(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の電気コネクタの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する使用方法、作用効果等についても重複説明を省略する。
【0038】
また、本明細書中では、電気コネクタ1,21,41,61の幅方向(長手方向)をX方向、前後方向(短手方向)をY方向、高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。電気コネクタ1,21,41の高さ方向Zにおける第1の基板2の側を「下側」とし、第1の基板2と対向配置される第2の基板4の側を「上側」として説明する。ただし、電気コネクタ61については固定部材62の側を「上側」とし、第1の基板2の側を「下側」として説明する。しかし、これらによって電気コネクタ1,21,41,61の基板2,4への実装方法や使用方法を限定するものではない。また、
図17〜
図25,
図27〜
図29では第2の基板4のみが振動する例を示し、
図26,
図30〜
図33では第1の基板2のみが振動する例を示す。しかし、基板の振動はそれらに限定されるものではない。
【0039】
なお、プラグコネクタ3、ソケットコネクタ5、プラグ端子11、ソケット端子10について、背面図は正面図と同様に表されるため、記載を省略する。また、それらについて、左側面図は右側面図とは左右対称として表されるため、記載を省略する。
【0040】
第1実施形態〔図1〜図22〕:
第1実施形態の電気コネクタ1は、
図16で示すように、「第1の支持部材」としての第1の基板2と、「第2の支持部材」としての第2の基板4と、第1の基板2に実装される「第1のコネクタ」としてのプラグコネクタ3と、第2の基板4に実装される「第2のコネクタ」又は「接続対象物」としてのソケットコネクタ5とを備える。そして、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが互いに嵌合することで、第1の基板2と第2の基板4とが導通接続する。
【0041】
〔プラグコネクタ〕
本実施形態のプラグコネクタ3は、
図1〜
図5で示すように「第1のハウジング」としてのプラグハウジング6と、「第1の端子」としてのプラグ端子11とを備える。またプラグコネクタ3は表面実装タイプのコネクタであり、第1の基板2の基板面に表面実装されることで、第1の基板2と導通接触する。
【0042】
〔プラグハウジング〕
プラグハウジング6は、絶縁性樹脂の成型品でなり、固定ハウジング7と、可動ハウジング8とを備えるフローティングコネクタである。
【0043】
固定ハウジング7は、天面及び底面が開口する角筒形状でなる。また、固定ハウジング7は、幅方向Xに沿う前面部7a及び背面部7bと、前後方向Yに沿う側面部7cとを有する。また固定ハウジング7は、前面部7aと、背面部7bと、側面部7c,7cとによって囲まれる可動空間部7dとを備える。
【0044】
前面部7aと背面部7bは、可動空間部7dに面する側の板面に、プラグ端子11を固定する端子収容孔7a1,7b1を有する。端子収容孔7a1,7b1は幅方向Xに沿って等間隔で複数並列に設けられる。また、前面部7aと背面部7bの幅方向Xにおける両端側には、プラグコネクタ3を第1の基板2に固定するための取付具7eが設けられる。
【0045】
可動ハウジング8は、上面が開口する箱型形状をなしており、前面部8aと、背面部8bと、側面部8c,8cと、底面部8eとを有する。また可動ハウジング8は底面部8eの中央から上側に向けて突出する嵌合壁部8fを有している。可動ハウジング8の嵌合壁部8fと、後述のプラグ端子11のプラグ接触部11eとは、ソケットハウジング9の受入口9d1に挿入される嵌合部3Aを形成する。さらに、底面部8e1は、第1の基板2に当接する当接部8e1を有する。
【0046】
嵌合壁部8fは、X−Z平面に沿う平板状でなり、前面部8aと対向する板面と、背面部8bと対向する板面とを有する。各板面には後述するプラグ端子11のプラグ接触部11eを収容する端子溝8f2を有する。また、可動ハウジング8は、ソケットコネクタ5が挿入される嵌合室8dを有しており、嵌合室8dは、前面部8aと、背面部8bと、側面部8c,8cと、底面部8eとによって囲まれた空間として形成される。プラグ端子11と後述のソケット端子10は、この嵌合室8dで導通接触する。
【0047】
〔プラグ端子〕
プラグ端子11は、導電性金属板を板厚方向に折り曲げて形成される。また、プラグ端子11は、
図11,
図12で示すように、基板接続部11aと、固定部11bと、「可動ばね」としての可動部11cと、可動ハウジング8に固定される基端部11dと、「第1の接点部」又は「第1の接触部」としてのプラグ接触部11eとを有する。プラグ端子11は、嵌合壁部8fを介して対向する端子対を形成する。
【0048】
基板接続部11aは、プラグ端子11の端部に設けられ、第1の基板2の板面に沿う板状片として形成される。この基板接続部11aが第1の基板2に対して半田付けされることで、プラグ端子11が第1の基板2に固定される。
【0049】
固定部11bは、基板接続部11aに繋がり、高さ方向Zに沿って設けられる。また、幅方向Xに沿う両端側には、それぞれ圧入突起11b1が複数設けられる。この固定部11bが、
図18で示すように固定ハウジング7の端子収容孔7a1,7b1に圧入されて、圧入突起11b1が端子収容孔7a1,7b1の内壁(図示略)に噛み込むことでプラグ端子11が固定ハウジング7に対して固定される。
【0050】
可動部11cは、板面方向で折り曲げられる複数の屈曲部を有するため、例えば板縁方向で屈曲する屈曲部を有する場合と比較して、さらに屈曲する方向や逆に伸長する方向に弾性変形しやすい。また、可動部11cは、プラグハウジング6に対して固定されていないため、荷重を受けることで容易に変位することができる。可動部11cは可動ハウジング8に対するソケットコネクタ5の嵌合方向及び抜去方向で、可動ハウジング8と固定ハウジング7とを弾性的に繋ぎ、固定ハウジング7を可動ハウジング8に対して変位可能に支持する。
【0051】
可動部11cは、固定部11bの上端から上側に向けて伸長する第1の伸長部11c1と、第1の伸長部11c1の上端に繋がって、略逆U字状に折り返す第1の屈曲部11c2と、第1の屈曲部11c2に繋がって下側に向けて伸長する第2の伸長部11c3と、第2の伸長部11c3の下端に繋がる第2の屈曲部11c4と、第2の屈曲部11c4に繋がって前後方向Yに沿って伸長する第3の伸長部11c5と、第3の伸長部11c5に繋がって上側に向けて屈曲する第3の屈曲部11c6とを有する。
【0052】
第1の伸長部11c1は、固定部11bの上端から伸長する細片状に形成される。また、第1の伸長部11c1は、固定部11bから高さ方向Zにおける上側かつ、前後方向Yにおいてプラグ接触部11eに近づく方向に向けて傾斜して伸長する。よって、固定ハウジング7の前面部7aの側に固定されるプラグ端子11では、第1の伸長部11c1と前面部7aとの間に可動間隙7fが形成される。また、固定ハウジング7の背面部7bの側に固定されるプラグ端子11では、第1の伸長部11c1と背面部7bとの間に可動間隙7fが形成される。第1の伸長部11c1は、この可動間隙7fの内部で前後方向Yや高さ方向Zに沿って変位することができる。
【0053】
第1の屈曲部11c2は、第1の伸長部11c1の上端に繋がり、板面方向で略U字状に折り返す形状でなる。また、第1の屈曲部11c2は、第1の伸長部11c1よりも板幅が広く形成されており、剛性が高められている。
【0054】
第2の伸長部11c3は、第1の屈曲部11c2において第1の伸長部11c1とは反対側の端部に繋がり、高さ方向Zにおける下側に向けて伸長する。この第2の伸長部11c3は前後方向Yや高さ方向Zに沿って弾性変位することができる。
【0055】
第2の屈曲部11c4は、第2の伸長部11c3の下端に繋がって、第2の伸長部11c3と第3の伸長部11c5とを連結する。そして、板面方向で略直角に屈曲する。
【0056】
第3の伸長部11c5は、第2の屈曲部11c4に繋がり、前後方向Yに沿って伸長する細片状でなる。この第3の伸長部11c5は高さ方向Zや前後方向Yに沿って弾性変位することができる。また、屈曲部11c2,11c4,11c6等がさらに屈曲する方向や伸長する方向に弾性変形することで、第3の伸長部11c5が、例えば第2の屈曲部11c4の側よりも第3の屈曲部11c6の側の方で高さ方向Zにおける上側に向けて変位し、傾斜することで、後述のプラグ接触部11eを高さ方向Zにおける上側に向けて弾性変位させることができる(
図22)。また逆に、第3の伸長部11c5が、例えば第2の屈曲部11c4の側よりも第3の屈曲部11c6の側の方で高さ方向Zにおける下側に向けて変位し、傾斜することで、後述のプラグ接触部11eを高さ方向Zにおける下側に向けて弾性変位させることができる(
図20)。
【0057】
第3の屈曲部11c6は、第3の伸長部11c5に繋がり、第3の伸長部11c5と基端部11dとを連結する。また、第3の屈曲部11c6は板面方向で略直角に屈曲する。
【0058】
基端部11dは、可動部11cに繋がり、高さ方向Zに沿って設けられる。また、幅方向Xにおける両端側には、それぞれ圧入突起11d1が複数設けられる。この圧入突起11d1が、
図18で示すように可動ハウジング8の端子溝8f2に圧入されて、圧入突起11d1が前記端子溝8f2の内壁(図示略)に噛み込むことでプラグ端子11が可動ハウジング8に対して固定されている。
【0059】
プラグ接触部11eは、基端部11dに繋がり、嵌合壁部8fに沿わせて上側に向けて伸長する板状片として設けられる。プラグ接触部11eの一面は、プラグ端子11を固定ハウジング7に固定した状態で、嵌合空間に露出する接触面11e1となる。この接触面11e1がソケット端子10と導通接触する。
【0060】
〔ソケットコネクタ〕
ソケットコネクタ5は、ソケットハウジング9と、「接触子」としてのソケット端子10とを備える。また、ソケットコネクタ5は、DIP(Dual In−line Package)タイプのコネクタであり、第2の基板4に設けられるスルーホール4aにソケット端子10のピン状の基板接続部10aが挿入されて半田付けされることでソケット端子10が第2の基板4に対して固定される。
【0061】
〔ソケットハウジング〕
ソケットハウジング9は、絶縁性樹脂の成型品でなり、
図6〜
図10で示すように天面部9dに開口する中空の箱型形状でなる。また、ソケットハウジング9は、前面部9a、背面部9b、側面部9c,9cとを有し、この両側面部9c,9cの上部(
図6〜
図10における下部)には第2の基板4に半田付けされる取付具9fが設けられる。
【0062】
またソケットハウジング9は、前面部9aと、背面部9bと、側面部9c,9cとによって囲まれる嵌合室9eと、嵌合室9eに連通し、天面部9dに開口する受入口9d1とを有する。受入口9d1は、プラグハウジング6の嵌合壁部8fと、プラグ端子11のプラグ接触部11eからなる嵌合部3Aを受け入れる。これにより、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3が嵌合する。
【0063】
前面部9aと、背面部9bとにおいて嵌合室9eに対向する内壁9gには、ソケット端子10が収容される端子収容孔9g1が設けられる。端子収容孔9g1は幅方向Xに沿って等間隔で複数並列に設けられる。
【0064】
〔ソケット端子〕
ソケット端子10は、導電性金属板を打ち抜いて形成した打抜き端子である。また、ソケット端子10は、
図13,
図14で示すように、基板接続部10aと、基端部10bと、「第2の接触部」としてのソケット接触部10cとを有する。ソケット端子10は、嵌合室9eを介して対向する端子対を形成する。
【0065】
基板接続部10aは、高さ方向Zに沿って伸長するピン状でなる。そして、第2の基板4に設けられるスルーホール4aに挿入されて半田付けされることで、ソケット端子10が第2の基板4と導通接触する。
【0066】
基端部10bは、基板接続部10aの下端(
図6〜
図10における上端)に繋がり、X−Z平面に沿う板面を有する平板状にて形成される。また、基端部10bの幅方向Xにおける両端側には、幅方向Xに沿って突出する圧入突起10b1がそれぞれ複数設けられる。基端部10bがソケットハウジング9の内壁9gに設けられる端子収容孔9g1に圧入され、圧入突起10b1が内壁(図示略)に対して噛み込むことで、ソケット端子10がソケットハウジング9に対して固定される。
【0067】
ソケット接触部10cは、リア端子12とフロント端子13とを有する。
【0068】
リア端子12は、
図13,
図14で示すようにプラグ端子11と導通接触するリア接点部12aと、リア接点部12aを弾性支持するリアバネ部12bとを有する。
【0069】
リアバネ部12bは、基端部10bの下端(
図6〜
図10,
図13,
図14における上端)であって幅方向Xにおける略中央に繋がる細片状に形成される。また、リアバネ部12bは嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11との接触方向に傾斜しつつ下方(
図6〜
図10,
図13,
図14における上方)に向けて伸長する。先端側が板厚方向に折り曲げられてプラグ端子11との接触方向に向けて山状に屈曲し、その屈曲部分がリア接点部12aとしてプラグ端子11と導通接触する。また、リアバネ部12bの基端側は先端側と比較して板幅方向で大きく設けられている。これにより、リアバネ部12bの基端側の剛性が高められており、リア接点部12aがプラグ端子11の接触面11e1によって押圧された際に、応力を分散させることができる。よって、例えば塑性変形が生じたり、リア接点部12aが基端側で破損や損傷を受けたりし難くすることができる。また、リアバネ部12bを先端側に向けて板幅が狭くなるテーパーバネとして形成することで、全長にわたって柔らかく弾性変形できるようにしている。
【0070】
また、リア接点部12aよりも先端側には、嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11から離れる方向に向けて傾斜する先端傾斜部12cが形成される。プラグ端子11の接触面11e1は、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合する際に先端傾斜部12cに摺動しながらリア接点部12aを接触面11e1から離れる方向に向けて変位させる。
【0071】
フロント端子13は、
図13,
図14で示すようにプラグ端子11と導通接触するフロント接点部13aと、フロント接点部13aを弾性支持するフロントバネ部13bとを有する。フロント接点部13aはリア接点部12aと幅方向Xにおける同一位置に配列されているため、後述の通りフロント接点部13aがプラグ端子11の接触面11e1をワイピングして異物を除去することができる。
【0072】
フロントバネ部13bは、二股状でなり、基端部10bの下端(
図6〜
図10における上端)であって幅方向Xにおいてリアバネ部12bの両側に繋がる、細片状で形成される2本のフロント脚部13b1,13b1を有する。
【0073】
各フロント脚部13b1は基端側から先端側にかけて、嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11との接触方向に傾斜しつつ下方(
図6〜
図10における上方)に向けて伸長する。フロント脚部13b1,13b1はリアバネ部12bの両側で、リアバネ部12bと平行して伸長するが、その先端側であって、リア端子12の先端傾斜部12cの高さ方向Zにおける下側(
図6〜
図10,
図13,
図14における上側)で2つのフロント脚部13b1が互いに近づく方向に屈曲し、2本のフロント脚部13b1,13b1が繋がって一体となる。さらにそこから先端側は、嵌合状態におけるプラグコネクタ3のプラグ端子11の接触面11e1に近づく方向に向けて山状に屈曲し、その屈曲部分がフロント接点部13aとしてプラグ端子11と導通接触する。また、フロント接点部13aのさらに先端側には、先端傾斜部13cが形成される。プラグ端子11の接触面11e1は、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合する際に先端傾斜部13cに摺動しながらフロント接点部13aを接触面11e1から離れる方向に向けて変位させる。
【0074】
フロント脚部13b1とリアバネ部12bとの間には、空間部10dが形成されており、フロント脚部13b1とリアバネ部12bとは互いに独立して弾性変形する。また、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5との嵌合状態と非嵌合状態のいずれにおいても、フロント端子13はリア端子12とは接触しない。通常の嵌合作業時には、リア端子12は前後方向Yに沿って変形するため、フロント端子13とは接触しない。万が一、こじりなどによってリア端子12に幅方向Xの変形が生じ、フロント脚部13b1の側に向けて変形した場合であっても、リアバネ部12bは2本のフロント脚部13b1によって挟まれた空間内に配置されているため、フロント脚部13b1に当接することによってそれ以上の変形が規制される。よって、リア端子12が意図せず幅方向Xに過度に変形するといった事態を回避することができる。また、フロントバネ部13bは幅方向Xに沿って2本のフロント脚部13b1を有しているため、幅方向Xで変形し難くなっている。
【0075】
フロント端子13の接圧とリア端子12の接圧は適宜調整できるが、フロント端子13の接圧はリア端子12の接圧よりも若干低くすることが好ましい。こうすることで、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5の嵌合時に弱い力で作業を行うことができるためである。また、フロント端子13のフロント接点部13aがリア端子12のリア接点部12aよりもプラグ端子11側に突出して形成されており、フロント接点部13aを確実にプラグ端子11の接触面11e1に接触できるようにしている。これにより、後述する異物除去効果を高めることができる。
【0076】
フロント接点部13aの幅とリア接点部12aの幅は目的に応じて設定することができる。一例として、フロント接点部13aの幅とリア接点部12aの幅を略同幅とすることができる。プラグコネクタ3との嵌合に際し、フロント接点部13aが通った後をリア接点部12aが通るため、幅が同等であれば、フロント接点部13aが通ってワイピングした後にリア接点部12aを過不足なく通らせることができるからである。これにより、フロント接点部13aがプラグ端子11と接触し、ワイピングした位置にリア接点部12aを導通接触させやすくすることができる。
【0077】
そうした一方で、フロント接点部13aの幅をリア接点部12aの幅よりも幅広にすることができる。フロント接点部13aを幅広にすることで幅広の範囲でワイピングを行うため、フロント端子13とリア端子12とが幅方向Xで相対的に位置ずれしたような場合であっても、リア接点部12aの接触箇所からの異物除去性を高めることができる。
【0078】
〔嵌合方法の説明〕
以上のように構成されたソケットコネクタ5とプラグコネクタ3からなる電気コネクタ1は、第1の基板2と第2の基板4を電気的に接続することができる。
図15〜
図19で示すように、第1の基板2に接続されたプラグコネクタ3の上方から第2の基板4に接続されたソケットコネクタ5を嵌合させる場合は、ソケットコネクタ5を下方に移動させて、プラグコネクタ3の嵌合部3Aをソケットコネクタ5の受入口9d1に挿入する。
【0079】
嵌合室9eを介して対向するソケット端子10が有するフロント接点部13a同士とリア接点部12a同士の間隔は、いずれも嵌合部3Aの前後方向Yの長さよりも短く設けられている。従って、それらのフロント接点部13a同士,リア接点部12a同士の間に嵌合部3Aを挿入する際には、嵌合壁部8fの先端部8f1によって、フロント接点部13a同士,リア接点部12a同士の間を押し広げる。具体的には、まずソケット端子10がプラグ端子11に先端側で接触し、ソケットコネクタ5のフロント端子13の先端傾斜部13cがプラグコネクタ3の嵌合壁部8fの先端部8f1に突き当たり、嵌合壁部8fを嵌合室9eの奥側にガイドする。続いてリア端子12の先端傾斜部12cが嵌合壁部8fの先端部8f1に突き当たり、同様に嵌合壁部8fを嵌合室9eの奥側にガイドする。
【0080】
しかし本実施形態では、可動部11cが挿抜方向に変位する変位荷重を、接触部10c,11e同士が挿抜方向に位置ずれする荷重よりも小さく設定しており、接触部10c、11e同士がより摺動し難くなっている。よって、嵌合作業を続けても、接触部10c、11e同士が互いに大きく摺動しない。これに対して接触部10c、11eを介して可動部11cに負荷が掛かり、可動部11cがソケットコネクタ5の挿入方向で変位する。その後、可動部11cが高さ方向Zで短くなる方向に限界まで弾性変形したり、可動ハウジング8の当接部8e1が第1の基板2に接触したりすることで、可動部11cの変位が停止する。そこからさらに、嵌合作業を続けて嵌合部3Aをプラグハウジング6の嵌合室9eに挿入することで、今度はソケット端子10のフロント接点部13aとリア接点部12aがプラグ端子11に対して摺動する。さらに嵌合作業を進めることで、プラグ端子11とソケット端子10とは最終的に、後述する通り正規の接触位置P2で互いに導通接触することができる。
【0081】
この嵌合状態で、対向するソケット端子10,10のフロント接点部13a,13aとリア接点部12a,12a同士が同じ荷重で嵌合部3Aに対して押圧接触する。これにより、ソケット端子10,10のソケット接触部10c,10cはプラグ端子11の嵌合部3Aを挟持するようにプラグ接触部11eと導通接触することができる。
【0082】
〔異物除去方法の説明〕
上記の通り、フロント接点部13aとリア接点部12aとが幅方向Xにおける同一位置に配列されている。よって、ソケット端子10とプラグ端子11とが摺動する際に、リア接点部12aは、先端傾斜部13cとフロント接点部13aが接触したプラグ端子11の接触面11e1上の軌跡を通って接触する。これにより、プラグ端子11にゴミや埃等の異物が付いていても、フロント接点部13aがこの異物を除去するか保持するため、フロント端子13が移動した軌跡からは異物が除去されている。従って、異物が除去された軌跡を通るリア接点部12aは、プラグ端子11に対する確実な導通接触を行うことができる。そして最後に
図21で示すように、フロント接点部13aとリア接点部12aがともにプラグ端子11の接触面11e1と接触した状態となる。このようにプラグコネクタ3とソケットコネクタ5の嵌合状態において、プラグ端子11とソケット端子10の相互間の導通接触の信頼性を高めることができる。
【0083】
〔X、Y方向での可動動作の説明〕
可動ハウジング8の固定ハウジング7に対する前後方向Y及び幅方向Xの可動について説明する。まず、可動部11cの第1の伸長部11c1と固定ハウジング7の前面部7a又は背面部7bとの間には可動間隙7fが設けられている。よって、例えば第1の伸長部11c1が可動間隙7fの内部で前面部7aや背面部7bに近づいたり離れたりする方向に前後方向Yに沿って変位することができる。また、例えば第2の伸長部11c3が、前面部7aや背面部7bに近づいたり離れたりする方向で前後方向Yに沿って弾性変形することもできる。これらによって電気コネクタ1に前後方向Yの振動が加えられると、可動部11cが前後方向Yで弾性変形することで可動ハウジング8が固定ハウジング7に対して前後方向Yで弾性変位して、その振動を吸収することができる。
【0084】
また、可動部11cは導電性金属板を折り曲げて形成されており、細片状でなる。よって、可動部11cは一端側と他端側とが幅方向Xで異なる位置にずれるように、弾性変形することができる。また、可動部11cは一端側が固定ハウジング7に固定される固定部11bに繋がり、他端側が可動ハウジング8に固定される基端部11dに繋がる。よって、電気コネクタ1に幅方向Xの振動が加えられると、可動部11cが幅方向Xで弾性変形することで可動ハウジング8が固定ハウジング7に対して幅方向Xで相対変位して、その振動を吸収することができる。
【0085】
さらに、プラグハウジング6が備える可動ハウジング8の前面部8aと固定ハウジング7の前面部7aとの間、および可動ハウジング8の背面部8bと固定ハウジング7の背面部7bとの間には、可動空間部7dが形成されている。従って、可動ハウジング8は可動空間部7dの内部で固定ハウジング7に対して前後方向Yで相対変位することができる。また、プラグハウジング6の可動ハウジング8の側面部8cと固定ハウジング7の側面部7cとの間にも、可動空間部7dが形成されている。よって、可動ハウジング8は可動空間部7dの内部で固定ハウジング7に対して幅方向Xでも相対変位することができる。
【0086】
プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合している状態で、電気コネクタ1に対して前後方向Yや幅方向Xの振動が加えられた場合、プラグ端子11の可動部11cが弾性変形することで、プラグコネクタ3の可動ハウジング8が固定ハウジング7に対して相対的に変位することができる。こうして振動を吸収し、プラグ端子11とソケット端子10の導通接触を維持することができる。
【0087】
〔Z方向での可動動作の説明〕
続いて、可動ハウジング8の固定ハウジング7に対する高さ方向Zの可動について説明する。従来のコネクタでは、高さ方向Zの振動に対して、プラグ端子とソケット端子とが振動に合わせて互いに高さ方向Zに摺動することで、導通接触を維持する。しかし、この方法では、プラグ端子とソケット端子との導通接触部分で摩耗が生じ、接続信頼性が低下するおそれがある。これに対して本実施形態の電気コネクタ1では、第1の基板2又は第2の基板4が変位したときに、プラグ端子11が有する可動部11cが、プラグ接触部11e又はソケット接触部10cをプラグコネクタ3とソケットコネクタ5の挿抜方向に変位可能に支持することができる。可動部11cが高さ方向Zの振動を吸収することができるため、プラグ接触部11eのソケット接触部10c正規の接触位置P2での接触状態を維持することができる。よって、プラグ端子11とソケット端子10の摩耗を抑制したり、導電性を高めるためのメッキはがれ等を生じ難くしたりすることができる。これにより、電気コネクタ1の接続信頼性を高めることができる。
【0088】
また、振動が基板2,4の固有振動数に達すると、基板2,4が共振することでコネクタ3,5が大きく振動する場合がある。この場合、従来の接点部同士を摺動させることによる対応方法では摺動移動可能な距離が短いため、大きな振動に対応しきれず接点部同士が離間しやすくなるため、導通接触が不安定になるおそれがある。しかし、本実施形態の電気コネクタ1によれば、そうした共振が生じても可動部11cが弾性変形することで、十分にプラグ端子11をソケット端子10の変位に追従させ、接触部10c,11e同士を摺動させずに導通接触状態を維持することができる。よって、より接続信頼性が高い電気コネクタ1とすることができる。
【0089】
以下、本実施形態の電気コネクタ1のZ方向での可動動作について具体的に説明する。可動部11cが挿抜方向で弾性変形する変位荷重は、ソケット端子10とプラグ端子11が正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重よりも小さく設定されている。従って、電気コネクタ1に高さ方向Zの振動が加えられた場合、ソケット接触部10cとリア接触部11eとが互いに摺動する前に、まず可動部11cが挿抜方向で変位する。即ち、可動部11cがプラグハウジング6の内部で第1の基板2の側に向けて弾性変形したり、あるいは可動部11cが屈曲する方向に限界まで変形したりすることで、挿抜方向で弾性変形する。この間、ソケット端子10とプラグ端子11は正規の接触位置P2から相対的に位置ずれすることがないため、それらの導通接触状態を維持することができる。よって、プラグ端子11がソケット端子10に追従して弾性変位し、導通接触状態を維持することができる。
【0090】
以下、さらに詳しく説明する。電気コネクタ1に高さ方向Zの振動が加えられることで、可動部11cの例えば第2の屈曲部11c4が、さらに屈曲する方向に弾性変形し、逆に第3の屈曲部11c6が伸長する方向に弾性変形する。これと同時に、第1の屈曲部11c2が前面部7aや背面部7bに近づく方向であって、可動ハウジング8から離れる方向に弾性変位することで、プラグ端子11のプラグ接触部11eを高さ方向Zにおける上側に向け弾性変位させることができる(
図22)。
【0091】
また、反対に、第3の屈曲部11c6が、さらに屈曲する方向に弾性変形し、逆に第2の屈曲部11c4が、伸長する方向に弾性変形する場合もある。これと同時に、第1の屈曲部11c2が前面部7aや背面部7bから離れる方向であって、可動ハウジング8に近づく方向に弾性変位することによって、プラグ端子11のプラグ接触部11eを高さ方向Zにおける下側に向けて相対変位させることができる(
図20)。これにより、高さ方向Zの振動が加えられても、可動部11cが弾性変形することでその振動を吸収することができる。
【0092】
〔可動動作の規制方法〕
可動ハウジング8は固定ハウジング7に対して相対変位することができるが、幅方向X及び前後方向Yの相対変位は可動空間部7dの内部に制限される。また、可動ハウジング8の側面部8cの下端には幅方向Xに沿って突出する係止部8gが設けられる。固定ハウジング7には、その係止部8gが挿入される凹部7gが設けられる。可動ハウジング8が固定ハウジング7に対して高さ方向Zにおける上側に向けて変位しても、係止部8gが凹部7gの内縁7g1に係止することで固定ハウジング7に対する可動ハウジング8の変位が規制される。こうして可動ハウジング8の固定ハウジング7に対する幅方向X、前後方向Y、高さ方向Zの相対変位を制限することができる。また、プラグ端子11は固定ハウジング7と可動ハウジング8に対して固定されているため、同様に可動部11cの弾性変形も規制される。さらに、可動部11cをプラグハウジング6の内部に収容しているため、プラグハウジング6の壁体によっても可動部11cの弾性変形が規制される。
【0093】
〔ソケット端子をプラグ端子に対して位置ずれさせるために必要な荷重の調整方法〕
ソケット端子10のフロントバネ部13bとリアバネ部12bについて、板厚、板幅、プラグコネクタ3の嵌合方向に対する傾斜角度等を調整することで、フロント端子13とリア端子12との正規の接触位置P2からの挿抜方向における相対的な位置ずれを生じさせるために必要な荷重を調整することができる。即ち、フロントバネ部13bとリアバネ部12bの板厚を厚くすることや、板幅をより広くすることや、プラグコネクタ3の挿抜方向に対する傾斜角度をより大きくすることで、フロントバネ部13bとリアバネ部12bをプラグ端子11に対してより強い力で接触させると共に、プラグ端子11から離れる方向に変形し難くすることができる。これにより前記荷重を大きくすることができる。また、逆にそれらの板厚を薄くすることや、板幅をより狭くすることや、プラグコネクタ3の嵌合方向に対する傾斜角度をより小さくすることで、フロントバネ部13bとリアバネ部12bをプラグ端子11に対してより弱い力で接触させると共に、プラグ端子11から離れる方向に変形しやすくすることができる。これにより前記荷重を小さくすることができる。
【0094】
また、フロント接点部13aとリア接点部12aの板幅をより広くすることで、プラグ端子11の接触面11e1との接触面積を増やし、摩擦力を高めることができる。これにより、前記荷重を大きくすることもできる。
【0095】
上記とは反対に各接点部12a,13aの板幅を細くしたり、リアバネ部12bやフロントバネ13bを柔らかくしたりすることで、各接点部12a,13aで発生する摩擦力を小さくしても良い。また、フロント接点部13aとリア接点部12aの板幅をより短くすることで、プラグ端子11の接触面11e1との接触面積を減らし、摩擦力を小さくすることもできる。これらにより、前記荷重を小さくすることもできる。
【0096】
また、フロント接点部13aとリア接点部12aという2つの接点部によってプラグ端子11に押圧接触する。よって、摩擦力がフロント接点部13aとリア接点部12aの2箇所で発生するため、1つの接点部で押圧接触する場合と比較して、正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重を容易に高めることができる。また、プラグ端子11がフロント脚部13b1を2つ有しており、かつ、それら2つのフロント脚部13b1の板幅方向の長さの合計が、可動部11cの板幅方向の長さよりも長く設定されている。これによっても、ソケット端子10がプラグ端子11に対して強く押圧接触し、摺動する際の摩擦力が高められているため、正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重を可動部11cが挿抜方向に弾性変形するために必要な荷重よりも大きくすることができる。
【0097】
各接点部12a,13aに、前記のように摺動する際に要する荷重を分散させることで、各接点部12a,13aがプラグ端子11に対してより弱い力で押圧接触することができるため、繰り返してコネクタ3,5同士が挿抜される場合に各接触部10c、11eが摺動しても、各接点部12a,13aやプラグ端子11の接触面11e1に摩耗や損傷を生じさせ難くすることができる。
【0098】
〔可動部を弾性変形させるために必要な荷重の調整方法〕
プラグ端子11の可動部11cについては、板幅を調整することによって可動部11cを弾性変形させるために必要な荷重を調整することができる。具体的には、可動部11cの板幅を細くすることによって、より小さな荷重で弾性変形する可動部11cとすることができる。また反対に、可動部11cの板幅を広くすることによって、弾性変形させるためにより大きな荷重を必要とする可動部11cとすることができる。特に本実施形態では、可動部11cの第1の屈曲部11c2、第3の屈曲部11c6の板幅が、各伸長部11c1,11c3,11c5の板幅よりも広く設定されている。これに対して第3の屈曲部11c4の板幅は、各伸長部11c1,11c3,11c5と同程度の広さとなっており、他の屈曲部11c2,11c6よりも細く設定されている。従って、第2の屈曲部11c3は、他の屈曲部11c2,11c6よりも弾性変形しやすく、柔らかくなっている。よって、高さ方向Zの振動が加えられる際には、この第2の屈曲部11c3が最も弾性変形しやすくなっている。このように、可動部11cの部分ごとに板幅を変えることで、弾性変形させるための荷重を調整することができる。
【0099】
〔基板の共振等の振動への対応〕
基板2,4の共振等により、電気コネクタ1に特に大きな振動が加えられることがある。この場合には、従来のようにプラグ端子11とソケット端子10とを摺動させることでその振動に対応しようとすると、各端子に生じる摩耗や損傷が大きくなってしまう。また、共振による基板2,4の振動の大きさと比較して、接触部10c,11e同士が互いに摺動移動可能な距離が短いために、大きな振動に対応できずにプラグ端子11とソケット端子10とが離間する場合もある。しかし、本実施形態の電気コネクタ1のように可動部11cが十分に挿抜方向で弾性変形するものとすることで、高さ方向Zの振動を吸収するものとすることができる。こうして、プラグ端子11,ソケット端子10の接触部分に摩耗が生じ難くし、かつ十分に共振による振動も吸収することができる。
【0100】
本実施形態の電気コネクタ1では、この共振等の振動が生じても確実に導通接触が維持できる機構がさらに備わっており、この機構について、
図17分図(a)〜(f)の模式図を参照しつつ説明する。なお、ここでは第1の基板2は振動せず、第2の基板4のみが振動する場合を例示する。しかし、反対に第1の基板2のみが振動したり、基板2,4の両方が振動したりする場合であっても、同様に振動への対応が可能である。
【0101】
本実施形態の電気コネクタ1では、嵌合前の状態では、可動ハウジング8と第1の基板2との間には、間隙S’が設けられている(
図17分図(a))。そして嵌合作業開始直後には、プラグ接触部11eと接触することによる前記挿入方向の負荷がソケット接触部10cを介して可動部11cに掛かり、可動部11cが第1の基板2の側に弾性変形する(
図17分図(b))。これにより、可動ハウジング8の当接部8e1が第1の基板2に接触するか、可動部11cが高さ方向Zで短くなる方向に限界まで弾性変形することで、可動ハウジング8が第1の基板2の側に弾性変位する。そして、この状態で第1の基板2にはスペーサRが設置されており、第2の基板4がスペーサRに接触する位置で固定される(
図17分図(b))。この場合、可動ハウジング8と第1の基板2の間には間隙がほとんど無いか、可動部11cが高さ方向Zで短くなる方向に限界まで弾性変形しているかの何れかの状態となっている。この状態では、第2の基板4が可動ハウジング8から離れる方向に向けて高さ方向Zで変形する場合等を除き、可動ハウジング8が第1の基板2の側に弾性変位することは困難である。その一方で、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3との間には高さ方向Zで嵌合間隙S2が形成されている。そのため可動ハウジング8は、高さ方向Zにおける第1の基板2の側よりも第2の基板4の側であって、前記嵌合間隙S2を狭める方向に向けて弾性変形しやすくなっている。この状態で、プラグ接触部11eとソケット接触部10cは、互いに初期接触位置P1で導通接触する(
図17(b)で示す「初期嵌合状態」)。
【0102】
ここで、コネクタ3,5の嵌合状態で対向する基板2,4間にはスペーサRが設置されており、基板2,4間の距離が一定に保たれることで、基板間接続構造Sが形成される。そして、上記嵌合作業において第2の基板4が第1の基板2に設置されているスペーサRに接触し、スペーサRに固定されることで嵌合作業が完了する。この状態で接触部10c,11eが互いに接触している位置を初期接触位置P1とすることができる。基板2,4に設置されているコネクタ3,5同士を嵌合させる場合には、このようにスペーサRの長さを変更することでコネクタ3,5同士の嵌合位置を調整することができるため、上記の初期接触位置P1や、後述する正規の接触位置P2を調整することもできる。
【0103】
この後、仮に第2の基板4に前記共振等が生じると、スペーサRが設置されている部分では基板2,4間の距離は変わらないが、それ以外の部分では第2の基板4が大きく振動して撓み、それらの距離が変わる場合がある。この場合、第2の基板4が第1の基板2に近づく方向に向けて一度撓み、第2の基板4’の状態となることで、ソケットコネクタ5も連動して第1の基板2に近づく方向に変位する。これにより、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3とが嵌合位置が深くなる方向に向けて相対変位しようとする(
図17分図(c))。即ち、ソケットコネクタ5は第2の基板4に固定されており、可動ハウジング8は第1の基板2と接触しているため、第1の基板2と第2の基板4との間隔が狭められることで可動ハウジング8の当接部8e1が固定ハウジング7によって押し込まれて、嵌合位置が深くなるように相対変位する。上述の通り、「初期嵌合状態」において、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3との間に高さ方向Zで嵌合間隙S2が形成されていることで、ソケットコネクタ5がプラグコネクタ3の嵌合室9eの内部に向けて相対変位する。これにより嵌合間隙S2が小さくなる(
図17分図(c)で示す「振動下死点状態」)。またこの時、嵌合室9eの内部では、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとが互いに摺動しながら初期接触位置P1から正規の接触位置P2まで移動する。こうして、一度、基板2,4同士が近づく方向で振動した後は、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとは互いに正規の接触位置P2で押圧接触した状態が維持される。
【0104】
この後、第2の基板4が、振動の反動でわずかな時間だけ振動が生じる前の平板状となる(
図17分図(d)で示す「嵌合状態」)。この場合、ソケットコネクタ5も連動して第1の基板2から離れる方向に向けて変位する。本実施形態では、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとが互いに位置ずれするために必要な負荷よりも、可動部11cが挿抜方向で弾性変形するために必要な負荷の方が小さい。よって、ソケット接触部10cが正規の接触位置P2でプラグ接触部11eに対して位置ずれせずに接触したまま追従し、可動部11cが伸長する方向に向けて弾性変形する。これにより、可動ハウジング8は固定ハウジング7に対して、高さ方向Zにおける上側に向けて相対変位する。これにより、可動ハウジング8は第1の基板2から浮いた状態となり、可動ハウジング8と第1の基板2との間には可動間隙S4が形成される。この状態で、可動ハウジング8は基板2,4に対して非接触の状態となり、ソケット接触部10cによる保持力でぶら下がったような状態となる。よって、第1の基板2の側に弾性変位することが可能となる。
【0105】
さらにこの後、第2の基板4が第1の基板2から離れる方向に向けて撓み、第2の基板4’’の状態になることで、今度はソケットコネクタ5も連動して第1の基板2から離れる方向に向けて変位する。この場合、プラグ接触部11eがソケット接触部10cに正規の接触位置P2で位置ずれせずに接触したまま追従する。また、可動ハウジング8は持ち上げられるように第2の基板4の側に向けて変位する。これにより、可動ハウジング8と第1の基板2との間の可動間隙S4はさらに大きくなる(
図17分図(e)で示す「振動上死点状態」)。
【0106】
上記のように、嵌合作業の初期段階で
図17分図(a)から分図(b)で示す「初期嵌合状態」となり、一度共振等により第2の基板4が第1の基板2に近づくように振動した後は(
図17分図(c)で示す「振動下死点状態」)、第2の基板4の振動により、
図17分図(d)で示す「嵌合状態」、
図17分図(e)で示す「振動上死点状態」となり、また「嵌合状態」(
図17分図(d),(f))から「振動下死点状態」(
図17分図(c))に戻るといった動きを繰り返す。即ち、プラグ接触部11eとソケット接触部10cの摺動は「初期嵌合状態」から「嵌合状態」に移行する際の一回のみである。その後は摺動や位置ずれが発生することなく、基板2,4に生じる共振等の高さ方向Zにおける大きな振動にも対応し、接触状態を安定して維持することができる。
【0107】
ここで、この「初期嵌合状態」と、「振動下死点状態」と、「嵌合状態」と、「振動上死点状態」について、電気コネクタ1の断面図を参照しつつさらに具体的に説明する。
【0108】
嵌合前の状態では、可動ハウジング8と第1の基板2との間には、間隙が設けられている(
図18)。しかし、嵌合作業によってソケットコネクタ5によって可動ハウジング8が第1の基板2の側に向けて押圧されることで、嵌合作業直後にプラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合している「初期嵌合状態」では可動ハウジング8は第1の基板2と接触し、それらの間には間隙がほとんど設けられない。この「初期嵌合状態」において、プラグコネクタ3の嵌合壁部8fの先端部8f1と、ソケットハウジング9の嵌合室9eの底部9e1との間には、嵌合間隙S1が形成される(
図19)。また、この状態において、ソケットハウジング9の天面部9dとプラグコネクタ3における可動ハウジング8の嵌合室8dの底部8d1との間には嵌合間隙S2が形成される(
図19)。さらに、係止部8gの上端と凹部7gの内縁7g1との間には嵌合間隙S3が形成される(
図5。但し、
図5で示すのは「嵌合状態」の電気コネクタ1であるため、「初期嵌合状態」の電気コネクタ1の嵌合間隙S3は、
図5で示すものよりも高さ方向Zが長い。)。
【0109】
これらの嵌合間隙S1,S2の高さ方向Zの長さは、高さ方向Zの第2の基板4の共振等による最大の撓み可能な長さよりもさらに長く設定されている。こうすることで、共振等により第2の基板4が、第1の基板2との距離が短くなるように大きく変形しても、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3とが嵌合間隙S1,S2を狭めるように移動して、互いに嵌合位置が深くなる方向に十分に相対変位することができる。こうして「初期嵌合状態」から「振動下死点状態」に移行する(
図19,
図20)。その際、接触部10c,11e同士は摺動しながら初期接触位置P1から正規の接触位置P2まで移動する。なお、基板2,4の両方が共振する場合には、嵌合間隙S1,S2の高さ方向Zの長さを、高さ方向Zの基板2,4の共振等による最大の撓み可能な長さの合計よりもさらに長く設定することで、同様の効果を得ることができる。
【0110】
「振動下死点状態」では、接触部10c,11e同士が正規の接触位置P2で導通接触する。この状態では、可動ハウジング8は第1の基板2と接触しており、それらの間には間隙がほとんど設けられていない(
図20)。また、第2の基板4が第1の基板2の側に向けて撓んだ分の長さだけ嵌合間隙S1,S2が短くなっている。
【0111】
「振動下死点状態」から、第2の基板4が第1の基板2から離れる方向に向けて変形することで、「嵌合状態」となる(
図21)。その際、ソケットコネクタ5が第1の基板2から離れる方向に変位することで、可動ハウジング8がそれに追従し、第1の基板2から浮き上がるように変位する。係止部8gの下端と第1の基板2の基板面と間には可動間隙S4が形成される(
図5,
図21)。この可動間隙S4は、「初期嵌合状態」及び「振動下死点状態」では設けられず、「嵌合状態」で形成される。「初期嵌合状態」及び「振動下死点状態」では可動ハウジング8が第1の基板2に接触し、それらの間には間隙は形成されていない。しかし、「振動下死点状態」から第2の基板4が第1の基板2から離れる方向に変形し、上記のように可動ハウジング8が第2の基板4の側に変位することで、初めて可動間隙S4が設けられる。この可動間隙S4が設けられることで、可動ハウジング8が第1の基板2の側に向けて相対変位することができる。よって、この状態でソケットコネクタ5がプラグコネクタ3に近づく方向、即ち挿入方向で相対変位すると、可動部11cが前記挿入方向に弾性変形することで、プラグ接触部11eとソケット接触部10cが位置ずれすることなく正規の接触位置P2における押圧接触を維持することができる(
図20,
図21)。
【0112】
「嵌合状態」において、第2の基板4が第1の基板2から離れる方向に変形すると、ソケットコネクタ5が連動して第1の基板2から離れる方向に変位するため、ソケット接触部10cも第2の基板4と同じ方向に向けて変位する。その際、プラグ接触部11eがソケット接触部10cに正規の接触位置P2で導通接触した状態で位置ずれせずに追従する。その際、可動ハウジング8もまた、プラグ接触部11eに追従してさらに浮き上がるように相対変位する(
図22で示す「振動上死点状態」)。ここで、嵌合間隙S3は、可動部11cの伸長方向での最大の可動長さよりも短く設定されている。こうすることで、「嵌合状態」から「振動上死点状態」への移行時に可動部11cが伸長するように弾性変形する際に、係止部8gの上端と凹部7gの内縁7g1とが接触することで可動ハウジング8の固定ハウジング7に対する変位を規制することができる。これにより、可動部11cの弾性変形が規制されて、可動部11cを高さ方向Zで長くなる方向に限界まで伸び切らせないようにすることができる。
この後、第2の基板4が第1の基板2に近づく方向に向けて再度変形することで、電気コネクタ1は「嵌合状態」に戻る(
図21)。これ以降、共振等の振動が生じて第2の基板4が変形すると、「振動下死点状態」、「嵌合状態」、「振動上死点状態」を繰り返す。こうして、可動部11cが弾性変形することで、接触部10c,11e同士が互いに摺動することなく正規の接触位置P2で接触状態を維持することができる。
【0113】
上述のとおり、本実施形態の電気コネクタ1によれば、幅方向Xや前後方向Yに加え、高さ方向Zの振動をもプラグ端子11,ソケット端子10の摩耗を生じさせずに吸収することができる。従って、例えば自動車用電装品等、特に振動に対する耐性を要する部品に使用でき、かつ接続信頼性の高い電気コネクタ1とすることができる。また、基板2,4の共振によって特に大きな振動が生じる場合であっても、その振動を容易に吸収することができる電気コネクタ1とすることができる。
【0114】
第2実施形態〔図23〜図25〕:
第1実施形態では、可動部11cをプラグ端子11が有する電気コネクタ1を示した。これに対し、本実施形態の電気コネクタ21は、「第1の支持部材」としての第1の基板2と、「第2の支持部材」としての第2の基板4と、第1の基板2に固定される「第1のコネクタ」としてのソケットコネクタ25と、第2の基板4に固定される「接続対象物」又は「第2のコネクタ」としてのプラグコネクタ23とを備える。また、ソケットコネクタ25は「固定ハウジング27と「可動ハウジング28とを備えるソケットハウジング29と、「可動ばね」としての可動部30cを有する「第1の端子」としてのソケット端子30とを備える。
【0115】
また、第1実施形態では、ソケット端子10のフロント接点部13a及びリア接点部12aが1つのプラグ端子11に対して一方側から導通接触する電気コネクタ1を示した。これに対してソケット端子30の複数の接点部30e3がプラグ端子31に対して挟持するように導通接触する電気コネクタ21とすることができる。以下、プラグコネクタ23と、ソケットコネクタ25の具体的な構成を記載する。
【0116】
〔プラグコネクタ〕
プラグコネクタ23は、DIPタイプのコネクタであり、第2の基板4に対して固定される。また、プラグコネクタ23は、プラグハウジング26と、「接触子」としてのプラグ端子31とを備える。
【0117】
〔プラグハウジング〕
プラグハウジング26は、絶縁性樹脂の成型品でなり、下側に向けて開口する箱状でなる。また、プラグハウジング26は、前面部26aと、背面部26bと、前面部26aと背面部26bと、底面部26cによって囲まれる嵌合室26dとを有する。
【0118】
〔プラグ端子〕
プラグ端子31は、ピン状の端子であり、第2の基板4に設けられるスルーホール4aに挿入される基板接続部31aと、ソケット端子30と押圧接触する「第1の接点部」又は「第1の接触部」としての接点部31bとを有する。
【0119】
〔ソケットコネクタ〕
ソケットコネクタ25は、表面実装タイプのコネクタであり、第1の基板2の基板面に半田付けされて固定される。ソケットコネクタ25は、「第1のハウジング」としてのソケットハウジング29と、ソケット端子30とを備える。
【0120】
〔ソケットハウジング〕
ソケットハウジング29は、絶縁性樹脂の成型品でなり、固定ハウジング27と、可動ハウジング28とを備える。
【0121】
固定ハウジング27は、天面及び底面が開口する角筒形状でなり、幅方向Xに沿う板面を有する前面部27aと背面部27bを備える。
【0122】
前面部27aと背面部27bは、プラグ端子31を固定する端子収容孔27a1,27b1を有する。端子収容孔27a1,27b1は幅方向Xに沿って等間隔で複数並列に設けられる。
【0123】
可動ハウジング28は、上面に開口部29d1を複数有する箱型形状をなしている。即ち、可動ハウジング28は、前面部28aと、背面部28bと、嵌合壁部28fと、底面部29fとを有している。底面部29fは、「初期嵌合状態」で第1の基板2に当接する当接部29f1を有する(
図23,
図24)。
【0124】
嵌合壁部28fは、X−Z平面に沿う平板状でなる。また、嵌合壁部28fは、先端部28f1の側から、プラグコネクタ23の嵌合室26cに挿入される。
【0125】
〔ソケット端子〕
ソケット端子30は、導電性金属板を板厚方向に折り曲げて形成され、ソケットハウジング29において嵌合壁部28fを介して前後方向Yに沿って対を成して設けられる。ソケット端子30は、第1実施形態のプラグ端子11と同様の構成でなる基板接続部30aと、固定部30bと、可動部30cと、基端部30dとを有する。可動部30cは、第1の伸長部30c1と、第1の屈曲部30c2と、第2の伸長部30c3と、第2の屈曲部30c4と、第3の伸長部30c5と、第3の屈曲部30c6とを有する。
【0126】
本実施形態のソケット端子30はソケット接触部30eを有しており、このソケット接触部30eは基端部30dに繋がり、高さ方向Zに沿って上側に設けられる。また、ソケット接触部30eは、基端部30dに繋がる連結部30e1と、基端部30dの上端から片持ち梁状に伸長する2つの弾性片部30e2と、弾性片部30e2が弾性支持する接点部30e3とを有する。連結部30e1は、圧入突起(図示略)を複数有する。この圧入突起が可動ハウジング28の被圧入部分に噛み込むことでソケット端子30が可動ハウジング28に対して固定されている。
【0127】
対向するソケット端子30に備わる弾性片部30e2同士と接点部30e3同士は互いに前後方向Yに沿って対向する。対向する接点部30e3,30e3の間隔は、プラグ端子31の前後方向Yの長さより短いが、プラグコネクタ23とソケットコネクタ25の嵌合により、プラグ端子31が接点部30e3,30e3の間隔を押し広げる。こうしてソケット端子30と初期接触位置P1で導通接触する(「初期嵌合状態」)。この状態で、対向する接点部30e3,30e3は互いに同じ荷重でプラグ端子31と押圧接触することで、ソケット端子30はプラグ端子31を挟持するように導通接触する。よって、ソケット端子30はプラグ端子31とより確実に導通接触することができる。
【0128】
〔使用状態の説明〕
図24で示すように、初期嵌合状態において、プラグ端子31とソケット端子30とが初期接触位置P1で導通接触している状態で、プラグハウジング26の底面部46cと、ソケットハウジング29の嵌合壁部28fの先端部28f1との間には、嵌合間隙S5が設けられている。また、この状態で、プラグハウジング26の前面部26aの下端部26a1と、ソケットハウジング29の前面部27aの上端部27a2との間、及びプラグハウジング26の背面部26bの下端部26b1と、ソケットハウジング29の背面部27bの上端部27b2との間にはそれぞれ嵌合間隙S6が設けられている。これらの嵌合間隙S5,S6は、高さ方向Zで第2の基板4の最大の撓み可能な長さよりも長く設けられている。こうすることで、基板2,4に共振等が生じても、プラグコネクタ23とソケットコネクタ25とが互いに嵌合間隙S5,S6を狭める方向に十分に相対変位し、深い位置で嵌合することができる(「嵌合状態」)。また、これらの嵌合間隙S5,S6は、ソケットハウジング29の幅方向Xにおける略全長にわたって設けられる。
【0129】
こうしてプラグハウジング26と、ソケットハウジング29が深い位置で嵌合しても、接触部50e,51e同士が摺動しながら初期接触位置P1から正規の接触位置P2に移動することができる。また、この「嵌合状態」では、第1の基板2と可動ハウジング28の当接部29f1との間には可動間隙S10が形成される。可動部30cがコネクタ23,24の挿入方向に変位して、可動ハウジング28が挿入方向に相対変位することができる。
【0130】
本実施形態の電気コネクタ21によれば、一つのソケット端子30が可動部30cと、プラグ端子31と押圧接触する接点部30e3とを有するため、プラグ端子31に可動部を設ける必要が無く、プラグ端子31をより単純な構造とすることができる。また、電気コネクタ21によれば、よりプラグ端子31の変位に追従しやすく、プラグ端子31との導通接触を維持しやすいソケット端子30とすることができる。
【0131】
第2実施形態の変形例〔図26〕:
前記第2実施形態では、ソケットコネクタ25の接続対象物としてプラグコネクタ23を示した。これに対して、「第1のコネクタ」としてのソケットコネクタ25の接続対象物としてソケット端子30と導通接触する端子64bを備える電気素子64を用いることができる。こうした電気素子64としては、パワーモジュール等を例示することができる。また、電気素子64は基板以外の固定部材62に固定されるものとすることができる。こうした固定部材62としては、電装品の筐体やケース等を例示することができる。
【0132】
「第1のコネクタ」としてのソケットコネクタ25が「第1の支持部材」としての第1の基板2に固定され、「接続対象物」としての電気素子64が「第2の支持部材」としての固定部材62に固定される電気コネクタ61ついて、以下、説明する(
図26(a)〜(f))。ソケットコネクタ25と電気素子64とが嵌合する場合には、可動ハウジング28の嵌合室63に電気素子64の基部64aが挿入されるものとしても良いが、電気素子64の端子64bだけが嵌合室63に挿入されることとしても良い。ここでは、後者の場合について説明する。なお、ここでは第1の基板2が振動する場合について説明するが、ソケット端子30が有する「可動ばね」としての可動部30cの挙動は第2実施形態で説明したものと同様であるため、主に相違点について説明する。
【0133】
まず、電気素子64の端子64bをソケットコネクタ25の嵌合室63に挿入し、固定部材62に設けられるスペーサR’の先端が第1の基板2に接触したところで、この嵌合動作を止める(
図26(b))。その際に、可動ハウジング28が第1の基板2と接触するか、可動部30cが高さ方向Zで短くなる方向に限界まで弾性変形しているかの何れかの状態となるまで変位する。そして、電気素子64の端子64bの先端部64b1と嵌合室63の底部63aとの間に嵌合間隙S2’が形成される。この後、第1の基板2が振動して、固定部材62との距離が短くなる方向に変形することで、可動ハウジング28が第1の基板2によって基部64a側に押し付けられて、電気素子64の端子64bが相対的に嵌合室63の内部により深く入り込む(
図26(c))。この状態のソケット端子30と電気素子64の端子64bとの接触位置が正規の接触位置P2となる。その後、第1の基板2が固定部材62との距離が大きくなる方向に振動する。可動部30cが挿抜方向に変位する変位荷重は、端子30と電気素子64の端子64bの少なくとも何れか一方が正規の接触位置P2から挿抜方向で位置ずれする荷重よりも小さい。よって、第1の基板2が振動前の位置まで戻っても、ソケット端子30と電気素子64の端子64bとが正規の接触位置P2で接触したままの状態で可動部30cが弾性変形してその振動を吸収することができる(
図26(d))。そして、この状態で可動ハウジング28は第1の基板2から浮いた状態となり、可動ハウジング28と第1の基板2との間には可動間隙S4’が形成される。また、第1の基板2がさらに変位して固定部材62との距離が大きくなっても(
図26(e))、また、その後、第1の基板2が振動前の位置まで戻っても、ソケット端子30と電気素子64の端子64bとが正規の接触位置P2で接触した状態が維持される(
図26(f))。こうして可動部30cが弾性変形することで、ソケット端子30と電気素子64の端子64bとが互いに摺動接触しないため、端子30,64bのメッキはがれ等が生じることなく、安定して導通接触することができる。
【0134】
第3実施形態〔図27〜29〕:
前記各実施形態では、可動部をプラグ端子又はソケット端子のいずれか一方のみが有する電気コネクタ1,21を示した。これに対して、「第1の端子」としてのプラグ端子51と「接触子」としてのソケット端子50の双方がそれぞれ「可動ばね」としての可動部51c,50cを有する電気コネクタ41とすることができる。これにより、大きな振動をプラグ端子51の可動部51cとソケット端子50の可動部51cとによって十分に吸収することができる。また、電気コネクタ41が可動部50c,51cを有することで、振動を吸収するために必要な可動量をそれらの可動部50c,51cに分散させることができる。そのため、いずれか一方のみが可動部を有する場合と比較して、一つの可動部に掛かる負荷を低くすることができるため、可動部の塑性変形や損傷などの発生を抑えることができる。
【0135】
また、ソケットコネクタ45が、ソケットハウジング49に保持されるソケット端子50を備えており、ソケット端子50のソケット接触部50eは、外向きに突出する接点部50e1を有する電気コネクタ41とすることができる。また、プラグコネクタ46は、互いに対向してプラグハウジング46に保持されるプラグ端子51を備える。ソケット端子50の接点部50e1は、プラグ端子51のプラグ接触部51e同士の間に挿入されて、プラグ接触部51eを前後方向Yにおける中央側から外側に向けて押圧して導通接触する。以下、ソケットコネクタ45と、プラグコネクタ43の具体的な構成を記載する。
【0136】
〔ソケットコネクタ〕
「第1のコネクタ」としてのソケットコネクタ45は、表面実装タイプのコネクタであり、第1の基板2の基板面に半田付けされて固定される。ソケットコネクタ45は、「第1のハウジング」としてのソケットハウジング49と、ソケット端子50とを備える。
【0137】
〔ソケットハウジング〕
ソケットハウジング49は、絶縁性樹脂の成型品でなり、「固定ハウジング57と、「可動ハウジング58とを備える。固定ハウジング57と可動ハウジング58との間には、「第2のコネクタ」又は「接続対象物」としてのプラグハウジング46の前面部48aと背面部48bが挿入されて、ソケット端子50とプラグ端子51が導通接触する嵌合室49eが設けられる
【0138】
固定ハウジング57は箱状でなり、幅方向Xに沿う板面を有する前面部57aと背面部57bを備える。
【0139】
前面部57aと背面部57bは、ソケット端子50の固定部50bを固定する端子収容孔57a1,57b1を有する。端子収容孔57a1,57b1は幅方向Xに沿って設けられる。
【0140】
可動ハウジング58は、X−Z平面に沿う板面を有する嵌合壁部58fを有している。嵌合壁部58fは、ソケット端子50のソケット接触部50eを収容する端子溝(図示略)を有している。また、嵌合壁部58fの先端部58f1の側から、プラグコネクタ43の嵌合室48dに挿入される。
【0141】
〔ソケット端子〕
「第1の端子」としてのソケット端子50は、導電性金属板を板厚方向に折り曲げて形成され、ソケット端子50は、第2実施形態のソケット端子30と同様の構成でなる基板接続部50aと、固定部50bと、可動部50cと、基端部50dとを有する。可動部50cは、第1の伸長部50c1と、第1の屈曲部50c2と、第2の伸長部50c3と、第2の屈曲部50c4と、第3の伸長部50c5と、第3の屈曲部50c6とを有する。
【0142】
本実施形態のソケット端子50は「第1の接点部」又は「第1の接触部」としてのソケット接触部50eを有しており、このソケット接触部50eは、基端部50dに繋がり、高さ方向Zに沿って上側に設けられる。また、ソケット接触部50eは、嵌合壁部58fに沿わせて設けられて高さ方向Zに沿う縦片部50e2と、前後方向Yにおいて基端部50dよりも可動部50cの側に向けて伸長する横片部50e3と、高さ方向Zにおける下側であって、プラグ端子51との接触方向に向けて傾斜する屈曲部50e4と、屈曲部50e4の先端側に設けられる接点部50e1とを有する。第3実施形態では、ソケット端子50の接点部50e1が、プラグ端子51の接触面51e1に対して、前後方向Yにおける中央側から外側に向けて押圧接触する。
【0143】
ソケット端子50は、ソケットハウジング49において、嵌合壁部58fを挟んで前後方向Yで対を成して設けられる。この1対のソケット端子50の接点部50e1同士が、それぞれプラグハウジング46に設けられる1対のプラグ端子51の接触面51e1に対して略同じ荷重で押圧接触する。これによりソケット端子50がプラグ端子51を支持するように確実に導通接触する。
【0144】
〔プラグコネクタ〕
「第2のコネクタ」としてのプラグコネクタ43は、表面実装タイプのコネクタであり、第1の基板2の基板面に半田付けされて固定される。プラグコネクタ43は、プラグハウジング46と、プラグ端子51とを備える。
【0145】
〔プラグハウジング〕
プラグハウジング46は、絶縁性樹脂の成型品でなり、固定ハウジング47と、可動ハウジング48とを備える。
【0146】
固定ハウジング47は、天面及び底面が開口する角筒形状でなり、幅方向Xに沿う板面を有する前面部47aと背面部47bを備える。固定ハウジング47はソケットコネクタ45のソケット端子50が挿入される嵌合室48dを有する。
【0147】
前面部47aと背面部47bは、プラグ端子51のプラグ接触部51eを固定する端子収容孔47a1,47b1を有する。
【0148】
可動ハウジング48は、前面部48aと、背面部48bと、底面部48eとを有している。本実施形態の前面部48a及び背面部48bは、前後方向Yに向けて笠状に延出して、プラグ端子51の可動部51cの下側に配置される笠状部48a1,48b1をそれぞれ有する。また、可動ハウジング48の笠状部48a1,48b1と可動部51cの間には、可動部51cが変位するための可動間隙47fが形成される。
【0149】
〔プラグ端子〕
「接触子」としてのプラグ端子51は、導電性金属板を板厚方向に折り曲げて形成され、プラグ端子51は、第1実施形態のプラグ端子11と同様の構成でなる基板接続部51aと、固定部51bと、可動部51cと、基端部51dと、プラグ接触部51eを有する。可動部51cは、第1の伸長部51c1と、第1の屈曲部51c2と、第2の伸長部51c3と、第2の屈曲部51c4と、第3の伸長部51c5と、第3の屈曲部51c6とを有する。
【0150】
本実施形態のプラグ端子51はプラグ接触部51eを有しており、このプラグ接触部51eはプラグハウジング46の可動ハウジング48が有する前面部48a又は背面部48bの何れか一方の内壁に沿わせて設けられ、嵌合室48dに面する接触面51e1を有する。ソケット端子50は、プラグ端子51eの接触面51e1に対して、前後方向Yにおける中央側から外側に向けて押圧接触する。よって、前後方向Yで対を成す2つのソケット端子50が前後方向Yで離れた位置でそれぞれプラグ端子51を支持するように導通接触することができるため、プラグコネクタ43をソケットコネクタ45に対して前後方向Yで傾き難くすることができる。そのため、より接続信頼性の高い電気コネクタ41とすることができる。
【0151】
〔使用状態の説明〕
「初期嵌合状態」において、プラグ端子51とソケット端子50とが初期接触位置P1で導通接触している状態で、プラグハウジング46の底面部48eと、ソケットハウジング49の嵌合壁部58fの先端部58f1との間には、嵌合間隙S7が設けられている(
図28)。また、この状態で、プラグハウジング46の前面部48aの笠状部48a1と、ソケットハウジング49の可動ハウジング58の下端部58aとの間、及びプラグハウジング46の背面部48bの笠状部48b1と、ソケットハウジング49の可動ハウジング58の下端部58bとの間にはそれぞれ嵌合間隙S8が設けられている(
図28)。さらに、プラグハウジング46の前面部48aの下端部48a2と、ソケットハウジング49の嵌合室49eの底部49e1との間、及びプラグハウジング46の背面部48bの上端部48b2と、ソケットハウジング49の嵌合室49eの底部49e1との間には、嵌合間隙S9が設けられている。
【0152】
これらの嵌合間隙S7〜S9は、高さ方向Zで第2の基板4の最大の撓み可能な長さよりも長く設けられている。こうすることで、基板2,4に共振等が生じても、プラグコネクタ43とソケットコネクタ45とが互いに嵌合間隙S7〜S9を狭める方向に十分に相対変位し、深い位置で嵌合することができる(
図29で示す「嵌合状態」)。
【0153】
また、こうしてプラグコネクタ43とソケットコネクタ45が深い位置で嵌合しても、接触部50e,51e同士が摺動しながら初期接触位置P1から正規の接触位置P2に移動することができる。また、この「嵌合状態」では、可動ハウジング58の嵌合壁部58fの下端に設けられる当接部58f2と固定ハウジング57との間に可動間隙S11が設けられる。こうすることで可動部50c,51cは、コネクタ47,49の挿入方向に弾性変位して、可動ハウジング58が挿入方向に相対変位することができる。
【0154】
本実施形態の電気コネクタ41では、ソケットコネクタ45の可動部50cと、プラグコネクタ43の可動部51cのそれぞれについて、挿抜方向に変位するために必要な荷重が前記ソケット端子50とプラグ端子51が正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重よりも小さくされている。従って、電気コネクタ41に高さ方向Zの振動が加えられた場合、ハウジング49,46の内部における各可動部50c,51cの変位が完了するまで、ソケット端子50とプラグ端子51が正規の接触位置P2から相対的に位置ずれすることなく、それらの導通接触状態を維持することができる。
【0155】
本実施形態の電気コネクタ41によれば、弾性変形することにより生じる負荷を可動部50c,51cに分散することができるため、可動部50c,51cの破損や損傷を生じ難くすることができる。
【0156】
各実施形態の変形例:
前記各実施形態は本発明の実施形態に過ぎず上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での適宜の変更が可能である。
【0157】
前記各実施形態では、ソケット端子やプラグ端子の各接触部が、接点部を1つまたは2つ有する例を示した。これに対して3つ以上有するものとすることができる。こうすることで、より確実に相手側の端子と導通接触することができる。また、接点部の数が増えるほど、相手側の端子をより強い力で保持することができる。その一方で、相手側の端子を保持する力をより多くの接点部に分散することができるため、各接点部と相手側端子との接触部における摩耗の発生を抑えることができる。
【0158】
さらに、前記各実施形態では、第1の基板2と第2の基板4又は固定部材62とに固定される電気コネクタ1,21,41,61を示した。これに対して、可動部と接点部とを有する端子と、端子を保持するハウジングとを備えるコネクタと、このコネクタと導通接続し、基板等には固定されていない接続対象物とを備える電気コネクタとすることもできる。この場合、やはり可動部が前記挿抜方向に変位するために必要な荷重が、接触部同士の少なくとも何れか一方が前記正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重よりも小さいものとすることで、コネクタの端子と接続対象物とが摺動して位置ずれするという事態を生じ難くすることができる。この接続対象物としては、コネクタの端子と押圧接触する接続用の接触子を有していれば特に限定されない。
【0159】
前記各実施形態では、第1の基板2か第2の基板4の何れか一方のみが共振等で振動する例を示した。これに対し、上述の通り、基板2,4の両方が振動したりする場合であっても同様に、プラグ接触部とソケット接触部が正規の接触位置P2で位置ずれせずに導通接触した状態で、可動部が挿抜方向で変位することができる。
【0160】
前記各実施形態では、可動部11c,30c,50c,51cが挿抜両方向に変位するために必要な荷重が、プラグ接触部とソケット接触部が互いに正規の接触位置P2から位置ずれするための荷重よりも小さいとする例を示した。これに対して、可動部11c,30c,50c,51cが挿入方向と抜去方向の少なくとも何れか一方に変位する変位荷重が、プラグ接触部とソケット接触部の少なくとも何れか一方が正規の接触位置P2から挿抜方向で相対的に位置ずれするための荷重よりも小さいものとすることができる。
【0161】
前記各実施形態では、基板間距離を一定に保つために基板2,4の間に配置されるスペーサR,R’を用いる例を示した。このスペーサR,R’は、一端側と他端側が基板2,4の対向面であって、コネクタ3,25,45とコネクタ5,23,43,又は電気素子64が設置される面に取り付けられて、基板2,4の間に設置される。しかし、基板間距離を一定に保つことができる部材であればスペーサRに限定されない。例えば
図30,31で示すように、断面コ字状でなるスペーサR2を用いることもできる。この場合、スペーサR2の一端側の第1の折曲部100を第1の基板2におけるコネクタ3,25,45の設置面とは反対側の面に取付け、他端側の第2の折曲部101を第2の基板4におけるコネクタ5,23,43又は電気素子64の設置面とは反対側の面に取付けるようにしても良い。こうすることで、第1の折曲部100と第2の折曲部101との間に基板2,4が配置されるようにして、基板間の距離を一定に保つことができる。こうしたスペーサR2を用いる場合であっても、第1の基板2と第2の基板4に振動が加えられていない状態において、第1の基板2とプラグコネクタ3の可動ハウジング8との間には可動間隙S4が設けられる(
図31(a))。そして、第1の基板2と第2の基板4の距離が大きくなる方向に前記基板のうち何れか一方が変位する際には、コネクタ3,5同士が正規の接触位置P2で接触した状態で可動部11cが伸長する方向に弾性変形し、可動間隙S4がさらに大きくなる(
図31(b))。また反対に、第1の基板2と第2の基板4の距離が小さくなる方向に前記基板のうち何れか一方が変位する際には、可動部11cが弾性変形し、可動間隙S4が狭くなる(
図31(c))。その後、再度第1の基板2と第2の基板4が振動が加えられる前の状態に戻る(
図31(a))。
【0162】
なお、こうしたスペーサの別として、例えば折曲部を一つだけ有する断面L字状のスペーサを用いることもできる。この場合、折曲部を第1の基板2におけるコネクタ3,25,45の設置面とは反対側の面に取付け、他端側を第2の基板4におけるコネクタ5,23,43又は電気素子64の設置面に取付けるようにすることができる。また反対に、折曲部を第2の基板4に取付け、他端側を第1の基板2に取付けることもできる。
【0163】
上記各実施形態は、第1の基板2又は第2の基板4の少なくともいずれか一方に、基板間距離を一定に維持するスペーサRを設置する例を示した。これに対して各基板2,4にスペーサRを設けずに、各基板2,4をそれぞれ同じ又は異なる取付部材(図示略)に対して固定することで、基板間距離を一定に保つこともできる(
図32(a)〜(c))。この場合であっても、上記各実施形態と同様にまずソケットコネクタ5とプラグコネクタ3とを嵌合させる際に、プラグコネクタ3の可動ハウジング8が第1の基板2の側に変位する。この状態で第1の基板2に振動等が生じて基板間距離が短くなる方向へ変位することで、第1の基板2によって可動ハウジング8がソケットコネクタ5側に向けて押し付けられてソケットコネクタ5に対してより深い位置で嵌合する。この状態で、ソケット端子10とプラグ端子11とが正規の接触位置P2で接触する(
図32(a))。その後、第1の基板2が今度は基板間距離が長くなる方向に向けて振動すると、可動部11cが弾性変形することでその振動を吸収し、ソケット端子10とプラグコネクタ3のプラグ端子11とが正規の接触位置P2で接触した状態が維持される(
図32(b))。そして、この状態で可動ハウジング8は第1の基板2から浮いた状態となり、可動ハウジング8と第1の基板2との間には可動間隙S4が形成される。また、第1の基板2が変位して、ソケットコネクタ5との距離が小さくなっても(
図32(c))、ソケット端子10とプラグ端子11とが正規の接触位置P2で接触した状態が維持される。さらにその後、再度、第1の基板2が振動前の位置まで戻った場合であっても、ソケット端子10とプラグ端子11とが正規の接触位置P2で接触した状態が維持される(
図32(a))。こうして可動部11cが弾性変形することで、ソケット端子10とプラグ端子11とが互いに摺動接触することがないため、端子10,11のメッキはがれ等が生じることなく、安定して導通接触することができる。
【0164】
前記各実施形態では、第1の基板2と、第2の基板4又は固定部材62とが対向配置され、上記各コネクタや電気素子の挿抜方向が電気コネクタ1,21,41,61の高さ方向Zとなる例を示した。これに対して、コネクタ同士が第1の基板2と、第2の基板4又は固定部材62の面が互いに対向せずに、直交するように嵌合し、その嵌合方向が電気コネクタ1,21,41,61の前後方向Yや、幅方向Xとすることもできる(
図33(a)〜(c))。この場合には、基板2,4やソケットコネクタ5、プラグコネクタ3の挙動は前記と同様である。即ち、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3とが嵌合し、可動間隙S4が設けられている状態から第1の基板2が振動し(
図33(a))、第2の基板4との基板間距離が大きくなる方向に変位すると、可動部11cが弾性変形することでその振動を吸収する(
図33(b))。その後、第1の基板2と第2の基板4の基板間距離が小さくなると、可動部11cが弾性変形することでその振動を吸収する(
図33(c))。この間に可動間隙S4が大きくなったり小さくなったりする。このように基板2,4が互いに対向しない場合には、基板2,4同士の間にスペーサRを設置し難くなる。そこで、こうした場合には、それぞれの基板2,4を電装品の筐体やケースなどの取付部材(図示略)に対して固定することで、上記各実施形態と同様の作用・効果をより容易に得ることができる。
【0165】
前記各実施形態では、プラグコネクタ3,23,43とソケットコネクタ5,25,45とが第1の基板2や第2の基板4に固定される電気コネクタ1,21,41を示した。これに対して、プラグコネクタ又はソケットコネクタの少なくとも何れか一方が、基板以外の固定部材62に固定されるものとすることができる。また、こうした固定部材62としては、電装品の筐体やケース等を例示することができる。