特許第6704310号(P6704310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704310リチウム塩混合物のLi−イオン電池電解質としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704310
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】リチウム塩混合物のLi−イオン電池電解質としての使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20200525BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01M10/0568
   H01M10/0569
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-149348(P2016-149348)
(22)【出願日】2016年7月29日
(62)【分割の表示】特願2014-545324(P2014-545324)の分割
【原出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2017-22116(P2017-22116A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年8月9日
【審判番号】不服2019-157(P2019-157/J1)
【審判請求日】2019年1月8日
(31)【優先権主張番号】1161204
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1255046
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 土屋 知久
【審判官】 大熊 幸治
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6192234(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/0566-10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(該式中、Rfは、CHF、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)の少なくとも1つのリチウム塩と、
−SO−NLi−SO−R群(該式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)から選択される少なくとも1つのリチウム塩と
を含む混合物。
【請求項2】
式(I)
(該式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)の少なくとも1つのリチウム塩と、R−SO−NLi−SO−R群(該式中、RおよびRは独立して、F、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)から選択される少なくとも1つのリチウム塩とを含む混合物。
【請求項3】
式(I)
(該式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)のリチウム塩と、R−SO−NLi−SO−R群(該式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFもしくはCFOCFを表す)から選択される少なくとも1つのリチウム塩からなる混合物。
【請求項4】
Rfが、COCF、COCFまたはCFOCFを表すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
およびRが独立して、F、COCF、COCFまたはCFOCFを表すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
混合物中に存在する各リチウム塩の量が、存在するリチウム塩の総重量に関して、1重量%から99重量%を表すことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
混合物中に存在する各リチウム塩の量が、存在するリチウム塩の総重量に関して、5重量%から95重量%を表すことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
対応するリチウム塩から調製されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
溶媒または複数の溶媒に溶解されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
溶媒が、カーボネートおよびグリムから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の混合物の、電解質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム塩の混合物と、Li−イオンタイプの電池用の電解質としてのその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、少なくとも負極(アノード)、正極(カソード)、セパレータ、および電解質を含む。電解質は通常、溶媒中に溶解するリチウム塩で構成され、当該溶媒は通常、有機カーボネートの混合物であり、粘度と誘電定数の妥協が良好にされている。電解質塩の安定性を向上させるために、添加剤が続いて加えられてよい。
【0003】
最も広く使われている塩として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が挙げられ、これは、必要とされる数多くの性質を多く備えているが、水との反応によってフッ化水素酸ガスの形で分解するという不利点を示す。このことは、特に自家用車のリチウムイオン電池の使用が切迫している状況では、安全性の問題を提示する。
【0004】
従って、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)およびLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)等の他の塩が開発された。これらの塩はほとんど、または全く自然分解を示さず、加水分解に関して、LiPFよりも安定している。それでもなお、LiTFSIはアルミニウムカレントコレクタに関して腐食性であるという不利点を示すが、これはLiFSIには当てはまらない。従って、LiFSIはLiPFの有望な代替物であるように思われるが、そのコストにより現在その使用は制限されている。
【0005】
最近になって、LiTDI(リチウム4,5−ジシアノ−2−(トリフルオロメチル)イミダゾレート)およびLiPDI(リチウム4,5−ジシアノ−2−(ペンタフルオロエチル)イミダゾレート)等の他の塩が開発された。これらの塩は、フッ素原子がより少なく、そして、LiPFのより弱いリン−フッ素結合の代わりに、強い炭素−フッ素結合を有するという利点を示す。さらに、国際公開第2010/023413号パンフレットは、これらの塩が約6mS/cmの導電率を示すこと、イミダゾレート陰イオンとリチウム陽イオンの解離が非常に良好であること、そしてLi−イオン電池用の電解質塩として使用されることを示している。
【0006】
塩の調製が、国際公開第2010/023143号パンフレット、国際公開第2010/113483号パンフレット、国際公開第2010/113835号パンフレットおよび、国際公開第2009/123328号パンフレットにおいて記載されている。
【0007】
本出願人の会社は、上記される塩の混合物の使用により、塩が単独で使用される場合に見られる不利点を部分的に、または完全に克服することができることを発見した。
【0008】
混合物は、少なくとも2つの異なる塩を含んでよい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、第一に、リチウム塩の混合物に関するものである。
【0010】
本発明の別の主題は、溶媒中に溶解した塩の混合物である。
【0011】
本発明のさらなる主題は、前記混合物の、アノード、カソード、およびセパレータから構成されるLi−イオン蓄電池用の電解質としての使用である。アノードは、リチウム金属、グラファイト、カーボン、カーボン繊維、合金、LiTi12または上記したものの少なくとも2つの混合物であってよい。カソードは、リチウム系オキシド、リチウム系ホスフェート、リチウム系フルオロホスフェート、リチウム系サルフェートまたはリチウムフルオロサルフェートであってよい。リチウムに加えて、1つまたは複数の遷移金属が存在してよく、例えば、LiCoO、LiFePO、LiMn1/3Co1/3Ni1/3、LiFePOFおよびLiFeSOFが挙げられる。カソードは、上記した化合物の少なくとも2つの混合物でもあってもよい。
【0012】
本発明によれば、上記される塩の不利点を克服することができる。特に、リチウム塩の混合物が提供され、これをLi−イオン電池用の電解質として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に従う混合物は、以下の3種の塩の群の2つから選択される少なくとも2つのリチウム塩を含む:
・ X: LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC
・ R−SO−NLi−SO−R(該式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)
・ 式(I)(該式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す)。
【0014】
本発明に従う混合物は好ましくは、式(I)の少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩と、X群またはR−SO−NLi−SO−R群であって、式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFもしくはCFOCFを表す、X群またはR−SO−NLi−SO−R群から選択される少なくとも1つのリチウム塩とを含む。
【0015】
本発明の好ましい実施形態に従えば、混合物は、式(I)の少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩と、X群から選択される少なくとも1つのリチウム塩とを含む。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態に従えば、混合物は、式(I)の少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩と、R−SO−NLi−SO−R群から選択される少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩とを含む。
【0017】
本発明の好ましい代替型に従えば、混合物は、X群から選択される少なくとも1つのリチウム塩と、R−SO−NLi−SO−R群から選択される少なくとも1つのリチウム塩であって、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩とを含む。
【0018】
有利には、本発明に従う混合物は、式(I)の少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、Rfは、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩と、X群から選択される少なくとも1つのリチウム塩と、R−SO−NLi−SO2−群から選択される少なくとも1つのリチウム塩であって、式中、RおよびRは独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、リチウム塩とを含む。
【0019】
如何なる実施形態も代替型も、X群の特に好ましい化合物はLiPFである。
【0020】
如何なる実施形態も代替型も、式(I)の特に好ましいRfは、F、CF、CHF、C、COCF、COCFまたはCFOCFである。
【0021】
如何なる実施形態も代替型も、R−SO−NLi−SO−R群のリチウム塩であって、RおよびRは独立して、F、CF、C、COCF、COCFまたはCFOCFを表すリチウム塩が、特に好ましい。
【0022】
混合物中に存在する各リチウム塩の量は、広範な限界内で変化し得、通常、混合物中に存在する塩の総重量に関して、1重量%から99重量%、好ましくは5重量%から95重量%を表す。
【0023】
本発明の別の主題は、溶媒または複数の溶媒、好ましくはカーボネート、グリム、ニトリルおよびジニトリルまたはフッ素系溶媒中に溶解した塩の混合物である。
【0024】
特に、カーボネートとして、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはプロピレンカーボネートを記載することができる。
【0025】
特に、グリムとして、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールt−ブチルジメチルエーテルを記載することができる。
【0026】
特に、ニトリルおよびジニトリルとして、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリルまたはグルタロニトリルを記載することができる。
【0027】
特に、フッ素系溶媒として、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子によって置き換えられた上記の溶媒:カーボネート、グリム、ニトリルおよびジニトリルを記載することができる。
【0028】
各構成要素の重量割合は、構成要素の重量の、溶媒の全構成要素の総重量に対する比として規定されるものであり、最小量の構成要素に関して、好ましくは1から10、より好ましくは1から8である。
【0029】
本発明に従う混合物は、最大のイオン導電率、電気化学的安定性および容量保持を、そして最小の不可逆容量をもたらす。混合物は、対応するリチウム塩から調製される。溶媒が存在する場合、調製は、好ましくは撹拌により、混合物を構成するリチウム塩を適切な割合の溶媒中に溶解することによって、実行される。
【0030】
出願人の企業は、驚くべきことに、溶媒中に適切な割合で溶解した、上記される塩の混合物を、リチウムイオン蓄電池用の電解質として使用すると、塩が溶媒中に個々に溶解する場合に観察される不利点が示されないことに気付いた。
【0031】
例えば、LiPFは水と激しく反応してHFを形成し、カソード材料の溶解をもたらす。LiPFはまた、分解してPFのルイス酸を与えることもでき、これが、溶媒として用いられるカーボネートを分解し得るので、電池容量の損失をもたらす。
【0032】
−SO−NLi−SO−Rタイプの塩は、Li−イオン電池が用いられる電位範囲内にて、アルミニウムカレントコレクタに関して腐食性であるという不利点を示す。さらに、これらの塩は、一部のR基に関して優れたイオン導電率を示す。
【0033】
式(I)の塩は、アルミニウムカレントコレクタに対して腐食性でなく、そしてカレントコレクティブ上に安定したパッシベーション層を形成するという利点を示すが、イオン導電率が、LiPFの約半分と低い。さらに、これらの塩はまた、水分子を容易に捕獲することができるようである。
【実施例】
【0034】
種々のタイプのリチウム塩の不利点および利点に照らして、本発明の相乗効果が、以下の非限定的な実施例によって明確に見えてくる。
【0035】
[実施例1]
生産した第一混合物は、80重量%のF−SO−NLi−SO−F(LiFSI)と、20重量%の式(I)の塩であって、式中、Rf=CF(LiTDI)である塩とを含む塩混合物を、3つのカーボネート:エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびプロピレンカーボネート(それぞれ1/3、1/3および1/3の重量割合)の混合物中に、周囲温度にて溶解して存在する。この混合物は、高いイオン導電率を与え、アルミニウムカレントコレクタ上にパッシベーション層をもたらす。
【0036】
[実施例2]
生産した第2混合物は、50重量%のLiTDI塩と、50重量%のLiPFとから構成される。これら2つの塩は、2つのカーボネート:エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート(それぞれ1/3および2/3の重量割合)の混合物中に溶解している。この混合物は、高いイオン導電率を与え、LiPFを分解することはない。
【0037】
[実施例3]
生産した第3混合物は、60重量%のCF−SO−NLi−SO−CF(LiTFSI)と、40重量%のLiTDIとを含有する塩の混合物を、3つのカーボネート:エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびプロピレンカーボネート(それぞれ1/3、1/3および1/3の重量割合)の混合物中に溶解して存在する。この混合物は、高いイオン導電率を与え、アルミニウムカレントコレクタ上にパッシベーション層を形成する。