特許第6704086号(P6704086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704086マルチステップ断熱ドラッグを用いた量子ゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704086
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】マルチステップ断熱ドラッグを用いた量子ゲート
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/00 20190101AFI20200525BHJP
   H03K 19/195 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G06N10/00
   H03K19/195ZAA
   H01L39/22 K
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-505152(P2019-505152)
(86)(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公表番号】特表2019-530051(P2019-530051A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】US2017041749
(87)【国際公開番号】WO2018075106
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】15/225,162
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン、ライアン ジェイ.
【審査官】 坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0000666(US,A1)
【文献】 特開2006−003948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0018612(US,A1)
【文献】 米国特許第08510618(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
H01L 39/22
H03K 19/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号上の雑音に対して非常に回復力のある量子ゲート動作を実行するためのシステムであって、
第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットを含む複数の物理キュービットと、
少なくとも1つの結合機構であって、各結合機構は、前記複数の物理キュービットの最大で2つのキュービットを動作可能に結合するように構成されており、前記少なくとも1つの結合機構は、少なくとも1つの論理キュービットを形成している、前記少なくとも1つの結合機構と、
前記論理キュービットのハミルトニアンを調整するように、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、および前記結合機構のうちの1つに制御信号を提供するように構成された少なくとも1つの制御機構と
を備え、前記システム内の物理キュービットの数は、論理キュービットの数の最大で2倍である、システム。
【請求項2】
前記量子ゲート動作は、90度Y回転であり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのY軸および前記第2の物理キュービットのY軸に沿って状態を結合するように構成されたYYカプラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記量子ゲート動作は、アダマールゲートであり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのX軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたXZカプラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記量子ゲート動作は、SゲートおよびTゲートのうちの1つであり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのZ軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御機構は、第1の制御信号を供給して第1のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第1の制御機構と、第2の制御信号を供給して第2のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第2の制御機構と、第3の制御信号を供給して第3のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第3の制御機構とを含み、任意の所与の時間における前記論理キュービットのハミルトニアンは、前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、および前記第3の制御信号により定義される強度を用いた前記第1のハミルトニアン、前記第2のハミルトニアン、および前記第3のハミルトニアンの線形結合を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記量子ゲート動作は、90度Y回転であり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgYYであり、前記第3のハミルトニアンはgIZであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記量子ゲート動作は、アダマールゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgXZであり、前記第3のハミルトニアンはgZIであり、XおよびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記量子ゲート動作は、Tゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgZZであり、前記第3のハミルトニアンはgIAであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、A=X+Yであり、Iは恒等演算子である、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記量子ゲート動作は、Sゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgZZであり、前記第3のハミルトニアンはgIYであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記結合機構は第1の結合機構であり、前記論理キュービットは第1の論理キュービットであり、前記システムは、第2の結合機構を介して前記第2の物理キュービットに動作可能に結合される第3の物理キュービットをさらに備え、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、前記第3の物理キュービット、前記第1の結合機構、および前記第2の結合機構は、前記第1の論理キュービットおよび第2の論理キュービットを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記量子ゲート動作は、制御NOTゲートであり、前記第1の結合機構は、前記第1の物理キュービットのZ軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含み、前記第2の結合機構は、前記第2の物理キュービットのX軸および前記第3の物理キュービットのX軸に沿って状態を結合するように構成されたXXカプラを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、第3の結合機構を介して前記第3の物理キュービットに動作可能に結合された第4の物理キュービットをさらに備え、前記第3の物理キュービットは、第4の結合機構を介して前記第2の物理キュービットにさらに動作可能に結合されており、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、前記第3の物理キュービット、前記第4の物理キュービット、前記第1の結合機構、前記第2の結合機構、前記第3の結合機構、および前記第4の結合機構は、前記第1の論理キュービットおよび前記第2の論理キュービットを形成する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
制御信号上のノイズに対して非常に耐性のあるユニバーサル量子ゲートセットを実行する方法であって、
少なくとも1つの結合機構によって結合された複数の物理キュービットの第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々を準備して、各結合機構が、量子ゲートに関連する第1のハミルトニアンに関連する基底状態において、前記複数の物理キュービットのうちの最大で2つを結合するようにすること、
システムのハミルトニアンが前記第1のハミルトニアンとなるように前記システムに第1の制御信号を印加することであって、前記システムは、前記システム内の物理キュービットの数が、論理キュービットの数の最大で2倍となるように前記複数の物理キュービットおよび前記少なくとも1つの結合機構から形成される複数の論理キュービットを備える、前記印加すること、
前記第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアンへの前記システムのハミルトニアンの断熱補間を断熱的に実行すること、
前記第2のハミルトニアンから第3のハミルトニアンへの前記システムのハミルトニアンの断熱補間を断熱的に実行すること
を含む方法。
【請求項14】
前記第1のハミルトニアンから前記第2のハミルトニアンへ前記システムのハミルトニアンを補間することは、第2の制御信号を用いて、前記結合機構の結合強度をゼロから非ゼロ値に、および前記第2のハミルトニアンの強度を非ゼロからゼロに調整することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記システムに前記第1の制御信号を印加することは、前記第2の物理キュービットの第1のX固有状態のエネルギーレベルが、前記第2の物理キュービットの第2のX固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、前記システムに前記第1の制御信号を印加することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子計算に関し、より詳細には、マルチステップ断熱ドラッグの独創的な方法を用いて量子ゲートを実行することに関する。
【背景技術】
【0002】
古典的なコンピュータは、古典的な物理学の法則に従って状態を変える情報のバイナリビットを処理することによって動作する。これらの情報ビットは、ANDおよびORゲートなどの単純な論理ゲートを使用することによって修正することが可能である。バイナリビットは、論理ゲートの出力に生じる高または低信号レベルによって物理的に生成され、論理1(例えば、高電圧)または論理0(例えば、低電圧)のいずれかを表す。2つの整数を乗算するような古典的なアルゴリズムは、これらの単純な論理ゲートの長い列に分解することが可能である。古典的なコンピュータのように、量子コンピュータもビットおよびゲートを有している。論理1および0を使用する代わりに、量子ビット(「キュービット(qubit)」)は、量子力学を使用して両方の可能性を同時に占有する。この能力および他の独自の量子力学的特徴は、量子コンピュータが古典的なコンピュータより指数関数的に速くある種の問題を解くことを可能にする。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様によれば、量子ゲート動作を実行するためのシステムが提供される。このシステムは、第1の物理キュービットと、結合機構を介して第1の物理キュービットに動作可能に結合された第2の物理キュービットとを含む。第1の物理キュービット、第2の物理キュービット、および結合機構は、論理キュービットを形成する。少なくとも1つの制御機構は、論理キュービットのハミルトニアンを調整するように、第1の物理キュービット、第2の物理キュービット、および結合機構のうちの1つに制御信号を提供するように構成されている。
【0004】
本発明の他の態様によれば、量子ゲートを実行するための方法が提供される。第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々は、量子ゲートに関連する第1のハミルトニアンに関連する基底状態で準備される。システムのハミルトニアンがシステムの第1のハミルトニアンとなるように、第1の制御信号がシステムに印加される。このシステムは、第1の物理キュービット、第2の物理キュービット、および結合機構を含み、結合機構は、アクティブ時に、量子情報が第1の物理キュービットと第2の物理キュービットとの間を通過できるように構成されている。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアンへの、システムのハミルトニアンの断熱補間(adiabatic interpolation)は断熱的に行われる。第2のハミルトニアンから第3のハミルトニアンへの、システムのハミルトニアンの断熱補間は断熱的に行われる。
【0005】
本発明のさらに別の態様によれば、量子ゲートを実行するための方法が提供される。第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々は、第1の物理キュービット、第2の物理キュービット、および結合機構を備えるシステムの第1のハミルトニアンに関連する基底状態で準備されており、結合機構は、結合機構の結合強度がゼロでない場合に、量子情報が第1の物理キュービットと第2の物理キュービットとの間を通過することができるように構成されている。第2の物理キュービットの第1のX固有状態のエネルギーレベルが、第2の物理キュービットの第2のX固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、第1の制御信号がシステムに印加される。システムのハミルトニアンの第1の断熱補間は、第2の制御信号がランプアップされて、結合機構の結合強度がゼロから非ゼロ値へ変化する間に、第1の制御信号がランプダウンされて、第1のハミルトニアンの強度が非ゼロからゼロに変化するように実行される。システムのハミルトニアンの第2の断熱補間は、結合機構の結合強度がゼロに戻される間に、ブロッホ球の定義軸に沿った第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットのうちの1つの第1の固有状態のエネルギーレベルが、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットのうちの1つの第2の固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように実行される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】量子ゲート動作を実行するためのシステムの一例を示す図である。
図2】Sゲートを実行するための量子回路の一例を示す図である。
図3】ブロッホ球のY軸の周りの論理キュービットの90度回転を実行するための量子回路の一例を示す図である。
図4】アダマールゲートを実行するための量子回路の一例を示す図である。
図5】Tゲートを実行するための量子回路の一例を示す図である。
図6】CNOTゲートを実行するための量子回路の一例を示す図である。
図7】CNOTゲートを実行するための量子回路の他の例を示す図である。
図8】量子ゲートを実行するための方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者は、ノイズおよび制御信号の不完全性に影響されない量子ゲートを実行するための方法、マルチステップ断熱ドラッグ(Multistep Adiabatic Drag)(MAD)を提供する。この方法は、調節可能なトンネル障壁高さを有する超伝導磁束キュービットなど、縮退エネルギーレベルを有するように調整されることが可能なキュービットに非常に適している。マルチステップ断熱ドラッグゲートは、マイクロ波パルスのようなAC制御フィールドを必要としないが、その代わりに、逆量子論理駆動デジタル−アナログ変換器(Reciprocal Quantum Logic driven digital to analog converter)(RQL DAC)によって発生させることができる単純な非振動パルスを使用する。この方式は、ノイズによって歪められる可能性がある制御パラメータ空間内の囲まれた領域には依存しない。マルチステップ断熱ドラッグ技術は、ノイズを制御するために著しくロバストでもある。マルチステップ断熱ドラッグ技術は、単一キュービットゲートに対して、キュービット間で厳密に等しい相互作用強度なしに2つの物理キュービットを用いて実行されることも可能である。さらに、MADゲートの間にシステムがどのように発展するかを判定するハミルトニアンは、少数の1キュービットおよび2キュービットの関係のみを使用する。MADゲートは、キュービット間の情報の量子テレポーテーションを必要とすることもなく、それを以前の取り組みとさらに区別する。
【0008】
図1は、量子ゲート動作を実行するためのシステム10の一例を示す。このシステムは、第1の物理キュービット12と、結合機構16を介して第1の物理キュービットに動作可能に結合された第2の物理キュービット14とを含む。キュービット12およびキュービット14の各々は、クーパー対ボックスまたはジョセフソン接合からなる磁束キュービット、量子ドット、フォトニック回路、イオントラップなどのような超電導回路を含む、本明細書で規定される調整可能な結合および単一キュービット制御を用いた任意の適切な量子技術で実装されることが可能である。マルチステップ断熱ドラッグ法では、第1の物理キュービット12、第2の物理キュービット14、および結合機構16が集合的に、量子ゲートの少なくとも一部のための論理キュービットを形成するが、本方法の一部の間、論理キュービットに関連する量子情報は、物理キュービット12および物理キュービット14のうちの1つに分離することが可能であることが理解されよう。システムはさらに、論理キュービットのハミルトニアンを調整するように、第1のキュービット12、第2のキュービット14、および結合機構16のうちの1つに制御信号を提供するように構成された少なくとも1つの制御機構18を含む。
【0009】
各結合機構16および少なくとも1つの制御機構18の性質は、実装態様および実施される特定のゲートによって変わることが理解されよう。結合デバイスの例には、RF−SQUIDまたはDC−SQUIDを含む超伝導回路が含まれ、それらはそれらの磁束によってキュービットを誘導結合し、結合強度は制御磁束によって調整することが可能である。SQUIDは、1つのジョセフソン接合(RF−SQUID)または2つのジョセフソン接合(dc−SQUID)によって遮断された超伝導ループを含む。結合デバイスは、相互接続されたトポロジ内で結合デバイスがどのように利用されているかに応じて、強磁性結合および反強磁性結合の両方を可能とし得る。磁束結合の場合、強磁性結合は平行磁束がエネルギー的に有利であることを意味し、反強磁性結合は反平行磁束がエネルギー的に有利であることを意味する。制御機構18を使用して、結合デバイスの結合強度をゼロと最大値との間で調整することが可能である。
【0010】
このシステムによって実行されるさまざまなゲートは、論理演算子の発展を追跡することによって導き出され、ハミルトニアンを設計して所望のゲートを実現する強力な方法を提供する。ゲートを実行する際に使用される相互作用は、ギャップより上の状態への励起がほぼ断熱的な時間発展によって抑制され、熱励起速度がゲート時間に対して許容できるほど低いことを保証する計算部分空間の外側の状態へのエネルギーギャップを生成する。このことは、所与のゲートを達成するために正確な補間経路が必要とされないので、ハミルトニアン項の強度のノイズに対して本方式を非常にロバストなものとする。
【0011】
MADゲートの動作は、論理演算子の発展を追跡することによって判定することが可能である。一般的な単一キュービット量子状態は、密度演算子ρ=(I+<X>X+<Y>Y+<Z>Z)/2と記載することができ、ここで、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、<・>は期待値であることに留意されたい。一般的なユニタリゲート演算は、X、Y、およびZを、X´、Y´、およびZ´に変換し、これらは、元のパウリ演算子の線形結合であり、元の交換関係を保持する。ゲート後、密度演算子は、ρ´=(I+<X>X´+<Y>Y´+<Z>Z´)/2となり、これは座標系の回転である。期待値が一定のままであると仮定すると、新しいパウリ演算子は、新しい状態を完全に指定し、ゲートを定義する回転ベクトルは、元の座標系と新しい座標系との間の角度から決定することが可能である。これは複数のキュービットに容易に拡張することができる。
【0012】
図2は、Sゲートを実行するための量子回路30の一例を示す。図示された量子回路30は、3つのハミルトニアンH=−gIX、H=−gZZ、およびH=+gIYを使用する単一キュービットゲートの例であり、ここで、g≧0は、ハミルトニアンの時間依存強度であり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。物理キュービット32および物理キュービット34の両方は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。状態
【0013】
【数1】
への初期化は、例えば、
【0014】
【数2】
を適用し、gおよびgにより設定されたエネルギーギャップをはるかに下回る熱エネルギーでシステムを槽内で熱的に緩和させ、その後gをオフにすることによって達成されることが可能である。
【0015】
ゲートを実行する際に、Hを「オン」にすることができ、すなわち、gをゼロより上に増加させることができ、他の2つを「オフ」にしてg=g=0とすることができる。第1の物理キュービット32は、Hによる影響を受けないので、第1の物理キュービット32の2つの状態はエネルギー的に縮退している。ハミルトニアンは、X方向に沿って印加された磁場中のスピン1/2系のものと等価であり、第2のキュービットを状態
【0016】
【数3】
にする。したがって、Hの基底空間は、|0+>および|1+>によりスパンされており、キュービットをエンコードすることができる。量子情報はキュービット1にのみ存在するため、このエンコードは明らかに自明である。Hの場合、基底空間もまた二重に縮退しており、|00>および|11>によりスパンされている。最後に、Hの場合、基底空間は|0−>および|1−>によりスパンされ、ここで、
【0017】
【数4】
である。
【0018】
およびHの両方と可換であり、選択された基底状態に応じて希望どおりに動作する論理パウリ演算子を定義することが可能である。これらは、精査により、
【0019】
【数5】
であることが見出され、X演算子およびZ演算子が|0>および|1>に対して作用するのとちょうど同じように、それらが状態に対して作用することを検証することが可能である。同様に、HおよびHについても、2つの論理演算子は、
【0020】
【数6】
である。固有状態は、HとHとの間の補間のために発展する。
【0021】
【数7】
は、HおよびHと可換であるため、
【0022】
【数8】
は、伝播関数
【0023】
【数9】
とも可換であり、ここで、H(t)=H(t)+H(t)であり、積分における時間順序が含意されている。したがって、
【0024】
【数10】
の+1固有空間に初期化された状態はゲートの全工程の間そこにとどまり、それはgのみがオンになると、|0+>が|00>に変換されることを意味する。同じ議論によって|1+>→|11>である。gのみがオンになっているので、XXおよび−YYは両方とも論理X演算子として機能し、論理ビットを反転する。gがオンになり始めると、XXはもはや全ハミルトニアンと可換でないが、−YYは可換である。したがって、論理演算子XXと−YYとの間には「ハンドオフ」がある。gがオフになり、gのみがオンになると、量子情報は第1の物理キュービット32にまた局在化される。しかし、目下のところ、−YY演算子は論理Yのように機能する。したがって、論理演算子は変換
【0025】
【数11】
を受ける。パウリ演算子XおよびZの変換は、ゲートの振る舞いを一意に定義するので、ゲートはz軸を中心とした90度回転であり、これがSゲートである(ここで、S=Z)。物理キュービット32および物理キュービット34は、ゲートの終わりではもつれていない(すなわち、それらは積状態にある)ので、ゲートの終わりで最初のハミルトニアンに戻ることによってパラメータ空間におけるループを閉じる必要はないが、ループをこのように閉じることは、後続のゲートを実行するために役立ち得る。IYの代わりにHにYIが選択された場合、量子情報は第2の物理キュービット34へ交換されただろう。
【0026】
パルスの正確な時間的プロファイルは、パルスがゼロに近いところまでオフにされる限り重要ではなく、励起状態に対して十分に大きなエネルギーギャップが、ゲートのスピードおよびシステムの温度に対して維持されるように、パルスgとgi+1との間には時間的な重なりがある。したがって、ハミルトニアンの断熱補間は、gパルスがランプダウンされている間に、gi+1パルスをランプアップさせることによって実行することができる。これにより、MADゲートは著しいロバスト性を実現し、ノイズを制御する。
【0027】
所与のゲートに対するハミルトニアンの選択は、望ましくない状態へのエネルギーギャップを維持しながら、論理演算子の変換を制約し、量子情報の局在化を制御することに主に基づいている。ギャップは、ゲートシーケンス全体を通してシステムの固有値を計算することによって検証されるが、経験則として、反交換のパウリ項の間での補間は、一般的にギャップを維持する。簡単な例として、Z→X→−Zはギャップを維持するが、Z→−Zはギャップを維持しない。2つの交換則は、論理演算子の発展に対する主な制約を提供し、具体的には、論理演算子は関連する2つのハミルトニアンの任意の重み付き和と可換でなくてはならず、全ての論理演算子はゲートシーケンスを通じて相互に適切な交換関係を有さなければならない。
【0028】
局在化に関して、IXのような単一キュービット項は、単一キュービット項が作用するキュービット、この場合は第2の物理キュービット34から量子情報を放出させるように作用する。対照的に、2キュービット項は、2つのキュービットにわたって量子情報を非局在化するように機能する。量子情報の移動は、論理演算子の動作方法を変更するのに役立つ。例えば、エンコードされたキュービットが第1の物理キュービットに局在化されている場合、論理XZ演算子はXのように機能し、エンコードされたキュービットが第2の物理キュービットに局在化されている場合、論理XZ演算子はZのように機能する。
【0029】
したがって、量子回路30は、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの状態が両方とも+Z方向を指すか、または両方とも−Z方向を指すZ軸に沿った同じ方向に整列することをエネルギー的に有利にするように構成されたZZ結合機構36を含む。各軸は、キュービットのブロッホ球上で定義された特定の量子状態に対応する。超伝導磁束キュービットの場合、キュービットループ内の永久電流は、一般にブロッホ球のZ軸と関連しており、ZZ相互作用は、例えば、2つの物理キュービット32および34の間に配置されたループを介して誘導的に、第1のキュービットのキュービットループにおける永久電流に関連する情報を、第2のキュービットのキュービットループへ結合することによって、2つの超伝導磁束キュービットの間で実現され得る。しかしながら、結合機構36の具体的な実装態様は、物理キュービットの性質および所望の結合によって変化し、特定の結合機構の実装態様は、本明細書に開示された発明を考慮すれば当業者には明らかであることが理解されよう。
【0030】
第1の制御機構42は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット34上のX演算子43として回路30に示されているハミルトンIXを提供する。実質的には、第1の制御機構42は、物理キュービット34のX固有状態のうちの1つが、物理キュービットの他のX固有状態よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。その結果、第2の物理キュービット34の状態は、|+>状態に発展する。第2の制御機構44は、ハミルトニアンZZを提供する。この目的のために、第2の制御機構は、結合機構36の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給し、2つの物理キュービット32および34のZ軸に沿った特定の量子状態の間のエネルギー差を生じさせる。最後に、第3の制御機構46は、第3の制御信号を供給して、第2の物理キュービット34上のY演算子47として回路30に示されているハミルトンIYを提供する。この目的のために、第3の制御機構46は、物理キュービット34のY固有状態のうちの1つが、物理キュービットのY固有状態のうちの他方よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアン、そして第3のハミルトニアンへの断熱補間の結果は、Sゲートと呼ばれる、ブロッホ球のZ軸周りの論理キュービットの90度回転を提供する。
【0031】
図3は、ブロッホ球のY軸の周りの論理キュービットの90度回転を実行するための量子回路50の一例を示す。図示の量子回路50は、ハミルトニアン−gIX−gYY−gIZを用いた単一キュービットゲートの例であり、ここで、g≧0は、それぞれの制御信号によって制御されるハミルトニアンの時間依存強度であり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。2つの物理キュービット52および54は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。YY結合機構56は、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの状態が両方とも+Y方向を指すか、または両方とも−Y方向を指すY軸に沿った同じ方向を向くことをエネルギー的に有利にするように構成されている。各軸は、キュービットのブロッホ球上で定義された特定の量子状態に対応する。状態
【0032】
【数12】
は、それぞれ+Y方向および−Y方向を向いている。
【0033】
第1の制御機構62は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット54上のX演算子63として回路50に示されているハミルトンIXを提供する。実質的には、第1の制御機構62は、物理キュービット54のX固有状態のうちの1つが、物理キュービットのX固有状態のうちの他方よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。その結果、第2の物理キュービットの状態は|+>状態に発展する。第2の制御機構64は、ハミルトニアンZZを提供する。この目的のために、第2の制御機構は、結合機構56の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給し、2つの物理キュービット52および54のY軸に沿った特定の状態の間のエネルギー差を生じさせる。最後に、第3の制御機構66は、第3の制御信号を供給して、第2の物理キュービット54上のZ演算子67として回路50に示されているハミルトンIZを提供する。この目的のために、第3の制御機構66は、物理キュービット54のZ固有状態のうちの1つが、物理キュービットの他のZ固有状態よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアン、そして第3のハミルトニアンへの断熱補間の結果は、ブロッホ球のY軸の周りの論理キュービットの90度回転を提供する。
【0034】
図4は、アダマールゲートを実行するための量子回路70の一例を示す。図示の量子回路70は、ハミルトニアン−gIX−gXZ−gZIを用いた単一キュービットゲートの例であり、ここで、g≧0は、それぞれの制御信号によって制御されるハミルトニアンの時間依存強度であり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。2つの物理キュービット72および74は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。XZ結合機構76は、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの状態がそれぞれ+X方向および+Z方向に沿うか、あるいはそれぞれ−X方向および−Z方向に向くことをエネルギー的に有利にするように構成されている。
【0035】
第1の制御機構82は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット74上のX演算子83として回路70に示されているハミルトンIXを提供する。実質的には、第1の制御機構82は、物理キュービット74のX固有状態のうちの1つが、物理キュービットの他のX固有状態よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。その結果、第2の物理キュービットの状態は|+>状態に発展する。第2制御機構84は、ハミルトニアンXZを提供する。この目的のために、第2の制御機構は、結合機構76の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給し、第1の物理キュービット72のX軸と第2物理キュービット74のZ軸との間の相互作用を可能にする。最後に、第3の制御機構86は、第3の制御信号を供給して、第1の物理キュービット72上のZ演算子87として回路70に示されているハミルトンZIを提供する。この目的のために、第3の制御機構88は、物理キュービット72のZ固有状態のうちの1つが、物理キュービットの他のZ固有状態よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第1の物理キュービットの環境を変化させる。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアン、そして第3のハミルトニアンへの断熱補間の結果は、ブロッホ球上の
【0036】
【数13】
の周りの論理キュービットの180度回転を提供し、アダマールゲートを実行する。
【0037】
図5は、Tゲートを実行するための量子回路100の一例を示す。図示の量子回路100は、ハミルトニアン−gIX−gZZ−gIAを用いた単一キュービットゲートの一例であり、ここで、g≧0は、それぞれの制御信号によって制御されるハミルトニアンの時間依存強度であり、A=X+Yであり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。2つの物理キュービット102および104は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。ZZ結合機構106は、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの状態が両方とも+Z方向を指すか、または両方とも−Z方向を指すZ軸に沿った同じ方向に整列することをエネルギー的に有利にするように構成されている。各軸は、キュービットのブロッホ球上で定義された特定の量子状態に対応する。
【0038】
第1の制御機構112は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット104上のX演算子113として回路100に示されているハミルトンIXを提供する。実質的には、第1の制御機構112は、物理キュービット104のX固有状態のうちの1つが、物理キュービットのX固有状態のうちの他方よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。その結果、第2の物理キュービットの状態は|+>状態に発展する。第2の制御機構114は、ハミルトニアンZZを提供する。この目的のために、第2の制御機構は、結合機構106の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給し、第1の物理キュービット102のZ軸および第2の物理キュービット104のZ軸に沿った相互作用を可能にする。最後に、第3の制御機構116は、第3の制御信号を供給して、第2の物理キュービット104上のA演算子117として回路100に示されているハミルトンIAを提供する。この目的のために、第3の制御機構118は、物理キュービット104のA固有状態のうちの1つが、物理キュービットのA固有状態のうちの他方よりも低いエネルギーを有するように、例えば磁束の印加を介して第2の物理キュービットの環境を変化させる。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアン、そして第3のハミルトニアンへの断熱補間の結果は、ブロッホ球上のZ軸を中心とした論理キュービットの45度回転を提供し、Tゲートを実行する。
【0039】
図6は、CNOTゲートを実行するための量子回路120の一例を示す。図示の量子回路120は、ハミルトニアン−g(IXII+IIIZ)−g(ZZII+IIXX)−g(IXIX+IZIZ)を用いて4つの物理キュービットにわたって実行される2論理キュービットゲートの一例であり、ここで、g≧0は、それぞれの制御信号によって制御されるハミルトニアンの時間依存強度であり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。4つの物理キュービット122〜125は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。第1のZZ結合機構126は、第1の物理キュービット122のZ軸と第2の物理キュービット123のZ軸とを結合するように構成されている。第2のZZ結合機構127は、第2の物理キュービット123のZ軸および第4の物理キュービット125のZ軸に沿って状態を結合するように構成されている。第1のXX結合機構128は、第2の物理キュービット123のX軸および第4の物理キュービット125のX軸に沿って状態を結合するように構成されている。第2のXX結合機構129は、第4の物理キュービット125のX軸および第3の物理キュービット124のX軸に沿って状態を結合するように構成されている。各軸は、キュービットのブロッホ球上で定義された特定の量子状態に対応する。
【0040】
第1の制御機構132は、第1制御信号を供給して、第2の物理キュービット123上のX演算子133および第4の物理キュービット125上のZ演算子134として回路120に示されているハミルトンIXII+IIIZを提供する。第2の制御機構136は、ハミルトニアンZZII+IIXXを提供する。この目的のために、第2の制御機構136は、第1のZZ結合機構126および第2のXX結合機構129の各々の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給する。最後に、第3の制御機構138は、第3の制御信号を供給して、ハミルトンIXIX+IZIZを提供する。この目的のために、第3の制御機構138は、第2のZZ結合機構127および第1のXX結合機構128の各々の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第3の制御信号を供給する。第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアン、そして第3のハミルトニアンへの断熱補間の結果は、制御論理キュービットを用いたターゲット論理キュービットに対する制御NOT演算を提供する。
【0041】
図7は、3つの物理キュービットだけでCNOTゲートを実行するための量子回路150の第2の例を示す。図示された量子回路150は、ハミルトニアン−gIXI−gZZI−gIXX−gIZIを使用して、3つのキュービットにわたって実行された2つの論理キュービットゲートの一例であり、ここで、g≧0は、それぞれの制御信号によって制御されるハミルトニアンの時間依存強度であり、隣接するパウリ演算子間のテンソル積が含意されている。3つの物理キュービット152〜154は、開始時のハミルトニアンの基底空間内で初期化され、理想的な断熱発展のもとでは、ゲート動作中ずっと基底空間内に留まると仮定される。ZZ結合機構156は、第1の物理キュービット152のZ軸および第2の物理キュービット153のZ軸に沿って状態を結合するように構成されている。XX結合機構158は、第2の物理キュービット153のX軸および第3の物理キュービット154のX軸に沿って状態を結合するように構成されている。各軸は、キュービットのブロッホ球上で定義された特定の量子状態に対応する。
【0042】
第1の制御機構162は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット153上のX演算子163として回路150に示されているハミルトンIXIを提供する。第2の制御機構164は、ハミルトニアンZZIを制御する。この目的のために、第2の制御機構164は、ZZ結合機構156の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第2の制御信号を供給する。第3の制御機構166は、第3の制御信号を供給して、ハミルトンIXXを制御する。この目的のために、第3の制御機構166は、XX結合機構158の結合強度をゼロから非ゼロ値に調整する第3の制御信号を供給する。第4の制御機構168は、第1の制御信号を供給して、第2の物理キュービット153上のZ演算子169として回路150に示されているハミルトンIZIを制御する。4つのハミルトニアン間の断熱補間の結果は、制御論理キュービットを用いたターゲット論理キュービットに対する制御NOT演算を提供する。
【0043】
図1図7に記載された上記の構造的および機能的特徴を考慮すると、例示的な方法は、図8を参照してよりよく理解されるであろう。説明を簡単にするために、図8の方法は順次実行されるものとして示され説明されているが、他の例では、いくつかの動作が本明細書に示され記載されたものとは異なる順序で、および/または同時に起こり得るので、本発明は示された順序によって制限されないことを理解されたい。
【0044】
図8は、量子ゲートを実行するための方法200の一例を示す。202において、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々は、システムの第1のハミルトニアンに関連する基底状態で準備される。このシステムは、第1の物理キュービット、第2の物理キュービット、および結合機構を含み、結合機構は、結合機構の結合強度がゼロでない場合に、量子情報が第1の物理キュービットと第2の物理キュービットとの間を通過できるように構成されている。204において、システムのハミルトニアンがシステムの第1のハミルトニアンとなるように、第1の制御信号がシステムに印加される。一実装形態では、第2の物理キュービットの第1のX固有状態のエネルギーレベルが第2の物理キュービットの第2のX固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、第1の制御信号がシステムに印加される。
【0045】
206において、第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアンへの、システムのハミルトニアンの第1の断熱補間が断熱的に行われる。一実装形態では、ハミルトニアンの第1の断熱補間は、第2の制御信号が印加されて結合機構の結合強度をゼロから非ゼロ値に変えている間に第1の制御信号が除去されるように実行される。208において、第2のハミルトニアンから第3のハミルトニアンへの、システムのハミルトニアンの第2の断熱補間が断熱的に行われて、量子ゲート動作が完了する。一実装形態では、ハミルトニアンの第2の断熱補間は、ブロッホ球の定義された軸に沿った第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットのうちの1つの第1の固有状態のエネルギーレベルが、結合機構の結合強度がゼロに戻される間に、第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットのうちの1つの第2の固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように実行される。
【0046】
以上の説明は本発明の例である。当然のことながら、本発明を説明する目的のために構成要素または方法の考えられるあらゆる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することを意図されている。本願発明の技術思想を以下に付記する。
[付記1]
制御信号上の雑音に対して非常に回復力のある量子ゲート動作を実行するためのシステムであって、
第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットを含む複数の物理キュービットと、
少なくとも1つの結合機構であって、各結合機構は、前記複数の物理キュービットの最大で2つのキュービットを動作可能に結合するように構成されており、前記少なくとも1つの結合機構は、少なくとも1つの論理キュービットを形成している、前記少なくとも1つの結合機構と、
前記論理キュービットのハミルトニアンを調整するように、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、および前記結合機構のうちの1つに制御信号を提供するように構成された少なくとも1つの制御機構と
を備え、前記システム内の物理キュービットの数は、論理キュービットの数の最大で2倍である、システム。
[付記2]
前記量子ゲート動作は、90度Y回転であり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのY軸および前記第2の物理キュービットのY軸に沿って状態を結合するように構成されたYYカプラを含む、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記量子ゲート動作は、アダマールゲートであり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのX軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたXZカプラを含む、付記1に記載のシステム。
[付記4]
前記量子ゲート動作は、SゲートおよびTゲートのうちの1つであり、前記結合機構は、前記第1の物理キュービットのZ軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含む、付記1に記載のシステム。
[付記5]
前記少なくとも1つの制御機構は、第1の制御信号を供給して第1のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第1の制御機構と、第2の制御信号を供給して第2のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第2の制御機構と、第3の制御信号を供給して第3のハミルトニアンの強度gを調整するように構成された第3の制御機構とを含み、任意の所与の時間における前記論理キュービットのハミルトニアンは、前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、および前記第3の制御信号により定義される強度を用いた前記第1のハミルトニアン、前記第2のハミルトニアン、および前記第3のハミルトニアンの線形結合を含む、付記1に記載のシステム。
[付記6]
前記量子ゲート動作は、90度Y回転であり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgYYであり、前記第3のハミルトニアンはgIZであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、付記5に記載のシステム。
[付記7]
前記量子ゲート動作は、アダマールゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgXZであり、前記第3のハミルトニアンはgZIであり、XおよびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、付記5に記載のシステム。
[付記8]
前記量子ゲート動作は、Tゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgZZであり、前記第3のハミルトニアンはgIAであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、A=X+Yであり、Iは恒等演算子である、付記5に記載のシステム。
[付記9]
前記量子ゲート動作は、Sゲートであり、前記第1のハミルトニアンはgIXであり、前記第2のハミルトニアンはgZZであり、前記第3のハミルトニアンはgIYであり、X、Y、およびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、付記5に記載のシステム。
[付記10]
前記結合機構は第1の結合機構であり、前記論理キュービットは第1の論理キュービットであり、前記システムは、第2の結合機構を介して前記第2の物理キュービットに動作可能に結合される第3の物理キュービットをさらに備え、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、前記第3の物理キュービット、前記第1の結合機構、および前記第2の結合機構は、前記第1の論理キュービットおよび第2の論理キュービットを形成する、付記1に記載のシステム。
[付記11]
前記量子ゲート動作は、制御NOTゲートであり、前記第1の結合機構は、前記第1の物理キュービットのZ軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含み、前記第2の結合機構は、前記第2の物理キュービットのX軸および前記第3の物理キュービットのX軸に沿って状態を結合するように構成されたXXカプラを含む、付記10に記載のシステム。
[付記12]
前記量子ゲート動作は、制御NOTゲートであり、前記少なくとも1つの制御機構は、第1の制御信号を供給して第1のハミルトニアンgIXIの強度gを調整するように構成された第1の制御機構と、第2の制御信号を供給して第2のハミルトニアンgZZIの強度gを調整するように構成された第2の制御機構と、第3の制御信号を供給して第3のハミルトニアンgIXXの強度gを調整するように構成された第3の制御機構と、第4の制御信号を供給して第4のハミルトニアンgIZIの強度gを調整するように構成された第4の制御機構とを含み、任意の所与の時間における前記論理キュービットのハミルトニアンは、前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、前記第3の制御信号、および前記第4の制御信号により定義される前記第1のハミルトニアン、前記第2のハミルトニアン、前記第3のハミルトニアン、および前記第4のハミルトニアンの線形結合を含み、XおよびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、付記10に記載のシステム。
[付記13]
前記システムは、第3の結合機構を介して前記第3の物理キュービットに動作可能に結合された第4の物理キュービットをさらに備え、前記第3の物理キュービットは、第4の結合機構を介して前記第2の物理キュービットにさらに動作可能に結合されており、前記第1の物理キュービット、前記第2の物理キュービット、前記第3の物理キュービット、前記第4の物理キュービット、前記第1の結合機構、前記第2の結合機構、前記第3の結合機構、および前記第4の結合機構は、前記第1の論理キュービットおよび前記第2の論理キュービットを形成する、付記10に記載のシステム。
[付記14]
前記量子ゲート動作は、制御NOTゲートであり、
前記第1の結合機構は、前記第1の物理キュービットのZ軸および前記第2の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含み、前記第2の結合機構は、前記第2の物理キュービットのX軸および前記第3の物理キュービットのX軸に沿って状態を結合するように構成されたXXカプラを含み、前記第3の結合機構は、前記第3の物理キュービットのX軸および前記第4の物理キュービットのX軸に沿って状態を結合するように構成されたXXカプラを含み、前記第4の結合機構は、前記第2の物理キュービットのZ軸および前記第3の物理キュービットのZ軸に沿って状態を結合するように構成されたZZカプラを含む、付記13に記載のシステム。
[付記15]
前記量子ゲート動作は、制御NOTゲートであり、少なくとも1つの制御機構は、第1の制御信号を供給して第1のハミルトニアンg(IXII+IIIZ)の強度gを調整するように構成された第1の制御機構と、第2の制御信号を供給して第2のハミルトニアンg(ZZII+IIXX)の強度gを調整するように構成された第2の制御機構と、第3の制御信号を供給して第3のハミルトニアンg(IXIX+IZIZ)の強度gを調整するように構成された第3の制御機構とを含み、任意の所与の時間における前記論理キュービットのハミルトニアンは、前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、および前記第3の制御信号によって定義される前記第1のハミルトニアン、前記第2のハミルトニアン、および前記第3のハミルトニアンの線形結合を含み、XおよびZはパウリ演算子であり、Iは恒等演算子である、付記13に記載のシステム。
[付記16]
制御信号上のノイズに対して非常に耐性のあるユニバーサル量子ゲートセットを実行する方法であって、
少なくとも1つの結合機構によって結合された複数の物理キュービットの第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々を準備して、各結合機構が、量子ゲートに関連する第1のハミルトニアンに関連する基底状態において、前記複数の物理キュービットのうちの最大で2つを結合するようにすること、
システムのハミルトニアンが前記第1のハミルトニアンとなるように前記システムに第1の制御信号を印加することであって、前記システムは、前記システム内の物理キュービットの数が、論理キュービットの数の最大で2倍となるように前記複数の物理キュービットおよび前記少なくとも1つの結合機構から形成される複数の論理キュービットを備える、前記印加すること、
前記第1のハミルトニアンから第2のハミルトニアンへの前記システムのハミルトニアンの断熱補間を断熱的に実行すること、
前記第2のハミルトニアンから第3のハミルトニアンへの前記システムのハミルトニアンの断熱補間を断熱的に実行すること
を含む方法。
[付記17]
前記第1のハミルトニアンから前記第2のハミルトニアンへ前記システムのハミルトニアンを補間することは、第2の制御信号を用いて、前記結合機構の結合強度をゼロから非ゼロ値に、および前記第2のハミルトニアンの強度を非ゼロからゼロに調整することを含む、付記16に記載の方法。
[付記18]
前記第2のハミルトニアンから前記第3のハミルトニアンへ前記システムのハミルトニアンを補間することは、前記結合機構の結合強度を非ゼロ値からゼロに、および前記第3のハミルトニアンの強度をゼロから非ゼロに調整することを含む、付記16に記載の方法。
[付記19]
前記システムに前記第1の制御信号を印加することは、前記第2の物理キュービットの第1のX固有状態のエネルギーレベルが、前記第2の物理キュービットの第2のX固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、前記システムに前記第1の制御信号を印加することを含む、付記16に記載の方法。
[付記20]
量子ゲートを実行する方法であって、
少なくとも1つの結合機構によって結合された複数の物理キュービットの第1の物理キュービットおよび第2の物理キュービットの各々を準備して、システム内の物理キュービットの数が、論理キュービットの数の最大で2倍となるように前記複数の物理キュービットおよび前記少なくとも1つの結合機構から形成される複数の論理キュービットを備えるシステムの第1のハミルトニアンに関連する基底状態において、各結合機構が、前記複数の物理キュービットのうちの最大で2つを結合するようにすること、
前記第2の物理キュービットの第1のX固有状態のエネルギーレベルが、前記第2の物理キュービットの第2のX固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、前記システムに第1の制御信号を印加すること、
第2の制御信号がランプアップされて、前記結合機構の結合強度がゼロから非ゼロ値へ変化する間に、第1の制御信号がランプダウンされて、前記第1のハミルトニアンの強度が非ゼロからゼロに変化するように、前記システムのハミルトニアンの第1の断熱補間を実行すること、
前記結合機構の結合強度がゼロに戻される間に、ブロッホ球の定義軸に沿った前記第1の物理キュービットおよび前記第2の物理キュービットのうちの1つの第1の固有状態のエネルギーレベルが、前記第1の物理キュービットおよび前記第2の物理キュービットのうちの前記1つの第2の固有状態のエネルギーレベルに対して増加するように、前記システムのハミルトニアンの第2の断熱補間を実行すること
を含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8