(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
血液凝固因子の欠失に起因する様々な出血性障害がある。最も一般的な障害は、血友病A及びBであり、夫々血液凝固因子、第VIII(VIII)及びIX、の欠失がもたらす。もう一種の既知の出血性障害はフォンヴィレブランド病(VWD)である。
【0003】
FVIIIは、血漿中に、ほとんどフォンヴィレブランド因子(VWF)との非共有結合複合体として存在し、その凝固機能は、因子XからXaへの転換に依存する因子IXaを促進することである。
【0004】
古典的血友病又は、血友病Aは、遺伝性出血性疾患である。これは、血液凝固因子FVIIIの染色体X−結合欠失がもたらす結果であり、ほぼ独占的に男性に影響を及ぼし、発症率は10,000人あたり1〜2人である。X染色体欠損は、女性キャリアによって伝達されるが、彼女達自身は血友病患者ではない。血友病Aの臨床症状は出血傾向が大きいことである。
【0005】
予防的にFVIII治療により療養している重症の血友病Aの患者は、FVIIIの血漿半減期が約12〜14時間と短いために、週に約3回静脈内(i.v.)投与をしなければならない。毎回のi.v.投与は煩わしく、痛みを伴い、かつ、感染の危険性を伴う、というのは、これは特に患者自身で、又は、血友病Aと診断された子供の両親により、家庭で行われるからである。
【0006】
従って、FVIIIの半減期を増加し、投与しなければならない頻度を低減したFVIIIを含有する医薬組成物が強く望まれている。
【0007】
活性化していないFVIIIの半減期を延長するための、数種の試みとしては、細胞受容体とのその相互作用を低減することにより(特許文献1、2)、ポリマーをFVIIIに共有結合させることにより(特許文献3、4及び5)、FVIIIをカプセル化することにより(特許文献6)により、新規な金属結合部位を導入することにより(特許文献7)により、A2領域をA3領域に、ペプチド結合(特許文献8及び9)で、又は、ジスルフィド結合(特許文献10)の何れかで共有結合させることにより、又は、A1領域をA2領域に共有結合させることにより(特許文献11)なされている。
【0008】
FVIII又は、VWFの機能的半減期を増強するための別のアプローチは、FVIIIのPEG化(特許文献12、13、14)又は、VWFのPEG化(特許文献15)、であり、増加した半減期を有することにより、PEG化したVWFが血漿中に存在するFVIIIの半減期をも間接的に増強する。又、FVIIIの融合タンパク質も記載されている(特許文献16、17及び18)。
【0009】
フォンヴィレブランド病(VWD)の異なる形態中において、欠損しているか、機能的な欠陥を有するか、又は、減少した量でのみ得られる、VWFは、複数の生理学的機能を有し、哺乳動物の血漿中に存在する多量体接着性糖タンパク質である。一次止血の間、VWFは、血小板表面上の特異的受容体と、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの成分との間の介在物質として作用する。更に、VWFは、凝血原FVIIIのための担体及び安定化タンパク質としての役割を有する。VWFは2813アミノ酸前駆体分子として内皮細胞及び巨核球内で合成される。野生型VWFのアミノ酸配列及びcDNA配列は、非特許文献1に開示されている。前駆体ポリペプチドである、プレプロVWFは、成熟血漿VWF中に見出される22残基のシグナルペプチド、741残基のプロペプチド及び2050残基のポリペプチドからなる(非特許文献2)。小胞体におけるシグナルペプチドの切断後、VWFの2つの単量体の間でC末端ジスルフィド架橋が形成される。分泌経路を更に輸送する間に、N結合型及びO結合型炭水化物側鎖が付加される。より重要なことは、VWF二量体は、N末端ジスルフィド架橋を介して多量体化され、741アミノ酸長のプロペプチドは、後期ゴルジ体内の酵素PACE/フューリンによって切断されることである。プロペプチド並びにVWFの高分子量多量体(VWF−HMWM)は、内皮細胞のバイベル−パラード(Weibel−Palade)小体又は、血小板のα−顆粒に貯蔵される。
【0010】
一旦、血漿中に分泌されたプロテアーゼADAMTS13は、VWFのA1領域内でVWFを切断する。従って、血漿VWFは、500kDaの単一の二量体から10,000kDaを超える分子量を有する二量体20以上からなる多量体までの全範囲の多量体からなる。VWF−高分子量多量体(HMWM)は最強の止血活性を有し、これはリストセチン補因子活性(VWF:RCo)中で測定しても良い。VWF:RCo/VWF抗原の比率が高いほど、高分子量多量体の相対量が高くなる。
【0011】
VWFの欠損が、フォンヴィレブランド病(VWD)の原因であり、多かれ少なかれ明白な出血性表現型を特徴とする。VWD3型は、最も重篤な形態であり、VWFが完全に欠損しており、VWD1型は、VWFの定量的な損失に関連し、その表現型は非常に軽度となり得る。VWD2型は、VWFの定性的欠損に関連し、VWD3型と同等に重篤となり得る。VWD2型は、多くの副次的形態を有し、その内、いくつかは高分子量多量体の損失又は、減少と関連している。Von VWD2a型は、中間型多量体と大型多量体の両方の損失が特徴的である。VWD2B型は、最高分子量の多量体の損失が特徴的である。
【0012】
VWDは、ヒトにおいて最も頻出する遺伝性の出血性疾患であり、血漿又は、組換え由来のVWFを含有する濃縮物を用いる補充療法によって治療しても良い。
【0013】
血漿中で、FVIIIは高い親和性でVWFに結合し、成熟前の異化作用から保護し、従って一次止血における役割の他に、FVIIIの血漿レベルを調節する重要な役割を果たし、結果として二次止血を制御する中心的因子でもある。VWFに結合した活性化していないFVIIIの半減期は、血漿中で約12〜14時間である。 VWFがほとんど又は全く存在しないフォンヴィレブランド病3型では、FVIIIの半減期は僅か約6時間であり、FVIIIの濃度低下のため、そのような患者が、軽度から中等度の血友病Aの症状に至るのである。FVIIIに及ぼすVWFの安定化効果は、又、CHO細胞におけるFVIIIの組換え発現を補助するためにも使用されている(非特許文献3)。
【0014】
VWF、FVIII又は、両因子の半減期を増加させるための製品及び方法についての必要性がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の態様において、本発明は、血液凝固障害の治療に使用するための、ヒト受容体タンパク質CLEC10A又はそのオルソログに結合し得る抗体に関する。
【0021】
他の態様では、本発明は、血液凝固障害の治療に使用するためのヒトCLEC10A又は、そのオルソログに結合し得る化合物に関し、ここで前記化合物は、
(i)抗体であり、
(ii)ヒトCLEC10A又はそのオルソログに特異的に結合し得て、
(iii)ABO(H)血液型抗原の一部、又はそれに由来する利用可能な糖残基を含まず、
(iv)前記化合物の一部であり得る炭水化物構造を介して受容体タンパク質CLEC10A又は、そのオルソログに結合せず、
(v)ヒトASGP受容体に結合せず、
(vi)ヒト受容体CLEC4Mに結合せず、
(vii)ヒト受容体SCARA5に結合せず、
(viii)ヒト受容体MMRに結合せず、
(ix)ヒト受容体CLEC4Fに結合せず、及び/又は、
(x)ヒト受容体COLEC12に結合しない。
【0022】
CLEC10A
CLEC10Aは、マクロファージGal型レクチンとしても知られ、CLECファミリーのヒトII型膜貫通受容体タンパク質である。さらなる同義語としては、C型レクチンスーパーファミリーメンバー14、マクロファージレクチン2及びCD301である。CLEC10Aは、肝臓ASGPRタンパク質と密接な関係があるが、中間単球、マクロファージ及び樹状細胞によって発現する。それにもかかわらず、CLEC10A及びASGPRは、明確に異なる細胞局在及び炭水化物特異性を有する異種タンパク質である。CLEC10Aは、樹状細胞による病原体の認識に関与し、しかも、癌発生において腫瘍関連糖タンパク質を選択的に認識することが報告されている(van Vlietら(2005)International Immunology、17:661−669; Napoletanoら(2012) European Journal of Immunology、42:936−945)。この受容体は、末端α−及びβ−結合GalNAc残基を含む糖タンパク質への結合を媒介するとして記載されている。Tn−抗原(セリン/スレオニンにα結合したGalNAc)及びシアリル−Tn−抗原構造のようなO−結合型炭水化物構造は、CLEC10Aの好ましい相互作用パートナーとして同定されている(van Vlietら(2005)International Immunology、17:661−669; Saelandら(2007)Cancer Immunology、Immunotherapy、56:1225−1236; van Vlietら(2008)International Immunology、29:83−90; Denda−Nagaiら(2010 )The Journal of Biological Chemistry、285:19193−19204; Mortezaiら(2013)Glycobiology、23:844−852)。多くの腫瘍細胞は、グリコシルトランスフェラーゼの、変化した発現レベル及び活性に起因する異常なグリコシル化を示し、これはTn抗原などのグリカンの異常な発現をもたらす(van Vlietら(2008)International Immunology、29:83−90。
【0023】
本明細書中で使用する用語「CLEC10A」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は、その天然由来の変異体を有する、又は、それからなるヒトタンパク質を意味する。CLEC10Aは、UniProtデータベース中で識別子Q8IUN9−1、Q8IUN9−2、及びQ8IUN9−3で示されるようなアミノ酸配列を有する、又は、それからなるタンパク質を含むが、これに限定する訳ではない。最も好ましくは、CLEC10Aは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか又は、それからなる。
【0024】
CLEC10Aのオルソログは、マウス、ラット及びゼブラフィッシュを含む数種において同定されている。ヒトはCLEC10Aの単一遺伝子を保有し、一方マウスは2つの密接に関連するMGL1及びMGL2遺伝子を有する。マウス受容体タンパク質も又、マクロファージ上及び未成熟樹状細胞上で発現する。ヒトCLEC10A及びマウス受容体タンパク質は、アミノ酸レベルで高度の相同性を示す。炭水化物認識領域内で、ヒトCLEC10Aは、マウスMGL1及びマウスMGL2の両方と約60%のアミノ酸配列同一性を共有する(Suzukiら(1996)The Journal of Immunology、156:128−135)。同様のリガンド好適性がヒトCLEC10A、マウスMGL1及びマウスMGL2によって示され、以前に報告された結合性の研究では、3種の受容体タンパク質の全てがGal及びGalNAc関連を認識することを実証している(Suzukiら(1996)The Journal of Immunology、156:128−135;Oo−puthinanら(2008)Biochimica et Biophysica Acta、1780:89−100)。MGL1及びMGL2は、そのアミノ酸配列(アミノ酸同一性が約90%)内において互いに高度に相同であり、しかも炭水化物認識領域において高度の同一性を共有する(Tsuijiら(2002)The Journal of Biological Chemistry、277: 28892−28901;Oo−puthinanら(2008)Biochimica et Biophysica Acta、1780:89−100)。
【0025】
本発明による好ましいオルソログには、
・ マウス由来のオルソログ(mus musculus)例えば、UniProt識別子P49300、F8WHB7及びQ8JZN1の内の1種により、定義されるアミノ酸配列を有するか又は、それからなるポリペプチド;
・ ラット(rattus norvegicus)由来のオルソログ、例えば、UniProt識別子P49301により、定義されるアミノ酸配列を有するか又は、それからなるポリペプチド。
・ ウサギ(oryctolagus cuniculus)由来のオルソログ、
・ モルモット(cavia porcellus)由来のオルソログ、
・ カニクイザル(macaca fascicularis)由来のオルソログ及び
・ アカゲザル(macaca mulatta)由来のオルソログなどが挙げられる。
【0026】
CLEC10Aに結合し得る化合物
CLEC10Aに結合し得る化合物(以下、「化合物」という)の種類や分類は特に限定されない。 然しながら、好ましくは、化合物はペプチド又は、ポリペプチドであり、最も好ましくは化合物は抗体又は、その断片である。
【0027】
本明細書で使用する用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子を意味し、特定の抗原と結合、又は、免疫学的に反応性を示し、かつポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子操作抗体及びその他の修飾した形態の抗体を含み、抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ)、単一領域抗体(ナノボディ)及び抗体の抗原結合断片、例えばFab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG及びscFvなど、を含むが、これに限定する訳ではない。更に、特に示さない限り、用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、無処置の分子、ならびにタンパク質に結合し得る抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’)2断片)の両方を含むことを意味する。Fab及びF(ab’)2断片は、無処置の抗体のFc断片を欠損しており、動物又は、植物の循環からより迅速に除去され、無処置の抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性がある(Wahlら、1983、J Nucl。Med。24:316)。
【0028】
本発明の抗体は、CLEC10Aの少なくとも1種の変異体に結合し得る。好ましい実施形態において、抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に結合し得る。最も好ましい実施形態では、抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に結合し得る。
【0029】
他の実施形態では、抗体はCLEC10Aの細胞外領域、例えば、配列番号2のアミノ酸61−316内のエピトープに結合し得る。
【0030】
好ましくは、本発明の抗体は、CLEC10Aのレクチン結合部位に結合する。
【0031】
好ましくは、本発明の抗体は、可変領域のアミノ酸残基を介してCLEC10Aに結合する。より好ましくは、本発明の抗体は、ABO(H)血液型抗原に由来する利用可能な糖残基を含まず、抗体は利用可能な糖残基、即ちガラクトース、フコース又は、N−アセチルガラクトサミンを含まない。更により好ましくは、抗体はFc領域にグリコシル化部位を含まず、例えば、抗体は、Kabatの番号に従うと残基N297の変異を有するIgGである。最も好ましくは、グリコシル化されていない抗体である。
【0032】
又、抗体がCLEC10Aに特異的に結合することも好ましい。一実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、以下の受容体、ASGPR1、COLEC12、CLEC4F、CLEC4M、SCARA5及びMMRの2種又はそれ以上に、好ましくは全てに結合し得ない。
【0033】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、ASGPR1(UniProt識別子:P07306)には結合し得ない。
【0034】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、COLEC12(UniProt識別子、Q5KU26)には結合し得ない。
【0035】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、CLEC4F(UniProt識別子、Q8N1N0)には結合し得ない。
【0036】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、CLEC4M(UniProt識別子、Q9H2X3)には結合し得ない。
【0037】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、SCARA5(UniProt識別子、Q6ZMJ2)には結合し得ない。
【0038】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、MMR(UniProt識別子、P22897)には結合し得ない。
【0039】
更に別の実施形態では、抗体はCLEC10Aに結合し得るが、以下の受容体、ASGPR1、COLEC12、CLEC4F、CLEC4M、SCARA5及びMMR、の何れの1種にも結合し得ない。
【0040】
別の実施形態では、抗体は、CLEC10Aの少なくとも1種のマウスオルソログに結合し得る。 その実施形態において、抗体は、MGL1、MGL2、又は、MGL1及びMGL2の両方に結合し得る。 抗体は、UniProt識別子番号P49300に定義されるアミノ酸配列を有するか又は、それからなるタンパク質に結合し得る。 この抗体は、UniProt 識別子番号 F8WHB7に定義されるアミノ酸配列を有するか又は、それからなるタンパク質に結合し得る。抗体は、UniProt識別子番号 Q8JZN1に定義されるアミノ酸配列を有するか又は、それからなるタンパク質に結合し得る。
【0041】
別の実施形態では、抗体はCLEC10Aのラットオルソログに結合し得る。別の実施形態では、抗体はCLEC10Aのウサギオルソログに結合し得る。別の実施形態では、抗体は、CLEC10Aのカニクイザル(macaca fascicularis)オルソログ、及び/又はアカゲザル(macaca mulatta)オルソログに結合し得る。
【0042】
CLEC10Aに対する抗体の結合は、以下の実施例1に記載するように決定することができる。
【0043】
CLEC10A及び抗体によって形成される複合体の解離定数K
Dは、好ましくは100nM未満、より好ましくは10nM未満、最も好ましくは5nM未満である。通常、K
Dは、約10pM〜約100nM、又は、約100pM〜約10nM、又は、約500pM〜約5nMの範囲である。
【0044】
好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物、原核生物又は、ファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体を意味し、それが産生される方法ではない。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又は、それらを組合わせる使用を含む、当該分野で公知の多種多様な技術を用いて調製しても良い。(Harlow and Lane、“Antibodies、A Laboratory Manual”、CSH Press 1988、Cold Spring Harbor、NY)。
【0045】
ヒトにおける抗CLEC10A抗体のインビボでの使用を含む他の実施形態では、キメラ、霊長類化された、ヒト化された、又は、ヒト抗体を使用しても良い。好ましい実施形態では、抗体はヒト抗体又は、ヒト化抗体であり、より好ましくはモノクローナルヒト抗体又は、モノクローナルヒト化抗体である。
【0046】
本明細書で使用される用語「キメラ」抗体とは、例えば、ラット又は、マウス抗体等等の非ヒト免疫グロブリン、及び、通常、ヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域、から誘導される可変配列を有する抗体を意味する。キメラ抗体を産生するための方法は、当該分野で公知である。例えば、Morrison、1985、Science 229(4719):1202−7を参照のこと。Oiら、1986、BioTechniques 4:214−221;Gilliesら、1985、J.Immunol。Methods 125:191−202、米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、及び第4,816,397号に記載され、これらは、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又は、その断片(抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は、他の標的結合サブ配列など)であり、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、実質的に全て、少なくとも1種、及び、通常は2種の可変ドメインを含み、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、かつFR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常は選択されたヒト免疫グロブリン鋳型のものを含んでも良い。ヒト化は、キメラ抗体を作製するための技術であり、1種又は、それ以上のアミノ酸、又はヒト可変領域の一部分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。ヒト化抗体は、非ヒト種で産生した抗体分子であり、非ヒト種由来の1種又は、それ以上の相補性決定領域(CDR)を有する所望の抗原と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク(FR)領域とを結合する。しばしば、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換され、抗原結合を改変し、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法によって同定され、例えばCDRとフレームワーク残基との相互作用をモデリングし、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定し、及び配列比較して、特定の位置での異常なフレームワーク残基を同定する。例えば、Riechmannら、1988、Nature 332:323−7及びQueenら、米国特許第5,530,101号;第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号及び第6,180,370号(その各々は、その全体が参照により組込まれる)を参照のこと。抗体は、ヒト化しても良く、当該分野で周知の種々の技術としては、例えばCDR移植(欧州特許第239400号、国際特許公開第91/09967号、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号及び第5,585,089号)、ベニアリング又は、再表面化(欧州特許第592106号、欧州特許第519596号、Padlan,1991,MoI.Immunol,28:489−498、Studnickaら、1994、Prot.Eng.7:805−814;Roguskaら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973)、及びチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)等を使用し、これらはすべて、参照によりその全体を本明細書に組込む。
【0048】
いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、Queenらの米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号及び第6,180,370号に記載されているように調製する(その各々は、その全体を参照により組込む)。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体はヒト抗体である。完全な「ヒト」抗CLEC10A抗体は、ヒト患者の治療的処置に望ましいものとなり得る。本明細書中で使用する「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、又は、1種又はそれ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニック動物から得られた抗体を含み、しかも、内因性免疫グロブリンを発現しない。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いて上記のファージディスプレイ法を含む、当該分野で公知の種々の方法により作製出来る。米国特許第4,444,887号、及び第4,716,111号、及び国際特許公開第98/46645号、国際特許公開第98/50433号、国際特許公開第98/24893号、国際特許公開第98/16654号;国際特許公開第96/34096号、国際特許公開第96/33735号、及び国際特許公開第91/10741号、を参照のこと、これらは、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ヒト抗体はまた、遺伝子導入マウスを用いて作製出来、これらは機能的内因性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができる。例えば、国際特許公開第98/24893号、国際特許公開第92/01047号、国際特許公開第96/34096号、国際特許公開第96/33735号、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号、及び第5,939,598号を参照のこと、これらは、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と称する技術を用いて産生することが出来る。この手法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、完全ヒト抗体の選択を誘導し、同じエピトープを認識する(Jespersら、1988、Biotechnology 12:899−903)。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体は霊長類化抗体である。用語「霊長類化抗体」とは、サルの可変領域とヒト定常領域とを含む抗体を意味する。霊長類化した抗体を産生する方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第5,658,570号、第5,681,722号及び第5,693,780号を参照のこと、これらは、各々その全体が参照により本明細書に組込まれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、モノクローナル、好ましくはヒト又は、ヒト化抗体であり、少なくとも2種の異なる抗原に対し結合特異性を有する。本発明の方法で有用な二重特異性抗体において、結合特異性は、CLEC10A上の異なる2種の特異的エピトープに直接向かうことが出来、それによりVWFの結合を単一特異性抗体よりも更に効果的に遮断することが出来る。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体は誘導体化された抗体である。例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンド又は、他のタンパク質への結合(抗体コンジュゲートの考察については以下を参照のこと)などにより修飾された誘導体化抗体が挙げられるが、これに限定する訳ではない。多数の化学修飾の何れも、既知の技術、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等により、実施することが出来るがこれに限定する訳ではない。更に、その誘導体は、1種又はそれ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体又は、その断片は、その配列が対応する野生型配列と関連する少なくとも1種の定常領域媒介生物学的エフェクター機能を低下させるように修飾された抗体又は、抗体断片であり得る。抗CLEC10A抗体を、Fc受容体への結合の減少を示すように、修飾すると、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントはFc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域で変異させることが出来る(例えばCanfield and Morrison、1991、J.Exp.Med.173:1483−1491;及びLundら、1991、J.Immunol.147:2657−2662参照のこと)。抗体のFcR結合能力の低下はまた、オプソニン作用及び貪食性及び抗原依存性細胞傷害作用のようなFcR相互作用に依存する他のエフェクター機能を低下させ得る。
【0054】
更に別の態様では、抗CLEC10A抗体又は、その断片は、胎児性Fc受容体FcRnに対するそれらの結合親和性を増加又は、減少させるように修飾した抗体又は、抗体断片でも良い。FcRnへの結合親和性を変更するために、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントは、FcRnとの相互作用に必要な特定の領域を突然変異させても良い(例えば、国際特許公開第2005/123780号参照)。FcRnに対する結合親和性が増加すると、抗体の血清半減期が増加する筈であり、FcRnに対する結合親和性が低減すると、逆に抗体の血清半減期が減少する筈である。特定の実施形態では、抗CLEC10A抗体は、重鎖定常領域のアミノ酸残基250、314及び428の少なくとも1種が未修飾抗体に存在するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基で置換されたIgGクラスである。IgGクラスの抗体には、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の抗体が含まれる。置換は単独の位置250、314、または428で、又はそれらの組合わせの何れかで、例えば、位置250と428とで、又は位置250と314とで、又は位置314と428とで、または位置250と314並びに428とを、好ましい組み合わせとして位置250および428とで行なう。各位置において、置換アミノ酸は、非修飾抗体のその位置に存在するものとは異なるどのようなアミノ酸残基でも良い。位置250について、置換アミノ酸残基は、スレオニン以外のどのようなアミノ酸残基でも良く、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、又は、チロシン等を含むが、これらに限定する訳ではない。位置314については、置換アミノ酸残基は、ロイシン以外のどのようなアミノ酸残基でも良く、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、又は、チロシン等を含むが、これらに限定する訳ではない。位置428では、置換アミノ酸残基は、メチオニン以外のどのようなアミノ酸残基でも良く、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、又は、チロシン等を含むが、これらに限定する訳ではない。適切なアミノ酸置換の特定の組み合わせは、国際特許公開第2005/123780号の表1と同一であり、この表は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。Hintonら、米国特許第7,217,797号、第7,361,740号、第7,365,168号、及び第7,217,798号も参照のこと、これらも参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
【0055】
更に他の態様では、抗CLEC10A抗体は、その超可変領域の1種又はそれ以上に挿入された1種又はそれ以上のアミノ酸を有し、これは例えば米国特許公開第2007/0280931号に記載されている。
【0056】
抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態において、抗CLEC10A抗体は、抗体コンジュゲートであり、これは例えば、任意のタイプの分子を抗体へ共有結合することにより修飾し、CLEC10Aへの結合を共有結合が妨害しないようにしたものである。エフェクター部分を抗体に結合させる技術は、当該分野において周知である(例えば、Hellstromら、Controlled Drag Delivery、第2版、623−53頁(Robinsonら、eds.,1987)、 Thorpeら、1982、Immunol.Rev.62:119−58及びDubowchikら、1999、Pharmacology and Therapeutics 83:67−123)。
【0057】
1つの実施例において、抗体又はその断片は、共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して、場合によりN末端又はC末端で、別のタンパク質(又は、その一部、好ましくはそのタンパク質の 少なくとも10、20又は50個のアミノ酸部分)のアミノ酸配列と融合している。好ましくは、抗体又は、その断片は、抗体の定常領域のN末端で他のタンパク質に連結される。組換えDNA手順を使用して、例えば、国際特許公開第86/01533号、及び欧州特許第0392745号に記載されているように、そのような融合物を作製しても良い。別の実施例において、エフェクター分子はインビボで半減期を増加させ得る。この型の適切なエフェクター分子としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又は、国際特許公開第2005/117984号、に記載されているようなアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗CLEC10A抗体をポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合させても良い。例えば、抗体が抗体断片である場合、PEG部分は、抗体断片内に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は、末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又は、カルボキシル基を介して結合させても良い。このようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に存在するものでもよく、又は、組換えDNA法を用いて断片中に操作したものでも良い。例えば、米国特許第5,219,996号を参照のこと。複数の部位を用いて、2種またはそれ以上のPEG分子を結合させても良い。好ましくは、PEG部分は、抗体断片内に位置する少なくとも1種のシステイン残基のチオール基を介して共有結合的に連結される。チオール基を結合箇所として使用する場合、適切に活性化されたエフェクター部分、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体のようなチオール選択性誘導体を使用しても良い。
【0059】
別の例において、抗CLEC10A抗体コンジュゲートは、例えば欧州特許第0948544号に開示された方法に従ってPEG化された、すなわちそれにPEG(ポリ(エチレングリコール))を共有結合させた修飾Fab’断片である。Poly(ethyleneglycol)Chemistry、Biotechnical and Biomedical Applications(J.Milton Harris(ed.)、Plenum Press、New York、1992)ポリ(エチレングリコール)化学及び生物学的応用、(J.Milton Harris及びS.Zalipsky編、American Chemical Society、Washington D.C.1997)及びBioconjugation Protein Coupling Techniques for Biomedical Sciences(M.Aslam and A.Dent、編、Grove Publishers、New York、1998)。及びChapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews 54:531−545。も参照のこと。
【0060】
凝固障害の治療
本明細書に記載の抗CLEC10A抗体は、限定する訳ではないが、血友病及びフォンヴィレブランド病を含む凝固障害の治療に有用である。好ましくは、該疾患は、血友病A又は、フォンヴィレブランド病である。
【0061】
用語「血友病A」とは、機能性凝固FVIIIの欠損を意味し、通常遺伝性である。
【0062】
用語「フォンヴィレブランド病」(VWD)とは、VWFの定性的又は、定量的欠損に関連する凝固異常を意味する。
【0063】
疾患の治療は、いずれかの臨床段階又は、症状において既に疾患の任意の形態を有すると診断された患者の治療を包含し、発症又は進展又は悪化、症状の憎悪又は疾患の徴候の遅延、及び/又は、疾患の重篤度を予防及び/又は、低減することを含む。
【0064】
抗CLEC10A抗体を投与する「被験者」又は、「患者」は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は、霊長類(例えば、サル又は、ヒト)等の哺乳類でも良い。好ましくは、患者はヒトである。特定の態様において、ヒトは小児患者である。他の態様において、ヒトは成人患者である。
【0065】
抗CLEC10A抗体、及び、場合により1種又は、それ以上の追加治療薬、例えば、以下に記載の第2の治療薬、を含む組成物を本明細書に記載する。組成物は、通常は、薬学的に許容される担体を含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。この組成物は、(患者に投与する所望の方法に応じて)適切であれば任意の形態でも良い。
【0066】
抗CLEC10A抗体は、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、局所的又は、局部的等種々の経路により、患者に投与しても良い。与えられる如何なる場合でも投与のために最も適切な経路は、特定の抗体、被験者、及び疾患の性質及び重症度ならびに被験者の体調に依存する。通常は、抗CLEC10A抗体を静脈内投与する。
【0067】
通常の実施形態では、抗CLEC10A抗体は、静脈内投与を可能にするのに十分な濃度0.5mg/kg〜20mg/kgで医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法における使用に適した抗体の濃度としては、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、又は、前記の何れかの値の間の範囲の濃度、例えば、1mg/kg〜10mg/kg、5mg/kg〜15mg/kg、又は、10mg/kg〜18mg/kg.を含むが、これに限定する訳ではない。
【0068】
抗CLEC10A抗体の有効用量は、単回(例えば、ボーラス)投与、複数回投与又は、連続投与当たり約0.001〜約750mg/kgの範囲で良く、又は、(例えば、ボーラス)投与、複数回の投与又は、連続投与で、血清濃度0.01〜5000μg/mlの血清濃度を達成することができ、又は、投与する対象の症状、投与経路及び対象の年齢、体重、及び状態に依存するがその中の任意の有効な範囲又は、値で良い。特定の実施形態では、各用量は、体重1キログラム当たり約0.5mg〜約50mg又は、体重キログラムあたり約3mg〜約30mgの範囲で良い。抗体は、水溶液として製剤化しても良い。
【0069】
医薬組成物は、用量当たり所定量の抗CLEC10A抗体を含有する単位用量形態で簡便に提供することができる。 その単位は、0.5mg〜5gであり、例えば、1mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、750mg、1000mg、又は、前記値の何れか2つの間の任意の範囲、例えば10mg〜1000mg、20mg〜50mg、又は、30mg〜300mgであるが、これに限定する訳ではない。薬学的に許容される担体は、例えば、治療される状態又は、投与経路に応じて多種多様な形態を採り得る。
【0070】
抗CLEC10A抗体を用いる有効投薬量、総用量数及び治療期間の決定は、当業者の能力の範囲内に十分納まり、標準的な用量増量試験を用いて決定しても良い。
【0071】
本明細書に記載した方法に適した抗CLEC10A抗体の治療用製剤は、凍結乾燥製剤又は、水溶液として保存するために調製しても良く、所望の程度の純度を有する抗体を、当該分野で通常使用される任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は、安定剤(これら全てを本明細書で担体と称す)即ち、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤、及びその他の種々の添加剤と混合する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版(Osol、編.1980)を参照のこと。このような添加剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒でなければならない。
【0072】
緩衝剤は、生理学的条件を近似する範囲のpHを維持するのに役立つ。それらは、約2mM〜約50mMの範囲の濃度で提供し得る。適切な緩衝剤としては有機及び無機酸の両方、及びその塩であり、クエン酸塩緩衝液(例、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩緩衝液(例、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩緩衝剤(例、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物、フマル酸塩緩衝液(例、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物等)、グルコン酸塩緩衝液(例、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物等)、シュウ酸塩緩衝液(例、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物、等)、乳酸塩緩衝液(例、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物等)及び酢酸塩緩衝液(例、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物等)等を含む。更に、リン酸塩緩衝液、ヒスチジン緩衝液及びトリスなどのトリメチルアミン塩を使用しても良い。
【0073】
保存剤を、微生物の増殖を遅らせるために添加しても良く、0.2%〜1%(w/v)の範囲の量を添加しても良い。適切な保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハライド(例、塩化物、臭化物及びヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、及び、メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3−ペンタノールを挙げられる。時々は、「安定化剤」として知られる等張化剤を添加し、液体組成物の等張性を確実にしても良く、例えば、多価糖アルコール、好ましくはグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールなどの3価又はそれ以上の糖アルコールを含んでも良い。安定剤は、広範囲のカテゴリーの賦形剤を意味し、機能的に、バルキング剤から治療剤を可溶化するか、又は、変質若しくは、容器壁への付着を防止するのに役立つ添加剤までの範囲を有し得る。通常の安定化剤としては、多価糖アルコール(上記に列挙)、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなどのアミノ酸、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロールなどであり、イノシトールなどのシクリトールを含む、有機糖又は糖アルコーを挙げられ、ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー、硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム、低分子量ポリペプチド(例、10又はそれ以下の残基を有するペプチド)、タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は、免疫グロブリンなど、親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、単糖類、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなど、二糖類、例えばラクトース、マルトース、スクロース及び三糖類、例ラフィノースなど、;及び多糖類 例デキストランなどを挙げられる。安定化剤は、活性タンパク質1重量部当たり0.1〜10,000重量の範囲で存在することができる。
【0074】
非イオン性表面活性剤又は、界面活性剤(「湿潤剤」としても知られている)を添加して、治療剤の可溶化を補助するとともに、撹拌により誘発される凝集から治療用タンパク質を保護し、又、製剤がタンパク質の変質を引き起こすことなく、せん断面応力に曝されるのを可能にする。適切な非イオン性表面活性剤は、ポリソルベート(20,80等)、ポリオキサマー(184,188等)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80等)を含む。 非イオン性表面活性剤は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/mlの範囲で、又は、約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲で存在し得る。
【0075】
更に他の種々の賦形剤としては、バルキング剤(例えばデンプン)、キレート化剤(例えばEDTA)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、及び共溶媒が挙げられる。
【0076】
本明細書の製剤は又、抗CLEC10A抗体の他に第2の治療剤を含有しても良い。第2の治療薬として適切な例を以下に示す。
【0077】
投与スケジュールは、月に1度から毎日と、変動し得るが、疾患の型、疾患の重症度、及び抗CLEC10A抗体に対する患者の感受性を含む臨床的因子の数に依拠する。特定の実施形態では、抗CLEC10A抗体を、毎日、週に2回、週に3回、5日毎に、10日毎に、2週間毎に、3週間毎に、4週間毎に、又は1ヶ月に1回、又は 前述の値のうちの任意の2つの値の間の任意の範囲、例えば、4週間から一月毎、10日から2週間毎、又は、1週間に2〜3回などに投与する。
【0078】
投与される抗CLEC10A抗体の投与量は、特定の抗体、被験体、及び疾患の性質及び重症度、被験者の体調、治療計画(例えば、第2の治療剤を使用するかどうか)、及び選択された投与経路に従って変動し、適切な投薬量は、当業者により、直ちに決定され得る。
【0079】
抗CLEC10A抗体の個々の投薬量の最適な量及び間隔は、治療される状態の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、及び治療を受ける特定の被験者の年齢及び状態により決定され、しかも使用する適切な投薬量を最終的に医師が決定するものであることは当業者には認識されるであろう。この投薬量は、適切な回数繰り返しても良い。もし、副作用が発現する場合、投薬の量及び/又は頻度は、標準的臨床基準に従って、変更や低減しても良い。
【0080】
併用療法
好ましくは、抗CLEC10A抗体を用いる治療を受けている患者は、又、従来の凝固障害の療法の治療も受ける。例えば、血友病に罹患している患者は、通常、血液凝固因子、例えば、第VIII因子、VWF又は、それらの組合わせを用いる治療も受けている。
【0081】
本明細書で使用する用語「フォンヴィレブランド因子」(VWF)とは、天然に存在するVWFを含むが、その変異体をも含み、例えば、断片、融合タンパク質又は、コンジュゲート、又は1種若しくはそれ以上の残基を挿入、欠失又は、置換した配列変異体であり、生物学的活性を保持している天然のVWFである。 もし、VWF変異体が野生型の少なくとも1種の生物学的活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%を保持しているならば、本発明の意味において生物学的活性が保持されていることになる。野生型VWF及びその変異体の生物学的活性は、リストセチン補因子活性に関する方法(Federici AB ら、2004.Haematologica 89:77−85)、血小板糖タンパク質複合体Ib−V−IXのGPIbαへのVWFの結合(Sucker ら.2006.Clin Appl Thromb Hemost.12:305−310)、コラーゲン結合アッセイ(Kallas & Talpsep.2001.Annals of Hematology 80:466−471)、または第VIII因子への結合を使用して、当業者により、決定することができる。
【0082】
用語「第VIII因子」と「FVIII」とは、本明細書において同義語として使用する。「FVIII」は、ある個体から別の個体に存在して発生し得るFVIIIの天然の対立遺伝子変異を含む。FVIIIは、周知の産生及び精製方法を用いて、血漿由来で又は、組換え的に産生しても良い。グリコシル化、チロシン硫酸化及び他の翻訳後修飾の程度及び位置は、選択された宿主細胞及びその増殖条件に依存して変化し得る。
【0083】
用語FVIIIには、FVIII類似体が含まれる。本明細書で使用する用語「FVIII類似体」とは、FVIIIの野生型アミノ酸配列(即ち、UniProt識別子P00451によって定義される配列)と比較して1種又はそれ以上のアミノ酸が置換又は、欠失しているFVIII分子(完全長又は、B−領域切断/欠失、又は、単鎖FVIII)を、又は、B領域切断/欠失FVIII分子については、そのアミノ酸配列に対応する部分を意味する。FVIII類似体は天然では存在しないが、ヒトの操作によって得られる。
【0084】
本発明に従って使用する第VIII因子分子は又、B領域切断/欠失FVIII分子であっても良く、ここで残された領域は、FVIII野生型アミノ酸配列のアミノ酸番号1−740及び1649−2332に示されるような配列に対応する。B−領域欠失FVIII分子の他の形態は、a3領域に部分的欠失を更に有し、単鎖FVIII分子をもたらす。
【0085】
これらのFVIII分子は、形質転換された、好ましくは哺乳動物由来の宿主細胞内で組換えた分子であることになる。然しながら、B領域欠失FVIII(すなわち、3つのA領域、2つのC領域、及びa1、a2及びa3領域)内の残りの領域は、僅かに、例えば各々の野生型アミノ酸配列(アミノ酸1−740及び1649−2332)から約1%、2%、3%、4%又は、5%、異なり得る。
【0086】
本発明に従って使用されるFVIII分子は、二本鎖FVIII分子又は、一本鎖FVIII分子であっても良い。本発明の組成物に含まれるFVIII分子は又、生物学的に活性なFVIIIの断片であっても良く、即ち、B領域以外の領域が欠失若しくは切断されてはいるが、欠失/切断された形態内でFVIII分子は、血餅の形成を補助するその能力を保持している。FVIII活性は、当該分野で周知の技術を用いてインビトロで評価することが出来る。本発明によるFVIII活性を決定するための好ましい試験は、発色基質アッセイ又は、1段階アッセイ(下記参照)である。アミノ酸の修飾(置換、欠失等)を残りの領域等の中に導入して、例えば、フォンヴィレブランド因子 (vWF)、低密度リポタンパク質受容体の関連タンパク質(LPR)、種々の受容体、他の凝固因子、細胞表面など種々の他の成分で、第VIII因子の結合能力を修飾しても良く、又は、グリコシル化部位などを導入及び/又は、廃止しても良い。本発明の組成物における使用のためにFVIII活性を消失させない他の変異体もまた、FVIII分子/類似体中で適応し得る。
【0087】
FVIII類似体は又、親ポリペプチドの1種若しくはそれ以上のアミノ酸残基が欠失し、又は、他のアミノ酸残基で置換したFVIII分子を含み、及び/又は、追加的にアミノ酸残基が親FVIIIポリペプチドに付加されている。
【0088】
更に、第VIII因子分子/類似体は、例えば、切断されたB−領域内に、及び/又は、分子(「FVIII誘導体」)の1種若しくはそれ以上の他の領域内に、他の修飾を含み得る。これらの他の修飾は、第VIII因子分子にコンジュゲートした種々の分子の形態、例えば、高分子化合物、ペプチド化合物、脂肪酸由来化合物等でも良い。
【0089】
用語FVIIIは、グリコPEG化FVIIIを含む。 本明細書の文脈上、用語「グリコPEG化FVIII」とは、第VIII因子分子(全長FVIII及びB領域切断/欠失FVIIIを含む)を指定することを意図しており、ここで、1種若しくはそれ以上のPEG基がポリペプチドの多糖類側鎖(グリカン)を介してFVIIIポリペプチドに結合している。
【0090】
用語FVIIIは、保護基又は、半減期延長部位を有するFVIII分子を含む。用語「保護基」/「半減期延長部部位」とは、本明細書では、1種若しくはそれ以上のアミノ酸サイト鎖官能基に結合した1種若しくはそれ以上の−SH、−OH、−COOH、−CONH2、−NH2などの化学基、又は、1種若しくはそれ以上のN−及び/又は、O−グリカン構造を意味し、しかも、これらのタンパク質/ペプチドにコンジュゲートした場合、多数の治療タンパク質/ペプチドのインビボ循環半減期を延長し得るものを意味すると理解する。保護基/半減期延長部位の例としては、生体適合性脂肪酸及びその誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、例えばヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリ(Glyx−Sery)n(ホモアミノ酸ポリマー(HAP))、ヒアルロン酸(HA)、ヘパロサンポリマー(HEP)、ホスホリルコリン系ポリマー(PCポリマー)、Fleximer(登録商標)ポリマー(Mersana Therapeutics社製,MA,USA)、デキストラン、ポリシアル酸(PSA)、ポリエチレングリコール(PEG)、Fc領域、トランスフェリン、アルブミン、エラスチン様ペプチド、XTEN(登録商標)ポリマー(Amunix社製、CA、USA)、アルブミン結合ペプチド、フォンヴィレブランド 因子断片(vWF断片)、カルボキシル末端ペプチド(CTPペプチド、Prolor Biotech社製、IL)、及びそれらの任意の組合わせ(例えば、McCormick、CL、AB Lowe及びN.Ayres、Water−Soluble Polymers、in Encyclopedia of Polymer Science and Technology、2002、John Wiley&Sons、Inc.)。誘導体化の手法には重大な意味はなく、上記から解明することができる。
【0091】
本発明に従って使用し得るFVIII分子としては、異種アミノ酸配列に融合したFVIIIアミノ酸配列、好ましくは半減期延長アミノ酸配列を含む融合タンパク質が挙げられる。好ましい融合タンパク質としては、Fc融合タンパク質及びアルブミン融合タンパク質である。本明細書において、用語「Fc融合タンパク質」とは、任意の抗体アイソタイプに由来し得るFc領域に融合したFVIIIを包含した意味を有する。IgG Fc領域は、IgG抗体の循環半減期が比較的長いため、好ましいことが多い。Fc領域を、更に修飾し、例えば結合を補完し及び/又は、特定のFc受容体へ結合する等の、特定のエフェクター機能、を調節しても良い。FcRn受容体に結合する能力を有するFc領域とFVIIIとの融合は、一般に、野生型FVIII(wt FVIII)の半減期と比較して、融合タンパク質の循環半減期を延長させるであろう。本発明における使用のためのFVIII分子は、FVIII類似体の誘導体、例えば、FVIII類似体の融合タンパク質、PEG化又は、グリコPEG化FVIII類似体又は、又は、ヘパロザンポリマーとコンジュゲートしたFVIII類似体等でも良い。本明細書において、「アルブミン融合タンパク質」という用語は、アルブミンアミノ酸配列又は、その断片に、若しくはその誘導体に融合したFVIIIを包含した意味を有する。異種アミノ酸配列を、FVIIIのN末端やC末端に融合しても良く、又、FVIIIアミノ酸配列内部に挿入しても良い。異種アミノ酸配列は、国際特許公開第2008/077616号に記載されている「半減期延長ポリペプチド」の何れでもよく、その開示は参照により本明細書に組込まれる。
【0092】
本発明の組成物で使用するためのFVIII分子の例としては、例えば、国際特許公開第2010/045568号、国際特許公開第2009/062100号、国際特許公開第2010/014708号、国際特許公開第2008/082669号、国際特許公開第2007/126808、米国特許公開第2010/0173831号、米国特許公開第2010/0173830号、米国特許公開第2010/0168391号、米国特許公開第2010/0113365号、米国特許公開第2010/0113364号、国際特許公開第2003/031464号、国際特許公開第2009/108806号、国際特許公開第2010/102886号、国際特許公開第2010/115866号、国際特許公開第2011/101242号、国際特許公開第2011/101284号、国際特許公開第2011/101277号、国際特許公開第2011/131510号、国際特許公開第2012/007324号、国際特許公開第2011/101267号、国際特許公開第2013/083858、及び国際特許公開第2004/067566に記載されたFVIII分子を含む。
【0093】
本発明の組成物に使用し得るFVIII分子の例としては、Advate(登録商標)、Helixate(登録商標)、Kogenate(登録商標)、Xyntha(登録商標)の活性成分ならびに国際特許公開第2008/135501号、国際特許公開第2009/007451号に記載されたFVIII分子、及び国際特許公開第2004/067566号の「dBN(64−53)」と命名した構築物を含む。
【0094】
本発明に従って使用される組成物中の第VIII因子の濃度は、通常、10〜10,000IU/mLの範囲である。異なる実施形態において、本発明の組成物中のFVIII分子の濃度は、10〜8,000IU/mL、又は、10〜5,000IU/mL、又は、20〜3,000IU/mL、又は、50〜1500IU/mL、又は3,000IU/mL、又は、2,500IU/mL、又は、2,000IU/mL、又は、1,500IU/mL又は、1,200IU/mL、又は、1,000IU/mL、又は、800IU/mL、又は、600IU/mL、又は、500IU/mL、又は、400IU/mL、又は、300IU/mL、又は、250IU/mL、又は、200IU/mL、又は、150IU/mL、又は、100IU/mLである。
【0095】
「国際単位」又は、「IU」は、FVIII活性アッセイ、例えば、一次段階凝固アッセイ又は、発色基質FVIII活性アッセイ等により測定されるFVIIIの血液凝固活性(効力)の測定単位であり、「IU」で較正した国際標準製剤に対する標準の較正を用いる。N Lee、Martin Lら、An Effect of Predilution on Potency Assays of FVIII Concentrates,Thrombosis Research(Pergamon Press 社)30,511,519(1983年)に記載されているような、一段階凝固アッセイ法が当該技術分野に知られている。一段階アッセイの原理。この試験は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイの改良版として実施される。血漿とリン脂質及び表面活性化剤とのインキュベーションにより、内因性凝固系の因子が活性化する。カルシウムイオンの添加が、凝固カスケードのトリガーとなる。測定可能なフィブリン血餅の形成までの時間を測定する。アッセイは、第VIII因子欠損血漿の存在下で実施される。その欠損血漿の凝固能力は、試験される試料に含まれる凝固因子VIIIによって回復される。凝固時間の短縮は、試料中に存在する第VIII因子の量に比例する。凝固第VIII因子の活性は、活性既知の標準的な第VIII因子の製剤の国際単位と直接比較することによって定量化される。
【0096】
別の標準的なアッセイは、発色基質アッセイである。発色基質アッセイは、coamatic FVIII試験キット(Chromogenix−Instrumentation Laboratory SpA V.le Monza 338−20128 Milano、Italy)などの市販品を購入しても良い。発色アッセイの原理。カルシウム及びリン脂質の存在下で、第IXa因子により、第X因子が第Xa因子に活性化される。この反応は補因子としての第VIIIa因子によって刺激される。FVIIIaは、測定すべき試料中のFVIII由来の反応混合物中の少量のトロンビンにより形成される。最適濃度のCa
2+、リン脂質及び第IXa因子及び過剰量の第X因子を使用する場合、第X因子の活性化は第VIII因子の効力に比例する。活性化した第X因子は発色基質S−2765から発色団pNAを放出する。従って、405nmで測定するpNAの放出は、形成したFXaの量に比例し、従って、サンプルの第VIII因子活性にも比例する。
【0097】
一実施形態では、治療は、本発明の抗CLEC10A抗体と第VIII因子とを、血友病、好ましくは血友病Aに罹患している患者に投与することを含む。
【0098】
他の実施形態では、治療は、本発明の抗CLEC10A抗体とVWFとを、血友病、好ましくは血友病Aに罹患している患者に投与することを含む。
【0099】
別の実施形態において、治療は、本発明の抗CLEC10A抗体と第VIII因子とVWFとを、血友病、好ましくは血友病Aに罹患している患者に投与することを含む。
【0100】
別の実施形態において、治療は、本発明の抗CLEC10A抗体とVWFとをフォンヴィレブランド病に罹患している患者に投与することを含む。
【0101】
特定の実施形態では、抗CLEC10A抗体と血液凝固因子(例えば、第VIII因子、VWF又は、それらの組合わせ)とを同時に投与する。別の実施形態では、抗CLEC10A抗体と血液凝固因子(例えば、第VIII因子、VWF又は、それらの組合わせ)とを別々に投与する。抗CLEC10A抗体と血液凝固因子(例えば、第VIII因子、VWF又は、それらの組合わせ)との投与の間の時間は、特に制限はない。血液凝固因子(例えば第VIII因子、VWF又は、それらの組合わせ)を抗CLEC10A抗体の前に投与することが好ましい。
【0102】
本発明の別の態様は、(i)上記で定義した第1の化合物(好ましくは抗体)と(ii)第VIII因子、フォンヴィレブランド因子及びそれらの組合わせからなる群から選択されたポリペプチドとを含む医薬キットである。好ましくは、化合物(好ましくは抗体)及びポリペプチドは別々の組成物中に含まれる。
【0103】
本発明の別の態様は、(i)本明細書中上記で定義した第1の化合物(好ましくは抗体)及び(ii)第VIII因子、フォンヴィレブランド因子及びそれらの組合せからなる群から選択されたポリペプチドを含み、血液凝固障害の治療において、同時に、別々に、又は、逐次に使用するための医薬キットである。
【0104】
本発明の別の態様は、フォンヴィレブランド因子の半減期を増加させるか又は、クリアランスを減少させるための、上記に定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。
【0105】
用語「半減期」とは、インビボでの血行からタンパク質の半分を除去するのに要する時間を意味する。曲線下面積(AUC)を決定して、クリアランス効果を評価できる。クリアランスを低減すると、AUC値がより高くなり、かつ半減期の延長をもたらす。
【0106】
本発明の更に別の態様は、第VIII因子の半減期を増加するための、上記に定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。
【0107】
本発明の更に別の態様は、治療処置におけるフォンヴィレブランド因子の半減期を延長するために使用する上記で定義した化合物(好ましくは抗体)である。
【0108】
本発明は更に、本明細書中、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の有効量を被験者に投与することを含む、インビボでのフォンヴィレブランド因子の半減期を増加するか又は、クリアランスを低減する方法に関する。
【0109】
本発明のさらなる態様は、本明細書中、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の有効量をそれを必要とする患者に、投与することを含む血液凝固障害を治療する方法である。
【0110】
更なる態様は、血友病Aの治療におけるFVIIIの投与の頻度を低減するための、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。FVIIIの静脈内又は、皮下投与の頻度は、週に2回に低減し得る。或いは、FVIIIの静脈内又は、皮下投与の頻度を1週間に1回に低減し得る。
【0111】
更なる態様は、VWDの治療におけるVWFの投与の頻度を低減するための、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。VWFの静脈内又は、皮下投与の頻度は、週に2回に低減し得る。或いは、VWFの静脈内又は、皮下投与の頻度は、週に1回に低減し得る。
【0112】
別の態様は、血友病Aの治療において投与されるFVIIIの用量を低減するための、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。
【0113】
別の態様は、VWDの治療において投与されるVWFの用量を低減するための、上記で定義した化合物(好ましくは抗体)の使用である。
【0114】
本明細書で使用する用語「ABO(H)血液型抗原」とは、抗A抗体又は、抗B抗体により、一般に認識される、赤血球上に存在する炭水化物抗原を意味する。ABO(H)血液型システム(blood group system)は、ヒトの輸血における最も重要な血液型システム(blood type system)である。 H抗原は、ABO(H)血液型抗原の必須前駆体であり、主にタンパク質に結合した炭水化物構造であり、セラミドに結合した少量画分を有する。これは、β−D−ガラクトース、β−D−N−アセチルグルコサミン、β−D−ガラクトース及び2結合型α−L−フコースの鎖からなる。A抗原は、H抗原の末端のD−ガラクトース残基に結合したα−N−アセチルガラクトサミンを含み、B抗原はH抗原のD−ガラクトースに結合したα−D−ガラクトース残基を有する。従って、ABO(H)血液型システムの末端糖残基はガラクトース、N−アセチルガラクトサミン及びフコースである。
【実施例】
【0115】
実施例1 ヒトVWF単量体と組換えヒトCLEC10Aとの相互作用
材料と方法
表面プラズモン共鳴(SPR)技術(Biacore T200、GE Healthcare Biosciences、Uppsala、Sweden)を適用して、精製したヒトVWF単量体(検体)とCLEC10A(リガンド)等の受容体タンパク質とのリアルタイム生体分子相互作用のメカニズムを評価した。Biacore T200のようなSPRベースの機器は、光学的方法を使用して、リガンドが固定されている金属センサ表面の裏面に近い屈折率の変化をモニターする。分析物は、移動相内にあり、固定されたリガンド上を連続的に通過する。リガンドが分析物を捕捉するという事象により、表面上に分析物が蓄積することになり、その結果、屈折率が増加し、これを、反射光の強度の変化を検出することによるSPR応答として、リアルタイムで測定した。SPR信号はRUで表現し、経時的な信号の変化をセンサーグラムとして表示した。基準フローセルからのバックグラウンド応答値は、実験応答値から差し引いた。SPRシグナルの変化の大きさは、固定化又は、捕捉された質量に正比例し、しかも、結合定数のアッセイ及び結合現象の動力学的解析をリアルタイムで、及び標識を付けない環境で可能である(Biacore Handbook、2008; Schasfoort& Tudos、2008; Biacore Handbook、2012)。
【0116】
相互作用の試験をHEPES10mM、NaCl 150mM、CaCl
2 5mM及びTween−20.05%(w/v)を含むランニング緩衝液、これは試料希釈緩衝液としても使用、をpH7.4で適用することにより、フローセル温度+ 25℃で実施した。使用したタンパク質は、適用前にPD−10脱塩カラム(GE Healthcare Life Sciences社製、Freiburg、Germany)によってランニング緩衝液に移動した。試薬及び緩衝ストック溶液は、GE Healthcare Biosciences社(Uppsala、Sweden)から購入し、使用前に緩衝溶液を滅菌濾過した(0.22μmStericupフィルターユニット、Millipore社製、Massachusetts、USA)。CLEC10Aの細胞外領域は、R&D Systems社(Wiesbaden、Germany)から入手した。更に、ヒトアルブミン(CSL Behring社、Marburg、Germany)を対照タンパク質として使用した。 CLEC10Aを、製造者の指示書に従って前処理(カルボキシメチル化して平坦に)したSeries S Sensor Chip C1で捕捉した。CLEC10Aの調査は、予濃縮工程より開始し、所望レベルの固定化を得るために、並びに、固定化のための最適なpH値を決定するために、必要なタンパク質の量を推定した。固定化を効率的にするために、固定化緩衝液のpH値をリガンドの等電点より低くしなければならない。従って、pH探査のために、CLEC10Aを先ず注射用水(WFI)中に1mg/mLの濃度で溶解し、更にpH4.0、4.5、5.0及び5.5の酢酸ナトリウム緩衝液10mMで各々1:50に希釈した。この方法は、接触時間180秒、及び流速5μL/分を適用することにより、Biacore機器制御ソフトウェア内の固定化pH探査ウィザードに従って実施した。分析後、共有結合による固定化を開始する前に表面をNaOH50mMで再生した。
【0117】
固定化の目的のために、溶解したCLEC10Aを最適pH値(pH5.0)の酢酸ナトリウム緩衝液10mMで濃度20μg/mLに希釈した。製造業者の実験計画書に従ってアミンカップリングキットを適用することによって、リガンドを遊離アミン基を介してカルボキシメチル化デキストランマトリックスに、共有結合的に固定した。EDC0.05MとNHS0.2Mとの1:1混合物が活性化した後、チップ表面上に存在するリガンドの第一級アミン基と遊離カルボン酸基との間で7分間結合させる。固定化は流速10μL/分、25℃で実施した。最終的表面密度は範囲700〜1,500RUを目標とした。更に、タンパク質を固定化していないブランクフローセルを、バルク移動及び非特異的結合の変化のためのチップ上の参照表面として含めた。リガンドを固定化した後、両チップ表面を1Mエタノールアミン−HCl(pH8.5)で7分間遮断し、次いで、固定化プロセスの間に潜在的に形成される非共有結合、非特異的相互作用を10mM NaOHで10秒間、3回、流速25μL/分で洗浄することにより除去した。SPRベースラインは、それぞれの場合にランニング緩衝液を用いる始動サイクルを5回実施することによって調整した。
【0118】
濃度が増加するVWF単量体を、ランニング緩衝液中で連続2倍希釈系列として調製し、チップ表面に25μL/分で逐次注入し、タンパク質−リガンド相互作用の特性を調べた。VWF単量体の濃度は4,000〜31.25nMの範囲であり、VWF単量体の分子量(MW)を基に計算した。緩衝液組成の変化に対してSPRシステムは高い感度を有するため、全ての試料は類似した緩衝液組成物を含むように設計した。比較的高い流速を選択し、物質移動の制限に起因する再結合の可能性を避けた。相互作用解析サイクルは、5分間の試料注入段階からなるようにした。この会合段階において、VWFがCLEC10Aに結合し、表面上に固定化し、表面質量が増加した。この段階の後、ランニング緩衝液中での17分間の解離段階となる。解離段階においては、試料はランニング緩衝液で置換され、解離したVWFが表面から除去され、結果的に表面質量が減少する。試験では、全ての試料を繰返し測定した。チップ表面と対照表面の両方は、表面上に固定されたCLEC10Aから、結合したVWFを除去するために、NaOH10mMの10秒パルスで再生するが、これは、それぞれの実行の間に、即ち、最後の2分間洗浄ステップをランニング緩衝液で開始する前に、3回繰り返す一つのステップと次の実行との間に実施する。動的データは、Biacore T200評価ソフトウェアVer.1.0(GE Healthcare Biosciences社、Uppsala、Sweden)を用いて分析したが、データセットは情報目的にのみ使用した。
【0119】
SPRは主に質量検出器として使用した。VWFとCLEC10Aとの相互作用は、蓄積した質量の増加により検出し、特異的結合は、対照表面から記録された結合応答を差し引き、続いてブランクとして注入した緩衝液の平均を差し引くことによって同定した。試料注入の終了後20秒に時点を置き、着目する安定なタンパク質−リガンド相互作用の代表として評価した。従って、この点を、VWFとCLEC10Aとの間の生体分子相互作用の評価及び計算に使用した。更に、試験は少なくとも二重に実施し、応答を各々の場合の基準値に対して相対的に計算した。VWF−CLEC10A相互作用の一般的評価の外に、CLEC10Aの50%を占める全VWF濃度の応答を表す親和定数(R50%)を決定した。親和定数は、定義された報告点を適用することにより結合親和性の推定に使用し、ソフトウェアによって予め設定された定常状態親和性適合を用いて球状の非線形曲線適合から誘導する。更に、解離速度定数(解離速度)は、解離相のみを適合させることにより計算した。適切な解離モデルは確立されており(Biacore Training Courses、2008)、以前に定義した報告ポイントを計算に使用した。
【0120】
結果
SPRにより特性が明らかにされたCLEC10Aについて、
図1に示すように、VWFは用量に依存する強い結合を示した。
【0121】
実施例2 ヒトVWF単量体と組換えヒトCLEC10A及びCLEC10Aオルソログマウスタンパク質(MGL1及びMGL2)の両者との相互作用
材料と方法
CLEC10A、MGL1及びMGL2を、実施例1に各々記載したように、シリーズSセンサーチップCM3上(固定化のためのpH値:CLEC10A及びMGL1の両方についてpH5.0、MGL2についてpH5.5)に固定化した。受容体タンパク質の固定化はアミンカップリングにより、実施したが、表面密度は6,000(±500)RUを目標とした。試験は実施例1に記載したように実施した。
【0122】
結果
結合相互作用をSPR分析により調査した。表1並びに
図2及び3の結果では、精製したヒトVWF単量体が、ヒトCLEC10A及びマウス受容体の両方のタンパク質にインビトロで用量依存的に結合することを明確に実証した。一般に、3種の受容体タンパク質全てついて類似した結合特性が観察された。
【0123】
VWFの受容体結合についての親和定数(R50%)を推定した。更に、解離速度定数(解離速度)は、解離相のみを適合させることにより計算した。安定なタンパク質−リガンド相互作用を代表する結合応答(サンプル注入の終了後20秒)を計算に使用した。マウス受容体タンパク質MGL1及びMGL2に対するヒトVWF単量体は、ヒトCLEC10Aに対するVWF結合と比較して、親和性がより低いことが推定された。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例3 中和抗MGL1/2抗体の存在下でのMGL2へのVWF結合の阻害
材料と方法
VWF結合に及ぼすポリクローナルヤギ抗MGL1/2抗体(Prod.No.AF4297、R&D Systems社、Wiesbaden、Germany)の阻害効果をSPR分析により調査した。凍結乾燥した抗体をランニング緩衝液中に200μg/mLの濃度で溶解した。mGL1及びMGL2を、各々シリーズS Sensor Chip CM3上に固定した。受容体タンパク質の固定化は、前述のようにアミンカップリングにより実施した。表面密度6,000(±500)RUを目標とした。ランニング緩衝液及び抗MGL1/2抗体を各々12分間注入し、続いて5分間、VWF単量体(2μM)を重複して注入し、8分間の最終解離相を注入した。SPR分析は+ 25℃で20μL/分の流速で行った。
【0126】
結果
例えば(
図4参照)、中和抗MGL1/2は、固定化されたMGL2(
図4A及び4B参照)との強い結合を示し、その結果質量が増加した。分析物として使用したVWFが、固定化した受容体タンパク質に結合しなかったのは、中和抗体が受容体の各々の結合領域を遮断するためである。 その結果、VWF結合を検出出来なかった。 対照的に、VWFは、ランニング緩衝液(
図4A及び4Cを参照)を用いた対照試料によって実証するように、中和抗体の非存在下で固定化MGL2に強く結合した。
【0127】
結論として、ポリクローナル抗体の受容体遮断効果は、SPR分析により、明確に確認された。結果として、SPRによる分析は、抗体が、固定化されたMGL1及びMGL2の各々とVWFとの相互作用を完全に遮断することを示した。結果として、両方の抗体が、MGL1及びMGL2を特異的にブロックするために適用可能であることを定性的に評価した。
【0128】
実施例4 阻害抗体を使用し、インビボでのヒトCLEC10Aのマウスオルソログ受容体タンパク質を特異的に遮断し、マウスにおけるインビボでのVWFのクリアランスを低減した。
2種のCLEC10Aオルソログ受容体タンパク質MGL1及びMGL2はマウス中に存在する。 ポリクローナルヤギ抗MGL1/2抗体(Prod。No.AF4297、R&D Systems社、Wiesbaden、Germany)をインビボでの受容体遮断に適用した。更に、プールした正常ヤギ血清から精製した非特異的抗体(Prod。No.I5256、Sigma−Aldrich社、St.Louis、USA)を対照治療として使用した。
【0129】
VWF欠損マウスに、体重1kgあたり8mgの特異的阻害抗体を静脈内に投与し、インビボでのVWFクリアランスに及ぼすMGL1及びMGL2受容体の効果を研究した。前もって、凍結乾燥した抗体を等張性NaCl溶液(適用量5mL/kgb.w.)に溶解した。 非特異的抗体を対照治療として使用した。10分後、マウスに単回の静脈内注射(適用量5mL/kgb.w.)としてヒトpdVWF(200IU/gb.w.)を投与した。試験計画は各2匹のマウスからなる2つの群を含む。VWFの投与後に血液試料を採取した(1群、5分及び120分に採取。2群、60分及び240分に採取)、試料を血漿試料に処理し、次いでVWF:Ag ELISAで分析した。得られたデータを
図5に示す。統計的分析の概要を表2に示した。
【0130】
PKデータの分析により、VWF欠損マウスの抗MGL1/2抗体治療は、対照抗体を投与した群と比較した場合、ヒトVWFのクリアランスに阻害効果を及ぼすことを示した。阻害性抗MGL1/2抗体の存在下では、AUCは対照治療と比較して約1.7倍高く、かつVWFの血漿クリアランス速度は約1.7倍低かった。結論として、MGL1及びMGL2は、インビボでのVWFクリアランスにおいて重要な効果を果たし、しかもVWFの取り込みの必須介在物である可能性があることを見出した。
【0131】
要約すると、VWFクリアランスにおける各々の受容体タンパク質の関与を更に評価するため、阻害抗体を使用して、インビボにおけるヒトCLEC10Aのマウスオルソログ受容体タンパク質の炭水化物認識領域を特異的に遮断した。PKデータの分析により、VWF欠損マウスの抗MGL1/2抗体治療は、非特異的対照抗体を投与した群と比較した場合、ヒトVWFのクリアランスに阻害効果を及ぼすことを示した。MGL1/MGL2に向けられた抗体は、ヒトVWFの分解を顕著な程度で阻害し、MGL1/MGL2がVWFの結合に寄与し、しかもその特異的受容体遮断がin vivoでのVWFの取込みを妨害することを示した。これらのデータは、VWFが受容体媒介機構を介して細胞内に取り込まれたの英語細胞内に取り込まれ、VWFの取込みにおけるヒトCLEC10Aの関与を確証することを示唆している。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例5 ヒトCLEC10Aに対する遮断抗体の産生
当業者にとって、ヒト組換え又は膜関連CLEC10Aに対する遮断抗体の発見に使用し得る抗体生成方法は数多く存在する。この実施例では、抗体産生と予備的機能性スクリーニングのために、組換えCLEC10Aを用いる抗体ファージディスプレイ技術を使用した。抗体遮断活性の確認は、細胞ベースの内部移行アッセイ又は、適切なモデルにおけるインビボでの薬物動態学的研究を用いて行った。
【0134】
以前に記載した方法(国際特許公開第2013/014092号)を用いて、ビオチン化ヒトCLEC10Aに対してスクリーニングするために、ヒトFabベースのファージディスプレイライブラリー(Dyax Corp.、Cambridge、MA)を使用した。3回のパニングの後、各回のパニングから複数の個々のファージクローンを選択し、Fab−ファージELISAを用いて、ヒトCLEC10Aへの特異的結合をスクリーニングする。任意のCLEC10A特異的ファージクローンについて、Fab領域をPCRを用いて増幅し、可変領域配列(重鎖及び軽鎖)をヌクレオチド配列決定により決定する。更に機能的評価のために、CLEC10A特異的Fab抗体を無処置のヒトIgG4抗体に再設計し、以前に記載されているように(国際特許公開第2013/014092号)哺乳動物発現系を用いて発現させる。CLEC10Aに対するこれらIgG抗体の特異的結合は、ELISAによって確認した。ヒトCLEC10Aに対する結合特異性を有する独特なIgG抗体のパネルを同定した。
【0135】
機能遮断活性のためのCLEC10A特異的抗体のスクリーニング
CLEC10A特異的IgG抗体の機能遮断活性を、ビオチン化βGalNAcPAA又は、vWFのCLEC10Aへの結合を阻害する能力により、ELISAで評価した。次いで、このアッセイで遮断活性を示す抗体を、フローサイトメトリーを用いて活性化マクロファージによるフルオロフォアでコンジュゲートしたVWFの内在化を調節する能力についてさらに特徴付けする。この実施例から同定された機能遮断抗体は何れも本質的に完全この実施例から同定された機能遮断抗体は何れも本質的に完全なヒトであるので、それらはヒトにおける治療への使用に容易に受け入れられる。この実施例から同定された機能遮断抗体は何れも本質的に完全なヒトであるので、それらはヒトにおける治療への使用に容易に受け入れられる。