【文献】
Hum. Gene Ther., 1999, Vol.10, p.2651-2655
【文献】
Int. Immunol., 1997, Vol.9, No.4, p.627-635
【文献】
Hum. Gene Ther. Methods, 2012, Vol.23, p.376-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
FASエンドドメインに融合された複数回貫通型膜貫通タンパク質を含むキメラタンパク質であって、前記複数回貫通型膜貫通タンパク質が細胞外リガンドに結合して、前記FASエンドドメインの活性化をもたらし、前記複数回貫通型膜貫通タンパク質が、アミノ末端エンドドメインもしくはカルボキシ末端エンドドメインを欠く先端切除バージョンのCD20である、キメラタンパク質。
前記ベクターを標的細胞の形質導入に使用する場合、前記標的細胞が、請求項1〜7のいずれかに記載のキメラタンパク質およびキメラ抗原受容体またはT細胞受容体を共発現するように、前記目的のヌクレオチドがキメラ抗原受容体またはT細胞受容体をコードする、請求項11に記載のベクター。
請求項13〜15のいずれかに記載の細胞を作製するための方法であって、請求項10〜12のいずれかに記載のベクターを単離された細胞に形質導入またはトランスフェクトする工程を含む、方法。
前記病理学的免疫応答が、以下の群:移植片対宿主病;オンターゲットオフ腫瘍毒性;免疫活性化症候群;およびリンパ増殖性障害から選択される、請求項20に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な説明)
キメラタンパク質
本発明は、自殺遺伝子として作用するキメラタンパク質に関する。キメラタンパク質を発現する細胞は、細胞外リガンドの投与によって、インビボまたはインビトロで排除され得る。
【0048】
キメラタンパク質は、FASエンドドメインに融合された複数回貫通型膜貫通タンパク質を含む。
【0049】
キメラタンパク質は、配列番号1もしくは配列番号2として示されている配列またはその変異型を含み得る。
配列番号1
【化1】
配列番号2
【化2】
【0050】
変異型配列は、配列が有効な自殺遺伝子を提供する限り、配列番号1または2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し得る。すなわち、配列が、細胞外リガンドに結合して、FASエンドドメインの活性化をもたらす能力を保持する限り。
複数回貫通型膜貫通タンパク質
【0051】
膜貫通タンパク質は、それが永久に付着している生体膜の全体を貫通するタンパク質である。すなわち、膜貫通タンパク質は、膜の一方の側から膜の他方の側に貫通する。
【0052】
膜貫通タンパク質は、一般に、N末端およびC末端ドメインの位置に関して、トポロジーによって分類される。I型、II型およびIII型は、1回通過分子である一方、IV型は、複数回通過分子に関する。本発明のキメラタンパク質は、一連の細胞外および/または細胞内ループによって連結された複数の膜貫通α−ヘリックスを含むIV型膜貫通タンパク質を含む。
【0053】
IV型膜貫通タンパク質は、N末端ドメインが細胞質ゾルにターゲティングされるIV−A;およびN末端ドメインが合成中に小胞体の内腔にターゲティングされるIV−Bに細分化される。膜貫通タンパク質が細胞表面で発現されると、IV−A型膜貫通タンパク質は細胞内N末端ドメインを有する一方、IV−B型膜貫通タンパク質は細胞外N末端ドメインを有する。
【0054】
キメラタンパク質は、IV−A型またはIV−B型複数回貫通型膜貫通タンパク質を含み得る。FASエンドドメインは、膜貫通タンパク質のN末端ドメインまたはC末端ドメイン(これらはいずれも、細胞内に位置する)に融合され得る。
【0055】
複数回貫通型膜貫通タンパク質は、膜を貫通する2つまたはそれより多い別個の配列領域(例えば、αヘリックス)を含み得る。複数回貫通膜タンパク質は、例えば、2〜8つ、3〜6つまたは約4つの膜貫通部分を含み得る。
【0056】
複数回貫通型膜貫通タンパク質は、4つの膜貫通部分および2つの細胞外ループを含み得る。
【0057】
複数回貫通型膜貫通タンパク質は、細胞外リガンドに結合するリガンド結合ドメインを含む。リガンド結合ドメインは、形質膜の細胞外側に位置する。リガンド結合ドメインは、複数回貫通型膜貫通タンパク質の必須部分、例えばCD20のリツキシマブ結合エピトープであり得るか、またはそれは、タンパク質操作によって導入され得る。
【0058】
リガンド結合ドメインは、複数回貫通型膜貫通タンパク質の細胞外ループ(すなわち、2つの疎水性αヘリックス膜貫通部分間の親水性ループ)中にあり得るか、またはこの中に挿入され得る。あるいは、リガンド結合ドメインは、それが細胞質ゾル側ではなく形質膜の細胞外側に位置する限り、複数回貫通型膜貫通タンパク質のアミノ−またはカルボキシル末端細胞外部分の末端部(すなわち、複数回貫通型膜貫通タンパク質の親水性末端部分の一方)であり得るか、またはこの中に挿入され得るか、またはこれに連結され得る。
【0059】
リガンド結合ドメインは、組換えタンパク質操作によって複数回貫通型膜貫通タンパク質に融合され得るか、またはこれに導入され得る。
【0060】
細胞外リガンドは、天然に存在しないリガンド、例えば、複数回貫通型膜貫通タンパク質のリガンド結合ドメインに対して生じた抗体であり得る。
【0061】
複数回貫通型膜貫通タンパク質のリガンド結合ドメインは、細胞外リガンドに結合することができ、その結合がFASエンドドメインの活性化を引き起こす。
【0062】
自殺遺伝子を発現する細胞の無制御な排除を回避するために、複数回貫通タンパク質は内因性リガンドを有していなくてもよいし、またはそれがいかなる天然リガンド(複数も可)にも結合する能力をもはや有しないように改変されていてもよい。
CD20
【0063】
CD20は、複数回貫通膜タンパク質である。CD20は、最初および最後を除いて、B細胞発生のすべての段階で発現される:それは、後期プロB細胞から記憶細胞まで存在するが、初期プロB細胞または形質芽細胞および形質細胞のいずれにも存在しない。それは、ほぼすべてのB細胞リンパ腫、有毛細胞白血病およびB細胞慢性リンパ性白血病で発現される。CD20は、2つの細胞外ループ:ジスルフィド結合によって拘束されたマイナーループおよびメジャーループを有する。それは、アミノ末端およびカルボキシ末端エンドドメインを有する。CD20は、特定の抗CD20モノクローナル抗体に曝露されると、脂質ラフトに凝集する。凝集は、カルボキシ末端エンドドメインに依存する。
【0064】
全長ヒトCD20の配列は、配列番号3として示される。
配列番号3
【化3】
【化4】
【0065】
A170およびP172の位置は、太字下線で示されている。
【0066】
本発明者らは、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでCD20を切除し、細胞表面で発現される能力、およびリツキシマブまたはオファツムマブなどの抗CD20抗体によって認識される能力を保持することが可能であることを示した。
【0067】
複数回貫通型膜貫通タンパク質は、アミノ末端エンドドメインを欠く先端切除バージョンのCD20を含み得る。先端切除CD20は、アミノ末端から最大41アミノ酸(それを含む)を欠き得る。例えば、先端切除CD20は、アミノ末端から1〜41、5〜35または10〜20アミノ酸を欠き得る。
【0068】
先端切除CD20は、配列番号4として示されている配列またはその変異型を含み得る。
配列番号4(dCD20)
【化5】
【0069】
複数回貫通型膜貫通タンパク質は、カルボキシ末端エンドドメインを欠く先端切除バージョンのCD20を含み得る。先端切除CD20は、カルボキシ末端から最大61アミノ酸(それを含む)を欠き得る。例えば、先端切除CD20は、カルボキシ末端から1〜61、5〜55または10〜20アミノ酸を欠き得る。
【0070】
先端切除CD20は、配列番号5として示されている配列またはその変異型を含み得る。
配列番号5(CD20d)
【化6】
【0071】
CD20は、結合親和性を増加させるように、または細胞外リガンドに対する結合の選択性を増加させるように操作され得る。例えば、CD20は、上記配列番号3として示されている全長CD20配列のナンバリングを基準にして位置A170および/またはP172(配列番号3において太字下線で示されている)において、突然変異を含み得る。突然変異は、例えば、付加、欠失または置換であり得る。
【0072】
特に、CD20配列は、変異型CD20がリツキシマブではなくオファツムマブに結合するように、突然変異P172Wを含み得る。
【0073】
キメラタンパク質は、アミノ末端エンドドメインを欠く先端切除バージョンのCD20を含み得、先端切除バージョンのCD20は、配列番号3に示されている全長CD20の位置ナンバリングを基準にして突然変異P172Wを含む。この配列は、以下に配列番号6として示されている。
配列番号6(dCD20
P172W)
【化7】
【0074】
リガンド結合ドメインは、リツキシマブなどの抗CD20 mAbに結合し得る。
【0075】
リガンド結合ドメインは、配列番号7として示されている配列を有するCD20由来のリツキシマブ結合エピトープ配列を含み得る。
【化8】
【0076】
Perosaら(2007,J.Immunol 179:7967−7974)には、抗CD20 mAbリツキシマブによって認識される抗原モチーフを有するが、モチーフ周辺のアミノ酸が異なる一連の7merのシステイン拘束環状ペプチドが記載されている。以下の表に示されているように、全部で11個のペプチドが記載されていた:
【表1-1】
【表1-2】
【0077】
また、Liら(2006 Cell Immunol 239:136−43)には、配列:
【化9】
を含むリツキシマブのミメトープが記載されている。
【0078】
本発明のキメラタンパク質は、配列番号7〜19のいずれかに示されているアミノ酸配列を有するリツキシマブ結合エピトープ、またはリツキシマブ結合活性を保持するその変異型を含み得る。
【0079】
変異型リツキシマブ結合エピトープは、配列番号7〜19のいずれかに示されているアミノ酸配列をベースとするが、エピトープがリツキシマブ結合活性を保持する限り、1つまたはそれより多いアミノ酸突然変異、例えばアミノ酸挿入、置換または欠失を含む。配列は、3つもしくはそれ未満、2つもしくはそれ未満、または1つのアミノ酸突然変異を含み得る。
【0080】
配列番号7〜19のいずれかに示されているアミノ酸配列を有するものまたはその変異型などのリツキシマブ結合エピトープは、当技術分野で公知の方法によって、例えば組換え技術を使用して、複数回貫通型膜貫通タンパク質の細胞外ループまたは細胞外アミノもしくはカルボキシ末端配列に導入され得る。
FASエンドドメイン
【0081】
表面抗原分類95(CD95)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6(TNFRSF6)であるアポトーシス抗原1(APO−1またはAPT)としても公知のFAS受容体(FasR)は、プログラム細胞死(アポトーシス)をもたらす細胞表面上の死受容体である。
【0082】
成熟FASタンパク質は、319アミノ酸を有し、48kDの推定分子量を有し、3つのドメイン:細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに分割される。細胞外ドメインは157アミノ酸を有し、システイン残基が豊富である。膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、それぞれ17アミノ酸および145アミノ酸を有する。
【0083】
FASの細胞質ドメインまたはエンドドメインは、「デスドメイン」を含有する。
【0084】
FASの生理学的リガンドは、TNFサイトカインファミリーのメンバーであるFASLである。FASLは、活性化T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および免疫系の他の細胞上で発現される。FASがそのリガンドに結合すると、カスパーゼカスケードが細胞内で開始され、最終的にはその死に至る。
【0085】
リガンドが結合すると、FASは、死誘導シグナル伝達複合体(DISC)を形成する。隣接細胞の表面上の膜アンカーFASリガンドトリマーは、FASのオリゴマー化を引き起こす。それに続くデスドメイン(DD)の凝集により、受容体複合体は、細胞エンドソーム機構を介して内部移行される。これにより、アダプター分子FADDは、自らのデスドメインを介して、FASのデスドメインに結合することができる。
【0086】
FASは、病原体感染細胞の殺傷、ならびに古い(obsolete)リンパ球および自己反応性リンパ球の死を含め、免疫系において重要な役割を果たす。このように、免疫系では、FASは、自己免疫およびリンパ系腫瘍発生から保護する。FASは、FADD媒介性リクルートおよびカスパーゼ−8の活性化を介して、アポトーシスをトリガーする。一方、非リンパ系組織、例えば肝細胞では、FAS誘導性アポトーシスは、アポトーシス促進性BCL−2ファミリーメンバーBIDのタンパク質分解性活性化を介する増幅を必要とする。しかしながら、リンパ系細胞は、FAS活性化に対して極めて感受性である。
【0087】
複数回貫通型膜貫通タンパク質に対する細胞外リガンドの結合は、FASに結合するFASLと類似の方法で、FASエンドドメインの活性化を引き起こす。複数回貫通型膜貫通タンパク質に対する細胞外リガンドの結合は、FASエンドドメインの凝集、FADDの結合、およびカスパーゼ−8の活性化を引き起こす。
【0088】
FASは、自己反応性リンパ球が排除される経路の重要な構成要素である。本発明のキメラタンパク質は、この経路を自殺遺伝子として利用し、その重要な適用の1つは、自己反応性の操作されたT細胞応答(例えば、オンターゲットオフ腫瘍毒性)を停止することである。
【0089】
本発明のキメラタンパク質は、FASの残基174〜317に対応し、配列番号20として示されている配列またはその変異型を有するFASの細胞質ドメインを含み得る。
配列番号20
【化10】
【0090】
本発明のキメラタンパク質は、FASのエンドドメインの残基230〜314に対応し、配列番号29として示されている配列またはその変異型を有するFASの「デスドメイン」を含み得る。
配列番号29
【化11】
【0091】
変異型配列は、変異型FASがアポトーシスをトリガーする能力を保持する限り、配列番号20または29と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し得る。すなわち、変異型FASが、リガンド結合に際してDISCの会合を引き起こして、それに続くカスパーゼ−8の活性化をもたらす能力を保持する限り。
細胞外リガンド
【0092】
細胞外リガンドは、キメラタンパク質の複数回貫通型膜貫通部分のリガンド結合ドメインに結合して、FASエンドドメインの活性化をもたらすことができる任意のタンパク質または他の実体であり得る。
【0093】
用語「細胞外」は、リガンドが、その細胞膜中に本発明のキメラタンパク質を含む細胞の外側に存在することを示す。
【0094】
細胞外リガンドは、細胞膜における本発明の第1の態様によるキメラタンパク質のクラスタ化を引き起こし得る。細胞外リガンドはそれ自体が溶解性であり(例えば、リツキシマブ)、キメラタンパク質を発現する細胞が破壊される別の機構を提供し得る。
【0095】
細胞外リガンドは、可溶性リガンドであり得る(すなわち、膜結合型ではない)。
【0096】
自殺遺伝子を発現する細胞の無制御な排除を回避するために、細胞外リガンドは、内因性リガンドであるべきではなく、またはキメラタンパク質の複数回膜貫通部分に結合することもできるいかなる内因性カウンターパートも有するべきではない。
【0097】
細胞外リガンドは、合成リガンド、または被験体にとって内因性ではない(例えば、植物または他の動物種に由来する)天然リガンドであり得る。
【0098】
特に、細胞外リガンドは、抗体(この用語は、抗体フラグメントおよび模倣物を含む)であり得る。
【0099】
本明細書で使用される「抗体」は、少なくとも1つの相補性決定領域CDRを含む抗原結合部位を有するポリペプチドを意味する。抗体は、3つのCDRを含み、ドメイン抗体(dAb)のものと同等の抗原結合部位を有し得る。抗体は、6つのCDRを含み、古典的な抗体分子のものと同等の抗原結合部位を有し得る。ポリペプチドの残りは、抗原結合部位のための適切な足場をもたらし、抗原との結合のために適切な様式でこれを提示する任意の配列であり得る。抗体は、免疫グロブリン分子全体、またはFab、F(ab)’2、Fv、1本鎖Fv(scFv)フラグメントもしくはナノボディなどのその一部であり得る。抗体は、二機能性抗体であり得る。抗体は、非ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体であり得る。
【0100】
したがって、抗体は、完全抗体の抗原特異性を保持する任意の機能性フラグメントであり得る。
【0101】
一方、細胞外リガンド結合ドメインは、免疫グロブリンに由来するものではないまたは免疫グロブリンに基づくものではない結合部分を含み得る。非抗体ポリペプチドの結合能力を活用するためにいくつかの「抗体模倣」設計反復タンパク質(DRP)が開発されている。
【0102】
アンキリンまたはロイシンリッチ反復タンパク質などの反復タンパク質は、抗体とは異なり細胞内および細胞外に存在する遍在的な結合分子である。それらの独特のモジュール構成は、互いに積み重なって可変性のモジュール標的結合表面を提示する伸長反復ドメインを形成する反復構造単位(反復)を特徴とする。このモジュール性に基づいて、非常に多様な結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーが生成され得る。DARPin(設計アンキリン反復タンパク質)は、この技術に基づく抗体模倣物の一例である。
【0103】
アンチカリンでは、結合特異性は、化学的に感受性または不溶性の化合物の生理的な輸送および貯蔵にインビボで関連する一定範囲の機能を果たすタンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、タンパク質の一方の末端において4つのループを支持する高度に保存されたβ−バレルを含むロバストな固有構造を有する。結合ポケットへの侵入のためのこれらのループおよび分子のこの部分のコンフォメーションの差異は、異なるリポカリン間における結合特異性の変動の原因である。
【0104】
アビマーは、インビトロエクソンシャッフリングおよびファージディスプレイによって、結合特性および阻害特性を有するマルチドメインタンパク質を生成して、ヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化する。
【0105】
バーサボディは、15%超のシステインを有する3〜5kDaの小さなタンパク質であって、ほとんどのタンパク質に存在する疎水性コアを置換して、高いジスルフィド密度の足場を形成するタンパク質である。疎水性コアを含む多数の疎水性アミノ酸を少数のジスルフィドで置換することにより、より小さく、より親水性であり、プロテアーゼおよび熱に対してより耐性であり、より低密度のT細胞エピトープを有するタンパク質がもたらされる。これら4つの特性はすべて、顕著に減少した免疫原性を有するタンパク質をもたらす。それらはまた、E.coliにおいて製造され得、高度に可溶性かつ安定である。
CD20モノクローナル抗体
【0106】
CD20は、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オビヌツズマブ、イブリツモマブ、チウキセタンおよびトシツモマブなどのモノクローナル抗体(mAb)の標的である。
【0107】
細胞外リガンドは、これらのCD20 mAbまたはその結合ドメインであり得るか、またはこれらを含み得る。
【0108】
いくつかの抗CD20抗体は、治療的使用について承認されているか、または現在臨床試験中であり、例えば:
・非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病(CLL)の処置のためのリツキシマブ
・オファツムマブは、CLLについて、2009年10月にFDAによって承認された;
・オビヌツズマブは、CLLについて、2013年11月にFDAによって承認された;
【0109】
キメラmAbリツキシマブ(Rituxan)は、最初のFDA承認CD20モノクローナル抗体であった。現在、それは、CD20陽性B細胞悪性腫瘍;例えば、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病(CLL)を処置するために承認されている。加えて、それは、関節リウマチを含むいくつかの自己免疫疾患における使用について承認されている。リツキシマブは、全身性エリテマトーデス(SLE)または多発性硬化症などのいくつかの他の自己免疫疾患においてますます使用されている。腫瘍学指示では、リツキシマブは、典型的には、化学療法と組み合わせて使用されていた。例えば、リツキシマブを用いたCHOPレジメン(R−CHOP)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の標準治療である。リツキシマブは、長期維持段階の単独療法として、無痛性リンパ増殖性障害においてますます使用されている。これまで、リツキシマブは、最も一般に使用されている治療用抗体である。その結果、非常に明確なその薬理学的特性像が明らかになっている:リツキシマブは、非常に強力なリンパ枯渇抗体である。それは、典型的には、非常に耐容性良好である。リツキシマブ単独療法はB細胞枯渇をもたらすが、特に短期レジメンによる感染症リスクの増加はわずかである。
【0110】
リツキシマブは、いわゆるI型CD20 mAbである。リツキシマブは、脂質ラフトへのCD20分子の再組織化を誘導し、その結果、補体系の古典的経路を効率的に活性化する。対照的に、II型CD20 mAbはこの効果を有さず、補体を不完全に活性化する。これらの型は両方とも、エフェクター細胞の存在下で抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる。
【0111】
リツキシマブは、遺伝子操作キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。前記抗体は、マウス軽鎖可変領域および重鎖可変領域配列ならびにヒト定常領域配列を含有するIgG1κ免疫グロブリンである。
【0112】
リツキシマブの重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、配列番号21および22として示されている。
【0113】
オファツムマブの重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、配列番号23および24として示されており、CDR配列は、下線が付されている。
リツキシマブ重鎖可変鎖配列(配列番号21)
【化12】
リツキシマブ軽鎖可変鎖配列(配列番号22)
【化13】
【0114】
本発明のキメラタンパク質に結合する細胞外リガンドは、リツキシマブまたはその結合部分であり得るか、またはこれを含み得る。例えば、細胞外リガンドは、配列番号21として示されているリツキシマブの重鎖可変領域、および/または配列番号22として示されているリツキシマブの軽鎖可変領域を含み得る。細胞外リガンドは、配列番号21として示されているリツキシマブの重鎖可変領域由来のCDR3、および/または配列番号22として示されているリツキシマブの軽鎖可変領域由来のCDR3を含み得る。細胞外リガンドは、配列番号21として示されているリツキシマブの重鎖可変領域由来のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに/または配列番号22として示されているリツキシマブの軽鎖可変領域由来のCDR1、CDR2およびCDR3を含み得る。
【0115】
リツキシマブは、臨床用途における最初の標準的な抗CD20 mAbであるが、他のものが開発されており、使用中である。完全ヒトCD20 mAbオファツムマブは、アレムツズマブおよびフルダラビンの両方に対して耐性のCLL患者の処置について、2009年にFDAによって承認された。CD20のオファツムマブ認識は、CD20の小さなおよび大きな細胞外ループ上の重複するエピトープを認識する点で、リツキシマブのものと異なる。オファツムマブ(Ofatumuamb)はI型抗体であり、おそらくは脂質ラフト形成がより良好であるので、リツキシマブよりも特に優れた補体活性化をもたらすと考えられる。ベルツズマブは、リツキシマブと類似のCDR配列を有するヒト化CD20 mAbである(したがって、同じエピトープに結合する)。オビヌツズマブ(GA101としても公知である)は、II型CD20 mAbであるので、珍しい抗CD20治療用mAbである。オビヌツズマブは、臨床開発中である。
オファツムマブ重鎖可変鎖配列(配列番号23)
【化14】
オファツムマブ軽鎖可変鎖配列(配列番号24)
【化15】
【0116】
上記配列では、CDr配列は、下線が付されている。
【0117】
本発明のキメラタンパク質に結合する細胞外リガンドは、オファツムマブまたはその結合部分であり得るか、またはこれを含み得る。例えば、細胞外リガンドは、配列番号23として示されているオファツムマブの重鎖可変領域、および/または配列番号24として示されているオファツムマブの軽鎖可変領域を含み得る。細胞外リガンドは、配列番号23として示されているオファツムマブの重鎖可変領域由来のCDR3、および/または配列番号24として示されているオファツムマブの軽鎖可変領域由来のCDR3を含み得る。細胞外リガンドは、配列番号23として示されているオファツムマブの重鎖可変領域由来のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに/または配列番号24として示されているオファツムマブの軽鎖可変領域由来のCDR1、CDR2およびCDR3を含み得る。
【0118】
リツキシマブおよびオファツムマブ(およびおそらくはベルツズマブ)は、CD20のクラスタ化を引き起こし、本質的に高溶解性であり、特にリツキシマブは非常によく確立された安全性プロファイルを有するので、本発明の自殺遺伝子のFASトリガーに理想的である。時折、リツキシマブによってトリガーされる自殺遺伝子は、非実用的であり得る−これは、リツキシマブ、特にメンテナンスリツキシマブを定期的に服用する患者においてである。リツキシマブは非常に長い半減期を有し、本発明者らが開発している自殺遺伝子手法はかかる感受性を有する可能性が高いので、操作されたT細胞を与えることができるようになるには、リツキシマブ投与後数カ月を要し得る。これらの患者では、リツキシマブに対して非感受性であったがオファツムマブに対して感受性であった変異型CD20を有することは有用であろう。
核酸配列
【0119】
本発明の第2の態様は、本発明によるキメラタンパク質をコードする核酸配列を提供する。
【0120】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」および「核酸」は、互いに同義語であることを意図される。
【0121】
当業者であれば、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、遺伝コードの縮重の結果として同じポリペプチドをコードし得ることを理解するであろう。加えて、当業者であれば、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するために、ルーチンな技術を使用して、本明細書記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行い得ると理解すべきである。
【0122】
本発明の第2の態様による核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。それらは、1本鎖または2本鎖であり得る。それらはまた、その中に合成ヌクレオチドまたは改変ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる種類の改変が当技術分野で公知である。これらとしては、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が挙げられる。本明細書記載の使用の目的のために、ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ると理解すべきである。かかる改変は、目的のポリヌクレオチドのインビボ活性または寿命を増強するために行われ得る。
【0123】
ヌクレオチド配列に関して、用語「変異型」、「相同体」または「誘導体」は、配列からの、または配列への1つの(またはそれより多い)核酸の任意の置換、変異、改変、交換、欠失または付加を含む。
【0124】
核酸配列は、配列番号1、配列番号2として示されているキメラタンパク質配列またはその変異型をコードし得る。
【0125】
例えば、ヌクレオチド配列は、配列番号25または26として示されている配列を含み得る。
配列番号25 dCD20−FAS
【化16】
配列番号26 dCD20
P172W−FAS
【化17】
核酸構築物
【0126】
本発明はまた、
i)FASエンドドメインに融合された複数回貫通型膜貫通タンパク質を含むキメラタンパク質をコードする第1の核酸配列;および
ii)目的のヌクレオチド(NOI)をコードする第2の核酸配列
を含む核酸構築物を提供する。
【0127】
NOIは、例えば、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードし得る。
【0128】
核酸配列は、2つまたはそれより多い核酸配列の共発現を可能にする配列によって連結され得る。例えば、構築物は、内部プロモーター、内部リボソームエントリー配列(IRES)配列、または切断部位をコードする配列を含み得る。ポリペプチドが産生されたら、いかなる外部切断活性も必要とせずに、それが個別のタンパク質に即時に切断されるように、切断部位は自己切断され得る。
配列番号27または28として示されている配列を有する口蹄疫ウイルス(FMDV)2a自己切断ペプチドを含む様々な自己切断部位が公知である:
配列番号27
【化18】
または
配列番号28
【化19】
【0129】
共発現配列は、内部リボソームエントリー配列(IRES)であり得る。共発現配列は、内部プロモーターであり得る。
T細胞受容体(TCR)
【0130】
T細胞受容体またはTCRは、T細胞の表面に見られる分子であって、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する分子である。TCRと抗原との間の結合は、比較的低い親和性であり、変性する:多くのTCRは同じ抗原を認識し、多くの抗原は同じTCRによって認識される。
【0131】
TCRは、2本の異なるタンパク質鎖(すなわち、それは、ヘテロダイマーである)から構成される。T細胞の95%では、これは、アルファ(α)およびベータ(β)鎖からなるのに対して、T細胞の5%では、これは、ガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。この比率は、個体発生中および疾患状態で変化する。
【0132】
TCRが抗原ペプチドおよびMHC(ペプチド/MHC)と係合すると、Tリンパ球は、関連酵素、共受容体、特殊なアダプター分子、および活性化または放出された転写因子によって媒介される一連の生化学的事象によって活性化される。
【0133】
本発明の核酸構築物またはベクターは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖またはTCRδ鎖をコードする核酸配列を含み得る。それは、例えば、TCRα鎖をコードする核酸配列およびTCRβ鎖をコードする核酸配列;またはTCRγ鎖をコードする核酸配列またはTCRδ鎖をコードする核酸配列を含み得る。2つの核酸配列は、2つのTCR鎖の共発現を可能にする配列、例えば内部プロモーター、IRES配列または切断部位、例えば自己切断部位によって連結され得る。
キメラ抗原受容体(CAR)
【0134】
目的の核酸配列(NOI)は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし得る。
【0135】
古典的CARは、細胞外抗原認識ドメイン(バインダー)を細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に結び付けるキメラI型膜貫通タンパク質である。バインダーは、典型的にはモノクローナル抗体(mAb)から誘導された1本鎖可変フラグメント(scFV)であるが、リガンドなどの抗原結合部位を含む他のフォーマットに基づくことも可能である。スペーサードメインは、膜からバインダーを単離し、好適な配向をもたせるのに必要であり得る。使用される一般的なスペーサードメインは、IgG1のFcである。より小型のスペーサー、例えば、抗原によっては、CD8αからのストーク、さらにはIgG1ヒンジ単独でも十分であり得る。膜貫通ドメインは、細胞膜にタンパク質をつなぎ止め、スペーサーを、細胞内シグナル伝達メインを含むか、または関連し得るエンドドメインに結び付ける。
【0136】
初期のCAR設計は、FcεR1またはCD3ζのζ鎖のどちらかの細胞内部分から誘導された細胞内シグナル伝達ドメインを有していた。したがって、これらの第一世代受容体は、免疫学的シグナル1を伝達するもので、同種標的細胞のT細胞による致死を誘発するのに十分ではあったが、T細胞を十分に活性化して増殖および生存をもたらすことはなかった。この限界を克服するため、複合シグナル伝達ドメインが構築された:T細胞共刺激分子の細胞内部分とCD3ζの細胞内部分の融合により、抗原認識後活性化シグナルおよび共刺激シグナルを同時に伝達することができる第二世代受容体がもたらされる。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインである。これは、T細胞増殖を誘発する最も強力な共刺激シグナル、すなわち免疫学的シグナル2を供給する。また、生存シグナルを伝達する密接に関連したOX40および41BBなど、TNF受容体ファミリーのエンドドメインを含む一部の受容体も記載されている。活性化シグナル、増殖シグナルおよび生存シグナルを伝達することができる細胞内シグナル伝達ドメインを有するさらにいっそう強力な第三世代CARが現在記載されている。
【0137】
CARエンコード核酸は、例えば、レトロウイルスベクターを用いてT細胞に移入され得る。こうして、多数の抗原特異的T細胞が、養子細胞移入のために生成され得る。CARが標的抗原と結合したとき、これにより、活性化シグナルの、それが発現されるT細胞への伝達がもたらされる。すなわち、CARは、標的抗原を発現する細胞に向けたT細胞の特異性および細胞傷害性を誘導する。
ベクター
【0138】
第3の態様において、本発明は、本発明の核酸配列または核酸構築物を含むベクターを提供する。
【0139】
本発明はまた、1つまたはそれより多い本発明の核酸配列または核酸構築物と、必要に応じて、1つまたはそれより多い(one of more)さらなる目的の核酸配列(NOI)とを含むベクターまたはベクターのキットを提供する。かかるベクターは、宿主細胞が、1つまたはそれより多い本発明の第1の態様によるキメラタンパク質と、必要に応じて、1つまたはそれより多い他の目的のタンパク質(POI)とを発現するように、核酸配列または核酸構築物を宿主細胞に導入するために使用され得る。キットはまた、細胞外リガンドを含み得る。
【0140】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターまたはトランスポゾンベースのベクターまたは合成mRNAであり得る。
【0141】
ベクターは、T細胞をトランスフェクトまたは形質導入することができるものであり得る。
【0142】
ベクターを標的細胞の形質導入に使用する場合、標的細胞がキメラタンパク質およびキメラ抗原受容体またはT細胞受容体を共発現するように、NOIは、例えば、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体をコードし得る。
細胞
【0143】
本発明はまた、本発明の第1の態様によるキメラタンパク質を含む細胞に関する。
【0144】
細胞は、例えば、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞であり得る。
【0145】
細胞は、造血幹細胞などの幹細胞であり得る。
【0146】
T細胞またはTリンパ球は、細胞媒介性免疫において中心的役割を演じるリンパ球のタイプである。それらは、細胞表面におけるT細胞受容体(TCR)の存在により、B細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)など、他のリンパ球とは区別することができる。下記で概説する通り、様々なタイプのT細胞がある。
【0147】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、形質細胞および記憶B細胞へのB細胞の成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスで他の白血球を補助する。TH細胞は、それらの表面でCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面でMHCクラスII分子によりペプチド抗原と共に提示されたときに活性化される。これらの細胞は、種々のサイトカインを分泌することにより、種々のタイプの免疫応答を促進する、TH1、TH2、TH3、TH17、Th9、またはTFHを含む、幾つかのサブタイプのうちの1つに分化し得る。
【0148】
細胞溶解性T細胞(TC細胞またはCTL)は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、また移植拒絶でも関与する。CTLは、それらの表面でCD8を発現する。これらの細胞は、全有核細胞の表面に存在する、MHCクラスIに随伴する抗原に結合することにより標的を認識する。調節性T細胞により分泌されるIL−10、アデノシンおよび他の分子を通じて、CD8+細胞はアネルギー状態に不活化され得、実験的自己免疫脳脊髄炎などの自己免疫疾患を防止する。
【0149】
記憶T細胞は、感染の消散後長期にわたって持続する抗原特異的T細胞のサブセットである。それらは、それらの同種抗原に再曝露されると、迅速に多数のエフェクターT細胞に拡大し、過去の感染に対する「記憶」をもつ免疫系を提供する。記憶T細胞は、3つのサブタイプ:セントラル記憶T細胞(TCM細胞)および2タイプのエフェクター記憶T細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)を含む。記憶細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。記憶T細胞は、典型的には細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0150】
以前にはサプレッサーT細胞として知られていた、調節性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持に非常に重要である。それらの主たる役割は、免疫反応の終末に向けてT細胞媒介性免疫を制止し、胸腺での負の選択のプロセスを逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。
【0151】
CD4+Treg細胞の2つの主なクラス−天然に存在するTreg細胞および適応Treg細胞については記載されている。
【0152】
天然に存在するTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても知られている)は、胸腺で生じ、TSLPで活性化された骨髄性(CD11c+)樹状細胞および形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方と発達中のT細胞との間の相互作用に関連付けられている。天然に存在するTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在により他のT細胞からは区別され得る。FOXP3遺伝子の変異は、調節性T細胞の発達を防止し得るため、致命的な自己免疫疾患IPEXが引き起こされ得る。
【0153】
適応Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても知られている)は、正常な免疫応答中に生じ得る。
【0154】
ナチュラルキラー細胞(またはNK細胞)は、先天性免疫系の一部を形成する細胞溶解性細胞の1タイプである。NK細胞は、MHC非依存的にウイルス感染細胞からの内生シグナルに対して、迅速な応答を提供する。
【0155】
NK細胞(自然リンパ球の群に属する)は、大顆粒リンパ球(LGL)として定義され、Bリンパ球およびTリンパ球を生じる共通のリンパ性前駆細胞から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃および胸腺で分化および成熟し、次いでそこから循環系に入ることが知られている。
【0156】
幹細胞は、専門化した(specialized)細胞に分化し得る未分化細胞である。哺乳動物では、大きく2種類の幹細胞がある:胚盤胞の内部細胞塊から単離される胚性幹細胞、および様々な組織に見られる成体幹細胞。成体生物では、幹細胞および前駆細胞は、体の修復系として作用して、成体組織を補充する。発生中の胚では、幹細胞は、すべての専門化した細胞(外胚葉、内胚葉および中胚葉(人工多能性幹細胞を参照のこと))に分化し得るが、血液、皮膚または腸組織などの再生器官(regenerative organ)の正常な代謝回転も維持する。
ヒトでは、3つの公知の利用可能な自己成体幹細胞源がある:
1.採取による抽出(すなわち、骨穿孔)を必要とする骨髄。
2.脂肪吸引による抽出を必要とする脂肪組織。
3.アフェレーシス(血液をドナーから採血し、幹細胞を抽出して血液の他の部分をドナーに戻す機械に通す)による抽出を必要とする血液。
【0157】
成体幹細胞は、医学療法、例えば骨髄移植において頻繁に使用される。現在、幹細胞は人工的に増殖され、筋肉または神経などの様々な組織の細胞と一致する特徴を有する専門化した細胞型に変換(分化)され得る。体細胞核移植または脱分化によって生成された胚性細胞株および自己胚性幹細胞もまた、細胞療法のための専門化した細胞型を生成するために使用され得る。
【0158】
造血幹細胞(HSC)は、すべての他の血液細胞を生じさせる血液細胞であり、中胚葉に由来する。それらは、ほとんどの骨のコアに含まれる赤色骨髄に存在する。
【0159】
それらは、骨髄細胞系列(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)およびリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を生じさせる。造血組織は、長期および短期の再生能を有する細胞、ならびにコミットした多能性、複能性および単能性の前駆細胞を含有する。
【0160】
HSCは、異種集団である。血中におけるリンパ球と骨髄子孫との比(L/M)によって区別される3つのクラスの幹細胞が存在する。骨髄偏向型(My−bi)HSCは、低いL/M比(0〜3)を有するのに対して、リンパ偏向型(Ly−bi)HSCは、大きな比(>10)を示す。第3のカテゴリーは、L/M比が3〜10であるバランス型(Bala)HSCからなる。骨髄偏向型HSCおよびバランス型HSCのみが、持続的な自己複製特性を有する。
【0161】
本発明のキメラタンパク質発現細胞は、上記細胞型のいずれかであり得る。
【0162】
1つまたはそれより多い本発明の第1の態様によるキメラタンパク質を発現するT細胞またはNK細胞は、患者自身の末梢血(第一者)から、または造血幹細胞移植の状況ではドナー末梢血(第二者)から、または無関係のドナー由来の末梢血(第三者)のいずれかからエクスビボで作られ得る。
【0163】
あるいは、1つまたはそれより多い本発明の第1の態様によるキメラタンパク質を発現するT細胞またはNK細胞は、T細胞への誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のエクスビボ分化から誘導され得る。あるいは、その溶解機能を保持し、治療薬として作用し得る不死化T細胞株が使用され得る。
【0164】
すべてのこれらの実施形態において、キメラタンパク質(複数も可)発現細胞は、ウイルスベクターによる形質導入、またはDNAもしくはRNAによるトランスフェクションなどの手段によって、前記キメラタンパク質または各キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNA、および必要に応じてNOIを導入することによって生成される。
【0165】
本発明のT細胞は、被験体由来の生体外TまたはNK細胞であり得る。TまたはNK細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)試料から得てもよい。TまたはNK細胞は、本発明の第1の態様による1つまたはそれより多くのキメラタンパク質をコードする核酸で形質導入される前に、例えば抗CD3モノクローナル抗体での処理により活性化および/または拡大され得る。
【0166】
本発明のTまたはNK細胞は、
(i)被験体または上記で挙げた他の供給源からのTまたはNK細胞含有試料の単離;および
(ii)本発明の第2の態様による1つまたはそれより多くの核酸配列(複数も可)によるTまたはNK細胞の形質導入またはトランスフェクション
により作製され得る。
【0167】
本発明はまた、1つまたはそれより多い本発明の第1の態様によるキメラタンパク質を含むT細胞またはNK細胞と、CIDとを含むキットを提供する。
医薬組成物
【0168】
本発明はまた、本発明の第4の態様による複数の細胞を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、さらに薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含んでいてもよい。医薬組成物は、所望により1種またはそれより多くのさらなる医薬活性ポリペプチドおよび/または化合物を含んでいてもよい。かかる製剤は、例えば、静脈内注入に好適な形態であり得る。
方法
【0169】
本発明はまた、本発明の第4の態様による細胞を作製するための方法であって、本発明の第3の態様によるベクターを細胞に形質導入またはトランスフェクトする工程を含む方法を提供する。
【0170】
ベクターは、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。
【0171】
本発明はまた、本発明の第4の態様による細胞を排除するための方法であって、複数回貫通型膜貫通タンパク質に結合する細胞外リガンドに前記細胞を曝露する工程を含む方法を提供する。
【0172】
細胞外リガンドの結合は、FASエンドドメインの活性化および細胞のアポトーシスをもたらし得る。
【0173】
細胞外リガンドの結合は、補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす複数のキメラタンパク質の複数回貫通型膜貫通タンパク質の架橋をもたらし得る。
【0174】
細胞外リガンドが抗体である場合、細胞外リガンドの結合は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)をもたらし得る。
【0175】
細胞は、インビボまたはインビトロで細胞外リガンドに曝露され得る。
【0176】
細胞外リガンドは、例えば、リツキシマブ、オファツムマブまたはベルツズマブなどの抗CD20 mAbであり得る。
【0177】
細胞外リガンドは、医薬組成物の形態で投与され得る。医薬組成物は、医薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤をさらに含み得る。医薬組成物は、1つまたはそれより多いさらなる医薬活性ポリペプチドおよび/または化合物を必要に応じて含み得る。かかる製剤は、例えば、静脈内注入に適切な形態であり得る。
【0178】
本発明はまた、被験体への本発明の第4の態様による細胞の投与によって引き起こされる、前記被験体における病理学的免疫応答を予防および/または処置するための方法であって、複数回貫通型膜貫通タンパク質に結合することができる細胞外リガンドを前記被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0179】
病理学的免疫応答は、以下の群:移植片対宿主病;オンターゲットオフ腫瘍毒性;免疫活性化症候群;およびリンパ増殖性障害から選択され得る。
【0180】
本発明はまた、被験体における疾患を処置または予防するための方法であって、本発明の第4の態様による細胞を前記被験体に投与する工程を含む方法を提供する。細胞は、上記に定義される医薬組成物の形態であり得る。
【0181】
前記方法は、以下:
(i)本発明の第3の態様によるベクターを、被験体から単離された細胞の試料に形質導入またはトランスフェクトする工程、および
(ii)前記形質導入/トランスフェクトした細胞を患者に投与する工程
を含み得る。
【0182】
疾患を処置するための方法は、本発明の細胞の治療的使用に関する。本明細書では、疾患に関連する少なくとも1つの症候を緩和、軽減もしくは改善するために、および/または疾患進行を遅延、軽減もしくは阻止するために、前記細胞は、既存の疾患または症状を有する被験体に投与され得る。
【0183】
疾患を予防するための方法は、本発明の免疫細胞の予防的使用に関する。本明細書では、疾患の原因を予防しもしくは減弱するために、または疾患に関連する少なくとも1つの症候の発症を軽減もしくは予防するために、かかる細胞は、疾患にまだ罹っていない被験体、および/または疾患のいかなる症候も示していない被験体に投与され得る。被験体は、疾患を発症する素因を有し得るか、または疾患を発症するリスクを有すると考えられ得る。
【0184】
本発明によって提供される疾患を処置するための方法は、疾患進行をモニタリングすること、および任意の毒性活性をモニタリングすること、ならびに被験体に投与される細胞外リガンドの用量を調整して、許容され得るレベルの疾患進行および毒性活性を提供することを含み得る。
【0185】
疾患進行のモニタリングは、それらが軽減/改善または増加/悪化しているかを決定するために、疾患に関連する症候を経時的に評価することを意味する。
【0186】
毒性活性は、被験体への投与後に本発明の細胞によって引き起こされる有害効果に関係する。毒性活性としては、例えば、免疫学的毒性、胆道毒性および呼吸窮迫症候群が挙げられ得る。
【0187】
特に、本発明は、被験体における疾患を処置するための方法であって、以下:
(i)本発明の第4の態様による細胞を前記被験体に投与する工程;
(ii)病理学的免疫応答の発症について、前記被験体をモニタリングする工程;および
(iii)前記被験体が、病理学的免疫応答を発症するまたは発症した兆候を示す場合、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体を前記被験体に投与する工程
を含む方法を提供する。
【0188】
本発明は、疾患を処置および/または予防するのに使用するための本発明の細胞を提供する。
【0189】
細胞は、例えば、造血幹細胞移植、リンパ球注入または養子細胞移入に使用するためのものであり得る。
【0190】
本発明はまた、疾患の処置および/または予防のための医薬の製造における本発明の細胞の使用に関する。
【0191】
本発明はまた、毒性活性の処置および/または予防に使用するための、本発明の第1の態様によるキメラタンパク質を活性化することができる細胞外リガンドを提供する。
【0192】
本発明の細胞および方法によって処置および/または予防すべき疾患は、ウイルス感染症などの感染症であり得る。
【0193】
本発明の方法はまた、例えば自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片対宿主拒絶における病原性免疫応答の制御のためのものであり得る。
【0194】
本発明の細胞がTCRまたはCARを発現する場合、それらは、膀胱癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(腎細胞)、白血病、肺癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌および甲状腺癌などの癌性疾患の処置に有用であり得る。
【0195】
本発明のTCR/CAR発現細胞は、標的細胞、例えば癌細胞を殺すことができる。
【0196】
本発明の細胞は、改変細胞または非改変細胞を患者に投与する任意の細胞療法に使用され得る。細胞療法の例は、CD34+幹細胞移植後の養子T細胞移入である。幹細胞移植後におけるT細胞の投与は、患者レシピエントにおける免疫系の再構成を促進するのに役立つ。適合関連または非関連ドナーが利用不可能であるか、または広範なドナー探索のために疾患が過度に攻撃的である場合、HLAハプロタイプ一致家族ドナーの使用が有効であり得る。かかるドナーは、親、兄弟姉妹または二等親血縁者であり得る。かかる注入は免疫回復を増強し、それにより、ウイルス感染を軽減し、再発性白血病細胞を除去し得る。しかしながら、ドナー幹細胞移植片におけるアロ反応性T細胞の共存は、ドナー細胞がレシピエントに対して反応する移植片対宿主病(GvHD)(これは、レシピエントの皮膚、腸、肝臓および他の器官を徐々に損傷し得る)を引き起こし得る。
【0197】
細胞療法の他の例としては、天然細胞または異種遺伝子を発現するように遺伝子操作された細胞の使用が挙げられる。これらの処置は、血液障害を含む多くの障害に使用されるが、これらの治療は、マイナスの副作用を有し得る。別の方法では、罹患細胞の機能を代替することによって障害を処置するために、例えば間葉系間質細胞などの多くの種類の成熟細胞に分化し得る未成熟前駆細胞が使用され得る。本発明は、細胞療法に使用されるドナー細胞の考えられるマイナス効果を取り除くための迅速で有効な機構を提供する。
【0198】
本発明は、ドナーT細胞移植後のヒト患者における移植片対宿主病の効果を軽減する方法であって、本発明のベクターを、ドナー細胞培養物中のヒトドナーT細胞にトランスフェクトまたは形質導入する工程;形質導入またはトランスフェクトしたドナーT細胞を前記患者に投与する工程;続いて、前記患者における移植片対宿主病の存在または非存在を検出する工程;および細胞外リガンドを、移植片対宿主病の存在が検出された患者に投与する工程を含む方法を提供する。T細胞は、アロ反応性除去処理されていない(non−allodepleted)ものであり得る。
【0199】
本発明は、幹細胞移植の方法であって、ハプロタイプ一致幹細胞移植物をヒト患者に投与する工程;およびハプロタイプ一致ドナーT細胞を前記患者に投与する工程を含み、ハプロタイプ一致ドナー細胞培養物中で、本発明によるベクターを前記T細胞にトランスフェクトまたは形質導入する方法を提供する。
【0200】
細胞は、ドナー細胞培養物中のアロ反応性除去処理されていないヒトドナーT細胞であり得る。
【0201】
本発明はまた、幹細胞移植の方法であって、ハプロタイプ一致幹細胞移植物をヒト患者に投与する工程;およびアロ反応性除去処理されていないハプロタイプ一致ドナーT細胞を前記患者に投与する工程を含み、ハプロタイプ一致ドナー細胞培養物中で、本発明によるベクターを前記T細胞にトランスフェクトまたは形質導入する方法を提供する。
【0202】
ハプロタイプ一致幹細胞移植物は、CD34+ハプロタイプ一致幹細胞移植物であり得る。ヒトドナーT細胞は、患者のT細胞とハプロタイプ一致であり得る。患者は、幹細胞移植によって緩和され得る任意の疾患または障害であり得る。患者は、固形腫瘍または血液もしくは骨髄の癌などの癌を有し得る。患者は、血液または骨髄疾患を有し得る。患者は、鎌状赤血球貧血または異染性白質ジストロフィーを有し得る。
【0203】
ドナー細胞培養物は、骨髄試料または末梢血から調製され得る。ドナー細胞培養物は、ドナー末梢血単核細胞から調製され得る。いくつかの実施形態において、ドナーT細胞は、トランスフェクションまたは形質導入の前に、ドナー細胞培養物からアロ反応性除去処理される。形質導入またはトランスフェクトしたT細胞は、患者への投与前に、IL−2の存在下で培養され得る。
【0204】
以下、実施例により本発明をさらに記載するが、これは、本発明を実施する上で当業者を助ける役割を果たすことを意味するもので、本発明の範囲をいかなる意味にせよ限定する意図はない。
実施例1−先端切除バージョンのCD20の試験
【実施例】
【0205】
CD20は、B細胞上で、ならびにほぼすべてのB細胞リンパ腫、有毛細胞白血病およびB細胞慢性リンパ性白血病で発現される複数回貫通膜タンパク質である。CD20は、2つの細胞外ループ:ジスルフィド結合によって拘束されたマイナーループおよびメジャーループを有する。それは、アミノ末端およびカルボキシ末端エンドドメインを有する。
【0206】
CD20は、リツキシマブおよびオファツムマブを含む多くの治療用モノクローナル抗体によって認識される。本発明者らは、アミノまたはカルボキシエンドドメイン末端の欠失を有するCD20が、かかる抗体によって依然として認識され得るかを決定しようとした。
【0207】
この目的のために:全長CD20;アミノ末端(エンドドメイン)切除CD20;およびカルボキシ末端(エンドドメイン)切除CD20をeGFPとそれぞれ融合した。これらのプラスミドを293T細胞にトランスフェクトし、リツキシマブまたはオファツムマブで染色した。フローサイトメトリー分析により、これらの先端切除が、CD20の表面発現/認識に影響を及ぼさなかったことが示された(
図1)。
実施例2−低い基本毒性を有するFASキメラの生産
【0208】
単純なFASキメラ(例えば、RQR8とFASとの融合体)、またはFASエンドドメインを有するキメラ抗原受容体(Toneら、(2013)Hum.Gene Ther.Methods 24,141−150)の発現は、顕著な基本毒性をもたらす。FASは、非常に感受性のあるアポトーシストリガーであるので、単純な過剰発現は、自然発生的な活性化をもたらす可能性がある。
【0209】
これを試験するために、複数回膜貫通タンパク質とFASとの融合体であるFASキメラを生成した。これは、FASエンドドメインの「パディングアウト」をもたらして、自然発生的な活性化の可能性を減少させ、それにより、基本毒性を軽減または排除するはずである。複数回貫通タンパク質としてCD20を選択し、アミノ末端切除バージョンのCD20のカルボキシ末端をFASのエンドドメインに融合させて、dCD20−FASを作った(
図2b)。
【0210】
この構築物はまた、それらの発現および機能を研究することを可能にするeGFPを共発現した。RQR8およびRQR8−FAS(FASがRQR8のカルボキシ末端に結合された変異型RQR8)も含まれていた。293T細胞において、それらの基本毒性と、オファツムマブへの曝露によって誘導される毒性とを比較して、機能を試験した。結果を
図3に示す。高レベルの基本毒性を有していたRQR8−FASとは異なり、dCD20−FASは、非常に低い基本毒性および非常に高い誘導性毒性をもたらした。
実施例3−リツキシマブに対する感度の調査
【0211】
ジャーカットT細胞にdCD20−FASを形質導入し、異なる濃度のリツキシマブ(補体なし)に曝露し、タイムコース(time−course)を実施した。FAS媒介性アポトーシスは、比較的徐々に活性化すると予想される。アネキシン−V/7AADでT細胞を染色することによって、アポトーシスを決定した。注目すべきことに、
図4に示されているように、24時間および48時間の時間経過において、細胞の50%を殺すリツキシマブの濃度は、3.125ug/ml未満である。さらなる実験を実施して、dCD20−FAS発現T細胞の殺傷を、さらなる希釈のリツキシマブに48時間曝露した(
図5)。この実験により、dCD20−FASは非常に感受性のある活性化をもたらし、細胞の50%を殺す割合は約0.6ug/mlであることが示された。これは、約200ug/mlの治療レベルを十分に下回る(Berinsteinら、(1998)Ann.Oncol.Off.J.Eur.Soc.Med.Oncol.ESMO 9,995−1001)。
実施例4−オファツムマブに対する感度の調査
【0212】
ジャーカットT細胞にdCD20−FASを形質導入し、異なる濃度のオファツムマブに曝露し、タイムコースを実施した(
図6)。T細胞は、オファツムマブに対して極めて感受性である。殺傷は、リツキシマブの場合よりも迅速かつ低濃度で起こった。dCD20−FAS発現T細胞の感度を決定するために、さらなる実験を実施して、漸増希釈のオファツムマブに48時間曝露した後のdCD20−FAS T細胞の殺傷を決定した(
図7)。注目すべきことに、T細胞の50%が殺されたオファツムマブの濃度は達せず、この濃度は0.195ug/ml未満であった。これは、(それぞれオファツムマブの初回注入および12回目後に)63ug/ml〜1482ug/mlであると報告されているオファツムマブの治療濃度を十分に下回る(Gravanisら、(2010)The Oncologist;15:1335−1343)。
実施例5−オファツムマブ結合ではなくリツキシマブ結合を破壊するためのCD20の操作
【0213】
例えば、リツキシマブを定期的に服用する患者群にとっては、リツキシマブが理想的な活性化薬物ではない状況があり得る。オファツムマブは一般に使用されないが、リツキシマブと同等に有効であるかまたはそれよりも有効であると思われるので、これらの患者では、リツキシマブに対して非感受性であるが、オファツムマブに対して感受性であることが有用な手法であろう。
【0214】
変異型CD20を生産するために、リツキシマブ結合を移動させるがオファツムマブ結合に影響を及ぼさないと予測されたいくつかの突然変異を、残基A170およびP172においてCD20に導入した。これらの突然変異から、P172W突然変異型CD20はオファツムマブに結合するが、リツキシマブに結合しないことが見出された。wt CD20およびCD20−P172WをeGFPと共発現させ、293T細胞にトランスフェクトした
図8に示されている結果によって、このことが確認される。続いて、リツキシマブまたはオファツムマブのいずれかでこれらの細胞を染色した。wt CD20は両方に結合するが、CD20−P172Wはオファツムマブにのみ結合する。
実施例6−ADCCの研究
【0215】
ADCCは、直接的な殺傷の時間枠内で起こるので、点突然変異(E272K)(Wangら、(2010),Nature Structural and Molecular Biology,17,11,1324−1330)を使用してFASエンドドメインを不活性化したdCD20−FASの突然変異を生成した。この構築物をT細胞に形質導入する。レトロウイルスベクター形質導入および単細胞クローニングによって樹立された、膜結合インターロイキン−15および41BBLを発現するK562刺激細胞株を使用して、ナチュラルキラー(NK)細胞エフェクターを生成する(K562.41BBL.mIL150。24ウェル組織培養処理マルチウェルプレート中で、健常ドナー由来の新たに単離された末梢血単核細胞を、120Gyで放射線照射した放射線照射K562.41BBL.mIL15と1:1で共培養し、40iu IL2を補充する。必要に応じて、部分的な培地交換を実施する。7日間の培養後、1ラウンドのMiltenyi CD56陽性選択にしたがって、NK細胞の純粋な集団(約95%の純度)を単離し、CellTRACE violet(invitrogen)で標識する。全長CD20、RQR8またはdCD20−FAS
E272Kのいずれかを形質導入したT細胞を標的として使用し、NK細胞エフェクターと16:1、8:1、4:1および2:1のエフェクター:標的比で48時間共培養する。アネキシンV(BD Biosciences)およびヨウ化プロピジウム(PI)(SigmaAldrich)染色後、フローサイトメトリーによって細胞性排除(cellular deletion)を評価する。
実施例7−初代ヒトT細胞におけるdCD20−FASおよびdCD20
P172W−FASの機能の研究
【0216】
リツキシマブおよびオファツムマブへの曝露に応じてアポトーシスを直接活性化する構築物dCD20−FASおよびdCD20P172W−FASの能力を、初代ヒトT細胞において調査した。FAS活性化は進展するのにある程度時間を要し、CDCはほぼ瞬間的であるので、補体の存在下で即時アポトーシスを試験することによって、これらの構築物がCDC媒介性殺傷も可能にするかを決定することができた。
図9に示されているように、dCD20−FAS T細胞は、リツキシマブおよびオファツムマブ(Ofatumuamb)の両方によって、有効に直接殺され、かつCDCによって殺された。一方、dCD20
P172W−FAS初代T細胞は、リツキシマブではなくオファツムマブによってのみ、有効に直接殺され、またはCDCによって殺された。オファツムマブ(Ofatumuamb)による初代T細胞におけるdCD20−FASによる直接的な殺傷の例は、
図10に示されている。
【0217】
したがって、本発明者らは、治療用モノクローナル抗体によって活性化される三重機能自殺遺伝子を生成した。
【0218】
本明細書で言及するすべての文書は、それらが言及されている主題に特に注意して、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法および系の様々な修飾および変形は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態と共に記載したが、請求されている本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解するべきである。事実、分子生物学、または関連分野における専門家にとって明白な、本発明を実施するために記載された方法の様々な修飾も以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。