特許第6704422号(P6704422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704422キナゾリン誘導体の塩およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704422
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】キナゾリン誘導体の塩およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20200525BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   A61K31/517
   A61P35/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-567522(P2017-567522)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-508583(P2018-508583A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】CN2016076693
(87)【国際公開番号】WO2016150340
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】201510125962.4
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】516089795
【氏名又は名称】北京賽林泰医薬技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】CENTAURUS BIOPHARMA CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】515212149
【氏名又は名称】連雲港潤衆製薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, シーチャン
(72)【発明者】
【氏名】タン, ソン
(72)【発明者】
【氏名】フォン, ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】テェン, シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヂーリン
(72)【発明者】
【氏名】グー, ホンメイ
(72)【発明者】
【氏名】シュ, ホンジャン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, フェイ
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/529115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
で表される化合物のマレイン酸塩。
【請求項2】
前記式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比が1:0.5〜4である、請求項1に記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩。
【請求項3】
前記式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比が1:1または1:2である、請求項2に記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩。
【請求項4】
前記式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比が1:1である、請求項2に記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造方法であって、
式Iで表される化合物の溶液を製造するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた前記式Iで表される化合物の溶液とマレイン酸とを混合するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた反応混合物を噴霧乾燥させて、前記式Iで表される化合物のマレイン酸塩を得るステップ(3)とを含む、
式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造方法。
【請求項6】
前記式Iで表される化合物とマレイン酸との使用量のモル比は1:1〜20である、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)において、前記式Iで表される化合物を有機溶剤に溶解して前記式Iで表される化合物の溶液を製造する、請求項またはに記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶剤はDMFである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
噴霧乾燥前に、前記有機溶剤と相溶する溶剤を加え、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶剤と相溶する溶剤は水である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の式Iで表される化合物のマレイン酸塩を含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記腫瘍は非小細胞肺癌または乳癌である、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2015年03月20日に中華人民共和国国家知的財産局に出願された出願番号が201510125962.4である中国特許出願に基づく優先権および利益を主張し、当該出願の全文を引用により本願に組み込む。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医薬品化学分野に属し、より具体的には、キナゾリン誘導体の塩、その製造方法およびその医薬使用に関する。
【背景技術】
【0003】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、チロシンキナーゼ受容体であり、哺乳類の上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、ケラチノサイト等の細胞の表面に幅広く分布している。EGFRシグナル伝達経路は、細胞の成長、増殖や分化等の生理学的過程に対して重要な役割を果たしている。EGFR等のタンパク質チロシンキナーゼの機能喪失やそれに関連するシグナル伝達経路における重要な因子の活性や細胞局在の異常のいずれも腫瘍、糖尿病、免疫不全や心臓血管疾患の発症を引き起こすことになる。
【0004】
−(1−アクリロイルアザシクロヘキサン−4−イル)−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミンは、下記式Iで表される構造を有する。
【0005】
【化1】
【0006】
式Iで表されるのは、選択的上皮成長因子受容体阻害剤であり、細胞内ドメインのチロシンキナーゼのリン酸化部位と競合的結合することで、ATPとリン酸化部位との相互作用をブロックして、チロシンのリン酸化および下流での一連のシグナル伝達を阻害し、さらに腫瘍細胞の成長を阻害することができるものであり、非小細胞肺癌や乳癌等の複数種の悪性腫瘍を治療できる。特許文献1を参照として、その全文が引用により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第201310452885.4号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩を提供し、
【0009】
【化2】
【0010】
ここで、マレイン酸と式Iで表される化合物とのモル比は、前記塩を製造する際のマレイン酸の使用量により決定される。例えば、前記マレイン酸塩において、式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:0.5〜4であってもよい。
【0011】
本発明の別の態様では、式Iで表される化合物の溶液を製造するステップ(1)と、ステップ(1)で得られた前記式Iで表される化合物の溶液とマレイン酸とを接触させるステップ(2)と、ステップ(2)で得られた反応混合物を噴霧乾燥させて、前記式Iで表される化合物のマレイン酸塩を得るステップ(3)とを含む、式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明の別の態様では、前記式Iで表される化合物のマレイン酸塩と薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明の別の態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物の腫瘍治療薬の製造における使用を提供する。
【0014】
さらに、本発明の別の態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物を、必要な対象に投与するステップを含む腫瘍の治療方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明の別の態様では、腫瘍を治療するための式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、それぞれ開示された実施形態を全体的に理解するために、具体的な詳細を含んで説明したが、当業者は、これらの詳細の一部または複数の部分を用いずに他の方法、部品、材料などを用いても、これらの実施形態を実現することができると理解すべきである。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲の全てにわたって、特に断らない限り、「含む(comprise)」のような用語、およびその英語の変形(例えば「comprises」や「comprising」など)は、いずれも開放(オープンエンド)式の、包含式の意味、すなわち「・・・を含むがこれらに限定されない」として解釈されるべきである。
【0018】
本明細書にわたって記載された「一実施形態」または「実施形態」、あるいは「別の実施形態において」または「いくつかの実施形態において」とは、少なくとも1つの実施形態に、当該実施形態に記載の関連する具体的な参照要素、構造、または特徴を含むことを意味する。したがって、明細書の全体にわたって異なる位置に記載の「一実施形態において」、「実施形態において(実施形態では)」、「他の実施形態において」または「いくつかの実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すことではない。また、具体的な要素、構造または特徴は、任意の適切な方式で1つ以上の実施形態の中に組み合せられてもよい。
【0019】
本願の明細書および添付の特許請求の範囲に用いられた単数形の冠詞「一」、「1つ(の)」、「1個(の)」(英語の「a」、「an」、および「the」などに相当する)は、特に断らない限り、複数の対象(オブジェクト)が含まれていると理解すべきである。したがって、例えば、かかる「触媒」が含まれる反応には、1種の触媒、または2種以上の触媒が含まれている。また、用語「または」などは、特に断らない限り、通常「および/または」の意味を含んで用いられる。
【0020】
本発明の一態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩を提供し、
【0021】
【化3】
【0022】
ここで、マレイン酸と式Iで表される化合物とのモル比は、前記塩を製造する際のマレイン酸の使用量により決定される。例えば、前記マレイン酸塩において、式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:0.5〜4であってもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、前記マレイン酸塩の中、式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:1である。本発明の別のいくつかの実施形態において、前記マレイン酸塩の中、式Iで表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:2である。
【0024】
本発明の別の態様では、式Iで表される化合物の溶液を製造するステップ(1)と、ステップ(1)で得られた前記式Iで表される化合物の溶液とマレイン酸とを混合するステップ(2)と、ステップ(2)で得られた反応混合物を噴霧乾燥させて、前記式Iで表される化合物のマレイン酸塩を得るステップ(3)とを含む、式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造方法を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記製造方法には、式Iで表される化合物とマレイン酸との使用量のモル比は1:1〜20、好ましくは1:1〜15、最も好ましくは1:1〜10である。
【0026】
前記製造方法のステップ(1)において、式Iで表される化合物を有機溶剤に溶解して式Iで表される化合物の溶液を製造してもよい。前記有機溶剤は、式Iで表される化合物を溶解可能な全ての有機溶剤であればよく、例えばDMFが挙げられる。
【0027】
前記製造方法のステップ(2)において、ステップ(1)で得られた式Iで表される化合物の溶液とマレイン酸またはマレイン酸の溶液を混合し、さらに、必要に応じて反応混合物を適切な温度、例えば60〜100℃、好ましくは80℃に加熱してもよい。いくつかの実施形態において、マレイン酸の溶液はマレイン酸と有機溶剤を混合して得られたマレイン酸の有機溶液である。本発明のいくつかの実施形態において、前記有機溶剤は例えばDMFである。
【0028】
いくつかの実施形態において、噴霧乾燥前に、ステップ(1)および/または(2)における有機溶剤と相溶する溶剤、例えば水を加えてもよい。
【0029】
また、本発明の別の態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩と薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本明細書に記載の用語「医薬組成物」とは、本発明の化合物と、医薬分野で通常許容される、生物学的活性化合物を生体(例えば、ヒト)に送達できる担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体とを用いて製造された製剤である。医薬組成物の目的は、本発明に係る化合物の生体への投与を容易にすることである。
【0031】
本明細書に記載の用語「薬学的に許容される担体」とは、生体に対して顕著な刺激作用がなく、且つ活性化合物の生物学的活性や性能を損なうことのない担体や希釈剤を意味する。「薬学的に許容される賦形剤および/または媒体」とは、活性成分とともに投与され且つ生体への活性成分の送達に役立つ不活性物質である。「薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体」は、ヒトや家畜に利用可能な任意の担体、賦形剤、媒体、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、矯味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、崩壊剤、懸濁促進剤、安定剤、等張剤、溶剤または乳化剤等が挙げられるが、これらに制限されない。前記賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種の糖および各種の澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る式Iで表される化合物のマレイン酸塩は、純粋な形または適切な医薬組成物の形で投与できる。本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る式Iで表される化合物のマレイン酸塩と適切な薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを組み合わせて製造でき、かつ固体、半固体、液体または気体の製剤、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、クリーム剤、乳剤、懸濁剤、液剤、座薬、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェアおよびエアゾール等として調製できる。
【0033】
本発明に係る式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物の代表的な投与経路は、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経腸投与、または局所投与、経皮投与、吸入投与、非経口投与、舌下投与、膣内投与、鼻腔内投与、眼内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与が挙げられる。好ましい投与経路は、経口投与である。
【0034】
本発明に係る医薬組成物は、例えば通常の混合法、溶解法、造粒法、糖衣錠製法、粉砕法、乳化法、凍結乾燥法等の当業者に公知の法によって製造できる。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明に係る医薬組成物は経口投与に適した形である。経口投与には、活性化合物と当該分野でよく知られている薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体とを混合して該医薬組成物を製造できる。これらの担体、賦形剤、希釈剤および/または媒体を利用して、本発明に係る医薬組成物を錠剤、丸剤、トローチ剤、コート剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ、懸濁剤等に製造して、患者へ経口投与することができる。通常の混合法、充填法や打錠法によって経口固形組成物を製造できる。
【0036】
前記投与において、式Iで表される化合物のマレイン酸塩の1日投与量は、好ましくは0.01〜200mg/kg体重である。
【0037】
また、本発明の別の態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物の腫瘍治療薬の製造における使用を提供する。
【0038】
さらに、本発明の別の態様では、式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物を、必要な対象に投与するステップを含む腫瘍の治療方法を提供する。
【0039】
さらに、本発明の別の態様では、腫瘍を治療するための式Iで表される化合物のマレイン酸塩またはその医薬組成物を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は非小細胞肺癌や乳癌を含むが、これらに制限されない。
【実施例】
【0041】
実施例1 式Iで表される化合物の製造
ステップ1: 4−クロロ−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン
【0042】
【化4】
【0043】
7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4(3H)−オン(2.0g、9.6mmol)と1滴のN,N−ジメチルホルムアミドを塩化チオニル(6mL)において一晩還流し、次に反応混合物を減圧濃縮させた。残渣にトルエンを加え、再び減圧濃縮させて、残留した塩化チオニルを除去し、表題化合物(2g、92%)を得た。
H NMR (CDCl): δ 9.18 (1H, s), 9.05 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.95 (1H, d, J = 10.4)。
【0044】
ステップ2: 3−クロロ−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−フルオロアニリン
【0045】
【化5】
【0046】
3−クロロ−4−フルオロアニリン(2.9g、20mmol)および3,4−ジメトキシベンゼンホルムアルデヒド(3.3g、20mmol)を1,2−ジクロロエタン(30mL)に加え、室温で1時間撹拌した。次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(10g、50mmol)を加えて、反応混合液を室温で一晩撹拌した。反応混合液を水100mLに投入してジクロロメタンで抽出した。有機相を分離して、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機相を減圧濃縮させて表題化合物(5.5g、93%)を得た。
H NMR (CDCl): δ 6.94−6.82 (4H, m), 6.63−6.61 (1H, m), 6.45−6.41 (1H, m), 4.18 (2H, s), 3.98 (1H, br), 3.87 (3H, s), 3.86 (3H, s)。
【0047】
ステップ3: N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン
【0048】
【化6】
【0049】
4−クロロ−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン(2.1g、9.2mmol)および3−クロロ−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−4−フルオロアニリン(2.7g、9.2mmol)を、アセトニトリル(20mL)に加えて3時間還流した。冷却後、炭酸ナトリウム溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出して有機相を分離し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮させて表題化合物(3.6g、80%)を得た。
【0050】
ステップ4: N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン
【0051】
【化7】
【0052】
金属ナトリウム(113mg、5.0mmol)を無水メタノール(20mL)に加え、室温で10分間撹拌し、次にN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−フルオロ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン(2.4g、5.0mmol)を加えて、混合液を40℃で6時間撹拌した。冷却後、混合液を水100mLに投入して、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮させて表題化合物(2.35g、94%)を得た。
H NMR (CDCl): δ 8.85 (1H, s), 7.57 (1H, s), 7.35 (1H, s), 7.23−7.19 (2H, m), 7.00−6.96 (1H, m), 6.84−6.78 (2H, m), 5.35 (2H, s), 4.05 (3H, s), 3.88 (3H, s), 3.83 (3H, s)。
【0053】
ステップ5: N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0054】
【化8】
【0055】
N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシ−6−ニトロキナゾリン−4−アミン(2.35g、4.7mmol)およびラネーニッケル(約0.5g)を、テトラヒドロフラン(100mL)に加え、水素ガスで置換し、水素雰囲気下(1atm)、室温で一晩撹拌した。濾過して、濾液を減圧濃縮させて表題化合物(2g、90%)を得た。
【0056】
ステップ6: tert−ブチル−4−{{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(3,4−ジメトキシベンジル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}アミノ}ピペリジン−1−カルボキシレート
【0057】
【化9】
【0058】
−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン(469mg、1.0mmol)およびtert−ブチル−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(239mg、1.2mmol)の酢酸(10mL)溶液とを室温下で2時間撹拌し、次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(254mg、1.2mmol)を一括して加えた。半時間反応した後、水を緩やかに加えて反応をクエンチさせ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を順に水、5%NaHCO水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮させた。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して表題化合物(404mg、62%)を得た。
【0059】
ステップ7: N−(ピペリジン−4−イル)−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0060】
【化10】
【0061】
tert−ブチル−4−{{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)(3,4−ジメトキシベンジル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}アミノ}ピペリジン−1−カルボキシレート(0.4g、0.61mmol)のトリフルオロ酢酸(8mL)溶液を70℃で6時間撹拌した。反応終了後、冷却して減圧濃縮させ、残留物を酢酸エチルでスラリーに調製し、濾過して表題化合物であるトリフルオロ酢酸塩(0.26g、83%)を得た。
【0062】
ステップ8: N−(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミン
【0063】
【化11】
【0064】
−(ピペリジン−4−イル)−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシキナゾリン−4,6−ジアミンモノトリフルオロ酢酸塩(258mg、0.5mmol)およびトリエチルアミン(202mg、2.0mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を室温で30分間撹拌した。0℃まで冷却した後、塩化アクリロイル(54mg、0.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2mL)を滴下し、滴下終了後、30分間引き続き反応させた。反応終了後、5%NaHCO溶液を緩やかに加えて反応をクエンチさせ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて減圧濃縮させ、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して目的生成物(150mg、66%)を得た。
H NMR (DMSO−d6): δ 9.24 (1H, s), 8.33 (1H, s), 8.09−8.08 (1H, m), 7.77−7.74 (1H, m), 7.42−7.40 (1H, m), 7.23 (1H, s), 7.06 (1H, s), 6.85−6.81 (1H, m), 6.10−6.06 (1H, m), 5.66−5.64 (1H, m), 5.32−5.29 (1H, m), 4.41−4.38 (1H, m), 4.09−4.06 (1H, m), 3.93 (3H, s), 3.79−3.78 (1H, m), 3.35−3.34 (1H, m), 2.87−2.84 (1H, m), 2.03−2.01 (2H, m), 1.44−1.41 (2H, m)。
【0065】
実施例2 式Iで表される化合物のマレイン酸塩の製造
【0066】
室温で、式Iで表される化合物5gをDMF 100mLに溶解して、絶えずに撹拌して均一にし、マレイン酸6.3gを加えた後、80℃まで昇温して2時間反応させ、次に、この温度で水100mlを加えて直接噴霧乾燥させ、黄色固体粉末4.0gを得、XRDパターンにより、式Iで表される化合物の非晶質マレイン酸塩(1:1)であった。
【0067】
実施例3 式Iで表される化合物のクエン酸塩、蓚酸塩および酢酸塩の製造
【0068】
実施例2と同様な方法によって、式Iで表される化合物のクエン酸塩、蓚酸塩および酢酸塩をそれぞれ製造した。
【0069】
実施例4 生物学的利用能実験
研究方法:体重7.4〜9.4kgのビーグル犬15匹をランダムに5群に分け、5mg/kg体重の式Iで表される化合物およびそのマレイン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、酢酸塩(式Iで表される化合物の量で換算)のCMC−Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)懸濁液をそれぞれ経口投与し、投与前と投与後(0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、24、48時間の時点)に採血し、LC−MS法によって犬血漿サンプルにおける式Iで表される化合物の濃度をそれぞれ測定して生物学的利用能を計算した。
【0070】
検出方法:
クロマトグラフィー条件は、移動相A:メタノール、移動相B:0.1%(v/v)のギ酸水溶液、アイソクラティック溶離方式: A:B=52:48、流速:0.2mL/min、カラム温度:35℃、クロマトグラフィーカラム:SHIMADZU Shim−pack VP−ODS C18(5.0μm、150mm×2.0mm I.D.島津社製)である。
【0071】
質量スペクトル条件は、イオン源:ESIイオン化源、SIM方式走査、湾曲型脱溶媒装置(CDL)温度:250℃、加熱ブロック(block)温度:200℃、CDL 電圧:25V、検出電圧:+1.60kV、噴霧ガス流速:1.5L/min、乾燥ガス流速:2.0L/minである。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例5 インビトロ活性試験
1.インビトロ酵素学的検出方法
【0074】
EGFR、EGFR(T790M、L858R)、HER2キナーゼは、昆虫発現系で発現させて精製して得られ、または市販品として購入して得られる。
【0075】
Cisbio社の均一時間分解蛍光(HTRF)法を用いて、EGFR、EGFR(T790M、L858R)、HER2のキナーゼ活性検出用プラットフォームを作成し、化合物の活性測定を行った。当該化合物について、100%DMSOを用い、それぞれ100nM(EGFRとHER2)、1μM(EGFR−T790M/L858R)から始めて3倍段階希釈を行い、各濃度のもの4μLを取って反応緩衝液(50mMの4−ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH7.0)、0.02%のNaN、0.01%の牛血清アルブミン(BSA)、0.1mMのオルトバナジン酸ナトリウム(Sodium Orthovanadate)、5mMのMgCl、50nMのSEB(Cisbio社製、商品番号:61SEBALB)、1mMのDTT)96μLに加え、得られた混合物2.5μLを取って384ウェルプレート(OptiPlate−384、Perkin Elmer)に加え、次に2.5μLのキナーゼを加えて遠心分離して均一混合し、その後、5μLのATPおよびTK基質−ビオチン(Substrate−biotin)を加えて反応を開始させた。384ウェルプレートをインキュベータに入れて23℃で一定時間反応させた後、Eu3+−Cryptateで標識されたTK−Antibody 5μL、ストレプトアビジン(streptavidin)−XL665 5μLを加えて反応を停止した。インキュベータにおいて1時間インキュベートした後、Envision(Perkin Elmer)から蛍光値を読み取った。この化合物のIC50値は、GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを用いて算出した。
【0076】
2.Anchorage−independent細胞増殖試験(足場非依存性細胞増殖試験)
ヒト非小細胞肺癌細胞NCI−H1975、ヒト乳癌細胞系BT474を細胞インキュベータ(37℃、5%CO)においてRPIM−1640、またはDMEM培地及び10%ウシ胎仔血清(FBS)で培養した。化合物の検出中、底層基質濃度を0.6%としており、細胞を0.3%の低融点寒天で再懸濁した後、1ウェルあたりに10,000個の細胞(100μL)を加えるように96ウェルプレートに播種した。化合物について10mMから始めて3倍段階希釈を行い、各濃度のもの2μLを取って培地98μLに加え、次に、得られた混合物5.3μLを取って細胞培養液(DMSO最終濃度0.1%、v/v)に加え、1週間(7日間)処理後、CellTiter−Blue(R)(Promega)試薬20μLを加えて、37℃で4時間インキュベートし、Envison(Perkin Elmer)において蛍光信号を読み取り、GraphPad Prism 5.0を用いて化合物による細胞増殖阻害のIC50を算出した。
【0077】
【表2】