特許第6704044号(P6704044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レモネックス インコーポレイテッドの特許一覧

特許6704044水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途
<>
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000005
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000006
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000007
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000008
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000009
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000010
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000011
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000012
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000013
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000014
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000015
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000016
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000017
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000018
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000019
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000020
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000021
  • 特許6704044-水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704044
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20200525BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20200525BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20200525BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20200525BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20200525BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20200525BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20200525BHJP
【FI】
   C12N15/113 ZZNA
   C12N15/11 Z
   C12N15/115 Z
   C12Q1/6876 Z
   G01N33/53 M
   G01N33/53 Z
   G01N21/64 F
   B82Y5/00
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-516666(P2018-516666)
(86)(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公表番号】特表2018-533005(P2018-533005A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】KR2016006355
(87)【国際公開番号】WO2017057823
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0139174
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チョルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ダル−ヘ
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0014443(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0100124(US,A1)
【文献】 Xiang-Ling Li, et al.,Lab on a Chip,2013年,Vol.13,p.3868-3875
【文献】 Li Gao, et al.,Nanoscale,2015年,Vol.7,p.10903-10907
【文献】 Jiayan Luo, et al.,J. AM. CHEM. SOC.,2010年,vol.132,p.17667-17669
【文献】 Dinggeng He et al.,Chem. Commun.,2015年 8月10日,vol.51,p.14764-14767
【文献】 Haixin Chang, et al.,Analytical Chemistry,2010年,Vol.82, No.6,p.2341-2346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
G01N 33/48−33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンオキサイドナノコロイド(GON)と、
前記グラフェンオキサイドナノコロイドの表面のカルボキシル基部分に結合した水溶性高分子と、
前記グラフェンオキサイドナノコロイドの前記水溶性高分子が結合していない表面部分に結合する、蛍光物質が結合したプローブと、を含み、
前記水溶性高分子は、キトサン、キトサン塩、デキストラン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、アルギン酸塩、アルギン酸、寒天、ガラクトマンナン、ガラクトマンナン塩、キサンタン、キサンタン塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つであることを特徴とする標的物質検出用組成物
【請求項2】
前記グラフェンオキサイドナノコロイドは、粒子状またはシート状である、請求項1に記載の標的物質検出用組成物
【請求項3】
前記グラフェンオキサイドナノコロイドの粒子サイズが0.01〜1μmである、請求項に記載の標的物質検出用組成物
【請求項4】
前記結合が、化学的または物理的結合である、請求項1に記載の標的物質検出用組成物
【請求項5】
前記化学的結合がEDCカップリング(coupling)である、請求項に記載の標的物質検出用組成物
【請求項6】
前記物理的結合が水素結合である、請求項に記載の標的物質検出用組成物
【請求項7】
前記プローブが、抗体、核酸、ペプチド、タンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項8】
前記核酸は、10〜50個の塩基で構成される、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項9】
前記核酸は、DNA、RNA、mRNA、miRNA、非翻訳RNA、二重らせんRNA、二重らせんDNA、DNAベースの酵素、ジオキシリボザイム、アプタマー、PNA、LNA、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項10】
前記核酸が、配列番号1〜10からなる群より選択される何れか一つである、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項11】
前記蛍光物質が、フルオレセイン、フルオレセインクロロトリアジニル、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、フルオレセインイソチオシアン酸塩(fluorescein isothiocyanate、FITC)、オレゴングリーン(oregon green)、アレックスフルオロ、カルボキシフルオレスセイン(carboxyfluorescein、FAM)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレスセイン(JOE)、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレスセイン(HEX)、テキサスレッド(sulforhodamine 101 acid chloride)、6−カルボキシ−2’,4,7’,7−テトラクロロフルオレスセイン(TET)、テトラメチルローダミン−イソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、シアニン系染料、シアジカルボシアニン染料、およびその組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項12】
前記シアニン系染料が、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項11に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項13】
前記標的物質は、疾患患者で検出されるものであり、
前記疾患は、癌、感染性疾患、炎症性疾患又は遺伝子疾患である、請求項に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項14】
前記感染性疾患が、バクテリア、カビ、ウイルス、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つによるものである、請求項13に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項15】
前記バクテリアが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、アシネトバクター・バウマニ菌、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項14に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項16】
前記ウイルスが、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、陽性−極性の一本鎖RNAウイルス、陰性−極性の一本鎖RNAウイルス、一本鎖RNA−レトロウイルス、二本鎖DNA−レトロウイルス、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項14に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項17】
前記ウイルスが、ヒトサイトメガロウイルス、デングウイルス、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つである、請求項14に記載の標的物質検出用組成物。
【請求項18】
1)請求項に記載の標的物質検出用組成物および分離された試料を混合するステップと、
2)前記混合物の蛍光を測定するステップと、
3)正常対照群試料の蛍光レベルと比較するステップと、
を含む疾患の診断に必要な情報の提供方法。
【請求項19】
前記疾患が、癌、感染性疾患、炎症性疾患又は遺伝子疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の標的物質検出用組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の核酸(DNA又はRNA)またはタンパク質を検出する方法は、科学研究の分野で重要な技術である。特定の核酸またはタンパク質を検出できるようになったことにより、研究者は、どの遺伝的、生物学的標識が人の健康状態を示す指標になるのかを判定できるようになった。このような核酸とタンパク質を検出する方法を用いると、試料に存在する病原体の遺伝子の変形、または特定の遺伝子の発現などを発見することができる。
【0003】
一方、酸化グラフェンのように2次元の格子内に満たされた平面構造を有する有機または無機の高分子及びその誘導体は、電子伝達が可能である。この電子伝達は、これらの結晶及び格子構造のような物理的な特定に起因する。特に、蛍光共鳴エネルギー伝達(fluorescence resonance energy transfer、FRET)現象により、有機蛍光染料の蛍光シグナルを消光することができる。
【0004】
これにより、酸化グラフェンのような物質の物理的特性を用いて、蛍光染料が結合した核酸高分子の蛍光シグナルの変化を観察することができ、これを通じて、核酸及びタンパク質などのバイオ物質を検出できるようになっている(韓国特許第10−1496671号公報)。また、このような物質を用いて、蛍光分析に基づいて酵素活性を検出する方法が開発されている(韓国特許第10−1554173号公報)。最近、このような物質を用いる技術は、試料に存在する病原体の遺伝子やタンパク質などを観察できる点で、病気及び疾患の初期研究において重要なものになっている。
【0005】
しかしながら、このように酸化グラフェンを用いる検出方法は、簡単であるものの、試料中に含まれる標的物質の量に大きな影響を受けることがあり、また検出に用いられる核酸高分子のサイズ分布が均一でなくて誤差の範囲が広い。さらに、体外診断のための生体外の環境では前記高分子が不安定であるため、再現性が低下する欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤、並びに該消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含む組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、前記組成物を用いて疾患の診断に必要な情報を提供する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含む組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、前記組成物および分離された試料を混合して混合物を準備するステップと、前記混合物の蛍光レベルを測定するステップと、正常対照群試料の蛍光レベルと比較するステップとを含む疾患の診断に必要な情報の提供方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含むキットを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤は、蛍光物質が結合したプローブからの蛍光を効果的に消光する。また、水溶性高分子が結合したナノ物質と蛍光物質が結合したプローブが安定的に結合する。それだけでなく、標的物質の存在時、プローブは標的物質に結合し、水溶性高分子が結合したナノ物質から容易に離脱できるので、効率よく標的物質を検出することができる。これにより、前記消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含む組成物は、低濃度で存在する標的物質も検出することができる。従って、バイオ物質の検出または疾患の診断に必要な情報を提供するための組成物又はキットとして有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、水溶性高分子が結合したナノ物質を製造する方法、及びこのようにして製造された物質を用いてバイオ物質を検出する方法を示す模式図である。
図2図2は、一実施形態で製造されたグラフェンオキサイドナノコロイド(GON)を原子力顕微鏡(AFM)で撮影した写真である。
図3図3は、一実施形態で製造された2次元ナノ物質である二酸化マンガンを走査透過顕微鏡(TEM)(a)及びAFM(b)で撮影した写真である。
図4図4は、一実施形態で製造されたナノグラフェンオキサイド(NGO)をAFMで撮影した写真である。
図5図5は、デキストランによって表面改質されたグラフェンオキサイドナノコロイド(DReGON)をAFMで撮影した写真(a)及びラマンスペクトルで分析したグラフ(b)である。
図6図6は、ポリエチレングリコールによって表面改質されたNGO(PEG−NGO)(a)、若しくはPEG及びポリエチレンイミン(PEI)によって表面改質されたGON(PEG−PEI−GON)(b)をAFMで撮影した写真である。
図7図7は、検出用組成物の形成有無を確認するために、DReGONとプローブのPNA−US5−2(a)またはPNA−DENV(b)とを混合し、その蛍光シグナルを確認したグラフである。
図8図8は、検出用組成物の形成有無を確認するために、PEG−NGOとプローブのPNA−Sa(a)またはPNA−Pa(b)とを混合し、その蛍光シグナルを確認したグラフである。
図9図9は、検出用組成物の形成有無を確認するために、PEG−PEI−GONとプローブのPNA−TSを混合し、その蛍光シグナルを確認したグラフである。
図10図10は、GON(a)の蛍光安定性をDReGON(b)と比較したものである。
図11図11は、DReGON(a)及びGON(b)の標的物質の検出能を確認したグラフである。
図12図12は、標的物質として、様々な濃度のmiR−21(a)またはmiR−223(b)を添加したときのPEG−NGOの検出能を確認したグラフである。
図13図13は、標的物質として、様々な濃度のmiR−TSを添加したときのPEG−PEI−GONの検出能を確認したグラフである。
図14図14は、様々な癌細胞株にプローブを混合していない場合には、蛍光シグナルが検出されないことを確認した写真である。
図15図15は、様々な癌細胞株において、プローブのPNA484またはPNA31と混合されたDReGONの癌細胞の検出能を確認したグラフである。
図16図16は、血球細胞において、プローブのPNA21、PNA223、Let−7a又はそれらの混合物(scrambled)と混合されたDReGONの血球細胞の検出能を確認したグラフである。
図17図17は、緑膿菌(a)または黄色ブドウ球菌(b)に特異的に結合する蛍光標識された核酸塩基配列を、濃度を異ならせてPEG−NGOと混合した後、それを緑膿菌および黄色ブドウ球菌と混合した後に示される蛍光レベルを測定したグラフである。
図18図18は、ヒトサイトメガロウイルス(a)又はデングウイルス(b)に特異的に結合する核酸塩基配列をDReGONと混合した後、それをヒトサイトメガロウイルス及びデングウイルスに混合した後に示される蛍光レベルを測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の一局面では、水溶性高分子が結合したナノ物質を含む消光剤を提供する。
【0015】
本明細書で使用される用語の「水溶性高分子」とは、水に溶けるか、或いは水中で微細な粒子に分散し得る樹脂または高分子を意味する。前記水溶性高分子は、天然高分子、半合成高分子、または合成高分子であってもよい。本発明で使用できる水溶性高分子は、1〜20kDa、5〜15kDa、または8〜12kDaの分子量を有することができる。一実施形態では、前記水溶性高分子は10kDaのものであってもよい。
【0016】
前記水溶性高分子は、キトサン及びその誘導体、キトサン塩、デキストラン及びその誘導体、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒアルロン酸塩、ペクチン及びその誘導体、ペクチン塩、アルギン酸塩及びその誘導体、アルギン酸、寒天、ガラクトマンナン及びその誘導体、ガラクトマンナン塩、キサンタン及びその誘導体、キサンタン塩、β−シクロデキストリン及びその誘導体、β−シクロデキストリン塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。一実施形態では、前記水溶性高分子は、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0017】
本明細書で使用される用語の「ナノ物質」とは、ナノサイズを有する物質を意味する。これは、サイズが小さくて細胞膜を容易に通過することができる。前記ナノ物質は、シート状または粒子状のものであってもよい。前記シートは、単層または複数層で構成されていてもよい。また、シートの形状は、平面または曲面を含むことができ、様々な形状であってもよい。一実施形態では、前記ナノ物質は、2次元単層シート状のナノ物質であってもよい。また、粒子の形状は、球状、楕円状、棒状および多角形状などの様々な形状であってもよい。
【0018】
前記ナノ物質の粒子サイズは、約10〜500nm、約10〜200nm、約10〜150nm、約10〜100nm、約10〜50nm、約20〜200nm、約20〜150nm、約20〜100nm、約20〜50nm、約30〜200nm、約30〜150nm、約30〜100nm、約30〜50nm、約50〜200nm、約50〜150nm、約50〜 100nm、約50〜80nm、約60〜200nm、約60〜100nm、約60〜80nm、約80〜200nm、約80〜150nm、約80〜100nm、約90〜200nm 、約90〜150nmまたは約90〜100nmであってもよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、前記ナノ物質は、50〜80nm、90〜200nm、90〜150nmまたは80〜100nmのものであってもよい。ここで、前記粒子の大きさは、動的光散乱(Dynamic Light Scattering)を用いた測定で得られた実験値、または原子力顕微鏡(AFM)や走査透過顕微鏡(TEM)の画像から示される大きさを平均して計算した値であり、ナノ物質を球形または円形のものと仮定して得られる値を意味する。
【0019】
前記ナノ物質は、炭素ナノ物質または二酸化マンガンで製造することができる。ここで、前記炭素ナノ物質は、ナノグラフェンオキサイド(NGO)及びその誘導体、還元された酸化グラフェン及びその誘導体、グラフェンオキサイドナノコロイド(GON)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。一実施形態では、前記ナノ物質は、ナノグラフェンオキサイド、グラフェンオキサイドナノコロイド、又は二酸化マンガンであってもよい。
【0020】
本明細書で使用される用語の「消光剤」は、光または波長を吸収して蛍光を発する物質の蛍光エネルギーを吸収する物質を意味する。消光効果は、蛍光を発する物質とナノ物質との相互作用により起こる。蛍光物質とナノ物質が10nm程度又はそれ以下の近距離に位置するときに主に発生する。このとき、蛍光物質は、エネルギードナー(energy donor)としての役割を果たし、ナノ物質は、エネルギーアクセプター(energy acceptor)としての役割を果たす。
【0021】
前記消光剤は、水溶性高分子によってナノ物質の表面が改質されたものであってもよい。このとき、前記水溶性高分子およびナノ物質が化学的または物理的に結合したものであってもよい。前記化学的結合としては、アミド結合、エステル結合、エーテル結合などが可能であるが、これらに限定されない。また、化学的結合は、架橋剤により行うことができる。一実施形態では、水溶性高分子とナノ物質は、EDCカップリング(coupling)により結合することができる。また、前記物理的な結合は、静電気的な引力、水素結合、ファンデルワールス結合であってもよいが、これらに限定されない。また、このように水溶性高分子によって表面改質されたナノ物質は、分散能力および安定性が向上するとともに、生体親和性が向上し得る。
【0022】
また、本発明の他の局面では、本発明は、前記消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含む組成物を提供する。
【0023】
本明細書で使用される用語の「プローブ」とは、標的物質に特異的に結合できる物質を意味する。前記プローブは、抗体、核酸、ペプチド、タンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つであってもよい。他にも、目的とする標的物質と高い親和性を有する物質として知られている物質であれば、いずれも用いることができる。一実施形態では、前記抗体は、標的タンパク質のエピトープと特異的に結合して標的物質を検出することができる。また、前記核酸が標的物質の核酸の配列と相補的な配列を有する場合には、前記核酸は、標的塩基配列に結合して標的物質を検出することができる。また、前記ペプチドは、細胞の表面に発現されている受容体またはリガンドなどに特異的に結合して標的物質を検出することができる。
【0024】
前記核酸は、DNA、RNA、mRNA、miRNA、非翻訳RNA、二重らせんRNA、二重らせんDNA、DNAベースの酵素、ジオキシリボザイム、アプタマー、ペプチド核酸(Peptide Nucleic acid、PNA)、ロックド核酸(Locked nucleic Acid、LNA)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つであってもよい。
【0025】
このとき、前記核酸は、10〜50個、10〜30個、12〜28個、15〜25個、18〜22個の塩基で構成できるが、標的核酸配列と相補的に結合できれば、塩基の数はこれらに限定されない。一実施形態では、前記核酸は、15〜22個の塩基で構成されていてもよい。本発明の一実施形態では、前記核酸は、配列番号1〜20からなる群より選択される何れか一つであってもよい。
【0026】
本発明に係るプローブには、蛍光物質が結合している。前記蛍光物質は、水溶性高分子が結合したナノ物質によって蛍光エネルギーが吸収されて消光された状態で存在していて、前記プローブが標的物質と特異的に結合してナノ物質から遊離すると、蛍光を示すことになる。前記蛍光物質は、プローブの一方の末端または中間に結合することができる。プローブが核酸である場合は、蛍光物質は、核酸の5’または3’の位置または核酸の内部に位置することができる。プローブがペプチドである場合は、蛍光物質は、ペプチドのN末端、C末端または内部に結合することができる。蛍光物質は、プローブに直接結合するか、または架橋剤を介して結合することができる。
【0027】
前記蛍光物質は、フルオレセイン、フルオレセインクロロトリアジニル、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、フルオレセインイソチオシアン酸塩(fluorescein isothiocyanate、FITC)、オレゴングリーン(oregon green)、アレックスフルオロ、カルボキシフルオレスセイン(carboxyfluorescein、FAM)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレスセイン(JOE)、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレスセイン(HEX)、テキサスレッド(sulforhodamine 101 acid chloride)、6−カルボキシ−2’,4,7’,7−テトラクロロフルオレスセイン(TET)、テトラメチルローダミン−イソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、シアニン系染料、シアジカルボシアニン染料、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。前記シアニン系染料は、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0028】
前記消光剤は、1つ以上の標的を検知することができる。1つ以上の標的を検知するために、ナノ物質は、異なる二種類以上のプローブを含むことができる。このとき、各々のプローブは、異なる蛍光物質を含むことができる。このとき、各々のプローブは、異なる標的物質と結合することにより、互いに異なる標的物質を検出することができる。
【0029】
また、前記組成物は、バイオ物質の検出または疾患の診断に必要な情報を提供するのに用いることができる。前記疾患は、癌、感染性疾患、炎症性疾患または遺伝子疾患であってもよい。一実施形態では、前記疾患は癌または感染性疾患であってもよい。
【0030】
前記癌は、乳癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、胃癌、大腸癌、骨癌、皮膚癌、脳癌、肉腫癌、眼癌、骨髄癌、血液癌、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。一方、前記感染性疾患は、バクテリア、カビ、ウイルス、寄生虫、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。ここで、前記バクテリアは、腸内細菌または腸球菌であってもよい。前記バクテリアの例としては、緑膿菌、黄色ブドウ球菌およびアシネトバクター・バウマニ菌などがある。本発明の一実施形態では、前記バクテリアは緑膿菌または黄色ブドウ球菌であってもよい。
【0031】
前記ウイルスは、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、陽性−極性の一本鎖RNAウイルス、陰性−極性の一本鎖RNAウイルス、一本鎖RNA−レトロウイルス、および二本鎖DNA−レトロウイルスなどを含むことができる。本発明の一実施形態では、前記ウイルスは、サイトメガロウイルス、デングウイルス、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0032】
本発明の他の側面では、前記消光剤と蛍光物質が結合したプローブを含む組成物および分離された試料を混合するステップと、前記混合物の蛍光を測定するステップと、正常対照群試料の蛍光レベルと比較するステップとを含む疾患の診断に必要な情報の提供方法を提供する。
【0033】
前記組成物に含まれる消光剤及び蛍光物質が結合したプローブは、前述した通りである。また、前記試料は、診断対象から分離・排出された試料であり、細胞、細胞培養液、組織、唾液、小便、大便、精液、血液、血漿または血清であってもよい。また、正常対照群試料は、疾患を持たない健常者から分離・排出された試料を意味する。
【0034】
本発明に係る方法は、核酸またはタンパク質などのバイオ物質の検出、或いは前述したような疾患の診断に用いることができる。このとき、前記蛍光は、ナノ物質によって消光された蛍光物質が標的物質と特異的に接触または結合することで遊離して発光することを測定することにより分かる。前記蛍光レベルの測定には、流動細胞分析(flow−cytometry)、流動細胞分離(fluorescence activated cell sorting、FACS)、または蛍光シグナルや画像を分析する方法を用いることができる。
【0035】
また、本発明の他の局面では、本発明は、前記消光剤及び蛍光物質が結合したプローブを含むキットを提供する。前記組成物に含まれる消光剤及び蛍光物質が結合したプローブは、前述の通りである。前記キットは、核酸またはタンパク質などのバイオ物質の検出、或いは前述したような疾患の診断に用いることができる。
【0036】
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0037】
I.2次元ナノ物質の製造
実施例1.グラフェンオキサイドナノコロイド(GON)の製造
4gのK及び4gのP10を50mlのHSOに添加し、攪拌して溶解した。ここに、2gのグラファイトナノファイバー(graphite nanofiber)を添加し、90℃で16時間加熱した。加熱された混合物を常温に冷やし、250mlの蒸留水を添加した後、これを紙フィルター(Whatman、GE Healthcare、米国)で精製した。精製した混合物を蒸留水で2回以上洗浄し、空気中で乾燥した。
【0038】
1.5gの前記乾燥された粉末状のグラファイトナノファイバーを250mlのHSOに添加し、ここに10gのKMnOを少しずつ添加しながら攪拌して反応させた。このとき、反応温度は10℃が超えないようにした。反応物を35℃の蒸留水で湯煎で6時間攪拌しながら更に反応させた。反応が終了した後、1,000mlの蒸留水を添加し、この時の温度は55℃以下に維持した。ここに50mlのHを添加して反応させ、混合物を10,000rpmの条件で30分間遠心分離してペレットを得た。得られたペレットは、3.4%(w/w)のHCl及びアセトンで遠心分離機を用いてそれぞれ3回以上洗浄した。
【0039】
最終的に得られた茶色の上澄み液に含まれているアセトンを真空中で除去し、ここに蒸留水を入れて最終濃度が1mg/mlになるようにし、ボルテックスして十分に分散した。前記から得られたものを10,000Daの透析膜(dialysis membrane)を用いて精製および中性化し、最終的に得られた産物を凍結乾燥してパウダー状のGONを得た。得られたGONを原子力顕微鏡(AFM)で観察した結果を図2に示す。図2に示すように、100nm以下のサイズ及び2nm以下の厚さを有するGONを得た。
【0040】
実施例2.二酸化マンガン(MnO)の製造
32mlのドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)、及び1.6mlのHSO溶液に蒸留水を添加し、最終の体積を300mlにした。これを95℃で15分間加熱し、3.2mlのKMnO溶液を迅速に添加した。その後、60分間加熱を継続し、濃い茶色の溶液である二酸化マンガンシートを得た。
【0041】
得られた二酸化マンガンシートに3次蒸留水及びアルコールを1:1の体積比で添加し、12,000rpmで遠心分離して、ペレットを得た。同じ条件でさらに遠心分離を2回繰り返して得られた産物を3次蒸留水に分散し、最終の産物を得た。得られたMnOを走査透過顕微鏡(Transmittance Electron Microscopy、TEM)および原子力顕微鏡(atomic force microscopy、AFM)で観察した結果を図3に示す。図3bに示すように、200nm以下のサイズ及び2nm以下の厚さを有するMnOを得た。
【0042】
実施例3.ナノグラフェンオキサイド(NGO)の製造
0.5gのNaNOを23mlのHSOに添加し、これを攪拌して溶解させた。ここに、0.5gのグラファイトナノファイバーを添加した後、3gのKMnOを少しずつ添加しながら攪拌して反応させた。このとき、反応温度は10℃が超えないようにした。反応物を35℃の蒸留水で湯煎で1時間攪拌しながら更に反応させ、その後、さらに90℃で30分間反応した。反応が終了した後、1mlの蒸留水を添加し、この時の温度は55℃以下に維持した。前記反応物に3mlのHを添加して反応させ、これを常温に冷やした後、250mlの蒸留水を添加した。これを紙フィルターでろ過した後、ろ過物を蒸留水で2回以上洗浄し、空気中で乾燥した。
【0043】
酸化グラフェン(GO)を製造するために、10mg/ml濃度の酸化グラフェン溶液に50mlの9M NaOHを添加した後、90分間チップ超音波分解(tip−sonication)を行った。これを3,800Daの透析膜を用いて精製及び中性化し、最終的に得られた産物を凍結乾燥してパウダー状のNGOを得た。得られたNGOをAFMで観察した結果を図4に示す。図4に示すように、200nm以下のサイズ及び1.5nm以下の厚さを有するNGOを得た。
【0044】
II.高分子で表面改質された2次元ナノ物質の製造
実施例4.デキストランによって表面改質されたグラフェンオキサイドナノコロイド(DReGON)の製造
前記実施例1で得られたグラフェンオキサイドナノコロイドの表面をデキストランを用いて改質した。具体的には、50mgのグラフェンオキサイドナノコロイドを50mlの蒸留水に分散し、0.1%(w/w)のデキストラン水溶液を添加した。前記混合物を30分間超音波処理した後、25μlのアンモニア水溶液を添加し、95℃で3時間攪拌して反応させた。前記反応物を蒸留水で洗浄した後、10,000rpmの条件で30分間遠心分離して分離し、凍結乾燥して、最終の産物であるDReGONを得た。
【0045】
得られたDReGONを用いてラマン分析を行った。具体的には、シリコンウエハにDReGONを入れて、ラマン機器(LabRAM HR UV/vis/NIR)に前記シリコンウエハを取り付けた後、514nm波長のCWレーザを照射してスペクトルを分析した。
【0046】
前記から得られたDReGONをAFMで観察した結果を図5aに、ラマンスペクトルで分析した結果を図5bに示す。図5aに示すように、100nm以下のサイズ及び7nm以下の厚さを有するDReGONを得た。一方、図5bに示すように、1370cm−1及び1600cm−1の領域でD及びGのピークが観察され、ID/IGの値は0.85であった。
【0047】
実施例5.ポリエチレングリコール(PEG)によって表面改質されたNGOの製造
前記実施例3で得られたNGOの表面をPEGを用いて改質した。具体的には、5mgのNGOと同量のポリエチレングリコール(10kDa)とを混ぜて水槽−超音波分解(bath−sonication)を行った。ここに、5mgのEDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)を添加し、さらに5分間水槽−超音波分解を行った。前記混合物を6時間攪拌した後、10,000Daの透析膜を用いて精製および中性化し、最終的に得られた産物を凍結乾燥してパウダー状の、ポリエチレングリコールによって表面改質されたNGO(PEG−NGO)を得た。
【0048】
前記から得られたPGE−NGOをAFMで観察した結果を図6aに示す。図6aに示すように、200nm以下のサイズ及び1nm以下の厚さを有するPGE−NGOを得た。
【0049】
実施例6.ポリエチレングリコール及びポリエチレンイミン(PEI)によって表面改質されたGONの製造
前記実施例1で得られたGONの表面をPEGおよびPEIを用いて改質した。具体的には、2mg/ml濃度のGON溶液10mlに20mgのPEG(10kDa)を添加し、5分間水槽−超音波分解を行った。ここに20mgのEDCを添加し、さらに5分間水槽−超音波分解を行った。前記反応物に10mgのPEIを添加してから5分間、EDCを添加してから5分間、前記のように水槽−超音波分解を行った後、これを常温で6時間攪拌して反応が均一になるようにした。その後、前記混合物を12,000Daの透析膜を用いて精製および中性化し、最終的に得られた産物を凍結乾燥し、パウダー状の、PEG及びPEIによって表面改質されたGON(PGE−PEI−GON)を得た。
【0050】
前記から得られたPEG−PEI−GONをAFMで観察した結果を図6bに示す。図6bに示すように、100nm以下のサイズ及び10nm以下の厚さを有するPGE−PEI−GONを得た。
【0051】
III.高分子で表面改質された2次元ナノ物質の検出用組成物の形成の確認
実験例1.高分子で表面改質された2次元ナノ物質の検出用組成物の形成の確認
実験例1−1.DReGONの検出用組成物の形成の確認−(1)
前記実施例4で製造したDReGONを標的物質検出用組成物として用いることができるかを確認するために、次のような実験を行った。具体的には、標的物質を検知するためのPNA(peptide nucleic acid)プローブは、5’−末端にCy5が標識され、Cy5及びプローブ配列の間に1つの酸素に2つの炭素が結合した形態の単位体の2つをリンカーとして含むようにPanagene社(韓国)に依頼して製作した。前記1μMのPNAプローブを20μlのヌクレアーゼ−フリーウォーター(nuclease−free water)に添加し、これを80℃で約3分間加熱しながら完全に溶解した。溶解されたPNAプローブ20μlを前記実施例4で製造したDReGONと混合し、常温で30分間反応させた。反応4、8、12又は24時間の後、Ex/Em=647/670nmで蛍光リーダーにより蛍光シグナルを測定した。このとき、対照群としては、PNAプローブのみを使用した。
【0052】
その結果、PNAプローブ自体の蛍光シグナルを100%としたとき、高分子で表面改質された2次元ナノ物質と反応させる場合、蛍光シグナルが5%未満に減少しており、前記物質が検出用組成物を形成することを確認した。
【0053】
実験例1−2.DReGONの検出用組成物の形成の確認−(2)
前記実施例4で製造したDReGONを標的物質検出用組成物として用いることができるかを確認するために、前記実験例1−1と同様の条件及び方法により実験を行った。このとき、PNAプローブとしては、下記表2に示すPNA−US5−2またはPNA−DENVを用いた。10pmolのPNAプローブをそれぞれ0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4又は1.6μgのDReGONと混合した。その結果、測定した蛍光シグナルの値を図7に示す。図7に示すように、添加されたPNAプローブの濃度に依存して蛍光シグナルが減少しており、前記物質が検出用組成物を形成することを確認した。
【0054】
実験例1−3.PEG−NGOの検出用組成物の形成の確認
前記実施例5で製造したPEG−NGOを標的物質検出用組成物として用いることができるかを確認するために、前記実験例1−1と同様の条件及び方法により実験を行った。このとき、10pmolのPNAプローブを0、0.1、0.2、0.5又は1.0μgのPEG−NGOと混合した。前記PNAプローブとしては、表1に示すPNA−SaまたはPNA−PaにCy5蛍光染料が結合したものを用いた。その結果、測定した蛍光シグナルの値を図8に示す。図8に示すように、添加されたPNAプローブの濃度に依存して蛍光シグナルが減少しており、前記物質が検出用組成物を形成することを確認した。
【0055】
実験例1−4.PEG−PEI−GONの検出用組成物の形成の確認
前記実施例6で製造したPEG−PEI−GONを標的物質検出用組成物として用いることができるかを確認するために、前記実験例1−1と同様の条件及び方法により実験を行った。このとき、10pmolのPNAプローブを0、0.1、0.2、0.5又は1.0μgのPEG−PEI−NGOと混合した。前記PNAプローブとしては、下記表1に示すPNA−TSにFITC蛍光染料が結合したものを用いた。その結果、測定した蛍光シグナルの値を図9に示す。図9に示すように、添加されたPNAプローブの濃度に依存して蛍光シグナルが減少しており、前記物質が検出用組成物を形成することを確認した。
【0056】
実験例2.DReGON粒子の安定性の確認
前記実施例4で製造したDReGON粒子の安定性を確認するために、次のような実験を行った。具体的には、0.1mg/ml濃度のDReGON溶液を血清が含まれているPBS溶液によく懸濁して、0、4、8、12又は24時間常温に置いて、各時間ごとの吸光度を測定した。対照群としては、実施例1で製造されたグラフェンオキサイドナノコロイド(GON)を用いた。その結果、図10に示すように、DReGON(b)は、GON(a)よりも長時間、生理活性環境で安定した吸光スペクトルを示しており、このような安定した分散能は、24時間以上持続した。
【0057】
IV.高分子によって表面改質された2次元ナノ物質の標的物質の検出能の確認
実験例3.癌細胞特異的核酸塩基配列の検出能の確認
実験例3−1.DReGONの検出能の確認
前記実施例4で製造したDReGONの検出限界を測定するために、次のように実験を行った。まず、実験例1−1と同様の条件及び方法によりプローブのPNA21及びDReGONを混合して反応させた。反応30分後、反応物に癌細胞特異的配列を含む標的物質であるmiR−21を0、0.001、0.01、0.1、1、10、100又は1000nMの濃度になるように添加し、常温で2時間反応させた。これをEx/Em=647/670nmで蛍光リーダーにより蛍光シグナルを測定した。実験に用いられたPNAプローブ及び標的物質の配列を、それぞれ表1及び2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
標的物質を添加する前後の蛍光の変化を下記の数式1に代入して導出した結果を図11に示す。このとき、対照群としては、実施例1で製造したGONを用いた。
【0061】
【数1】
*SD:標準偏差、S:校正線(calibration line)の傾斜度
【0062】
図11に示すように、GONは230pM濃度までの標的物質を検出したが、DReGONは10pMの濃度までの標的物質を検出した。このことから、本発明の高分子で表面改質された2次元ナノ物質は、試料中に低濃度で存在する標的核酸も検出できることを確認した。
【0063】
実験例3−2.PEG−NGOの検出能の確認
前記実験例3−1と同様の条件及び方法によりPEG−NGOの癌細胞特異的核酸塩基配列の検出能を確認した。このとき、DReGONの代わりに実施例5で製造したPEG−NGOを10pmolの濃度で用い、プローブとしてのPNA21及びPNA233と、標的物質としてのmiR−21及びmiR−233を0、0.002、0.02、0.2、2、20、200又は2,000nMの濃度で用いた。また、標的物質を添加し、4時間反応させながら、20分間隔で蛍光の変化を測定して図12に示す。図12に示すように、標的物質の濃度が増加しながら蛍光シグナルが強くなっており、プローブの濃度および種類に応じて異なるレベルで蛍光が回復した。
【0064】
実験例3−3.PEG−PEI−GONの検出能の確認
前記実験例3−1と同様の条件及び方法によりPEG−PEI−NGOの癌細胞特異的核酸塩基配列の検出能を確認した。このとき、DReGONの代わりに実施例6で製造したPEG−PEI−NGOを10pmolの濃度で用い、プローブとしてのPNA−TSと、標的物質としてのmiR−TSを100、200、300又は500nMの濃度で用いた。また、標的物質を添加して4時間反応させながら、20分間隔で蛍光の変化を測定して図13に示す。図13に示すように、標的物質の濃度が増加しながら蛍光シグナルが強くなっており、プローブの濃度及び種類に応じて異なるレベルで蛍光が回復した。
【0065】
実験例3−4.癌細胞株でのDReGONの検出能の確認
様々な種類の癌細胞株を用いてDReGONの癌細胞特異的核酸塩基配列の検出能を確認した。まず、MCF−7、HeLa、SW620細胞株は、DMEM又はRPMI培地を用いて培養して準備した。一方、実験例1−1と同様の条件及び方法によりプローブのPNA484又はPNA31をDReGONと混合して反応させた。準備された細胞をウェル当り1×10個の細胞になるように12ウェルプレートに分注し、24時間後、DReGON、及びPNA484又はPNA31の反応物を80pmolの濃度になるように細胞に添加した。
【0066】
14時間後、蛍光顕微鏡を用いて観察された細胞の蛍光シグナルを撮影して図15に示す。このとき、対照群として細胞にプローブを添加せずに撮影した写真を図14に示す。図15に示すように、DReGONによって標的物質が検知されたことを、蛍光物質が結合したプローブの蛍光シグナルから分かった。
【0067】
実験例3−5.血球細胞でのDReGONの検出能の確認
血球細胞中に存在する特定の塩基配列に対するDReGONの検出能を確認するために、次のような実験を行った。具体的には、健康な人の血液10mlから公知の方法で血球細胞を収集し、それをRPMI培地を用いて培養した。培養した細胞を固定し、ここに3.0μgのDReGONとCy5蛍光が結合した200nMのPNAプローブを添加した。このとき、PNAプローブとしては、PNA21、PNA223、Let−7a又はこれらの混合物(scrambled)を用いた。対照群として、何れの処理もしていない細胞群を用いた。
【0068】
4時間後、流動細胞分析器を用いて、血球細胞において回復された蛍光の強度を図16に示す。図16に示すように、PNAプローブによって血球細胞で発現されている標的塩基配列が検出されることを確認した。
【0069】
実験例4.PEG−NGOのバクテリア特異的核酸塩基配列の検出能の確認
前記実験例3−1と同様の条件及び方法によりPEG−NGOの緑膿菌または黄色ブドウ球菌特異的核酸塩基配列の検出能を確認した。このとき、DReGONの代わりに実施例5で製造した0.2μgのPEG−NGO、及び10pmolのPNA−Pa又はPNA−Saを添加した。ここに、標的物質として、0、10、20、40、70又は100nMの濃度の緑膿菌または黄色ブドウ球菌AS−DNAを添加した。その結果、測定された蛍光の変化を図17に示す。図17に示すように、添加された緑膿菌または黄色ブドウ球菌AS−DNAの濃度に依存して蛍光の強度が増加した。
【0070】
実験例5.DReGONのウイルス特異的核酸塩基配列の検出能の確認
前記実験例3−1と同様の条件及び方法によりDReGONのヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はデングウイルス(DENV)特異的核酸塩基配列の検出能を確認した。このとき、0.5μgのDReGON、及び20pmolのPNA−US5−2又はPNA−DENVを添加した。ここに、標的物質として、20pmolのmiR−US5−2又はmiR−DENVを添加した。その結果、反応時間ごとに測定した蛍光の変化を図18に示す。図18に示すように、反応時間に依存して、添加されたHCMV又はDENV特異的核酸塩基配列に対する蛍光の強度が増加した。
【0071】
結論として、前記結果から分かるように、本発明の組成物は、マイクロアレイまたはRT−PCRとは異なり、容易に標的配列を検出できるだけでなく、その濃度を間接的に確認するのに用いることができる。
【0072】
配列表フリーテキスト
配列番号1:tcaacatcag tctgataagc ta
配列番号2:agctatgcca gcatcttgcc t
配列番号3:atttgacaaa ctgac
配列番号4:ggaggggact gagcctg
配列番号5:aactatacaa cctactacct ca
配列番号6:ctgccccaaa atgcct
配列番号7:gcggcatggc tggatc
配列番号8:acagagtttt acgatc
配列番号9:agacatcgtc acacctatca ta
配列番号10:gcgtttcagc atattga
配列番号11:uagcuuauca gacugauguu ga
配列番号12:aggcaagaug cuggcauagc u
配列番号13:gucaguuugu caaau
配列番号14:caggcucagu ccccucc
配列番号15:ugagguagua gguuguauag uu
配列番号16:aggcauuuug gggcag
配列番号17:gauccagcca ugccgc
配列番号18:gaucguaaaa cucugu
配列番号19:uaugauaggu gugacgaugu cu
配列番号20:ucaauaugcu gaaacgc
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18