特許第6703994号(P6703994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703994熱可塑性樹脂生地を用いた副木及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703994
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂生地を用いた副木及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/058 20060101AFI20200525BHJP
   A61F 13/04 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61F5/058
   A61F13/04 E
   A61F13/04 M
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-538312(P2017-538312)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公表番号】特表2018-519856(P2018-519856A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】KR2017003550
(87)【国際公開番号】WO2017171468
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0039617
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517249831
【氏名又は名称】エモテク カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】EMTECH CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウム,ジョン ファン
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3577629(JP,B2)
【文献】 韓国登録特許第10−1538644(KR,B1)
【文献】 特表2012−518516(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1589976(KR,B1)
【文献】 登録実用新案第3051373(JP,U)
【文献】 特開2011−217818(JP,A)
【文献】 特開2014−033937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0036300(US,A1)
【文献】 米国特許第05733249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00 − A61F 5/34
A61F 13/00 − A61F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂生地を用いて骨折部位の患部を固定させる、熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、
複数の通気窓が繰り返し形成された網目状をもって患部の形状に成形された単一層の熱可塑性樹脂生地からなる副木成形体と、
前記副木成形体と同じ材質の熱可塑性樹脂生地からなり、前記副木成形体の長さ方向に多層に取り付けられ、前記長さ方向における前記副木成形体の曲げ剛性を補強する補強体と、
前記副木成形体の内側表面に取り付けられる複数のクッションパッドと、
前記副木成形体に取り付けられる面ファスナーとを含んでなり、
前記面ファスナーは、
一側端部が前記副木成形体に取り付けられる伸縮性素材のバンドと、
上面に多数個の係止環(loop)が設けられ、前記バンドの一面全体に取り付けられるループ面テープと、
前記バンドの自由端部の背面に取り付けられ、前記ループ面テープに対して着脱可能な多数のフック(hook)を有するフック面テープとを含む、副木。
【請求項2】
前記クッションパッドは、複数個が前記副木成形体の翼の方向に並んで離隔して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の副木。
【請求項3】
前記クッションパッドは、少なくとも一部の縁部に前記副木成形体の長さ方向に多数の凹溝が設けられることを特徴とする、請求項2に記載の副木。
【請求項4】
前記クッションパッドは、前記副木成形体の長さ方向に長孔の貫通ホールが設けられることを特徴とする、請求項2または3に記載の副木。
【請求項5】
前記バンドはネオプレンからなることを特徴とする、請求項1に記載の副木。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の副木の製造方法であって、
(a)熱可塑性樹脂生地を一定の大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースを製作する段階と、
(b)前記熱可塑性樹脂生地と同じ材質の生地を多数枚重ね合わせて製作された補強体を活性温度条件で前記副木成形体ベースの長さ方向に取り付ける段階と、
(c)(b)段階で副木成形体ベースと補強体を活性温度条件で塑性加工して患部の形状に成形することにより副木成形体を製作する段階と、
(d)(c)段階で製作された副木成形体に前記クッションパッドと前記面ファスナーを取り付ける段階とを含む、熱可塑性樹脂生地を用いた副木の製造方法。
【請求項7】
前記活性温度条件は設定温度以上の温水槽内で含浸されて提供されることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性樹脂生地を用いた副木の製造方法。
【請求項8】
前記副木成形体の硬化は低温水内で浸漬して急冷することにより行われることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性樹脂生地を用いた副木の製造方法。
【請求項9】
(c)段階は、前記副木成形体を活性温度条件で軟化させ、患者の手首を含む手の平の型を取って硬化させ、成形された副木成形体の手の平と対向する一側に少なくとも1本の手指を挿入して前記副木成形体を手に仮止めさせる手指固定体を成形して取り付ける段階をさらに含む、請求項6に記載の熱可塑性樹脂生地を用いた副木の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂生地を用いた副木に係り、さらに詳しくは、可逆的に変形可能な熱可塑性樹脂生地を用いて整形外科用として使用できるようにした副木、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、腕や脚が折れたり挫いたりしたとき、怪我した骨折部位を動かないようにするために整形外科用副木を用いて固定する方法で非手術的治療を行う。このような整形外科用副木の機能をする方法として、従来は石膏が塗布された包帯を患部に巻き付けて固定する方法を広く使用してきた。
【0003】
しかし、このような従来技術の施術方法は、石膏が硬化する過程で収縮現象が発生して患部を効果的に支持することができないのはもとより、患部に包帯を巻き付けるのに相当な時間がかかり、通気性がないので、長時間使用する場合に多くの汗が出て掻痒症を誘発するという問題点がある。
【0004】
特に、従来技術に係る施術方法は、施術後に硬化が完了した状態で患部の治療が終わると、これを除去するためには別途の切断器を使用しなければならないので、切断途中で皮膚を傷つけるなどの問題点がある。
【0005】
したがって、前述したような従来技術に係る問題点を解決するために、近年では、厚さ1.5Tのアクリル板を200℃以上の温度で変形させて骨折部位に該当する形状に成形することにより副木を製造した。このようなアクリル板を用いた副木はおおむね工場で成形される。
【0006】
したがって、従来技術に係る副木は、工場で一律に成形されて生産されるため患者の身体条件によっては合わないことがあるという問題点だけでなく、厚さ1.5Tのアクリル板を使用するため価格が高いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2010−0015972号(2010年2月12日公開)
【特許文献2】韓国公開特許第2014−0000548号(2014年1月3日公開)
【特許文献3】韓国登録特許第10−1475512号(2014年12月16日公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点を改善するためのもので、その目的は、患部に密着して固定が可能な熱可塑性樹脂生地を用いた副木、及びこの副木を容易に製作することが可能な副木の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係る副木は、熱可塑性樹脂生地を用いて骨折部位の患部を固定させる、熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、複数の通気窓が繰り返し形成された網目状をもって患部の形状に成形された単一層(single layer)の熱可塑性樹脂生地からなる副木成形体と、前記副木成形体と同じ材質の熱可塑性樹脂生地からなり、前記副木成形体の長さ方向に多層に取り付けられる補強体と、前記副木成形体の内側表面に取り付けられる複数のクッションパッドと、前記副木成形体に取り付けられる面ファスナーとを含み、前記面ファスナーは、一側端部が前記副木成形体に取り付けられる伸縮性素材のバンドと、上面に多数個の係止環(loop)が設けられ、前記バンドの一面全体に取り付けられるループ面テープと、前記バンドの自由端部の背面に取り付けられ、前記ループ面テープに対して着脱可能な多数のフック(hook)を有するフック面テープとを含む。
【0010】
このような副木の製造方法は、(a)熱可塑性樹脂生地を一定の大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースを製作する段階と、(b)前記熱可塑性樹脂生地と同じ材質の生地を多数枚重ね合わせて製作された補強体を活性化雰囲気で前記副木成形体ベースの長さ方向に取り付ける段階と、(c)(b)段階で副木成形体ベースと補強体を活性化雰囲気で塑性加工して患部の形状に成形することにより副木成形体を製作する段階と、(d)(c)段階で製作された副木成形体に前記クッションパッドと前記面ファスナーを取り付ける段階とを含んでなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の副木は、複数の通気窓が繰り返し形成された網目状をもって患部の形状に成形された単一層の熱可塑性樹脂生地からなる副木成形体と、副木成形体と同じ材質の熱可塑性樹脂生地からなり、副木成形体の長さ方向に多層に取り付けられる補強体と、副木成形体の内側表面に取り付けられる複数のクッションパッドと、副木成形体に取り付けられ、一面全体にループ面テープが設けられた面ファスナーとから構成されることにより、高弾性を有する面ファスナーを用いて副木成形体、補強体及びクッションパッドを圧迫して患部の固定がなされるので患部と副木成形体との密着性を向上させることができる。
【0012】
特に、本発明の副木成形体は単一層を有するが、補強体は多層に構成され、補強体を中心として副木成形体は弾性変形が可能であって面ファスナーによって圧迫されて患部との密着が可能であり、よって、副木成形体の初期製作時に患部の形状と正確に一致するように製作する必要がないので、副木成形体の製作が容易であるという利点がある。
【0013】
また、本発明の副木の製造方法は、副木成形体ベースと補強体とを活性化雰囲気で接合して成形するので、効率よく副木の製作が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木の製造過程を示すブロック図である。
図2】(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、補強体が取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はA−A線に沿った断面構成図である。
図3】(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、クッションパッドが取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はB−B線に沿った断面構成図である。
図4】(a)及び(b)はそれぞれ本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、クッションパッドの他の変形例を示す平面構成図である。
図5】(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、面ファスナーが取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はC−C線に沿った断面構成図である。
図6】本発明に係る副木の使用例を示す図である。
図7】(a)、(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る副木成形体の製造過程を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態で提示される特定の構造ないし機能的説明は本発明の概念による実施形態を説明するための目的で例示されたものに過ぎず、本発明の概念による実施形態は様々な形態で実施できる。また、本明細書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならず、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更物、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木は、副木用に製造された熱可塑性樹脂生地を活性化雰囲気(条件)で軟化させた状態で患部の形状に成形した後、硬化させて製造する。このとき、本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木は、病院や現場ですぐに製作が可能である。
【0017】
具体的には、図1を参照すると、本発明に係る副木の製造方法は、(a)熱可塑性樹脂生地を一定の大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースを製作する段階(S110)と、(b)熱可塑性樹脂生地と同じ材質の生地を多数枚重ね合わせて製作された補強体を活性化雰囲気で副木成形体ベースの長さ方向に取り付ける段階(S120)と、(c)(b)段階で副木成形体ベースと補強体を活性化雰囲気で塑性加工して患部の形状に成形することにより副木成形体を製作する段階(S130)と、(d)(c)段階で製作された副木成形体にクッションパッドと面ファスナーを取り付ける段階(S140)とを含んでなる。
【0018】
(a)段階(S110)は、複数の通気窓が繰り返し形成された網目状を有する副木用熱可塑性樹脂生地を一定の大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースを製作する過程であって、熱可塑性樹脂生地を様々に製作可能である。たとえば、副木用熱可塑性樹脂生地は3〜8本の単糸を層状構造に撚り合わせて広い網目状の網状体を織成し、網状体を熱可塑性樹脂に含浸させた後、熱可塑性樹脂の含浸された網状体を四角形状に穿孔して複数の通気窓を形成することにより製作できる。他の実施形態として、熱可塑性樹脂生地は熱可塑性樹脂糸から織成され、多数の層が行列パターンに交差された層に一定の大きさ(3〜8mm)の通気窓が繰り返し形成された網目状からなる層状構造を有する樹脂生地を製作し、その樹脂生地に高分子樹脂を含浸して製作でき、このとき、熱可塑性樹脂糸は3〜20本の単糸から構成できる。
【0019】
このように事前製作された熱可塑性樹脂生地は、患部の全体または少なくとも一部を包み込むことが可能な大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースとして使用される。
【0020】
(b)段階(S120)は、熱可塑性樹脂生地と同じ材質の生地を多数枚重ね合わせて補強体を製作し、この補強体を活性化雰囲気(条件)で副木成形体ベースの長さ方向に取り付ける過程である。
【0021】
単一層の副木成形体ベースとは異なり、補強体は4〜6枚の生地を重ね合わせて使用され、活性化雰囲気で多数枚の生地を重ね合わせて製作された補強体は自己接着性(self adhesiveness)によって一体に接合され、この補強体は再び副木成形体ベースの長さ方向に接合される。
【0022】
可逆性の熱可塑性樹脂生地の活性化雰囲気(条件)は、所定の温度、例えば略40〜60℃の温度範囲に一定の時間以上露出して自己接着性または塑性変形が可能である。このとき、活性温度と露出時間は熱可塑性樹脂生地の厚さなどによって異なる。
【0023】
例えば、熱可塑性樹脂生地を一定の温度以上の温水内に浸漬して軟化が進んだ状態で温水槽内で多数枚重ね合わせられた生地と副木成形体ベースとを一体に接合することができる。他の実施形態として、熱可塑性樹脂生地の表面に温水を噴射した後、熱可塑性樹脂生地をオーブン内で加熱して軟化させることにより、補強体と副木成形体ベースとの接合が行われ得る。
【0024】
(c)段階(S130)は、副木成形体ベースと補強体を活性化雰囲気で塑性加工して患部の形状に成形することにより副木成形体を製作する過程である。このような過程は、前述したように活性化雰囲気で副木成形体と補強体を患部の形状に成形する。
【0025】
一方、副木成形体の成形作業は軟化温度以上を維持する間に可能であり、成形過程中に硬化した副木成形体は再加熱して成形作業を持続することができる。成形作業が完了した熱可塑性樹脂生地は、常温で自然冷却することにより硬化が行われるか、或いは低温水内で浸漬して急冷させることにより硬化が行われ得る。
【0026】
好ましくは、副木成形体の成形中に活性化雰囲気を維持するために、活性化条件以上の温度を維持する温水槽内で成形作業が行われ得る。
【0027】
一方、本実施形態において、(b)段階(S120)と(c)段階(S130)は、別途の区分された工程として説明しているが、このような過程は、活性化雰囲気が維持される間に連続した工程で行われ得ることを理解すべきである。
【0028】
図2の(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、補強体が取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はA−A線に沿った断面構成図である。
【0029】
具体的には、図2を参照すると、副木成形体110は、複数の通気窓111が形成された網目状をもって患部の形状に成形された単一層(single layer)の熱可塑性樹脂生地からなることを特徴とする。
【0030】
本実施形態において、副木成形体110は手首の骨折用に製作されたものを例示しており、患部を包み込むように丸く巻かれた構造を有する。
【0031】
患部に応じて副木成形体の形状や大きさは異なるが、概して、副木成形体は患部の全体または一部を包み込むことができるように円筒形シェル(shell)形状を有する。一般に、患部を堅固に固定するために、副木成形体の長さは直径よりも十分に長い。本明細書において、副木成形体110の長さ方向(x軸)に対して垂直な方向(y軸)は「翼の方向」とも呼ぶ。
【0032】
このような副木成形体110は長さ方向に補強体120が一体に取り付けられ、このとき、補強体120は多数枚(4枚以上)の生地からなり、患部を堅固に支持する。
【0033】
特に、本発明の副木成形体110は全体的に単一層からなるのに対し、補強体120は副木成形体110の長さ方向に沿って多層からなる。したがって、副木成形体110は、補強体120が取り付けられる長さ方向(x軸)には曲げ剛性(bending stiffness)が大きいが、これに対し、補強体120を基準として、両端の副木成形体110は、単一層からなり、長さ方向に対して垂直な平面(y−z平面)上で相対的に曲げ剛性が小さくて弾性変形が行われ得る。
好ましくは、副木成形体110の縁部は、一定の幅を折って折れ部111を形成する。
【0034】
次に、(d)段階は副木成形体にクッションパッドと面ファスナーを取り付けて副木の製作を完了する。
【0035】
図3の(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、クッションパッドが取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はB−B線に沿った断面構成図である。
【0036】
図3に例示されているように、副木成形体110の内側表面にクッションパッド130が取り付けられるので、副木着用の際にクッションパッド130と患部とが直接密着する。
【0037】
このようなクッションパッド130は、高弾性と通気性に優れた素材が使用されることが好ましく、このような素材としては、オープンセル(open cell)構造を有するオルソライト(ortholite)、PUフォームなどの発泡シートが使用でき、単一素材または異種素材が接合されたラミネート構造であってもよい。
【0038】
クッションパッド130は、副木成形体110に直接接合できる。このとき、副木成形体110は、一部の接合面のみが局所的に活性化され、副木成形体全体が実質的に軟化せず、接合面のみが接着性を有する状態で接合が行われ得る。
【0039】
このように副木成形体の局所的な活性化方法としては、副木成形体の接合面にスプレーを噴射し、一定の時間、電子レンジ内でマイクロ波に露出させることにより、副木成形体の局所的な活性化を誘導することができるだろう。
【0040】
本発明におけるクッションパッド130は、単一のパッド形態であり得るが、好ましくは、複数個が副木成形体110の翼の方向に並んで互いに離隔して配置される。
【0041】
図3では、クッションパッド130が副木成形体110の翼の方向に並んで等間隔で離隔して配置されることを示している。
【0042】
クッションパッド130の厚さは、副木成形体110及び補強体120よりは厚い。
【0043】
図4の(a)および(b)はそれぞれ本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、クッションパッドの他の変形例を示す平面構成図であって、本実施形態において、副木成形体211、311は長方形として例示されている。
【0044】
図4の(a)を参照すると、本実施形態において、副木成形体211は、翼の方向に複数個の第1クッションパッド231が等間隔で取り付けられ、また、副木成形体211の縁部に沿って第2クッションパッド232と第3クッションパッド233が取り付けられる。
【0045】
好ましくは、第2クッションパッド232は、副木成形体211の長さ方向に縁部に沿って取り付けられ、第3クッションパッド233は、副木成形体211の翼の方向に縁部に沿って取り付けられる。特に、着用時に内側に折れが発生しうる第3クッションパッド233は、端部に波形の凹溝233aが設けられて折れの発生を防止することにより、クッションパッドが患部を圧迫することを防止する。
【0046】
他の実施形態として、図4の(b)に例示されているように、副木成形体311の内側面に広い面積をもって取り付けられるクッションパッド321は、左右両端の縁部に波形の凹溝321aが設けられてもよく、また、長さ方向に長孔の貫通ホール321bが設けられることにより、クッションパッド321が患部を過剰に圧迫することを防止する。
【0047】
図5の(a)は本発明に係る熱可塑性樹脂生地を用いた副木において、面ファスナーが取り付けられた副木成形体の斜視構成図であり、(b)はC−C線に沿った断面構成図である。
【0048】
図5に例示されているように、副木成形体110は、面ファスナー140が取り付けられ、特に本発明に係る面ファスナー140は、一側端部が副木成形体110に取り付けられる伸縮性素材のバンド141と、上面に多数個の係止環(loop)が設けられ、バンド141の一面全体に取り付けられるループ面テープ142と、バンド141の自由端部の背面に取り付けられ、ループ面テープ142に対して着脱可能な多数のフック(hook)を有するフック面テープ143とを含んでなる。
【0049】
バンド141は、伸縮性素材が使用され、例えば、ネオプレン(neoprene)などの高弾性合成ゴムが使用できる。
【0050】
ループ面テープ142は、バンド141の上面全体に取り付けられて係止環(loop)142aを提供し、一面に係止環が設けられた伸縮性を有する織物ウェブが使用できる。織物ウェブは、弾性繊維または弾性糸と、非弾性繊維または非弾性糸との混合物であり得る。
【0051】
フック面テープ143は、係止環142aに対して着脱可能なフックを有し、バンド141の自由端部の背面に取り付けられてループ面テープとの着脱が行われる。
【0052】
図5の(a)において、副木成形体110は2つの面ファスナー140が取り付けられたことを例示しているが、副木成形体の長さや大きさに応じて、面ファスナーは一つまたはそれ以上設けられてもよい。
【0053】
図6は本発明に係る副木の使用例を示す図であって、患部の形状に成形された副木成形体410を患部に一時着用した後、面ファスナー440を用いて患部に沿って巻き付けて固定し、このとき、面ファスナー440は、伸縮性が大きいため、弾性力をもって副木成形体410と一緒に患部を圧迫して固定する。
【0054】
したがって、副木成形体410の長さ方向に設けられた補強体によって患部は堅固に固定され、面ファスナー440によって圧迫された副木成形体110とクッションパッド(図示せず)は患部に密着した状態を維持する。
【0055】
特に、面ファスナー440の上面全体が係止環付きループ面テープ442として提供され、面ファスナー440の取付(固定)位置の制限がないため、面ファスナー440の伸縮程度を考慮して患部の密着程度を容易に調節しながらも着用が便利である。
【0056】
図7の(a)、(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る副木成形体の製造過程を簡略示す図である。
【0057】
図7を参照すると、熱可塑性樹脂生地を一定の大きさに裁断して単一層の副木成形体ベースを製作し、同じ材質の生地を多数枚重ね合わせて製作された補強体520を活性化雰囲気で副木成形体ベースの長さ方向に取り付け、これを活性化雰囲気で塑性加工して患部の形状に成形することにより副木成形体510を製作することは、前述した実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態では、骨折部位が手である場合、副木成形体510を活性化雰囲気で軟化させて、患者の手首を含む手の平の型を取って硬化させ、成形された副木成形体の手の平と対向する一側に少なくとも1本の手指を挿入して副木成形体510を手に仮止めさせる手指固定体531、532を成形して取り付ける段階をさらに含むことができる。
【0059】
副木成形体510に手指固定体531、532が取り付けられた後には、前述したように、副木成形体510にクッションパッドと面ファスナーを取り付ける。
【0060】
手指固定体531、532は、親指を基本として1本を成形することもできるが、他の指を含めて2本以上に成形することもできる。もちろん、手指全部に相当する手指固定体を成形することもでき、このとき、手指固定体は、副木成形体と同じ素材の熱可塑性樹脂生地を使用する。
【0061】
以上で説明した本発明は、前述した実施形態及び添付図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から逸脱することなく、様々な置換、変形及び変更を加え得ることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明白であろう。
【符号の説明】
【0062】
110、211、311、410、510 副木成形体
120、520 補強体
531、532 手指固定体
130 クッションパッド
140、440 面ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7