(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1底部と、第1側壁と、上方向に開口する第1開口と、を有しており、前記第1側壁に複数の第1貫通孔が形成される第1容器の内部に、第1培地材料を設けるステップと、
前記第1容器内における前記第1培地材料が設けられた領域で対象植物の根が育つ第1育成ステップと、
前記第1育成ステップを開始した後に、第2底部と、第2側壁と、上方に開口しており前記第1開口より大きい第2開口と、を有しており、前記第2側壁に複数の第2貫通孔が形成されており、前記第1容器を内部に収容する第2容器の内部であって、前記第1容器の外部に、前記第2貫通孔の開口径より大きい粒径を有する第2培地粒子を設けるステップと、
前記第2培地粒子が設けられた領域で、前記第1貫通孔を介し前記第1容器の外部へ露出した前記対象植物の根が成長する第2育成ステップと、を有し、
前記第1開口の外周縁は前記第2開口の内周縁より小さい径を有しており、前記第1開口の外周縁と前記第2開口の内周縁との間には空気および水が出入りする隙間が形成されており、前記隙間を介して、前記第1開口の外周縁および前記第2開口の内周縁の上方から前記第2培地粒子を視認でき、
前記第1開口の外周縁が、前記第2開口の内周縁より低い位置にあり、前記第1開口の外周縁と前記第2開口の内周縁との前記隙間は、前記第1開口の外周縁と前記第2容器の前記第2側壁との隙間より広く、
前記第1開口の外周縁が、前記第2容器において最も高い位置にある前記第2貫通孔より高い位置にある植物栽培方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水耕栽培の対象となる対象植物は、成長に伴い根が伸びるため、オーバーフロー孔まで水を溜める従来の容器では、成長後期では水量が過多となる問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、手軽に植物栽培を楽しめる植物栽培器、植物栽培方法及び植物栽培容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る植物栽培器は、第1底部と、第1側壁と、上方向に開口する第1開口と、を有しており、前記第1側壁に複数の第1貫通孔が形成される第1容器と、
第2底部と、第2側壁と、上方に開口しており前記第1開口より大きい第2開口と、を有しており、前記第2側壁に複数の第2貫通孔が形成されており、前記第1容器を内部に収容する第2容器と、
前記第1容器の内部に設けられる第1培地材料と、
前記第1開口の外周縁と前記第2開口の内周縁との隙間を介して上方から視認できるように、前記第2容器の内部であって前記第1容器の外部に設けられ、前記第2貫通孔の開口径より大きい粒径を有する第2培地粒子と、を有する。
【0008】
本発明に係る植物栽培器は、第1容器と第2容器の二重構造であり、第1容器の側面と、第2容器の側面の両方に貫通孔が形成されているため、両方の貫通孔から余分な水分が排出されることにより、対象植物が成長初期にある場合であっても、成長後期にある場合であっても、いずれの時期においても適切な水量を容易に保つことが可能である。また、第1貫通孔および第2貫通孔が複数形成されているため、対象植物の根に対して、新鮮な空気を供給することが可能である。また、第1開口の外周縁と第2開口の内周縁との隙間から第2培地粒子が視認できるようになっているため、この隙間からも空気が出入りすることにより、対象植物の根に対して、新鮮な空気を供給することが可能である。さらに、この隙間を介して上方から、第1培地粒子と第2培地粒子がある領域に、満遍なく水分を供給することができる。
【0009】
本発明に係る植物栽培方法は、第1底部と、第1側壁と、上方向に開口する第1開口と、を有しており、前記第1側壁に複数の第1貫通孔が形成される第1容器の内部に第1培地材料を設けるステップと、
前記第1容器内における前記第1培地材料が設けられた領域で対象植物の根が育つ第1育成ステップと、
前記第1育成ステップを開始した後に、第2底部と、第2側壁と、上方に開口しており前記第1開口より大きい第2開口と、を有しており、前記第2側壁に複数の第2貫通孔が形成されており、前記第1容器を内部に収容する第2容器の内部であって、前記第1容器の外部に、前記第2貫通孔の開口径より大きい粒径を有する第2培地粒子を、前記第1開口の外周縁と前記第2開口の内周縁との隙間を介して上方から視認できるように設けるステップと、
前記第2培地粒子が設けられた領域で、前記第1貫通孔を介し前記第1容器の外部へ露出した前記対象植物の根が成長する第2育成ステップと、を有する。
【0010】
本発明に係る植物栽培方法によれば、第1育成ステップの開始時には第2培地粒子及び第2容器が必要でないため、狭いスペースで育成することができ、使用する培地材料の量も抑制することができる。また、第2培地粒子を設けるまでの間は、第1培地粒子の領域が、より新鮮な空気に触れやすい状態に保たれる。また、第2育成ステップでは、第1貫通孔を介して第1容器の外部へ露出した根が第2培地粒子で成長するため、対象植物を成長段階に応じて移し変えなくても、適切な水分供給を行いながら、対象植物を育てることが可能である。また、第1貫通孔及び第2貫通孔が形成されていることにより、いずれの成長段階においても、適切な水量を容易に保つことが可能であり、また、第1貫通孔および第2貫通孔が複数形成されているため、対象植物の根に対して、新鮮な空気を供給することが可能である。さらに、第1開口の外周縁と第2開口の内周面との隙間から第2培地粒子が視認できるようになっているため、この隙間からも空気や水が出入りすることにより、対象植物の根に対して、新鮮な空気や水を供給することができる。
【0011】
また、本発明に係る植物栽培容器は、第1底部と、第1側壁と、上方向に開口する第1開口と、を有しており、前記第1側壁に複数の第1貫通孔が形成される第1容器と、
第2底部と、第2側壁と、上方に開口しており前記第1開口より大きい第2開口と、を有しており、前記第2側壁に複数の第2貫通孔が形成されており、前記第1容器を内部に収容する第2容器と、を有しており、
開口方向を揃えて前記第1容器を収容した前記第2容器を上方から見て、前記第1容器は、前記第2開口の内部における10〜70%の面積領域を占めることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る植物栽培容器は、第2容器が第1容器を収容して二重構造となっており、第1容器の側面と、第2容器の側面の両方に貫通孔が形成されているため、両方の貫通孔から余分な水分が排出されることにより、対象植物が成長初期にある場合であっても、成長後期にある場合であっても、いずれの成長段階においても適切な水量を容易に保つことが可能である。また、第1貫通孔および第2貫通孔が複数形成されているため、対象植物の根に対して、新鮮な空気を供給することが可能である。また、第1容器を収容した第2容器を上方から見て、前記第1容器は、前記第2開口の内部における10〜70%の面積領域を占めることから、第1容器と第2容器の間からも空気が出入りすることにより、対象植物の根に対して、新鮮な空気を供給することが可能である。さらに、このギャップを介して上方から、第1培地粒子と第2培地粒子がある領域に、満遍なく水分を供給することができる。
【0013】
また、例えば、前記第1容器の前記第1底部と、前記第2容器の前記第2底部とを接続し、前記第1容器を前記第2容器に対して所定の間隔をあけた状態で支持する支持部を有してもよい。
【0014】
このような植物栽培容器は、第1容器と第2容器とが接続されているため、全体を傾けても、第1容器が位置ずれする心配がなく、植物栽培容器を移動させる場合に楽である。また、支持部は、第1容器と第2容器とを底部同士で接続しているため、上方からの水やりや第2培地粒子の設置等の邪魔にならない。また、このような支持部は、第2開口からの空気の出入りも阻害しない。
【0015】
また、たとえば、前記第1容器は、前記第2容器の内部であって前記第1容器の外部に設けられる第2培地粒子を介して、前記第2容器に支持されてもよい。
【0016】
このような植物栽培容器は、構造が単純で製造が容易である。また、不使用時において、複数の第1容器および複数の第2容器を重ねてしまっておくことができるため、狭い収納スペースに片づけておくことができる。
【0017】
また、たとえば、前記第1容器及び前記第2容器は、可視光を透過する透過性材料で構成されていてもよい。
【0018】
このような容器は、対象植物の根の成長状態および容器内の水量を容易に視認することが可能であるため、水の供給過多や供給不足を防止することができる。
【0019】
また、前記第1底部及び前記第2底部には、貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0020】
底部に貫通孔が形成されていないことにより、第1および第2容器は、より長時間にわたって水分を保持できるため、水やりの頻度を下げたり、水の供給不足を防止したりする効果がある。
【0021】
前記第2貫通孔の少なくとも一部は、前記第1容器の前記第1底部より下方に形成されている。
【0022】
第2貫通孔を第1底部より下方に形成することにより、水分の供給過多を好適に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る水耕栽培容器20を示す概略斜視図である。水耕栽培容器20は、容器の本体部分の下部に、ステム(柄)とベース(台)が接続するワイングラスのような外観形状を有している。ただし、水耕栽培容器20の形状としてはこれに限定されない。なお、明細書及び特許請求の範囲の内容から理解されることではあるが、本発明の説明において、「水耕栽培」の文言は、特に注釈のない限り、人工固形培地、例えば無機質の人工粒状培地などを用いる養液栽培を含む意味である。
【0025】
図1に示すように、水耕栽培容器20は、第1容器30と、第2容器40と、支持部50と、下方支持部54とを有する。水耕栽培容器20の本体部分を構成する第1容器30と第2容器40とは、2重の入れ子構造となっており、第1容器30は、第2容器40の内部に収容されている。
【0026】
図1に示すように、第1容器30は、第2容器40の内部に収容されており、第2容器40より小さい。第1容器30は、容器の底である第1底部32と、側壁である第1側壁34と、上方に開口する第1開口36とを有している。第1容器30は、第1底部32から第1開口36へ向けて、第1側壁34の内径が漸次拡大する逆円錐台形状を有している。ただし、第1容器30の形状としてはこれに限定されず、立方体、直方体などの多角柱形状や、逆円錐形状、円柱形状、角柱形状などの他の形状であってもよい。
【0027】
図1及び
図2に示すように、第1側壁34には、複数の貫通孔である第1貫通孔34a、34bが形成されている。
図2に示すように、第1貫通孔34aは、第1容器30の高さ方向の中央位置付近に形成されており、第1貫通孔34bは、第1貫通孔34aより第1底部32の近くに形成されている。第1貫通孔34a、34bは、第1側壁34の周方向に沿って略等間隔に、それぞれ8か所ずつ形成されている。第1容器30の高さ方向の長さをL1とすると、第1貫通孔34a(貫通孔中央)の第1底部32からの高さL2は、0.4L1〜0.7L1程度、第1貫通孔34bの第1底部32からの高さL3は、0.15L1〜0.35L1程度であるが、特に限定されない。
【0028】
また、第1容器30の第1底部32の直径L4は、0.9〜1.1L1程度、第1容器30の第1開口36の直径L5は、1.0〜1.2L1程度とすることができる。また、第1容器30の高さ方向の長さL1は、水耕栽培の対象植物や、容器で育成する苗(植物)の植え付け数に応じて適宜調整することができるが、例えば3〜7cm程度とすることができる。ただし、これらのL1〜L5の値および範囲は一例にすぎず、第1容器30が、
図2等に示す範囲外の寸法を有することもあり得る。
【0029】
第1貫通孔34a、34bは、周方向に45°間隔で形成されているが、第1貫通孔34a、34bの形成数、形成間隔は、複数であれば特に限定されない。第1貫通孔34a、34bは略円形の開口形状を有しており、その開口径である直径D1は、
図4に示す第1培地粒子58の粒径より小さく、たとえば、3〜10mm程度とすることができる。
【0030】
なお、第1底部32には貫通孔が形成されていないことが好ましい。これにより、第1容器30の内部における第1底部32から第1貫通孔34bまでの領域に、水等の液体を、過剰でない程度に保持できる。また、第1容器30の内部に、過剰に水が保持されないようにするために、
図2に示すように、第1貫通孔34a、34bの少なくとも1つは、第1容器30の高さ方向の中央位置より下に形成されていることが好ましい。
【0031】
図1に示すように、第2容器40は、第2容器40を内部に収容しており、第2容器40より大きい。第2容器40と第1容器30とは、略相似形状の関係であるが、第2容器40は第1容器30を収容できる大きさを有していればよく、第1容器30とは異なる形状を有していてもよい。
【0032】
第2容器40は、容器の底である第2底部42と、側壁である第2側壁44と、上方に開口する第2開口46とを有している。第2容器40は、第1容器30と同様に、第2底部42から第2開口46へ向けて、第2側壁44の内径が漸次拡大する逆円錐台形状を有している。
図1及び
図2に示すように、第2側壁44には、複数の貫通孔である第2貫通孔44a、44bが形成されている。
図2に示すように、第2貫通孔44aは、第2容器40の高さ方向の中央位置付近に形成されており、第2貫通孔44bは、第2貫通孔44aより第2底部42の近くに形成されている。第2貫通孔44a、44bは、第2側壁44の周方向に沿って略等間隔に、それぞれ8か所ずつ形成されている。
【0033】
図2に示すように、第2貫通孔44a、44bの第2底部42からの高さT2、T3と高さ方向の寸法T1との関係は、第1容器30に関する高さL2、L3と高さ方向の寸法L1の関係と同様である。第2容器40の第2底部42の直径T4、および第2開口46の直径T5についても同様である。第2容器40の高さ方向の寸法T1は、特に限定されないが、第1容器30の高さ方向の寸法L1に対して、1.5〜2.5倍程度とすることができ、たとえば、6〜15cm程度とすることができる。
【0034】
第1容器30及び第2容器40は、逆円錐台形であってもよく、直胴の円筒形であってもよく、特に限定されない。第1容器30と第2容器40の直径L4、L5、T4、T5は、栽培対象となる植物に応じて変更されるが、一例を挙げると以下の通りである。すなわち、入れ子容器である第1容器30の内部の直径L4、L5は、栽培する植物の茎の大きさに適したサイズにするのが望ましく、また、外側の容器である第2容器40の直径T4、T5は、栽培する植物の根を十分に成長させる空間を取るのが望ましい。例えば、内側を規定する第1容器30の直径L4、L5を2〜3cmとする場合、外枠を規定する第2容器40の直径T4、T5は、根の張りが少ない植物であれば、10cm程度でも良い。大型の植物の場合、第1容器30の内部の直径L4、L5を10cm程度取り、外側の容器である第2容器40の直径T4、T5は30cm以上取ることが望ましい。また、置き場所のスペースに制限がある場合は、内部(第1容器30)と外部(第2容器40)の直径の差を抑えて、その分容器30、40の高さを伸ばして、根が下方向に十分伸びることができるサイズを取ることが望ましい。
【0035】
第2貫通孔44a、44bは、第1貫通孔34a、34bと同様に、周方向に45°間隔で形成されているが、第2貫通孔44a、44bの形成数、形成間隔は、複数であれば特に限定されない。第2貫通孔44a、44bは略円形の開口形状を有しており、その開口径である直径D2は、
図4に示す第2培地粒子68の粒径より小さく、たとえば、3〜10mm程度とすることができる。
【0036】
なお、第2底部42には貫通孔が形成されていないことが好ましい。これにより、第2容器40の内部における第2底部42から第2貫通孔44bまでの領域に、水等の液体を、過剰でない程度に保持できる。なお、第2容器40の内部に、過剰に水が保持されないよういするために、第2貫通孔44a、44bの少なくとも一部は、第2容器40の高さ方向の中央位置より下に形成されていることが好ましい。また、同様の理由により、第2貫通孔44a、44bの少なくとも一部は、第1容器30の第1底部32より下方に形成されていることが好ましい。
【0037】
図1に示すように、支持部50は、第2容器40の内部であって第1容器30の外部に設けられており、第1容器30の第1底部32と、第2容器40の第2底部42とを接続する。支持部50は柱状の外形状を有しており、第1容器30を第2容器40に対して、高さ方向に所定の間隔T6をあけた状態で支持する。支持部50によって形成される所定の間隔T6は、第2容器40の高さ方向の寸法T1との関係において、0.2〜0.4T1程度とすることができるが、
図6に示すように、第1底部32と第2底部42との間に第2培地粒子68が設置できる間隔であれば、特に限定されない。
【0038】
図1に示す第1容器30及び第2容器40の材質は特に限定されないが、バイオプラスチックや他のプラスチック、ガラス、容器用の紙、陶器などを挙げることができる。また、第1容器30及び第2容器40は、可視光を透過する透過性材料で構成されていることが好ましい。第1容器30及び第2容器40を透過性材料で作成することにより、対象植物の根の生育状態等を、容易に観察することが可能である。また、第1容器30及び第2容器40を、素材自体が通気性を有する材質(たとえば、紙や、素焼きの陶器など)とすることも好ましい。
【0039】
図3は、
図1に示す水耕栽培容器20を上方から見た上面図である。第1容器30は、第1開口36と第2開口46とがいずれも上方を向くように、開口方向を揃えて第2容器40に収容されている。
図3に示すように、第2容器40を上方から見た場合、第1容器30は、第2開口46内部における好ましくは10〜70%、さらに好ましくは10〜50%の面積領域を占めており、さらに好ましくは第2開口46の内周縁46bと第1開口36の外周縁36aとの間には、広いギャップが形成されている。
【0040】
図6は、
図1に示す水耕栽培容器20に対して、第1培地粒子35及び第2培地粒子68を設けることにより、水耕栽培器10を構成した状態を表すものである。
図5に示すように、第1培地粒子58は、第1容器30の内部に設けられ、第2培地粒子68は、第2容器40の内部であって第1容器30の外部に設けられる。
【0041】
第1培地材料としての第1培地粒子58としては、適度な保水性や保肥性を有するものであれば特に限定されないが、たとえば、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、炭、セラミックス、発砲煉瓦、竹や木材のチップ又は粉末、及びこれらの混合物などを使用することができる。第1培地粒子58は、銅、亜鉛、モリブデンなどの微量要素や、カルシウム、マグネシウム、リン等の植物の成長に必要な成分や、銅や炭などの殺菌・清浄化効果のある成分を含んでいてもよい。第1培地粒子58は、第1貫通孔34a、34bの直径D1(
図4参照)より大きい粒径を有しており、第1貫通孔34a、34bを介して、第1容器30の内部から水が流出する際にも、第1培地粒子58は第1容器30から流出せず、第1容器30の内部にとどまる。第1容器30内には、第1培地粒子58に加えて、又は第1培地粒子58に代えて、スポンジやロックウールなどの他の培地材料や、非保水性の粒子、固形肥料などの他の粒子又は粉末等を設けてもよい。
【0042】
図6に示す第2培地粒子68としては、第1培地粒子58と同様、適度な保水性や保肥性を有するものであれば特に限定されない。第2培地粒子68は、第2貫通孔44a、44bの直径D2より大きい粒径を有しており、第2貫通孔44a、44bを介して、第2容器40の内部から水が流出する際にも、第2培地粒子68は第2容器40の内部から流出せず、第2容器40の内部にとどまる。第2培地粒子68の材質、成分および粒径は、第1培地粒子58と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第2容器40の内部であって第1容器30の外部には、第2培地粒子68に加えて、非保水性の粒子や、固形肥料など、他の粒子又は粉末等を設けてもよい。
【0043】
図6から理解できるように、水耕栽培器10の第2培地粒子68は、第1開口36の外周縁36aと第2開口46の内周縁46bとの隙間を介して、上方から視認できるように設けられる。これにより、第2培地粒子68は、外周縁36aと内周縁46bとの隙間を介して新鮮な空気に触れることが可能であり、また、水やりの際にも、水耕栽培容器20内に設けられた第1培地粒子58及び第2培地粒子68に、満遍なく水分を補充することができる。
【0044】
図1に示すように、水耕栽培容器20の下方支持部54は、第2容器40の第2底部42の中央から下方に延びるステムと、ステムの下端に接続する円盤状のベースを有している。下方支持部54により、第2容器40及び第2容器40に収容される第1容器30は、設置面から所定の高さに配置される。下方支持部54は、第1容器30及び第2容器40を高い位置に配置することにより、水耕栽培される植物へ新鮮な空気を供給したり、対象植物へ適度な光を供給したりする効果があり、また、水耕栽培容器20を移動させる際の持ち手として機能する。ただし、第2実施形態に示す水耕栽培容器120のように、下方支持部54を有しない構造とすることも可能である。
【0045】
図1に示す水耕栽培容器20の製造方法は特に限定されず、たとえばプラスチック成形、ガラス成形、鋳物形成、切削加工、接着や溶接のような接合などにより、製造することができる。
【0046】
以下に、
図1に示す水耕栽培容器20を用いて行う水耕栽培方法の一例を説明する。
図4は、水耕栽培の初期段階を表す概略断面図である。水耕栽培の最初のステップでは、水耕栽培容器20の第1容器30の内部に、第1培地材料としての第1培地粒子58を設ける。次に、第1育成ステップとして、第1培地粒子58が設けられた領域で対象植物72の根を育成する。第1育成ステップの開始は、水耕栽培容器20以外の培地で発芽させた対象植物の苗を、第1培地粒子58に植え替えることによって行ってもよく、発芽した苗を培地ごと第1容器30内に設置することにより行ってもよく、また、第1容器30の内部に種を蒔いて発芽させることによって行ってもよい。水耕栽培の対象植物としては、水耕栽培容器20で育成できるものであれば特に限定されないが、たとえば、ミントやバジルのようなハーブや、レタスやルッコラのような葉野菜や、ミニキャロットやラディッシュのような根菜類などが挙げられる。なお、水耕栽培容器20は、屋内栽培に適しており、屋内栽培では、虫が付きにくく、農薬を使う必要がほとんど無いなどの利点がある。ただし、水耕栽培容器20を用いた水耕栽培は、屋内栽培に限定されず、屋外で行うことも可能である。
【0047】
図4に示す初期段階では、対象植物72は、主に第1容器30の内部で成長する。育成者は、第1容器30の第1開口36から、第1培地粒子58に水や液体肥料を加えることにより、対象植物72を成長させる。第1容器30に過剰な水が与えられた場合であっても、第1容器30の第1側壁34に形成された第1貫通孔34a、34bから余分な水が流出することにより、対象植物72に対して適量の水を与えることができる。また、第1貫通孔34a、34bが、高さ方向に2段に形成されていることにより、第1培地粒子58が設けられている領域に、新鮮な空気を効率的に供給できる。なお、
図1に示す初期段階では、第2容器40の内部であって第1容器30の外部の領域には、第2培地粒子68を設ける必要がなく、これにより、第1容器30内の対象植物72の生育状態を、容易に観察することができる。
【0048】
図5は、
図4に示す初期段階の後の水耕栽培の中期段階を表す概略断面図である。先述した第1育成ステップを継続すると、第1培地粒子58が設けられた領域で対象植物74の根74aが成長し、
図5に示すように、根74aの一部が第1貫通孔34a、34bから露出する。第1育成ステップを開始した後、
図5に示すように対象植物74が成長した段階において、育成者は、第2容器40の内部であって第1容器30の外部の領域に、第2培地粒子68(
図6参照)を設ける。なお、第2培地粒子68の設置は、
図5に示すように対象植物74の根74aの一部が第1貫通孔34a、34bから露出する後に行ってもよく、露出する前に行ってもよい。
【0049】
図6は、
図5に示す中期段階の後の水耕栽培の後期段階を表す概略断面図である。
図5に示す後期段階では、第2培地粒子68が設けられた領域で、第1貫通孔34a、34bを介し第1容器30の外部へ露出した対象植物76の根76aが成長する第2育成ステップが行われる。第1容器30及び第1培地粒子58は、
図6に示す後期段階でも除去されず、第2容器40内部に設置されたままになっている。したがって、第2育成ステップが開始された後においても、第1育成ステップは引き続き継続される。
【0050】
図6に示す後期段階では、育成者は、第2容器40の第2開口46を介して、第2培地粒子68及び第1培地粒子58が設けられた領域に水や液体肥料を加えることにより、対象植物76を成長させる。第2容器40に過剰な水が与えられた場合であっても、第2容器40の第2側壁44に形成された第2貫通孔44a、44bから余分な水が流出することにより、対象植物76に対して適量の水を与えることができる。また、第2貫通孔44a、44bが、高さ方向に2段に形成されており、また、第1開口36の外周縁36aと第2開口46の内周縁46bとのギャップが大きく形成されていることにより、第2培地粒子68が設けられている領域に、新鮮な空気を効率的に供給できる。
【0051】
このように、水耕栽培容器20を用いた水耕栽培によれば、側壁34、44に貫通孔34a、34b、44a、44bが形成された2つの大きさの異なる容器を入れ子状に組み合わせ、成長段階に合わせて第2培地粒子68を追加することにより、いずれの成長段階においても、対象植物72〜76に適切な水分を供給することができるため、手軽に水耕栽培を楽しむことができる。また、第1貫通孔34a、34bを介して根が第1容器30の外部へ露出するため、対処植物を第1容器30から取り出して植え替える必要がない。
【0052】
また、水耕栽培容器20を用いた水耕栽培によれば、貫通孔34a、34b、44a、44bおよび第1および第2開口36、46を介して新鮮な空気が第1容器30及び第2容器40の内部に容易に流入できるため、対象植物72〜76を手軽に育てることができる。また、水耕栽培容器20を用いた水耕栽培によれば、上方の第1開口36や第2開口46から加えられた水が、容器内にある古い水や汚れなどを伴って、側壁34、44の貫通孔34a、34b、44a、44bから流出するため、容器内の根に接触する水を清浄化する水替え作業を、容易に行うことができる。このように、水耕栽培容器20は、容器内が植物の生育に適切な状態に保たれるように、容器内の水質等を容易に管理することができる。
【0053】
第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係る水耕栽培容器120を表す概略斜視図である。水耕栽培容器120に関しては、
図1に示す水耕栽培容器20との相違点のみ説明を行い、共通点については説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、水耕栽培容器120は、第1容器130と第2容器40とを有する。第1容器130と第2容器40とは分離した逆円錐台形状を有しており、
図1に示すような支持部50や下方支持部54を有さない。第1容器130は、第1底部32と、第1貫通孔134a、134bが形成された第1側壁134と、第1開口36とを有しており、第1貫通孔134a、134の直径が異なることを除き、
図1に示す第1容器30と同様である。
【0055】
第1容器130は、第2容器40とは、第1貫通孔134a、134bと第2貫通孔44a、44bが同一の直径であることを除き、互いに所定比率の相似形状である。第1貫通孔134a、134bと第2貫通孔44a、44bとが同一の直径であることにより、第1培地粒子58および第2培地粒子68として、共通の培地粒子を使いやすくなる。一方、
図1に示すように、第1貫通孔34a、34bの直径を第2貫通孔44a、44bの直径より小さくすることにより、植物の生育状態に合わせて、第1培地粒子58として第2培地粒子68より小粒径のものを使いやすくなる。なお、
図7に示す第2容器40は、
図1に示す第2容器40と同様である。
【0056】
図8は、
図7に示す水耕栽培容器120を用いた水耕栽培の初期段階を表す概略断面図である。初期段階では、水耕栽培容器120の第1容器130の内部に、第1培地材料としての第1培地粒子58を設けて使用し、第2容器40は用いない。
【0057】
図9は、
図7に示す水耕栽培容器120を用いた水耕栽培の後期段階を表す概略断面図であり、水耕栽培容器120に対して第1培地粒子58及び第2培地粒子68を用いた水耕栽培器110を表している。
図9に示す後期段階では、第2培地粒子68が設けられた領域で、第1貫通孔134a、134bを介し第1容器130の外部へ露出した対象植物76の根76aが成長する、第2育成ステップが行われる。
図9に示すように、第2容器40の内部であって第1容器130の外部には第2培地粒子68が設けられ、第1容器130は、第2培地粒子68を介して第2容器40に支持される。なお、その他の水耕栽培方法及び効果については、第1実施形態に係る水耕栽培容器20と同様である。
【0058】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではなく、他の実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。例えば、第1及び第2容器30、40、130に形成される貫通孔34a、34b、44a、44b、134a、134bの形状は円形に限定されず、楕円、長孔、角孔など、他の形状を有するものであってもよい。また、
図10は、変形例に係る水耕栽培容器220を表す模式分解図である。水耕栽培容器220は、組み立て状態においては
図1に示す水耕栽培容器20と概ね同様の外形上を有しているが、
図10に示すように、第1容器230、支持部250、第2容器240及び下方支持部254が、互いに着脱自在である。
【0059】
第1容器230の第1底部232の下面には、支持部250の上方凸部250aが係合する係合凹部232aが形成されており、第1容器230は、支持部250に対して着脱自在である。また、第2容器240の第2底部242の上面には、支持部250の下方凸部250bが係合する係合凹部242aが形成されており、第2容器240は、支持部250に対して着脱自在である。また、第1容器230と第2容器240とは、支持部250を介して連結可能である。
【0060】
さらに、第2容器240の第2底部242の下面には、下方支持部254の上方凸部254aが係合する係合凹部242bが形成されており、第2容器240は、下方支持部254に対して着脱自在である。したがって、
図10に示す水耕栽培容器220では、第2容器240に対して、必要に応じて下方支持部254を着脱することができる。
【0061】
図10に示す水耕栽培容器220は、第1容器230と第2容器240とを連結した状態で使用することにより、
図1に示す水耕栽培容器20と同様の水耕栽培を行うこともできるし、第1容器230と第2容器240とを分離した状態で使用することにより、
図7に示す水耕栽培容器120と同様の水耕栽培を行うこともできる。
【0062】
その他、実施形態で示す容器、貫通孔のサイズ、貫通孔の位置などは、栽培する植物の種類や生育態様などに応じて、適宜変更可能であることは言うまでもない。たとえば、カブやジャガイモ、大根、カボチャなど、数十センチ以上のサイズに生育する野菜を栽培する際にも、上述した水耕栽培容器20、220を用いることが可能であり、その場合は、第1容器30および第2容器40の高さ方向の寸法を、30cm以上とする場合もある。
【0063】
上述した水耕栽培容器20、120、220に用いる第1培地材料及び第2培地材料としては、上述した第1培地粒子58及び第2培地粒子68のいずれか一方に代えて、或いは第1培地粒子58及び第2培地粒子68の双方に代えて、土壌を用いてもよい。すなわち、水耕栽培容器20、120、220は、水耕栽培容器としてだけでなく、土壌を用いた土耕栽培など、水耕栽培以外の植物栽培容器としても好適である。培地の一部に土壌を用い、水耕栽培容器20、120、220を、土耕栽培の植物栽培容器として用いて植物を栽培した場合であっても、本発明に係る植物栽培器および植物栽培容器は、上述したような水耕栽培器および水耕栽培容器として用いて植物を栽培した場合と同様の効果を奏する。
【0064】
なお、水耕栽培容器20、120、220を土耕栽培の植物栽培容器として用いる場合や、細粒の培地粒子を用いた水耕栽培を行う場合は、第1貫通孔34a、34b、134a、134b及び第2貫通孔44a、44bから土壌や培地粒子が流出することを防止するために、ネット、アミ、格子などの通水・通気性の土壌流出防止材を、第1貫通孔34a、34b、134a、134b及び第2貫通孔44a、44bに設けてもよい。この場合、土壌流出防止材は、植物の根が、成長に伴い少なくとも一部の土壌流出防止材を突破して、第1貫通孔34a、34b、134a、134bや第2貫通孔44a、44bを貫通できるように、設けられることが好ましい。
【0065】
また、貫通孔の開口形状については、図面に示すような略円形に限定されるものではなく、四角形、星形、ハート形など、円形以外の形状であってもよい。また、水耕栽培容器は、組み立て構造であっても一体構造であってもよく、たとえば、支持部50、250は、第1容器20、220および第2容器40、240のいずれか一方または双方に固定されていてもよい。