(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6704099
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】殺菌またはウイルス不活性化剤組成物、および殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20200525BHJP
A01N 65/36 20090101ALI20200525BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20200525BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20200525BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N65/36
A01N31/02
A01P1/00
A01P3/00
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-506286(P2020-506286)
(86)(22)【出願日】2020年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2020002958
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2019-32601(P2019-32601)
(32)【優先日】2019年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-139338(P2019-139338)
(32)【優先日】2019年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕之
(72)【発明者】
【氏名】市村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0148262(US,A1)
【文献】
特表2015−501330(JP,A)
【文献】
特開2011−042579(JP,A)
【文献】
特開平05−056773(JP,A)
【文献】
特開2009−292736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/02
A01N 31/02
A01N 65/36
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。
【請求項2】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物。
【請求項3】
pHが6〜11である請求項1又は請求項2に記載の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物。
【請求項4】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の殺菌剤組成物。
【請求項5】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%以上であることを特徴とする請求項1、3、4のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
前記殺菌効力増強成分の配合量が0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項1、3乃至5のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項7】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項8】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項2、3、7のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項9】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項2、3、7、8のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項10】
請求項2、3、7乃至9のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物をノンエンベロープウイルスに対して接触させるノンエンベロープウイルスの不活性化方法。
【請求項11】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)。
【請求項12】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有するウイルス不活性化剤組成物に、
(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とするウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項13】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項11に記載の殺菌効力増強方法。
【請求項14】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項12に記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項15】
前記殺菌またはウイルス不活性化効力増強成分が、炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項16】
前記殺菌効力増強成分の添加量が、前記殺菌剤組成物に対して0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項11、13、15のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
【請求項17】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の添加量が、前記ウイルス不活性化剤組成物に対して0.01質量%以上であることを特徴とする請求項12、14、15のいずれかに記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌、ウイルス不活性化成分を水溶液中に配合して成る殺菌、ウイルス不活性化剤組成物、および殺菌、ウイルス不活性化剤組成物の殺菌、ウイルス不活性化効力増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室・トイレ、キッチン等のタイル、目地、プラスチックに付着する汚れの中には、細菌やカビによって発生する汚れやぬめりなどがある。このような細菌やカビによる汚れは、次亜塩素酸塩を主成分とする液体洗浄剤などで、日常的に殺菌を行うことで、発生を予防することができる。しかし、次亜塩素酸製剤は、酸性タイプの漂白剤等と混用すると危険な塩素ガスを発生することから、本来的には使用を制限すべき製品であるが、他に置き換える製品が存在しないため現在でも広く使用されている。こうした現状から、安全性が高く、且つ殺菌効果の高い洗浄剤が要望されている。
【0003】
このような細菌を除菌、殺菌するために、殺菌成分としてエタノールを配合したスプレータイプの殺菌剤が広く用いられている。しかし、エタノールは引火性を有するため、キッチン周り等の火を使う場所での使用には注意が必要であった。また、エタノールを含む殺菌剤を樹脂製部材に塗布した際に塗装やワックスの剥がれが発生するおそれもあり、エタノールの匂いが苦手な人やエタノールで手が荒れる人には使用し難いという問題点もあった。さらに、キッチン周りには食品や食器等が存在するため、それらに付着しても健康に影響のない安全性の高い殺菌剤が要望されていた。
【0004】
そこで、食品添加物として使用される安全性の高い殺菌成分を配合した、アルコールの配合量を低減させた殺菌剤が種々提案されている。例えば、特許文献1には、(A)成分としてエタノール、(B)成分として有機酸及び/又は有機酸塩、(C)成分としてグリセリン脂肪酸エステル、(D)グレープフルーツ種子抽出物、及び(E)水を含有し、pHが25℃で2.5以上、6.0以下である、アルコール製剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、強アルカリ電解水と柑橘類の種子から抽出した成分を含む洗浄ならびに除菌用組成物が開示されており、抽出成分としてグレープフルーツ種子抽出物を用いることも記載されている。
【0006】
特許文献1、2に記載されているグレープフルーツ種子抽出物は、天然由来の除菌成分であり、それ自体が殺菌、抗菌活性を有することが知られている。また、グレープフルーツ種子抽出物は水溶性であるとともに、特有の匂いもないため、殺菌、抗菌成分として水系製剤に配合し易いという利点を有する。
【0007】
また、食品製造及び調理施設、医療施設、教育施設等においてカリシウイルス科のノロウイルスによる食中毒が問題となっている。ノロウイルスの不活性化の方法としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いる方法や、熱湯消毒による方法が知られている。しかし、次亜塩素酸による消毒では処理面を漂白したり、悪臭が発生したりするなど使い勝手が悪く、酸性タイプの漂白剤等と混用すると塩素ガスを発生するため安全性の面で十分ではなかった。また、熱湯消毒では、被消毒物との接触によって温度が低下してしまい所望の温度を保持することが困難である。さらに、熱湯によるやけどの危険もある。
【0008】
特許文献3には、少なくとも1種以上のビス四級アンモニウム化合物、ならびに銀系抗菌剤を含有するウイルス不活性化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6454805号公報
【特許文献2】特開2007−31608号公報
【特許文献3】特開2018−65779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のアルコール製剤は、エタノールを含有するため引火性やエタノールによる刺激性の問題があった。また、pHが2.5以上6.0以下と酸性であるため、酸による刺激性の問題もあった。特許文献2の洗浄ならびに除菌用組成物は強アルカリ性であるため、アルカリによる刺激性の問題があった。
【0011】
また、特許文献3のウイルス不活性化剤は、銀系抗菌剤を含有するため、銀イオンによる樹脂の変色、着色という問題点があった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、殺菌成分として次亜塩素酸やアルコールを含まず、ウイルス不活性化成分として銀系抗菌剤を含まない殺菌、ウイルス不活性化剤組成物、および殺菌、ウイルス不活性化効力増強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、(A)
殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)
殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる
殺菌剤組成物
(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)である。
また本発明は、(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物である。
【0014】
また本発明は、上記構成の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物のpHが6〜11であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の殺菌剤組成物において、前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の殺菌剤組成物において、前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%以上であることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の殺菌剤組成物において、前記殺菌効力増強成分の配合量が0.0005質量%以上であることを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化剤組成物において、前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化剤組成物において、前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.1質量%以上であることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化剤組成物において、前記ウイルス不活性化効力増強成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴としている。
【0021】
また本発明は、(A)
殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する
殺菌剤組成物に、(B)
殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする
殺菌効力増強方法
(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)である。
また本発明は、(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有するウイルス不活性化剤組成物に、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とするウイルス不活性化効力増強方法である。
【0022】
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
【0023】
また本発明は、上記構成の殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法において、前記殺菌効力増強成分が、炭酸水素ナトリウムであることを特徴としている。
【0024】
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記殺菌効力増強成分の添加量が、前記殺菌剤組成物に対して0.0005質量%以上であることを特徴としている。
【0025】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化効力増強方法において、前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
【0026】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化効力増強方法において、前記ウイルス不活性化効力増強成分の添加量が、前記
ウイルス不活性化剤組成物に対して0.01質量%以上であることを特徴としている。
【0027】
また本発明は、上記構成のウイルス不活性化剤組成物をノンエンベロープウイルスに対して接触させるノンエンベロープウイルスの不活性化方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の構成によれば、(A)
殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)
殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合することにより、
また、本発明の第2の構成によれば、(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合することにより、殺菌またはウイルス不活性化成分として次亜塩素酸やアルコールを含まず低刺激性であり、且つ高い殺菌またはウイルス不活性化効力を備えた殺菌またはウイルス不活性化剤組成物となる。
【0029】
また、本発明の第
3の構成によれば、上記第1
又は第2の構成の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物のpHを6〜11とすることにより、酸性や強アルカリ性の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物に比べて皮膚に対する刺激性も少なく、使用感に優れた殺菌またはウイルス不活性化剤組成物となる。
【0030】
また、本発明の第
4の構成によれば、上記第1又は第
3の構成の殺菌剤組成物において、殺菌効力増強成分として、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、より殺菌効力が高く安全性にも優れた殺菌剤組成物となる。
【0031】
また、本発明の第
5の構成によれば、上記第1
、第3、第4のいずれかの構成の殺菌剤組成物において、殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.005質量%以上とすることにより、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を、十分な殺菌効力を発揮するために必要な配合量とすることができる。
【0032】
また、本発明の第
6の構成によれば、上記第1
、第3乃至第5のいずれかの構成の殺菌剤組成物において、殺菌効力増強成分の配合量を0.0005質量%以上とすることにより、殺菌効力増強成分の配合量を、殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力を十分に増強するために必要な配合量とすることができる。
【0033】
また、本発明の第
7の構成によれば、上記第
2又は第
3の構成のウイルス不活性化剤組成物において、ウイルス不活性化効力増強成分として、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、よりウイルス不活性化効力が高く安全性にも優れたウイルス不活性化剤組成物となる。
【0034】
また、本発明の第
8の構成によれば、上記第
2、第3、第7のいずれかの構成のウイルス不活性化剤組成物において、ウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.1質量%以上とすることにより、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を、十分なウイルス不活性化効力を発揮するために必要な配合量とすることができる。
【0035】
また、本発明の第
9の構成によれば、上記第
2、第3、第7、第8のいずれかの構成のウイルス不活性化剤組成物において、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量を0.01質量%以上とすることにより、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量を、ウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物のウイルス不活性化効力を十分に増強するために必要な配合量とすることができる。
【0036】
また、本発明の第
10の構成によれば、上記第
2、第3、第7乃至第
9のいずれかの構成のウイルス不活性化剤組成物をノンエンベロープウイルスに対して接触させることにより、従来のウイルス除去剤では不活性化が困難であったノロウイルス等のノンエンベロープウイルスの不活性化方法となる。
【0037】
また、本発明の第
11の構成によれば、(A)
殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する
殺菌剤組成物に、(B)
殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することにより、
また、本発明の第12の構成によれば、(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有するウイルス不活性化剤組成物に、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することにより、殺菌
またはウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌またはウイルス不活性化効力を向上させることができ、高い殺菌またはウイルス不活性化力を備えた殺菌またはウイルス不活性化剤組成物を製造可能となる。
【0038】
また、本発明の第
13の構成によれば、上記第
11の構成の殺菌効力増強方法において、殺菌効力増強成分として、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、より殺菌効力が高く安全性にも優れた殺菌剤組成物を製造可能となる。
【0039】
また、本発明の第
14の構成によれば、上記第
12の構成のウイルス不活性化効力増強方法において、ウイルス不活性化効力増強成分として、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、よりウイルス不活性化効力が高く安全性にも優れたウイルス不活性化剤組成物を製造可能となる。
【0040】
また、本発明の第
15の構成によれば、上記第
13又は第
14の構成の殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法において、殺菌またはウイルス不活性化効力増強成分として、化学製品として汎用されており入手が容易な炭酸水素ナトリウムを用いることにより、低い配合量で殺菌またはウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌またはウイルス不活性化効力をより効果的に向上させることができ、高い殺菌またはウイルス不活性化効力と安全性とを兼ね備えた殺菌またはウイルス不活性化剤組成物を簡単に且つ低コストで製造可能となる。
【0041】
また、本発明の第
16の構成によれば、上記第
11、第13、第15のいずれかの構成の殺菌効力増強方法において、殺菌効力増強成分の配合量を0.0005質量%以上とすることにより、殺菌効力増強成分の配合量を殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力を向上させるために必要な配合量とすることができる。
【0042】
また、本発明の第
17の構成によれば、上記第12
、第14、第15のいずれかのウイルス不活性化効力増強方法において、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量を0.01質量%以上とすることにより、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量をウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物のウイルス不活性化効力を向上させるために必要な配合量とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物について詳細に説明する。本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、(A)殺菌、ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分として特定の有機酸塩及び/又は無機酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を(C)水に混合して水溶液としたものである。
【0044】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物に殺菌、ウイルス不活性化成分として配合される(A)グレープフルーツ種子抽出物は、グレープフルーツの種子から抽出した天然由来の殺菌、抗菌、ウイルス不活性化成分であり、食品添加物として認められている。また、揮発性が小さく持続的な殺菌、抗菌、ウイルス不活性化活性を有する。従来、グレープフルーツ種子抽出物が単独である程度の殺菌効力を有することは知られていた。しかし、グレープフルーツ種子抽出物と、後述する特定の有機酸塩及び/又は無機酸塩とを併用することで、相乗的に殺菌、ウイルス不活性化効力を発揮することは、本発明者らによって初めて発見された知見である。
【0045】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物におけるグレープフルーツ種子抽出物の配合量は、特に限定されないものの、配合量が少なすぎる場合は十分な殺菌、ウイルス不活性化効力が得られない可能性がある。後述の実施例において示すように、十分な殺菌効力を得るためには、グレープフルーツ種子抽出物を殺菌剤組成物全体に対して0.005質量%以上配合することが好ましい。また、十分なウイルス不活性化効力を得るためには、グレープフルーツ種子抽出物を殺菌剤組成物全体に対して0.01質量%以上配合することが好ましい。
【0046】
一方、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が多すぎる場合、殺菌、ウイルス不活性化効力の顕著な向上が期待できない上に、非常に高価なものになり、汎用性がなくなってしまう。配合量と殺菌、ウイルス不活性化効力とのバランスを考慮すると、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を殺菌またはウイルス不活性化剤組成物全体に対して10.0質量%以下とすることが好ましく、5.0質量%以下とすることがより好ましく、1.0質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物に(B)殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分として配合される有機酸塩は、有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。1つの水酸基を有し、窒素原子を有さない2価以上のカルボン酸塩、水酸基と窒素原子を有さない1価以上のカルボン酸塩、ヌクレオシド一リン酸塩が挙げられる。1つの水酸基を有し、窒素原子を有さない2価以上のカルボン酸塩としては、炭素数2〜8であるカルボン酸塩が挙げられ、具体的には、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物等のクエン酸塩、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物等のリンゴ酸塩、DL−イソクエン酸三ナトリウム等のイソクエン酸塩等が挙げられる。水酸基と窒素原子を有さない1価以上のカルボン酸塩としては、炭素数2〜8であるカルボン酸塩が挙げられ、具体的には、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、コハク酸二ナトリウム等のコハク酸塩、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸塩、プロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸塩、酪酸ナトリウム等の酪酸塩、吉草酸ナトリウム等の吉草酸塩、カプロン酸カリウム等のカプロン酸塩、フタル酸水素カリウム等のフタル酸塩、シュウ酸カリウム一水和物等のシュウ酸塩、マロン酸二ナトリウム等のマロン酸塩、アジピン酸二ナトリウム等のアジピン酸塩、グルタル酸二ナトリウム等のグルタル酸塩、マレイン酸二ナトリウム等のマレイン酸塩、フマル酸一ナトリウム等のフマル酸塩等が挙げられる。ヌクレオシド一リン酸塩としては、イノシン酸二ナトリウム等のイノシン酸塩、グアニル酸二ナトリウム等のグアニル酸塩、アデニル酸二ナトリウム等のアデニル酸塩、シチジル酸二ナトリウム等のシチジル酸塩、チミジル酸二ナトリウム等のチミジル酸塩、ウリジル酸二ナトリウム等のウリジル酸塩等が挙げられる。これら有機酸の中でも、クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩が好ましい。これらの有機酸塩は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0048】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物に(B)殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分として配合される無機酸塩は、無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、その具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物等の炭酸塩、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩が挙げられる。これらの無機酸塩は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、前述した有機酸塩の1種又は2種以上と混合して用いても良い。
【0049】
上記の有機酸塩の中でも、特にクエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウムを用いることで、低い配合量で殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力を顕著に向上することができる。また、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物を用いることで、低い配合量でウイルス不活性化成分であるグレープフルーツ種子抽出物のウイルス不活性化効力を顕著に向上することができる。
【0050】
上記の無機酸塩の中でも、特に化学製品として汎用されており入手が容易で、且つ殺菌、ウイルス不活性化効力の増強効果も顕著である炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0051】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物のpHは6〜11とすることが好ましい。これにより、殺菌、ウイルス不活性化剤組成物が中性〜弱アルカリ性となり、酸性や強アルカリ性の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物に比べて皮膚に対する刺激性も少なく、使用感に優れた殺菌、ウイルス不活性化剤組成物となる。
【0052】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物における殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量は、特に限定されないものの、配合量が少なすぎる場合はグレープフルーツ種子抽出物の殺菌、ウイルス不活性化効力に対する十分な増強効果が得られない可能性がある。後述の実施例において示すように、十分な殺菌効力増強効果を得るためには、殺菌効力増強成分である有機酸塩及び/又は無機酸塩を殺菌剤組成物全体に対して0.0005質量%以上配合することが好ましい。また、十分なウイルス不活性化効力増強効果を得るためには、ウイルス不活性化効力増強成分である有機酸塩及び/又は無機酸塩をウイルス不活性化剤組成物全体に対して0.01質量%以上配合することが好ましい。
【0053】
一方、殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量が多すぎる場合、殺菌、ウイルス不活性化効力増強効果の顕著な向上が期待できない上に、殺菌、ウイルス不活性化剤組成物のコストが高くなる。配合量と殺菌、ウイルス不活性化効力増強効果とのバランスを考慮すると、殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分の配合量を殺菌またはウイルス不活性化剤組成物全体に対して10.0質量%以下とすることが好ましく、5.0質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、従来に比べて短時間の処理で高い殺菌、ウイルス不活性化効果を発現する。後述の実施例において示すように、細菌に対しては1分以下、ウイルスに対しては5分以下の処理時間で十分な殺菌、ウイルス不活性化効果が認められた。
【0055】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物には、必要に応じて界面活性剤を配合することができる。例えば、界面活性剤には泡を発生する性質(泡立ち性)があり、泡立ち性に優れた界面活性剤を使用することで、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物をトリガースプレー等で壁面にスプレーしたときの液ダレを抑制するとともに塗布領域も視認しやすくなる。
【0056】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物に配合される界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも好適に用いられる。本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物中における界面活性剤の配合量は、特に限定されないものの、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0057】
アニオン界面活性剤の例としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0058】
カチオン界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0059】
ノニオン界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤の例としては、ベタイン型界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。
【0061】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0062】
更に、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、無機抗菌、ウイルス不活性化剤、有機抗菌、ウイルス不活性化剤、防藻剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、ウイルス不活性化効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。
【0063】
こうして得られた本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物を、キッチンや浴室の排水口、タイル目地等、細菌やカビの発生しやすい箇所、ウイルス感染者が触れた場所、ウイルス感染者の嘔吐物を処理した場所、衣服等のウイルスで汚染された場所に塗布あるいはスプレーすることで、細菌やカビ、ウイルスを効果的に除去することができる。そして、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、危険で取り扱いにくい次亜塩素酸殺菌剤や刺激臭のある酸性殺菌剤と異なり、安全に、かつ簡単に施用できるので極めて実用性が高いものである。
【0064】
また、本発明のウイルス不活性化組成物は、インフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスに加えて、ノロウイルス等のノンエンベロープウイルスに対しても高い不活性化効果を有する。従って、従来のウイルス除去剤では不活性化が困難であったノロウイルスの不活性化に好適に使用することができる。
【0065】
また、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、殺菌、ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、殺菌、ウイルス不活性化効力増強成分として特定の有機酸塩及び/又は無機酸塩とを水に配合するだけの、非常に単純な組成であり、エタノール等のアルコールや銀系抗菌剤の配合を必須としない。そのため、製造が簡便なうえ、多くの殺菌、ウイルス不活性化剤で問題となる皮膚への刺激性も小さく、安全性が極めて高いものである。また、銀イオンによる変色の問題もないため、使用性にも優れている。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0067】
[試験液の調製]
(A)グレープフルーツ種子抽出物(エービーシーテクノ社製)、(B)炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム(以上、和光純薬工業社製)、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム(以上、ナカライテスク社製)、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物(扶桑化学工業社製)、イノシン酸二ナトリウム(PT.CJ.Indonasia社製)を表1、表2、表6に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(本発明1〜38)を得た。
【0068】
(A)グレープフルーツ種子抽出物(エービーシーテクノ社製)、ユズ種子抽出物(オリザ油化社製)(B)炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリシン、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム(以上、和光純薬工業社製)、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、D−パントテン酸ナトリウム、ビタミンB1塩酸塩、L−アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(以上、ナカライテスク社製)、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物、エリソルビン酸ナトリウム(以上、扶桑化学工業社製)、イノシン酸二ナトリウム(PT.CJ.Indonasia社製)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(同仁化学研究所社製)、グリチルリチン酸二カリウム(丸善製薬社製)を表3、表4、表5、表7に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(比較例1〜39)を得た。
【実施例2】
【0069】
[除菌効果の確認試験(Staphylococcus aureus)]
実施例1で調製した本発明1〜26、比較例1〜32の試験液990μLに、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の培養液10μLを接種してよく攪拌した後、混合液をSCDLP培地で100倍希釈した。接種から希釈までの処理時間は300秒、60秒、30秒、15秒とした。この希釈液を滅菌済みのプラスチックシャーレに固化させておいたSCDLP寒天培地上に100μL滴下し、コンラージ棒でよく延ばした後、37℃で培養を行い、発生するコロニー数を計測した。また、対照例(ネガティブコントロール)として試験液の代わりに滅菌水を用いたものも用意した。試験液で処理したものと対照例のコロニー数の比較により除菌率を算出した。
【0070】
評価基準としては、除菌率が99%以上の場合を◎、除菌率が90%以上99%未満の場合を○、除菌率が90%未満の場合を×とした。除菌効果の試験結果を試験液の配合、pHおよび処理時間と併せて表1〜表5に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
表1〜表2に示すように、(A)グレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物、イノシン酸二ナトリウム、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれる1種以上の有機酸又は無機酸塩とを配合した本発明1〜26では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して除菌率が90%以上となった。
【0077】
特に、グレープフルーツ種子抽出物と、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、イノシン酸二ナトリウム、クエン酸三カリウム一水和物、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムのいずれかを配合した本発明1〜4、7、8、10〜16では除菌率が99%以上となり、短時間(1分間)の処理で細菌が完全に死滅した。さらに、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.20質量%とした本発明20、25では、より短時間(30秒)の処理で細菌が完全に死滅し、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.50質量%とした本発明21、26では、一層短時間(15秒)の処理で細菌が完全に死滅した。
【0078】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.10質量%である本発明19、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.001質量%、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.10質量%である比較例31の結果より、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%以上で即効的かつ十分な除菌効果が認められた。
【0079】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.10質量%、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.0005質量%である本発明17、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.10質量%、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.0001質量%である比較例30の結果より、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.0005質量%以上で即効的かつ十分な除菌効果が認められた。
【0080】
これに対し、表3〜表5に示すように、グレープフルーツ種子抽出物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物、イノシン酸二ナトリウム、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムのみを配合した比較例1〜14では除菌率が90%未満となり、除菌効果が十分でなかった。
【0081】
特に、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.2質量%、炭酸水素ナトリウムの配合量が0.1質量%である本発明20、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.2質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量が0.1質量%である本発明25と、グレープフルーツ種子抽出物のみを0.2質量%配合した比較例1の結果より、グレープフルーツ種子抽出物のみの配合では、配合量を増加しても十分な除菌効果が認められないのに対し、グレープフルーツ種子抽出物と共に有機酸又は無機酸塩を配合することで即効的かつ十分な除菌効果が認められた。
【0082】
また、グレープフルーツ種子抽出物と共に、D−パントテン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ビタミンB1塩酸塩、グリシン、L−アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、エリソルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムのいずれかを配合した比較例15〜24、グレープフルーツ種子抽出物に代えてユズ種子抽出物を炭酸水素ナトリウムと併せて配合した比較例32では十分な除菌効果は認められなかった。即ち、グレープフルーツ種子抽出物と配合する有機酸塩、無機酸塩の種類によって十分な除菌効果が認められるものと、除菌効果が十分でないものがあることが確認された。また、同じ柑橘系であってもユズ種子抽出物では除菌効果が認められないことが確認された。
【0083】
さらに、グレープフルーツ種子抽出物の水溶液に、水酸化ナトリウムを配合してpHを6.2〜9.8に調整した比較例25〜29では十分な除菌効果は認められなかった。即ち、グレープフルーツ種子抽出物を単にpH6〜11の中性〜弱アルカリ性環境下で使用することだけでは殺菌効力の向上は認められず、特定の有機酸塩、無機酸塩との併用によって相乗的に殺菌効力が向上することが確認された。
【0084】
以上の結果から、グレープフルーツ種子抽出物と、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物、イノシン酸二ナトリウム、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上と、を水に配合することで、黄色ブドウ球菌に対する殺菌剤組成物として作用することが確認された。
【0085】
また、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、安息香酸ナトリウム、DL−リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物、イノシン酸二ナトリウム、クエン酸三カリウム一水和物、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムは、グレープフルーツ種子抽出物と共に配合することで、グレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力増強成分として作用することが確認された。
【実施例3】
【0086】
[ウイルス不活性化効果の確認試験(Feline calicivirus)]
(試験ウイルス液の調製)
MEM培地(ナカライテスク社製)に牛胎仔血清を10%加えた細胞増殖培地を用いてCRFK細胞(JCRB細胞バンク)を組織培養シャーレ内に単層培養した。単層培養シャーレ内から細胞増殖培地を除去し、ネコカリシウイルス(Feline calicivirus F-9 ATCC VR-782)を接種した。次に、MEM培地に牛胎仔血清を2%加えた細胞維持培地を加えて37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO
2濃度5%)内で1〜5日間培養した。ネコカリシウイルスはノンエンベロープウイルスの一種であり、細胞培養できないノロウイルスの代替ウイルスとして広く使用されている。
【0087】
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を1000rpm/分で3分間遠心分離し、得られた上澄み液を限外ろ過して試験ウイルス液とした。
【0088】
実施例1で調製した本発明27〜38、比較例33〜39の試験液0.9mLに、試験ウイルス液0.1mLを添加混合し、作用液とした。5分後に作用液をMEM培地で100倍希釈し、10倍希釈系列を作製した。なお、精製水に試験ウイルス液を添加したものを対照として同様の操作を行った。
【0089】
(ウイルス感染価の測定)
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除去して細胞維持培地を0.1mLずつ加えた。次に、作用液の10倍希釈系列0.1mLをそれぞれ4穴ずつに接種し、37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO
2濃度5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%細胞培養感染量(TCID
50)を算出して作用液1mL当たりの感染価に換算し、対照とした精製水の感染価と比較して、感染価対数減少値を算出した。ウイルス感染価の測定結果を試験液の配合、pHと併せて表6、表7に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
表6に示すように、(A)グレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物のいずれかとを配合した本発明27〜38では、ネコカリシウイルス(Feline calicivirus)に対して感染価対数減少値が1以上となり、ウイルス不活性化効果を有することが確認された。
【0093】
特に、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.50質量%とした本発明27、29、31、36では、感染価対数減少値が2.83よりも大きくなり、より一層顕著なウイルス不活性化効果が得られることが確認された。また、本発明27、29、31、36および比較例33、35の結果より、グレープフルーツ種子抽出物のみを0.50質量%配合した場合でもウイルス不活性化効果が認められるが、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物を配合することでウイルス不活性化効果が相乗的に高くなることが確認された。
【0094】
また、本発明28、30、34、37、38および比較例34、36、37の結果より、グレープフルーツ種子抽出物のみを0.20質量%配合した場合はウイルス不活性化効果が認められないが、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物のいずれかを配合することでウイルス不活性化効果を発現することが確認された。
【0095】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.10質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量が0.20質量%である本発明32、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.01質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量が0.50質量%である比較例38の結果より、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.10質量%以上とすることで、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合によりウイルス不活性化効果が相乗的に高くなることが確認された。
【0096】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.50質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量が0.01質量%である本発明36、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.50質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量が0.001質量%である比較例39の結果より、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量を0.01質量%以上とすることで、グレープフルーツ種子抽出物によるウイルス不活性化効力の増強効果が発現することが確認された。
【0097】
以上の結果から、グレープフルーツ種子抽出物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物から選ばれた1種又は2種以上と、を水に配合することで、ネコカリシウイルスに対するウイルス不活性化剤組成物として作用することが確認された。
【0098】
また、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物は、グレープフルーツ種子抽出物と共に配合することで、グレープフルーツ種子抽出物のウイルス不活性化効力増強成分として作用することが確認された。
【0099】
なお、ここでは本発明のウイルス不活性化組成物によるエンベロープウイルスに対する不活性化効果は示していないが、エンベロープウイルスはノンエンベロープウイルスに比べて薬剤に対する感受性が高いため、本発明のウイルス不活性化組成物がエンベロープウイルスに対しても即効的な不活性効果を有するのはもちろんである。
【0100】
本発明は、殺菌、ウイルス不活性化成分として次亜塩素酸やアルコール、銀系抗菌剤を含まず、低刺激性で銀イオンによる変色のおそれもなく、安全性にも優れた殺菌、ウイルス不活性化剤組成物、および殺菌、ウイルス不活性化効力増強方法であり、特にキッチンや浴室、ウイルスで汚染された場所等に直接スプレー等により塗布される殺菌、ウイルス不活性化剤組成物として好適に用いられる。
【要約】
(A)殺菌またはウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌またはウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌またはウイルス不活性化剤組成物。