【実施例】
【0041】
実施例1 式Iで表される化合物の製造
ステップ1: 4−クロロ−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン
【0042】
【化4】
【0043】
7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4(3H)−オン(2.0g、9.6mmol)と1滴のN,N−ジメチルホルムアミドを塩化チオニル(6mL)において一晩還流し、次に反応混合物を減圧濃縮させた。残渣にトルエンを加え、再び減圧濃縮させて、残留した塩化チオニルを除去し、表題化合物(2g、92%)を得た。
1H NMR (CDCl
3): δ 9.18 (1H, s), 9.05 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.95 (1H, d, J = 10.4)。
【0044】
ステップ2: 3−クロロ−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−フルオロアニリン
【0045】
【化5】
【0046】
3−クロロ−4−フルオロアニリン(2.9g、20mmol)および3,4−ジメトキシベンゼンホルムアルデヒド(3.3g、20mmol)を1,2−ジクロロエタン(30mL)に加え、室温で1時間撹拌した。次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(10g、50mmol)を加えて、反応混合液を室温で一晩撹拌した。反応混合液を水100mLに投入してジクロロメタンで抽出した。有機相を分離して、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機相を減圧濃縮させて表題化合物(5.5g、93%)を得た。
1H NMR (CDCl
3): δ 6.94−6.82 (4H, m), 6.63−6.61 (1H, m), 6.45−6.41 (1H, m), 4.18 (2H, s), 3.98 (1H, br), 3.87 (3H, s), 3.86 (3H, s)。
【0047】
ステップ3: N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン
【0048】
【化6】
【0049】
4−クロロ−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン(2.1g、9.2mmol)および3−クロロ−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−フルオロアニリン(2.7g、9.2mmol)を、アセトニトリル(20mL)に加えて3時間還流した。冷却後、炭酸ナトリウム溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出して有機相を分離し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮させて表題化合物(3.6g、80%)を得た。
【0050】
ステップ4: N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン
【0051】
【化7】
【0052】
金属ナトリウム(113mg、5.0mmol)を無水メタノール(20mL)に加え、室温で10分間撹拌し、次にN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン(2.4g、5.0mmol)を加えて、混合液を40℃で6時間撹拌した。冷却後、混合液を水100mLに投入して、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮させて表題化合物(2.35g、94%)を得た。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.85 (1H, s), 7.57 (1H, s), 7.35 (1H, s), 7.23−7.19 (2H, m), 7.00−6.96 (1H, m), 6.84−6.78 (2H, m), 5.35 (2H, s), 4.05 (3H, s), 3.88 (3H, s), 3.83 (3H, s)。
【0053】
ステップ5: N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N
4−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0054】
【化8】
【0055】
N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン(2.35g、4.7mmol)およびラネーニッケル(約0.5g)を、テトラヒドロフラン(100mL)に加え、水素ガスで置換し、水素雰囲気下(1atm)、室温で一晩撹拌した。濾過して、濾液を減圧濃縮させて表題化合物(2g、90%)を得た。
【0056】
ステップ6: tert−ブチル−4−{{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(3,4−ジメトキシベンジル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}アミノ}ピペリジン−1−カルボキシレート
【0057】
【化9】
【0058】
N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N
4−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン(469mg、1.0mmol)およびtert−ブチル−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(239mg、1.2mmol)の酢酸(10mL)溶液とを室温下で2時間撹拌し、次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(254mg、1.2mmol)を一括して加えた。半時間反応した後、水を緩やかに加えて反応をクエンチさせ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を順に水、5%NaHCO
3水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮させた。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して表題化合物(404mg、62%)を得た。
【0059】
ステップ7: N
6−(ピペリジン−4−イル)−N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0060】
【化10】
【0061】
tert−ブチル−4−{{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(3,4−ジメトキシベンジル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}アミノ}ピペリジン−1−カルボキシレート(0.4g、0.61mmol)のトリフルオロ酢酸(8mL)溶液を70℃で6時間撹拌した。反応終了後、冷却して減圧濃縮させ、残留物を酢酸エチルでスラリーに調製し、濾過して表題化合物であるトリフルオロ酢酸塩(0.26g、83%)を得た。
【0062】
ステップ8: N
6−(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)−N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0063】
【化11】
【0064】
N
6−(ピペリジン−4−イル)−N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミンモノトリフルオロ酢酸塩(258mg、0.5mmol)およびトリエチルアミン(202mg、2.0mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を室温で30分間撹拌した。0℃まで冷却した後、塩化アクリロイル(54mg、0.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2mL)を滴下し、滴下終了後、30分間引き続き反応させた。反応終了後、5%NaHCO
3溶液を緩やかに加えて反応をクエンチさせ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて減圧濃縮させ、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して目的生成物(150mg、66%)を得た。
1H NMR (DMSO−d6): δ 9.24 (1H, s), 8.33 (1H, s), 8.09−8.08 (1H, m), 7.77−7.74 (1H, m), 7.42−7.40 (1H, m), 7.23 (1H, s), 7.06 (1H, s), 6.85−6.81 (1H, m), 6.10−6.06 (1H, m), 5.66−5.64 (1H, m), 5.32−5.29 (1H, m), 4.41−4.38 (1H, m), 4.09−4.06 (1H, m), 3.93 (3H, s), 3.79−3.78 (1H, m), 3.35−3.34 (1H, m), 2.87−2.84 (1H, m), 2.03−2.01 (2H, m), 1.44−1.41 (2H, m)。
【0065】
実施例2 式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造
【0066】
室温で、式Iで表される化合物5gをDMF 100mLに溶解して、絶えずに撹拌して均一にし、マレイン酸6.3gを加えた後、80℃まで昇温して2時間反応させ、次に、この温度で水100mlを加えて直接噴霧乾燥させ、黄色固体粉末4.0gを得、XRDパターンにより、式Iで表される化合物の非晶質マレイン酸塩(1:1)であった。
【0067】
実施例3 式Iで表される化合物のクエン酸塩、蓚酸塩および酢酸塩の製造
【0068】
実施例2と同様な方法によって、式Iで表される化合物のクエン酸塩、蓚酸塩および酢酸塩をそれぞれ製造した。
【0069】
実施例4 生物学的利用能実験
研究方法:体重7.4〜9.4kgのビーグル犬15匹をランダムに5群に分け、5mg/kg体重の式Iで表される化合物およびそのマレイン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、酢酸塩(式Iで表される化合物の量で換算)のCMC−Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)懸濁液をそれぞれ経口投与し、投与前と投与後(0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、24、48時間の時点)に採血し、LC−MS法によって犬血漿サンプルにおける式Iで表される化合物の濃度をそれぞれ測定して生物学的利用能を計算した。
【0070】
検出方法:
クロマトグラフィー条件は、移動相A:メタノール、移動相B:0.1%(v/v)のギ酸水溶液、アイソクラティック溶離方式: A:B=52:48、流速:0.2mL/min、カラム温度:35℃、クロマトグラフィーカラム:SHIMADZU Shim−pack VP−ODS C
18(5.0μm、150mm×2.0mm I.D.島津社製)である。
【0071】
質量スペクトル条件は、イオン源:ESIイオン化源、SIM方式走査、湾曲型脱溶媒装置(CDL)温度:250℃、加熱ブロック(block)温度:200℃、CDL 電圧:25V、検出電圧:+1.60kV、噴霧ガス流速:1.5L/min、乾燥ガス流速:2.0L/minである。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例5 インビトロ活性試験
1.インビトロ酵素学的検出方法
【0074】
EGFR、EGFR(T790M、L858R)、HER2キナーゼは、昆虫発現系で発現させて精製して得られ、または市販品として購入して得られる。
【0075】
Cisbio社の均一時間分解蛍光(HTRF)法を用いて、EGFR、EGFR(T790M、L858R)、HER2のキナーゼ活性検出用プラットフォームを作成し、化合物の活性測定を行った。当該化合物について、100%DMSOを用い、それぞれ100nM(EGFRとHER2)、1μM(EGFR−T790M/L858R)から始めて3倍段階希釈を行い、各濃度のもの4μLを取って反応緩衝液(50mMの4−ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH7.0)、0.02%のNaN
3、0.01%の牛血清アルブミン(BSA)、0.1mMのオルトバナジン酸ナトリウム(Sodium Orthovanadate)、5mMのMgCl
2、50nMのSEB(Cisbio社製、商品番号:61SEBALB)、1mMのDTT)96μLに加え、得られた混合物2.5μLを取って384ウェルプレート(OptiPlate−384、Perkin Elmer)に加え、次に2.5μLのキナーゼを加えて遠心分離して均一混合し、その後、5μLのATPおよびTK基質−ビオチン(Substrate−biotin)を加えて反応を開始させた。384ウェルプレートをインキュベータに入れて23℃で一定時間反応させた後、Eu
3+−Cryptateで標識されたTK−Antibody 5μL、ストレプトアビジン(streptavidin)−XL665 5μLを加えて反応を停止した。インキュベータにおいて1時間インキュベートした後、Envision(Perkin Elmer)から蛍光値を読み取った。この化合物のIC
50値は、GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを用いて算出した。
【0076】
2.Anchorage−independent細胞増殖試験(足場非依存性細胞増殖試験)
ヒト非小細胞肺癌細胞NCI−H1975、ヒト乳癌細胞系BT474を細胞インキュベータ(37℃、5%CO
2)においてRPIM−1640、またはDMEM培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)で培養した。化合物の検出中、底層基質濃度を0.6%としており、細胞を0.3%の低融点寒天で再懸濁した後、1ウェルあたりに10,000個の細胞(100μL)を加えるように96ウェルプレートに播種した。化合物について10mMから始めて3倍段階希釈を行い、各濃度のもの2μLを取って培地98μLに加え、次に、得られた混合物5.3μLを取って細胞培養液(DMSO最終濃度0.1%、v/v)に加え、1週間(7日間)処理後、CellTiter−Blue(R)(Promega)試薬20μLを加えて、37℃で4時間インキュベートし、Envison(Perkin Elmer)において蛍光信号を読み取り、GraphPad Prism 5.0を用いて化合物による細胞増殖阻害のIC
50を算出した。
【0077】
【表2】