特許第6704011号(P6704011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000002
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000003
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000004
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000005
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000006
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000007
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000008
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000009
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000010
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000011
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000012
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000013
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000014
  • 特許6704011-燃料電池システム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704011
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20200525BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20200525BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20200525BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200525BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/0662
   C01B3/38
   !H01M8/12 101
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-77381(P2018-77381)
(22)【出願日】2018年4月13日
(65)【公開番号】特開2019-186111(P2019-186111A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年10月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 俊之輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 達哉
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−146225(JP,A)
【文献】 特開2013−105612(JP,A)
【文献】 特開2017−183267(JP,A)
【文献】 特開2017−162561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
C01B 3/38
H01M 8/0662
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、
前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、
前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、
前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、
前記第1改質水供給路からの水供給が、前記第2改質水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する水供給制御部と、
を備え、
前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、
前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する、
燃料電池システム。
【請求項2】
炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、
前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、
前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、
前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、
前記第1改質水供給路からの水供給が、前記第2改質水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する水供給制御部と、
を備え、
前記第2改質水供給路は前記第1改質水供給路と合流部で合流され、前記第2改質水供給路には前記合流部よりも上流側に個別イオン交換樹脂が配置されている、
燃料電池システム。
【請求項3】
前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、
前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記合流部よりも下流側に共通イオン交換樹脂が配置されている、請求項2または請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2改質水供給路は、直接または間接的に供給された前記アノードオフガスを燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水、及び、上水の少なくとも一方を水源としている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記上水供給路は第1合流部で前記第1改質水供給路と合流されると共に、前記排ガス水供給路は第2合流部で前記第1改質水供給路と合流され、前記上水供給路には前記第1合流部よりも上流側に上水用イオン交換樹脂が配置され、前記排ガス水供給路には前記第2合流部よりも上流側に排ガス水用イオン交換樹脂が配置されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1合流部及び前記第2合流部よりも下流側に共通イオン交換樹脂が配置されている、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記再生燃料ガスを前記燃料電池セルスタックへ再供給する再生燃料供給管を備えた、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記再生燃料ガスが供給され、該再生燃料ガスと空気とを反応させて発電する第2燃料電池セルスタックを備えた、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、
前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、
前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、
前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、
前記第1改質水供給路及び前記第2改質水供給路の内、不純物含有率の低い水を供給する側からの水供給が優先されるように制御する水供給制御部と、
を備え、
前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、
前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいて、炭化水素系の原料を燃料電池システム内の改質部で水蒸気改質して水素や一酸化炭素などを含む改質ガスを得ることがある。この場合、改質部へ改質用の水を供給する必要がある。一方、燃料電池セルでは、アノードにおいて酸素イオンと燃料ガス中の水素とが反応し、水(水蒸気)が生成される。この水を改質用に使用することにより、燃料電池システム内において水を再利用して循環させることができ、外部からの水の供給をなくしたり(水自立)、外部水の供給量を少量に抑えたりすることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−115495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、改質用に用いる水に不純物が多く混在すると、改質触媒の劣化が促進されたり、系内に不純物が析出することによる破損が起こったりするなど、燃料電池システムに悪影響を及ぼすため、不純物は少ない方がよい。そこで、燃料電池システム内で生成された水を改質水として再利用する場合にも、純度の高い水を得ることが求められる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、燃料電池システム内の水を改質水として再利用する場合において、純度の高い改質水を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る燃料電池システムは、炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、前記第1改質水供給路からの水供給が、前記第2改質水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する水供給制御部と、を備え、前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムでは、燃料再生部でアノードオフガスから分離された水が、他の水源からの水よりも優先して改質部へ供給される。ここで、「第1改質水供給路からの水供給が、第2改質水供給路からの水供給よりも優先される」とは、アノードオフガスから分離された水の量が、改質水として必要とされる水の量に対して十分な場合には、第1改質水供給路からのみ水供給を行う、又は、第1改質水供給路からの水供給を第2改質水供給路からの水供給よりも多い量で行うことをいう。また、ここで「不純物」とは、水以外の成分のことであり、有機物、無機物などの固形状の物質だけでなく、液相に溶解したイオンや気体の成分をいう。気体としては、一例として空気を想定している。
【0008】
請求項1に係る燃料電池システムによれば、相対的に不純物の混入が少ないアノードオフガスから分離された水を優先して改質水として用いるので、純度の高い改質水を得ることができる。
【0009】
請求項5記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第2改質水供給路は、直接または間接的に供給された前記アノードオフガスを燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水、及び、上水の少なくとも一方を水源としている。
【0010】
請求項5に係る燃料電池システムによれば、直接または間接的に燃焼部へアノードオフガスが供給され、当該アノードオフガスが燃焼部で燃焼する。そして、燃焼部から排出された燃焼排ガスから分離された水、又は上水を、改質水として改質部へ供給し、アノードオフガスから分離された水の不足分を補うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明に係る燃料電池システムは、炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、前記第1改質水供給路からの水供給が、前記第2改質水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する水供給制御部と、を備え、前記第2改質水供給路は前記第1改質水供給路と合流部で合流され、前記第2改質水供給路には前記合流部よりも上流側に個別イオン交換樹脂が配置されている。
【0012】
請求項2に係る燃料電池システムによれば、個別イオン交換樹脂により、燃料再生部で分離された水と異なる水源からの水から不純物を除去することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る燃料電池システムは、前記合流部よりも下流側に共通イオン交換樹脂が配置されている。
【0014】
請求項4に係る燃料電池システムによれば、個別イオン交換樹脂により燃料再生部で分離された水と異なる水源からの水から不純物を除去した後に、共通イオン交換樹脂により第1改質水供給路からの水及び第2改質水供給路からの水から不純物が除去される。したがって、共通イオン交換樹脂では、不純物の少ない水を除去すればよいので、共通イオン交換樹脂の充填量を少なく抑えることができる。
【0015】
請求項1及び請求項3記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する。
【0016】
請求項1及び請求項3に係る燃料電池システムでは、第2改質水供給路が、燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含んでいる。そして、水供給制御部によって、排ガス水供給路からの水供給が、上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御される。上水は空気と多く接触していることに加え、ケイ素成分や水道管から溶出した成分、また、洗浄処理などの塩化物イオンが投入されているため、不純物を多く含んでいる。一方で、燃焼排ガス中の水は化学反応による生成物であり、一部空気を含んでいるのみであるため、優先して改質水として用いることにより、簡易に純度の比較的高い改質水を得ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る燃料電池システムは、前記上水供給路は第1合流部で前記第1改質水供給路と合流されると共に、前記排ガス水供給路は第2合流部で前記第1改質水供給路と合流され、前記上水供給路には前記第1合流部よりも上流側に上水用イオン交換樹脂が配置され、前記排ガス水供給路には前記第2合流部よりも上流側に排ガス水用イオン交換樹脂が配置されている。
【0018】
請求項6に係る燃料電池システムによれば、排ガス水用イオン交換樹脂により燃焼排ガスから分離された水から不純物を除去することができ、上水用イオン交換樹脂により上水から不純物を除去することができる。このように、水源毎に異なるイオン交換樹脂を設けることにより、水の純度や不純物に応じたイオン交換樹脂を使用して、効率よく不純物を除去することができる。
【0019】
請求項7記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第1合流部及び前記第2合流部よりも下流側に共通イオン交換樹脂が配置されている。
【0020】
請求項7に係る燃料電池システムによれば、排ガス水用イオン交換樹脂により燃焼排ガスから分離された水から不純物を除去し、上水用イオン交換樹脂により上水から不純物を除去した後に、共通イオン交換樹脂により第1改質水供給路からの水及び排ガス水供給路及び上水の水から不純物が除去される。したがって、共通イオン交換樹脂では、比較的不純物の少ない水を除去すればよいので、共通イオン交換樹脂の充填量を少なく抑えることができる。
【0021】
請求項8記載の発明に係る燃料電池システムは、前記再生燃料ガスを前記燃料電池セルスタックへ再供給する再生燃料供給管を備えている。
【0022】
請求項8に係る燃料電池システムによれば、再生燃料ガスを燃料電池セルスタックへ供給して発電に供する、いわゆる循環式の燃料電池システムとして、発電効率を高くすることができる。
【0023】
請求項9記載の発明に係る燃料電池システムは、前記再生燃料ガスが供給され、該再生燃料ガスと空気とを反応させて発電する第2燃料電池セルスタックを備える。
【0024】
請求項9に係る燃料電池システムによれば、再生燃料ガスを後段の第2燃料電池セルスタックへ供給して発電に供する、いわゆる多段式の燃料電池システムとして、発電効率を高くすることができる。
【0025】
請求項10記載の発明に係る燃料電池システムは、炭化水素系の原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質部と、前記燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池セルスタックと、前記燃料電池セルスタックのアノードから排出されるアノードオフガスから、少なくとも水を分離して再生燃料ガスを生成する燃料再生部と、前記燃料再生部で分離された水を前記改質部へ供給する第1改質水供給路と、前記燃料再生部で分離された水と異なる水源から前記改質部へ水を供給する第2改質水供給路と、前記第1改質水供給路及び前記第2改質水供給路の内、不純物含有率の低い水を供給する側からの水供給が優先されるように制御する水供給制御部と、を備え、前記第2改質水供給路は、前記アノードオフガスを直接または間接的に燃焼させる燃焼部から排出される燃焼排ガスから分離された水を水源とする排ガス水供給路、及び、上水を水源とする上水供給路を含み、前記水供給制御部は、前記排ガス水供給路からの水供給が、前記上水供給路からの水供給よりも優先されるように制御する
【0026】
請求項10に係る燃料電池システムでは、燃料再生部でアノードオフガスから分離された水と、他の水源からの水の内、不純物含有率の低い水を供給する側からの水供給が優先して改質部へ供給される。ここで、「不純物含有率の低い側からの水供給が優先して改質部へ供給される」とは、不純物含有率の低い側の水の量が、改質水として必要とされる水の量よりも十分に多い場合には、不純物含有率の低い側からのみ水供給を行う、又は、不純物含有率の低い側からの水供給を他方からの水供給よりも多い量で行うことをいう。
【0027】
請求項10に係る燃料電池システムによれば、不純物含有率の低い側からの水を優先して改質水として用いるので、不純物含有率が低く純度の高い改質水を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃料電池システム内の水を改質水として再利用する場合において、純度の高い改質水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの制御系のブロック図である。
図3】第1実施形態に係る燃料電池システムの第1水供給処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の変形例に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図5】第2実施形態に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの第2水供給処理を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態の変形例に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図8】第3実施形態に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図9】第3実施形態に係る燃料電池システムの第3水供給処理を示すフローチャートである。
図10】第3実施形態の変形例に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図11】第4実施形態に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
図12】第4実施形態に係る燃料電池システムの制御系のブロック図である。
図13】第4実施形態に係る燃料電池システムの第4水供給処理を示すフローチャートである。
図14】第4実施形態の変形例に係る燃料電池システムの主要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aの主要構成の概略が示されている。本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aは、主要な構成として、気化器12、改質部14、第1燃料電池セルスタック16、第2燃料電池セルスタック18、燃焼部20、凝縮タンク22、原料供給ブロワ24、水供給ポンプ26、空気供給ブロワ28、及び排ガス水タンク36を備えている。また、図2に示されるように、燃料電池システム10Aにおける水供給を制御する水供給制御部40を備えている。
【0031】
気化器12には、原料ガス管P1の一端が接続されており、原料ガス管P1の他端は図示しないガス源に接続されている。ガス源からは、原料供給ブロワ24によりメタンが気化器12へ送出される。また、気化器12には、水供給管P2が接続されており、水供給ポンプ26により、水(液相)が気化器12へ送出される。気化器12では、水が気化される。気化には、後述する燃焼部20の熱が用いられる。
【0032】
なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。また、バイオガスを用いてもよい。
【0033】
メタン及び水蒸気は、気化器12から配管P3を介して改質部14へ送出される。改質部14は、燃焼部20と隣接されており、燃焼部20との間で熱交換を行うことで加熱される。
【0034】
改質部14は、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード(燃料極)16Aと接続されている。改質部14では、メタンを改質し、水素を含む燃料ガスが生成される。改質部14で生成された燃料ガスは、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0035】
第1燃料電池セルスタック16は固体酸化物形の燃料電池セルスタックであり、積層された複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池セルスタック16は本発明における燃料電池(第1燃料電池)の一例である。個々の燃料電池セルは、電解質層と、当該電解質層の表裏面にそれぞれ積層された第1アノード16A、及び第1カソード(空気極)16Bと、を有している。
【0036】
なお、第2燃料電池セルスタック18についての基本構成は、第1燃料電池セルスタック16と同様であり、第1アノード16Aに対応する第2アノード18A、及び第1カソード16Bに対応する第2カソード18Bを有している。
【0037】
第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bには、酸化ガス管P5の一端が接続されており、酸化ガス管P5の他端に接続された空気供給ブロワ28により空気が供給される。第1カソード16Bでは、下記(1)式に示すように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層を通って第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに到達する。
【0038】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2− …(1)
【0039】
第1カソード16Bには、第1カソード16Bから排出されるカソードオフガスを第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bへ案内するカソードオフガス管P6が接続されている。
なお、本実施形態では、空気の供給を第1カソード16Bから第2カソード18Bへ直列的に供給したが、酸化ガス管P5を第1カソード16Bと第2カソード18Bに分岐して接続し、空気の供給を並列的に行ってもよい。
【0040】
一方、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aでは、下記(2)式及び(3)式に示すように、電解質層を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。第1アノード16Aで生成された電子が第1アノード16Aから外部回路を通って第1カソード16Bに移動することで、各燃料電池セルにおいて発電される。また、各燃料電池セルは、発電時に発熱する。
【0041】
(燃料極反応)
+O2− →HO+2e …(2)
CO+O2− →CO+2e …(3)
【0042】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aにはアノードオフガス管P7の一端が接続されており、アノードオフガス管P7には、第1アノード16Aからアノードオフガスが排出される。アノードオフガスには、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0043】
なお、本発明の燃料電池としては、固体酸化物形の燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に限られるものではなく、アノードオフガスに少なくとも水が含まれる他の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)であってもよい。
【0044】
アノードオフガス管P7の他端は、燃料再生部としての凝縮タンク22と接続されている。凝縮タンク22は、不図示の熱交換部を含んでおり、アノードオフガスから少なくとも水の一部を凝縮させて除去する機能を有している。アノードオフガスから分離された水を、以下「オフガス水」と称する。アノードオフガスは、空気をほとんど含まないため、オフガス水の不純物含有率も低い。したがって、オフガス水の純度は、後述する排ガス水と比較して高い。凝縮タンク22には、凝縮してアノードオフガスから分離されたオフガス水が貯留される。凝縮タンク22には、水位センサ22Aが設けられており、貯留されたオフガス水の水位22LVを検知する。水位センサ22Aは、水供給制御部40と接続されており、検知したオフガス水の水位22LVを水供給制御部40へ送信する。
【0045】
凝縮タンク22の上部出口側には、再生燃料ガス管P9の一端が接続されている。再生燃料ガス管P9の他端は、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aと接続されている。少なくとも水が除去されたアノードオフガスは、再生燃料ガスとなって、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aに供給される。
【0046】
凝縮タンク22の下部には、凝縮タンク22に貯留されたオフガス水を流出させる第1改質水供給路P20の一端が接続されている。第1改質水供給路P20の他端は、水供給管P2と接続されている。第1改質水供給路P20には、バルブV1が設けられている。バルブV1は開閉バルブであり、水供給制御部40と接続されている。バルブV1は、水供給制御部40によって開閉が制御される。なお、凝縮タンク22の下部には、排水管P21が接続されており、必要に応じて(例えば、水量がタンクの容量を超える場合)オフガス水が外部へ排出される。
【0047】
第1改質水供給路P20には、バルブV1よりも下流側の第1合流部J1で、上水供給路P22が合流されている。以下、第1合流部J1から後述する第2合流部J2までの流路を「第1改質水供給路P20B」とし、第1合流部J1よりも上流側の第1改質水供給路P20を「第1改質水供給路P20A」として区別する。なお、本実施形態では、第1改質水供給路P20において、第1合流部J1を第2合流部J2よりも上流側に配置したが、第1合流部J1を第2合流部J2よりも下流側に配置してもよい。上水供給路P22は、上水を水源とするタンクと接続されており、改質部14へ上水を供給する。上水供給路P22の第1合流部J1よりも上流側には、バルブV3が設けられている。バルブV3は開閉バルブであり、水供給制御部40と接続されている。バルブV3は、水供給制御部40によって開閉が制御される。また、上水供給路P22には、バルブV3よりも上流側に上水用イオン交換樹脂34が設けられている。上水用イオン交換樹脂34は、イオン交換により上水中の不純物を除去する。また、上水用イオン交換樹脂の前段にフィルターなどを用い、有機物、無機物などの固形物を除去することも上記の上水用イオン交換樹脂34に含まれる。
【0048】
第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18A及び第2カソード18Bでは、第1燃料電池セルスタック16と同様の反応により発電が行われる。第2アノード18A及び第2カソード18Bから排出された使用済のオフガスは、配管P11、カソードオフガス燃焼導入管P12により燃焼部20へ送出され、燃焼部20で焼却に供される。なお、燃焼部20においてアノードガスラインとカソードガスラインが合流するため、燃焼部20より下流側は空気が混入したガスとなる。本実施形態の燃料電池システム10Aは、第1燃料電池セルスタック16で使用された燃料であるアノードオフガスが再生されて、燃料ガスとして第2燃料電池セルスタック18で再利用される多段式の燃料電池システムとなっている。
【0049】
燃焼部20には、燃焼排ガス管P10の一端が接続されている。燃焼排ガス管P10は、気化器12内を経て熱交換を行い、他端が排ガス水タンク36と接続されている。燃焼排ガスは、燃焼部20から燃焼排ガス管P10を通って排ガス水タンク36へ送出される。
【0050】
排ガス水タンク36は、凝縮器を含んで構成されており、燃焼排ガスから少なくとも水の一部を凝縮させて除去する機能を有している。燃焼排ガスから分離された水を、以下「排ガス水」と称する。燃焼排ガスには、カソード18Bから燃焼部20へ供給された空気で燃焼に使用されていない空気が混入しており、排ガス水の不純物含有率はオフガス水と比較して高い。一方、上水よりも不純物含有率は低い。したがって、排ガス水の純度は、オフガス水よりも低く、上水よりも高い。排ガス水タンク36には、凝縮して燃焼排ガスから分離された排ガス水が貯留される。排ガス水タンク36には、水位センサ36Aが設けられており、貯留された排ガス水の水位36LVを検知する。水位センサ36Aは、水供給制御部40と接続されており、検知した排ガス水の水位36LVを水供給制御部40へ送信する。なお、排ガス水タンク36の下部には、排水管P10Bが接続されており、必要に応じて(例えば、水量がタンクの容量を超える場合)排ガス水が外部へ排出される。
【0051】
排ガス水タンク36の上部出口側には、外部排出管P10Aが接続されており、少なくとも水の一部が除去された燃焼排ガスは、外部排出管P10Aから外部に排出される。
【0052】
排ガス水タンク36の下部には、排ガス水タンク36に貯留された排ガス水を流出させる排ガス水供給路P24の一端が接続されている。排ガス水供給路P24の他端は、第2合流部J2で第1改質水供給路P20Bと接続されている。第2合流部J2よりも下流側を水供給管P2とする。水供給管P2には、水供給ポンプ26よりも上流側に共通イオン交換樹脂30が設けられている。なお、共通イオン交換樹脂30は、水供給ポンプ26よりも下流側に設けてもよい。排ガス水供給路P24には、第2合流部J2よりも上流側に排ガス水用イオン交換樹脂32が設けられ、排ガス水用イオン交換樹脂32よりも下流側にバルブV2が設けられている。排ガス水用イオン交換樹脂32は、イオン交換により排ガス水中の不純物を除去する。バルブV2は開閉バルブであり、水供給制御部40と接続されている。バルブV2は、水供給制御部40によって開閉が制御される。
【0053】
水供給制御部40は、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。メモリには、後述する第1水供給処理等の処理手順や、燃料電池システム10Aの運転時に必要な他のデータや手順等が記憶されている。図2に示されるように、水供給制御部40は、排ガス水タンク36、水位センサ22A、36A、バルブV1、V2、V3と接続されている。
【0054】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0055】
燃料電池システム10Aでは、原料であるメタン及び改質水が、気化器12へ供給される。気化器12では、供給されたメタン及び改質水が混合されると共に、燃焼排ガス管P10を流通する燃焼排ガスから熱を得て加熱され、水が気化され水蒸気となる。
【0056】
メタン及び水蒸気は、気化器12から配管P3を介して改質部14へ送出される。改質部14では、水蒸気改質反応により、水素を含む燃料ガスが生成される。燃料ガスは、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0057】
第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bには、空気が酸化ガス管P5や図示しない熱交換器を経て供給される。これにより、第1燃料電池セルスタック16では、前述の反応により発電が行われる。この発電に伴い燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aからは、アノードオフガスが排出される。また、第1カソード16Bからは、カソードオフガスが排出される。カソードオフガスは、カソードオフガス管P6を通って第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bへ供給される。
【0058】
第1アノード16Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P7に導かれ、図示しない熱交換器を経て凝縮タンク22へ流入され、アノードオフガス中の水蒸気が凝縮し、オフガス水が貯留される。通常時において、バルブV1は開放されており、オフガス水は、第1改質水供給路P20を流れ、共通イオン交換樹脂30を通って気化器12へ供給される。
【0059】
水の一部が除去されたアノードオフガスは、再生燃料ガス管P9により第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aへ供給される。
【0060】
第2燃料電池セルスタック18では、前述の反応により発電が行われ、第2アノード18A、第2カソード18Bでの使用済ガスは、配管P11、P12により各々燃焼部20へ送出され、燃焼部20で焼却に供される。
【0061】
燃焼部20からの燃焼排ガスは、燃焼排ガス管P10へ送出され、気化器12での熱交換を経て排ガス水タンク36へ流入され、燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮し、排ガス水が貯留される。通常時において、バルブV2は閉鎖されている。
【0062】
凝縮タンク22に設けられた水位センサ22A、及び、排ガス水タンク36に設けられた水位センサ36Aからは、水供給制御部40へ各々が検知した水位22LV、36LVが出力される。水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1以下であった場合には、水供給制御部40により、図3に示す第1水供給処理が実行される。
【0063】
第1水供給処理では、凝縮タンク22に貯留されたオフガス水の水量が改質部14への改質水の供給に必要とされる量に対して十分でない場合に、他の水源からの水が改質水として改質部14へ供給される。凝縮タンク22に貯留された水量が改質部14への供給に必要とされる量に対して十分かどうかの基準値であるL1は、必要とされている改質水量、発電により生成される水量、凝縮タンク22での凝縮により得られる水量等により設定される。
【0064】
まず、ステップS10で、水位センサ36Aで検知された水位36LVが、L2を超えているかどうかを判断する。L2は、排ガス水タンク36で貯留された水量が改質部14への供給に必要とされる量に対して十分かどうかを判断するための基準値であり、必要とされている改質水量、排ガス水タンク36での凝縮により得られる水量等により設定される。
【0065】
ステップS10での判断が肯定された場合には、ステップS12でバルブV2を開放すると共に、バルブV1を閉鎖する。これにより、凝縮タンク22からの改質水供給が停止され、排ガス水タンク36から改質水の供給が開始される。排ガス水タンク36からの排ガス水は、排ガス水用イオン交換樹脂32を通り、さらに共通イオン交換樹脂30を通り、気化器12で気化され、改質部14へ供給される。
【0066】
その後、ステップS14で、水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1を超えているかどうかを判断する。判断が否定された場合には、判断が肯定されるまでステップS14を繰り返す。ステップS14での判断が肯定された場合には、ステップS16で、バルブV1を開放すると共に、バルブV2を閉鎖し、第1水供給処理を終了する。
【0067】
ステップS10での判断が否定された場合には、ステップS18でバルブV3を開放すると共に、バルブV1を閉鎖する。これにより、凝縮タンク22からの改質水供給が停止され、上水での改質水の供給が開始される。上水は、上水用イオン交換樹脂34を通り、さらに共通イオン交換樹脂30を通り、気化器12で気化され、改質部14へ供給される。
【0068】
その後、ステップS20で、水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1を超えているかどうかを判断する。判断が否定された場合には、ステップS24へ進み、水位センサ36Aで検知された水位36LVが、L2を超えているかどうかを判断する。ステップS24での判断が肯定された場合には、ステップS26で、バルブV2を開放すると共に、バルブV3を閉鎖する。ステップS24で判断が否定された場合、及び、ステップS26の処理終了後、ステップS20へ戻る。ステップS20での判断が肯定された場合には、ステップS22で、バルブV1を開放すると共に、バルブV2、バルブV3を閉鎖し、第1水供給処理を終了する。これにより、再度、凝縮タンク22に貯留されたオフガス水が改質水として供給される。
【0069】
本実施形態では、凝縮タンク22の水位22LVがL1を超えている場合、すなわち凝縮タンク22に改質水として十分な水が貯留されている場合には、凝縮タンク22から改質水が供給され、排ガス水タンク36からの排ガス水や上水での改質水の供給を行わない。したがって、燃料電池システム10Aにおいて、不純物が少ないオフガス水を優先的に改質水として利用することができる。オフガス水を改質水として利用することにより、不純物を除去するためのイオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。したがって、共通イオン交換樹脂30におけるイオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、凝縮タンク22の水位22LVがL1以下の場合、排ガス水タンク36の水位36LVがL2を超えている場合、すなわち排ガス水タンク36に改質水として十分な水が貯留されている場合には、排ガス水タンク36から改質水が供給され、上水での改質水の供給を行わない。したがって、燃料電池システム10Aにおいて、オフガス水の不足分を排ガス水で補うことができる。上水は空気以外に含まれる不純物の種類が多く、その不純物の一部を除去するために、多量の上水用イオン交換樹脂34が必要とされる。一方で、排ガス水は、化学反応による生成物であり、一部空気などの不純物を含むので、排ガス水用イオン交換樹脂32の充填量は、上水用イオン交換樹脂34よりも少なくすることができる。また、排ガス水用イオン交換樹脂32、上水用イオン交換樹脂34で各々特定の不純物を除去し、その後、各々の水は、水供給管へと送出され、共通イオン交換樹脂30で残りの不純物を除去し、気化器12へ供給される。したがって、共通イオン交換樹脂30へのイオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。また、それぞれの水供給路に応じて、不純物の種類が異なるので、最適なイオン交換樹脂を適量充填することで、各イオン交換樹脂の負担を軽減し、メンテナンスサイクルも長くすることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、凝縮タンク22の水位22LVがL1以下の場合、且つ排ガス水タンク36の水位36LVがL2以下の場合、上水から改質水が供給される。これにより、燃料電池システム10Aにおける、内部の改質水の不足分を外部水で補うことができる。また、上水は、上水用イオン交換樹脂34を経て不純物が除去された後に、水供給管P2へと送出され、共通イオン交換樹脂30を通って気化器12へ供給される。したがって、共通イオン交換樹脂30へのイオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。
【0072】
また、排ガス水用イオン交換樹脂32、上水用イオン交換樹脂34を別々に有しているので、各々の水(排ガス水、上水)に含まれる不純物の量や成分に応じてイオン交換樹脂の量や種類を設定することができる。このように、水源毎に異なるイオン交換樹脂を設けることにより、効果的に不純物を除去することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18を有する多段式の燃料電池システムを例に説明したが、本発明は、図4に示されるように、循環式の燃料電池システム10Bに適用してもよい。
【0074】
燃料電池システム10Bでは、第2燃料電池セルスタック18を有しておらず、再生燃料ガス管P9から送出された再生燃料ガスは2分岐され、一方の再生燃料ガス管P9−1は燃料ガス管P4と接続され、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aへ再生燃料ガスを供給する。また、他方の再生燃料ガス管P9−2は、燃焼部20と接続され、燃焼部20へ再生燃料ガスを供給し、燃焼させる。カソードオフガス管P6は、燃焼部20と接続され、燃焼部20へカソードオフガスを供給し、燃焼を補助する。なお、再生燃料ガス管P9−1は、改質部14と接続して改質部14へ再生燃料ガスを戻し、改質部14を経由して第1アノード16Aへ再生燃料ガスを供給してもよい。
【0075】
燃料電池システム10Bにおいても、燃料電池システム10Aと同様の第1水供給処理を行うことにより、燃料電池システム10Aと同様の効果を奏することができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施形態の燃料電池システム10Cは、図5に示すように、上水の供給が行われず、上水供給路P22、上水用イオン交換樹脂34、及びバルブV3を有していない。その他の構成は、第1実施形態の燃料電池システム10Aと同一である。
【0078】
本実施形態でも、通常時において、バルブV1が開放されており、オフガス水は、第1改質水供給路P20を流れ、共通イオン交換樹脂30を通って気化器12へ供給される。また、バルブV2は閉鎖されている。
【0079】
水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1以下であった場合には、水供給制御部40により、図6に示す第2水供給処理が実行される。
【0080】
第2水供給処理では、凝縮タンク22に貯留された水量が改質部14への供給に必要とされる量に対して十分でない場合に、排ガス水タンク36からの水が改質水として改質部14へ供給される。
【0081】
まず、ステップS12でバルブV2を開放すると共に、バルブV1を閉鎖する。これにより、凝縮タンク22からの改質水供給が停止され、排ガス水タンク36から改質水の供給が開始される。排ガス水タンク36からの排ガス水は、排ガス水用イオン交換樹脂32を通り、さらに共通イオン交換樹脂30を通り、気化器12で気化され、改質部14へ供給される。
【0082】
その後、ステップS14で、水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1を超えているかどうかを判断する。判断が否定された場合には、判断が肯定されるまでステップS14を繰り返す。ステップS14での判断が肯定された場合には、ステップS16で、バルブV1を開放すると共に、バルブV2を閉鎖し、第2水供給処理を終了する。
【0083】
本実施形態でも、凝縮タンク22の水位22LVがL1を超えている場合、すなわち凝縮タンク22に改質水として十分な水が貯留されている場合には、凝縮タンク22から改質水が供給され、排ガス水タンク36からの排ガス水での改質水の供給を行わない。したがって、燃料電池システム10Cにおいて、不純物が少ないオフガス水を優先的に改質水として利用することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
なお、本発明は、本実施形態においても、第1実施形態の燃料電池システム10Bと同様に、図7に示される、循環式の燃料電池システム10Dに適用してもよい。
【0085】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0086】
本実施形態の燃料電池システム10Eは、図8に示すように、排ガス水タンク36を有しておらず、水位センサ36A、排ガス水供給路P24、排ガス水用イオン交換樹脂32、及びバルブV2についても有していない。気化器12で熱交換された燃焼排ガスは、気化器12に接続された外部排出管P10Aから外部へ排出される。その他の構成は、第1実施形態の燃料電池システム10Aと同一である。
【0087】
本実施形態でも、通常時において、バルブV1が開放されており、オフガス水は、第1改質水供給路P20を流れ、共通イオン交換樹脂30を通って気化器12へ供給される。また、バルブV3は閉鎖されている。
【0088】
水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1以下であった場合には、水供給制御部40により、図9に示す第3水供給処理が実行される。
【0089】
第3水供給処理では、凝縮タンク22に貯留された水量が改質部14への供給に必要とされる量に対して十分でない場合に、排ガス水タンク36からの水が改質水として改質部14へ供給される。
【0090】
まず、ステップS18でバルブV3を開放すると共に、バルブV1を閉鎖する。これにより、凝縮タンク22からの改質水供給が停止され、上水から改質水の供給が開始される。上水は、上水用イオン交換樹脂34を通り、さらに共通イオン交換樹脂30を通り、気化器12で気化され、改質部14へ供給される。
【0091】
その後、ステップS20で、水位センサ22Aで検知された水位22LVが、L1を超えているかどうかを判断する。判断が否定された場合には、判断が肯定されるまでステップS20を繰り返す。ステップS20での判断が肯定された場合には、ステップS22で、バルブV1を開放すると共に、バルブV3を閉鎖し、第3水供給処理を終了する。
【0092】
本実施形態でも、凝縮タンク22の水位22LVがL1を超えている場合、すなわち凝縮タンク22に改質水として十分な水が貯留されている場合には、凝縮タンク22から改質水が供給され、上水での改質水の供給を行わない。したがって、燃料電池システム10Eにおいて、不純物が少ないオフガス水を優先的に改質水として利用することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
なお、本発明は、本実施形態においても、第1実施形態の燃料電池システム10Bと同様に、図10に示される、循環式の燃料電池システム10Fに適用してもよい。
【0094】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0095】
本実施形態の燃料電池システム10Gは、図11に示すように、分離部50を備えている。分離部50は、分離膜52により、流入室54と透過室56に区画されている。分離膜52は、少なくとも水(気相)を透過可能な材料で形成されている。分離膜52としては、特に限定されないが、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0096】
流入室54の入口側には、アノードオフガス管P7の下流端が接続され、流入室54の出口側には、再生燃料ガス管P9の上流端が接続されている。分離膜52で水が分離されたアノードオフガスは、再生燃料ガスとして、再生燃料ガス管P9へ送出される。
【0097】
透過室56の入口側には、空気をスイープガスとして流入させるスイープ管P26が接続されている。スイープ管P26には、空気供給ブロワ28が接続されており、空気供給ブロワ28により空気が送出されている。スイープ管P26には、透過室56へ流入させる空気の質量流量を計測可能な流量計58が設けられている。流量計58としては、マスフロメーターを用いることができる。流量計58は、図12に示すように、水供給制御部40と接続されており、計測された空気の質量流量が水供給制御部40へ送られる。
【0098】
透過室56の出口側には、分離ガス管P28の一端が接続されており、分離ガス管P28の他端は、図示しない熱交換器を経て凝縮タンク22と接続されている。分離ガス管P28から、スイープガスとしての空気、及び分離膜52を透過した水、その他のアノードオフガス中の成分が送出され凝縮タンク22へ送られる。凝縮タンク22では、水が凝縮され、オフガス水が貯留される。凝縮タンク22の上部には、排気管P23が接続されている。
【0099】
燃料電池システム10Gでは、オフガス水に含まれる不純物含有率が排ガス水に含まれる不純物含有率以下の場合には、第1実施形態と同様に、凝縮タンク22の水位22LVがL1を超えていれば、改質水の供給は、オフガス水のみで行われる。水位22LVが、L1以下であった場合には、水供給制御部40により、図3に示す第1水供給処理が実行される。
【0100】
本実施形態では、流量計58により計測された空気の質量流量から、オフガス水の不純物含有率を推測する。また、流量計58により計測された空気の質量流量から、第1カソード16Bへ送出される空気の質量流量も推測し、当該空気の質量流量に基づいて排ガス水の不純物含有率を推測する。これにより、オフガス水の不純物含有率が排ガス水の不純物含有率を超えたかどうかを判断することができる。本実施形態では、オフガス水の不純物含有率(AIR22)が排ガス水の不純物含有率(AIR36)を超えた場合に、改質水として使用する水をオフガス水から排ガス水へ切り換える、図13に示される第4水供給処理が実行される。
【0101】
第4水供給処理では、まず、ステップS10で、水位センサ36Aで検知された水位36LVが、L2を超えているかどうかを判断する。すなわち、排ガス水タンク36で貯留された水量が改質部14への供給に必要とされる量に対して十分かどうかを判断する。ステップS10での判断が否定された場合には、ステップS16へ進む。ステップS10での判断が肯定された場合には、ステップS12でバルブV2を開放すると共に、バルブV1を閉鎖する。これにより、凝縮タンク22からの改質水供給が停止され、排ガス水タンク36から改質水の供給が開始される。排ガス水タンク36からの排ガス水は、排ガス水用イオン交換樹脂32を通り、さらに共通イオン交換樹脂30を通り、気化器12で気化され、改質部14へ供給される。
【0102】
その後、ステップS30で、オフガス水の不純物含有率(AIR22)が排ガス水の不純物含有率(AIR36)を超えているかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS10へ戻る。判断が否定された場合には、ステップS16で、バルブV1を開放すると共に、バルブV2を閉鎖し、第4水供給処理を終了する。ステップS10の判断が否定された場合には、排ガス水タンク36からの改質水供給を行わず、凝縮タンク22からの改質水供給を行うため、ステップS16へ進み、バルブV1を開放すると共に、バルブV2を閉鎖して、第4水供給処理を終了する。
【0103】
第4水供給処理は、凝縮タンク22の水位22LVがL1を超えている場合にのみ実行され、水位22LVがL1以下となった場合には、第4水供給処理は実行されず第1水供給処理が優先的に実行される。
【0104】
本実施形態によれば、オフガス水の不純物含有率が排ガス水の不純物含有率を超えた場合に、排ガス水を優先して改質水として用いるので、簡易に純度の高い改質水を得ることができる。
また、本実施形態では、アノードオフガス中の水蒸気を気相のまま分離膜52を用いて分離できるので、第2燃料電池セルスタック18へ送出する再生燃料ガスの温度を高く維持することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、流量計58により計測された空気の質量流量からオフガス水及び排ガス水の不純物含有率を推測したが、オフガス水タンク22、及び排ガス水タンク36に、電気伝導度計を設けて不純物の濃度を測定し、不純物含有率を特定してもよい。この場合には、空気伝導度計での測定データを水供給制御部40へ出力し、不純物含有率の低い水を貯留するタンクからの水が改質水として用いられるように、各バルブの制御を行う。
【0106】
なお、本発明は、本実施形態においても、第1実施形態の燃料電池システム10Bと同様に、図14に示される、循環式の燃料電池システム10Hに適用してもよい。
【0107】
また、上記の第1〜第4実施形態では、イオン交換樹脂を用いてオフガス水、排ガス水、上水から不純物を除去したが、イオン交換樹脂(共通イオン交換樹脂30、排ガス水用イオン交換樹脂32、上水用イオン交換樹脂34)は、必ずしも必要ではない。すべてのイオン交換樹脂をなくしてもよいし、例えば、共通イオン交換樹脂30のみをなくす構成としてもよい。
さらに、燃料電池システムは、2段以上の多段式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H 燃料電池システム
14 改質部
16 第1燃料電池セルスタック、 16A 第1アノード(アノード)
18 第2燃料電池セルスタック
20 燃焼部、 22 凝縮タンク(燃料再生部)
30 共通イオン交換樹脂
32 排ガス水用イオン交換樹脂、 34 上水用イオン交換樹脂
40 水供給制御部、 50 分離部(燃料再生部)
J1 第1合流部、 J2 第2合流部
P9−1 再生燃料ガス管(再生燃料供給管)
P20 第1改質水供給路
P22 上水供給路(第2改質水供給路)
P24 排ガス水供給路(第2改質水供給路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14