(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のスパーギアのうち1つの前記歯形方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さは、前記複数のスパーギアのうち前記1つの歯筋方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さよりも小さい
請求項1又は2に記載のギア装置。
前記第1インボリュート歯車と前記第2インボリュート歯車とを駆動する工程は、前記第1インボリュート歯車を前記第2インボリュート歯車に押しつける力を付与することを含む
請求項9に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インプットギアは、他の部位よりも高い速度で回転するので、インプットギアと複数のスパーギアとの噛合部分は、大きな騒音を生じやすい。高い精度で形成された歯面を有するスパーギアの使用は、上述の騒音を低減するために有用である。しかしながら、複数のスパーギアの間での歯面形状の完全な一致は、現実的でない。例えば、ギア装置を製造する製造者が、多数のスパーギアから最も高い精度を有する3つのスパーギアを選択しても、3つのスパーギアの間には、歯面形状の差異が存在する。加えて、インプットギアと噛み合うスパーギアの回転中心が、設計において定められた回転中心からずれることも、大きい騒音を引き起こし得る。この場合、スパーギアの交換は、騒音レベルの低減に貢献しない。したがって、従来の設計技術或いは製造技術は、インプットギアと複数のスパーギアとの噛合部分からの騒音を十分に低減することはできていない。
【0005】
本発明は、インプットギアと複数のスパーギアとの噛合部分から発生する騒音を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るギア装置は、インボリュート歯車として形成された複数のスパーギアと、前記複数のスパーギアに噛み合い、前記複数のスパーギアを同期回転させるインプットギアと、を備える。前記複数のスパーギアそれぞれは、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有する。
前記複数のスパーギアのうち1つの前記歯形方向における粗さ曲線の最大山高さは、前記複数のスパーギアのうち前記1つの歯筋方向における粗さ曲線の最大山高さよりも小さい。
【0007】
上記構成によれば、複数のスパーギアそれぞれは、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有するので、複数のスパーギアそれぞれの歯面とインプットギアの歯面との間の摺動の方向は、研磨目に沿う。したがって、複数のスパーギアの歯面形状が完全に一致していなくても、或いは、複数のスパーギアの回転中心が、設計上の回転中心からずれていても、大きな騒音は、インプットギアと複数のスパーギアとの間の噛合部分から生じにくくなる。
また上記構成によれば、複数のスパーギアのうち1つの歯形方向における粗さ曲線の最大山高さは、複数のスパーギアのうち1つの歯筋方向における粗さ曲線の最大山高さよりも小さいので、スパーギアの歯面がインプットギアの歯面上に擦れている間に生ずる騒音は、効果的に低減される。
【0008】
上記構成に関して、前記インプットギアは、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有してもよい。
【0009】
上記構成によれば、インプットギアは、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有するので、複数のスパーギアそれぞれの歯面とインプットギアの歯面との間の摺動の方向は、インプットギア及び複数のスパーギアに形成された研磨目に沿う。したがって、大きな騒音は、インプットギアと複数のスパーギアとの間の噛合部分から生じにくくなる。
【0012】
上記構成に関して、前記複数のスパーギアのうち1つの前記歯形方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さは、前記複数のスパーギアのうち前記1つの歯筋方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さよりも小さくてもよい。
【0013】
上記構成によれば、複数のスパーギアのうち1つの歯形方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さは、複数のスパーギアのうち1つの歯筋方向における粗さ曲線から得られた算術平均粗さよりも小さいので、スパーギアの歯面がインプットギアの歯面に擦れている間に生ずる騒音は、効果的に低減される。
【0014】
上記構成に関して、インプットギアおよびスパーギアの少なくとも一方、より好ましくは両方における、インプットギアとスパーギアとが接触しない歯元部分に、前記研磨目は形成されていなくてもよい。
【0015】
上記構成によれば、複数のスパーギアにおけるインプットギアと接触しない歯元部分および/またはインプットギアにおけるスパーギアと接触しない歯元部分には、相手の歯は当たらないので、この部分については研磨目が形成されていなくても、低い騒音レベルは達成される。
【0016】
上記構成に関して、ギア装置は、所定の回転軸を取り囲む複数の内歯が形成された内周面を有する外筒と、前記複数の内歯と噛み合う揺動歯車と、前記複数のスパーギアにそれぞれ連結され、且つ、前記インプットギアから入力された駆動力に応じて、前記揺動歯車の中心が前記回転軸周りを周回するように、前記揺動歯車に揺動回転を与える複数のクランク軸組立体と、前記複数のクランク軸組立体を支持し、且つ、前記外筒に対して、前記回転軸周りに相対的に回転するキャリアと、を備えてもよい。前記揺動歯車は、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有してもよい。
【0017】
上記構成によれば、揺動歯車は、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有するので、外筒に形成された複数の内歯それぞれの歯面と揺動歯車の歯面との間の摺動の方向は、揺動歯車に形成された研磨目に沿う。したがって、大きな騒音は、揺動歯車と複数の内歯との間の噛合部分から生じにくくなる。
【0018】
上記構成に関して、前記複数のスパーギアのうち1つの前記歯形方向における粗さ曲線の最大山高さは、前記揺動歯車の歯形方向における粗さ曲線の最大山高さよりも小さくてもよい。
【0019】
上記構成によれば、複数のスパーギアのうち1つの歯形方向における粗さ曲線の最大山高さは、揺動歯車の歯形方向における粗さ曲線の最大山高さよりも小さいので、大きな騒音は、インプットギアと複数のスパーギアとの間の噛合部分から生じにくくなる。
【0020】
本発明の他の局面に係るインボリュート歯車の製造方法は、第1インボリュート歯車と、前記第1インボリュート歯車に噛み合う第2インボリュート歯車と、を駆動する工程と、前記第1インボリュート歯車と前記第2インボリュート歯車との噛合部分に遊離砥粒を供給する工程と、を備える。
前記第2インボリュート歯車の歯数は、素数である。
【0021】
上記構成によれば、遊離砥粒は、第1インボリュート歯車と第2インボリュート歯車との噛合部分に供給されるので、歯形方向に延びる研磨目が、第1インボリュート歯車及び第2インボリュート歯車の歯面に形成される。第1インボリュート歯車又は第2インボリュート歯車の歯面と他の歯車の歯面との間の摺動の方向は、第1インボリュート歯車又は第2インボリュート歯車の歯面に形成された研磨目に沿うので、大きな騒音は、第1インボリュート歯車又は第2インボリュート歯車と他の歯車との噛合部分から生じにくくなる。
また上記構成によれば、第2インボリュート歯車の歯数は、素数であるので、第1インボリュート歯車の歯は、第2インボリュート歯車の相異なる歯と衝突しやすくなる。この結果、第1インボリュート歯車の複数の歯間において、形状は均一化される。
【0022】
上記構成に関して、前記第2インボリュート歯車は、前記第1インボリュート歯車よりも多い歯数を有してもよい。
【0023】
上記構成によれば、第2インボリュート歯車は、前記第1インボリュート歯車よりも多い歯数を有するので、第2インボリュート歯車は、第1インボリュート歯車よりも摩耗しにくい。したがって、第2インボリュート歯車は、第1インボリュート歯車の歯面を研磨するための研磨具として好適に利用可能である。
【0026】
上記構成に関して、前記第2インボリュート歯車は、前記第1インボリュート歯車よりも大きな歯丈を有してもよい。
【0027】
上記構成によれば、第2インボリュート歯車は、第1インボリュート歯車よりも大きな歯丈を有するので、第1インボリュート歯車の歯面には、歯形方向に十分に長い研磨目が形成される。
【0028】
上記構成に関して、前記第1インボリュート歯車と前記第2インボリュート歯車とを駆動する工程は、前記第1インボリュート歯車を前記第2インボリュート歯車に押しつける力を付与することを含んでもよい。
【0029】
上記構成によれば、第1インボリュート歯車と第2インボリュート歯車とを駆動する工程は、第1インボリュート歯車を第2インボリュート歯車に押しつける力を付与することを含むので、第1インボリュート歯車の歯面には、歯形方向に十分に長い研磨目が形成される。
【0030】
上記構成に関して、前記第1インボリュート歯車は、前記第2インボリュート歯車とモジュールにおいて等しくてもよい。
【0031】
上記構成によれば、第1インボリュート歯車は、第2インボリュート歯車とモジュールにおいて等しいので、第1インボリュート歯車は、第2インボリュート歯車と適切に噛み合うことができる。
【0032】
本発明の更に他の局面に係るギア装置の製造方法は、インボリュート歯車として形成され、且つ、ギア装置に組み込まれた複数のスパーギアに噛み合うインプットギアを駆動する工程と、前記インプットギアと前記複数のスパーギアとの噛合部分に遊離砥粒を供給する工程と、インプットギアとスパーギアとが噛合った状態で、両ギアを回転させることにより前記噛合部分を研磨する工程と、を備える。
【0033】
上記構成によれば、インボリュート歯車として形成され、且つ、ギア装置に組み込まれた複数のスパーギアに噛み合うインプットギアが駆動されるので、遊離砥粒は、インプットギア及び複数のスパーギアの噛合部分からの騒音が低減されるように、インプットギア及び複数のスパーギアの歯面を自動的に研磨することができる。
【発明の効果】
【0034】
上述の技術は、インプットギアと複数のスパーギアとの噛合部分から発生する騒音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
本発明者等は、低い騒音レベルを達成することができるギア装置を開発した。第1実施形態において、低い騒音レベルを達成することができる例示的なギア装置が説明される。
【0037】
図1は、第1実施形態のギア装置100の概略的な正面図である。
図1を参照して、ギア装置100が説明される。
【0038】
ギア装置100は、3つのスパーギア111,112,113と、インプットギア120と、を備える。スパーギア111,112,113それぞれは、インボリュート歯車として形成される。同様に、インプットギア120も、インボリュート歯車として形成される。
【0039】
図1は、回転軸RAXと、3つの伝達軸TX1,TX2,TX3と、を示す。伝達軸TX1,TX2,TX3は、回転軸RAXを中心とする仮想円上に略等間隔に配置される。インプットギア120は、回転軸RAX周りに回転する。スパーギア111は、伝達軸TX1周りに回転する。スパーギア112は、伝達軸TX2周りに回転する。スパーギア113は、伝達軸TX3周りに回転する。
【0040】
インプットギア120は、スパーギア111,112,113に噛み合う。インプットギア120が、回転軸RAX周りに回転すると、スパーギア111,112,113は、同期回転する。
【0041】
図2は、外歯130の概略的な斜視図である。
図1及び
図2を参照して、ギア装置100が更に説明される。外歯130に関する説明は、スパーギア111,112,113それぞれの歯に適用される。追加的に、外歯130に関する説明は、インプットギア120の歯に適用されてもよい。
【0042】
以下の説明において、「歯形方向」との用語は、歯元から歯先へ延びる方向又は歯先から歯元へ延びる方向を意味する。「歯筋方向」との用語は、歯形方向に直交する方向を意味する。
【0043】
外歯130の歯面には、歯形方向に延びる研磨目が形成される。研磨目は、スパーギア111,112,113とインプットギア120との噛み合い部分へ供給された遊離砥粒によって形成されてもよいし、他の研磨技術によって形成されてもよい。本実施形態の原理は、研磨目を形成するための特定の研磨技術に限定されない。
【0044】
図3は、外歯130の歯面から得られる例示的な粗さ曲線を表す。
図2及び
図3を参照して、外歯130の歯面の表面粗さが説明される。
【0045】
図3の左図は、外歯130の歯面を歯形方向へなぞる触針から得られたデータである。
図3の右図は、外歯130の歯面を歯筋方向へなぞる触針から得られたデータである。
図3は、左図のデータから得られる最大山高さを、記号「Rp1」で表し、右図のデータから得られる最大山高さを、記号「Rp2」で表す。
【0046】
左図に関して、歯形方向の研磨処理の結果、粗さ曲線のピークをなす部分は削られるので、最大山高さRp1は、左図の最大山高さRp2よりも非常に小さくなる。したがって、外歯130の歯面と他の歯車の歯面との摺擦によって生ずる騒音のレベルは、非常に小さくなる。
【0047】
図4は、外歯130の歯面の算術平均粗さを表す。
図2乃至
図4を参照して、外歯130の歯面の算術平均粗さが説明される。
【0048】
図4に示されるデータは、
図3に示されるデータと同一である。すなわち、
図4の左図は、外歯130の歯面を歯形方向へなぞる触針から得られたデータである。
図4の右図は、外歯130の歯面を歯筋方向へなぞる触針から得られたデータである。
図4に示される実線は、山側の粗さ曲線を表す。
図4に示される点線は、谷側の粗さ曲線を表す。
【0049】
図4は、左図のデータから得られる算術平均粗さを、記号「Ra1」で表し、右図のデータから得られる算術平均粗さを、記号「Ra2」で表す。左図に関して、歯形方向の研磨処理の結果、粗さ曲線のピークをなす部分は削られるので、算術平均粗さRa1は、左図の算術平均粗さRa2よりも小さくなる。したがって、外歯130の歯面と他の歯車の歯面との摺擦によって生ずる騒音のレベルは、非常に小さくなる。
【0050】
<第2実施形態>
ギア装置は、複数のスパーギアを同期回転させるための様々な内部構造を有することができる。第2実施形態において、ギア装置の例示的な構造が説明される。
【0051】
図5は、第2実施形態のギア装置100の概略的な断面図である。
図6は、
図5に示されるA−A線に沿う概略的な断面図である。
図1、
図5及び
図6を参照して、ギア装置100が説明される。
【0052】
第1実施形態に関連して説明された如く、ギア装置100は、インプットギア120を備える。ギア装置100は、外筒210と、キャリア220と、3つのクランク軸組立体300と、歯車部400と、2つの主軸受610,620と、を備える。第1実施形態に関連して説明された3つのスパーギア111,112,113は、3つのクランク軸組立体300にそれぞれ組み込まれる。
図5は、スパーギア111が組み込まれたクランク軸組立体300のみを示す。
【0053】
第1実施形態に関連して説明された如く、インプットギア120は、回転軸RAX周りに回転し、駆動力を3つのスパーギア111,112,113へ伝達する。この結果、スパーギア111,112,113がそれぞれ取り付けられた3つのクランク軸組立体300は、伝達軸TX1,TX2,TX3周りにそれぞれ回転する。3つのクランク軸組立体300の回転は、外筒210及びキャリア220によって囲まれた内部空間内に配置された歯車部400に伝達される。
【0054】
図5に示される如く、2つの主軸受610,620は、外筒210と、外筒210によって取り囲まれたキャリア220と、の間に形成された環状空間に嵌め込まれる。2つの主軸受610,620それぞれは、外筒210とキャリア220との間での相対的な回転運動を可能にする。2つの主軸受610,620の共通の中心軸は、インプットギア120の回転軸RAXに一致してもよい。外筒210及びキャリア220のうち一方は、歯車部400に伝達された駆動力によって、回転軸RAX周りに回転される。外筒210及びキャリア220のうち他方は、ギア装置100が取り付けられる相手部材(図示せず)に固定される。
【0055】
図5に示される如く、外筒210は、略円筒状のケース211と、複数の内歯ピン212と、を含む。ケース211は、キャリア220と協働して、クランク軸組立体300及び歯車部400が収容される円柱状の内部空間を形成する。複数の内歯ピン212は、ケース211の内周面に沿って環状に並べられ、内歯環を形成する。
【0056】
複数の内歯ピン212それぞれは、回転軸RAXの延出方向に延びる略円柱状の部材である。複数の内歯ピン212それぞれは、ケース211の内周面に形成された溝部に嵌入される。したがって、複数の内歯ピン212それぞれは、ケース211によって適切に保持される。
【0057】
図5に示される如く、複数の内歯ピン212は、回転軸RAX周りに環状に略一定間隔で配置される。複数の内歯ピン212それぞれの半周面は、ケース211の内周面から回転軸RAXに向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン212は、歯車部400と噛み合う複数の内歯として機能する。本実施形態において、内歯は、複数の内歯ピン212それぞれによって例示される。
【0058】
図5に示される如く、キャリア220は、基部230と、端板240と、を含む。キャリア220は、全体的に、円筒状である。端板240は、略円板形状である。端板240の周面は、外筒210によって部分的に取り囲まれる。主軸受620は、端板240の周面と外筒210との間に形成された環状の空隙に嵌め込まれる。
【0059】
基部230は、略円板状の基板部231(
図5を参照)と、3つのシャフト部232(
図6を参照)と、を含む。基板部231の周面は、外筒210によって部分的に取り囲まれる。主軸受610は、基板部231の周面と外筒210との間に形成された環状の空隙に嵌め込まれる。基板部231は、回転軸RAXの延設方向において、端板240から離間する。基板部231は、端板240と略同軸である。すなわち、回転軸RAXは、基板部231及び端板240の中心軸に相当する。
【0060】
基板部231は、内面233と、内面233とは反対側の外面234と、を含む。内面233は、歯車部400に対向する。内面233及び外面234は、回転軸RAXに直交する仮想平面(図示せず)に沿う。
【0061】
中央貫通孔235(
図5を参照)及び3つの保持貫通孔236(
図5は、3つの保持貫通孔236のうち1つを示す)は、基板部231に形成される。中央貫通孔235は、回転軸RAXに沿って、内面233と外面234との間で延びる。回転軸RAXは、中央貫通孔235の中心軸に相当する。3つの保持貫通孔236の中心軸は、回転軸RAXに略平行な3つの伝達軸TX1,TX2,TX3(
図5は、伝達軸TX1のみを示す)にそれぞれ一致する。3つの保持貫通孔236は、3つの伝達軸TX1,TX2,TX3に沿って内面233と外面234との間で延びる。クランク軸組立体300の一部は、保持貫通孔236内に配置される。
【0062】
端板240は、内面243と、内面243とは反対側の外面244と、を含む。内面243は、歯車部400に対向する。内面243及び外面244は、回転軸RAXに直交する仮想平面(図示せず)に沿う。
【0063】
中央貫通孔245(
図5を参照)及び3つの保持貫通孔246(
図5は、3つの保持貫通孔246のうち1つを示す)は、端板240に形成される。中央貫通孔245は、回転軸RAXに沿って、内面243と外面244との間で延びる。回転軸RAXは、中央貫通孔245の中心軸に相当する。3つの保持貫通孔246は、3つの伝達軸TX1,TX2,TX3に沿って内面243と外面244との間でそれぞれ延びる。3つの伝達軸TX1,TX2,TX3は、3つの保持貫通孔246の中心軸にそれぞれ相当する。クランク軸組立体300の一部は、保持貫通孔246内に配置される。端板240に形成された3つの保持貫通孔246は、基板部231に形成された3つの保持貫通孔236とそれぞれ略同軸である。
【0064】
3つのシャフト部232それぞれは、基板部231の内面233から端板240の内面243に向けて延びる。端板240は、3つのシャフト部232それぞれの先端面に接続される。端板240は、リーマボルト、位置決めピンや他の適切な固定技術によって、3つのシャフト部232それぞれの先端面に接続されてもよい。本実施形態の原理は、端板240と3つのシャフト部232それぞれとの間の特定の接続技術に限定されない。
【0065】
図5に示される如く、歯車部400は、基板部231の内面233と端板240の内面243との間に配置される。3つのシャフト部232は、歯車部400を貫通し、端板240に接続される。
【0066】
図5に示される如く、歯車部400は、2つの揺動歯車410,420を含む。揺動歯車410は、端板240と揺動歯車420との間に配置される。揺動歯車420は、基板部231と揺動歯車410との間に配置される。揺動歯車410,420は、共通の設計図面に基づいて形成されたトロコイド歯車やサイクロイド歯車であってもよい。
【0067】
揺動歯車410,420それぞれは、ケース211の内壁に向けて突出する複数の外歯430(
図6を参照)を含む。クランク軸組立体300が、伝達軸TX1,TX2,TX3周りに回転すると、揺動歯車410,420は、複数の外歯430を複数の内歯ピン212に噛み合わせながら、ケース211内を周回移動(すなわち、揺動回転)する。この間、揺動歯車410,420の中心は、回転軸RAX周りを周回することとなる。外筒210又はキャリア220の回転は、揺動歯車410,420の揺動回転によって引き起こされる。
【0068】
スパーギア111,112,113は、インボリュート歯車のため、スパーギア111,112,113とインプットギア120との噛合部分から生ずる騒音は、トロコイド歯車の揺動歯車410,420と外筒210との噛合部分から生ずる騒音よりも大きくなりやすい。したがって、スパーギア111,112,113の歯面の歯形方向に延びる粗さ曲線の最大山高さは、揺動歯車410,420の歯面の歯形方向に延びる粗さ曲線の最大山高さよりも小さい値に設定される。
【0069】
必要に応じて、スパーギア111,112,113と同様に、揺動歯車410,420は、歯形方向に延びる研磨目が形成された歯面を有してもよい。この場合、揺動歯車410,420と外筒210との噛合部分から生ずる騒音は、非常に低いレベルに抑えられる。揺動歯車410,420の研磨目は、遊離砥粒や研磨フィルムによって形成されてもよい。本実施形態の原理は、揺動歯車410,420に研磨目を形成するための特定の研磨技術に限定されない。
【0070】
中央貫通孔411は、揺動歯車410の中心に形成される。中央貫通孔421は、揺動歯車420の中心に形成される。中央貫通孔411は、端板240の中央貫通孔245と揺動歯車420の中央貫通孔421とに連通する。中央貫通孔421は、基板部231の中央貫通孔235と揺動歯車410の中央貫通孔411とに連通する。
【0071】
図6に示される如く、3つの円形貫通孔422が、揺動歯車420に形成される。同様に、3つの円形貫通孔が、揺動歯車410に形成される。揺動歯車420の円形貫通孔422及び揺動歯車410の円形貫通孔は、基板部231及び端板240の保持貫通孔236,246と協働して、クランク軸組立体300が収容される収容空間を形成する。
【0072】
3つの台形貫通孔413(
図5は、3つの台形貫通孔413のうち1つを示す)は、揺動歯車410に形成される。3つの台形貫通孔423(
図6を参照)は、揺動歯車420に形成される。キャリア220のシャフト部232は、台形貫通孔413,423を貫通する。台形貫通孔413,423の大きさは、シャフト部232と干渉しないように定められる。
【0073】
3つのクランク軸組立体300それぞれは、クランク軸320と、2つのジャーナル軸受331,332と、2つのクランク軸受341,342と、を含む。クランク軸320は、第1ジャーナル321と、第2ジャーナル322と、第1偏心部323と、第2偏心部324と、を含む。第1ジャーナル321は、端板240の保持貫通孔246に挿入される。第2ジャーナル322は、基板部231の保持貫通孔236に挿入される。ジャーナル軸受331は、第1ジャーナル321と保持貫通孔246を形成する端板240の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、第1ジャーナル321は、端板240に連結される。ジャーナル軸受332は、第2ジャーナル322と保持貫通孔236を形成する基板部231の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、第2ジャーナル322は、基板部231に連結される。したがって、キャリア220は、3つのクランク軸組立体300を適切に支持することができる。
図1に示される如く、スパーギア111,112,113それぞれは、対応する第1ジャーナル321にスプライン結合される。
【0074】
第1偏心部323は、第1ジャーナル321と第2偏心部324との間に位置する。第2偏心部324は、第2ジャーナル322と第1偏心部323との間に位置する。クランク軸受341は、第1偏心部323と円形貫通孔を形成する揺動歯車410の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、揺動歯車410は、第1偏心部323に取り付けられる。クランク軸受342は、第2偏心部324と円形貫通孔422を形成する揺動歯車420の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、揺動歯車420は、第2偏心部324に取り付けられる。
【0075】
第1ジャーナル321は、第2ジャーナル322と略同軸であり、対応する伝達軸(すなわち、伝達軸TX1,TX2,TX3のうち1つ)周りで回転する。第1偏心部323及び第2偏心部324それぞれは、円柱状に形成され、対応する伝達軸から偏心している。第1偏心部323及び第2偏心部324それぞれは、対応する伝達軸に対して偏心回転し、揺動歯車410,420に揺動回転を与える。外筒210が固定されているならば、揺動歯車410,420の揺動回転は、回転軸RAX周りのクランク軸320の周回運動に変換される。端板240及び基板部231は、第1ジャーナル321及び第2ジャーナル322にそれぞれ連結されているので、クランク軸320の周回運動は、回転軸RAX周りの端板240及び基板部231の回転運動に変換される。揺動歯車410,420間の周回位相差は、第1偏心部323と第2偏心部324との間の偏心方向の差異によって決定される。キャリア220が固定されているならば、揺動歯車410,420の揺動回転は、回転軸RAX周りの外筒210の回転運動に変換される。
【0076】
<第3実施形態>
歯形方向に延びる研磨目は、様々な方法によって形成されてもよい。遊離砥粒が、研磨目の形成に利用されるならば、研磨目は、容易に形成される。第3実施形態において、歯形方向に延びる研磨目を形成するための例示的な研磨技術が説明される。
【0077】
図7は、第3実施形態の研磨装置140の概念図である。
図1及び
図7を参照して、研磨装置140が説明される。
【0078】
図7は、研磨装置140に加えて、第1インボリュート歯車150を示す。第1インボリュート歯車150は、研磨装置140に取り付けられる。研磨装置140は、第1インボリュート歯車150を回転可能に保持するシャフト部材(図示せず)を備えてもよい。第1インボリュート歯車150は、インプットギア120として用いられてもよい。代替的に、第1インボリュート歯車150は、スパーギア111,112,113のうち1つとして用いられてもよい。
【0079】
研磨装置140は、第2インボリュート歯車160を含む。第2インボリュート歯車160は、第1インボリュート歯車150の歯面を研磨する専用の工具として利用されてもよい。代替的に、第2インボリュート歯車160は、研磨装置140から取り外され、スパーギア111,112,113のうち1つとして用いられてもよい。
【0080】
研磨装置140は、ノズル141を更に含む。遊離砥粒は、ノズル141から吹き出され、第1インボリュート歯車150と第2インボリュート歯車160との噛合部分に供給される。
【0081】
研磨作業を行う作業者は、第1インボリュート歯車150を研磨装置140に取り付け、第2インボリュート歯車160に噛み合わせる。第1インボリュート歯車150と第2インボリュート歯車160との適切な噛み合いのために、第1インボリュート歯車150のモジュールは、第2インボリュート歯車160のモジュールに一致される。
【0082】
作業者は、その後、第2インボリュート歯車160を駆動し、第1インボリュート歯車150と第2インボリュート歯車160とを回転させる。作業者は、遊離砥粒を、ノズル141から噴射させる。この結果、遊離砥粒は、第1インボリュート歯車150と第2インボリュート歯車160との噛合部分に供給される。
【0083】
第1インボリュート歯車150と第2インボリュート歯車160との噛合部分において、第1インボリュート歯車150の歯面は、第2インボリュート歯車160の歯面に対して、歯形方向に相対的に移動する。遊離砥粒は、第1インボリュート歯車150の歯面と第2インボリュート歯車160の歯面との間に介在するので、第1インボリュート歯車150及び第2インボリュート歯車160の歯面には、歯形方向に延びる研磨目が効率的に形成される。
【0084】
遊離砥粒は、第1インボリュート歯車150の歯面と第2インボリュート歯車160の歯面との間の接触圧力が高い部分(すなわち、第1インボリュート歯車150及び第2インボリュート歯車160のピッチ円直径に対応する歯面領域)において、第1インボリュート歯車150及び第2インボリュート歯車160の歯面を効率的に研磨することができる。
【0085】
図7に示されるように、第2インボリュート歯車160は、第1インボリュート歯車150よりも多くの歯を有する。したがって、第2インボリュート歯車160は、第1インボリュート歯車150よりも摩耗しにくい。作業者は、第2インボリュート歯車160を他の歯車の研磨に引き続き利用することができる。
【0086】
第2インボリュート歯車160の歯数は、素数であってもよい。この場合、第1インボリュート歯車150の特定の歯面が、第2インボリュート歯車160の特定の歯面に接触する頻度は非常に小さくなる。このことは、第1インボリュート歯車150の1つの歯面が、第2インボリュート歯車160の様々な歯面に対して摺擦されることを意味する。したがって、第1インボリュート歯車150の歯面形状は、第1インボリュート歯車150の全歯に亘って、均一化される。
【0087】
研磨装置140は、第1インボリュート歯車150を第2インボリュート歯車160に押しつけるための機構(たとえば、バネ機構やシリンダ機構:図示せず)を有してもよい。この場合、作業者は、第1インボリュート歯車150を第2インボリュート歯車160に押しつけ、第2インボリュート歯車160を駆動してもよい。この結果、第1インボリュート歯車150に形成される研磨目は歯形方向に長くなる。
【0088】
第2インボリュート歯車160は、第1インボリュート歯車150よりも歯丈において大きくてもよい。この場合も、第1インボリュート歯車150に形成される研磨目は歯形方向に長くなる。
【0089】
<第4実施形態>
第3実施形態に関連して説明された研磨技術は、ギア装置に直接的に適用されてもよい。第4実施形態において、ギア装置に組み込まれたスパーギア及びインプットギアの歯面を同時に研磨するための例示的な研磨技術が説明される。
【0090】
図8は、研磨処理を受けるギア装置100の概略的な正面図である。
図8を参照して、ギア装置100に対する研磨処理が説明される。
【0091】
図8は、箱体142を示す。研磨作業を行う作業者は、箱体142を外筒210に被せ、外筒210及びキャリア220を、スパーギア111,112,113とインプットギア120との噛合部分から隔離する。外筒210及びキャリア220のうち一方は、箱体142内で固定されてもよい。
【0092】
作業者は、その後、インプットギア120を駆動する。この結果、スパーギア111,112,113は、インプットギア120とともに回転する。第3実施形態と同様に、作業者は、スパーギア111,112,113とインプットギア120との噛合部分に遊離砥粒を供給する。この結果、スパーギア111,112,113及びインプットギア120それぞれの歯面には、歯形方向に延びる研磨目が形成される。
【0093】
インプットギア120及びスパーギア111,112,113の取付誤差や他の製造誤差は、スパーギア111,112,113及びインプットギア120の歯面の研磨に反映される。したがって、スパーギア111,112,113及びインプットギア120の歯面は、ギア装置100の固有の特性に自動的に適合されることになる。たとえば、歯面間の接触圧が高い部位は、遊離砥粒によって多く研磨される。一方、接触圧が低い部位は、遊離砥粒によってあまり研磨されない。この結果、設計値に近い接触圧が得られることとなる。
【0094】
遊離砥粒の供給の間、空気といった気体が、箱体142内に供給されてもよい。箱体142内の環境は、供給された気体によって高圧に保たれる。この結果、外筒210、キャリア220及び内部のギア機構(図示せず)は、遊離砥粒から保護される。
【0095】
上述の様々な実施形態に関連して説明された設計原理は、様々なギア装置に適用可能である。上述の様々な実施形態のうち1つに関連して説明された様々な特徴のうち一部が、他のもう1つの実施形態に関連して説明されたギア装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
100・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギア装置
111,112,113・・・・・・・・・・・・・・・・・スパーギア
120・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・インプットギア
150・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1インボリュート歯車
160・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2インボリュート歯車
210・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外筒
212・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内歯ピン
220・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キャリア
300・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クランク軸組立体
410,420・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・揺動歯車
RAX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・回転軸