(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703983
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】高電圧ゼロQRRブートスタート電源
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20200525BHJP
H03K 17/06 20060101ALI20200525BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20200525BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/06 063
H03K17/687 F
H02M3/155 S
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-519239(P2017-519239)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-537584(P2017-537584A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】US2015054851
(87)【国際公開番号】WO2016057878
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】62/062,445
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511243668
【氏名又は名称】エフィシエント パワー コンヴァーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デ ローイ,マイケル エー
(72)【発明者】
【氏名】ストリーダム,ジョアン ティー
(72)【発明者】
【氏名】ロイシュ,デイヴィッド,シー
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−509629(JP,A)
【文献】
特開2007−318891(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/138750(WO,A1)
【文献】
特開2011−188178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/155
H03K 17/06
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフブリッジトポロジで配置された電気回路であって、
ハイサイドトランジスタと、
ローサイドトランジスタと、
前記ハイサイドトランジスタのゲートに電気的に結合された第1ゲートドライバ・レベルシフタと、
前記ローサイドトランジスタのゲートに電気的に結合された第2ゲートドライバと、
前記第1ゲートドライバ・レベルシフタと並列に電気的に結合されたキャパシタと、
前記第1ゲートドライバ・レベルシフタの入力と前記第2ゲートドライバの入力とに電気的に結合された駆動電圧源と、
前記駆動電圧源と前記キャパシタとの間に電気的に結合されたブートストラップデバイスと、
を備え、
前記ブートストラップデバイスは、前記ローサイドトランジスタと同期してスイッチングされるGaN電界効果トランジスタである、電気回路。
【請求項2】
前記ブートストラップデバイスは、デプレション形トランジスタであり、前記デプレション形トランジスタのゲートは、前記第2ゲートドライバの出力に電気的に結合されている、請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記デプレション形トランジスタは、前記第1ゲートドライバ・レベルシフタの前記入力に電気的に結合されている、請求項2に記載の電気回路。
【請求項4】
前記ブートストラップデバイスは、エンハンスメント形トランジスタである、請求項1に記載の電気回路。
【請求項5】
前記エンハンスメント形トランジスタはクランプされていない、請求項4に記載の電気回路。
【請求項6】
前記エンハンスメント形トランジスタは、前記キャパシタと並列なツェナーダイオードでクランプされている、請求項4に記載の電気回路。
【請求項7】
前記第1ゲートドライバ・レベルシフタ及び/又は前記第2ゲートドライバに供給されるよりも高い電圧が、前記エンハンスメント形トランジスタに供給される、請求項4に記載の電気回路。
【請求項8】
さらに、前記第1ゲートドライバ・レベルシフタ及び/又は前記第2ゲートドライバと電気的に通信するレギュレータを備える、請求項4に記載の電気回路。
【請求項9】
さらに、前記エンハンスメント形トランジスタのドレインと前記ツェナーダイオードとの間に直列に抵抗を備える、請求項6に記載の電気回路。
【請求項10】
前記抵抗は、前記エンハンスメント形トランジスタ内に集積化されている、請求項9に記載の電気回路。
【請求項11】
前記エンハンスメント形トランジスタは、それぞれのソースに短絡された各ゲートに直列に結合された、2つのエンハンスメント形GaN電界効果トランジスタでクランプされている、請求項4に記載の電気回路。
【請求項12】
さらに、前記のブートストラップデバイスであるトランジスタのゲートと前記駆動電圧源との間に電気的に結合されたダイオードと、前記のブートストラップデバイスであるトランジスタのゲートと前記第2ゲートドライバの出力との間に結合された第2キャパシタと、を備える、請求項1に記載の電気回路。
【請求項13】
前記ブートストラップデバイスは、前記ハイサイドトランジスタ及び前記ローサイドトランジスタと集積化されている、請求項1に記載の電気回路。
【請求項14】
回路をブートストラップする方法であって、
前記回路は、ハーフブリッジトポロジで配置された電気回路であって、
ハイサイドトランジスタと、
ローサイドトランジスタと、
前記ハイサイドトランジスタのゲートに電気的に結合されたゲートドライバ・レベルシフタと、
前記ゲートドライバ・レベルシフタと並列に電気的に結合されたキャパシタと、
前記ゲートドライバ・レベルシフタの入力に電気的に結合された駆動電圧源と、
前記駆動電圧源と前記キャパシタとの間に電気的に結合されたブートストラップGaN電界効果トランジスタと、
を備え、
当該方法は、
前記電気回路のローサイドトランジスタで、前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタを同期してスイッチングするステップを含む、方法。
【請求項15】
前記ローサイドトランジスタは、GaN電界効果トランジスタである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタは、デプレション形トランジスタであって、そのゲートが、前記ローサイドトランジスタの前記ゲートと電気的に通信するゲートドライバの出力と電気的に通信する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタのソースとドレインにわたる電圧は、前記ローサイドトランジスタとしてのGaN電界効果トランジスタのソースとドレインにわたる電圧に等しい、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記のローサイドトランジスタとしてのGaN電界効果トランジスタであるトランジスタのゲートとソースにわたる電圧は、ゼロ(0)ボルトであり、前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタのゲートとドレインにわたる電圧は、ドレイン電流の値が最低の場合に、マイナス5(−5)ボルトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタは、クランプされていないエンハンスメント形トランジスタであり、
追加電圧は前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタに供給され、増加し、前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタのボディダイオードにわたる電圧降下を克服する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタはエンハンスメント形トランジスタであり、前記キャパシタ、前記ゲートドライバ・レベルシフタと並列なツェナーダイオードでクランプされ、前記ゲートドライバ・レベルシフタは、ハーフブリッジ回路のアッパーサイドデバイスと電気的に通信する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ツェナーダイオードは、前記キャパシタにわたる電圧をローサイドデバイスの安全レベルにクランプする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エンハンスメント形トランジスタのドレインと前記ツェナーダイオードの間に、抵抗が直列に結合されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記駆動電圧源と前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタのゲートとの間にダイオードが電気的に結合されており、
前記ブートストラップGaN電界効果トランジスタのゲートと前記ローサイドトランジスタに対するゲートドライバの出力の間にキャパシタが電気的に結合されている、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
図1は、従来のハーフブリッジトポロジ10を示す。図示のように、従来のトポロジ10は、Q1及びQ2の符号が付された一対のトランジスタ12及び14を含む。そのようなトポロジは、例えば、エンハンスメント形電界効果トランジスタ(FETs)で実現されてもよい。典型的には、トランジスタ12及び14はハイサイド及びローサイドスイッチと見なされる。ハイサイドトランジスタ12のソース16は、ハーフブリッジの出力でローサイドトランジスタ14のドレイン18に結合されている。ハイサイドトランジスタ12のドレイン20は高電圧源22(V
Main)に結合され、ローサイドトランジスタ14のソース24はグランド26に結合されている。さらに、ハイサイドトランジスタ12のゲート28は、ゲートドライバ・レベルシフタ30に結合されており、ローサイドトランジスタ14のゲート32はゲートドライバ34に結合される。ゲートドライバ・レベルシフタ30とゲートドライバ34とは、当技術分野で周知であり、ここでは詳細には説明しない。しかしながら、この構成は、動作中に1つのトランジスタ12又は14(Q1又はQ2)をスイッチオンし、他のトランジスタをスイッチオフすることを可能にし、逆も同様であることが理解されるべきである。
【0002】
図1に示されるように、駆動電圧源36(V
Drvr)は、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタ30の入力40と結合されており、かつ、ローサイドゲートドライバ34の入力38に結合されている。この従来の設計では、ブートストラップキャパシタ42(C
BTST)は、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタ30と並列に結合され、ブートストラップダイオード44(D
BTST)は、駆動電圧源36V
Drvrとブートストラップキャパシタ42(C
BTST)との間に結合される。ハイサイドトランジスタQ1及びローサイドトランジスタQ2に、eGaN FETを用いた場合、
図1に示される構成は、ローサイドトランジスタが14(Q2)の「ボディダイオード」が導通する場合には、例えばブートストラップキャパシタ42(C
BTST)にまたがって(across)、約7.5Vを生じる。しかしながら、電圧はいくつかの要因によって変わることがある。電圧は、動作条件及びローサイドトランジスタ14(Q2)に使用されるトランジスタデバイスのタイプに依存して、約6.5V以上にすることができる。しかしながら、この構成では、ハイサイドゲートドライバ30は何らかの形式のレギュレータを必要とする。従来、これはハーフブリッジ構成内のハイサイドトランジスタに電力を供給するために使用される内部ブートストラップダイオードで実現されている。理想的には、ショットキーダイオードが、小さく、順方向電圧降下が低く、逆回復電荷がないために使用される。しかしながら、集積回路プロセスにおいて高電圧(100V)ショットキーダイオードを作ることは非常に困難であり、従って、逆回復電荷を有するPN接合ダイオードがしばしば用いられる。さらに、高電圧ショットキーダイオードは、損失をもたらす逆回復電荷(Q
RR)を有する。
【0003】
このために、このタイプのハーフブリッジトポロジのためにトランジスタ12及び14(Q1及びQ2)にGaN FETを使用すると、ショットキーダイオード又はPN接合ダイオードの逆回復電荷Q
RRが性能に影響を与え、ハイサイドトランジスタにおいて損失を誘発する。通常、これらの損失は、回路内の他の電力損失メカニズムと比較して無視できる程度である。しかしながら、逆回復電荷損失は周波数に比例し、より高い動作周波数ではコンバータ損失のかなりの部分になる点まで増加する。したがって、ブートストラップの従来の方法は、高いスイッチング周波数の動作では効率的ではない。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明は、ハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライ(bootstrap supply)に関し、より詳細には、窒化ガリウム(GaN)FETを用いたブートストラップサプライに関する。有利には、GaN FETは、ゼロ逆回復電荷QRRを有し、ハーフブリッジ回路のローサイドトランジスタと同期してスイッチングすることができるので、高電圧アプリケーションに有用である。同期スイッチングは、FETのボディダイオードが導通した場合に、高ブートストラップサプライ電圧を阻止する。さらに、ブートストラップデバイスのゼロ逆回復電荷Q
RRは、スイッチング性能を、特に超低用量キャパシタデバイス対して著しく改善し、ハイサイドデバイス内への損失の誘発を低減する。
【0005】
このために、ハーフブリッジトポロジに配置された電気回路が提供される。電気回路は、ハイサイドトランジスタと、ローサイドトランジスタと、ハイサイドトランジスタのゲートに電気的に結合されたハイサイドゲートドライバ・レベルシフタと、ローサイドトランジスタのゲートに電気的に結合されたローサイドゲートドライバと、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタと並列に電気的に結合されたキャパシタと、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタの入力とローサイドゲートドライバの入力とに電気的に結合された電圧源と、電圧源とキャパシタの間に結合されたブートストラップトランジスタとを備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、ブートストラップトランジスタはGaN電界効果トランジスタである。実施形態に応じて、ブートストラップトランジスタは、デプレッション形トランジスタ又はエンハンスメント形トランジスタであってもよい。ブートストラップトランジスタがデプレッション形トランジスタであるいくつかの実施形態では、デプレッション形トランジスタのゲートは、ゲートドライバの出力に電気的に結合される。デプレッション形の実施形態では、デプレッション形トランジスタのドレインは、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタの入力に電気的に結合される。
【0007】
エンハンスメント形トランジスタがブートストラップデバイスとして使用される場合、実施形態に応じてクランプ(clamped)されてもクランプされていなくてもよい。エンハンスメント形トランジスタがクランプされている場合は、ブートストラップキャパシタと並列にツェナーダイオードでクランプすることができる。エンハンスメント形トランジスタのドレインとツェナーダイオードとの間に抵抗を直列に配置することができる。抵抗は、エンハンスメント形トランジスタに集積されてもよい。好ましくは、ツェナーダイオードは、ブートストラップキャパシタをまたぐ電圧をアッパーサイドデバイスに対する安全レベルにクランプする。
【0008】
エンハンスメント形トランジスタは、それぞれのソースに短絡されたゲートと直列に結合された2つのエンハンスメント形GaN電界効果トランジスタでクランプされてもよい。
【0009】
エンハンスメント形トランジスタが使用される実施形態では、エンハンスメント形トランジスタに供給される電圧は、ゲートドライバに供給される電圧よりも高い電圧であり得る。これらの実施形態のいくつかでは、1つ以上の電圧源を使用することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ローサイドゲートドライバを調整する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では、レギュレータがローサイドゲートドライバとの電気的な通信内に配置されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、ダイオードは、電源電圧とトランジスタのゲートとの間に電気的に結合され、第2のキャパシタは、トランジスタのゲートとゲートドライバの出力との間に電気的に結合される。
【0012】
本発明の別の態様では、ハーフブリッジ回路をブートストラップする方法が提供される。好ましい実施形態では、GaN電界効果トランジスタは、ハーフブリッジ回路の、好ましくはGaN電界効果トランジスタであるローサイドトランジスタと同期してスイッチングされる。
【0013】
好ましい実施形態では、GaN電界効果トランジスタのソースとドレインにわたる電圧は、ローサイドデバイストランジスタのソースとドレインにわたる電圧に等しい。
【0014】
いくつかの実施形態では、ローサイドデバイストランジスタのゲートとソースにわたる電圧はゼロ(0)ボルトであり、ドレイン電流の値が最低(worst)の場合に、GaN電界効果トランジスタのゲートとソースにわたる電圧はマイナス5(−5)ボルトである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
【
図1】ハーフブリッジトポロジ回路のための従来のブートストラップサプライを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す図である。
【
図3】ブートストラップデバイスとしてeGaNトランジスタを使用した回路の好ましい実施形態のタイミングチャートを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態200によるハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す図である。
【
図6】本発明の追加の実施形態によるハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明では、本発明の例示的な実施形態を参照する。例示的な実施形態は、当業者がそれらを実施できるように十分詳細に記載されている。他の実施形態を採用してもよく、様々な構造的、論理的及び電気的な変更を行うことができることを理解されたい。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態100によるハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す。図示されているように、
図2の設計は、上述した従来のハーフブリッジトポロジ10と同じ構成要素の多くを含む。すなわち、ハイサイドトランジスタ12及びローサイドトランジスタ14(Q1及び42)が設けられ、そのそれぞれのゲートは、それぞれ、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタ30へ、及び、ローサイドゲートドライバ34へ結合される。しかしながら、
図1の従来の設計とは対照的に、
図2の例示的な設計は、ブートストラップデバイス102として、デプレッション形トランジスタ(例えば、nチャンネルのデプレッション形電界効果トランジスタ(FET))が用いられている。好ましくは、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)は、GaN FETである。
【0018】
図示のように、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソース104は、電圧源36(V
Drvr)に結合される。ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のゲート106は、ローサイドゲートドライバ34の出力39に結合される。ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のドレイン108は、ハイサイドゲートドライバ・レベルシフタ30の入力40に結合される。有利には、例示的な実施形態のブートストラップデバイス102(Q
BTST)は、ローサイドトランジスタ14(Q2)のスイッチングに同期され、従来の設計について上述したブートストラップキャパシタ42(CsrsT)にわたる7.5Vを克服する(overcome)。
【0019】
ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソースとドレインにわたる電圧V
SDは、トランジスタ14(Q2)のソースとドレインにわたる電圧と同じであるべきである。さらに、トランジスタ14(Q2)のゲートとソースにわたる電圧V
GS=0ボルトであり、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のゲートとソースにわたる電圧V
GSは−5ボルトであり、ただし、ドレイン電流(ID)の値は最低の場合である。ドレインとソースの間の電圧V
DSが、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)とメイントランジスタ12及び/又は14(FETs Q1及び/又はQ2)の両方に対して同じ定格を有しているべきだが、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)は著しく小さく(より高いR
DS(on))できる。さらに、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)は、集積化されたハーフブリッジデバイスペア内に集積化することができる。
【0020】
同期FETの実装を保証するために、ブートストラップ回路10は、ゲートドライバへ及び電力回路への最小の影響を有し、いかなる条件においても動作し、回路10は厳しい条件下でロバストであるように設計されている必要がある。好ましい実施形態では、次の条件、すなわちローサイドFET逆導通(reverse conduction)、ローサイド逆導通(高損失C
OSS遷移)後のハードスイッチング、部分ゼロ電圧スイッチング(PZVS)、自己整流後のアッパーFETの逆導、及び、最も厳しくない条件のゼロ電圧スイッチング(ZVS)、によって説明されうる。
【0021】
上述したように、ブートストラップデバイス102にFETを使用する実施形態は、好ましくは同期される。
図3は、FETブートストラップデバイス102を含むブートストラップ回路の好ましい実施形態のタイミングチャートを示す。正しいタイミングは、上に列挙した厳しい条件の影響を操作又は除去するのを助ける。動作中に、ローサイドトランジスタ14のゲート電圧の上昇に続いて、スイッチノード電圧がハイからローに遷移するのには時間がかかる。小同期FETブートストラップデバイス102が時期を早めてオンにされたとすると、ドレイン電圧はまだハイである。この条件では、スイッチノードは5Vに結合されており、破滅的な結果となる。したがって、この発生を避けるために、同期FETブートストラップデバイス102のターンオンは、十分に遅らされなければならない。この遅れは、V
GS_Qlow及びV
GS_BTSTの立ち上がりの差として、
図3に示されている。同様の理由から、同期FETブートストラップデバイス102のターンオフは、ローサイドトランジスタ14と同時に行われなければならない。これも
図3に示されている。
【0022】
上に列挙した厳しい条件に耐える実施形態を設計するための別の重要な設計パラメータは、オフ状態マージンである。ローサイドトランジスタ14と同期FETブートストラップデバイス102の両方がeGaN FETデバイスであることができるので、両者は、オフ保持されているときに、同様の逆導通電圧降下を有しうる。これらの条件の下では、同期FETブートストラップデバイス102にとって、ローサイドトランジスタ14とともに又はローサイドトランジスタ14の代わりに主電流を逆転して導通させることが可能である。これは、ブートストラップキャパシタ42にわたる過電圧状態をもたらし、ハイサイドトランジスタのゲート28の故障をもたらす虞がある。この発生を防止するために、いくつかの実施形態では、同期FETブートストラップデバイス102のオフ状態電圧は−1Vに保持され、それにより、逆導通電圧が増加し、ローサイドトランジスタ14よりも著しく高くなり、従って導通を防止する。
適切なオフ状態マージンの一例を
図4に示す。
【0023】
タイミング及びオフ状態マージンに加えて、好ましい実施形態は、ブートストラップデバイス102のドレイン回路がより高い電圧に共鳴するのを防止する回路レイアウトを使用する。同期FETブートストラップデバイス102のドレイン回路は、より高い電圧に共鳴する虞があり、これはブートストラップキャパシタ42を充電することができるより高い電圧にリングすることができ、ハイサイドトランジスタゲート28の故障をもたらす。
【0024】
図4は、本発明の第2の実施形態200による、ハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す。図示されているように、
図4の実施形態は、上述されたように、従来のハーフブリッジトポロジ10と同じ構成要素の多くを含む。すなわち、ハイサイドトランジスタ12及びローサイドトランジスタ14(Q1及びQ2)は、それぞれのゲート28及び32が、ゲートドライバ・レベルシフタ30とゲートドライバ34とにそれぞれ結合されている。しかしながら、
図1の従来の設計10とは対照的に、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)は、電圧源36(V
Drvr)及びブートストラップキャパシタ42(C
BTST)の間に結合された、クランプされていないエンハンスメント形デバイスである。さらに、追加の供給電圧202V
SD_GaNが、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)にも供給され、増加し、ブートストラップデバイスのGaN FETボディダイオードにわたる電圧降下を克服する。電圧源204(V
Drvr)は、ローサイドゲートドライバ38に、追加の供給電圧202(V
SD−GaN)なしで印加される。この構成は、トランジスタ14のボディダイオードが導通すると、ブートストラップキャパシタ42(CBTST)にわたる約7.5Vを生じる。しかしながら、ゲートドライバ34は、この構成に対して何らかの形式の調整を必要とする。実施形態に応じて、ゲートドライバ34は、内部的又は外部的に調整されてもよい。他の実施形態では、回路10のタイミングは、ローサイドゲートドライバ34を調整することができる。例えば、回路10を駆動する電圧源36を調整することができ、その調整は、回路が正常に動作するときに、順次ブートストラップキャパシタ42に伝えられることができる。
図2の実施形態と同様に、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソースとドレインにわたる電圧V
SDは、トランジスタ14(Q2)のソースとドレインにわたる電圧と同一又は類似でなければならない。
【0025】
図5の実施形態300は、
図4の実施形態200の変形例を示す。基本的な違いは、ブートストラップ電源が、ブートストラップキャパシタ42(C
BTST)に並列に結合されたツェナークランプ302(すなわち、ツェナーダイオードD
CLMP)でクランプされることである。
図5に示す実施形態300では、抵抗304R
Ilimは、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のドレイン108とツェナークランプD
CLMPとの間に直列に結合されている。
図5の構成は、トランジスタ14(Q2)のボディダイオードが導通した場合に、ブートストラップキャパシタ42(C
BTST)にわたる電圧を安全な動作制限内に維持するために、ツェナークランプ302を用いる。さらに、ツェナークランプ302(D
CLMP)は電圧をトランジスタ12(Q1)の安全制限にクランプし、抵抗304(R
Ilim)はクランプ中の電圧バッファを提供する。
図2の実施形態100と同様に、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソース及びドレインにわたる電圧V
SDは、トランジスタ14(Q2)のソース及びドレインにわたる電圧と同一又は類似でなければならない。
図4の構成200と同様に、ブートストラップデバイス102のボディダイオードにわたる電圧降下を克服するために、追加の供給電圧202(V
SD_GaN)が、同様にブートストラップデバイス102に供給されている。
【0026】
図5の例示的実施形態の一改良において、電流制御機能を備える抵抗304(R
Ilim)は、ブートストラップデバイス3102内に集積化されてもよい。いくつかの実施形態では、抵抗はRDS(on)すなわち、適切な抵抗を備えたFETの内部抵抗、を用いて集積化されてもよい。他の実施形態では、例えば金属バス(busing)などの抵抗素子を追加することができる。他の実施形態では、他の抵抗素子を使用することができる。抵抗素子304を集積することの利点の1つは、外部素子を除去することである。
【0027】
さらに他の実施形態では、ツェナークランプ302は、それぞれのソースに短絡されたゲートと直列に結合された2つのエンハンスメントGaNFETを使用することによって達成することができる。この設計は、回路設計のための最大の集積化を可能にしうる。
【0028】
図6は、本開示の追加の実施形態400によるハーフブリッジトポロジのためのブートストラップサプライを示す。図示のように、
図6の実施形態は、
図2に示される実施形態100に関して上で説明されたハーフブリッジトポロジと同じ構成要素の多くを含む。例えば、実施形態400は、ハイサイドトランジスタ12とローサイドトランジスタ14と(Q1とQ2と)を含み、それぞれのゲート28とゲート32とがそれぞれゲートドライバ・レベルシフタ30とゲートドライバ34とに結合される。しかしながら、
図2の設計とは対照的に、ブートストラップサプライは、同期エンハンスメント形デバイスの実装と見なすことができる。図示のように、ブートストラップデバイス102Q
BTSTは、駆動電圧源36(V
Drvr)とハイサイドゲートドライバ・レベルシフタ30との間に結合されている。さらに、エンハンスメントダイオード402(D
ENH)が、駆動電圧源36(V
Drvr)とブートストラップデバイス102(Q
BTST)のゲート106との間に結合されている。さらに、エンハンスメントキャパシタ404(C
ENH)がブートストラップデバイス102(Q
BTST)のゲート106と、ローゲートドライバ34の出力38との間に、結合されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、エンハンスメントダイオード402(D
ENH)は、外部コンポーネントの数を削減するためにブートストラップデバイス102に集積化されていてもよい。さらに他の実施形態では、エンハンスメントダイオード402と並列のエンハンスメント形抵抗もまた、ブートストラップデバイス102に集積化されていてもよい。
【0030】
有利なことに、
図5の実施形態のブートストラップデバイス102(Q
BTST)は、従来の設計では上述したようにブートストラップキャパシタ42(C
BTST)にわたる7.5Vを克服するトランジスタ14(Q2)のスイッチングに同期している。同期することにより、ローサイドトランジスタ14の「ボディダイオード」が、ハイサイドトランジスタゲート28の過充電を防止する。例示的な実施形態では、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソースとドレインにわたる電圧V
SDは、トランジスタ14(Q2)のソースとドレインにわたる電圧と同じであるべきである。さらに、トランジスタ14(Q2)のソースとドレインにわたる電圧(V
GS)=0ボルトであり、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のソースとドレインにわたる電圧(V
GS)との間の電圧は、ドレイン電流I
Dの値が最低の場合に−5である。例示的な構成では、エンハンスメントダイオード402(D
ENH)の電圧降下は、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)のゲートとソースにわたる電圧V
GSを0Vよりも低下させ、したがってソースとドレインにわたる電圧V
SDが上昇し、追加マージンのためのトランジスタ14(Q2)とブートストラップデバイス102(Q
BTST)との間の差異を増加させる。さらに、エンハンスメントキャパシタ404(C
ENH)は、従来のブートストラップサプライと同じ方法で(例えば、5Vに)充電される。しかしながら、使用されるエンハンスメントダイオード402(D
ENH)は、ゼロ又は超低逆回復電化量Q
RPを有する低電圧(例えば<20V)ショットキーダイオードであってもよい。
【0031】
上述の例示的な実施形態の各々について、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)を駆動するための構成に、メイントランジスタ12及び14(Q1及びQ2)にスイッチング遷移、最も好ましくは、トランジスタ14(Q2)のターンオンイベントを完了するための時間を許すための、追加のタイミングを付けくわえることができると好ましい。さらに、ブートストラップデバイス102(Q
BTST)がオンになると、抵抗と同じように両方向に電流を伝導することができる。さらに、エンハンスメントキャパシタ(C
ENH)にわたる電圧は、オフ状態の間にブートストラップデバイス102(Q
BTST)の追加のボディダイオード電圧マージンを付け加えるために、制御され(低減され)ることができ、トランジスタ(Q2)の」ボディダイオードの導通の逆電圧が、ブートストラップサプライ電圧を安全動作制限を超えて増大させる可能性をさらに低減させる。
【0032】
いくつかの実施形態は、ブートストラップトランジスタ102がオンになる前にローサイドトランジスタ14が完全にオンになることを可能にするタイミング回路をさらに含むことができる。タイミング回路はまた、ローサイドトランジスタ14のゲートの電圧がゼロ(0)に低下したときに、ブートストラップトランジスタ102を直ちに、又はできるだけ早くオフにすることができる。
【0033】
実験を通して、上述した実施形態は、抑制されていないと共鳴する虞があるブートストラップトランジスタ102のドレインインダクタンスに敏感であることが明らかになっている。トランジスタの設計/選択によって一般的にインダクタンス設計を維持する以外に、小さな直列抵抗がブートストラップトランジスタ102のドレインの後に直列に追加することができる。この抵抗を、ブートストラップトランジスタ102に集積化してもよい。いくつかの実施形態では、抵抗はブートストラップトランジスタ102の設計により、約3Ωの高RDS(on)と集積化されてもよい。さらに他の実施形態では、抵抗は、(RDS(on)ではなく別の)ただ集積された減衰抵抗であってもよい。
【0034】
図2、4乃至6に示す例示的な各実施形態のブートストラップデバイスに使用されるトランジスタは、好ましくは、GaN FETであると好ましい。最後に、上述したブートストラップデバイスの構成は、窒化ガリウム「GaN」FETを駆動するために提供されるが、例示的な実施形態には決して限定されず、(例えば、ハーフブリッジトポロジのための)通常のMOSFETを駆動するために使用されてもよい。さらに、上述した技術は、ハーフブリッジトランジスタもMOSFETであれば、ブートストラップデバイス102としてMOSFETを使用しても動作しない。これには2つの主な理由がある。1)適切に作動するために、ブートストラップトランジスタはGaNの逆導通電圧特性を利用しなければならず、電圧降下は負のゲート電圧の大きさによってプログラムされる。これは、内部ダイオードが導通しないようにしなければならないときに、内部ダイオードからの電磁波耐性を獲得する。MOSFETはこのように動作することができず、従って、主電源回路の一部となり、破壊的な結果を招く可能性がある。2)MOSFETはQrrを有するが、eGaN FETはQrrを有さない。(何らかの理由で)MOSFETダイオードが導通すると、ここで示した技術の利点は完全に失われる。
【0035】
上記の説明及び図面は、本明細書に記載された特徴及び利点を達成する特定の実施形態を例示するものとしてだけ考慮されるべきである。特定のプロセス条件に対する変更及び置換を行うことができる。したがって、本発明の実施形態は、前述の説明及び図面によって限定されているとみなされない。