(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上部構造体の両側に配置された燃料タンクは、それぞれ同一形状で一対に形成され、かつ船体中心線を間にして左右対象となる状態に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【背景技術】
【0002】
従来より貨物船やコンテナ船、タンカー等の各種船舶では、重油を航行の燃料とするものが多かった。しかしながら、重油の燃焼によって生じる排ガスに含まれる有害物質による環境汚染が問題となり、国際条約等によって重油の使用は年々規制が強化されている。従って、昨今では重油に代わる環境保全に適した燃料として、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の液化ガスを航行の燃料とする船舶が開発されている。
【0003】
このように液化ガスを航行の燃料とする船舶においては、液化ガスの燃料タンクを備える必要があるが、液化ガス燃料は重油等に比べ密度が低いので、タンク自体の容量を比較的大きくする必要があった。そのため、液化ガスの燃料タンクを船体内部に設置するとなると、船体内部において貨物を積載する空間の容積が減少してしまうという問題が生じる。
【0004】
かかる問題を解決するために、液化ガス燃料タンクを、船体内部ではなく上甲板上に設置する船舶が提案されている。例えば、特許文献1に記載された船舶によれば、船倉区画の後方の上甲板上に船橋構造物を備え、同じく上甲板上に燃料タンクが設置されている。ここで燃料タンクは、平面視で船橋構造物の2つの側構造物の間、あるいは船橋構造物から独立した2つの煙突構造物の間に挟まれるように配置され、船体幅方向の中心軸線上に位置していた。
【0005】
ところで、本件出願人は、特許文献2に記載されたように、船舶の上甲板上に設置する上部構造体に関して、居住区とこれに隣接する機関室ケーシングとを有する上部構造体を水平断面が流線形状に形成して、居住区と機関室ケーシングを同一の高さとし、空気抵抗が小さくなるように工夫した船舶を既に提案している。ここで上部構造体は、船体の船尾側の上甲板上において、船体幅方向の中心軸線上に位置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の船舶では、特許文献2に記載された上部構造体を前提として、特許文献1の記載と同様に上甲板上に燃料タンクを設置する場合には、特許文献2に記載の上部構造体と、特許文献1に記載の燃料タンクとが互いに干渉しないようにするために、それぞれ船舶の前後方向に並べて配置する必要がある。
【0008】
このように、上部構造体や燃料タンクが船舶の前後方向に亘って長く配置されると、特に貨物船の場合は、燃料タンクの下方に位置する貨物艙には貨物を積載できなくなる。従って、上甲板上の面積が前後方向に長い領域に亘り占有されるだけでなく、船体内部における貨物を積載する空間の容積も減少するという問題が生じる。また、特許文献1に記載の燃料タンクでは、万一故障する等して不具合が生じても、一つの場合は代価がないという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、貨物の積載容積を減少させることなく燃料タンクを設置することを可能とし、しかも、何れか一方の燃料タンクに不具合が生じても、他方の燃料タンクで代用することができる船舶を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る船舶(10)は、前述した課題を解決するためになされたものであり、船体(11)の上甲板(12)上に上部構造体(20)が設置された船舶(10)において、前記上甲板(12)上における前記上部構造体(20)の船体前後方向と直交する両側に、それぞれ燃料タンク(31)が配置され
、前記上部構造体(20)の下層部(20B)が、該下層部(20B)より上方に位置する本体部(20A)の両側端よりも船体(11)の舷側に所定幅で突出した突出部(27)を備え、前記燃料タンク(31)を、前記突出部(27)上に平面視で少なくとも一部が重なる位置に配置させる。
【0011】
このように、船舶(10)の上甲板(12)上における上部構造体(20)の両側に、それぞれスペースを確保して燃料タンク(31)を配置することにより、上甲板(12)上の面積を有効に活用して貨物の積載容積の減少を防ぐことができる。また、燃料タンク(31)は、上部構造体(20)を間にして互いに分離した状態で別々に設置されるから、一方の燃料タンク(31)に不具合が生じても、他方の燃料タンク(31)への影響が少なく代用することができる。
さらに、上部構造体(20)の一部を、燃料タンク(31)を上甲板(12)上に離隔して配置するための支持構造の一部として活用することができる。
【0012】
また、前記船舶(10)において、前記上部構造体(20)の両側に配置された燃料タンク(31)は、それぞれ同一形状で一対に形成し、かつ船体中心線を間にして左右対象となる状態に配置すると良い。これにより、燃料タンク(31)を維持管理しやすいと共に、船舶(10)における重量のバランスも取りやすくなる。
【0014】
さらに、前記船舶(10)において、前記燃料タンク(31)は、船舶(10)の主推進機関で使用する液化ガス燃料を貯蔵する液化ガス燃料タンク(31)として、前記液化ガス燃料タンク(31)とは別に、同じく船舶(10)の主推進機関で使用する燃料油を貯蔵する燃料油タンク(33)も備えるようにして、前記燃料油タンク(33)を、前記液化ガス燃料タンク(31)の下方に位置する船体(11)内部に配置すると良い。
【0015】
これにより、液化ガス燃料タンク(31)の液化ガス燃料と燃料油タンク(33)の燃料油との両方を主推進機関等で使用することができる。また、液化ガス燃料タンク(31)と燃料油タンク(33)とが上甲板(12)を間にして上下に位置するため、互いに距離的に近く各タンク(31,33)からの燃料の供給システムを前記主推進機関等に対してまとめて配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る船舶によれば、貨物の積載容積を減少させることなく燃料タンクを設置することを可能とし、しかも、何れか一方の燃料タンクに不具合が生じても、他方の燃料タンクで代用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る船舶10は、重油等の燃料油の他、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の液化ガスを航行の燃料とする。以下、本実施の形態では、船舶10を大型のばら積み貨物船に適用した例について説明する。なお、本実施形態では、説明の便宜上、船舶10における船首側を「前方」、船尾側を「後方」と称する。
【0019】
図1および
図2に示すように、船舶10は、船体11の上甲板12上に上部構造体20が設置され、上甲板12上における上部構造体20の船体前後方向と直交する両側に、それぞれ液化ガス燃料タンク31が配置されている。上部構造体20は、詳しくは後述するが、船員の居住設備や操舵設備等を備える構造物である。上部構造体20は、船体前後方向に長い流線形状であり、その船体前後方向に延びる中心線が、船体中心線CL(
図2参照)上に沿って設置されている。
【0020】
上部構造体20の両側に設置された液化ガス燃料タンク31は、後述する主推進機関や発電用機関で使用されるLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の液化ガス燃料を貯蔵するものである。ここでLNG(液化天然ガス)は、メタンを主成分とした天然ガスを冷却し液化したものである。LPG(液化石油ガス)は、石油系炭化水素のうち炭素原子の数が3または4のもの(例えばプロパン等)やこれらを主成分とする混合物を液化したものである。特にLNG(液化天然ガス)は、従来の燃料油に比べて燃焼時の二酸化炭素の排出量が少なく、燃焼させても窒素酸化物や硫黄酸化物は殆ど排出されないため、環境保全に適した燃料として近年注目されている。
【0021】
液化ガス燃料タンク31は、燃料ガスを主に液体状態で貯蔵するが、貯蔵する燃料ガスの種類に応じた断熱構造や密封構造を備えるように構成されている。例えば、天然ガスの場合は、液化温度は常圧で約−162℃の極低温であるため、極低温に維持できる断熱構造で高圧にも耐えられる圧力タンクとして構成される。液化ガス燃料タンク31は、上部構造体20の両側において、それぞれ同一形状で一対に形成され、かつ船体中心線CLを間にして左右対象となる状態に配置されている。
【0022】
液化ガス燃料タンク31の具体的な形状は、例えば、全体としては軸方向に延びる円筒形状であり、前後端は半球形状に形成されている。ただし、液化ガス燃料タンク31の具体的な形状や大きさは設計事項であり、図示した円筒形状以外の立方体等の形状としても良い。また、液化ガス燃料タンク31は、左右両側に一つずつとは限らず、例えば、複数ずつ上下に積み重ねるように配置しても良い。
【0023】
また、液化ガス燃料タンク31は、外部に露出しないようにカバーや囲いで覆うことにより、密閉性や安全性を高めると良い。さらに、液化ガス燃料タンク31は、上甲板12上に支持構造を介して、上甲板12から離隔した状態に設置すると良い。ここで支持構造は、既存の上甲板12を特に設計変更することなく固定できるものが良く、例えば、図示省略したが上甲板12上にベースプレートを固定し、このベースプレートに複数の支持台を取り付けて、各支持台を介して液化ガス燃料タンク31を上甲板12より上方に離隔した状態でボルトや溶接等の各種固着手段を用いて設置できるもの等である。
【0024】
液化ガス燃料タンク31は、前記支持構造の他、後述する上部構造体20の下層部20Bによっても支持すると良い。すなわち、上部構造体20の下層部20Bは、上方に位置する本体部20Aの両側端よりも船体11の舷側に所定幅で突出した突出部27を備えており、液化ガス燃料タンク31を、前記突出部27上に平面視で少なくとも一部が重なる位置に配置すれば、該突出部27によっても支持できる。詳しくは
図2に示すように、液化ガス燃料タンク31の前半部分の平面視で中心軸より内側が前記突出部27上に位置しており、該突出部27上に支持することができる。
【0025】
液化ガス燃料タンク31は何れの支持構造で支持するにせよ、液化ガス燃料タンク31の下側と上甲板12との間に隙間を確保することで、従来通りの係船装置を配置したり人の通行スペースを確保したりすることができる。液化ガス燃料タンク31の後方には、液化ガス燃料タンク31に貯蔵された液化ガス燃料を主推進機関や発電用機関まで供給するための関連機器を設置する燃料調整室32が配置されている。
【0026】
図1および
図2に示すように、船体11内部は、船舶10の前後方向に並ぶ隔壁13によって複数の区画に仕切られている。各区画のうち、最前方に位置する船首端区画と、最後方に位置する船尾端区画は、それぞれバラストタンク14A,14Bとして形成されている。各バラストタンク14A,14Bは、船体11の姿勢を調整するための海水を保持する。
【0027】
船尾端のバラストタンク14Bの手前(前方)に位置する区画は、機関室15として形成されている。機関室15には、図示省略したが主推進機関や発電用機関等が設置されている。ここで主推進機関とは、前記液化ガス燃料タンク31や後述の燃料油タンク33から供給される燃料を用いて駆動され、プロペラ19a(
図1参照)を回転させて推力を発生させるエンジン等である。また、機関室15には、バラスト水を注排水するポンプ等も配置すると良い。
【0028】
機関室15と船首端のバラストタンク14Aの間における各区画は、それぞれ貨物を積載する貨物艙16として形成されている。貨物艙16は複数あるが、その数は特に限定されるものではなく、一つだけとしても構わない。各貨物艙16の上側には、上甲板12上で開閉可能なハッチカバー17が設けられている。なお、上甲板12上に他の構造物を設置する場合には、ハッチカバー17の上方を避ける必要がある。
【0029】
図3に示すように、船体11内部において、各貨物艙16の船体前後方向と直交する両側の上部角隅と、下部角隅および船底板上には、各貨物艙16外壁と船体11内壁との間の隙間を埋めるようにバラストタンク14C,14Dが形成されている。各バラストタンク14C,14Dは、前記バラストタンク14A,14Bと同様に、船体11の姿勢を調整するための海水を保持する。なお、バラストタンク14C,14Dは、船体11の前後方向に並ぶ隔壁18(
図2参照)によって、同一または異なる容量に区画されている。
【0030】
図1および
図2に示すように、船体11内部において、前記機関室15に近い船尾側には、従来より船舶10の燃料である重油(HFO)やディーゼル油(MDO)等の燃料油を貯蔵する燃料油タンク33が設置されている。燃料油タンク33は、船体11の舷側に沿って両側に配され複数に区画されているが、その具体的な配置の他、個々の大きさや数や形状は特に限定されるものではない。
【0031】
本実施の形態では、前述した液化ガス燃料タンク31とは別に、従来の燃料油タンク33もそのまま備えることで、これらのタンク31,33の各燃料を選択的に使用できるように構成されている。すなわち、前記主推進機関であるエンジンは、液化ガス燃料タンク31に貯蔵された液化ガス燃料と、燃料油タンク33に貯蔵された燃料油のどちらも使用可能なタイプが採用されており、各タンク31,33から選択的にエンジンに燃料を供給できるように構成されている。
【0032】
また、上甲板12上において、前記機関室15の真上付近、すなわち船尾寄りの後方に、前記上部構造体20が設置されている。上部構造体20の船体前後方向と直交する最大幅は、該上部構造体20が設置された上甲板12上の位置における船体幅に対して所定比率の細幅に設定されている。また、上部構造体20は、その船体前後方向に延びる中心線が、船体中心線CL上に沿って設置されている。
【0033】
上部構造体20は、操舵室や船員の居室等を有する居住区21と、居住区21の後方に隣接し、居住区21と一体的に形成された機関室ケーシング22とを備えている。居住区21にある操舵室には、航海に必要な航海機器や無線機器等が配置されている。機関室ケーシング22は、主推進機関や発電用機関からの排ガス管等を収容する区画である。また、上部構造体20は、その天面部に設けられたファンネル23およびブリッジ24と、上部前端側の側面に設けられたブリッジウイング25とを備えている。
【0034】
ファンネル23は、主推進機関や発電用機関からの排ガスを空気中に排出するものである。ブリッジ24は、居住区21上で船舶10の周囲を見通すために360度の視界が確保されている。ブリッジウイング25は、居住区21の側面から船体11の両舷に向かって延びており、船体11の側面確認用の通路として使用される。なお、各ブリッジウイング25は、それぞれ先端部が支柱26によって上甲板12上に支持されている。
【0035】
図4に示すように、上部構造体20は、その下層部20Bを除き該下層部20Bより上方に位置する本体部20Aは、前述した居住区21、機関室ケーシング22、ファンネル23を一体化して、水平断面が細幅な流線形状となるよう構成されている。このように本体部20A(上部構造体20)の最大幅を細くすることにより、上甲板12上にて上部構造体20の船体前後方向と直交する両側に、それぞれ他の構造物を設置するためのスペースが確保される。かかるスペースに、前述した液化ガス燃料タンク31が配置されている。
【0036】
本体部20Aの最大幅が小さければ、前方からの風を受ける正面投影面積を小さくすることが可能となり、航行時の風圧抵抗を削減することができる。これにより、燃料の消費量も削減することが可能となる。また、上部構造体20を細幅の流線形状とすることで、投錨停泊中には風上に船首を向けやすく、正面からの風圧抵抗が少ないために、走錨の危険性も低くなる。例えば、本体部20Aの最大幅を船体11の最大幅の20%〜35%とすれば、本体部20Aが上甲板12の下に位置する機関室15と同程度の幅構造となるため、構造的に連続性ができて強度も確保可能である。
【0037】
上部構造体20の下層部20Bは、該下層部20Bの上方に位置する本体部20Aの両側端よりも船体11の舷側に所定幅で突出した突出部27を備えている。突出部27は、上部構造体20において居住区21側となる前方に配置されており、突出部27を含む下層部20Bの最大幅は、例えば、本体部20Aの最大幅の150%〜220%とすることができる。突出部27は、航行時における下層部20B近傍の空気の流れを円滑にするために天面周縁部が面取りされている。
【0038】
次に、本実施の形態に係る船舶10の作用について説明する。
図2に示すように、本船舶10では、上部構造体20の本体部20Aを、その水平断面が船体前後方向に長い流線形状として最大幅を細くする。このような細幅の上部構造体20は、その船体前後方向に延びる中心線が船体中心線CL上に沿うように、船体11の上甲板12上の後方に設置する。
【0039】
これにより、上甲板12上の後方において、上部構造体20の船体前後方向と直交する両側には、それぞれ他の構造物を設置するためのスペースが確保される。かかるスペースに、両側で一対をなす液化ガス燃料タンク31を配置する。このように、船体11の上甲板12上の面積を有効に活用することで、船体11内部における貨物の積載容積を減少させることなく、液化ガス燃料タンク31を装備することができる。
【0040】
すなわち、液化ガス燃料タンク31を、船体11内部に配置するとなると、貨物を積載する貨物艙16の容積が侵食される。また、液化ガス燃料タンク31を、上甲板12上にて上部構造体20の前方に配置するとなると、液化ガス燃料タンク31が上部構造体20の直ぐ前方にある貨物艙16の上方に位置する。そのため、液化ガス燃料タンク31の下方となる貨物艙16への貨物の積載に支障を来す。よって、液化ガス燃料タンク31を上部構造体20の両側に配置することで、船舶の空間を効率的に利用することができる。
【0041】
また、一対の液化ガス燃料タンク31は、上部構造体20を間にして互いに分離した状態で別々に配置される。これにより、一方の液化ガス燃料タンク31に故障や破損等の不具合が生じても、他方の液化ガス燃料タンク31への影響が少なく代用することができる。もちろん、液化ガス燃料タンク31は、左右両側に一つずつとは限らず、例えば、左右両側に複数ずつ上下に積み重ねるよう配置しても良い。なお、液化ガス燃料タンク31は、船舶に関する各種法令で定められた規則を満たすように配置することになる。
【0042】
また、本船舶10においては、上部構造体20の両側に設置された一対の液化ガス燃料タンク31は、それぞれ同一形状に形成されており、各液化ガス燃料タンク31は、船体中心線CLを間にして左右対象となる状態に配置している。これにより、液化ガス燃料タンク31を維持管理しやすいと共に、船舶10における重量のバランスも取りやすくなる。
【0043】
また、本船舶10は、上部構造体20の下層部20Bが、該下層部20Bより上方に位置する本体部20Aの両側端よりも船体11の舷側に所定幅で突出した突出部27を備えている。従って、液化ガス燃料タンク31を、前記突出部27上に平面視で少なくとも一部が重なる位置に配置することにより、上部構造体20の一部を、液化ガス燃料タンク31を上甲板12上に離隔して配置するための支持構造の一部として活用することができる。
【0044】
さらに、本船舶10は、船体11内部で機関室15に近い船尾側に、重油等の燃料油を貯蔵する燃料油タンク33を備えている。これは、本船舶10が、従来の燃料油タンク33を備えたものを利用したことによるものである。すなわち、本船舶10は、既存の燃料油タンク33を船体11内部に残した状態で、環境保全に適した液化ガスを貯蔵する液化ガス燃料タンク31を後から上甲板12上に配置している。
【0045】
これにより、本船舶10では、液化ガス燃料タンク31の液化ガス燃料と燃料油タンク33の燃料油との両方を、主推進機関や発電用機関の燃料として選択的に使用することができる。例えば、通常の航行時には、従来通り燃料油タンク33の重油を燃料として使用するが、法令で定められた特別海域(SECA:Sox Emission Control Area)を通過する場合等に、液化ガス燃料タンク31の液化ガスを燃料として使用することにより、環境保全に関する規制を満たすことができる。
【0046】
また、液化ガス燃料タンク31と燃料油タンク33とが上甲板12を間にして上下に位置するため、互いに距離的に近く各タンク31,33からの燃料の供給システムを前記主推進機関等に対してまとめて配置することが可能となる。ここで、燃料油タンク33は従来通り機関室15に隣接しており、液化ガス燃料タンク31は機関室15の真上に位置するため、各タンク31,33からの燃料の供給ラインの長さを最小化させることができる。
【0047】
図5および
図6は、本発明の変形例を示している。
本変形例に係る船舶10Aは、船体11の上甲板12上に上部構造体40が設置され、前記上甲板12上における前記上部構造体40の後方に液化ガス燃料タンク31Aが配置されたものである。なお、前述した形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
液化ガス燃料タンク31Aは、前記液化ガス燃料タンク31と同様に、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の液化ガス燃料を貯蔵するものであり、例えば、全体としては略立方体であって、各角は面取りされたアール形状であり、前後面は球面状に形成されている。また、液化ガス燃料タンク31Aも、図示省略したが貯蔵する燃料ガスの種類に応じた断熱構造や密封構造を備え、タンク関連設備が付設されている。
【0049】
また、液化ガス燃料タンク31Aは、その船体前後方向に延びる中心線が、前方に位置する上部構造体40と共に、平面視において船体中心線CL上に重なるように配置されている。ここで上部構造体40は、前記上部構造体20とは異なり、船員の居住区は備えるが、機関室ケーシング41とは別に構成されている。機関室ケーシング41の天面部にはファンネル42が設けられている。このように上部構造体20,40の具体的な構成および形状も、適宜定め得る設計事項である。
【0050】
このような変形例に係る船舶10Aにおいても、液化ガス燃料タンク31Aを、船体11内部ではなく上甲板12上に配置するため、船体11内部における貨物の積載容積を減少させることなく、液化ガス燃料タンク31Aを装備することができる。なお、液化ガス燃料タンク31Aの具体的な形状や大きさも設計事項であり、図示した略立方体以外の形状としても良い。また、液化ガス燃料タンク31Aの数も、一つとは限らず、例えば、複数個を上下に積み重ねるように配置しても良い。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、船舶10を大型のばら積み貨物船に適用した例を説明したが、コンテナ船、タンカー等の各種船舶に適用しても良い。また、液化ガス燃料タンク31の具体的な形状や大きさも図示した例に限定されることはない。