【実施例】
【0066】
実施例1.タクロリムスを使用するリンパ浮腫の治療及び予防
タクロリムスは、全身的な免疫抑制なしに尾リンパ浮腫を減少させる
リンパ浮腫に対する局所的なタクロリムスの効果を研究するために、以前に記載されたリンパ浮腫のマウス尾モデルを使用した。Goldman et al.,Circ.Res.96:1193−1199(2005);Shimizu et al.,J.Am.Heart Assoc.2:e000438(2013);Choi et al.,Circulation 125:872−882(2012);Tabibiazar et al.,PLoS Med.3:e254(2006);Yoon et al.,J.Clin.Invest.111:717−725(2003)。マウス尾の表在リンパ管及び深部リンパ管の破壊は、外科手術の2週間後に100%を超える尾体積の増加をもたらした(
図1A、1B)。この時点での膨潤は主として間質液の蓄積に起因することが、以前に本出願人により示されている。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013)。尾における慢性的なリンパ管閉塞は、脂肪線維組織による間質液の段階的な置き換えをもたらすだけでなく、炎症細胞の蓄積が続く4週間にわたって起こる。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013)。これらの病理学的な変化は臨床的リンパ浮腫を非常によく反映し、一旦リンパ浮腫が確立されれば、追加の少なくとも6〜9週間の間持続する。Goldman et al.,Circ.Res.96:1193−1199(2005);Shimizu et al.,J.Am.Heart Assoc.2:e000438(2013);Choi et al.,Circulation 125:872−882(2012);Tabibiazar et al.,PLoS Med.3:e254(2006);Yoon et al.,J.Clin.Invest.111:717−725(2003)。
【0067】
この知識に基づいて、2つの異なるタクロリムス治療アプローチを使用した。リンパ浮腫の発症を予防する取り組みにおいて(すなわち初期治療)、1つの群の動物を外科手術の2週間後に開始するタクロリムスにより4週間治療した(尾外科手術後に合計6週間)。別の群において、確立された軟組織変化を治療する意図で(すなわち後期治療)、リンパ浮腫が確立するようにリンパアブレーション後に6週間待機し、次いで9週間目までタクロリムスにより治療した。すべての研究において、0.1%のタクロリムス(0.05g/適用)又はベヒクル対照(ワセリン)のいずれかにより1日2回動物を治療した。タクロリムス又はベヒクル対照を、外科手術部位から遠位の(すなわち含まない)尾全体へ薄層として適用した。
【0068】
局所的なタクロリムスによる初期治療は著しく尾膨潤を減少させ、持続的な膨潤の発生を予防した(
図1A、1B)。実験動物からの尾の肉眼的な検討により、リンパ浮腫のほぼ完全な消失が実証され、この変化は尾体積の95%の減少及び軟組織厚みのおよそ50%の減少に対応した(
図1B、1C)。後期治療も、対照と比較して、肉眼的な尾膨潤、尾体積、及び軟組織厚みの減少に極めて効果的であったが、これらの動物において尾体積は手術前のレベルへ戻らなかった(
図1B、1C)。
【0069】
タクロリムスの全身的なレベル及び周辺T細胞カウントも分析して、局所的に適用されたタクロリムスが感知できる様式で吸収されるかどうかを決定した。この解析により、局所的なタクロリムスの体内吸収(1.06ng/mLの平均値)が全身投与(5〜15ng/mL;
図1D)により達成される既知療法の免疫抑制レベルより有意に低いままであることが実証された。加えて、ベヒクル治療対照と比較して、局所的なタクロリムスにより治療された動物は、循環血液T細胞又はCD4
+細胞の変化を示さなかった(
図1E、
図7)。
【0070】
タクロリムスはリンパ管損傷後の炎症及び線維化を減少させる
慢性炎症は、臨床的なリンパ浮腫の組織学的特徴であり、Tヘルパー細胞、T調節性細胞、及びマクロファージの蓄積の増加によって特徴づけられる。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013);Zampell et al.,PLoS ONE 7:e49940(2012);Ghanta et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.308:H1065−1077(2015);Olszewski et al.,Lymphology 23:23−33(1990)。このことと一致して、タクロリムス治療動物では、対照と比較して、真皮及び皮下脂肪に浸潤する白血球の数が著しく減少したことが見出された(CD45
+細胞;56%の低減、初期治療;49%の低減、後期治療;
図2A)。対照動物から採取されたリンパ浮腫性組織中の炎症細胞は毛細管及び集合リンパ管に非常に接近して位置したが、タクロリムス治療マウス中で実質的には存在しなかった。同様に、浸潤するCD3
+細胞(53%の低減、初期治療;49%の低減、後期治療;
図2B)、CD4
+細胞(78%の低減、初期治療、71%の低減、後期治療;
図2C)、及びIFN−γ産生細胞(54%の低減、初期治療、57%の低減、後期治療;
図2D)の数の著しい減少が、本出願人により指摘された。加えて、マクロファージ(F4/80
+細胞;86%の低減、初期治療;73%の低減、後期治療;
図8)の軟組織浸潤の減少が、指摘された。総合すると、これらの所見は、リンパ管損傷後に多数の炎症細胞が皮膚/皮下のリンパ管に非常に接近して蓄積し、この応答がタクロリムスの局所適用によって緩和されることを示す。
【0071】
リンパ浮腫に罹患する患者は進行性の軟組織線維化を有し、線維化の程度は疾患の重症度と相関する。Tassenoy et al.,Lymphat.Res.Biol.7:145−151(2009)。したがって、疾患のこの態様に対するタクロリムス治療の効果を理解するために尾組織中の線維化の複数のマーカーを分析した。タクロリムスによる局所的な治療は、対照マウスと比較して、真皮及び皮下のI型コラーゲン沈着及び瘢痕指標(I型/III型コラーゲンの比を測定するピクロシリウスレッド複屈折)を著しく減少させることが見出された(
図3A、3B)。対照マウスのリンパ管はI型コラーゲンの厚い層によって囲まれた。これとは対照的に、タクロリムス治療動物は本質的に正常なリンパ管を有していた。この観察及び本出願人の先行報告(Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−2127(2008))と一致して、タクロリムス治療が、線維化を促進する増殖因子TGF−β1の発現及びその活性化された下流のシグナリング分子(リン酸化されたSMAD3)の細胞発現を著しく減少させることも見出された(pSMAD−3;
図3C、3D)。この応答の程度は初期及び後期のタクロリムス治療について類似していた。
【0072】
タクロリムスはリンパ機能を増加させる
リンパ機能を査定するために、インドシアニングリーン(ICG)による近赤外(NIR)リンパ管造影法(それはリンパ管のリアルタイム画像化、パケット頻度(又はリンパ液の拍動流)の計算を可能にすることによって、ヒト、ブタ及びマウスにおけるリンパ機能を定量化する効果的な手段として記述された)、ならびに皮膚逆流及び色素クリアランスの解析を実行した。Kwon et al.,Lymphat.Res.Biol.5:219−231(2007);Sharma et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.292:H3109−3118(2007);Unno et al.,J.Vasc.Surg.52:946−952(2010)。リンパ管結紮の6週間後にNIR画像化を使用して、リンパ管損傷の2週間後に治療が開始された動物において、尾創傷を近位へと横切る間質液の急速な輸送が、指摘された(初期治療;
図4A)。これとは対照的に、対照動物は、傷害ゾーンを横切った輸送はなく、リンパの切除部位から遠位でのICGの貯留を実証した。この所見は、テクネチウム99m(
99mTc)リンパ管シンチグラフィー(放射性トレーサーを尾遠位部中に注入し、仙骨リンパ節による取り込みを経時的に測定する技法)を使用して確認された。初期治療動物における仙骨リンパ節の崩壊補正取り込みは、対照と比較して、タクロリムス治療動物における
99mTc取り込みの6倍を超える増加を実証した(
図4B)。タクロリムスによる後期治療は同様にリンパ節による取り込みを増加させた(2倍)が、この差は統計的有意差に達しなかった。
【0073】
尾モデルにおけるリンパ浮腫の予防及び治療のタクロリムスの有効性を考慮して、次にタクロリムスが、以前に記載された膝窩リンパ節郭清(PLND)のモデルを使用して、リンパ管損傷後にどのようにリンパ機能を修飾するかを研究することにした(
図9)。Blum et al.,Breast Cancer Res.Treat.139:81−86(2013)。リンパ節郭清は、癌治療の過程で先進国におけるリンパ浮腫の最も一般的な原因であるので、このモデルは臨床に関連するものである。慢性的な炎症反応がリンパ管損傷後に活性化されるメカニズムを十分に理解するために、最初にPLNDマウスのモデルを利用した。
【0074】
先行研究により、リンパ内皮細胞(LEC)が活性酸素種(ROS)に極めて感受性があり(Kasuya et al.,Sci.Rep.4:4173(2014))、ROSが慢性炎症を活性化し得ることが実証されている。Gorlach et al.,Redox Biol.6:372−385(2015)。ROSがPLND後に存在するかどうかを決定するために、細胞代謝産物の除去におけるリンパ管の既知の役割に基づいて、傷害の1週間後に傷害ゾーンから遠位の組織におけるROSの蓄積を分析した。実際、この解析により、PLNDにより処理された動物における膝窩部にすぐ遠位の後肢組織におけるROSの有意な蓄積が実証された(
図10)。これとは対照的に、リンパ節切除なしに皮膚切開により処理された対照動物には、ROSの蓄積が実質的にはなかった。ROSは、先天性免疫応答(危険関連分子パターン分子(DAMP)が含まれる)を活性化することができる。Yin et al.,J.Immunol.194:429−437(2015)。これらの研究及びPLND後のROSの増加についての本所見に加えて、リンパ腫組織における様々な細胞タイプにおけるHMGB1の発現増加を実証したリンパ浮腫の尾モデルを使用する本出願人の先行研究(Zampell et al.,Am.J.Physiol.Cell Physiol.300:C1107−1121(2011))、と一致して、DAMP(熱ショックタンパク質−70(HSP70)及び高移動度群ボックス1(HMGB−1)等)の発現の著しい増加が指摘された(
図10)。これらの所見により、リンパ管損傷がROSの生成をもたらし、次に、細胞傷害、DAMPの発現、及び炎症応答の開始をもたらすことが指摘される。
【0075】
先行する臨床及び実験室での研究は、漏洩する機能障害のリンパ管からもたらされる間質腔の中へのICGの貯留として皮膚逆流を記載していた。Blum et al.,Breast Cancer Res.Treat.139:81−86(2013);Tashiro et al.,Ann.Plast.Surg.doi:10.1097/SAP.599(2015);Yamamoto et al.,Plast.Reconstr.Surg.128:314e−321e(2011)。これらの報告と一致して、4週間の間ワセリン単独により局所的に治療された対照動物は、脚パッドの毛細リンパ管の著しい漏出性(白色矢印によって示される明るいICG蓄積の斑点状領域;
図4C)及び皮膚逆流(真皮におけるICGの全般的な保持;
図4C)を有することが見出された。この病理学的応答は、局所的なタクロリムスにより治療された動物において著しく減少し、注入されたICGのリンパの漏出性の減少及びクリアランスの改善をもたらした。
【0076】
低速度撮影を使用する集合管におけるICG蛍光強度における変動の解析は、リンパ管の駆出率の測定に以前から使用されている技法である。Sevick−Muraca et al.,J.Clin.Invest.124:905−914(2014)。この解析は「ICGパケット頻度」の計算を可能にし、PLND後の集合リンパ機能の分析に使用された。Blum et al.,Breast Cancer Res.Treat.139:81−86(2013)。この技法を使用して、局所的なタクロリムス療法は、対照と比較して、集合リンパ管のパケット頻度を著しく増加させる(>2倍の増加)ことが見出され、この治療が集合リンパ機能を増加させることが指摘された(
図4D)。
【0077】
加えて、尾モデルによる本所見に類似して、PLND後の局所的なタクロリムスによる治療は、ベヒクル治療対照と比較して、炎症細胞のリンパ周囲の浸潤を著しく減少させる(CD45
+細胞の39%の低減(
図4Eの上部パネル、
図4F)、CD4
+細胞の56%の低減(
図11)、及びF4/80
+細胞の36%の低減(
図12))ことが見出された。局所的なタクロリムスによる治療は、炎症細胞による誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)のリンパ周囲での発現の有意な減少(iNOS発現細胞数の42%の低減)ももたらした(
図4E下部パネル、
図4G)。リンパ周囲のiNOS発現は集合リンパ管の駆出能力の重要な調節因子であると先行研究が示したので、これは重要である。Liao et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:18784−18789(2011)。重要なことには、手術されていない動物(すなわち麻酔のみだが外科手術はない)のタクロリムスによる治療が、リンパ管の収縮頻度又は炎症細胞のリンパ周囲の蓄積を増加させなかったので、局所的なタクロリムス治療に応答したリンパ管の収縮性の変化は、リンパ管損傷の状況でのみ観察された(
図13)。
【0078】
加えて、リンパ機能に対するタクロリムスの観察された効果が、血管透過性及び血管漏出の減少の結果ではなかったことを保証するために、Milesアッセイを実行して、タクロリムス有り及び無しでPLND外科手術後の血管透過性を測定した。タクロリムス治療とベヒクル対照との間に血管透過性の差は観察されず、リンパ機能の増加におけるタクロリムスの効果は、確かに血管漏出の減少ではなくリンパ機能の増加に起因することが示唆された(
図14)。
【0079】
次に、長年の重篤なリンパ浮腫に罹患する患者が平滑筋細胞肥大によりリンパ管を絞めつけるという先行する臨床報告が示した事実に基づいて、対照動物及びタクロリムス治療動物におけるPLND後の後肢の集合リンパ管の内腔径及びアルファ平滑筋細胞被覆を検査した。Mihara et al.,PLoS One 7:e41126(2012)。驚くことではないが、リンパ管損傷後のこの比較的早期の期間において(すなわち4週間)、タクロリムス治療マウス及び対照治療マウスを比較する場合に、後肢の集合管の管の周囲又は内腔領域でのアルファ平滑筋の数の差は、見出されなかった。この所見により、リンパ管の構造的な変化によってではなく、リンパの微小環境(例えばリンパ周囲の炎症又はiNOSの発現;
図15)における変化に起因して、タクロリムス治療後の集合リンパ管のパケット頻度の増加が調節されることが指摘される。
【0080】
タクロリムスは側副リンパ管形成を増加させる
T細胞が、リンパ節のリンパ管新生(Kataru et al.,Immunity 34:96−107(2011))及び創傷修復の間の炎症性リンパ管新生(Zampell et al.,Am.J.Physiol.Cell Physiol.302:C392−C404(2012))を強力に阻害することが公知であるので、次にタクロリムスによる治療が側副リンパ管の形成を増加させるかどうかを決定することにした。確かに、尾創傷の組織学的分析及びLYVE−1の免疫蛍光(IF)染色を使用するリンパ管の同定により、リンパ管損傷ゾーンを架橋する新しく形成されたリンパ管の著しい増加が実証された(初期治療後に189%の増加;後期治療後に106%の増加;
図5A)。対照動物とタクロリムス治療動物との間でVEGF−C mRNA発現における差が指摘されなかったので、このリンパ管新生応答はVEGF−C発現に非依存性であると思われた(
図5A)。しかしながら、本出願人によるIF染色解析と一致して、2つの強力な抗リンパ管新生性の増殖因子及びサイトカイン、TGF−β1(Oka et al.,Blood 111:4571−4579(2008);Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−2127(2008))及びIFN−γ(Kataru et al.,Immunity 34:96−107(2011);Shao et al.,J.Interferon Cytokine Res.26:568−574(2006))の発現の有意な減少が指摘された(
図5A)。PLNDの4週間後の後肢におけるNIR画像化によるリンパ管造影の解析及びリンパ管についてのIF染色により、本出願人による尾モデルについての所見が確認され、タクロリムスにより治療された動物が、鼠径リンパ節に向かって排出させる側副リンパ管を一貫して有意に多く有し、それによって傷害ゾーンをバイパスすることが実証された(
図5B〜5D)。
【0081】
リンパ液の排出が外科的に閉塞されない他の炎症モデル及び創傷モデルにおけるタクロリムスのリンパ管新生効果を決定するために、次に炎症性リンパ管新生の2つの他のモデルを使用した。角膜は血管及びリンパ管の両方を通常は欠いているが、炎症の状況において両者を発生させるので、角膜はリンパ管新生の研究のための有用な組織である。Cursiefen et al.,J.Clin.Invest.113:1040−1050(2004)。マウスの角膜中に縫合糸を設置し、全身的なタクロリムス又はベヒクル対照によりマウスを2週間の間毎日治療し、血管ではなくリンパ管の増殖における有意な増加(48%の増加)をタクロリムス治療がもたらすことが見出された(
図6A〜6C)。
【0082】
耳ポンチ創傷モデルを使用し、局所的なタクロリムス又は対照軟膏を4週間の間適用して、創傷治癒の間のリンパ管新生も研究した。角膜モデルに類似して、局所的なタクロリムスは、対照と比較して、創傷に隣接する耳皮膚におけるリンパ管密度及び分岐を有意に増加させたことが見出された(
図6D〜6F)。タクロリムスの直接的なリンパ管新生性の効果の可能性を試験するために、創傷を受けていないマウス耳へタクロリムスを4週間の間適用し、次いでリンパ管のホールマウント共焦点画像化を実行した。この損傷のない炎症を起こしていない状況において、リンパ管新生の増加は観察されなかった(
図16)。総合すると、これらの結果により、タクロリムスは、一般的には炎症の状況において、及び特異的にはリンパ浮腫/リンパ管損傷の状況において、新しいリンパ管の形成を促進することが指摘される。
【0083】
方法
研究デザイン
この研究の目的は、T細胞の局部的阻害がリンパ管損傷後のリンパ浮腫の発症を予防することができ、発症した後の確立しているリンパ浮腫を治療することができるという仮説を試験することである。リンパ管損傷及びリンパ浮腫の2つの異なるマウスモデルを使用して、タクロリムス(これらの転帰に対してFDAによって認可された局所的な抗T細胞医薬物)の有効性を分析した。タクロリムスがリンパ浮腫の予防及び治療において確かに効果的であることが見出されたので、次いで、この応答を調節する細胞メカニズム及び分子メカニズムを分析することにした。これらの後続する研究において、CD4+炎症応答の阻害が、側副リンパ管の形成を増加させること、毛細リンパ管を囲む細胞間マトリックス中のコラーゲン沈着を減少させること、及び集合リンパ管の駆出頻度を増加させることによって、リンパ機能を改善したという仮説を試験した。本研究はすべて、光及び温度を制御した病原体不含有環境において維持し自由摂食させた、成体メス(10〜14週齢)C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)を使用して実行した。すべての研究はMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの研究機関内動物実験委員会(IACUC)によって認可された。各々の実験を最低でも6〜8匹の動物を使用して実行し、アッセイを三重で実行した。すべての細胞カウントは、介入に対して盲検化された審査員によって実行した。
【0084】
動物モデル及び治療
尾の外科手術及びリンパのアブレーションを、以前公表されたように実行した。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。簡潔には、尾の中間部分の表在集合リンパ管及び深部集合リンパ管を、2mmの環状切除を使用して切除した。外科手術の2週間後に開始(初期治療)及び外科手術の6週間後に開始(後期治療)して、0.1%のタクロリムス(Astellas、Tokyo、日本)/ベヒクル対照(ワセリン)で、異なるセットの動物を局所的に治療した。両方のアプローチについて、4週間の期間(初期治療について)及び3週間の期間(後期治療)の間0.1%のタクロリムス又はベヒクル対照により動物を1日2回治療した。タクロリムス(およそ0.05g)を尾領域全体に薄層として適用した。リンパ集合管の駆出能力の解析を可能にするために、以前に記載されたマウス膝窩リンパ節切除モデルを利用した。Blum et al.,Breast Cancer Res Treat 139:81−86(2013);Sharma et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.292:H3109−H3118(2007)。簡潔には、後肢の集合管及び膝窩リンパ節を同定し、リンパ節を膝窩脂肪体と共に切除した。外科手術の2週間後に開始する、0.1%の局所的なタクロリムス又はベヒクル対照(ワセリン)のいずれかによる2週間の間の1日2回の治療に対して、動物を無作為化した。
【0085】
角膜のリンパ管新生のアッセイを以前に報告されたように実行した。Cursiefen et al.,Cornea 25:443−447(2006)。簡潔には、10−0ナイロン縫合糸(Ethicon、Cincinnati、OH)を120°の角度で角膜中に設置した。縫合糸設置後に開始して、動物を全身的なタクロリムス又はベヒクル対照により2週間の間毎日治療し、続いて共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Weitziar、ドイツ)を使用して解析した。全身的なタクロリムス(Biotang Inc.、Lexington、MA)をPBS中の10%のエタノールと1%のツイーン80中に溶解し(Rozkalne et al.,Neurobiol.Dis.41:650−654(2011);Butcher et al.,J.Neurosci.17:6939−6946(1997))、4mg/kgで腹腔内に毎日投薬した。全身的なタクロリムスについてのベヒクル対照は、同等の体積のPBS中の10%のエタノール、1%のツイーン(tween)80であった。皮膚のリンパ管新生を以前に報告されたように耳ポンチ創傷モデルを使用して査定した。Cho et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4946−4951(2006)。創傷に続いて、耳皮膚を局所的なタクロリムス又はベヒクル対照のいずれかにより4週間の間治療した。次いで耳を採取し、1%のPFA中で一晩固定した。次いで耳皮膚の前方部分及び後方部分を分割して軟骨を除去し、LYVE−1及びCD31についてのホールマウント染色を実行した。共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Weitziar、ドイツ)を使用してタイルスキャン画像を獲得し、Metamorphソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して創傷端部の400μm内の皮膚を分析した。標準化された(200μm×200μm)視野を、2名の盲検化された審査員によって、単位面積あたり存在する分岐点の数について分析した。
【0086】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーを以前に報告されたように末梢血サンプルで実行した。Zampell et al.,PLoS ONE 7:e49940(2012)。簡潔には、赤血球をRBC溶解バッファー(Ebioscience、San Diego、CA)により溶解し、続いてフルオロフォアコンジュゲート抗体(CD45、CD3、及びCD4;すべてBiolegend、San Diego、CAから)により染色し、FlowJoソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR)を使用して、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)により解析した。
【0087】
質量分析によるタクロリムス血中レベル
タクロリムスの血中レベルを以前に報告された方法を修飾した質量分析を使用して測定した。Donaldson et al.,Meth.Mol.Biol.603:479−487(2010)。簡潔には、全血をEDTAナトリウムコートチューブ(Terumo、Shibuya、日本)中に収集し、次いでTSQ Quantum Ultraトリプル四重極質量分析計(Thermo Scientific、Franklin、MA)に連結されたThermo Scientific Aria TLX−2乱流クロマトグラフ(TFC)を使用して分析した。使用したTurboFlowカラムはサイクロンP−50×0.5mmであり、一方分析カラムは3×50mmのHypersil Gold C−18カラムであった。全血(50μL)へ、内部標準物質としてアスコマイシンを含有する200μLの0.2mMのZnSO
4を添加した。30分間のインキュベーション及び遠心分離に続いて、50μLの上清をTFCシステムの中へ注入した。10mMのギ酸アンモニウム及び0.1%の蟻酸を含有する水及びメタノール溶液の勾配によりカラム(0.75mL/分間)を介して、検体を溶出させた。分析実行時間は4.5分間であった。アッセイ日の間の不正確度を10日の期間にわたって3つの濃度で決定した。3.3、12.6及び31.9ng/mLの濃度で、変動係数はそれぞれ9.8、7.0及び7.8%であった。アッセイは0〜40ng/mLで直線範囲を有する。
【0088】
リンパ機能の解析
尾の体積を以前に報告されたように円錐台式を使用して計算し(Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008))、Mirax画像化ソフトウェア(Carl Zeiss、Munich、ドイツ)を使用する標準化された様式で、皮膚/皮下組織の軟組織厚みの組織学的測定を使用して確認した。
【0089】
本出願人の以前に出版された方法を使用してリンパ管シンチグラフィーを実行した。Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010)。簡潔には、50μlの濾過されたテクネチウム99m(
99mTc)硫黄コロイド(Nuclear Diagnostic Products、Rockaway、NJ)を、尾遠位部中に注入した。X−SPECTカメラ(Gamma Medica、Northridge、CA)を使用して画像を採取し、対象となる領域の解析を実行して、仙骨リンパ節中の崩壊補正カウントを導き出し、ASIProソフトウェア(CTI Molecular Imaging、Knoxville、TN)を使用してリンパ節の取り込みのピーク及び率を計算した。
【0090】
近赤外画像化(NIR)は以前に出版された結果の修飾を使用して実行した。Tassenoy et al.,Lymphat.Res.Biol.7:145−151(2009)。簡潔には、15μl(0.15mg/mL)のインドシアニングリーン(ICG、Sigma−Aldrich、Saint Louis、MO)を、背側後肢の趾間中に皮内注射し、LED光源(CoolLED、Andover、イギリス)を備えたEVOS EMCCDカメラ(Life Technologies、Carlsbad、CA)を使用して可視化した。Zeiss V12 Stereolumar顕微鏡(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)を使用して、静止画像/ビデオ画像を得て、脚の主要な集合管にわたって対象となる領域を同定すること及び経時的にプロットされたバックグラウンドの蛍光強度を引くことによって、Fijiソフトウェア(NIH、Bethesda、MD)を使用して、リンパ管のポンプ機能を分析した。
【0091】
組織学及び免疫染色
本出願人の出版された方法を使用して免疫組織化学的染色を実行した。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。簡潔には、組織を4%のパラホルムアルデヒド中で4℃で固定し、5%のEDTAナトリウム(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)中で脱灰し、パラフィン中に包埋し、5マイクロメートルで切片を作成した。切片を湿らせ、加熱媒介性の抗原のマスキングの除去を90℃のクエン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich)を使用して実行した。非特異的結合はを2%のBSA/20%の動物血清によりブロックした。組織を一次抗体により4℃で一晩インキュベーションした。免疫組織化学の染色のために使用された一次抗体は、ヤギ抗マウスLYVE−1、ラット抗マウスCD45、ウサギ抗マウスCD4、ラット抗マウスF4/80(すべてR&D、Minneapolis、MNから)、ウサギ抗マウスCD3(Dako、Carpinteria、CAから)、Cy3コンジュゲート抗マウスαSMA(Sigma−Aldrichから)、ウサギ抗ヒトIFN−γ、ウサギ抗マウスTGF−β1、ウサギ抗マウスp−SMAD3、ウサギ抗マウスI型コラーゲン、ウサギ抗マウスiNOS、ハムスター抗マウスポドプラニン、ウサギ抗マウスHMGB−1及びHSP−70(すべてABCAM、Cambridge、MAから)を含んでいた。
【0092】
免疫蛍光染色は、AlexaFluorフルオロフォアコンジュゲート二次抗体(Life Technologies、Norwalk、CT)を使用して実行した。画像はMirax画像化ソフトウェア(Carl Zeiss)を使用してスキャンした。リンパ周囲のCD45
+及びCD4
+細胞カウントは、各々の脚の四半部分中で最も炎症を起こしたリンパ管の50μm以内で陽性染色された細胞のカウントによって査定した。陽性染色された細胞は、1匹の動物あたり最低4つの視野で4つの無作為に選択された40×高倍率視野において2名の盲検化された審査員によってカウントした。I型コラーゲン沈着は、5μmの横断切片の真皮領域中でMetamorphソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して定量化した。この解析は、以前に報告されたようにピクロシリウスレッド染色及び瘢痕指標計算を使用して確認した。Flanders et al.,Am.J.Pathol.163:2247−2257(2003)。マウス尾における架橋リンパ管は、1つの尾あたり4つの異なる高倍率視野で再上皮化した外科手術部位においてカウントした。
【0093】
シリウスレッド染色
尾組織のパラフィン切片を、製造者の説明書に従ってピクロシリウスレッド染色キット(Polysciences、Warrington、PA)により染色した。Axiocam 2顕微鏡(Carl Zeiss)にて偏光を介して画像を得て、瘢痕指標は、赤色〜オレンジ色の線維:緑色〜黄色の線維の比(より大きい数は瘢痕化の増加を表わす)の計算によって、Metamorphソフトウェアで定量化した。
【0094】
リアルタイムPCR
RNA抽出は、製造業者の推奨に従ってTRIZOL(Invitrogen、Life Technologies、Carlsbad、CA)を使用して尾皮膚で実行した。RNAの質及び量は、Agilentバイオアナライザー(Agilent Technologies,Inc;Santa Clara、CA)を使用して査定した。TaqMan逆転写酵素キット(Roche、Branchburg、NJ)を使用して、単離されたRNAをcDNAに変換し、群間の遺伝子発現の相対的発現を、以前に記載されたように、デルタ−デルタCT PCR解析を使用してそしてGAPDHのRNA増幅の使用により遺伝子発現を正規化して、実行した。Schmittgen et al.,Nat.Protoc.3:1101−1108(2008)。相対的発現は、式:2[−(Ct対象となる遺伝子−Ct内在性対照)サンプルA−(Ct対象となる遺伝子−Ct内在性対照)サンプルB]を使用して計算した。すべてのサンプルは三重で実行した。対象となるPCR標的のために使用されたプライマーは、VEGF−C、TGF−β1、及びIFN−γのためのもの(Applied Biosystems、Life Technologies、Carlsbad(CA))であった。
【0095】
ROSのインビボ検出及び血管透過性についてのMilesアッセイ
ROSのインビボの検出は、Han et al.(J.Vis.Exp.doi:10.3791/3925(2012))によって記載されたようにNADPHオキシダーゼの生物発光画像化によって実行した。簡潔には、PBS中で溶解したL−012(ルミノールの類似体)(20μg/g)をPLND後の異なるタイムポイントでマウスに全身的に注射し、PLND外科手術部位でROSを表わす発光シグナルを画像化し、IVISスペクトル200(Xenogen Corporation)を使用して定量化した。記載されたように血管透過性についてのMilesアッセイを実行した。Radu et al.,J.Vis.Exp.doi:10.3791/50062(2013)。簡潔には、200μlの0.5%の滅菌されたエバンスブルーを、2週間タクロリムスで治療されたPLNDマウスへ尾静脈を介して注射した。30分後に、PLND後肢を画像化してエバンスブルー漏出を観察した。後肢を切除し、55℃で48時間ホルムアミド中でインキュベーションしてエバンスブルーを抽出した。抽出されたエバンスブルーは、610nmで吸光度を測定することによって定量化した。
【0096】
統計解析
GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、La Jolla、CA)を使用して、データを分析及び提示した。値は、特に断りのない限り、平均±標準偏差として表示される。統計的有意差をp≦0.05で設定し、2つの群の間の差をStudentのt検定により査定し、一方で群内の比較のために事後検定によるANOVAを使用して複数の分析を実行した。
【0097】
結論
CD4
+T細胞がリンパ浮腫病理において重要な役割を果たすので、この研究の目的は、リンパ浮腫の予防及び治療のための局所的なタクロリムスの有効性を評価することであった。本出願人は、記載されたリンパ浮腫のマウス尾モデルに加えて、以前に記載された膝窩リンパ節郭清(PLND)からもたらされるリンパ管損傷のモデルを適切に使用して、局所的なタクロリムスが、慢性的な炎症応答を減少させ、組織及びリンパの線維化を減少させ、集合リンパ管の駆出を増加させ、及び側副リンパ管形成を増加させることによって、リンパ管損傷後のリンパ浮腫の発症を強力に予防することを示した。先行する実験的な試みが主として外来性リンパ管新生増殖因子を使用してリンパ管再生を増加させることに注目したので、これらの所見はリンパ浮腫の治療について重要な意味合いを有する。
【0098】
タクロリムスが、リンパ管損傷後の真皮及び皮下のT細胞浸潤及び組織線維化を強力に減少させることも見出された。これらの変化はリンパ浮腫の発症を予防し、一旦リンパ浮腫が確立されたならば病理学的な変化を回復させることができる。タクロリムスによる治療は、側副リンパ管の形成を増加させることによって、及び集合リンパ管の駆出頻度を増加させることによって、リンパ機能を増加させる。本出願人の知識によれば、これは、外科手術後のリンパ浮腫を予防及び治療する、初めての標的化された局所的な薬理学的手段である。
【0099】
外科手術直後に、先に適用された場合のタクロリムスがより効果的であることが見出され、この治療は確立している病理が回復することを要求しなかったという事実をおそらく反映する。この所見は、予防の方が組織学的変化の回復よりもはるかに効果的である他の線維増殖性障害(肝線維症等)における先行する研究と一致している。Friedman et al.,Hepatology 43:S82−S88(2006)。
【0100】
実施例2.ピルフェニドンを使用するリンパ浮腫の治療及び予防
ピルフェニドンは尾のリンパ浮腫を減少させる
マウス尾の表在リンパ管及び深部リンパ管の破壊は、外科手術の2週間後にほぼ80%の尾体積の増加をもたらした(
図19A、19B)。この時点での膨潤は主として間質液の蓄積に起因することが、以前に本出願人により示されている。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013)。尾における慢性的なリンパ管閉塞は、続く4週間にわたって、脂肪線維組織による間質液の段階的な置き換え及び炎症細胞の蓄積をもたらす。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013)。これらの病理学的な変化は臨床的リンパ浮腫を非常によく反映し、一旦リンパ浮腫が確立されれば、追加の少なくとも8〜10週間の間持続する。この知識に基づいて、これらの確立された軟組織変化を治療する意図で、リンパ浮腫が確立するように外科手術後に7週間待機し、次いでピルフェニドンによる治療を開始した。最初に全身的な治療により開始したが、これは、ピルフェニドンについての大部分の先行研究がこの投与経路を線維症の治療のために使用するからである。しかしながら、一旦効果的な治療としてピルフェニドンが確立されたならば、局部投与は、全身治療に起因する任意の可能性のある副作用を最小限にすることで好ましいので、局所製剤を開発した。全身的及び局所的なピルフェニドンによる治療は、対照と比較して、肉眼的な尾膨潤、尾体積、及び軟組織厚みを著しく減少させた(
図19A〜19C、19E;両方の治療群で、尾体積についてp<0.01及び厚みについてp<0.05)。
【0101】
ピルフェニドンは尾におけるリンパ機能を増加させる
尾モデルにおけるリンパ浮腫の治療のピルフェニドンの有効性を考慮して、次にピルフェニドンがリンパ管損傷後のリンパ機能を調節するかどうかを研究することにした。
99Tcリンパ管シンチグラフィー(放射性トレーサーを尾遠位部中に注射する技法)を使用して、90分間にわたる仙骨リンパ節による取り込みを測定した。全身的及び局所的なピルフェニドン治療動物における仙骨リンパ節の崩壊補正取り込みは、対照と比較して、ピルフェニドン治療動物における
99Tc取り込みのほぼ4倍の増加を実証した。加えて、全身的及び局所的に治療された動物は、ピークのリンパ節取り込みのほぼ4倍の増加を実証した(
図19G;両方についてp<0.01)。同様に、崩壊補正曲線の勾配の増加によって示されるように、全身的及び局所的に治療された動物における取り込みの率の増加があった(
図19H;それぞれp<0.01及びp<0.05)。
【0102】
ピルフェニドンはリンパ管損傷後の尾における炎症及び線維化を減少させる
慢性炎症は、臨床的なリンパ浮腫の組織学的特徴であり、炎症細胞(特にTヘルパー細胞)の蓄積の増加によって特徴づけられる。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013);Zampell et al.,PLoS ONE 7:e49940(2012);Ghanta et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.308:H1065−1077(2015);Olszewski et al.,Lymphology 23:23−33(1990)。このことと一致して、全身的及び局所的に治療された両方の動物では、対照と比較して、真皮及び皮下脂肪に浸潤する白血球の数が著しく減少したことが見出された。対照動物から採取されたリンパ浮腫性組織中の炎症細胞は毛細管及び集合リンパ管に非常に接近して位置したが、ピルフェニドン治療マウス中で実質的には存在しなかった。同様に、浸潤するCD3
+細胞及びCD4
+細胞の数の著しい減少が、本出願人により指摘された(
図20A、20D;両方についてp<0.001)。さらに、IFN−γタンパク質(強力な抗リンパ管新生性であることが以前に見出された、Tヘルパー(Th)1細胞産生サイトカイン)の蓄積の有意な減少が、指摘された(
図20J;p<0.01)。Kataru et al.,Immunity 34:96−107(2011);Shao et al.,J.Interferon Cytokine Res.26:568−574(2006)。
【0103】
加えて、リンパ管損傷から遠位の組織中でマクロファージが蓄積することが、以前に本出願人により示された。Zampell et al.,PLoS ONE 7:e49940(2012)。マクロファージが線維化(主としてTGF−β1を介する)を調節し、リンパ管新生(VEGF−Cを介する)を調節するので、マクロファージ浸潤に対するピルフェニドンの効果を分析した。対照と比較して、全身的及び局所的の両方のピルフェニドン治療によるリンパ浮腫性の尾組織において、F4/80
+細胞浸潤における差は見出されなかった。このことと一致して、ピルフェニドンによる治療後にVEGF−Cタンパク質蓄積における差は見出されなかった(
図20K;p=有意差なし)。総合すると、これらの所見は、リンパ管損傷後に多数の炎症細胞(特にT細胞)が皮膚/皮下のリンパ管に非常に接近して蓄積し、この応答が全身的及び局所的なピルフェニドン治療によって緩和されることを示す。
【0104】
リンパ浮腫に罹患する患者は進行性の軟組織線維化を有し、線維化の程度は疾患の重症度と臨床的に相関する。Tassenoy et al.,Lymphat.Res.Biol.7:145−151(2009)。他の線維化疾患と一致して、TGF−β1がリンパ浮腫における重要な線維化促進増殖因子であることが、以前に本出願人により示された。Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010)。加えて、TGF−β1がLECに対する直接的な抗リンパ管新生効果を有することが、本出願人により示された。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。したがって、TGF−β1
+細胞の浸潤及びその活性化された下流のシグナリング分子(pSMAD3)の細胞発現を分析した。全身的及び局所的なピルフェニドン治療群において、対照と比較して、TGF−β1
+細胞及びpSMAD3
+細胞の両方の蓄積の著しい減少が見出された(
図20B、20C、20E、20F;すべてについてp<0.001)。このことと一致して、ピルフェニドンによる治療後にTGF−β1タンパク質蓄積の蓄積減少が見出された(
図20I;p<0.05)。これは、両方の治療群において、対照マウスと比較して、真皮及び皮下のI型コラーゲン沈着の有意な減少と相関した(
図19D、19F;全身的についてp<0.001及び局所的にについてp<0.05)。
【0105】
集合リンパ管における構造変化(平滑筋の肥大、I型コラーゲンの厚い層、管腔の狭窄)が、リンパ浮腫に罹患するヒト患者において記載されているので、類似する変化について実験中の動物の集合リンパ管を検査した。Mihara et al.,PLoS One 7:e41126(2012)。これらのヒト研究と一致して、集合リンパ管(α−SMA
+/ポドプラニン
+)はI型コラーゲンの厚い層によって囲まれたが、ピルフェニドン治療動物は本質的に正常なリンパ管を有していた(
図20H)。
【0106】
ピルフェニドンは後肢におけるリンパ機能を増加させる
ピルフェニドンがリンパ機能を増加させるメカニズムを理解するために、マウス後肢のPLNDモデルを使用して、毛細リンパ管における皮膚逆流及び集合リンパ管の駆出能力を分析した。Blum et al.,Breast Cancer Res.Treat.139:81−86(2013)。PLNDの4週間後にNIRリンパ管造影法を使用して、2週間の全身的なピルフェニドンにより治療された動物は、ベヒクルに治療された対照と比較して、皮膚逆流及び毛細管管漏出が著しく少ないことが見出された(
図18A、白色矢印)。加えて、ピルフェニドン治療動物では、対照と比較して、集合リンパ管収縮率が有意に増加していた(2倍の増加;
図18A、18B;p<0.0015)。この応答は、尾モデルによる本出願人の所見に類似して、ピルフェニドンにより治療されたマウスにおける炎症細胞のリンパ周囲の浸潤の有意な減少と相関した(
図18E(上部パネル)、
図18F;p<0.01)。加えて、ピルフェニドンによる治療は、炎症細胞によるiNOSのリンパ周囲での発現の有意な減少をもたらした(
図18E(下部パネル)、
図18G;p<0.01)。炎症の状況におけるリンパ周囲のiNOS蓄積の増加は、正常な統合されたリンパ管収縮性のために重要な正常な一酸化窒素勾配を破壊することが示されているので、これは重要な所見である。Liao et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:18784−18789(2011)。これはピルフェニドンがどのようにリンパ管収縮性を改善するのかに関して重要なメカニズムを提供する。
【0107】
ピルフェニドンは側副リンパ管形成を増加させる
T細胞(特にTh1及びTh2サイトカイン)が、リンパ節のリンパ管新生及び創傷修復の間の炎症性リンパ管新生を強力に阻害することが公知であるので、次にピルフェニドンによる治療が側副リンパ管の形成を増加させるかどうかを決定することにした。Kataru et al.,Immunity 34:96−107(2011);Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008);Zampell et al.,Am.J.Physiol.Cell Physiol.302:C392−C404(2012);Savetsky et al.,PLoS One 10:e0126908(2015)。確かに、LYVE−1の免疫蛍光の染色を使用するリンパ管の組織学的分析及び同定により、尾及び後肢の両方におけるリンパ管密度の著しい増加が実証された(
図18D、18E;p<0.001)。対照と比較して、ピルフェニドン治療リンパ浮腫性の尾におけるVEGF−Cタンパク質分析の差が指摘されないが、抗リンパ管新生T細胞サイトカイン(IFN−γ及びTGF−β1等)の重大な減少があったので、このリンパ管新生応答はVEGF−C発現に非依存性であると思われた(
図20E、20I、20K;TGF−β1についてp<0.05、IFN−γについてp<0.01、及びVEGF−Cについてp=有意差なし)。
【0108】
ピルフェニドンを伴うTGF−β1免疫療法はリンパ機能を更に改善しない
ピルフェニドンの主要な作用メカニズムがTGF−β1活性の遮断であることをを考慮して、分離した研究において、PLND後のピルフェニドン治療の効果をTGF−β1免疫療法と比較した。Schaefer et al.,Eur.Respir.Rev.20:85−97(2011)。NIR画像化を使用して、TGF−β1免疫療法単独に加えて、TGF−β1免疫療法とピルフェニドンの組み合わせが、イソタイプ対照と比較して、皮膚逆流を減少させ、集合リンパ管収縮率を有意に増加させることが見出された。より重要なことには、免疫療法単独と比較して、組み合わせ療法による追加の利益は無く、利用した用量で最大にTGF−β1を阻害していたことが指摘される(
図21A〜21C;p=有意差なし)。同様に、フローサイトメトリーを使用して、TGF−β1免疫療法単独に加えて、TGF−β1免疫療法とピルフェニドンの組み合わせが、イソタイプ対照と比較して、リンパ管損傷から遠位でのTヘルパー細胞の組織内蓄積を有意に減少させたが、免疫療法単独と比較して、組み合わせ療法による追加はなかったことが見出された。
【0109】
T細胞からのTGF−β1のノックアウトは、リンパ管損傷後の尾における、尾リンパ浮腫を減少させ、リンパ機能を改善し、炎症及び線維化を減少させる
リンパ浮腫の状況におけるTGF−β1の細胞性源を決定するために、T細胞及び骨髄球からのTGF−β1産生の選択的ノックアウトを備えた遺伝子導入マウスを開発した。これらの遺伝子導入マウスの表現型の確認は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、対照マウスと比較して、T細胞
cre及び骨髄系
creマウスからそれぞれ単離されたT細胞及び骨髄系細胞からのTGF−β1発現の有意な減少を示したことで確認された(
図21A;両方についてp<0.05)。尾の外科手術を実行し、外科手術の6週間後に解析を実行した。T細胞
creマウスは、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、肉眼的な尾膨潤、尾体積、及び脂肪線維の厚みが著しく減少していた(
図21B〜21D;尾体積及びpについてp<0.01、厚みについて<0.05)。
99Tcリンパ管シンチグラフィーの解析により、T細胞
creマウスの仙骨リンパ節におけるトレーサーの崩壊補正取り込みが、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、ほぼ4倍に増加したことが実証された。同様に、T細胞
creマウスにおいて、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、ピークのリンパ節取り込みに加えてトレーサー取り込み率の増加があった(
図21E〜21F;それぞれp<0.05及びp<0.01)。
【0110】
以前に、リンパ浮腫の尾モデルにおけるTGF−β1免疫療法が、線維化の減少に加えて、炎症(特にTヘルパー細胞の組織浸潤)の減少をもたらすことが、本出願人により示された。Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010)。興味深いことには、T細胞
creマウスは、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、真皮及び皮下脂肪を浸潤するTヘルパー細胞の数を著しく減少させた(
図22A、22B;p<0.01)。さらに、ピルフェニドン治療動物における本出願人の所見に類似して、IFN−γタンパク質の蓄積の有意な減少が指摘された(
図22D;p<0.01)。TGF−β1
+細胞及びタンパク質蓄積に加えて、その活性化された下流のシグナリング分子(pSMAD3)の細胞発現の解析により、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、T細胞
creマウスにおいて著しく減少することが見出された(
図22A、22C、22E;pSMAD3についてp<0.01及びTGF−β1タンパク質についてp<0.05)。すべての群の間で、F4/80
+細胞又はVEGF−Cタンパク質蓄積において差は見出されなかった(
図22F;p=有意差なし)。これは、T細胞
creマウスにおいて、骨髄系
creマウス及び対照マウスと比較して、真皮及び皮下のI型コラーゲン沈着の有意な減少と相関した(
図21D;p<0.05)。骨髄系
creマウスにおいて炎症、線維化、及び抗リンパ管新生性サイトカイン発現が減少する傾向性があるように思われたが、それは有意ではなかった。リンパ浮腫におけるTGF−β1の主要な細胞性源がT細胞であると指摘されるので、これらの所見は重要である。
【0111】
LECのTGF−β1応答性の低下は、リンパ管損傷後の尾における尾リンパ浮腫、炎症、又は線維化を変化させなかった
リンパ浮腫の状況におけるLECに対するTGF−β1の直接効果を分析し、インビボのモデルへ本出願人の先行するインビトロの所見を適用するために、FLT4
Creマウスで尾の外科手術を実行し、外科手術の6週間後に解析を実行した。Avraham et al.,Plast.Reconstr.Surg.124:438−450(2009)。これらの遺伝子導入マウスの表現型の確認を、LYVE−1及びpSMAD3についてのリンパ節に対する染色により確認した。FLT4
CreマウスはLEC上に検出可能なpSMAD3染色を有しておらず、TGF−β1へのLECの不反応性を示す(
図23A、白色矢印はpSMAD3
+LECを示す)。FLT4
Creマウスは、対照マウスと比較して、肉眼的な尾膨潤、尾体積、及び脂肪線維の厚みにおける差を有していなかった(
図23C〜23E、23G;p=有意差なし)。興味深いことに、そして本出願人の先行するインビトロの所見に類似して、創傷の架橋部分においてリンパ管密度の増加が見出された(
図23H;p<0.01)。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。創傷の架橋部分は皮膚リンパ管がすべて外科手術により除去された領域である。したがって、これは、リンパ浮腫の状況におけるTGF−β1へのLECの不反応性の結果としての改善されたリンパ管新生を指摘する。
【0112】
FLT4
Creマウスと対照マウスとの間の炎症性の浸潤細胞及びサイトカイン蓄積の解析により、CD4
+細胞及びIFN−γタンパク質蓄積(両方についてp=有意差なし)、F4/80
+細胞又はVEGF−Cタンパク質蓄積(p=有意差なし)、TGF−β1
+細胞及びタンパク質蓄積(
図23B;p=有意差なし)に加えて、その活性化された下流のシグナリング分子(pSMAD3)の細胞発現(
図23G;p=有意差なし)において差は示されなかった。同様に、I型コラーゲン沈着は、FLT4
Creマウスと対照マウスとの間に有意に異なっていなかった(
図23F、23G;p=有意差なし)。これらの所見により、炎症、線維化及び最終的にリンパの機能不全の促進におけるTGF−β1の主要効果は細胞間マトリックス中にあり、一方で直接的な抗リンパ管新生はリンパ浮腫の状況において比較的マイナーな役割を果たすことが示唆される。
【0113】
方法
研究デザイン
本出願人の仮説は、TGF−β1の阻害によってリンパ浮腫を治療し、それによって炎症及び線維化の両方を減少させることができるということであった。複数の異なる動物モデルにおいてこの仮説の異なる態様を調査して、傷害後の膨潤、炎症、線維化、リンパ管機能、及びリンパ管新生を詳細に査定することを可能にした。成体メス(10〜14週齢)C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)を、光及び温度を制御した病原体不含有環境において維持し、自由摂食させた。すべての研究はMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの研究機関内動物実験委員会(IACUC)によって認可された。尾の外科手術を受けた後に、尾遠位部が壊死したならば、動物を実験から除外した。動物を治療群又は対照群へ無作為化する前に、この評価を行った。各々の実験を最低でも6〜8匹の動物を使用して実行し、アッセイを三重で実行した。すべてのカウントは、介入に対して盲検化された審査員によって実行した。
【0114】
動物モデル及び治療
十分に記載されたリンパ浮腫のマウス尾モデルを使用するリンパアブレーション(尾の中間部分で2mmの環状の皮膚切除を介して尾の表在リンパ系及び深部リンパ系を切除する)を、動物に行った。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008);Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010);Rutkowski et al.,Microvasc.Res.72:161−271(2006);Tabibiazar et al.,PLoS Med.3:e254(2006)。本出願人のグループ及び他のグループは、このモデルが、少なくとも手術後10週間の間、尾遠位部の持続的リンパ浮腫、リンパ機能における重度の不全、及び臨床的なリンパ浮腫の組織学的特色(例えば慢性炎症、脂肪の沈着、線維化)をもたらすことを以前に示した。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008);Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010);Rutkowski et al.,Microvasc.Res.72:161−271(2006);Tabibiazar et al.,PLoS Med.3:e254(2006)。外科手術の7週間後に(リンパ浮腫が確立された時)、動物を実験(ピルフェニドン)群又は対照群へ無作為化し、以下で略述されるように、3週間の間1日1回治療し続いて解析した。
【0115】
尾モデルは、組織学的組織変化(すなわち線維化及び脂肪沈着)の分析のために有用であるが、集合管が小口径であることに起因して、このモデルはリンパ管のポンプ機能の分析については理想的ではない。したがって、集合リンパ管のリンパの駆出能力の回復におけるピルフェニドンの有効性を決定するために、及びリンパ管損傷ゾーンから遠位の組織におけるリンパの増殖に対するこの治療の効果を分析するために、以前に記載されたように膝窩リンパ節郭清(PLND)を実行した。Blum et al.,Breast Cancer Res.Treat.139:81−86(2013)。簡潔には、後足の中への50μlの3%のエバンスブルーの注入後に、リンパ管を可視化した。膝窩領域中の集合リンパ管を膝窩リンパ節と一緒に切除した。外科手術の2週間後に、動物を、2週間の間の1日1回の全身的なピルフェニドン又は対照による治療へ無作為化し、続いて解析した。
【0116】
全身的な実験において、マウスは、PBS中の10%のDMSO/0.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)中で溶解された用量400mg/kgのピルフェニドン(Cayman Chemical、Ann Arbor、MI)、又はベヒクル(PBS中の10%のDMSO/0.5%のCMC)のいずれかにより、経口的に毎日治療した。この用量は、線維化の様々なモデルにおいて効果的な治療レジメンを示す先行研究に基づいて決定した。Oku et al.,Eur.J.Pharmacol.590:400−408(2008);Kakugawa et al.,Eur.Respir.J.24:57−65(2004);Tanaka et al.,Chest 142:1011−1019(2012)。ピルフェニドンの局所製剤を、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのResearch Pharmacy Core Facilityと共同して開発した。これらの実験において、マウスを41%のワセリン中の1mg/mlの局所的なピルフェニドン(Cayman Chemical、Ann Arbor、MI)により毎日治療し、一方で対照動物にベヒクル単独(41%のワセリン)を投与した。
【0117】
リンパ浮腫におけるTGF−β1の細胞性源を調査するために、T細胞及び骨髄球からのTGF−β1産生の選択的ノックアウトを備えた非誘導性遺伝子導入マウスを開発した。Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から、B6.Cg−Tg(Lck−cre)548Jxm/J(Lck(リンパ球タンパク質チロシンキナーゼ)プロモーターの制御下でCreを発現し、loxPが隣接する対象となる配列の胸腺細胞特異的切り出しを可能にする)を購入した。Lck遺伝子は、主としてTリンパ球(Lck遺伝子が細胞内シグナル伝達経路に関与するタンパク質のチロシン残基をリン酸化するところ)によって発現される。加えて、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から、B6.129P2−Lyz2tm1(cre)Ifo/J遺伝子導入系統(リゾチーム2遺伝子(Lyz2)の第1のコーディングATGの中へ核局所化Creリコンビナーゼが挿入されたLysMcreノックイン対立遺伝子を備え、内在性Lyz2遺伝子機能を消失させ、NLS−Cre発現を内在性Lyz2プロモーター/エンハンサーエレメントの制御下に置く)を購入した。これらの遺伝子導入マウスの各々を、Tgfb1
tm2.1Doe/J変異マウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)(TGF−β1遺伝子のエクソン6に隣接するloxP部位を保有する)と交配した。結果として、Cre媒介性の組換えは、Tリンパ球系譜及び骨髄系細胞系譜(単球、成熟マクロファージ及び顆粒球が含まれる)中での標的化された遺伝子(TGF−β1)の欠失をもたらす。
【0118】
LECに対するTGF−β1の直接効果を調査するために、LEC上での非機能的なTGF−β受容体を備えた誘導可能な遺伝子導入マウスを開発した。FLT4creマウス(Sagrario Ortega博士の寄贈)を使用し、これらのマウスにおけるVEGFR−3のFlt4プロモーターは、エストロゲン受容体タイプ2(ER2)の制御下にあり、成体マウスにおいてすべてのLECによって高発現される。Martinez−Corral et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109:6223−6228(2012)。FLT4creマウスを、B6;129−Tgfbr2tm1Karl/J(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)変異マウス(トランスフォーミング増殖因子ベータ受容体IIのエクソン4に隣接するloxP部位を持つ)と交配した。タモキシフェン(300mg/kg/日、皮下で5日間)を使用して、成体メスFLT4creマウスにおいて、Cre発現を誘導した。
【0119】
すべての遺伝子導入マウスについて、両方の導入遺伝子の遺伝子発現をジェノタイピング(Transnetyx、Memphis、TN)によって確認し、二重ホモ接合体マウスを6世代にわたって戻し交配して一貫性を確実にした。加えて、本出願人の研究室は、PCRを使用する遺伝子発現、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用するタンパク質定量、及び組織学的染色により、新しく開発した遺伝子導入モデルのすべてについて、確認のための表現型研究を実行した(以下を参照)。
【0120】
尾体積、リンパ管シンチグラフィー、及び組織学的分析
尾体積は、リンパ管損傷ゾーンから遠位で複数のデジタルキャリパーによる尾円周測定を使用して分析し、以前に記載されたように円錐台式を使用して計算した。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。リンパ管シンチグラフィーも以前に記載されたように実行して、尾遠位部の中へ50μlの濾過されたテクネチウム(Tc
99m)硫黄コロイドを注射することによって仙骨リンパ節へのリンパの流れを定量化した。Avraham et al.,FASEB J.27:1114−1126(2013)。X−SPECTカメラ(Gamma Medica、Northridge、CA)を使用して、崩壊補正取り込みを仙骨リンパ節において記録し、ASIProソフトウェア(CTI Molecular Imaging、Knoxville、TN)を使用して対象となる領域の解析を実行した。Clavin et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.295:H2113−H2127(2008)。
【0121】
組織学的分析及び免疫組織化学的分析のために、尾切片を採取し、4%の氷冷パラホルムアルデヒド(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)中で短時間固定し、5%のエチレンジアミン四酢酸(EDTA;Santa Cruz、Santa Cruz、CA)を使用して脱灰し、パラフィン中に包埋した。標準的な技法を使用してヘマトキシリン−エオシン切片を調製し、1群あたり最低6匹の動物において2名の盲検化された審査員により尾の4つの四半部分の皮膚及び軟組織の厚みを測定することによって、皮下組織の厚みを標準化された組織学的横断切片において定量化した。
【0122】
免疫組織化学的染色を本出願人の確立した技法に従って実行した。Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010)。パラフィン包埋組織を湿らせ、抗原のマスキングの除去を沸騰クエン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を使用して実行し、続いて2%のBSA/20%動物血清により内在性ペルオキシダーゼ活性をクエンチングした。組織を一次抗体により4℃で一晩インキュベーションした。免疫組織化学の染色のために使用された一次抗体は、LYVE−1、CD45、及びCD4(すべてR&D、Minneapolis、MNから)、F4/80、TGF−β1、pSMAD3、ポドプラニン(すべてAbcam、Cambridge、MAから)、アルファ−SMA(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、iNOS(BD biosciences、San Jose、CA)、ならびにCD3(Dako North America,Inc.Carpinteria、CA)を含んでいた。すべての二次抗体はVector Laboratoriesから得た。スライドは、Miraxスライドスキャナー(Zeiss、Munich、ドイツ)を使用してスキャンした後に分析した。I型コラーゲンの免疫組織化学を、マウスI型コラーゲンへの抗体(Abcam、Cambridge、MA)を使用して実行し、Metamorphオフラインソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して、固定した閾値内で陽性染色された真皮面積対全組織面積の比として定量化した。細胞カウントは、2名の盲検化された審査員によって、最小で1群あたり4〜6匹の動物及び4〜5HPF/動物で高倍率切片上で実行した。
【0123】
タンパク質分析
タンパク質分析のための尾組織をリンパ管損傷から1.5cm遠位で採取し、急速凍結し、粉砕し、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害因子(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)と混合された組織抽出タンパク質試薬(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)により抽出した。サンプル(n=3〜5動物/群)からの20〜30mgのタンパク質をELISAによって分析して、製造業者のプロトコール(eBioscience、San Diego、CA)に従ってTGF−β1、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、及び血管内皮増殖因子C(VEGF−C)を定量化した。すべての実験は二重で実行した。
【0124】
リンパ管機能のインビボ画像化
後肢の集合リンパ管の収縮性を査定するために、15μlの0.15mg/mlのインドシアニングリーン(ICG)(Sigma−Aldrich、Saint Louis、MO)を後足の背面において皮内で注射した後、近赤外画像化(NIR)によりビデオを録画した。注入後20分間放置して集合管の中への取り込みを可能にした。次いでカスタムメイドのEVOS EMCCDカメラ(Life Technologies、Carlsbad、CA)及びLED光源(CoolLED、Andover、英国)を使用して、動物を画像化した。Zeiss V12 Stereolumar顕微鏡(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)を使用してビデオ画像を得た。8秒ごとに30分間画像を得た。リンパ管のポンプ機能は、Fijiソフトウェア(National Institutes of Health、Bethesda、MDによって開発された無料のオープンソースデータ解析ツール)を使用して分析した。対象となる領域を主要な集合管にわたって選択し、ノイズを引いた蛍光強度を経時的にプロットした。内因性のポンプ機能を評価するために、各々のビデオの最初の10分間はポジショニングからのリンパ管の刺激に起因して除外し、各々のビデオの最後の20分間のみを分析した。ポンプ機能は毎分の拍動で定量化した。
【0125】
遺伝子発現PCR
T細胞及び骨髄球からのTGF−β1のノックアウトの表現型を確認するために、脾臓をこれらのマウスから採取した。正の選択のCD3磁性ビーズ(Miltenyi Biotec、Cambridge、MA)を使用して製造者の推奨に従って、T細胞
cre遺伝子導入マウスの脾臓から、T細胞を単離した。同様に、正の選択のCD11b磁性ビーズ(Miltenyi Biotec、Cambridge、MA)を使用して製造者の推奨に従って、骨髄系
cre遺伝子導入マウスの脾臓から、骨髄系細胞を単離した。次いで単離された細胞をTRIzol中に設置した。標準的なTRIzol抽出手順を使用してRNAを単離した。Chomczynski et al.Anal.Biochem.162:156−159(1987);Ribaudo et al.,Curr.Protocols Immunol.,(Coligan et al.eds.)Chapter 10,Unit 10 11(2001)。TaqMan逆転写試薬(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して逆転写、続いてTaqManユニバーサルマスターミックス(Applied Biosystems)及びLightCyclerサーモサイクラー(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)を使用して定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を実行した。TGF−β1発現レベルをGAPDHに対して正規化した。実験は三重で実行した。
【0126】
TGF−β1活性の修飾
ピルフェニドンの主要な作用メカニズムがTGF−β1活性の遮断であることを先行研究が示唆したので、分離した研究において、PLND後のピルフェニドン治療の効果をTGF−β1免疫療法と比較した。Schaefer et al.,Eur.Respir.Rev.20:85−97(2011)。重要なことには、TGF−β1に対するモノクローナル抗体がTGF−β1生物学的活性の中和に効果的であるだけでなく、この治療がリンパ浮腫を著しく減少させ、リンパ機能を改善することが、以前に本出願人によって示された。Avraham et al.,Am.J.Pathol.177:3202−3214(2010)。上で略述されたように動物にPLNDを行い、外科手術の2週間後に、TGF−βモノクローナルマウス中和抗体単独(TGFmab;クローン1D11;Bio−x−cell、West Lebanon、NH)又は150μlのPBS中で希釈した用量5mg/kgのピルフェニドン+TGFmabのいずれかによる治療へ無作為化し、1週間あたり3回腹腔内に送達した。Ruzek et al.,Immunopharmacol.Immunotoxicol.25:235−257(2003)。対照動物は、ピルフェニドンについてのベヒクル対照、又はTGFmabと同じスケジュールで腹腔内で送達された非特異的イソタイプ抗体のいずれかにより治療した。
【0127】
統計解析
GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)ソフトウェアを使用して、統計解析を実行した。Studentのt検定を2つの群の間で差を比較するために使用した。事後検定による二元配置ANOVAを使用して複数のタイムポイントの間の解析(リンパ管シンチグラフィー)を実行して、個々の群を比較した。記述的分析及びグラフ法を使用して結果を分析及び要約した。データは特に断りのない限り平均±標準偏差として表示し、p<0.05で有意であると判断した。
【0128】
結論
この研究の1つの目的は、リンパ浮腫及びリンパ管損傷の前臨床マウスモデルにおいてリンパ浮腫の治療に対するピルフェニドンの有効性を分析することであった。2つの異なるマウスモデルを使用して、確立されたリンパ浮腫の全身的及び局所的なピルフェニドン治療は、線維化を著しく減少させること及びリンパ機能を改善することが示された。ピルフェニドンによる治療は、リンパ節切除後に、慢性的な炎症反応を減少させ、リンパ集合管の駆出能力を著しく増加させる。加えて、ピルフェニドンは、リンパ管損傷後の線維化の予防に極めて効果的であり、おそらくこの応答はTGF−β1の阻害に対して二次的なものである。本出願人のPLNDモデルにおいてTGF−β1免疫療法を使用して、ピルフェニドンの主要な効果はTGF−β1阻害であり、TGF−β1の最大阻害は利用した用量で達成されたことが示された。さらに、本出願人のマウスのリンパ浮腫の尾モデルを使用して、T細胞(特にCD4+細胞)がリンパ浮腫の状況においてTGF−β1の主な源であることが示される。加えて、Th1及びTh2のサイトカインと一緒にT細胞からのTGF−β1の欠損がリンパ浮腫に誘導された慢性炎症(CD4
+細胞等)を減少させたことが、本出願人によって示された。
【0129】
実施例3.テリフルノミドを使用するリンパ浮腫の治療及び予防
リンパ管損傷後のリンパの機能不全の予防におけるテリフルノミドの有効性を試験するために、十分に記載された膝窩リンパ節郭清(PLND)(膝窩リンパ節は小さな皮膚切開を使用して除去される)のマウスモデルを使用した。確立されたリンパ浮腫の治療におけるこの治療の有効性を試験するために、リンパ浮腫のマウス尾モデル(尾の表在リンパ系及び深部リンパ系が中断され、動物は臨床疾患と一致する組織学的変化を発達させる)を使用した。
【0130】
動物をPLND群又は尾リンパ浮腫群のいずれかへ無作為化し、外科手術の2週間後に、2〜4週間(PLND後に2週間;尾リンパ浮腫後に4週間)の間、テリフルノミド(27mg/ml;Tocris Bioscience、Minneapolis、MN)又はベヒクル対照(Aquaphor/グリセリン軟膏)の局所製剤により1日1回治療した。局所製剤を、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのResearch Pharmacy Core Facilityと共同して開発した。次いでマウスを屠殺し、リンパ機能、線維化、リンパ管新生をすべて標準的なアッセイを使用して査定した。
【0131】
尾のリンパアブレーション後の局所的なテリフルノミドによるマウスの治療は、リンパ浮腫及び脂肪線維の沈着(疾患の組織学的特徴)を著しく減少させた(
図24)。対照マウスは尾の明らかな膨潤及び線維化を有していたが(非対称性のコラーゲン沈着からもたらされる固定した「J型の立体配置」)、テリフルノミド治療マウスは、リンパ管損傷の6週間後に本質的に正常な外見の尾を有していた(
図24A)。これらの肉眼的な変化は、テリフルノミド治療マウスの尾体積のほぼ6倍の減少に対応した(
図24B)。対照マウス尾の組織学的横断面は、脂肪線維組織の有意な蓄積を示し、これとは対照的に、テリフルノミド治療マウスは最小の脂肪組織沈着を有していた(
図24C、24D)。この所見はI型コラーゲンの免疫蛍光染色により確認され、傷害の6週間後の対照動物におけるコラーゲン線維による表在リンパ管の不整狭窄及びテリフルノミド治療動物におけるコラーゲン沈着の著しい減少を実証した(
図25A、25B)。加えて、テリフルノミドは集合リンパ管を囲むアルファ平滑筋細胞の増殖を減少させ、したがってこれらの管の多くの正常な解剖学的立体配置を維持した(
図25C、25D)。
【0132】
テリフルノミド療法がCD4+細胞の浸潤を減少させたかどうかを決定するために、次にCD4を標的とする免疫蛍光抗体を使用して対照マウス及び治療マウスからの組織切片を分析した(
図26A、26B)。この解析により、対照と比較して、テリフルノミド治療動物から採取されたCD4+細胞浸潤が尾組織において著しく減少したことが実証された。実際、テリフルノミド療法は、浸潤するCD4+細胞の数を8倍を越えて減少させた(P<0.001)。
【0133】
最近の研究により、CD4+細胞が強力な抗リンパ管新生性サイトカイン(インターフェロンガンマ、インターロイキン−4(IL4)、及びIL13が含まれる)を産生することが示された。このことと一致して、インドシアニングリーン(ICG)の近赤外画像化を使用して査定されるように、PLNDを行った動物のテリフルノミドによる治療は、傷害ゾーンをバイパスする側副リンパ管の形成を著しく増加させる(4.5倍;p<0.001)ことが見出された(
図27A)。同様に、尾のリンパアブレーション後のテリフルノミドによるマウスの治療は、対照と比較して、傷害ゾーンを交差する新しく形成されたリンパ管の有意な増加をもたらした(
図27B)。テリフルノミド動物における側副リンパ管の再生は、真皮におけるリンパ管の漏出性を有意に減少させ、大量の間質液が近位へ伝導されることを可能にした(
図28)。
【0134】
テリフルノミド治療マウスの新しく形成されたリンパ管及び既在のリンパ管の病理学的変化の減少は、樹状細胞(DC)の移動によって分析されるように、リンパ機能の著しい改善へ転換される。DCはリンパ管経由で末梢組織から領域リンパ節へ移動して、抗原を提示し適応的免疫応答を促進する。標準的なアッセイ(FITCペインティング)を使用するPLND後のテリフルノミド動物におけるDCのトラフィッキングの解析により、対照と比較して、鼠径リンパ節(膝窩リンパ節に後続するつながりにおける次のリンパ節)へトラフィッキングしたDCの数における5倍を超える増加が実証された(
図29A、29B)。DCはリンパ管のみを介してトラフィッキングするので、この所見はテリフルノミドがリンパ機能を増加させる実質的証拠を提供する。
【0135】
集合リンパ管は、平滑筋細胞の包囲による能動的収縮及び逆流を予防する一方向の弁を使用して、リンパを近位へ伝導する。テリフルノミドがリンパ管の輸送機能を増加させ、リンパ管を囲むアルファ平滑筋細胞の線維化/増殖を減少させるという本出願人の所見と一致して、この治療が集合リンパの駆出を著しく増加させることも見出された(
図30)。PLND後のテリフルノミド治療は、主要な後肢集合リンパ管の頻度をほぼ2倍にし、それによってリンパ液の近位への伝播を増加させた。
【0136】
本出願人は、リンパ浮腫の予防及び治療のためのテリフルノミドの使用を初めて記載する。本所見により、テリフルノミドによる治療がリンパ管損傷後のリンパ浮腫及び脂肪線維組織の沈着を実質的に減少させることが示される。加えて、この効果が、CD4+T細胞の浸潤の減少、側副リンパ管の形成の増加、リンパ管の漏出性の減少、及びリンパ機能の改善と相関することが示される。これらの所見がリンパ浮腫(以前に緩和介入でのみ治療されていた疾患)のための標的化療法を提供するので、これらは新規のものである。
【0137】
実施例4.カプトプリルを使用するリンパ浮腫の治療及び予防
上述のように、PLNDモデルを使用して、リンパ管損傷後のリンパの機能不全の予防における、及びマウス尾モデルを使用して、確立されたリンパ浮腫の治療における、カプトプリルの有効性を試験した。動物を、2〜4週間(PLND後に2週間;尾リンパ浮腫後に4週間)の間、カプトプリル(5%)又はベヒクル対照(ワセリン又はAquaphor/グリセリン軟膏)の局所製剤により1日1回治療した。次いでマウスを屠殺し、リンパ機能、線維化、及びリンパ管新生をすべて標準的なアッセイを使用して査定した。局所的なカプトプリルによる治療は、PLNDモデルにおいてリンパ機能の改善及び尾モデルにおいてリンパ浮腫の減少をもたらした。結果を
図31〜53中で示す。
【0138】
実施例5.薬物の組み合わせを使用するリンパ浮腫の治療及び予防
PLND及びマウス尾モデルを使用して、実施例1〜4中で記載されたように、抗線維化薬物又はベヒクル対照の組み合わせを含む局所製剤を動物に投与する。治療組成物を表1中で示す。
【表1】
【0139】
2〜4週間(PLND後に2週間;尾リンパ浮腫後に4週間)の間1日1回マウスを治療した。次いでマウスを屠殺し、リンパ機能、線維化、リンパ管新生を標準的なアッセイを使用して査定する。PLNDモデルにおいて、局所的な抗線維化薬物の組み合わせによる治療は、単一の抗線維化薬物による治療と比較して、リンパ機能の改善をもたらす。同様に、尾モデルにおいて、局所的な抗線維化薬物の組み合わせによる治療は、単一の抗線維化薬物による治療と比較して、リンパ浮腫の減少をもたらす。より効果的であることに加えて、組み合わせは相乗効果をもたらし、その結果、組み合わせで投与された各々の薬物の有効な用量は、単独で投与された各々の薬物の有効な用量よりも低い。
【0140】
先の具体的な実施形態の記載は、他者が、様々な適用のために、不必要な実験なしに、本発明の一般的な概念から逸脱することなしに、当該技術分野の技能内の知識の適用によって、かかる具体的な実施形態を容易に修飾及び/又は適合させることができるという、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするだろう。したがって、かかる適合及び修飾は、本明細書において提示された教示及び指針に基づいて、開示した実施形態の等価物の意味及び範囲内であることが意図される。本明細書における語法又は用語は、本明細書の用語又は語法が教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるように、記載の目的のためのであり、限定するのではないことを理解すべきである。本発明は以下の請求項によって更に記載される。
本発明は以下の態様を含む。
項目[1]
(i)有効量の1つ又は複数の抗T細胞剤と;
(ii)有効量の1つ若しくは複数の抗TGF−β1剤及び/又は有効量の1つ若しくは複数の抗アンジオテンシン剤と
を含む、医薬組成物であって;
局所投与のために製剤化される、前記医薬組成物。
項目[2]
前記抗T細胞剤が、タクロリムス、テリフルノミド、レフルノミド、シクロスポリン、ピメクロリムス、デニロイキン・ジフチトクス、及びバシリキシマブからなる群から選択される、項目[1]に記載の医薬組成物。
項目[3]
前記抗TGF−β1剤がピルフェニドンである、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[4]
前記抗アンジオテンシン剤がアンジオテンシン変換酵素(ACE)アゴニストである、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[5]
前記抗アンジオテンシン剤が、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、シラザプリル、フォシノプリル、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、及びフィマサルタンからなる群から選択される、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[6]
タクロリムスを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[7]
約0.01%〜約1%のタクロリムスを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[8]
約0.05%〜約0.2%のタクロリムスを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[9]
ピルフェニドンを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[10]
約0.1mg/ml〜約5mg/mlのピルフェニドンを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[11]
約0.5mg/ml〜約2mg/mlのピルフェニドンを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[12]
テリフルノミドを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[13]
約10mg/ml〜約50mg/mlのテリフルノミドを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[14]
約20mg/ml〜約30mg/mlのテリフルノミドを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[15]
レフルノミドを含む、項目[1]〜[11]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[16]
約1%〜約20%のレフルノミドを含む、項目[15]に記載の医薬組成物。
項目[17]
約5%〜約15%のレフルノミドを含む、項目[16]に記載の医薬組成物。
項目[18]
カプトプリルを含む、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[19]
約1%〜約20%のカプトプリルを含む、項目[18]に記載の医薬組成物。
項目[20]
約5%〜約15%のカプトプリルを含む、項目[19]に記載の医薬組成物。
項目[21]
前記組成物が、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、ムース、泡、ラッカー、懸濁物、液体、及びスプレーから選択される形態である、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[22]
前記組成物が軟膏の形態である、項目[21]に記載の医薬組成物。
項目[23]
浮腫の治療又は予防における使用のための、先行項目のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目[24]
前記浮腫がリンパ浮腫である、項目[23]に記載の医薬組成物。
項目[25]
浮腫を治療又は予防する方法であって、タクロリムス、テリフルノミド、レフルノミド、シクロスポリン、ピメクロリムス、デニロイキン・ジフチトクス、バシリキシマブ、ピルフェニドン、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、シラザプリル、フォシノプリル、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、及びフィマサルタンからなる群から選択される、有効量の1つ又は複数の薬物を含む医薬組成物をそれを必要とする被験体へ投与することを含む、前記方法。
項目[26]
前記医薬組成物が、
(i)タクロリムス、テリフルノミド、レフルノミド、シクロスポリン、ピメクロリムス、デニロイキン・ジフチトクス、及びバシリキシマブからなる群から選択される、有効量の1つ又は複数の抗T細胞剤と;
(ii)ピルフェニドン、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、シラザプリル、フォシノプリル、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、及びフィマサルタンからなる群から選択される、有効量の1つ若しくは複数の抗TGF−β1剤及び/又は抗アンジオテンシン剤と
を含む、項目[25]に記載の方法。
項目[27]
前記医薬組成物がタクロリムスを含む、項目[25]又は項目[26]に記載の方法。
項目[28]
前記医薬組成物がピルフェニドンを含む、項目[25]〜[27]のいずれか一項に記載の方法。
項目[29]
前記医薬組成物がテリフルノミドを含む、項目[25]〜[28]のいずれか一項に記載の方法。
項目[30]
前記医薬組成物がレフルノミドを含む、項目[25]〜[28]のいずれか一項に記載の方法。
項目[31]
前記医薬組成物がカプトプリルを含む、項目[25]〜[30]のいずれか一項に記載の方法。
項目[32]
前記医薬組成物が局所的に投与される、項目[25]〜[31]のいずれか一項に記載の方法。
項目[33]
前記医薬組成物が0.01%〜1%のタクロリムスを含む、項目[32]に記載の方法。
項目[34]
前記医薬組成物が0.05%〜0.2%のタクロリムスを含む、項目[33]に記載の方法。
項目[35]
前記医薬組成物が0.1mg/ml〜5mg/mlのピルフェニドンを含む、項目[32]〜[34]のいずれか一項に記載の方法。
項目[36]
前記医薬組成物が0.5mg/ml〜2mg/mlのピルフェニドンを含む、項目[35]に記載の方法。
項目[37]
前記医薬組成物が10mg/ml〜50mg/mlのテリフルノミドを含む、項目[32]〜[36]のいずれか一項に記載の方法。
項目[38]
前記医薬組成物が20mg/ml〜30mg/mlのテリフルノミドを含む、項目[37]に記載の方法。
項目[39]
前記医薬組成物が1%〜20%のレフルノミドを含む、項目[32]〜[36]のいずれか一項に記載の方法。
項目[40]
前記医薬組成物が5%〜15%のレフルノミドを含む、項目[39]に記載の方法。
項目[41]
前記医薬組成物が、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、ムース、泡、ラッカー、懸濁物、液体、及びスプレーから選択される形態である、項目[32]〜[40]のいずれか一項に記載の方法。
項目[42]
前記医薬組成物が軟膏の形態である、項目[41]に記載の方法。
項目[43]
前記医薬組成物が少なくとも1日1回局所的に投与される、項目[23]〜[42]のいずれか一項に記載の医薬組成物又は方法。
項目[44]
前記医薬組成物が少なくとも1日2回局所的に投与される、項目[43]に記載の医薬組成物又は方法。
項目[45]
前記医薬組成物がリンパ管損傷の約6週間以内に予防的に投与される、項目[23]〜[44]のいずれか一項に記載の医薬組成物又は方法。
項目[46]
前記医薬組成物がリンパ管損傷の約2週間以内に予防的に投与される、項目[45]に記載の医薬組成物又は方法。