(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703986
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化セルロースの製造方法及びミクロフィブリル化セルロース
(51)【国際特許分類】
C08B 15/00 20060101AFI20200525BHJP
C08B 11/12 20060101ALI20200525BHJP
C08J 3/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
C08B15/00
C08B11/12
C08J3/02 BCEP
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-523212(P2017-523212)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-536447(P2017-536447A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】FI2015050748
(87)【国際公開番号】WO2016066904
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】20145947
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】504186286
【氏名又は名称】ケミラ ユルキネン オサケイティエ
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】リランドゥ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴオレンパロ、ヴェリマッティ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンハタロ、カリ
【審査官】
佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/009517(WO,A1)
【文献】
特表2014−508228(JP,A)
【文献】
特開2009−261993(JP,A)
【文献】
特開2013−155445(JP,A)
【文献】
特表2011−522902(JP,A)
【文献】
特開2009−293167(JP,A)
【文献】
特表2014−519560(JP,A)
【文献】
特開2011−213754(JP,A)
【文献】
特開2009−161893(JP,A)
【文献】
特開平09−059301(JP,A)
【文献】
特開平11−255806(JP,A)
【文献】
特開2008−001728(JP,A)
【文献】
Langmuir, (2008) Vol.24, p.784-795
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロースの製造方法であって、
(a)有機溶媒を含む液相中にセルロース誘導体を含む懸濁液を用意する工程、ここで、該セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、TEMPO−酸化セルロース又は微結晶セルロースから選択したものであり、該有機溶媒はアルコールである、
(b)セルロース誘導体の懸濁液を均質化又は流動化によって機械的に処理し、ミクロフィブリル化セルロースを得る工程、及び
(c)ミクロフィブリル化セルロースから液相の少なくとも一部を分離し、30質量%を超える乾燥固形分含量を有するミクロフィブリル化セルロースを得る工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、置換度DSが0.01より高く、かつ、0.6未満の、カルボキシメチルセルロースである、アニオン性セルロース誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース誘導体が、微結晶セルロースであってセルロース材料を酸加水分解することにより製造したものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液相が、50〜100質量%の有機溶媒、及び0〜50質量%の水を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、エタノール、メタノール、tert−ブタノールから選択したアルコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、40質量%を超える乾燥固形分含量を有するミクロフィブリル化セルロースを得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)において、セルロース誘導体を含む懸濁液は、セルロース誘導体を含む水性懸濁液中の水を有機溶媒と取り替える、及び/又は、有機溶媒で置換することによって得たものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
機械的処理中、セルロース誘導体を含む懸濁液の乾燥固形分含量が15質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)で分離した、有機溶媒を含む液相を工程(a)に再循環させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付した特許請求の範囲の前提部分に記載したミクロフィブリル化セルロースの製造方法及びミクロフィブリル化セルロースに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、木材パルプ、サトウダイコン、バガス、アサ(麻)、アマ(亜麻)、綿、マニラ麻(アバカ)、ジュート、カポック及び絹綿(シルクフロス)などのセルロース構造を含む様々な繊維源から製造されている。ミクロフィブリル化セルロースは、長さと幅の比が高い、遊離した半結晶性でナノサイズのセルロースフィブリルを含むものである。典型的なナノサイズのセルロースフィブリル(fibril)は、幅が5〜60nmで、長さが数十ナノメートル〜数マイクロメートルの範囲にある。
【0003】
近年、ミクロフィブリル化セルロースに対する関心が高まってきている。というのは、ミクロフィブリル化セルロースは、様々な用途において、例えば、食品加工で用いるとき、又は食品、医薬品、若しくは(金属、セラミック、ポリマー、セメント質及び木材、並びに、これらの材料の各種組成物から成る)先端材料に使用するときに、有望な可能性を示しているからである。
【0004】
従来、ミクロフィブリル化セルロースは、高圧均質化装置(ホモジナイザー:homogenizer)又は流動化装置(フルイダイザー:fluidizer)を使用することにより、また、繊維を含有するセルロースの細胞壁を剥離させナノサイズのセルロースフィブリルを遊離させるプロセスで製造されている。MFCは固形分含量が典型的には約2%の水性懸濁液として得られている。もちろん、この固形分含量を増加させることは経済的な面からも理由のあることである。得られるMFCの輸送及び貯蔵コストを低減することになるからである。
【0005】
しかし、問題は、ミクロフィブリル化セルロース懸濁液の乾燥固形分含有量を容易に増加させることができないことである。MFC懸濁液を脱水することは、ゲル構造の観点で問題がある。MFCが乾燥した場合、水素結合による重大な角質化(hornification)が起こり、その結果、セルロースフィブリルが不可逆的に変化してしまうことであり、望ましくない。これの意味するところは、乾燥したMFCは再び分散させることができず、乾燥後には、元来の特性を取り戻すことができないことである。
【0006】
カルボキシメチルセルロースのような少なくとも部分的に水溶性であるセルロース誘導体から高固形分のミクロフィブリル化セルロースを製造することは特に問題である。
【0007】
このような事情から、得られるミクロフィブリル化セルロースの固形分含量を増加させることができる、例えば、簡単な脱水など、単純で、かつ、効果的な方法が必要とされている。当該ミクロフィブリル化セルロースが本来の特性を保持すれば有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、従来技術に存在する不利益を最小限にすること、可能であればその不利益を解消することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、容易に脱水することができ、好ましくは脱水後でも再分散させることができるミクロフィブリル化セルロースの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、高固形分含量のミクロフィブリル化セルロースを製造する方法を提供することである。
【0011】
これらの目的は、独立請求項の特徴部分に提示した、以下に示す特徴事項を有する方法及び構成で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る典型的な、ミクロフィブリル化セルロースの製造方法は、
(a)有機溶媒を含む液相中にセルロース誘導体を含む懸濁液を用意する工程、
ここで、該セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、TEMPO−酸化セルロース又は微結晶セルロースから選択したものであり、該有機溶媒はアルコールである、
(b)セルロース誘導体を含む懸濁液を
均質化又は流動化によって機械的に処理し、ミクロフィブリル化セルロースを得る工程、及び
(c)ミクロフィブリル化セルロースから液相の少なくとも一部を分離し、30質量%を超える(>)乾燥固形分含量を有するミクロフィブリル化セルロースを得る工程
を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る典型的なミクロフィブリル化セルロースは、本発明の方法によって製造したものであって、30質量%を超える(>)乾燥固形分含量を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
今や、驚くべきことに、有機溶媒を含む液相の存在下でセルロース誘導体を機械的に処理する場合には、得られるミクロフィブリル化セルロースの固形分含量を、そのミクロフィブリル化
セルロースを再分散した後であってもその特性を失うことなく、増加させることができることを見出した。したがって、本発明は、高い固形分含量を有する再分散性ミクロフィブリル化セルロースを得るための簡単な方法を提供するものである。これは、得られたミクロフィブリル化セルロースを輸送及び貯蔵する点で有利となる。この方法においては、少なくとも部分的に水溶性であるセルロース誘導体を出発物質として使用する場合、予想外に良好な結果が得られることが観察された。
【0016】
本明細書において、「セルロース誘導体」の用語は、酸で修飾されたセルロース材料を含む、化学的に修飾されたセルロース材料を意味する。該セルロース材料は、木材パルプ、サトウダイコン、バガス(bagasse)、アサ(麻:hemp)、アマ(亜麻:flax)、綿、マニラ麻(アバカ)、ジュート(jute)、カポック(kapok)及び絹綿(シルクフロス)のような、セルロース構造を含有する種々の天然繊維源に由来するものであることができる。該セルロース誘導体は、少なくとも部分的に水溶性であることができる。
【0017】
ミクロフィブリル化セルロース(microfibrillated cellulose)は、用語、「セルロースミクロフィブリル(cellulose microfibrils)」、「ミクロフィブリル状セルロース(microfibrillar cellulose)」及び「ナノフィブリル化セルロース(nanofibrillated cellulose)」と同義に用いる。本出願の文脈において、用語「ミクロフィブリル化セルロース」は、遊離した半結晶性セルロースのフィブリル構造体、又は遊離した束のナノサイズのセルロースフィブリルとして理解される。ミクロフィブリル化セルロースの直径は2〜60nm、好ましくは4〜50nm、より好ましくは5〜40nmであり、長さは数マイクロメートル、好ましくは500μm未満、より好ましくは2〜200μm、一層より好ましくは10〜100μm、最も好ましくは10〜60μmである。ミクロフィブリル化セルロースは、多くの場合、10〜50本のミクロフィブリルから成る複数の束を含む。また、ミクロフィブリル化セルロースは、高結晶化度及び高重合度を有することができ、例えば、重合度DP、すなわち、ポリマー中のモノマー単位の数が100〜3000であってもよい。さらにまた、ミクロフィブリル化セルロースは、懸濁液として、例えば、10〜10
5Paの範囲の高い弾性率を有してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、この方法は、再分散性のミクロフィブリル化セルロースを生成するものである。本明細書において、「再分散性のミクロフィブリル化セルロース」という用語は、周囲温度で、かつ、初期固形分含量で水中に分散させた場合、初期粘度の90%に達するミクロフィブリル化セルロースを意味する。当該初期値は、機械的処理を施こした後であって、かつ、液相を分離する前のミクロフィブリル化セルロースについて得られる値を指す。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、この方法で使用するセルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はTEMPO−酸化セルロースなどのような、アニオン性セルロース誘導体である。該セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースであることが好ましい。TEMPO酸化においては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル触媒酸化を用い、引き続き水中で穏やかな解繊(disintegration)を行うことによってセルロース材料を処理するものである。カルボキシメチルセルロース(CMC)などのようなアニオン性セルロース誘導体の置換度DSは、0.6未満(<)、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満であることが好適である。また、その置換度は、典型的には、0.01より高く、好ましくは0.05より高い。置換度が低いアニオン性セルロース誘導体、好ましくはCMCを使用する場合には、操業性が良好なものとなり、工程(b)で機械的処理を行う際のエネルギー消費が削減される。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、セルロース誘導体は微結晶セルロースであることができ、これは上記定義したセルロース材料から酸加水分解によって製造したものである。微結晶セルロースは、全体が結晶質でなくてもよく、すなわち、いくつかの非晶質領域を含んでいてもよい。微結晶セルロースは、700未満(<)、好ましくは500未満、グルコース単位の重合度DPを有していてもよい。また、微結晶セルロースは、典型的には、従来の炭水化物分析方法によって測定したとき、0〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%、より好ましくは1〜5質量%の範囲のヘミセルロース含量を有する。この炭水化物分析方法は、酸メタノール分解(acid methanolysis)及びガスクロマトグラフィーによる木材及びパルプ繊維中のヘミセルロース及びペクチンの測定(Determination of hemicelluloses and pectins in wood and pulp fibers by acid methanolysis and gas chromatogrphy)、ノルディックパルプ及び紙リサーチジャーナル(Nordic pulp and paper research journal)、第11巻、第216〜219頁、1996年に記載されている。セルロース出発材料を加水分解するのに適した酸としては、ギ酸、酢酸、硫酸、塩酸、硝酸、重硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウムのような有機酸及び無機酸の両方、又はそれらの任意の混合物がある。なお、硫酸が好適である。
【0021】
この方法の工程(a)では、有機溶媒を含む液相中にセルロース誘導体を含む懸濁液を提供(準備)する。従来から公知の適当な混合法又は懸濁法を用いて、セルロース誘導体を該液相と混合させ又は該液相中に懸濁させることができる。セルロース誘導体は乾燥形態であってもよく、又は水性の出発懸濁液の形態であってもよい。セルロース誘導体は、有機溶媒を含む液相と混合させ又は該液相中へ懸濁させる。セルロース誘導体が乾燥形態にある場合、セルロース誘導体を懸濁液の液相へ均一に確実に分散させるためには、激しく混合することが推奨される。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、セルロース誘導体を含む懸濁液は、工程(a)で以下のように得られる。すなわち、セルロース誘導体を含む水性の出発懸濁液中の水を有機溶媒と取り替える(replace)、及び/又は、有機溶媒で置換する(displace)。最初に、濾過、デカンテーション又は遠心分離のような機械的に水分離する処理によって、水性の出発懸濁液中の水の量を減少させることができる。このようにして、少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも25質量%、より好ましくは少なくとも30質量%の固形分含量を有する、セルロース誘導体を含む懸濁液を得る。高固形分の懸濁液中に残存する水は、懸濁液を有機溶媒で洗浄することによって、少なくとも部分的に有機溶媒に取り替えられ、それによって懸濁液中の水の一部又は全部が有機溶媒に置換される。典型的には、懸濁液の液相は、水及び有機溶媒の両方を含むことができる。懸濁液を有機溶媒で洗浄した後、本方法の工程(b)で行う機械的処理に適する固形分含量まで、該懸濁液を有機溶媒で希釈する。適切な固形分含量の値については、本願で後述する。洗浄に用いる有機溶媒と、懸濁液を希釈するのに用いる有機溶媒とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
懸濁液の液相は、好ましくは、水及び少なくとも1種の有機溶媒を含むことができる。本発明の一実施形態によれば、液相は、50〜100質量%、好ましくは40〜99質量%、より好ましくは70〜95質量%の(1種又は複数種の)有機溶媒、及び0〜50質量%、好ましくは1〜60質量%、好ましくは5〜30質量%の水を含む。有機溶媒は、有機酸、エステル、エーテル又はアルコールのような、高揮発性の任意の適切な有機溶媒であることができる。一般には、アルコール類が好ましい。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、アルコール、例えばエタノール、メタノール、tert−ブタノール;アセトン;又はそれらの任意の混合物である。また、懸濁液の液相は、2種以上の有機溶媒を含むことができ、例えば有機酸とアルコールとの混合物を含んでもよい。
【0024】
工程(b)において、セルロース誘導体を含む懸濁液を機械的に処理することにより、ミクロフィブリル化セルロースが得られる。セルロース誘導体に機械的処理を施している間、懸濁液は大量の有機溶媒を含むことに留意すべきである。機械的処理は、粉砕(グラインディング:grinding)、押出、高圧均質化(ホモジナイゼーション)又は流動化(フルイダイゼーション)であってもよい。機械的処理は、リファイナー;グラインダー(粉砕機:grinder);均質化装置(ホモジナイザー);コロイダー(colloider);摩擦グラインダー(friction grinder);ミクロ流動化装置(フルイダイザー:microfluidizer)、マクロ流動化装置(フルイダイザー:macrofluidizer)又は流動化装置(フルイダイザー)型−均質化装置(ホモジナイザー)のような流動化装置(フルイダイザー)を用いて行うことができる。好適な一実施形態によれば、工程(b)では、セルロース誘導体を含む懸濁液の機械的処理は、均質化処理、例えば高圧均質化処理、又は流動化処理によって実施する。例えば、ガウリン(Gaulin)社製ホモジナイザー又はミクロフルイダイザーのような、利用可能な全ての従来の均質化装置及び流動化装置を使用することができる。均質化又は流動化操作中に、天然セルロース繊維を含む混合物を500〜2100バール、好ましくは500〜1000バールの高圧にかける。例えば、均質化処理の場合には、セルロース誘導体を含む懸濁液を、上記のように高圧で圧送し(pumped)、ばね付勢バルブ装置を通して供給することができる。懸濁液中のセルロース誘導体は、高剪断力下で大きな圧力降下又は損失を受ける。これにより、天然セルロース繊維のフィブリル化(微細繊維化)がもたらされる。あるいは、こうする代わりに、流動化均質の場合には、セルロース誘導体を含む混合物を、上述したような高圧下でZ字状のチャネルに導き通過させる。そのチャネルの直径は200〜400μmであることができる。懸濁液中のセルロース誘導体に適用される剪断速度(shear rate)は高く、セルロースのミクロフィブリル(cellulose microfibrils)が形成する。ミクロフィブリル化セルロースを製造するのに用いる手順が均質化法か流動化法かにかかわらず、所望のフィブリル化度が得られるまで、その手順を数回繰り返すことができる。
【0025】
均質化のような機械的処理中のセルロース誘導体を含む懸濁液の乾燥固形分含量は、15質量%未満(<)、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満である。本発明の一実施形態によれば、均質化又は流動化のような機械的処理中のセルロース誘導体を含む懸濁液の乾燥固形分含量は、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、さらにより好ましくは1.5〜3質量%である。
【0026】
工程(c)では、ミクロフィブリル化セルロースから液相の少なくとも一部を分離し、これにより乾燥固形分含量が30質量%を超えるミクロフィブリル化セルロースを得る。この液相分離は、加圧濾過、真空濾過、蒸発又は遠心分離などの任意の適切な分離技術を用いて行うことができる。好ましいのは加圧濾過又は真空濾過などの濾過技術を使用することである。本発明の好ましい一実施形態によれば、工程(c)において、30質量%を超える(>)、好ましくは40質量%を超える、より好ましくは60質量%を超える、さらにより好ましくは80質量%を超える乾燥固形分含量を有するミクロフィブリル化セルロースが得られる。工程(c)を経た後のミクロフィブリル化セルロースの固形分含量は、40〜99質量%、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%であることができる。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態によれば、分離した液相であって有機溶媒を含む液相は、工程(c)から工程(a)に戻して再循環させる。このようにして、プロセス中に消費される有機溶媒の量を最小限に抑えることができる。
【0028】
本発明の方法を用いて得られるミクロフィブリル化セルロースは、パルプ、紙及び板紙用の強度向上剤又はバリアー剤として、又はコーティング材料の補強剤として有用である。また、ミクロフィブリル化セルロースは、石油掘削用途、食品用途、化粧品用途及び/又は医薬用途におけるエマルション剤、懸濁安定化剤又は流体懸濁剤として使用することもできる。
【実施例】
【0029】
実験
本発明のいくつかの実施形態について、以下の非限定的な実施例により詳細に説明する。
【0030】
実施例1.MFCを製造するためのCMCの均質化
カルボキシメチルセルロースCMCを、Wagberg他、Langmuir 2008年,第24巻,第784−795頁に従って実験室で製造した。製造したCMCの置換度は、導電率滴定によって測定したところ0.05であった。カルボキシメチル化の後、セルロース誘導体、すなわちCMCを含む、得られたサンプルを水で洗浄し、選択された液相(これは純水、又は水とエタノールとの混合物のいずれかである)に希釈した。セルロース誘導体の各種サンプル懸濁液をマイクロフルイディクス (Microfluidics) 社製フルイダイザーを用いて1500barの圧力で流動化(フルイダイゼーション)することによって機械的に処理した。実験の詳細について表1に示す。
【0031】
サンプル懸濁液のフィブリル化(微細繊維化fibrillation)については、光透過率を用いて特徴付けを行った。光透過率はフィブリル化度の変化と相関関係があることが知られている。これについては、例えば、Kangas H.、Lahtinen P.、Sneck A.、Saariaho A‐M.、Laitinen O.、Hellen E.:フィブリル化セルロースの特性評価(Characterization of fibrillated celluloses)、複数の方法を組み合わせた特性についての簡単なレビューと評価(A short review and evaluation of characteristics with a combination of methods)、ノルディックパルプ及び紙リサーチジャーナル(Nordic Pulp and Paper Research Journal)第29巻、第129〜143頁、2014年に記載されている。光透過率は、パーキンエルマーラムダ(Perkin Elmer Lambda)900UV/VIS/NIR分光光度計を用い、0.1質量%に希釈した均質化サンプルから測定した。その結果を表1に示す。400nm、600nm、800nm、及び1000nmの各波長での透過率について比較を行った。透過率が高くなるほど、フィブリル化の明確な徴候になると考えられる。
【0032】
表1の結果から、ミクロフィブリル化セルロースMFCは、溶媒としてエタノールと水との混合物を使用した場合、化学的に誘導された電荷を伴ったカルボキシメチル化セルロース、すなわちセルロース誘導体から製造することができることが分かる。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2:エタノール中でのMCCの均質化
WO2011/154601に記載されているように酸加水分解を介して、クラフト針葉樹パルプから、450の重合度を達成するように製造した微結晶性セルロースMCCを実施例2に使用した。
【0035】
乾燥固形分40質量%のMCC 50gをエタノール3000gで洗浄し、その後、濃度(consistency)が1.5%になるようにエタノールで希釈した。この材料を圧力2000barでマイクロフルイディクス(Microfluidics)社製フルイダイザーに通した。実施例1に記載したように、得られたミクロフィブリル化セルロース、MFCの光透過率を用いて、フィブリル化の度合いを決定した。
【0036】
光透過率の結果を表2に示す。
【0037】
実施例2は、エタノールを溶媒として使用する場合、化学的に誘導された電荷をもたないMCC、すなわちセルロース誘導体からMFCを製造することができることを示している。
【0038】
【表2】
【0039】
参考例3:水中でのMCCの均質化
微結晶性セルロース、MCCを実施例2に記載したように製造した。MCCを濃度1.5%まで水で希釈し、その後、MCCをGEA Niro Soavi NS3006Hホモジナイザーで均質化してミクロフィブリル化セルロースを製造した。均質化したときの圧力は1500バールであった。フィブリル化の程度を測定するために、実施例1に記載したように光透過率を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
実施例3は、溶媒として水を使用した場合、MCCからMFCを製造できることを示している。実施例2で得られた結果と比較すると、純水中のフィブリル化の結果は、懸濁液がエタノールを含む実施例2で得られたものより劣っていることが分かる。
【0041】
【表3】
【0042】
例4:MFCの脱水
実施例2に記載したように製造した微結晶性セルロース、MCCを各種の試験に使用した。
【0043】
水を溶媒として使用した各サンプルでは、MCCを濃度1.5%に希釈した。
【0044】
エタノールを溶媒として使用した各サンプルでは、乾燥固形分40質量%のMCC 50gをエタノール3000gで洗浄し、その後、濃度が1.5%になるようにエタノールで希釈した。各サンプルは、全て、1500バールの圧力でマイクロフルイディクス社製フルイダイザーに3回流すことによって調製した。
【0045】
フィブリル化を行った後、MFCサンプルを2.5バールの圧力を加えた加圧フィルターで脱水した。サンプルサイズは、200gの1.5%懸濁液であった。フィルター面積は115cm
2であった。
【0046】
結果を
図1に示す。懸濁液の液相が純水を含む場合と比べて、エタノールを含むMFCサンプルは、脱水がはるかに容易であり、すなわち、はるかに速く高固形分含量を達成できたことが分かる。
【0047】
以上、本発明に関し、現時点で最も実際的でかつ好適な実施態様と考えられる内容について説明したが、本発明は上記した実施態様に限定されないものと解釈すべきである。また、本発明は、後掲の特許請求の範囲の記載で定める範囲内で、様々な変形例及び均等な技術的解決手段をも包含することを意図している。