(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の重合粉体の流動性改良方法では、種々のモノマーを重合する重合体の製造工程ないし貯蔵工程におけるパウダー流動環境場、例えば重合反応器及びこれに付属する配管、多段重合装置の重合反応器同士を連結する配管、得られた重合粉体を重合反応器から抜き出す抜き出しポット及びこれに付属する配管、重合体の貯蔵庫及びこれに付属する配管、その他の重合粉体輸送用配管等の重合粉体が存在する閉鎖空間にグリセリン脂肪酸エステルを供給することにより、これらのパウダー流動環境場における重合粉体の流動性を向上させる。
【0013】
本発明のパウダー流動環境場中に存在する重合粉体としては、液相重合、気相重合等の公知の様々な方法で得られる重合体の粉体であれば特に制限はなく、例えば気相重合で得られたそのままの重合体の粉体、また液相重合で得られた後液相から回収された重合体の粉体等が挙げられる。
【0014】
パウダー流動環境場では、全気体中の水分含量が2ppm(質量基準)以下、好ましくは0.5ppm以下あるいは水分が存在しないことが望ましい。全気体中の水分含量が2ppmを超えると重合活性が著しく低下し易い傾向にあり、余り好ましくない。
【0015】
またグリセリン脂肪酸エステルは、パウダー流動環境場中の重合粉体の全質量に対して好ましくは0.1〜400ppm、より好ましくは0.5〜350ppm、特に好ましくは1.5〜300ppmの量で存在するようにパウダー流動環境場に供給される。
【0016】
グリセリン脂肪酸エステルの供給割合が上記範囲を超えると経済的に不利であり、あるいは重合活性が低下する場合があり、上記範囲より少なくなると重合紛体の流動性の改良効果が発現しない場合がある。
【0017】
グリセリン脂肪酸エステルは、パウダー流動環境場に連続的または間歇的に供給されてよいが、特に間歇的に供給することが好ましい。またグリセリン脂肪酸エステルは、1つのパウダー流動環境場に供給してもよく、複数のパウダー流動環境場に供給してもよい。
【0018】
本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステルは、好ましくは脂肪酸とグリセリン及び/又は重合度が2以上のポリグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。具体的には、グリセリンモノミリステート、グリセリンジミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンジカプリレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート等のモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンジオレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンジベヘネート等のジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリンモノミリステート、トリグリセリンジミリステート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンジパルミテート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノオレート、トリグリセリンジオレート、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンジラウレート、トリグリセリンモノベヘネート、トリグリセリンジベヘネート等のトリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンオレート、ヘキサグリセリンラウレート、ヘキサグリセリンステアレート、ヘキサグリセリンオレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。中でも、重合度が2以上のポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、重合度が2以上10以下のポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、ジグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0019】
本発明の流動性改良方法は、パウダー流動環境場がオレフィンの気相連続重合装置の重合反応器であり、重合粉体がポリオレフィンパウダーである場合に特に好適に適用される。
【0020】
ポリオレフィンパウダーとしては、例えば炭素原子数が2〜20のα−オレフィン、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン;炭素数が3〜20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等のオレフィンから選ばれる少なくとも1種の重合体のパウダーが挙げられる。
【0021】
本発明の重合粉体の流動性改良方法は、これらの中でも、特にエチレン単独重合体のパウダーまたはエチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体のパウダーの流動性改良に好適である。
【0022】
気相連続重合装置を用いてオレフィンを重合する方法としては、後述するような固体触媒を用いて、例えば気相流動床反応装置を用いてオレフィンを重合する方法がある。気相流動床反応装置を用いてオレフィンを重合するに際して、固体触媒は、例えば触媒供給ラインを介して固体粉末状態で流動床反応器に供給される。ガス状のオレフィン等は、例えば供給ガスラインから連続的に供給され、循環ガスブロワーにより循環ガスラインを介して流動床反応器下方から多孔板等のガス分散板を介して吹き込まれる。これにより、流動床(反応系)は流動状態に保持される。このような固体触媒が流動状態に保持された流動床に吹き込まれたオレフィンは、ここで重合反応して、重合粉体(ポリオレフィンパウダー)が生成する。ポリオレフィンパウダーは、重合体排出ラインを介して流動床反応器から連続的に抜き出される。流動床を通過した未反応のガス状のオレフィン等は、流動床反応器上方に設けられた減速域で減速されて排出ガスラインから流動床反応器外に排出され、熱交換器において重合熱が除去されて循環ガスラインから再び流動床に循環される。水素のような分子量調節剤は、気相流動床反応装置の任意の場所、例えば供給ガスライン7から供給することができる。
【0023】
このような気相流動床反応装置を用いたオレフィンの重合工程に本発明を適用する場合には、グリセリン脂肪酸エステルは気相流動床反応装置の任意の場所、例えば流動床反応器、供給ガスライン、循環ガスライン、排出ガスラインに供給することができる。
【0024】
本発明では、グリセリン脂肪酸エステルを気相流動床反応装置に供給する際には、循環ガスラインを介して、分散板の下から流動床反応器内に連続的または間歇的に供給するか、あるいは分散板よりも上部から流動床反応器内に連続的または間歇的に供給することが好ましく、いずれの場合においても間歇的に供給することがより好ましい。
【0025】
このようにグリセリン脂肪酸エステルを流動環境場に供給すれば、使用するグリセリン脂肪酸エステルの量が少量で十分な効果が得られ、非常に効率よく添加することができる。また添加量の定量性がよく、非常に定量的に添加することが可能となる。
【0026】
さらに流動環境場の状態を確認しつつ随時添加することができ、グリセリン脂肪酸エステルの添加による触媒活性低下等の重合状態への影響を瞬時に判断することが可能となる。また触媒活性の低下や、得られたポリオレフィンパウダーの物性等への影響がほとんどないかまたは最小限に抑制することが可能となる。
【0027】
気相連続重合装置で用いられる固体触媒としては、具体的には、周期表第3族ないし第12族から選ばれる遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化合物が粒子状担体に担持された担体担持型の遷移金属化合物系触媒、固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる固体状のチタン系触媒、三酸化クロムに酸化し得る任意のクロム化合物をシリカ等の無機酸化物固体に担持させたいわゆるフィリップス触媒等が挙げられ、これらのうちでは担体担持型の遷移金属化合物系触媒が好ましく、特に周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物及び有機アルミニウムオキシ化合物が粒子状担体に担持された担体担持型のメタロセン系触媒が好ましい。
【0028】
担体担持型のメタロセン系触媒は、(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、(C)微粒子状担体とから形成されている。
【0029】
また、担体担持型のメタロセン系触媒は、予備重合されていてもよく、このような予備重合された担体担持型のメタロセン系触媒(以下、「予備重合メタロセン系触媒」という。)は、(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、(C)微粒子状担体と、(D)予備重合により生成するオレフィン重合体とから形成されている。
【0030】
以下、まず本発明に係るオレフィン重合用固体触媒及びオレフィン重合用予備重合触媒を形成する各成分について説明する。
【0031】
[(A)遷移金属化合物]
(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物を例示することができる。
MLx ・・・(I)
式中、Mは、周期表第4族の遷移金属であり、具体的には、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。
【0032】
Lは、遷移金属に配位する配位子(基)であり、少なくとも1個のLは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、炭素数が1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3R(ただし、Rはハロゲン等の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基である。)または水素原子である。
【0033】
xは、遷移金属の原子価であり、Lの個数を示す。
【0034】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基;4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基;フルオレニル基これらの炭化水素置換体等を例示することができる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基等が置換していてもよい。
【0035】
これらの遷移金属に配位する配位子の中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。上記一般式(I)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等のアルキリデン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。また、2個以上のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、同一であることが好ましい。
【0036】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、下記のようなものが挙げられる。
【0037】
炭素数が1〜12の炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基が例示される。
【0038】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が例示される。アリーロキシ基としては、フェノキシ基等が例示される。
【0039】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が例示される。−SO
3Rで表される配位子としては、p−トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基等が例示される。
【0040】
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(I−1)で表される。
MR
1R
2R
3R
4 ・・・(I-1)
(式中、Mは、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、R
1は、シクロペンタジエニル骨格を有する基であり、R
2、R
3およびR
4は、互いに同一でも異なっていてもよく、シクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3Rまたは水素原子である。)
【0041】
本発明では上記一般式(I−1)においてR
2、R
3およびR
4のうち1個がシクロペンタジエニル骨格を有する基である遷移金属化合物、例えばR
1およびR
2がシクロペンタジエニル骨格を有する基である遷移金属化合物が好ましく用いられる。この場合、これらのシクロペンタジエニル骨格を有する基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。また、R
3およびR
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、−SO
3Rまたは水素原子である。
【0042】
以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−アセナフトシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−7−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等。
【0043】
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。またプロピル、ブチル等のアルキル基は、n−、i−、sec−、tert−等の異性体を含む。
【0044】
また、本発明では上記のようなジルコニウム化合物において、ジルコニウム金属を、チタン金属またはハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0045】
[(B)有機アルミニウムオキシ化合物]
(B)有機アルミニウムオキシ化合物として具体的には、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−276807号公報で開示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0046】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、有機アルミニウム化合物と吸着水または結晶水とを反応させる方法。
【0047】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
【0048】
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0049】
なお、このアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解してもよい。
【0050】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシド等が挙げられる。
【0051】
これらのうち、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが特に好ましい。また、この有機アルミニウム化合物として、下記一般式
(i−C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z
(x、y、zは正の数であり、z≧2xである)で表わされるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0052】
上記のような有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いられる。アルミノキサンの調製の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物等の炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素が好ましい。
【0053】
[(C)微粒子状担体]
(C)微粒子状担体として具体的には、SiO
2、Al
2O
3 、MgO、ZrO
2、TiO
2 、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2 等、もしくはこれらを含む混合物、たとえばSiO
2−MgO、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−TiO
2 、SiO
2−V
2O
5 、SiO
2−Cr
2O
3、SiO
2−TiO
2−MgO等の無機担体、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機担体を挙げることができる。
【0054】
このような(C)微粒子状担体は、平均粒径が、1〜300μm、好ましくは10〜200μmの範囲にあることが望ましい。本発明で好ましく用いられる担体担持型のメタロセン系触媒は、前記(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、前記(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、前記(C)微粒子状担体を必須成分として含有しているが、必要に応じて(E)有機アルミニウム化合物を含有していてもよい。
【0055】
このような(E)有機アルミニウム化合物としては、たとえば下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
【0056】
R
anAlX
3-n ・・・(II)
(式中、R
aは炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子または水素原子を示し、nは1〜3である。)
上記一般式(II)において、R
aは炭素原子数1〜12の炭化水素基たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基等である。
【0057】
このような有機アルミニウム化合物(E)としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等。
【0058】
また有機アルミニウム化合物(E)として、下記一般式(III)で表される化合物を用いることもできる。
【0059】
R
anAlY
3-n ・・・(III)
(式中、R
aは上記と同様であり、Yは−OR
b基、−OSiR
c3基、−OAlR
d2基、−NR
e2基、−SiR
f3基または−N(R
g)AlR
h2基であり、nは1〜2であり、R
b、R
c、R
dおよびR
hはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等であり、R
eは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基等であり、R
fおよびR
gはメチル基、エチル基等である。)
【0060】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
(1)R
anAl(OR
b)
3-nで表される化合物、たとえばジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド等。
(2)R
anAl(OSiR
c3)
3-nで表される化合物、たとえばEt
2Al(OSiMe
3)、(iso−Bu)
2Al(OSiMe
3)、(iso−Bu)
2Al(OSiEt
3)等。
(3)R
anAl(OAlR
d2)
3-nで表される化合物、たとえばEt
2AlOAlEt
2、(iso−Bu)
2AlOAl(iso−Bu)
2等。
(4)R
anAl(NR
e2)
3-nで表される化合物、たとえばMe
2AlNEt
2、Et
2AlNHMe、Me
2AlNHEt、Et
2AlN(SiMe
3)
2、(iso−Bu)
2AlN(SiMe
3)
2等。
(5)R
anAl(SiR
f3)
3-nで表される化合物、たとえば(iso−Bu)
2AlSiMe
3等。
(6)R
anAl(N(R
g)AlR
h2)
3-nで表される化合物、たとえばEt
2AlN(Me)AlEt
2、(iso−Bu)
2AlN(Et)Al(iso−Bu)
2等。
【0061】
上記一般式(II)または(III)で表される有機アルミニウム化合物の中では、一般式R
a3Al、R
anAl(OR
b)
3-n、R
anAl(OAlR
d2)
3-nで表わされる化合物が好ましく、特にR
aがイソアルキル基であり、n=2である化合物が好ましい。
【0062】
[担体担持型メタロセン系触媒]
本発明で好ましく用いられる担体担持型のメタロセン系触媒は、前記(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、前記(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、前記(C)微粒子状担体と、必要に応じて前記(E)有機アルミニウム化合物とから形成されている。
【0063】
このような担体担持型メタロセン系触媒は、(A)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、(C)微粒子状担体と、必要に応じて(E)有機アルミニウム化合物とを混合接触させることにより調製することができる。各成分の接触順序は任意に選ばれる。
【0064】
担体担持型メタロセン系触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0065】
担体担持型メタロセン系触媒を調製するに際して、(A)遷移金属化合物は遷移金属原子換算で、(C)微粒子状担体1g当り、通常0.001〜1.0ミリモル、好ましくは0.005〜0.5ミリモルの量で用いられ、(B)有機アルミニウムオキシ化合物はアルミニウム原子換算で、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.5〜20ミリモルの量で用いられる。
【0066】
(E)有機アルミニウム化合物を用いる場合は、(C)微粒子状担体1g当り、通常0.001〜1000ミリモル、好ましくは2〜500ミリモルの量で用いられる。
【0067】
上記各成分を混合接触させる際の温度は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。
【0068】
このようにして得られる担体担持型メタロセン系触媒は、(C)微粒子状担体1g当たり、(A)遷移金属化合物が遷移金属原子換算で約5×10
-6〜10
-3モル、好ましくは10
-5〜3×10
-4モルの量で担持され、(B)有機アルミニウムオキシ化合物(必要に応じて(E)有機アルミニウム化合物を用いる場合は、そのアルミニウムも含めて)がアルミニウム原子換算で約10
-3〜10
-1モル、好ましくは2×10
-3〜5×10
-2モルの量で担持されていることが望ましい。
【0069】
[予備重合メタロセン系触媒]
予備重合触媒は、前記(A)遷移金属化合物と、前記(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、前記(C)微粒子状担体と、必要に応じて前記(E)有機アルミニウム化合物と、(D)予備重合により生成するオレフィン重合体とから形成されている。
【0070】
このような予備重合触媒を調製する方法としては、例えば(A)遷移金属化合物と、(B)有機アルミニウムオキシ化合物と、(C)微粒子状担体とを不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン媒体中で混合接触させて得られる固体触媒成分に、少量のオレフィンを予備重合する方法がある。
【0071】
なお、予備重合時に(E)有機アルミニウム化合物を用いることができる。予備重合触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、前記担体担持型メタロセン系触媒を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0072】
予備重合時に用いられるオレフィンは、エチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜49モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、好ましくはエチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、より好ましくはエチレンを100〜20モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲、特に好ましくはエチレンを100〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲で含有していることが望ましい。
【0073】
炭素原子数が4以上のオレフィンとして具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数が4〜20のα−オレフィンが挙げられる。
【0074】
さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン類等を用いることもできる。
【0075】
予備重合触媒を調製するに際して、(A)遷移金属化合物は遷移金属原子換算で、(C)微粒子状担体1g当り、通常0.001〜1.0ミリモル、好ましくは0.005〜0.5ミリモルの量で用いられ、(B)有機アルミニウムオキシ化合物はアルミニウム原子換算で、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.5〜20ミリモルの量で用いられる。(E)有機アルミニウム化合物を用いる場合は、(C)微粒子状担体1g当り、通常0.001〜1000ミリモル、好ましくは0.01〜500ミリモルの量で用いられる。
【0076】
上記のようにして得られた予備重合触媒は、(C)微粒子状担体1g当たり、(A)遷移金属化合物が遷移金属原子換算で約5×10
-6〜10
-3モル、好ましくは10
-5〜3×10
-4モルの量で担持され、(B)有機アルミニウムオキシ化合物がアルミニウム原子換算で約10
-3〜10
-1モル、好ましくは2×10
-3〜5×10
-2モルの量で担持され、予備重合により生成するオレフィン重合体(D)が、約0.1〜500g、好ましくは0.3〜300g、特に好ましくは1〜100gの量で担持されていることが望ましい。
【0077】
なお、本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にも重合に有用な他の成分を含むことができる。このような本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、優れた重合活性でオレフィンを重合させることができる。
【0078】
[重合]
担体担持型のメタロセン系触媒及び予備重合メタロセン系触媒を用いたオレフィンの重合は、通常気相重合により行われる。重合の際には、さらに(C)微粒子状担体に担持されていない(B)有機アルミニウムオキシ化合物及び/または(E)有機アルミニウム化合物を用いることができる。
【0079】
気相重合を実施する際には、オレフィンの重合温度は、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。また、重合圧力は、通常、常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
【0080】
重合時に用いられるオレフィンは、エチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜49モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、好ましくはエチレンを100〜0モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜100モル%の範囲、より好ましくはエチレンを100〜20モル%、プロピレンを0〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲、特に好ましくはエチレンを100〜20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0〜80モル%の範囲で含有していることが望ましい。炭素原子数が4以上のオレフィンとして具体的には、前記予備重合時に用いられる炭素原子数が4以上のオレフィンと同様のものが挙げられる。
【0081】
担体担持型のメタロセン系触媒及び予備重合メタロセン系触媒を用いたオレフィンの気相重合において、パウダー流動環境場にグリセリン脂肪酸エステルを上記した割合で添加すると、重合粉体の流動性が向上しポリマー塊を生成したり配管等が閉塞することがなく、しかも触媒活性の低下や、得られたポリオレフィンパウダーの物性等への影響がほとんどない。
【実施例】
【0082】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0083】
〔調製例1〕(固体触媒成分(X−1)の調製)
特開2000−327707に開示された方法で合成した。具体的には、250℃で10時間乾燥した平均粒径70μmのシリカ10kgを、154リットルのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。その後、この懸濁液に、メチルアミノキサンのトルエン溶液(Al=1.52モル/リットル)50.5リットルを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃の範囲に保った。引続き0℃で30分間反応させ、次いで1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法により除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン100リットルで再懸濁し、全量を160リットルとした。
【0084】
このようにして得られた懸濁液に、ビス(1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr=25.7ミリモル/リットル)22.0リットルを80℃で30分間かけて滴下し、さらに80℃で2時間反応させた。その後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより固体触媒成分を得た。
【0085】
〔調製例2〕(予備重合固体触媒成分(XP−1)の調製)
特開2000−327707に開示した方法で合成した。具体的には、充分に窒素置換した350リットルの反応器に、調製例1で調製した固体触媒成分7.0kgとヘキサンを装入し、全容積を285リットルにした。系内を10℃まで冷却した後、エチレンを8Nm
3/hの流量で5分間ヘキサン中に吹き込んだ。この間、系内の温度は、10〜15℃に保持した。その後、エチレンの供給を停止し、トリイソブチルアルミニウムを2.4モルおよび1−ヘキセンを1.2kg装入した。系内を密閉系にした後、8Nm
3/hの流量でエチレンの供給を再度開始した。15分後、エチレンの流量を2Nm
3/hに下げ、系内の圧力を0.8kg/cm
2−Gにした。この間に、系内の温度は35℃まで上昇した。その後、系内の温度を32〜35℃に調節しながら、エチレンを4Nm
3/hの流量で3.5時間供給した。この間、系内の圧力は0.7〜0.8kg/cm
2−Gに保持されていた。次いで、系内を窒素により置換を行った後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄した。このようにして予備重合固体触媒成分を得た。
【0086】
〔調製例3〕(ポリエチレンパウダーの調製)
充分に窒素置換した1000mlのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換した後、1−へキセン20ml、調製例2で調製した予備重合固体触媒成分0.50gを投入し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始した。その後、8.0kg/cm
2−Gに保ちながら連続的にエチレンを供給し、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥し、ポリエチレンパウダー203gを得た。
【0087】
〔実施例1〕
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付きステンレス製反応器に、調製例3で調製したポリエチレンパウダー10.0gを装入し、80℃のオイルバスで加熱しながら150rpmでポリエチレンパウダーの撹拌を開始した。1分後にグリセリン脂肪酸エステルとしてジグリセリンラウレート(商品名:リケマールL−71−D、理研ビタミン株式会社製)のヘキサン溶液(10g/l)を0.10ml(ポリエチレンパウダーの質量に対して100ppm)を添加し、さらに80℃で30分撹拌した。その後、撹拌を止め、反応器を傾けてポリエチレンパウダーを回収し質量を測定したところ9.9gであった。反応器内部の状況を確認すると、ポリエチレンパウダーの反応器壁や撹拌羽根への付着はほぼ認められなかった。
【0088】
〔実施例2〜17〕
添加するグリセリン脂肪酸エステルの種類および添加量を表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリエチレンパウダーを撹拌した。その後、撹拌を止め、反応器を傾けて回収したポリエチレンパウダー質量を表1に示す。反応器内部の状況を確認すると、何れの実施例においてもポリエチレンパウダーの反応器壁や撹拌羽根への付着はほぼ認められなかった。
【0089】
〔比較例1〕
グリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてステンレス製反応器内でポリエチレンパウダーを加熱しながら撹拌し、回収した。回収したポリエチレンパウダーの質量を測定したところ7.7gであった。反応器内部の状況を確認すると、回収されなかったポリエチレンパウダーは反応器壁や撹拌羽根へ付着していることが認められた。
【0090】
以上の実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
〔実施例18〕
(気相重合による運転性評価)
気相流動床重合装置を用いて、エチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。重合圧力を1.7MPaG、重合温度を80℃とした。調製例2で調製した予備重合固体触媒成分(XP−1)を5.2g/hrで重合反応器中に供給した。循環ガスライン中に、グリセリン脂肪酸エステルとしてジグリセリンラウレート(商品名:リケマールL−71−D)を重合体の重量に対して50wtppmの量で存在するように供給した。気相重合器内のガス組成は、エチレン分圧=1.0MPa、水素/エチレン=4.8×10
−4モル比、1−ヘキセン/エチレン=0.022モル比となるようにエチレン、水素、1−ヘキセンを連続的に供給し、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。滞留時間は4時間であった。このときのポリマー密度は916kg/m
3、メルトフローレートは3.9g/10minであった。なお、メルトフローレートは、ASTMD1238−65Tに従い190℃、2.16kg加重の条件下で測定した。
【0093】
以上の条件で18時間運転を実施したが、重合器や配管等、全ての箇所にヒートスポットの発生はみられず、安定した重合が実施できた。
【0094】
〔比較例2〕
予備重合固体触媒成分(XP−1)の供給量を4.2g/hrとし、ジグリセリン脂肪酸エステルを供給しなかったこと以外は実施例18と同様にして、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。この条件で運転した結果、重合器等にヒートスポットが発生し4時間で運転が継続できなくなった。