(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、透明導電フィルム上の透明電極層が存在する部分と透明電極層が存在しない部分との光学特性の差によって、透明電極のパターンが視認されてしまう現象を抑制するため、透明基材と透明電極層との間に所定の屈折率を有する光学調整層を設ける手法が開発されてきた(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0006】
しかしながら、従来の光学調整層では、ITOからなる透明電極層を従来よりも厚くした透明導電フィルムの黄色化を十分に抑制することは困難である。
【0007】
それ故に、本発明は、透明電極層形成後の黄色化を十分に抑制できる透明導電フィルム及びこれを含むタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明基材の一方面に、低屈折率層及び透明電極層がこの順で積層された透明導電フィルムに関するものであり、低屈折率層の屈折率が1.42〜1.50、低屈折率
層の膜厚が150〜190nmであり、透明導電フィルムのCIE L
*a
*b
*色空間におけるa
*の値が−0.75〜+0.75、b
*の値−0.1〜+0.6であり、400〜800nmの波長領域の光の反射率スペクトルが、500〜620nmの範囲内で極大値を取ることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、透明基材の一方面に、高屈折率ハードコート層、低屈折率層及び透明電極層がこの順で積層された透明導電フィルムに関するものであり、高屈折
率ハードコート層の屈折率が1.63〜1.67であり、低屈折率層の屈折率が1.42〜1.50、低屈折率
層の膜厚が150〜190nmであり、透明導電フィルムのCIE L
*a
*b
*色空間におけるa
*の値が−0.75〜+0.75、b
*の値が−0.1〜+0.6であり、400〜800nmの波長領域の光の反射率スペクトルが、500〜620nmの範囲内で極大値を取ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明電極層形成後の黄色化を十分に抑制できる透明導電フィルム及びこれを含むタッチパネルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、タッチパネルを備える画像表示装置の構成例を示す断面図である。
【0013】
画像表示装置1は、画像表示パネル2と、画像表示パネル2に接着層8を介して貼り合わされたタッチパネル3と、タッチパネル3の表面に接着層11を介して貼り合わされたカバーガラス12とを備える。尚、
図1における上側が画像表示装置1の前面側(視認される側)に対応し、
図1における下側が画像表示装置1の背面側に対応する。
【0014】
画像表示パネル2は、画像表示装置1の背面側から順に、バックライト4と、偏光板5と、液晶パネル6と、偏光板7とを備える。タッチパネル3は、透明電極を有する透明導電フィルム9a及び9bを接着層10を介して積層することによって構成されている。画像表示パネル2の偏光板7と、タッチパネル3の透明導電フィルム9aとは、偏光板7の周縁部にのみ設けられた接着層8を介して、エアギャップ方式により貼り合わされている。上述した接着層8、10及び11は、例えば、透明光学粘着フィルム(OCA;Optical Clear Adhesiveフィルム)により構成される。
【0015】
図2〜4は、
図1に示す透明導電フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
【0016】
図2に示す透明導電フィルム9a及び9bは、透明基材20と、低屈折率層21と、透明電極層22とをこの順に積層したものである。
【0017】
また、
図3に示すように、透明基材20と低屈折率層21との間に更に高屈折率ハードコート層23を設けても良い。
【0018】
また、
図4に示すように、
図2に示す透明導電フィルム9a及び9bの層構成に加えて、透明基材20の両面のうち、低屈折率層21が設けられた面とは反対側の面にアンチブロッキング層24を設けても良い。
【0019】
尚、図示は省略しているが、
図3に示した透明導電フィルム9a及び9bにおいて、透明基材20の両面のうち、低屈折率層21が設けられた面とは反対側の面にアンチブロッキング層24を設けても良い。
【0020】
本発明に係る透明導電フィルム9a及び9bは、光学調整層として低屈折率層21を設けることにより、以下の条件(1)及び(2)を同時に満足する。条件(1)及び(2)を同時に満足することにより、透明電極層22に由来する黄色味が抑制されると共に、紫色を帯びることも抑制されている。
(1)CIE L
*a
*b
*色空間における透過光のa
*の値が−0.75〜+0.75であり、透過光のb
*の値が−0.1〜+0.6である
(2)400〜800nmの波長領域の光の反射率のスペクトルが、500〜620nmの範囲内で極大値を取る
【0021】
以下、透明導電フィルム9a及び9bを構成する各層の詳細について説明する。
【0022】
(透明基材)
透明基材20は、透明導電フィルム9a及び9bの基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明基材20の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に利用できる。透明基材20の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmとすることが好ましい。
【0023】
(低屈折率層)
低屈折率層21は、透明電極層22がある部分とない部分との色差を小さくするために設けられる光学調整層である。低屈折率層21を設けることによって、透明導電フィルム9a及び9bの透過光のa
*の値を−0.75〜+0.75とし、透過光のb
*の値を−0.1〜+0.6にとすることができるので、透明導電フィルム9a及び9bの黄色化を抑制することが可能となる。低屈折率層21の屈折率は、1.42〜1.50とする。低屈折率層21の屈折率が1.42より小さい場合、透明導電フィルムの透過光のa
*の値が増加し、透過光のb
*の値が−0.1より小さくなるため、透明導電フィルム9a及び9bが紫色を帯びる。一方、低屈折率層21の屈折率が1.50より大きい場合、透明導電フィルム9a及び9bの透過光のb
*の値が+0.6より大きくなり、黄色化を抑制できなくなる。
【0024】
また、低屈折率層21の膜厚は、150〜190nmとする。低屈折率層21の膜厚がこの範囲外の場合、透明導電フィルム9a及び9bの反射率のスペクトルの極大値が500〜620nmの範囲外となり、透明導電フィルム9a及び9bの透過光のb
*の値が+0.6より大きくなる。この結果、透明導電フィルム9a及び9bの黄色化を抑制できなくなる。
【0025】
低屈折率層21は、電離放射線硬化型樹脂等のバインダーと、必要に応じて添加される無機微粒子とを含有する塗工液を透明基材20に塗布し、塗膜を光重合により硬化させることによって形成することができる。この塗工液に使用するバインダーや添加剤は特に限定されず、硬化後に上記範囲内の屈折率となる材料を適宜使用できる。塗工液の塗工方法は特に限定されず、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等の公知のウェットコーティング法を採用することができる。塗工液の塗膜を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射や電子線照射を利用することができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm
2程度である。
【0026】
(透明電極層)
透明電極層22は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等の屈折率が1.7〜2.2の透明導電材料を用いて形成される。透明電極層22の膜厚は、低抵抗化のために膜厚を増加させる場合は、20〜30nmとすることが好ましい。
【0027】
透明電極層22の形成方法は、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレート法、化学気相成長法(CVD法)等により成膜できる。透明電極層22をITOにより形成する場合、ITOを結晶化させるため、成膜後に100〜200℃程度でアニール処理を行う。その後、透明電極層22は、所定形状にパターニングされ、マトリクス状に配列された複数の透明電極が形成される。
【0028】
(高屈折率ハードコート層)
高屈折率ハードコート層23は、電離放射線硬化型樹脂等のバインダーと、高屈折率微粒子とを含有する塗工液を透明基材20に塗布し、塗膜を光重合により硬化させることによって形成することができる。この塗工液に使用するバインダーや添加剤は特に限定されず、硬化後に上記範囲内の屈折率となる材料を適宜使用できる。例えば、高屈折粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、ATO、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛等の金属酸化物等を使用できる。これらの高屈折率材料の中でも、酸化ジルコニウムは、屈折率が相対的に高く、かつ、高屈折率ハードコート層23の透明性を向上できるためより好ましい。高屈折微粒子の粒径は、10〜100nmである。バインダーとの結合力を向上させるため、高屈折率微粒子として、表面が有機鎖により修飾されたものを使用することがより好ましい。塗工液の塗工方法及び硬化方法は、上述した低屈折率層の形成方法で示したものを利用できる。
【0029】
図3の構成例のように、高屈折率ハードコート層23を設ける場合、高屈折率ハードコート層23の屈折率は、1.63〜1.67とする。高屈折率ハードコート層の屈折率が1.63より小さい場合、透明導電フィルム9a及び9bの透過光のb
*の値が+0.6より大きくなり、透明導電フィルム9a及び9bが黄色を帯びる。一方、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.67より大きくなると、透明導電フィルム9a及び9bの透過光のb
*の値が−0.1より小さくなり、透明導電フィルム9a及び9bが紫色を帯びる。また、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.67より大きくなると、400〜800nmの波長領域の光の反射スペクトルが波打つような波形となり、高屈折率ハードコート層23と透明基材20との干渉縞により、透明電極層22が虹色に見えてしまう。また、高屈折率ハードコート層23の膜厚は、1.0〜2.0μmとすることが好ましい。
【0030】
(アンチブロッキング層)
アンチブロッキング層24は、透明導電フィルム9a及び9bのロール・ツー・ロールでの製造時及び/または製造後に、フィルム同士の貼り付きを防止するために設けられる層であり、表面に微細な凹凸を有する。この微細な凹凸は、アンチブロッキング層24に含まれる微粒子によって形成される。アンチブロッキング層24は、電離放射線硬化型樹脂等のバインダーと微粒子とを含有する塗工液を透明基材20に塗布し、塗膜を光重合により硬化させることによって形成することができる。この塗工液に使用するバインダーや添加剤は特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、微粒子としては、シリカ、タルク等の無機微粒子や、アクリル樹脂やスチレン樹脂等の有機微粒子を使用できる。
【0031】
尚、上述した低屈折率層21、高屈折率ハードコート層23及びアンチブロッキング層24を形成するための塗工液には、必要に応じて、光重合開始剤、溶剤、防汚剤、表面調製剤、レベリング剤、屈折率調製剤、光増感剤等を加えても良い。
【0032】
以上説明したように、本発明に係る透明導電フィルム9a及び9bでは、光学調整層として低屈折率層21を設けることにより、パターニング後に透明電極層22が存在する部分と、透明電極層22が存在しない部分との色差を小さくし、透明電極層22を従来よりも厚膜化した場合でも、透明電極層22に由来する黄色味を十分に抑制することができ、かつ、透明導電フィルム9a及び9bが紫色を帯びることも抑制できる。また、透明基材20と透明電極層22との間に、低屈折率層21(及び高屈折率ハードコート層23)を介在させることにより、透明基材20に対する透明電極層22の密着強度を高めることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明に係る透明導電フィルムを具体的に実施した実施例を説明する。
【0034】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
実施例1〜5及び比較例1〜4に係る透明導電フィルムとして、
図2に示した層構成のものを作製した。
【0035】
まず、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面に、表1に示す低屈折率層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量250mJ/cm
2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、低屈折率層を形成した。尚、低屈折率層形成用塗工液は、乾燥後の膜厚が表1に示す値になるように塗工した。
【0036】
次に、得られた積層フィルムの低屈折率層上に、スパッタリング法によりITOを表1に記載の膜厚で成膜し、成膜後に150℃でアニール処理を行って、透明電極層を形成し、透明導電フィルムを得た。
【0037】
(実施例6〜14、比較例5、6)
実施例6〜14、比較例5及び6に係る透明導電フィルムとして、
図3に示した層構成のものを作製した。
【0038】
まず、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面に、表1に示す高屈折率ハードコート層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量200mJ/cm
2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、高屈折率ハードコート層を形成した。尚、高屈折率ハードコート層形成用塗工液は、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように塗工した。
【0039】
次に、得られた積層フィルムの高屈折率ハードコート層上に、表1に示す低屈折率層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量250mJ/cm
2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、低屈折率層を形成した。尚、低屈折率層形成用塗工液は、乾燥後の膜厚が表1に示す値になるように塗工した。
【0040】
次に、得られた積層フィルムの低屈折率層上に、スパッタリング法によりITOを表1に記載の膜厚で成膜し、成膜後に150℃でアニール処理を行って、透明電極層を形成し、透明導電フィルムを得た。
【0041】
得られた透明導電フィルムの透過光のa
*及びb
*、虹ムラの有無、400〜800nmの波長範囲における反射率スペクトルの極大値を以下のようにして評価した。
【0042】
[透過光のa
*及びb
*の値]
分光光度計(UV−4100、株式会社日立製作所)を用いて、透明導電層側から入射角5°で光を照射し、透過光のa
*及びb
*を測定した。
【0043】
[虹ムラの有無]
得られた透明導電フィルムの裏面(透明電極層が積層されていない側の透明基材の面)に黒色の粘着層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、透明電極層側に虹色の干渉縞(虹ムラ)が生じたか否かを目視で確認した。
【0044】
[400〜800nmの波長範囲の反射率]
分光光度計(UV−4100、株式会社日立製作所)を用いて、400〜800nmの波長範囲で1nmずつ波長を変化させながら、透明導電層側から光を照射し、透明導電フィルムの光反射率を測定した。測定した光反射率のスペクトルから、500〜620nmの範囲内で極大値を取る波長を特定した。
【0045】
表1に、実施例1〜14及び比較例1〜6に係る透明導電フィルムの作製に用いた塗工液、各層の膜厚、低屈折率層及び高屈折率ハードコート層の屈折率、a
*及びb
*の値、虹ムラの有無(○:虹ムラなし、×:虹ムラあり)、反射スペクトルが500〜620nmの範囲内で極大値となる波長を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
また、
図5に、実施例3、比較例2及び比較例3に係る透明導電フィルムの反射スペクトルを示す。
【0048】
表1に示すように、実施例1〜14に係る透明導電フィルムのいずれについても、a
*の値が−0.75〜+0.75の範囲内であり、b
*の値が−0.1〜+0.6の範囲内であり、反射率スペクトルが500〜620nmの範囲内で極大値を取っており、透明導電層を20nmを超える厚みで成膜した場合でも、透明導電層に由来する黄色化が抑制されることが確認された。また、実施例1〜14に係る透明導電フィルムのいずれについても、虹ムラは確認されなかった。
【0049】
比較例1に係る透明導電フィルムは、低屈折率層の屈折率が1.42より小さいことによって、a
*及びb
*の値が色味を抑えるために必要な範囲から外れ、透明導電フィルムが紫色を帯びた。
【0050】
比較例2及び3に係る透明導電フィルムは、低屈折率層の膜厚が150〜190nmの範囲から外れたことにより、反射スペクトルが500〜620nmの範囲内で極大値を取らず、かつ、b
*の値が大きくなり、透明導電フィルムが黄色を帯びた。
【0051】
比較例4に係る透明導電フィルムは、低屈折率層の屈折率が1.50より大きいため、b
*の値が大きくなり、透明導電フィルムが黄色を帯びた。
【0052】
比較例5及び6は、低屈折率層の屈折率及び膜厚は色味を抑えるために必要な範囲内であるが、高屈折率ハードコート層の屈折率が本発明の範囲から外れたものである。より詳細には、比較例5に係る透明導電フィルムは、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.63より小さいため、b
*の値が大きくなり、透明導電フィルムが黄色を帯びた。また、比較例6に係る透明導電フィルムは、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.67より大きいため、虹ムラ(虹色の干渉縞)が発生した。
【0053】
以上より、本発明によれば、透明導電フィルム及びこれを含むタッチパネルにおいて、黄色化を十分に抑制できることが確認された。