特許第6704384号(P6704384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704384ガス状不純物濃度検出ユニット及びガス状不純物濃度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704384
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ガス状不純物濃度検出ユニット及びガス状不純物濃度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/77 20060101AFI20200525BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20200525BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20200525BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01N21/77 A
   G01N21/78 A
   G01N21/05
   G01N31/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-253005(P2017-253005)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-120504(P2019-120504A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 仁晃
(72)【発明者】
【氏名】三木 雄輔
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−249850(JP,A)
【文献】 特開2016−153732(JP,A)
【文献】 特開2004−361244(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0233008(US,A1)
【文献】 米国特許第5315673(US,A)
【文献】 特開平08−338805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 31/00−31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガス中に含まれるガス状不純物成分の濃度を検出するガス状不純物濃度検出ユニットにおいて、あらかじめ設定した第1の波長を有する第1測定光及び前記第1の波長とは異なるあらかじめ設定した第2の波長を有する第2測定光の吸収状態が特定のガスとの接触によってそれぞれ変化する感応剤を光透過性及びガス透過性を有する基材に固定化した検知素子と、該検知素子を備えた試料ガス通路と、該試料ガス通路の一方から試料ガス通路内に前記第1測定光を照射する第1光源及び前記第2測定光を照射する第2光源と、試料ガス通路の他方で前記検知素子を透過した第1測定光及び第2測定光の受光状態をそれぞれ第1計測電圧及び第2計測電圧に変換する受光部と、該受光部で変換した第1計測電圧と第2計測電圧との差又は商を算出し、算出した差又は商に基づいて前記第1計測電圧又は前記第2計測電圧から算出したガス状不純物成分の濃度を補正する演算部とを備えていることを特徴とするガス状不純物濃度検出ユニット。
【請求項2】
前記第1測定光及び前記第2測定光は、波長が200〜800nmの範囲の光であることを特徴とする請求項1記載のガス状不純物濃度検出ユニット。
【請求項3】
前記ガス状不純物成分が水分であり、前記感応剤は、金属イオン及び該金属イオンに配位結合する有機配位子からなる多孔性金属錯体であることを特徴とする請求項1又は2記載のガス状不純物濃度検出ユニット。
【請求項4】
前記多孔性金属錯体は、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートであることを特徴とする請求項3記載のガス状不純物濃度検出ユニット。
【請求項5】
試料ガス中に含まれるガス状不純物成分の濃度を検出する方法において、あらかじめ設定した第1の波長を有する第1測定光及び前記第1の波長とは異なるあらかじめ設定した第2の波長を有する第2測定光の吸収状態が特定のガスとの接触によってそれぞれ変化する感応剤を光透過性及びガス透過性を有する基材に固定化した検知素子を備えた試料ガス通路内に試料ガスを流通させるとともに、前記試料ガス通路の一方から試料ガス通路内に前記第1測定光及び前記第2測定光を照射し、前記試料ガス通路の他方で前記検知素子を透過した第1測定光及び第2測定光を受光して各受光状態をそれぞれ第1計測電圧及び第2計測電圧に変換し、第1計測電圧と第2計測電圧との差又は商を算出し、算出した差又は商に基づいて前記第1計測電圧又は前記第2計測電圧から算出したガス状不純物成分の濃度を補正することを特徴とするガス状不純物濃度検出方法。
【請求項6】
前記第1測定光及び前記第2測定光は、波長が200〜800nmの範囲の光であることを特徴とする請求項5記載のガス状不純物濃度検出方法。
【請求項7】
前記ガス状不純物成分が水分であり、前記感応剤は、金属イオン及び該金属イオンに配位結合する有機配位子からなる多孔性金属錯体であることを特徴とする請求項5又は6記載のガス状不純物濃度検出方法。
【請求項8】
前記多孔性金属錯体は、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートであることを特徴とする請求項7記載のガス状不純物濃度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状不純物濃度検出ユニット及びガス状不純物濃度検出方法に関し、詳しくは、各種工業用ガス中に含まれるガス状不純物の濃度を測定する際に使用するガス状不純物濃度検出ユニット及び該ガス状不純物濃度検出ユニットを使用してガス状不純物濃度を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素、酸素、アルゴンなどの工業用ガスの製造プロセスでは、製造プラントの運転管理や製品ガスの品質保証などの観点から、ガスの純度を測定することが重要である。工業用ガスは、通常、大気を原料として、吸着精製、精留分離などの工程を経て製造される。このため、各製造プロセスが正常に機能することを監視する目的で、工業用ガス中に含まれるガス状不純物濃度を測定している。また、製品としての工業用ガスを貯蔵・使用する際にも、環境大気から不純物が容易に混入しうるため、工業用ガスを用いて製造される製品の歩留まりや性能を維持する目的でも、工業用ガス中のガス状不純物濃度を測定する必要がある。
【0003】
各種ガス中の不純物を測定する手法として、例えば特許文献1に記載されたガス検知素子及び測定装置がある。特許文献1には、測定対象不純物に感応して光学的性質が変化する指示薬を含む薄膜と光学機器とを用いることで、前記薄膜の光学的性質変化を検出し、測定対象不純物濃度を測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−96699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたガス検知素子及び測定装置は、薄膜に含まれる指示薬の微小な光学的性質変化をガス濃度へ換算するため、ガス検知素子の劣化や光学素子の劣化などに起因する光学的性質の変化が、不純物濃度の測定結果に影響を及ぼす。例えば、測定装置を長時間動作させた場合、劣化によってガス検知素子の光学的性質が変化し、長時間安定した出力を得ることが困難であった。このため、長時間にわたって正確な不純物濃度を安定的に測定することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、検知素子の光学的性質変化の経時変化を排除して正確なガス状不純物濃度を安定的に検出できるガス状不純物濃度検出ユニット及び該ガス状不純物濃度検出ユニットを使用してガス状不純物濃度を検出する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のガス状不純物濃度検出ユニットは、試料ガス中に含まれるガス状不純物成分の濃度を検出するガス状不純物濃度検出ユニットにおいて、あらかじめ設定した第1の波長を有する第1測定光及び前記第1の波長とは異なるあらかじめ設定した第2の波長を有する第2測定光の吸収状態が特定のガスとの接触によってそれぞれ変化する感応剤を光透過性及びガス透過性を有する基材に固定化した検知素子と、該検知素子を備えた試料ガス通路と、該試料ガス通路の一方から試料ガス通路内に前記第1測定光を照射する第1光源及び前記第2測定光を照射する第2光源と、試料ガス通路の他方で前記検知素子を透過した第1測定光及び第2測定光の受光状態をそれぞれ第1計測電圧及び第2計測電圧に変換する受光部と、該受光部で変換した第1計測電圧と第2計測電圧との差又は商を算出し、算出した差又は商に基づいて前記第1計測電圧又は前記第2計測電圧から算出したガス状不純物成分の濃度を補正する演算部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のガス状不純物濃度検出方法は、試料ガス中に含まれるガス状不純物成分の濃度を検出する方法において、あらかじめ設定した第1の波長を有する第1測定光及び前記第1の波長とは異なるあらかじめ設定した第2の波長を有する第2測定光の吸収状態が特定のガスとの接触によってそれぞれ変化する感応剤を光透過性及びガス透過性を有する基材に固定化した検知素子を備えた試料ガス通路内に試料ガスを流通させるとともに、前記試料ガス通路の一方から試料ガス通路内に前記第1測定光及び前記第2測定光を照射し、前記試料ガス通路の他方で前記検知素子を透過した第1測定光及び第2測定光を受光して各受光状態をそれぞれ第1計測電圧及び第2計測電圧に変換し、第1計測電圧と第2計測電圧との差又は商を算出し、算出した差又は商に基づいて前記第1計測電圧又は前記第2計測電圧から算出したガス状不純物成分の濃度を補正することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明は、第1測定光及び第2測定光は、波長が200〜800nmの範囲の光であること、前記ガス状不純物成分が水分であり、前記感応剤は、金属イオン及び該金属イオンに配位結合する有機配位子からなる多孔性金属錯体であり、特に、前記多孔性金属錯体が、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各計測電圧の差又は商から検知素子の光学的性質の経時変化を排除することができるので、経時変化に由来する検知素子の光学的性質変化を排除してガス状不純物成分の濃度を精度よく測定でき、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のガス状不純物濃度検出ユニットの一形態例を示す説明図である。
図2】比較例における測定結果の一例を示す図である。
図3】実施例における第1測定光及び第2測定光の測定結果の一例を示す図である。
図4】実施例における補正した測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のガス状不純物濃度検出ユニットの一形態例を示している。本形態例に示すガス状不純物濃度検出ユニット11は、直線状の試料ガス通路12を形成するガス入口側ブロック13及びガス出口側ブロック14と、試料ガス通路12の一方に配置された光源側ブロック15と、試料ガス通路12の他方に配置された受光側ブロック16との4個の金属製ブロックによって形成されている。
【0013】
ガス入口側ブロック13には、前記試料ガス通路12に直交する方向から試料ガスGを導入する試料ガス流入経路12aが設けられており、ガス出口側ブロック14には、前記試料ガス通路12に直交する方向へ試料ガスを導出する試料ガス流出経路12bが設けられている。また、ガス入口側ブロック13とガス出口側ブロック14との間には、検知素子17が環状パッキン17aと共に挟持されている。
【0014】
検知素子17は、あらかじめ設定した第1の波長を有する第1測定光La及び前記第1の波長とは異なるあらかじめ設定した第2の波長を有する第2測定光Lbの吸収状態が特定のガスとの接触によってそれぞれ変化する感応剤を光透過性及びガス透過性を有する基材に固定化したもので、感応剤の材料としては各種材料を使用可能であるが、例えば、試料ガス中に含まれるガス状不純物成分としての水分濃度を検出する場合には、金属イオン及び該金属イオンに配位結合する有機配位子からなる多孔性金属錯体を用いることができ、例えば、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートを用いることができる。このとき、第1測定光及び第2測定光の波長は、200〜800nmの範囲内に設定することが好ましく、第1測定光の波長と第2測定光の波長とは、特定のガスとの接触により生じる感応剤の吸光度の変化の度合いに十分な差がある必要があるため、10nm以上異なっていることが好ましい。
【0015】
光源側ブロック15は、開口端に第1光源18を設けた第1測定光通路15aと開口端に第2光源19を設けた第2測定光通路15bとを有している。第2測定光通路15bは、試料ガス通路12に対して直線状に配置された第1測定光通路15aの途中から直交方向に分岐しており、分岐部15cには、第2測定光通路15bからの第2測定光の光路を90度変更して試料ガス通路12に向けて反射させる反射部材20が設けられている。また、受光側ブロック16は、開口端に受光部である受光素子22を設けた受光通路16aを有しており、受光通路16aは、試料ガス通路12に対して直線状に配置されている。
【0016】
光源側ブロック15とガス入口側ブロック13との間、受光側ブロック16とガス出口側ブロック14との間には、透光部材21が環状パッキン21aとともにそれぞれ挟持されている。透光部材21は、光透過性及びガス不透過性を有しており、透光部材21のガス入口側ブロック13側及びガス出口側ブロック14側に環状パッキン21aをそれぞれ配置することにより、さらに、ガス入口側ブロック13とガス出口側ブロック14との間に環状パッキン17aを配置することにより、試料ガス通路12から外部への試料ガスの漏洩や、試料ガス通路12への外部のガス(大気)の侵入を防止できる気密性を得ている。
【0017】
前記第1光源18は前記第1測定光を照射し、前記第2光源19は前記第2測定光を照射するものであって、各光源としては、前記第1測定光及び第2測定光を照射できるものならば、適宜な光源を採用することができ、例えば、波長が200〜800nmの範囲の光を照射するLED光源を用いることができる。反射部材20は、第1測定光を試料ガス通路12に向けて直線的に透過し、第2測定光を試料ガス通路12に向けて90度反射させることができればよく、例えば、ビームスプリッターを用いることができる。
【0018】
また、前記受光素子22は、検知素子17を透過して試料ガス通路12から受光通路16aに至った第1測定光の強度及び第2測定光の強度を測定し、電圧信号に変換して出力するもので、各測定光の強度を測定できれば任意の受光素子を使用でき、例えば、フォトダイオードや光電子増倍管などを用いることができる。
【0019】
受光素子22には、該受光素子22から出力された電圧信号に基づいて各種演算処理を行うための演算部23が接続されている。この演算部23は、第1測定光の受光状態から得られた電圧信号である第1計測電圧と、第2測定光の受光状態から得られた電圧信号である第2計測電圧との差又は商を算出し、算出した差又は商の変化量に基づいて前記検知素子17の光学的性質の経時変化量を算出するとともに、前記第1計測電圧又は前記第2計測電圧から算出したガス状不純物成分の濃度を前記経時変化量を使用して補正することにより、正確なガス状不純物成分濃度を算出する。
【0020】
このように形成したガス状不純物濃度検出ユニット11を使用して試料ガス中のガス状不純物の濃度を検出する際には、試料ガスが流れるガス経路の上流側に試料ガス流入経路12aを接続するとともに、ガス経路の下流側に試料ガス流出経路12bを接続する。これにより、上流側ガス経路から試料ガス流入経路12aに流入した試料ガスが試料ガス通路12内に導入され、検知素子17を通過した試料ガスが試料ガス流出経路12bから下流側ガス経路に導出されることで、試料ガス通路12内を試料ガスが常時流れる状態になる。
【0021】
試料ガスが流れている状態で第1光源18を作動させ、第1測定光通路15aから入口側の透光部材21を介して試料ガス通路12内にあらかじめ設定された強度の第1測定光を照射するとともに、検知素子17及び出口側の透光部材21を通過した第1測定光の強度を受光素子22で受光して第1計測電圧に変換して演算部23に出力する。
【0022】
あらかじめ設定された時間経過後、作動光源を第1光源18から第2光源19に切り替え、第2光源19からの第2測定光を、第2測定光通路15b、反射部材20、透光部材21を介して試料ガス通路12内にあらかじめ設定された強度で照射し、検知素子17及び出口側の透光部材21を通過した第2測定光の強度を受光素子22で受光して第2計測電圧に変換して演算部23に出力する。
【0023】
演算部23では、第1計測電圧と第2計測電圧との差又は商を算出することにより、前記検知素子17の光学的性質の経時変化を排除したベースラインを算出し、該ベースライン上に現れたガス状不純物成分によるピークとあらかじめ設定された検量線とに基づいてガス状不純物成分の濃度を算出する。これにより、検知素子17の光学的性質の経時変化によるベースラインの変化を排除することができ、試料ガス中のガス状不純物成分の濃度を正確に検出することができる。
【実施例1】
【0024】
図1に示す構成のガス状不純物濃度検出ユニット11を用いて窒素ガス中の微量水分濃度を検出する実験を行った。第1光源18には、OptoSupply製のLEDランプOSB5XNE1C1Eを用い、第2光源19にはOptoSupply製のOSG5XNE1C1Eを用い、受光素子22にはTAOS製のTSL−257を用いた。また、検知素子17にはADVANTEC社製のPTFEろ紙PF020を支持体とし、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートを感応剤として固定化したものを用いた。この検知素子17は、試料ガス(窒素ガス)中に含まれる水分不純物濃度に感応して特定波長の吸光度が変化する。
【0025】
また、試料ガスには、純度99.9999%以上とされた大陽日酸株式会社製の高純度窒素ガスと、ベースガスが窒素であって、水分濃度が500ppbとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスとを用いた。そして、検出実験では、前記高純度窒素ガスと前記標準ガスとを一定時間毎に切り替えてガス状不純物濃度検出ユニット11に供給し、水分濃度の検出結果を観察した。
【0026】
まず、比較例として、第1光源18のみを作動させ、第1測定光のみを使用して実験を行ったところ、図2に示すように、高純度窒素ガスと標準ガスとの切り替えに伴って受光素子22で測定した第1測定光の強度が変化することにより、測定電圧(検出濃度)が変化した。すなわち、標準ガスを供給したときに、ガス中の水分によって検知素子17の吸光度が変化し、水分濃度に対応したピークPを観察できた。しかし、長時間の実験による検知素子17の経時変化(劣化)によってベースラインBがドリフトするため、ゼロ点を取得できず、正確な水分濃度を測定することは困難であった。
【0027】
実施例では、第1光源18から第1測定光を照射して検知素子17を透過した第1測定光の強度を受光素子22で測定し、時間経過による強度変化を一定時間測定した後、発光させる光源を第1光源18から第2光源19に切り替えて第2測定光を検知素子17に照射し、前記同様に、検知素子17を透過した第2測定光の強度を受光素子22で測定し、時間経過による強度変化を一定時間測定した。その結果を図3に示す。このとき、第1測定光を照射しているときに生じるベースラインB1のドリフト幅から係数K1を、第2測定光を照射しているときに生じるベースラインB2のドリフト幅から係数K2をそれぞれ算出した。
【0028】
受光素子22で測定した各測定光の強度変化は、電圧信号として演算部23に出力され、演算部23では、第1測定光を照射しているときの強度変化にあらかじめ算出した前記係数K1を乗じて得られた第1測定結果と、第2測定光を照射しているときの強度変化にあらかじめ算出した前記係数K2を乗じて得られた第2測定結果とを算出するとともに、第1測定結果を第2測定結果で除した商の値を算出する。この商の値の算出を連続的に繰り返すことにより、図4に示すように、ベースラインBを補正してドリフトを排除することが可能となり、正確なゼロ点を取得することができる。
【0029】
したがって、高純度窒素ガスと標準ガスとの切り替えによって得られるピークPを、補正したベースラインBに対応させることにより、すなわち、図4に示すように、第1測定光又は第2測定光を照射したときに得られた補正後のベースラインBに対するピークPの高さを、あらかじめ作成した検量線のピーク高さと水分濃度との関係に対応させることにより、試料ガス中の水分濃度を正確に算出することができる。
【0030】
なお、ガス状不純物濃度検出ユニットの構成は、前記形態例の構成に限定されるものではなく、試料ガスの流量や圧力などの条件に応じて適切な構成を採用することができる。また、光源から照射する測定光の波長は、試料ガス及びガス状不純物成分の種類、感応剤、検知素子の種類や形態によって適宜選択することができる。また、測定条件によっては、第1測定光における結果と第2測定光における測定結果の差を取る演算方法も採用することができる。
【符号の説明】
【0031】
11…ガス状不純物濃度検出ユニット、12…試料ガス通路、12a…試料ガス流入経路、12b…試料ガス流出経路、13…ガス入口側ブロック、14…ガス出口側ブロック、15…光源側ブロック、15a…第1測定光通路、15b…第2測定光通路、15c…分岐部、16…受光側ブロック、16a…受光通路、17…検知素子、17a…環状パッキン、18…第1光源、19…第2光源、20…反射部材、21…透光部材、21a…環状パッキン、22…受光素子、23…演算部
図1
図2
図3
図4