(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704427
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】設備の表示信号収集装置
(51)【国際特許分類】
G08C 23/04 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
G08C23/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-73622(P2018-73622)
(22)【出願日】2018年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-181332(P2018-181332A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-76551(P2017-76551)
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】709000239
【氏名又は名称】株式会社エネサイバー
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭二
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−257612(JP,A)
【文献】
特開2001−266284(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0171092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00−15/12
G08C 19/00−19/48
G08C 23/00−23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の状態を点灯若しくは消灯で示す表示器と、該表示器の状態を電気信号に変換する光センサー、光の透過若しくは遮断の状態を操作する光シャッターよりなる構成で、該光シャッターに透過する光を遮断させて、光センサーの電気信号を取出す設備状態信号の収集方法。
【請求項2】
設備の状態を特定の色で示す表示器と、該表示器の状態を3原色成分ごとに電気信号に変換するカラー光センサー、光の透過若しくは遮断の状態を操作ずる光シャッターよりなる構成で、該光シャッターに透過する光を遮断させて、カラー光センサーの電気信号を取出す設備状態信号の収集方法。
【請求項3】
設備の状態を文字や数値で示す文字表示器と、該文字表示器の状態を画像収集するカメラ、光の透過若しくは遮断の状態を操作する光シャッターよりなる構成で、該光シャッターに透過する光を遮断させて、カメラが文字表示器の画像を取出す設備状態信号の収集方法。
【請求項4】
設備の状態を文字や数値で示す文字表示器と、該文字表示器の状態を画像収集するカメラ、光の透過若しくは遮断の状態を操作する光シャッターよりなる構成で、該光シャッターに透過する光を遮断させて、カメラが文字表示器の画像を取出して、画像解析により文字データを生成する設備状態信号の収集方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の方法による設備状態信号の収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空調機や発電機設備などの産業用設備のほか、家庭やオフィスなど社会のあらゆるところで使用される電気機器(以下、設備等という)には、電源スイッチのオン・オフ状態や故障発生などの設備等の状態を使用者に知らせるためのランプや数値文字で示す表示器(以下表示器という)が設けられる。
【0002】
該表示器は監視盤と呼ばれる設備状態を一括して監視するいわゆる監視制御盤の盤面上に設けられたり、電気機器の筐体面上にも設けられたりする。いずれも、ランプの点灯や消灯、若しくは赤色や緑色などの色付で表示させる方法や数値若しくは文字メッセージ様式で設備等の状態を設備の運転者や電気機器の使用者(以下使用者等という)に通知する方法がとられる。
【0003】
本発明は、使用者等に通知するために設けられている設備等の状態を示す表示器を利用して、設備等の状態を示す電気信号を生成し、コンピュータなどの情報機器や通信用端末機器(以下、情報機器という)に通知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
社会の多くのものがIoTと呼ばれる通信ネットワークを介して情報機器で結ばれようとしている。工場などで稼働する大型設備はいうまでもなく、学校や病院、オフィスをはじめとして家庭で使用される電気機器などのあらゆるものが対象となる。ここでは、これらの設備等のオン・オフの状態や動作異常などの状態がリアルタイムで情報機器に送られることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】富士通製品カタログ FUJITSU Software Imagepower Analog Meter Recognizer
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの設備等にはその状態を電気信号で通知するための仕組みが必要となる。例えば、対象となる個々の設備等には、専用の信号取出し用の端子が必要となるのである。新たに製作販売される設備等の一部には、信号取出し用の端子を持つものが見受けられるが、残念ながらこれらの機能を持たない膨大な数の設備類がすでに社会の多くの現場で使用されている。
【0007】
これらの設備等の状態を、容易に取り出しを図り、速やかに情報機器やIoTネットワークに接続させることが求められている。ここでは、該設備に改造を施さないで、使用者等に通知するための表示器をそのまま利用して、設備等の状態を示す信号を生成し、これを情報機器に通知する方法が簡便で安価な方法と考えられる。
【0008】
表示器を使用して設備状態信号を生成するために、通常は、該表示器の近傍に光センサーや小型カメラ(以下センサー等という)を設ける方法が考えられる。ここでは、センサー等が表示器の点灯若しくは消灯を検出して電気信号に変換し、またはカメラにより画像信号を生成すればよい。
【0009】
しかしながら、設備等の表示器は、通常、当然のことながら使用者等の執務場所や運転室に設けられるものであり、ここでは室内天井灯や窓から差し込む外部光の影響を受けやすい。したがって、表示器の近傍に設ける光センサーが外部からの照射光によって正しい動作が妨げられる原因になることがある。例えば、前者では室内灯の点灯や消灯によってセンサー等の誤動作を引き起こすことがある。後者では、窓から射し込む朝陽や夕陽がセンサー等に照射して、センサー等の誤動作を引き起こすことがある。
【0010】
また、自動車や電車などの多くの移動体に設けられる設備等においては、外光の明暗状態は大きく変化することがあり、この様な環境下にある設備等にも同様の問題が生じる。
ここでは、外部からの照射光の影響を受けることの無く、設備等の表示器の状態を誤りなく判別する安価な仕組みを実用化することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
外部からの照射光の影響を排除する目的で、ここでは、対象とする表示器と、センサー等を共に包み込む構造を有する光シャッターを使用する。ここでいう光シャッターとは、液晶素子と電極材の組合せで構成されるフィルム状若しくは板状の構造で、該電極材に与える電気信号を変化させることによって液晶の分子配列を操作して、光の透過度を変化させ、通過する光の遮断や透過を行わせるものである。
【0012】
光シャッターの透過率を低くすれば通過する光は極めて少なくなり(以下、閉状態という)透過率を高くすれば、通過する光は多くなる(以下、開状態という)。
液晶により光の透過を操作する方法は、情報機器やパソコンのモニターなどにも広く利用されているものである。
【0013】
本発明では、前述のとおり、対象とする表示器とセンサー等を内部に設ける光シャッターを使用した覆い物で包む構成をとることから、光シャッターを閉状態とすれば、外光の影響を受けない空間が生まれる。一方、当然のことであるが設備等の使用者等には、表示器状態を該覆い物の外側からは常に見え得る様にしておく必要があるため、常時はこの光シャッターは開状態しておく。
【0014】
ここで、センサー等が表示器状態の検出を必要とする場合にのみ、運転員等が感じない速さで、シャッターを閉状態にしてその後速やかに開状態とする。この極めて短い期間に、センサー等に表示器の状態の検出をさせる方法を採ることで、使用者等が常に表示器を見ることができる機能を担保しつつ、しかも光シャッター外部からの照射光の影響を受けないで、センサー等が表示器状態を正しく検知することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、時間や場所の変化による明暗環境変化の影響を受けずに、設備等が使用者等のために設けられている表示器の状態を、誤りなく情報機器にも通知することができる。
【実施例1】
【0016】
図1および
図2を用いて、本発明の作用について説明する。
図1および
図2には、対象表示ランプ(1)の設置盤面(6)に沿って該表示ランプ(1)を取り囲む覆い部(7)と、同盤面(6)と平行になる様に設けて、与える信号により通過する光の透過率を変更することのできる光シャッター(2)、および制御装置(10)よりなる本発明の構成例を示す。
【0017】
ここで、光シャッター(2)の表示ランプ(1)側に面する部分には光センサー(3)を設けると共に、該光シャッター(2)を閉状態とする方法で、外部からの侵入光を排除することができる構造をとる。
【0018】
また、本発明を構成する光センサー(3)は、このセンサー部に照射する光の強弱態様に従った電気信号を発生させる素子であり、光シャッター(2)を開状態若しくは閉状態に変化させるための制御装置(10)を設ける。
【0019】
つぎに、本発明の動作について説明する。対象の設備の状態を示す表示ランプ(1)は、設備の使用者等にとっては常時見え得る状態でなければならないことは既に述べた。一方で、人の目には極めて短時間、たとえば100ミリ秒程度を超えない時間であれば、実際の視認性が妨げられるものでは無いことは周知のことである。設備状態情報の収集は、たとえば1秒から10秒程度の一定の周期(以下サンプル周期という)で収集する場合が多く、現実はこの程度で十分な効果がある場合が多い。もちろんサンプル周期は10秒程度以下に制限されるものではない。
【0020】
そこで、本発明では、常時は、光りシャッター(2)を開状態にして使用者等には表示ランプ(1)の状態が使用者等にとって見え得る様にしておき、サンプル周期ごとに、光シャッター(2)を閉状態にして速やかの開状態に戻す操作を行う。光シャッター(2)が閉状態にあることを条件に、表示ランプ(1)の光の強弱状態に応じて光センサー(3)が出力する電気信号を外部照射光の影響を受けないで収集することができ、使用者等にとって表示ランプ(1)状態を確認する作業への妨げにはならない。
【0021】
ここで、制御装置(10)の制御部(12)にはサンプル周期ごとに、たとえば、ハイレベル信号を生成し、一定時間経過後にローレベルとなるパルス状の計測用制御信号を発行して、光シャッター(2)に通知する。光シャッター(2)では該制御信号がハイレベル期間に閉状態とし、ローレベルには開状態となるよう光シャッターを操作する。
【0022】
一方、制御装置(10)の制御部(12)では、ハイレベル信号生成中を条件に光センサー(3)から通知される設備状態信号を入力して表示部に通知する。ここではハイレベル信号で光シャッターを閉じる例を示したが、逆に、ローレベル信号で光シャッターを閉じる様にしてもよい。
【実施例2】
【0023】
図2および
図3を用いて、他の発明の作用について説明する。
図2および
図3には、赤色表示ランプ(13)および緑色表示ランプ(14)の設置盤面(6)に沿って該赤色表示ランプ(13)および緑色表示ランプ(14)を取り囲む覆い部(7)と、同盤面(6)と平行になる様に設けて、与える信号により通過する光の透過率を変更することのできる光シャッター(2)、および制御装置(10)よりなる発明の構成例を示す。
【0024】
ここで、光シャッターの赤色表示ランプ(13)および緑色表示ランプ(14)側に面する部分にはカラー光センサー(15)を設けると共に、該光シャッター(2)を閉状態とする方法で、外部からの侵入光を排除することができる構造をとる。
【0025】
また、本発明を構成するカラー光センサー(15)は、該カラー光センサー(15)に照射する光の強弱態様に従った3原色ごとの電気信号を発生させる素子であり、光シャッター(2)を開状態若しくは閉状態に変化させるための制御装置(10)を設ける。
【0026】
つぎに、本発明の動作について説明する。本発明は、実施例1と同様に、制御装置(10)の発行する計測用制御信号に従って、光りシャッター(2)が閉状態にあることを条件に、赤色表示ランプ(13)および緑色表示ランプ(14)の点灯若しくは消灯状態に応じた、カラー光センサー(15)から通知される設備状態信号を入力して表示部(11)に通知する。ここでは赤色表示ランプと緑色表示ランプの例を示したが、他の色のランプでもよい。
【実施例3】
【0027】
図4および
図5を用いて、他の発明の作用について説明する。
図4および
図5には、表示器(20)の設置盤面(6)に沿って該表示器(20)を取り囲む覆い部(7)と、同盤面(6)と平行になる様に設けて、与える信号により通過する光の透過率を変更することのできる光シャッター(2)、および制御装置(10)よりなる発明の構成例を示す。
【0028】
ここで、光シャッターの表示器(20)側に面する部分にはカメラ(21)を設けると共に、該光シャッター(2)を閉状態とする方法で、外部からの侵入光を排除することができる構造をとる。
【0029】
また、本発明を構成するカメラ(21)は、表示器(20)の映像信号を生成する装置であり、光シャッター(2)を開状態若しくは閉状態に変化させるための制御装置(10)を設ける。
【0030】
つぎに、本発明の動作について説明する。本発明は、実施例1と同様に、制御装置(10)の発行する計測用制御信号に従って、光りシャッター(2)が閉状態にあることを条件に、
カメラ画像解析部(22)ではカメラ(21)が通知する画像信号を入力して文字データを取出し、表示部(11)に通知する。なお、ここでは、カメラ(21)が生成する画像信号を、表示部(21)に通知する構成でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
あらゆるものは、通信ネットワークにつながることにより、効率的な運用ができる様になる。本発明は、これらの設備等の状態を表す信号を安価に誤り無く取り出すことのできるしくみを設けることである。個々の使用中の設備等を改造して信号を出力する仕組みを設ける方法が考えられるが、これは改造作業やその費用が発生するために実用的とは言えない。
【0032】
ここで、設備等に設けられる表示器の状態を、該設備等の状態を示す信号として取り出すことができれば、容易に通信ネットワークに接続できて運用管理の対象とすることが可能となる。
【実施例4】
【0033】
図6および
図7を用いて、他の発明の作用について説明する。本発明には、
図1若しくは
図2における光シャッター部(2)に替えて遮蔽カバー(23)、外部表示ランプ部(24)、外部ランプ表示信号線(26)を設け、さらには制御部(12)に替えて外部ランプ表示制御部(25)を設ける構成をとる。
【0034】
図6および
図7には、光センサーがランプの点灯若しくは消灯の状態を検知すれば、外部ランプ表示制御部(25)がこれを検知して、外部ランプ表示信号線(26)に信号を出力して、外部表示ランプ部の点灯若しくは消灯を制御する構成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】ランプの点消灯を検出する発明の構成機能関連図
【
図7】外部表示ランプを設ける発明の構成機能関連図
【符号の説明】
【0036】
1 設備の状態を示す表示器
2 光シャッター
3 光センサー
4 光センサー信号線
5 光シャッターを制御するための信号線
6 設備
7 覆い用の枠
10 制御装置
11 表示部
12 制御部
13 赤色カラーランプの例
14 緑色カラーランプの例
15 カラー光センサー
20 表示器
21 カメラ
22 カメラ画像解析部
23 遮蔽カバー
24 外部表示ランプ部
25 外部ランプ表示制御部
26 外部ランプ表示信号線