセイでは、β2mのリポソームへの取り込み、リポソームの細胞表面への吸着及びタンパク質のリポソームから細胞の内部への移動を示すために、我々は蛍光リポソームを作成した。アッセイに従って、520nmまたは572nmで蛍光を発するリポソームを作成した。このために、脂質混合物に0.5MのNBD−PC(1−オレイル−2−(−6−(((7−ニトロ−2−1,3−ベンゾオキサジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(490nmで励起、520nmで放出)または0.5M Liss Rhod PE(1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン−N−(リサミンローダミンBスルホニル)(アンモニウム塩)(541nmで励起、572nmで放出)を添加した後、蒸発させ、脂質フイルムを得た(上記を参照されたい)。
【0114】
プレパイロット規模で、リポソームを洗浄剤/透析方法により作成した。この技術によっても、よく検定された安定なSUVが得られた。
【0115】
簡単に説明すると、20〜37℃の間の温度で最長3時間撹拌した後、ミセル懸濁液を微小透析装置においてβ2m及び4μΜ(0.8mg/ml)のn−ヘキシル−βD−グルコピラノシドを含有する食塩水溶液に対して4℃で12時間透析する。透析膜は3.5kDaのカットオフを有し、n−ヘキシル−βD−グルコピラノシド(洗浄剤)を最終溶液中最小1ppmまで希釈する。
【0116】
得られたリポソームは直径約200nmのサイズを有している。これらは周囲温度で少なくとも3ヶ月にわたり安定であり、少なくとも0.1mgのβ2m/ml−初期溶液を含有している。
【0117】
2.3 被験リポソームのエキソビボで培養維持したリンパ球に対する適用
リンパ球のMHC複合体を標的化する目的でβ2mタンパク質をリポソーム懸濁液の形態で製剤化する適切さを示すために、リンパ球を比較的簡単な技術を用いて蛍光により検出することができるタンパク質であるアルブミンを負荷したリポソームとインキュベートした。
【0118】
ホスファチジルコリンに基づいて上記したプロトコルに従って作成したリポソームへのタンパク質の取り込み及びリポソームの適用をLiss Rhod PEを用いてエキソビボで試験した。
【0119】
DAPI(ジアミノフェニルインドール;372nmで励起、456nmで放出)の蛍光に匹敵する蛍光を示す化合物であるフルオレスカミンでマーキングすることによりタンパク質を蛍光性とした。ウシ血清から結晶化したアルブミンを、Hames B.D.ら[Gel Electrophoresis of Proteins,a practical approach,Hames BD. and Rickwood D.編,The practical Approach Series,第2版,IRL Press,Oxford,New York,Tokyo,p.67]に記載されている方法を用いてタンパク質のN末端上にフルオレスカミンを共有結合により結合させることにより蛍光性とした。ただし、マーキングは洗浄剤(SDS)を含有していないトリス−HCl(25mM)/グリシン(192mM)(pH=8.3)緩衝液を用いて実施した。先に記載したように、形成されたリポソームは2mgの蛍光アルブミン/ml−リポソーム溶液を含有している。
【0120】
次いで、0.2mlの250000個のリンパ球を含有するリンパ球の懸濁液(ハンクス/0.5mM EDTA,pH=7.4)を0.2mlのアルブミン(緩衝液25mM トリス−HCl/192mM グリシン,pH=8.3)を含有する形成されたリポソームとCO
2(5%)を飽和させた湿潤雰囲気中で37℃で1時間インキュベートした。
【0121】
最後に、対照リポソーム(200μl)、対照リンパ球(200μl)、及びタンパク質を負荷したリポソームで処理したリンパ球(200μl)をRakotoarivelo C.ら[Receptors to steroid hormones and aromatase are expressed by cultured motoneurons but not by glial cells derived from rat embryo spinal cord(2004),Neuroendocrinology,80:284−297]に記載されている方法を用いて処理し、ポリリシン及びラミニンで被覆したカバーガラス上に載せた。
【0122】
調製物を落射蛍光顕微鏡(Axiovert;Zeiss,ドイツ国)により直接観察するか、または水中4%(plv)パラホルムアルデヒドの溶液で30分間固定し、カバーガラスをPBS(160mM,pH=7.2)で3回濯いだ。調製物をPBS中で調製した0.1% トリトンX−100(v/v)を用いて5分間で優しく透過性とした。
【0123】
細胞を一次抗HLA−ABC抗体によりマーキングした。ある例では、細胞核をHoechst(蛍光 450nm 青色放射,DAPI)でマーキングした。家兎で産生させた一次抗体は「ウェスタンブロット」のために使用したものと同一である。一次抗体を1/50に希釈し、ヤギにおいて産生させたFITC(緑色蛍光)に結合させた二次抗体を1/160に希釈する。抗体のインキュベーションは2% ウシ血清アルブミンを含有するPBS中で実施した。×63レンズの場合、カバーガラスにFluorsave(Calbiochem,米国)を載せた。
【0124】
図2及び3の写真は、リポソームがリンパ球の表面上に吸着されており、リポソーム中に含有されているマーキングしたタンパク質がリンパ球の膜表面上に沈着していることを示している。
【0125】
結果は、我々がHC/β2m膜平衡を戻すことを提案する実験アプローチの実現可能性を明らかに立証している。
【0126】
尿から精製したヒトβ2m(Sigma,米国)を0.6mg/mlの濃度で含有している緑色蛍光を有する他のリポソームを抽出方法に従っても作成した。β2mを赤色蛍光(励起:540nm;蛍光:625nm)を有するローダミンBイソチオシアネートでマーキングした。β2m−ローダミンB結合をRiggsら[(1958),Am.J.Pathol.,34:1081−1097]に記載されている方法を用いて形成した。結合後、タンパク質をセファデックスカラム(Pharmacia,スウェーデン国,G−10:床容量9ml;カラムの内径0.7mm)を用いて精製した。カラムをPBS(Bio−rad,10mM ホスフェート,150mM NaCl,pH=8.3)中で水和した。タンパク質をmilli−Q H
2Oで1:1希釈したPBS中に溶離した(4.5〜7.0ml)。形成されたリポソーム(
図4)を類似カラムを用いて精製し(2.5〜6.5ml)、回転蒸発器(Buchi,スイス国)を用いて2回濃縮した。患者P1の血液から単離したリンパ球を先に記載したように90分間インキュベートし、蛍光顕微鏡で観察した。結果はβ2mのリンパ球の89%への取り込みを示している(
図5)。
【0127】
2.4 リポソームの安定性(
図6〜8)
上で得たアルブミンを含有する「被験」リポソームを各種条件下で試験して、その経時的安定性を評価した。
【0128】
安定性は、バッチ30(150mlのリポソームにつき30mgのアルブミンに相当)及び60(150mlのリポソームにつき60mgのアルブミンに相当)について時間及びインキュベーション温度に対して試験した。
【0129】
リポソームを構成する脂質は636nmolのPC及び31.8nmolのNBD−PC−オレイルから構成した。窒素流下で蒸発乾固した後、脂質の混合物を1mlの200または400μgのアルブミン(Sigma,米国)を含有するPBS(pHを7.2に調節した)(それぞれ、バッチ30及び60)を1滴ずつ用いて強く撹拌しながら可溶化する。次いで、リポソファスト−塩基系(Sodexim,フランス国)を用いて機械的に抽出することによりリポソームを得た。次いで、各バッチをセファデックスG10カラムで精製した。設定した時間に、50μlの各バッチをポリ−D−リシン/ラミニンを被覆したカバーガラス上に載せ、37℃で12時間インキュベートした。次いで、生物材料を4℃でグルタルアルデヒドを30間用いることにより結合させた。画像(1ヶ月保存時の安定性,
図6)をAxiovert 200(Zeiss)落射蛍光顕微鏡を用いて撮影し、Axion visionソフトウェアアプリケーションを用いて記録した。統計研究(
図7)に関して、リポソームの直径はSerfソフトウェア(http://www.org/serf)を用いて測定した。各バッチの研究毎に、リポソーム集団を3つのクラス:直径<50、50〜100nm及び>100nmに分けた。バチャートの高さは各サイズの亜群を表す。37℃で保持したバッチ60は、60日間の保存で最高の安定性を示す:リポソームの95%が<100nmの直径を有しており、これは細胞表面へのタンパク質の移動のための理想的直径である。
【0130】
バッチ80(80mgのβ2m;
図8)に関して、バッチ80を汚染及び蒸発を最小限とするために25℃で6及び40日間の保存について試験した。作成方法はバッチ30及び60(アルブミン)に関して上記した方法と同じであり、ただし非蛍光β2m(533μg/ml−PBS)を使用し、精製は透析カセット(20kDaカットオフの膜,Thermo Scientific,米国)により実施した。
図8のバーチャートは、この段階の保存でβ2mのリンパ球への移動のためにリポソームの98%が理想的サイズ(すなわち、直径<100nm)を維持し、これは最長40日間維持されることを示している。
【0131】
2.5 リポソームにより付与される外因性β2mのヒト血清によるタンパク質分解に対する保護(
図9)
血清を健康なドナー及び自己免疫疾患(橋本甲状腺炎、リウマチ性多発性関節炎)を患っているドナーから採取した。これらの血清(90μl)を2μgの純粋なβ2m(Sigma−Aldrich,米国)またはリポソーム形態のβ2m(150mlのリポソームにつき30mgのβ2mに相当するバッチ30リポソーム)の存在下25℃で15日間インキュベートした。全反応容量は130μlであり、所要によりPBS(リン酸ナトリウム10mM,塩化ナトリウム150mM,pH=7.2)を補充した。6M 尿素を含有する変性緩衝液(SDS−PAGE,レムリ)で30μlとした反応培地から10μl(150ngに相当する)を0、1、2、3、6、10及び15日目に順次取り出した。サンプルを分析まで−20℃で保持した。
【0132】
すべてのサンプルを収集した後、これらを50℃で1時間インキュベートした。次いで、タンパク質を4M 尿素を含有する12% アクリルアミドゲル(%T=12,%C=2.6)を用いてSDS−PAGEにより分離した。
【0133】
ポリビニリデンジフロリド(PVDF)膜を用いて電気泳動溶出させた後、β2mの存在をイムノブロッティングにより検出し、対応するバンドの強度をImageJ(NIH,米国)を用いて定量した。標準曲線を用いることにより、得られたピクセルの数をβ2mのピコモル(10
−12モル)に変換した。
図9A〜Fに示すグラフは得られた結果の例を表し、β2mの量(単位ピコモル)を経時的に表す。自己免疫疾患を患っている人では血清に添加した遊離β2mが経時的に分解し、対照ではそうではないことが注目され得る。
【0134】
結論として、遊離β2mが自己免疫患者の血清により段階的に大きく分解するが、対照では見られない。他方、この分解はβ2mをリポソーム中にカプセル化したときには観察されない。正確に言うと、量の有意な減少が観察されなかったので、リポソームはβ2mを血清による分解から保護すると見られる。
【0135】
結論として、リポソームはβ2mを血清による分解から保護する。
【0136】
2.6 リポソーム中に含有されているβ2mの膜表面上に位置するHLA I重鎖との会合(
図10)
健康な人及び生理学的状態では、リンパ球表面上で発現させたβ2mの分子は1:1の比でHLA重鎖に対して非共有的に結合している。
【0137】
これらのタンパク質会合を観察し、定量するために、我々は上記タンパク質の中でHLA−β2mダイマーを一緒に共有的に連結できる技術を開発した。
【0138】
この技術の開発は、正確な膜HC/β2m比を計算し、リポソーム形態のβ2mの添加がHLA−Iの重鎖に特異的に会合することを示すために必要であった。
【0139】
このために、ジアルデヒドであるグルタルアルデヒドの2個のアルデヒド基によりタンパク質のアミノ基を結合させる能力を利用した。これらのアルデヒド基は、グルタルアルデヒドを2つの相互作用するタンパク質に由来する2個のアミノ基と統計的に架橋させ得る3つのメチレンの可変鎖により一緒に連結される(Sun、T.T.ら(1974),Protein−protein proximity in the association of ribosomal subunits of Escherichia coli:crosslinking of 30S protein S16 to 50S proteins by glutaraldehyde or formaldehyde,J.Mol.Biol.,87(3):509−22)。
【0140】
この手順に従って、MSLにより精製した500万個のリンパ球を可能性ある痕跡量の遊離アミンを除去するためにPBS(pH=7.2)で1回洗浄した後、10000gで10分間遠心することによりペレット化し、上清液体は除去した。次いで、細胞を0.25% グルタルアルデヒドを含有するPBS(1ml)中周囲温度で5分間インキュベートした。このインキュベーション中、管を数回ひっくり返した。
【0141】
トリス 1M(pH=7.2)(100μl)を添加することにより反応を停止し、過剰アミン基はグルタルアルデヒドを中和トリス緩衝液より与えられた。10000gで10分間遠心することによりリンパ球を回収した後、痕跡量のグルタルアルデヒドを除去するためにPBS(1ml)で洗浄した。遠心後、ペレットを4M 尿素を含有し、アンチプロテアーゼ(Roche Diagnostics GmBH,ドイツ国)及び5% β−メルカプトエタノールを含むレムリ緩衝液(400μl)中に回収し、分析するまで−20℃で保持した。
【0142】
細胞を溶解させるために、サンプルに3回の凍結−融解サイクルを施し、強く回転させた。次いで、サンプルを95℃で5分間インキュベートし、不溶性残渣を除去するために4000gで10分間遠心した。タンパク質(125000個のリンパ球に相当する10μlのホモジネート)を定電圧(120V)下で4M 尿素を含有する10%(%T=10,%C=2.6)のアクリルアミドゲルを用いるSDS−PAGEにより分離した。こうして分離したタンパク質をトリス−グリシン緩衝液の存在下、13Vで前もってメタノールで活性化したPVDF膜上に半乾燥で40分間かけて移した。
【0143】
1/600に希釈した一次抗β2m抗体(DakoCytomation,デンマーク国)と周囲温度で1時間、次いでアルカリホスファターゼにカップリングさせ、1/20000に希釈した二次抗家兔抗体(Sigma−Aldrich,米国)と再び1時間インキュベートすることによりβ2mを検出した。得られたバンドの強度の定量はImageJソフトウェアアプリケーション(NIH,米国)を用いて実施した。
【0144】
図10Aは得られたゲルの写真を示す。グルタルアルデヒドの存在下で、12kDaの通常のバンドに加えて55kDaにバンドが見られる。この55kDaのバンドは、分子量がβ2m分子及び重鎖の分子量の付加:12+43kDa=55kDaに相当するHLA−β2m複合体に相当する。同一レーン上の12kDaのバンドは遊離非複合化β2mに相当する。各バンドの強度を定量した後、12及び55kDのこれらの2つのバンドの累積強度が「グルタルアルデヒドなしの」レーン中の12kDaのバンドの強度に相当し、全β2mに相当する。グルタルアルデヒドあり及びなしのいずれのレーンでも、同一数のリンパ球に相当する全タンパク質の同一量が沈着した。
【0145】
55kDaのバンドの定量が実際リンパ球表面上に存在するHLA−β2m複合体の量を与えるという証拠を得るために、平行してリンパ球から血漿膜を精製するための技術を使用した。この技術により、我々は明確にリンパ球血漿膜のタンパク質を研究できた。膜β2mの存在を調べ、定量した(
図10Bを参照されたい)。得られた結果は55kDaのバンドの定量に匹敵し、このバンドが実際膜HLA−β2m複合体に相当することを確認する。更に、全β2mに対する膜β2mの割合(
図10B)は55kDaバンド/全β2m 12kDaバンドの強度の比に等しい(
図10A)。
【0146】
こうして確認されたグルタルアルデヒド技術を使用して、ヒト血液から単離したリンパ球へのリポソームにより運ばれるβ2mの取り込みの程度を調べ、定量した。
【0147】
対照として使用される一人の健康なドナー及び多発性硬化症を患っている他のドナーの2人のドナーを選択した。第2のドナーはHLA−Iの重鎖に比して膜β2mが欠乏しているために選択された。この患者は1.7に等しい膜HC/β2m比を有し、これはリンパ球膜がβ2mよりも重鎖を69%より多く含有していることを意味する。
【0148】
2人のドナー(25mlの血液)からのリンパ球を各4mlの2つのバッチに分離した。150mlにつき40mgの濃度でβ2mを含有している2mlのリポソーム(バッチ40)を4mlのリンパ球に添加した。T
0リンパ球を直ちに集め、PBSで洗浄した。T
90でサンプリングしたリンパ球をリポソームと37℃で90分間インキュベートした後、収集し、未反応の過剰のリポソームを除去するためにPBSで洗浄した。
【0149】
2つの条件の各々の下で、我々はグルタルアルデヒドで処理したまたは処理しなかったリンパ球の2つの集団を分析した(上述のプロトコルを参照されたい)。
【0150】
各条件下で、全タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットにより明らかにした。得られた結果を
図10Cに示し、我々は定量後、対照とは対照的にグルタルアルデヒドの存在下で(HLA−β2m複合体を表す)55kDaバンドの強度がT
0に比してT
90で55%増加することを知見した。
【0151】
この増加は、患者におけるリンパ球表面上に遊離HLA−1鎖を存在させるβ2mの欠乏と一致する。すなわち、重鎖は実際リポソームにより与えられる外因性β2mと会合している。
【0152】
実行した実験アプローチにより、本発明の治療概念を提供することを証明できた。すなわち、
・リンパ球表面にリポソーム形態の外因性β2mを付加することによりHLA−β2mバランスを再構築することができる。
・β2mが欠乏している患者はβ2mの取り込みを必要としない対照よりもより多くのβ2mを取り込むことができる。
・取り込まれたβ2mは実際遊離HLA分子と会合してHLA−β2mダイマーを形成する。
【0153】
要するに、得られた実験データから、β2mのリポソーム調製物を使用すると生理学的正常に近い、すなわち1に近似のHC/β2m比を再構築する目的で遊離重鎖(HC/β2m>1)を提示するリンパ球を標的することができることが確認される。
【0154】
3−β2mのリポソーム組成物の毒性分析
リポソーム形態のβ2mを、ヒト起源の肝臓、腎臓、骨格筋及び心臓細胞の培養物に対するその可能性ある毒性についてインビトロで試験した。
【0155】
3.1 被験細胞の型
被験細胞及び培地はSciencell Research Laboratories(6076 Corte Del Cedro,カリフォルニア州カールズバッド)から購入した。
【0156】
a.
HCF:初代ヒト心臓線維芽細胞,バッチNo.2136
培地:FM(線維芽細胞培地),バッチNo.5673+線維芽細胞増殖溶液,バッチNo.5863+FBS 10%+ペニシリン溶液(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml),バッチNo.5917
b.
HREpiC:初代ヒト腎臓上皮細胞,バッチNo.0546
培地:上皮細胞培地,バッチNo.5967+上皮細胞増殖溶液,バッチNo.5855+FBS 10%+PS
c.
HH:初代ヒト肝細胞,バッチNo.4607
培地:HM(肝細胞培地),バッチNo.5933+肝細胞増殖溶液,バッチNo.5722+FBS 10%+PS
d.
HSkMC:初代ヒト骨格筋細胞,バッチNo.5606
培地:骨格筋細胞培地+SkMGS+FBS 10%+PS
培養フラスコまたは皿を37℃、5% CO
2及び飽和湿度のインキュベーター(Sanyo)中に置いた(バッチは0.22μm,Nanopure,Thermo−Fisherで濾過した超純水を含有している)。
【0157】
初代ヒト細胞のための培養基質は、インキュベーターにおいて2μg/cm
2のポリ−L−リシン(Clinisciences;Sciencell Research Laboratories,バッチNo.5826,溶液:10mg/ml)と一晩インキュベートし、接種前に滅菌超純水で2回濯いだ細胞培養処理プラスチック(TPP,スイス国)である。
【0158】
3.2 細胞層の脱離及び解離
作成した培地を培養フラスコから取り出し、層を滅菌PBS(SIGMA,バッチNo.088K2356)で濯ぎ、次いで0.05% トリプシン(SIGMA トリプシンRef T−1426,バッチNo.020M7354)、EDTA 0.2g、NaCl 8g、KCl 0.4g、NaHCO
3 0.58g、グルコース 1g(SIGMA)、1リッターまで超純水の溶液で処理することにより、細胞層の脱離を実施した。溶液は0.22μ孔径の膜濾過(PES),CML バッチNo.668919)により滅菌し、トリプシン溶液の容量をフラスコの種類に調節し(例えば、25cm
2のフラスコの場合1ml)、培養フラスコは37℃(Sanyoインキュベータ)で3〜4分間放置した。
【0159】
細胞をその基質から脱離させたら、脱離を培地の存在下で血清(トリプシンの酵素作用の阻害)をピペット(細胞型応じて5〜10ml)に出し入れしながら実施した。
【0160】
3.3 毒性試験
細胞を光学顕微鏡(Nikon)の下Thoma細胞(Thermo Fisher)を用いてカウントし、96ウェルの細胞培養処理プラスチック(NUNC,バッチNo.114754)の平底培養皿を用いて200μlのそれぞれの培地中に5000細胞/ウェルの量で接種し、作成後皿をインキュベーター中に24時間置いた。被験物質の各種希釈物を100μlの抗生物質なしの培地において3回濃縮し、抗生物質は処理のため200μlの各ウェルに添加した(全容量:300μl)。24時間、48時間及び72時間目に、処理ウェル及び対照ウェルを細胞毒性を評価するためにプロトコルに従ってMTT(ブルーテトラゾリウム臭化チアゾリル)[Liu Y.ら(1997),Mechanism of cellular MTT reduction,J.Neurochem.,69:581−593]及びタンパク質の量(Ref 23227、BCAタンパク質アッセイキット;Pierce)について調べた。
・最終濃度25μg/mLのためにMTT溶液の添加、
・37℃で1時間のインキュベーション
・培地の吸引、
・100μL(飽和DOならば200μL)のDMSOの添加、
・皿(Biorad)の490nmでの測定、
・Excelを用いるコンピューター処理、
・空ウェル(ブランク)を用いるバックグラウンドノイズの引き算、
・DO Xウェル/DO対照ウェルの比を決定する、
・前記比の薬物濃度に対する曲線をトレースする。
【0161】
毒性を治療の24時間及び48時間目、すなわちt
o+48h及びt
0+72hに調べた。
【0162】
図11及び12は、たとえ高量(バッチ132)でもリポソーム被覆β2mは、β2mに対して感受性である肝細胞及び腎細胞の生存率に悪影響を与えないことを明らかに示している。同じことが心臓起源の細胞及び骨格筋細胞(結果示さず)にも当てはまる。