(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704313
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】トリミング装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/06 20060101AFI20200525BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20200525BHJP
B26F 1/44 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
B26D7/06 Z
B26D7/02 D
B26F1/44 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-157571(P2016-157571)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-24059(P2018-24059A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156123
【氏名又は名称】株式会社脇坂エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 正治
【審査官】
藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−098340(JP,A)
【文献】
特開2015−030167(JP,A)
【文献】
米国特許第04737331(US,A)
【文献】
特開2003−175494(JP,A)
【文献】
米国特許第03759122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/06
B26D 7/02
B26F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成形品が形成される樹脂シートから前記成形品を打ち抜く切断装置と、前記切断装置に対する前記樹脂シートの搬入及び前記切断装置からの前記樹脂シートの搬出を行う搬送装置と、を備えるトリミング装置において、
前記搬送装置は、前記樹脂シートの幅方向一端部を挟持する第一のローラ対と、前記樹脂シートの幅方向他端部を挟持する第二のローラ対と、前記第一のローラ対を回転駆動する第一駆動装置と、前記第二のローラ対を回転駆動する第二駆動装置と、前記第一のローラ対と前記第二のローラ対との間で、前記樹脂シートを支持する上下位置変更可能な支持プレートとを備え、
前記支持プレートは、下方凸形状の前記成形品が成形された前記樹脂シートからの前記成形品の打ち抜き時に前記成形品を下から支持し、
前記支持プレートは、前記第一のローラ対と前記第二のローラ対に対して昇降可能であることを特徴とするトリミング装置。
【請求項2】
前記第一駆動装置及び前記第二駆動装置は、サーボモータを備える請求項1に記載のト
リミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートから成形品を切断するトリミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、電気部品、日用品、医薬品等を収容する容器や当該容器の蓋材等の製品を樹脂シートから製造するラインとしては、所定の方向に搬送される樹脂シートに、成形装置によって成形品を熱成形した後、トリミング装置により成形品を樹脂シートから分離させる構成が一般的である。
【0003】
例えば特許文献1には、トリミング装置として、間欠的に搬送される樹脂シートに成形される複数の成形品を切断型(ダイス及びポンチ)によって切り抜く切断装置(トリミング機構)と、この切断装置の一側に配置されて樹脂シートを切断装置に案内するガイド装置(シートガイド機構)と、切断装置の他側に配置されて切断処理後の樹脂シートを間欠的に搬出する搬送装置(送り機構)と、これら各装置の上方に配置されるキャメルバックとを備えたものが開示されている。
【0004】
このトリミング装置では、切断装置、ガイド装置および搬送装置をそれぞれ独立的に構成し、切断装置を固定的に配置するとともに、ガイド装置及び搬送装置をキャスタにより移動可能に構成している。トリミング装置は、ガイド装置及び搬送装置の配置場所を変換可能とすることで、装置全体を180度回転させることなく、樹脂シートをキャメルバック上に沿って反転した場合であっても、切断装置に対する樹脂シートの搬入・搬出を実行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2747466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5及び6は、搬送装置の一般的な構成を示す。
図5に示すように、搬送装置100は、樹脂シートSの幅方向一端部を挟持する第一のローラ対101と、樹脂シートSの幅方向他端部を挟持する第二のローラ対102と、これらのローラ対101,102を回転駆動する駆動装置(モータ)103を有する。各ローラ対101,102は、駆動装置103に連結される駆動ローラ101a,102aと、この駆動ローラ101a,102aの上方に配置されるチャックローラ101b,102bと、樹脂シートSを支持する支持プレート104と、を備える。
【0007】
第一のローラ対101の駆動ローラ101aと、第二のローラ対102の駆動ローラ102aとは、駆動軸105を介して連結されている。駆動装置103は、減速機106を介して駆動軸105に連結されており、駆動軸105を介して第一のローラ対101と第二のローラ対102とを同時に駆動する。
【0008】
支持プレート104は、上方凸形状の成形品Mを切断する場合(
図5)と、下方凸形状の成形品Mを切断する場合(
図6)とにおいて、その上下方向位置を変更するように構成される。すなわち、例えば上方凸形状の成形品Mを切断した後に下方凸形状の成形品Mを切断する場合に、支持プレート104は、下方凸状の成形品M又は樹脂シートSを支持するように、その位置を下方へと変更する必要がある。
【0009】
しかしながら、駆動軸105があることから、支持プレート104は、下方への位置変更のための移動距離が制限されてしまう。このため、従来のトリミング装置では、
図6に示すように、比較的小さな高さ寸法を有する下方凸形状の成形品Mを切断することは可能であるが、上方凸形状と同等以上の高さ寸法を有するものを切断することができなかった。
【0010】
そこで本発明は、上方凸形状の成形品と同等以上の高さ寸法を有する下方凸形状の成形品を樹脂シートから切断できるトリミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、複数の成形品が形成される樹脂シートから前記成形品を打ち抜く切断装置と、前記樹脂シートを所定の方向に搬送する搬送装置と、を備えるトリミング装置において、前記搬送装置は、前記樹脂シートの幅方向一端部を挟持する第一のローラ対と、前記樹脂シートの幅方向他端部を挟持する第二のローラ対と、前記第一のローラ対を回転駆動する第一駆動装置と、前記第二のローラ対を回転駆動する第二駆動装置と、前記樹脂シートを支持する上下位置変更可能な支持プレートとを備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、第一のローラ対と第二のローラ対とを第一駆動装置と第二駆動装置によって個別に駆動することにより、第一のローラ対と第二のローラ対とを軸部材によって連結する必要がなくなる。これにより、支持プレートの移動距離が軸部材によって制限されることはなく、上方凸形状の成形品と同等以上の高さ寸法を有する下方凸形状の成形品を樹脂シートから切断することが可能になる。
【0013】
上記構成のトリミング装置において、前記第一駆動装置及び前記第二駆動装置は、サーボモータを備えることが望ましい。各駆動装置のサーボモータを同期させることにより、皺等が発生することなく樹脂シートを精度良く搬送することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上方凸形状の成形品と同等以上の高さ寸法を有する下方凸形状の成形品を樹脂シートから切断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】トリミング装置の切断装置及び搬送装置を示す側面図である。
【
図3】トリミング装置の切断装置及び搬送装置を示す側面図である。
【
図5】従来のトリミング装置における搬送装置を示す背面図である。
【
図6】従来のトリミング装置における搬送装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図4は本発明に係るトリミング装置の一実施形態を示す。
図1に示すように、トリミング装置1は、樹脂シートSから成形品Mを打ち抜く切断装置2と、切断装置2に対する樹脂シートSの搬入・搬出を行う搬送装置3a,3bとを主に備える。
【0017】
切断装置2は、
図1に示すように、雄型としての上切断型4aと、雌型としての下切断型4bとを有する。各切断型4a,4bは、開口部を有しており、樹脂シートSの成形品Mをこの開口部に挿入することができる。各切断型4a,4bは、樹脂シートSに成形される複数(複行複列)の成形品Mのうち、一列の成形品Mを個別に一度で打ち抜くことができるが、例えば二列の成形品Mを個別に一度で切断することができるように構成されてもよい。切断型4a,4bによって打ち抜かれた成形品Mは、集積装置(図示せず)により上下に集積された後、切断装置2から搬出される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、搬送装置3a,3bは、切断装置2の上流側に設けられる第一搬送装置3aと、切断装置2の下流側に設けられる第二搬送装置3bとを含む。各搬送装置3a,3bは、樹脂シートSの幅方向一端部を挟持する第一のローラ対5と、樹脂シートSの幅方向他端部を挟持する第二のローラ対6と、第一のローラ対5を駆動する第一駆動装置7と、第二のローラ対6を駆動する第二駆動装置8とを備える(
図2参照)。その他、各搬送装置3a,3bは、各ローラ対5,6及び各駆動装置7,8を支持する支持部材9a,9bと、支持部材9a,9bを移動させる移動機構10と、支持部材9a,9b及び移動機構10を支持するベース部材11と、樹脂シートSを支持する支持プレート12とを備える。
【0019】
各ローラ対5,6は、樹脂シートSの下側に配置される駆動ローラ5a,6aと、樹脂シートSの上側に配置されるチャックローラ5b,6bとを備える。各駆動ローラ5a,6aは、チャックローラ5b,6bよりも大径に構成され、表面にローレット加工が施されている。各チャックローラ5b,6bは、支持部材9a,9bに設けられるエアシリンダ装置13に支持されている。これにより、チャックローラ5b,6bは、駆動ローラ5a,6aに対し、上下方向に接近・離反可能に構成される。
【0020】
各駆動装置7,8は、サーボモータを備える。第一駆動装置7に係るサーボモータの駆動軸は、減速機を介して第一のローラ対5の駆動ローラ5aに連結される。同様に、第二駆動装置8に係るサーボモータの駆動軸は、減速機を介して第二のローラ対6の駆動ローラ6aに連結される。なお、支持部材9a,9bには、各駆動軸を挿通可能な孔(図示せず)が形成されている。本実施形態では、各駆動装置7,8のサーボモータは、同期制御により各ローラ対5,6を駆動する。各サーボモータは、そのフィードバック制御(位置制御)により、各ローラ対5,6を高精度で駆動することができる。
【0021】
支持部材9a,9bは、長尺状の板部材により構成される。支持部材9a,9bは、その下部が移動機構10に支持されており、樹脂シートSの幅方向X(
図2参照)に沿って移動可能に構成される。支持部材9a,9bは、第一のローラ対5及び第一駆動装置7を支持する第一支持部材9aと、第二のローラ対6及び第二駆動装置8を支持する第二支持部材9bとを含む。
図2に示すように、各支持部材9a,9bは、一方の面(内面)で各ローラ対5,6を支持し、他方の面(外面)で各駆動装置7,8を支持する。
【0022】
移動機構10は、幅方向Xにおける第一のローラ対5と第二のローラ対6との間隔を、樹脂シートSの幅に応じて調整する。移動機構10は、例えばねじ機構により構成されるが、これに限定されるものではない。移動機構10は、水平方向に沿って配置されるねじ軸14と、このねじ軸14を操作するためのハンドル15とを備える。ねじ軸14は、ベース部材11に回転自在に支持されている。移動機構10は、ハンドル15の手動操作によりねじ軸14を回転させることで、第一支持部材9aと第二支持部材9bを相互に接近・離反するように移動させる。すなわち、ねじ軸14は、例えば第一支持部材9aに係合する部分が右ねじとされ、第二支持部材9bが係合する部分が左ねじとされている。
【0023】
ベース部材11は、中空状に構成される長尺部材である。ベース部材11は、各支持部材9a,9bを、その長手方向に沿って案内するガイドレール部16を有する。
図1に示すように、ガイドレール部16は、凸状に構成され、支持部材9a,9bの下端部に形成される凹部9cをスライド可能に支持する。ベース部材11は、その両端部に設けられるブラケット17を介して移動機構10のねじ軸14を回転自在に支持する。ベース部材11の下部には、図示しない昇降機構が設けられる。この昇降装置により、搬送装置3a,3bは、上下に往復移動可能に構成される。
【0024】
支持プレート12は、側面視L字状の金属板により構成される。支持プレート12は、各ローラ対5,6と接触しないように、その幅方向端部に切欠き部(凹部)を有する。各ローラ対5,6は、切欠き部に対応する位置で、樹脂シートSの幅方向端部を挟持する。
【0025】
支持プレート12は、複数の支持金具18を介してベース部材11に支持される。支持金具18は、その上端部が支持プレート12の下部(下面)に固定されている。支持金具18は、上下方向に沿って形成される複数の長孔19を有する。各長孔19には、ボルト等の固定部材20を挿通することができる。支持金具18は、長孔19に挿通した固定部材20を、ベース部材11に形成されるねじ孔に螺合させて締結することにより、支持プレート12を支持する。支持金具18は、固定部材20を緩めた状態で、長孔19に沿って上下にスライド可能に構成されており、支持プレート12の上下方向の位置を変更できる。支持プレート12は、上方凸形状の成形品Mを切断する場合(
図2参照)と、下方凸形状の成形品Mを切断する場合(
図4参照)とにおいて、その上下方向位置が異なる。すなわち、下方凸形状の成形品Mを切断する場合、支持プレート12は、上方凸形状の成形品Mを切断する場合よりも下方位置に配置される。
【0026】
以下、上記構成のトリミング装置1による成形品Mの切断方法について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、上方凸形状の成形品Mを樹脂シートSから分離させる場合について説明する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、各搬送装置3a,3bの各ローラ対5,6によって樹脂シートSを挟持した状態で、樹脂シートSに形成された成形品Mを切断装置2内に搬入する。第一搬送装置3a及び第二搬送装置3bは、成形品Mの部分が上切断型4aと下切断型4bとの間に配置されると、その搬送を一時停止させる。トリミング装置1は、成形品Mの上方に位置する上切断型4aを下降させ、この上切断型4aの開口部に成形品Mを挿入し、各切断型4a,4bによってこの成形品Mを切断する。打ち抜かれた成形品Mは、切断装置2の下方にて集積装置により回収される。
【0028】
次に、
図3及び
図4を参照して、下方凸形状の成形品Mを切断する場合を説明する。
図3及び
図4に示すように、樹脂シートSに形成される成形品Mを、下切断型4bの開口部内に配置し、下切断型4bと上切断型4aとを噛み合わせて打ち抜く。この例では、下方凸形状の成形品Mを下切断型4bの開口部内に配置すべく、各搬送装置3a,3bは、昇降装置による上下移動を間欠的に行う。すなわち、搬送装置3a,3bは、切断型4a,4bが成形品Mを切断する度に、樹脂シートSの上下移動と、水平方向への所定ピッチの移動とを交互に繰り返す。
【0029】
以上説明した本実施形態に係るトリミング装置1によれば、第一のローラ対5と第二のローラ対6とを第一駆動装置7と第二駆動装置8によって個別に駆動することにより、第一のローラ対5の駆動ローラ5aと第二のローラ対6の駆動ローラ6aとを軸部材によって連結する必要がなくなる。これによって、支持プレート12の上下の位置変更が軸部材によって制限されることはなく、上方凸形状の成形品Mと同等以上の高さ寸法を有する下方凸形状の成形品Mを切断することが可能になる。また、駆動ローラ5a,6aの径を可及的に小さくでき、作用する慣性モーメントの軽減化、あるいは部品点数の削減によるトリミング装置1の低コスト化を実現できる。さらに、各搬送装置3a,3bの各駆動装置7,8をサーボモータにより構成することで、その同期制御により、樹脂シートSに皺等が生じることはなく、この樹脂シートSを精度良く搬送することが可能になる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
上記の実施形態では、搬送装置3a,3bの駆動装置7,8をサーボモータにより構成した例を示したが、これに限定されない。駆動装置7,8は、ステッピングモータにより構成されてもよい。
【0032】
上記の実施形態では、第一搬送装置3a及び第二搬送装置3bを備えるトリミング装置1を例示したが、これに限定されない。例えば、トリミング装置1は、第一搬送装置3aのみを備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 トリミング装置
2 切断装置
3a 搬送装置
3b 搬送装置
5 第一のローラ対
6 第二のローラ対
7 第一駆動装置
8 第二駆動装置
12 支持プレート