特許第6704429号(P6704429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704429PEG化された組換えヒト成長ホルモン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704429
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】PEG化された組換えヒト成長ホルモン化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/27 20060101AFI20200525BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200525BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20200525BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/61 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   A61K38/27
   A61P5/10
   A61K47/34
   A61K47/50
   A61P43/00 123
   !C07K14/61
【請求項の数】8
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2018-81021(P2018-81021)
(22)【出願日】2018年4月20日
(62)【分割の表示】特願2017-136679(P2017-136679)の分割
【原出願日】2009年4月29日
(65)【公開番号】特開2018-150311(P2018-150311A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】08155408.1
(32)【優先日】2008年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】08162865.3
(32)【優先日】2008年8月22日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】08167289.1
(32)【優先日】2008年10月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514022268
【氏名又は名称】アセンディス ファーマ エンドクライノロジー ディヴィジョン エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】キンダーマン,スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】レスマン,トルベン
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン,グレーテ ネルスコフ
(72)【発明者】
【氏名】ハーセル,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッゲ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スプローエ,ケネット
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530485(JP,A)
【文献】 特開平10−67800(JP,A)
【文献】 特表2007−515463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な医薬品賦形剤を含み、さらに、式(AB):
【化1】
〔式中、
n'は、2、3又は4であり;
hGH(-NH)n'は、hGH残基を表し;
各Lは、独立して、自己切断を誘発する基Gaによって自己加水分解可能な官能基Laであり、ここで、LaはC(O)-O-であり、それがhGHの第1級アミノ基と一緒にカルバメート基を形成し
-La-S0部分は、式(I)
【化2】
で表され;
基-Laは、以下の部分
【化3】
によって表され;
S0は、以下の部分
【化4】
によって表され、
S0は、以下の部分
【化5】
によって表されるGaを含み、
ここで、
式(I)の点線は、hGH-NH-への結合を示し;
Xは、スペーサー部分を表し;
Y1及びY2は、それぞれ独立して、O、S又はNR6を表し;
Y3は、Oを表し;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)を表し;
Y5は、Oを表し;
R3は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル基、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニル基又はカルボキサミドアルキル基からなる群から選択される部分を表し;
R4は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択される部分を表し;
R7及びR8は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシルアルキル基、アルキルカルボニル基、カルボキサミドアルキル基、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール及び置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される基を表し;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される基を表し;
Nuは、求核試薬を表し;
nは、ゼロ又は正の整数を表し;
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環を表し;
R1は、以下の式の部分
【化6】
〔式中、
S00は、CH2又はC(O)であり;
S0Aは、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で中断又は終結されていてもよく;
BS1、BS2、BS3は、独立して、N及びCHからなる群から選択され;
S0B、S1Aは、独立して、1〜200個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で中断又は終結されていてもよく;
S0C、S1Bは、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)n*OCH3〔ここで、各n*は、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕であり;
S2、S3は、独立して、水素であるか、又は、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)n*OCH3〔ここで、各n*は、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕であるが、但し、S2とS3の少なくとも一方は水素以外である〕
を表す〕
で表され、
hGH(-NH)n'を除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量が、少なくとも25kDaで且つ最大で1000kDaであり、連結されている原子として測定される、Laに対するS0の結合部位と第1の分枝構造BS1の間の最短の距離が50原子未満であるヒト成長ホルモン(hGH)のプロドラッグコンジュゲートも含んでいる、医薬組成物。
【請求項2】
n'が2である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
hGH-(NH)n'を除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量が少なくとも25kDaで且つ最大で500kDaである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
hGH-(NH)n'を除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量が少なくとも30kDaで且つ最大で250kDaである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
hGH-(NH)n'を除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量が少なくとも40kDaで且つ最大で90kDaである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
R1が、ポリアルキルオキシポリマー、ヒアルロン酸とその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート及びポリエステルからなる群から選択されるポリマーに基づく、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
R1がポリアルコキシポリマーに基づく、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
連結されている原子として測定される、Laに対するS0の結合部位と第1の分枝構造BS1の間の最短の距離が20原子未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な医薬品賦形剤を含有し、さらに、臨床上有効量の組換えヒト成長ホルモン(rhGH)PEG化プロドラッグも含んでいる医薬組成物に関し、ここで、該医薬組成物は、利用可能なヒト成長ホルモン製品よりも少ない頻度で投与することが可能であり、且つ、注入側の脂肪組織萎縮(injection side lipoatrophy)を引き起こすことが無いと思われる。本発明は、そのようなプロドラッグにも関する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン(GH)は、ヒト及び別の動物において成長及び細胞増殖を刺激するホルモンである。それは、脳下垂体前葉の側翼(lateral wings)内にある成長ホルモン分泌細胞によって合成され、貯蔵され、分泌される、191アミノ酸の単鎖ポリペプチドホルモンである。該ホルモンは、組換えDNA技術によって産生された成長ホルモンについて言及する場合は、ソマトトロピンとしても知られており、「rhGH」と略記される。
【0003】
成長ホルモンは、体内でさまざまな機能を有している。その中で最も注目すべき機能は幼少期を通した身長の増大であり、また、GHを治療的に使用することによって治療可能な幾つかの疾患が存在する。
【0004】
成長ホルモン欠乏の影響は、そのような影響が起こる年齢に応じてさまざまである。子供においては、成長不全及び低身長が、GH欠乏の主要な症状の発現である。成長ホルモン欠乏は、性的未熟の原因にもなり得る。成人においては、成長ホルモン欠乏の影響は比較的軽微であって、体力不足、活力不足及び骨量不足並びに心血管リスクの増大などを挙げることができる。
【0005】
GH欠乏には多くの原因があり、そのような原因としては、特定の遺伝子の突然変異、視床下部及び/又は下垂体に関わる先天性形成異常、並びに、傷害、手術又は疾患に由来する下垂体の損傷などを挙げることができる。
【0006】
GH欠乏は、外因的なGHで補足することによって治療される。現在使用されている全てのGHは、組換えDNA技術によって製造された、ヒトGHの生合成物である。GHは、小児期発症(成長期完了後)又は成人期発症(通常、後天的な下垂体部腫瘍の結果として)のGH欠乏を患っている子供又は成人において、代償療法として使用される。これらの患者における利益には、不定的に、体脂肪量の低減、除脂肪体重の増加、骨密度の増大、脂質プロフィールの改善、心血管リスク因子の低減及び心理社会的に満足な状態の改善などが包含されてきた。
【0007】
Genentech Inc(US)は、rhGHをクローン化した最初の企業であった。このことは、特許EP-B 22242に記載されている。2006年以降、米国及び欧州において利用可能な合成成長ホルモン(及び、それらの製造業者)としては、Nutropin(Genentech)、Humatrope(Eli Lilly)、Genotropin(Pfizer)、Norditropin(Novo Nordisk)、Saizen(Merck Serono)、及び、Omnitrope(Sandoz)などを挙げることができる。
【0008】
分子生物学的な技術によって多くの種類のタンパク質及び/又はポリペプチド(以下、タンパク質と称する)の利用能が劇的に増大されてきたが、それらタンパク質の治療における使用は、多くの場合、腎クリアランスと受容体介在クリアランスに起因する短い血漿中半減期、凝集、タンパク質分解による劣化、乏しい生物学的利用能及び効率的な製剤を妨げる物理的特性などの別の要因によって妨げられる。
【0009】
タンパク質の利用能を増大させる機序は、タンパク質と誘導体化化合物のコンジュゲーションによる。ここで、そのような誘導体化化合物としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを挙げることができる。これらの認められている利益の一部としては、以下のものなどがある:免疫原性及び抗原性の低減、作用持続時間の延長、及び、改変された薬物動態学的特性。[Veronese, F.M. "Enzymes for Human Therapy: Surface Structure Modifications," Chimica Oggi, 第7巻:p. 53-56 (1989)](本明細書中における参考文献5)。
【0010】
rhGHをPEG化することによって、そのインビボにおける半減期が増大されることにより(それによって、投与量の低減及び投与頻度の低減が達成される)、その安定性が改善されることにより、及び、その抗原性が低減されることにより、又は、それらの組合せにより、医薬用途における分子の特性が改善され得ると思われる。
【0011】
一般に、分子に対するこのタイプの修飾は、当技術分野において周知されており、この概念について記載している多くの特許が特許文献中で入手可能である。例えば、Hofmann La RocheによるPEG化エリスロポエチン(EPO)は、EP-B 1196443(これは、EPOに共有結合しているPEGを含んでいる特定のリンカーについて特許請求している)に記載されており、PEG化インターフェロンアルファは、会社Nektar/La RocheによるEP-B 975369に記載されており、別のPEG化インターフェロンアルファは、会社Hofmann La RocheによるEP-B 1562634に記載されている。
【0012】
rhGHのインビボでのクリアランスは、以下の2種類の機序によって生じると考えられている。1番目は、腎クリアランスであり、ここでは、rhGHは、腎糸球体濾過により血液循環から除去される。rhGHの腎クリアランスは充分に記載されており、従って、合成rhGHのPEG化はこの課題を解決するための明白な選択である。腎クリアランスは、rhGHの総クリアランスの約25〜53%を占める(Girard, J. Mehls, O.J. Clin. Invest. 1994年3月; 第93(3)巻: p. 1163-1171;本明細書中における参考文献3)。
【0013】
2番目の機序は、肝クリアランス(肝臓)である。肝臓によるGHの取込は、受容体が介在するエンドサイトーシスとそれに続くリソソームによる分解によって起こる。
【0014】
3番目の機序は、別の組織(例えば、軟骨組織の軟骨細胞)内における受容体介在クリアランスである。PEG化することによってGH受容体に対するGHの結合親和力を低減させることにより、該受容体介在クリアランスが低減される。
【0015】
しかしながら、rhGHの投与には、それのみに関連する問題が存在する。皮下に投与されたrhGHの1つの主要な不都合な点は、その治療を受ける患者において脂肪組織萎縮が起こることである。
【0016】
脂肪組織萎縮は、脂肪組織が局所的に失われることに対して使用される医学用語である。皮下投与されたrhGH製剤は、脂肪組織萎縮の問題を示した。この脂肪組織萎縮の問題は、注入部位における局所的な高濃度の成長ホルモン複合体に起因すると考えられている。
【0017】
「J. Pediatr. Endocrinol. Metab. 1999年1-2月; 第12(1)巻:p. 95-7」において公表されたBuyukgebiz A.らの論文は、そのような医療記録について記述している(本明細書中における参考文献1)。これは、6.7kbの遺伝子欠失に起因する孤立性GH欠乏を患っている患者(該患者は、高用量rhGH治療を受け、6年間の治療後、抗体が検出されることなく注入部位において局所的な脂肪組織萎縮を発症した)の記録である。この脂肪組織萎縮の病因は、高用量rhGHの直接的な脂肪分解効果によるものと推定される。
【0018】
rhGHの投与に関連した脂肪組織萎縮は、rhGHの活性自体、高濃度及び長期にわたる曝露に起因すると考えられている。そのような高濃度は、注入部位の近くで起こる。
【0019】
高い成長ホルモン活性が注入部位の近くで蓄積する可能性は、rhGHがPEG化された場合には、滞留時間が長くなるのでさらに高くなる。PEG化rhGH製剤の場合、そのPEG化コンジュゲートは薬理活性に必要な活性を有しており且つそのコンジュゲートのサイズに起因して拡散が制限されるという事実によって、当該組織は、成長ホルモン活性に対して長期にわたる増大した曝露を受ける。その結果は、当該注入部位における脂肪分解の増大である。
【0020】
WO-A 2005/079838には、hGH部分がアミノ官能基を介してポリエチレングリコールポリマーに結合しているPEG化hGHが記載されており、これは、アミノ基の安定性のために、永久的な結合であると考えられ得る。そのようなPEG化hGH化合物(これは、脂肪組織萎縮を示す)の例は、化合物PHA-794428である。化合物PHA-794428は、PEG化rhGHであり、会社Pharmacia(Pfizerに買収された)のWO-A 2005/079838にも記載されており、さらに、「Horm. Res. 2006年; 第65巻 (suppl. 4): p. 1-213、CF1-98 GH/IGF Treatment:標題 "First in-human study of PEGylated recombinant growth hormone", Philip Harrisら.」(本明細書中における参考文献4)にも記載されている。
【0021】
「www.clinicaltrials.gov」において公表されている臨床試験情報によれば、当該試験は、2007年12月10日に終了した。当該プログラムを終了させるというPfizerの決定は、PHA 794428を単独注入した後の臨床第2相試験において報告された注入部位脂肪組織萎縮のケースが原因であった。
【0022】
WO-A 2006/102659(Nektar)にも、アミド結合を介したrhGH-PEGコンジュゲート(直鎖状と分枝鎖状のタイプ)が記載及び示唆されている。WO-A 2006/102659において解決すべき問題は、第2頁の段落[0005]に記載されている。その出願人によれば、解決すべき問題は、投与頻度の低減である。rhGH治療は、典型的には、毎日注入することが必要なので、患者、特に、小児科の患者は、この投薬計画に関連した不便さ及び不快さを嫌う。NektarのWO-Aに記載されている解決法は、新規PEG-rhGHコンジュゲートを提供することである。
【0023】
上記WO-Aの[0257]表6において、当該PEG-rhGHコンジュゲートが、PEGを有さない天然の成長ホルモンと比較して、インビトロで比較的低い活性を示すということを理解することができる。インビトロでの活性が低いにもかかわらず、当該PEG化rhGHコンジュゲートは、インビボでは活性を示した。これに関連して、段落[0261]を参照されたい:「予備的なインビトロでの結果は、予備的なインビボでの結果に基づいて、hGHに結合しているPEGの量を増やすとhGH受容体を刺激するその能力が低減されることを示唆しているが、生理活性の低減は延長された半減期及び/又は増大された血漿利用能によるバランスを超えるものであると考えられ、従って、本明細書中で提供されているコンジュゲートは、同じ投与計画における非修飾rhGHと比較したときに、インビボにおける優れた薬力学的効果を有しているという結論が得られる」。
【0024】
WO-A 2006/102659(Nektar)には、自己切断可能なリンカー(auto-cleavable linkers)についての記載はない。即ち、PEG-rhGHコンジュゲートはインビボでは活性を示すが、それらのインビトロにおける活性は著しく低減されるということが観察されるだけである。脂肪組織萎縮の問題については検討されていない。
【0025】
低減された脂肪組織萎縮及び低減された注入頻度という所望の特性をhGHのPEG化コンジュゲートの中に作り上げるという難題の解決法は、プロドラッグアプローチを使用することである。プロドラッグは、生体内変換を受けた後でその薬理学的効果を示す任意の化合物である。プロドラッグは、従って、親分子における望ましくない特性を変えるか又は排除するために一時的に使用される、特殊化された無毒性保護基を含んでいる薬物であると考えられ得る。この場合、高分子担体は、一時的に、成長ホルモンの活性を低減させ、その結果として、組織の脂肪分解の可能性を低減させるであろう。高分子担体への一時的なコンジュゲーションは、同時に、そのコンジュゲートの半減期を延長させ、従って、hGHの持続的な送達をもたらすであろう。
【0026】
多くの種類の高分子プロドラッグが文献に記載されており、そこでは、高分子担体は化学的な変化を起こしやすいエステル基を介して薬剤に結合している〔例えば、Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid - Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000年, 第1巻, p. 208-218; J Chengら, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymers and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003年, 第14巻, p. 1007-1017; R. Bhattら, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campththecin, J. Med. Chem. 2003年, 第46巻, p. 190-193; R.B. Greenwald, A. Pendri, C.D. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999年, 第42巻, p. 3657-3667; B. Testa, J.M: Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003年,Chapter 8〕。これらの場合、生理活性を有する実体の当該コンジュゲートされている官能基は、ヒドロキシル基又はカルボン酸である。
【0027】
とりわけ生体高分子にとって、さらに、低分子ポリマープロドラッグにとっても、該高分子担体は生理活性を有する実体のアミノ基(即ち、タンパク質のN-末端又はリシンアミノ基)に結合させるのが望ましいであろう。これは、薬物の生理活性をマスクするのに生理活性を有する実体の特定のアミノ基(例えば、活性中心又は受容体の結合に関与している領域若しくはエピトープの中に位置しているアミノ基)のコンジュゲーションが必要な場合である。さらに、プロドラッグの調製中に、アミノ基は、ヒドロキシル基(hydroxylic group)又はフェノール性水酸基(phenolic group)と比較して大きな求核性を有しているので、より化学選択的に扱うことが可能であり、担体と薬物をコンジュゲートさせるための良好な取っ手(handle)として使うことができる。このことは、多種多様な異なる反応性官能基を含み得るタンパク質に関して、特に当てはまる。この場合、非選択的なコンジュゲーション反応は、結果として、広範囲にわたるキャラクタリゼーション又は精製が必要で、且つ反応収率と生成物の治療上の有効性を低減させ得る望ましくない生成物混合物をもたらす。
【0028】
プロドラッグの活性化は、担体と薬物分子の間の不安定な架橋の酵素的若しくは非酵素的な切断によって、又は、両方の順次的な組み合わせ(即ち、酵素的な段階とそれに続く非酵素的な転位)によって、生じ得る。
【0029】
WO-A 2005/099768には、ソマトロピンを包含する生体分子の大きな群のための自己切断可能なリンカーを有するPEG化リンカー分子(クレーム6)が記載されている。WO-A 2005/099768において、酵素的な機序が含まれている場合における解決すべき問題は、患者間の可変性及びプロドラッグ活性化の予測できない影響である(第12頁、第17-30行)。この出願においては、解決方法として、PEGに基づき得る芳香族リンカーが記載されている。このリンカー-PEGは、その薬物の活性が著しく低減される方法で薬物に結合する。それは、当該薬物が放出されるときにのみ活性化され、その薬物の放出は、加水分解によって開始される。その加水分解速度は、化学的に制御することが可能である。このこと自体に関連して、GHとそれに関連する問題(例えば、脂肪組織萎縮)については、特に強調されてはいない。
【0030】
要約すれば、上記引用文献のいずれにも、脂肪組織萎縮の発症頻度を増大させることなくより少ない回数で投与することが可能な、プロドラッグコンジュゲートに基づく長期間作用性rhGHを開発するという解決方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】欧州特許第22242号明細書
【特許文献2】欧州特許第1196443号明細書
【特許文献3】欧州特許第975369号明細書
【特許文献4】欧州特許第1562634号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/079838号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/102659号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/099768号パンフレット
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Veronese, F.M. "Enzymes for Human Therapy: Surface Structure Modifications," Chimica Oggi, 第7巻:p. 53-56 (1989)
【非特許文献2】Girard, J. Mehls, O.J. Clin. Invest. 1994年3月; 第93(3)巻: p. 1163-1171
【非特許文献3】Buyukgebiz A.ら, J. Pediatr. Endocrinol. Metab. 1999年1-2月; 第12(1)巻:p. 95-7
【非特許文献4】Horm. Res. 2006年; 第65巻 (suppl. 4): p. 1-213, CF1-98 GH/IGF Treatment with title "First in-human study of PEGylated recombinant human growth hormone", Philip Harrisら
【非特許文献5】Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid - Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000年, 第1巻, p. 208-218
【非特許文献6】J Chengら, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymers and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003年, 第14巻, p. 1007-1017
【非特許文献7】R. Bhattら, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campththecin, J. Med. Chem. 2003年, 第46巻, p. 190-193
【非特許文献8】R.B. Greenwald, A. Pendri, C.D. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999年, 第42巻, p. 3657-3667
【非特許文献9】B. Testa, J.M: Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003年,Chapter 8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
かくして、本発明の目的は、脂肪組織萎縮を有意に誘発することなくrhGHにコンジュゲートされたPEGを使用してrhGHの投与頻度を低減させるための、プロドラッグ又は該プロドラッグを含んでいる医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
従って、本発明は、適切な医薬品賦形剤を含有し、さらに、ヒトのインビボにおいて臨床上有効な量の組換えヒト成長ホルモンrhGH PEG化プロドラッグコンジュゲート〔ここで、PEGは、自己加水分解可能な(自己切断)一時的リンカーを介してrhGHに結合している〕も含んでいる、医薬組成物を提供する;ここで、当該プロドラッグコンジュゲートは:
(1): 該コンジュゲートは、PEGを有さない未変性の成長ホルモンの5%未満のGH活性しか有していないこと;及び、
(2): 該リンカーの自己加水分解速度は、インビボでの半減期が10時間〜600時間であるような速度であること;
を特徴とする。
【0035】
特性(1)は、該プロドラッグが、インビボにおいて有意に延長された作用の持続時間を有しているにもかかわらず、脂肪組織萎縮の発症率が低いということを保証する。理論によって制限されるものではないが、本発明者らは、当該プロドラッグが高いGH活性を有していれば、この製品は、現在市販されているrhGH製品よりも高い頻度で、依然として脂肪組織萎縮を誘発するであろうと考えている。
【0036】
特性(2)は、rhGHと比較して完全な効力を維持しながら、rhGH医薬品をヒト成長ホルモンよりも少ない頻度で(毎日投与の代わりに、例えば、週1回のみ又は月1回のみ)投与することが可能となるように、rhGH(PEG非含有)が時間の経過とともに徐々に放出されることを保証する。
【0037】
好ましくは、インビボでの半減期は、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも、最大で5倍短く、例えば、2倍、3倍、4倍又は5倍短い。さらに好ましくは、インビボでの半減期は、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも、最大で3倍短い。最も好ましくは、インビボでの半減期は、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも最大で2倍短いか、又は、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期と殆ど同じである。
【0038】
本発明は、rhGH PEG化プロドラッグに適用され、特に、カスケード担体プロドラッグ(cascade carrier prodrugs)を包含するrhGH PEG化担体プロドラッグに適用される。
【0039】
プロドラッグは、それ自体は不活性であるが、予想どおりに変換されて活性代謝産物になる治療薬であると定義され得る(「B. Testa, J.M: Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003年, p. 4」を参照されたい)。担体プロドラッグシステムにおいては、ポリマーが薬物分子に共有結合的にコンジュゲートされている場合、多くの薬剤は不活性であるか、又は、低減された生物活性を示す。これらの場合、薬物と担体の一時的な結合は、薬剤がインビボにおいて当該高分子担体から放出されてその生物活性を回復する様な方法で、適用される。薬物の持続放出又は制御放出が望ましい場合、放出された薬物と比較してプロドラッグが低減された生物活性を有しているということは有利である。この場合、過剰投与のリスク及び付随する副作用を伴うことなく、比較的大量のプロドラッグを投与することができる。薬物の放出は時間の経過に伴って起こり、それによって、その薬物を繰り返し頻繁に投与する必要性が低減される。
【0040】
高分子担体プロドラッグにおいては、生物学的に活性な分子は、多くの場合、担体部分と当該薬物分子の官能基の間に形成された不安定な架橋によって高分子担体部分に結合している。担体プロドラッグが切断されることによって、増大した生理活性を有する分子的実体(薬物)及び少なくとも1種類の副生物(担体)が生成される。この副生物は、生物学的に不活性であり得る(例えば、PEG)。切断後、生理活性を示す実体においては、前もってコンジュゲートされた、従って、マスク又は保護された、少なくとも1の官能基が現れ、その基の存在が、典型的には、当該生理活性に寄与する。
【0041】
GH活性は、当技術分野において既知の方法を用いて測定することができる。この点において、実施例1は重要である。本発明に対して適用可能な幾種類かの一時的なリンカーは3000時間より短いインビトロ半減期を有し得るという事実に基づいて、それぞれのGH活性測定は、一時的なリンカーの代わりに永続的なリンカーを含んでいるそれぞれのPEGコンジュゲートのGH活性を決定することにより、間接的になされる。これは、WO2006102659の第74頁段落0240に記載されているように実施することが可能であり、rhGHと本明細書中に記載されているコンジュゲートの生物学的活性は、NB2-IIラットリンパ腫細胞増殖アッセイを用いてインビトロで評価される。簡潔に言えば、ラットのリンパ腫に由来するNB2-II細胞をrhGHと一緒にインキュベートし、それにより、rhGH分子が細胞表面上のその受容体に結合する。受容体への結合によってシグナル伝達カスケードが誘発され、結果として、細胞が増殖する。アッセイの結果は、測定されたタンパク質含有量と未変性rhGHの100%生理活性に基づく。
【0042】
好ましくは、GH活性を測定するために、実施例24に記載されているプロトコルを使用する。
【0043】
インビトロ半減期間は、当技術分野において既知の方法を用いて測定することができる。この点において、実施例2は重要である。
【0044】
従って、本発明の第2の態様は、ヒトにおけるGH関連疾患の治療方法において使用するための、第1の態様のrhGH PEG化プロドラッグを含んでいる臨床上有効量の医薬組成物に関する。
【0045】
この第2の態様は、代替的に、第1の態様のrhGH PEG化プロドラッグを含んでいる臨床上有効量の医薬組成物をヒトに投与することを含む、ヒトにおけるGH関連疾患を治療する方法として製剤することができる。
【0046】
プロドラッグ(例えば、一時的にPEGコンジュゲート化されたrhGHの場合)の残存活性が未変性ヒトGHと比較して有意に低減される状況においては、長期間曝露されたとしても、脂肪分解効果は生じないであろう。
【0047】
本明細書中に記載されているrhGH PEG化プロドラッグと称される化合物は、ヒトGHと比較して有意に低減された残存活性を有し得るコンジュゲートである。治療的に有効な活性を示すためには、rhGHは当該プロドラッグコンジュゲートから放出されなければならず、そのためには、本明細書中に記載されているプロドラッグは、PEG基を当該薬物から切断する活性化段階(例えば、1,6-放出機序)〔これは、本明細書においては、「自己切断(autocleavage)」と称されている〕を経る必要がある。1,6-放出機序についてはWO-A 2005/099768において充分に記載されている。
【0048】
理論によって制限されるものではないが、本発明者らは、本明細書中に開示されている一時的にPEG化されたrhGHコンジュゲートは、自己切断可能なリンカーによってPEGが徐々に切断される以前は当該PEG化 rhGHコンジュゲートの活性は低いので、脂肪組織萎縮を有意に低減させると考えている。このことは、当該プロドラッグがヒトGH又は上記で記載した他の永続的にPEG化されているhGHと比較して、高い頻度で脂肪組織萎縮を誘発することはないということを保証し得る。
【0049】
本発明の根底にある問題はまた、適切な医薬品賦形剤を含み、さらに、式(AA):
【化1】
【0050】
〔式中、
hGH-NHは、hGH残基を表し;
Laは、自己切断を誘発する基Gaによって自己加水分解可能(自己切断可能)な官能基を表し;
及び、
S0は、少なくとも5kDaの分子量を有し且つ少なくとも第1の分枝構造BS1を含んでいるポリマー鎖であり、該少なくとも第1の分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含んでおり、ここで、S0、BS1、S1のうちの少なくとも1は自己切断を誘発する基Gaをさらに含んでおり、ここで、分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2をさらに含んでいるか、又は、S0、S1のうちの少なくとも1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2を含んでいる少なくとも第2の分枝構造BS2を含んでおり、ここで、hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量は少なくとも25kDaで且つ最大で1000kDa、好ましくは、少なくとも25kDaで且つ最大で500kDa、さらに好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で250kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で120kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で100kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で90kDaである〕
で表されるヒト成長ホルモン(hGH)のプロドラッグコンジュゲートも含んでいる医薬組成物によって解決される。
【0051】
驚くべきことに、本発明のプロドラッグの残存活性が、特定の最小限の長さ(これは、それらの分子量によって定められる)を有する少なくとも3本の鎖を有する高分子担体を提供することによって効率的に低減され得るということ、従って、本明細書中に記載されている一時的なリンカーと組み合わせて、脂肪組織萎縮のリスクを増大させることなくより少ない頻度で投与することが可能なhGHプロドラッグを提供するという課題を解決することができるということが分かった。従って、該プロドラッグは、水溶性であるべきである。
【0052】
少なくともビスコンジュゲート化されたプロドラッグに関して、該課題は、適切な医薬品賦形剤を含み、さらに、式(AB):
【化2】
【0053】
〔式中、
nは、2、3又は4;好ましくは、2であり;
hGH(-NH)nは、hGH残基を表し;
各Lは、独立して、永続的な官能基Lpであるか、又は、自己切断を誘発する基Gaによって自己加水分解可能(自己切断可能)な官能基Laであり;
及び、
各S0は、独立して、少なくとも5kDaの分子量を有するポリマー鎖であり、ここで、S0は少なくとも第1の分枝構造BS1を含むことによって場合により分枝しており、少なくとも第1の分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含んでおり、ここで、S0、BS1、S1のうちの少なくとも1は自己切断を誘発する基Gaをさらに含んでおり、ここで、hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量は少なくとも25kDaで且つ最大で1000kDa、好ましくは、少なくとも25kDaで且つ最大で500kDa、さらに好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で250kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で120kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で100kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で90kDaである〕
で表されるヒト成長ホルモン(hGH)のプロドラッグコンジュゲートも含んでいる医薬組成物によって解決され得る。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、上記で定義されているプロドラッグコンジュゲートである。
【0055】
本発明の好ましい実施形態について、例証のみを目的として、以下に記載する。
【0056】
定義
本発明の詳細な実施形態について論ずる前に、本発明の主要な態様に関連した特定の用語の定義を与える。
【0057】
一般に、本明細書中で使用されている、特定の全ての技術用語は、当業者がこの技術に関連してそれらを理解するように、理解されるものとする。
【0058】
rhGH残基又はhGH残基又はGH残基又はhGH残基は、ヒト成長ホルモンを意味する。NH-hGHは、hGH残基であり、ここで、-NH-hGHの-NH-は、hGHのアミノ基を表す。
【0059】
本明細書にある用語「活性」は、哺乳動物に投与されたときに(例えば、インビボモデルにおいて)生物学的応答を誘発する、又は、実施例に記載されているようなインビトロモデルにおいて測定可能な応答を生じる、成長ホルモン又はそのコンジュゲートの能力として理解される。
【0060】
プロドラッグシステムにおいて、測定された活性は、放出された遊離薬物実体に由来するものと未だ切断されていないプロドラッグコンジュゲートに由来するものの、2種類の寄与を有する。プロドラッグコンジュゲートの活性を区別するために、本明細書中における用語「残存活性」は、測定されたプロドラッグ活性のプロドラッグコンジュゲートに起因する部分として理解される。
【0061】
本明細書中における用語「自己切断」は、pH7.4及び37℃の生理学的な条件下にある水性バッファー溶液の中での一時的なリンカーと薬物分子rhGHの間の結合の律速的加水分解的切断(rate-limiting hydrolytic cleavage)として理解される。自己切断は、酵素の存在を必要としない。この自己切断又は自己加水分解は、当該プロドラッグ分子の一部分である自己切断を誘発する基によって制御される。この自己切断を誘発する基は、そのままで存在し得るか、又は、自己加水分解機序が開始し得る前にアンマスキングが必要となるようにマスキングされた形態で存在し得る。
【0062】
「リンカー自己加水分解速度(linker autohydrolysis rate)」は、インビボにおけるhGH-PEG化プロドラッグの切断の速度を意味する。酵素的な効果又は別な効果は、殆どの場合にプロドラッグリンカー加水分解をインビトロにおけるよりもインビボにおいて速く進行させるので、プロドラッグのインビボ半減期が対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロ半減期よりも最大で5倍短い場合、hGH-PEGプロドラッグは自己加水分解的に切断されていると定義される。
【0063】
本明細書中における用語「一時的な結合(transient linkage)」又は「一時的なリンカー」は、rhGH PEG化プロドラッグ内におけるPEGとrhGHの間の結合の不安定性を表現しているものとして理解される。そのような一時的な結合においては、rhGHは、最長で1200時間のインビボでのリンカー半減期で、対応するプロドラッグから放出される。
【0064】
本明細書中における用語「コンジュゲート」は、薬物(本明細書においては、ヒト成長ホルモン)に共有結合している1以上のPEG分子として理解される。
【0065】
用語「一時的なコンジュゲート」は、少なくとも1の一時的な結合を含んでいるhGH PEG化プロドラッグを意味する。
【0066】
用語「永続的なコンジュゲート」は、PEGポリマーが少なくとも3000時間のインビトロ半減期を有する結合を用いてhGHに連結されているhGH PEG化コンジュゲート又はプロドラッグを意味する。
【0067】
インビトロ半減期又はインビトロリンカー半減期は、pH7.4及び37℃のバッファー中における、hGH PEG化プロドラッグからのhGHの50%の放出である。
【0068】
用語「インビボ半減期」又は「インビボリンカー半減期」は、実施例2に記載されているように当該化合物の対応するコンジュゲート半減期を考慮に入れて計算された、ヒト体内に投与された後で成長ホルモンの初期割合の50%がhGH PEG化プロドラッグから放出される時間間隔として理解される。
【0069】
用語「コンジュゲート半減期」は、上記で定義されているhGH PEG化された永続的コンジュゲートの50%が血液循環から除去される時間間隔として理解される。
【0070】
本明細書中における用語「脂肪組織萎縮」は、脂肪組織が局所的に失われることに対する医学用語として理解される。本発明に関連して、「脂肪組織萎縮」は注入部位における脂肪組織萎縮のことであり、これは、注入部位の近くにおいて組織脂肪分解が起こっていることを意味する。
【0071】
本明細書中における用語「プロドラッグ」は、変換を受けた後でその完全な薬理学的効果を示す任意の化合物である。プロドラッグシステムの分類は、IUPACによる定義(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/medchem、2004年3月8日にアクセス)の下に与えられる:
プロドラッグ
プロドラッグは、生体内変換を受けた後でその薬理学的効果を示す任意の化合物である。従って、プロドラッグは、親分子における望ましくない特性を改変するか又は排除するために、一時的な方法で用いられる特殊化された無毒性保護基を含んでいる薬物であると見なすことができる。
【0072】
ダブルプロドラッグ(又は、プロ-プロドラッグ)
ダブルプロドラッグは、インビボにおいて二段階で(酵素的に及び/又は化学的に)活性種に変換される生物学的に不活性な分子である。
【0073】
担体結合プロドラッグ(担体プロドラッグ)
担体結合プロドラッグは、所与の活性物質と一時的な担体基との一時的な結合を含んでいるプロドラッグであり、ここで、その担体基は、物理化学的特性又は薬物動態学的特性を改善し、通常は加水分解的な切断により、インビボで容易に除去され得る。
【0074】
カスケードプロドラッグ
カスケードプロドラッグは、活性化基がアンマスキングされて初めて担体基の切断が起こる担体プロドラッグである。
【0075】
生体内変換
生体内変換は、生体又は酵素調製物による物質の化学的変換である。
【0076】
これに対して、特定の自己加水分解誘発性構造要素がアンマスキングされて初めて、カスケード自己加水分解誘発性基が有効になる。自己加水分解誘発性構造要素を明らかにするのに必要とされる1以上のカスケードアンマスキング段階が存在し得る。アンマスキング段階のうちの少なくとも1は、生体内変換段階に基づき得る。
【0077】
表現「ヒトのインビボにおいて臨床上有効な量の組換えヒト成長ホルモン(rhGH)PEG化プロドラッグを含んでいる医薬組成物」は、当該医薬組成物をヒトに投与した後でそのヒト体内において求められている臨床的効果(例えば、GH関連疾患の治療に関連して求められている臨床的効果)を得るのに充分なほど高い量として理解される。本発明に関連して、当業者は、一般的に、求められている臨床的効果を得るために投与される組換えヒト成長ホルモン(rhGH)PEG化プロドラッグの量を調節することができる。
【0078】
本明細書中における用語「生理学的条件」は、ヒト体内におけるpH条件及び温度条件と同一であるか又は類似している任意のインビトロ条件又はインビボ条件として理解される。より特定的には、生理学的条件は、約pH7.4(pH6.8〜pH7.8)及び約37℃(35℃〜40℃)にある条件を意味する。
【0079】
用語「リンカー」は、バイオコンジュゲーションの分野における刊行物の中で頻繁に使用され、概して、2つの分子的実体を連結するのに使用される化学構造を表す。そのような結合性は、永続的な性質又は一時的な性質のものであり得る。
【0080】
一時的なリンカーは、PEG分子への薬物のコンジュゲーションが可逆的であるリンカーである。このことは、リンカーの切断によって当該薬物がその本来の活性形態で放出されることを意味する。担体プロドラッグの場合、特に、ポリマーが永続的にリンカーに結合されていて、従って、リンカー-関連分解産物がプロドラッグ切断の結果として放出されない場合は、一時的なリンカー単位をポリマー担体から構造的に区別することは困難であり得る。リンカーが自己切断を誘発する基及び分枝単位の両方として機能している場合、リンカーの構造的な特徴付けは、なおさら困難である。従って、本発明の意味の範囲内において、用語「リンカー」は、官能性基Laと自己切断誘発性基Gaの組合せと同じ意味で使用され得る。担体が分枝鎖PEGである担体プロドラッグについて記載されている場合、LaとGaの組合せに基づいた構造的記述を使用するのが好ましい。そのような場合、切断を誘発する基Gaは、当該担体ポリマーの一部分であると考えられる。Gaの化学的性質は変化に富んでいるので、対応する担体結合プロドラッグの自己切断特性を大幅に作りかえることが可能である。
【0081】
用語「永続的なリンカー」は、脂肪族アミド又は脂肪族カルバメートを形成することによるhGHの第1級アミノ基へのPEGコンジュゲートを意味する。慣習的なPEG化試薬を使用する場合、得られるコンジュゲートは、通常、加水分解に対して極めて安定であり、アミド結合又はカルバメート結合の切断速度は、プロドラッグシステムにおける治療的有用性にとって遅すぎるであろう。それにもかかわらず、そのような永続的なリンカーコンジュゲートは、それらにより残存活性の評価が可能となるので、プロドラッグコンジュゲートの治療的有用性の研究にとって有用である。
【0082】
そのような安定な結合をプロドラッグアプローチにおいて使用する場合、酵素的触媒の非存在下において治療上有効な時間枠内で官能基を切断することは不可能である。
【0083】
用語「水溶性プロドラッグ」は、生理学的な条件下において水に溶解するプロドラッグを意味する。典型的には、水溶性プロドラッグは、濾過後の同じ溶液によって透過される光の少なくとも75%、好ましくは、少なくとも95%を透過させる。重量基準で、水溶性ポリマーは、好ましくは、少なくとも約35%(重量基準)が水に溶解し、さらに好ましくは、少なくとも約50%(重量基準)、さらに一層好ましくは、少なくとも約70%(重量基準)、さらに一層好ましくは、少なくとも約85%(重量基準)、さらに一層好ましくは、少なくとも約95%(重量基準)又は完全に、水に溶解する。
【0084】
用語「PEG」又は「PEG化残基(pegylation residue)」は、本明細書中においては、反復単位によって特徴付けられる適切な水溶性ポリマーを代表して使用される。適切なポリマーは、ポリアルキルオキシポリマー、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート及びポリエステルからなる群から選択され得る。
【0085】
PEG鎖は、相互結合部分、ポリマー部分及び末端基で構成され得る。
【0086】
hGH PEG化プロドラッグの分枝鎖モノコンジュゲートの場合、臨界距離は、連結されている原子として測定される、Laに対するPEG鎖S0の結合部位と第1の分枝構造BS1の間の最短の距離を画定する。
【0087】
本明細書中における用語「PEG負荷(PEG load)」は、hGHに結合している多数の反復単位からなるポリマー鎖の分子量を記述する語句として理解される。総PEG負荷は、分子基準でhGHに結合している全高分子担体鎖の総分子量として理解される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】精製された永続的PEG-hGHコンジュゲートのSDS-PAGE分析を示す図である。ここで、レーン1:HiMark(登録商標) Pre-stained High Molecular Weight Protein Standard;レーン2:化合物23;レーン3:化合物23;レーン4:化合物25;レーン5:化合物26、レーン6:化合物33;レーン7:化合物32;レーン8:化合物28;レーン9:化合物28;レーン10:化合物28;レーン11:化合物30;レーン12:化合物34;レーン13:化合物34;レーン14:化合物27;レーン15:化合物29。
図2】コンジュゲート28の合成のクエンチされた反応溶液のサイズ排除クロマトグラム及び精製された28のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図3】コンジュゲート35のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された35のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図4】コンジュゲート36のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された36のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図5】コンジュゲート37のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された37のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図6】バッファー(pH7.4, 37℃)中でインキュベートされたコンジュゲート35のサンプルのさまざまな時点におけるサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図7】本発明の好ましいプロドラッグコンジュゲートを示す図であり、その図には、S0、S1、S2、La、Ga、BS1、BS2、BS3及び臨界距離が示されている。
図8】本発明の好ましいプロドラッグコンジュゲートを示す図であり、その図には、S0、S1、S2、La、Ga、BS1、BS2、BS3及び臨界距離が示されている。
図9】本発明の好ましいプロドラッグコンジュゲートを示す図であり、その図には、S0、S1、S2、La、Ga、BS1、BS2、BS3及び臨界距離が示されている。
図10】本発明の好ましいプロドラッグコンジュゲートを示す図であり、その図には、S0、S1、S2、La、Ga、BS1、BS2、BS3及び臨界距離が示されている。
図11】コンジュゲート36の薬力学的応答曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
適切な医薬品賦形剤を含んでいる医薬組成物
当業者には知られているように、医薬組成物は、製薬上許容される賦形剤及び/又は担体を含んでいる。
【0090】
「製薬上許容される」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、且つ、それが投与される宿主に対して毒性を有さない任意の賦形剤及び/又は添加剤を意味することが意図されている。
【0091】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、皮下投与、筋肉内投与又は静脈内注射のための組成物である。これは、本明細書中に記載されている関連した障害/疾患を治療するための好ましい投与経路の例である。
【0092】
医薬組成物は、本明細書中に記載されているrhGH PEG化プロドラッグ以外の活性成分も含有し得る。
【0093】
組換えヒト成長ホルモン(rhGH)
組換えヒトGHは、配列が天然のヒトGHと同一であるので、用語「組換えヒト成長ホルモン(rhGH)」は、本明細書中においては、いわゆるバイオジェネリック等価物にも関する。かくして、用語「rhGH」及び「hGH」は、本発明の意味の範囲内において同意語として使用され得る。
【0094】
本明細書中における用語「バイオジェネリック」は、生物医薬品〔通常は最新のバイオテクノロジーを介して、生物学的なプロセスを用いて開発された分子〕のジェネリック形態と理解される。ジェネリック化学医薬品は、その先発製品と比較して、本質的に同様の活性を有し、それらのブランドの対応品と本質的に化学的に同一であり、生物学的に同等であり、特許権存続期間満了後に短縮された手順で販売承認を獲得する分子として定義され得る。
【0095】
当業者には知られているように、対象となる生物製剤(ここでは、GH)の活性に対して重大な影響を及ぼすことなく、その生物製剤の僅かなアミノ酸置換を行うことは、現今の日常業務である。
【0096】
組換えヒト及びバイオジェネリックに加えて、用語「組換えヒト成長ホルモン(rhGH)」は、本明細書中においては、全ての可能なrhGHポリペプチドにも関する。
【0097】
可能なrhGHポリペプチドについての詳細な記載は、Pharmacia CorporationのWO-A 2005/079838の第15頁段落0043から段落0053(段落0053を含む)に与えられている。
【0098】
表現「hGHポリペプチド又はhGHタンパク質」は、本明細書中で使用されている場合、好ましくは哺乳動物種に由来する、さらに好ましくは、ヒト種及びネズミ種に由来する、全てのhGHポリペプチドを包含し、且つ、成長期に成長を促進することによって及び正常な身体組成、同化作用及び脂質代謝を維持することにおいて特徴付けられる、それらの変異体、類似体、オルソログ、ホモログ及び誘導体、並びにそれらのフラグメントを包含する。
【0099】
用語「hGHポリペプチド又はタンパク質」は、好ましくは、A.L. Grigorianら, Protein Science (2005), 第14巻, p. 902-913に開示されている配列を有する22kDaのhGHポリペプチド、並びに本質的に同じ生物学的活性を示す(成長期に成長を促進し、且つ正常な身体組成、同化作用及び脂質代謝を維持する)その変異体、ホモログ及び誘導体を意味する。さらに好ましくは、用語「hGHポリペプチド又はタンパク質」は、正確に上記配列を有しているポリペプチドを指す。
【0100】
hGHの誘導体は、特に、永続的に結合されたポリマー(例えば、PEG)を含んでいるhGHプロドラッグコンジュゲートを包含する。即ち、本発明のプロドラッグは、1種類以上の一時的なリンカーポリマーコンジュゲートに加えて、さらなる永続的リンカーポリマーコンジュゲートも含有し得る。
【0101】
用語「hGH ポリペプチド変異体」は、本明細書中で使用されている場合、同じ種に由来するが基準のhGHポリペプチドとは異なっているポリペプチドを意味する。一般に、差は、基準のアミノ酸配列と変異体のアミノ酸配列が全体的に極めて類似していて、多くの領域では同一であるように、限定される。好ましくは、hGHポリペプチドは、基準hGHポリペプチド(好ましくは、A.L. Grigorianら, Protein Science (2005), 第14巻, p. 902-913において示されている配列を有するhGHポリペプチド)と、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。照会元のアミノ酸配列と少なくとも例えば95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、対象のポリペプチドの配列が、照会元のアミノ酸配列の各100アミノ酸当たり最大で5アミノ酸の改変を含み得るということを除いて、その対象のポリペプチドのアミノ酸配列がその照会元の配列と同一であるということである。上記基準配列のこれらの改変は、基準アミノ酸配列のアミノ末端位若しくはカルボキシ末端位で起こり得るか、又は、それら末端位の間のどの位置(ここで、該位置は、基準配列の中の若しくは基準配列内の1以上の連続した基の中の残基の中に個別的に散在している)でも起こり得る。照会元の配列は、基準配列の全アミノ酸配列であり得るか、又は本明細書中に記載されているように特定された任意のフラグメントであり得る。
【0102】
そのようなhGHポリペプチド変異体は、自然発生的な変異体、例えば、生物の染色体の所与の遺伝子座を占めているhGHの数種類の代替形態のうちの1つによってコードされている自然発生的な対立遺伝子変異体、又は、単一の一次転写産物に由来する自然発生的なスプライス変異体によってコードされているアイソフォームなどであり得る。あるいは、hGHポリペプチド変異体は、自然に生じることが知られておらず且つ既知突然変異誘発技術を用いて作成することが可能な変異体であり得る。
【0103】
生理活性を有するペプチド又はタンパク質のN-末端又はC-末端から、生物学的な機能を実質的に失うことなく、1以上のアミノ酸が除去され得るということは、当技術分野においては知られている(たとえば、「Ronら, (1993), BioI Chem., 第268巻 p. 2984-2988」を参照されたい(この文献の開示内容は、参照によりその全体を本明細書中に組み入れる)。
【0104】
hGHポリペプチドの一部のアミノ酸配列が、当該タンパク質の構造又は機能に有意な影響をもたらすことなく変えられ得るということも当業者には認識されるだろう。そのような突然変異としては、活性に対する影響が小さくなるように当技術分野で既知の一般規則に従って選択される欠失、挿入、逆位、反復及び置換などがある。例えば、表現型の上でのサイレントアミノ酸置換をどのように行うかについての手引きは、「Bowieら. (1990), Science 第247巻:p. 1306-1310」(これは、参照によりその全体を本明細書中に組み入れる)に記載されており、そこでは、著者らは、変化に対するアミノ酸配列の寛容性の研究に関して主要な2つのアプローチがあることを示している。
【0105】
第1の方法は、突然変異が自然淘汰によって許容されるか又は拒絶される進化のプロセスに依存する。第2のアプローチは、クローン化hGHの特定の位置にアミノ酸の変化を導入するための遺伝子工学、及び機能性を維持する配列を特定するための選抜又はスクリーニングを用いる。これらの研究によって、タンパク質が、驚くべきことに、アミノ酸置換に寛容であるということが明らかになった。著者らは、さらに、どのアミノ酸の変化がタンパク質の特定の部位において許容されそうであるかを示している。例えば、最も埋もれているアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とし、概して保存されている表面側鎖の特徴は殆どない。別のそのような表現型上のサイレント置換については、Bowieら(1990)〔上掲〕及びその中で引用されている参考文献に記載されている。
【0106】
典型的に同類置換と見なされるものは、脂肪族アミノ酸(Ala、Val、Leu及びPhe)間の1対1の置換、ヒドロキシル残基(Ser及びThr)の相互交換、酸性残基(Asp及びGlu)の交換、アミド残基(Asn及びGIn)間の置換、塩基性残基(Lys及びArg)の交換及び芳香族残基(Phe、Tyr)間の置換である。さらに、以下の群のアミノ酸も、一般に、等価交換を示す:(1) Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、GIn、Asn、Ser、Thr;(2) Cys、Ser、Tyr、Thr;(3) Val、lIe、Leu、Met、Ala、Phe;(4) Lys、Arg、His;(5) Phe、Tyr、Trp、His。
【0107】
用語「hGHポリペプチド」は、さらにまた、hGH類似体、オルソログ及び/又は種のホモログによりコードされる全てのhGHポリペプチドを包含する。本明細書中で使用されている場合、用語「hGH類似体」は、各生物において同じ機能を果たすが、当該生物の祖先が共通して有していた祖先の構造を起源としなかった、異なるそして関連のない生物のhGHを意味する。むしろ、類似したhGHは別々に発生し、その後、同じ機能(又は、類似の機能)を果たすように進化した。換言すれば、類似したhGHポリペプチドは、全く異なるアミノ酸配列を有するが、同じ生物学的活性を果たす(即ち、成長期において成長を促進し、そして、正常な体組成、同化作用及び脂質代謝を維持する)ポリペプチドである。本明細書中で使用されている場合、用語「hGHオルソログ」は、それらの配列が祖先の種において共通の同類のhGHを介して互いに関連するが、進化して互いに異なるようになった、2種類の異なる種に含まれているhGHを意味する。本明細書中で使用されている場合、用語「hGHホモログ」は、各生物において同じ機能を果たし、当該生物の祖先が共通して有していた祖先の構造を起源とする、異なる生物のhGHを意味する。換言すれば、相同のhGHポリペプチドは、極めて類似したアミノ酸配列を有し、同じ生物学的活性を果たす(即ち、成長期において成長を促進し、そして、正常な体組成、同化作用及び脂質代謝を維持する)ポリペプチドである。好ましくは、hGHポリペプチドホモログは、基準hGHポリペプチド(好ましくは、上記で記載した配列を有するhGHポリペプチド)に対して、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を示すポリペプチドとして定義され得る。
【0108】
かくして、hGHポリペプチドは、例えば、以下のものであり得る:(i) アミノ酸残基のうちの1以上が、保存アミノ酸残基又は非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換されており、そして、そのような置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードによりコードされたものであり得るか又はあり得ないhGHポリペプチド:又は、(ii) アミノ酸残基のうちの1以上が置換基を含んでいるhGHポリペプチド:又は、(iii) 該hGHポリペプチドが別の化合物(例えば、ポリペプチドの半減期を増大させる化合物、例えば、ポリエチレングリコール)と融合しているhGHポリペプチド:又は、(iv) 付加的なアミノ酸が上記形態のポリペプチド(例えば、IgG Fc融合領域ペプチド、又は、リーダー配列若しくは分泌配列、又は、上記形態のポリペプチド若しくはプロタンパク質配列を精製するのに使用される配列)に融合しているhGHポリペプチド。
【0109】
hGHポリペプチドは、単量体又は多量体であり得る。多量体は、二量体、三量体、四量体又は少なくとも5の単量体ポリペプチド単位を含んでいる多量体であり得る。多量体は、さらにまた、ホモ二量体又はヘテロ二量体であることもできる。多量体は、疎水性会合、親水性会合、イオン性会合及び/若しくは共有結合的会合の結果であることができ、並びに/又は、例えばリポソームの形成により、間接的に連結されてもよい。一例において、共有結合的会合は、hGHポリペプチド又はそのフラグメントを含有する融合タンパク質の中に含まれている異種配列の間に存在する(例えば、米国特許第5,478,925号を参照されたい。その開示内容は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。別の例において、hGHポリペプチド又はそのフラグメントは、ペプチドリンカー〔例えば、US 5,073,627(参照により本明細書に組み入れる)に記載されているペプチドリンカー〕を介して、hGHポリペプチド又は異種ポリペプチドであり得る1以上のポリペプチドに連結されている。
【0110】
多量体hGHポリペプチドを調製するための別の方法は、WO 94/10308の技術を包含する当業者には既知の技術を用いて見いだされる、タンパク質の多量体化を促進することが知られているロイシンジッパーポリペプチド配列又はイソロイシンジッパーポリペプチド配列と融合したhGHポリペプチドを使用することを含む。別の例において、hGHポリペプチドは、Flag(登録商標)ポリペプチド配列を含有する融合hGHポリペプチド中に含まれているFlag(登録商標)ポリペプチド配列との間の相互作用により会合させ得る。hGH多量体は、さらにまた、当技術分野において既知の化学的技術、例えば、当技術分野において既知のリンカー分子及びリンカー分子の長さを最適化する技術を用いる架橋結合(例えば、US 5,478,925を参照されたい)、当該多量体中に含有されることが所望されるポリペプチドの配列内に位置するシステイン残基の間に1以上の分子間架橋を形成させるための、当技術分野において既知の技術(例えば,US 5,478,925を参照されたい)、hGHポリペプチドのC末端若しくはN末端へのシステイン若しくはビオチンの付加及びこれらの変性ポリペプチドのうちの1以上を含有する多量体を生成させる技術(例えば、US 5,478,925を参照されたい)、又は、hGH多量体を含有するリポソームを生成させるための30の技術のうちのいずれか(例えば、米国特許第5,478,925号を参照されたい)などを用いて生成させることもできる。これら特許の開示内容は、参照によりそれらの全体を本明細書中に組み入れる。
【0111】
本明細書で使用されている場合、用語「hGHポリペプチドフラグメント」は、hGHポリペプチド(好ましくは、上記で記載した配列を有するhGHポリペプチド)のアミノ酸配列の一部の連続するスパンを含んでいる任意のペプチド又はポリペプチドに関する。
【0112】
rhGH PEG化プロドラッグ - 好ましいPEG、ポリマー鎖
上記で論じたように、本明細書に記載されているrhGH PEG化プロドラッグは、比較的低い活性を有するべきである。
【0113】
従って、好ましい実施形態では、成長ホルモン1分子当たりの総PEG負荷は、合計で少なくとも25kDaになる。一般に、該総PEG負荷は、1000kDa未満である。好ましくは、該PEG負荷は、少なくとも25kDaで且つ最大で500kDa、さらに好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で250kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも30kDaで且つ最大で120kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で100kDa、さらに一層好ましくは、少なくとも40kDaで且つ最大で90kDaである。
【0114】
PEGは、1以上の固着点(anchoring point)を介してhGHに結合することができる。固着点が1つの場合、hGH PEGプロドラッグモノコンジュゲート中の対応するPEGは、分枝していて、少なくとも3の鎖を含んでいる。ビスコンジュゲートにおけるように固着点が1を超えている場合、hGH PEGプロドラッグ中の対応するPEGは、分枝していてもよいか又は直鎖状であってもよい。ビスコンジュゲートは、1又は2の一時的な結合を含むことができ、当該PEGは、直鎖状であっても若しくは分枝していてもよいか、又は1本の直鎖と1本の分枝鎖の混合物を含み得る。ビスコンジュゲートが1つの一時的な結合を含み且つ1本の直鎖と1本の分枝鎖を含んでいる場合、その一時的な結合は、何れの鎖にあってもよい。分枝PEG鎖を使用する場合、1以上の分枝鎖単位が存在し得る。
【0115】
分枝鎖PEGは、成長ホルモンに結合するための1つの固着点を有する分子を形成させるために2つ以上のPEG鎖を連結する分枝点からなるPEG分子である。これは、1つの40kDaの分枝鎖PEG分子を形成させるために連結された2つの20kDaのPEG鎖であり得る。当該分子が2つ又は3つの分枝点を含んでいる場合、その分子は、それぞれ、3アームPEG及び4アームPEGと称される。
【0116】
要約すれば、且つ、上記で述べた制限の範囲内で、PEGポリマーは特定の構造に限定されず、直線状、分枝状若しくはマルチアーム(例えば、フォーク状PEG又はポリオールのコアに結合したPEG)であり得るか、樹枝状であり得るか、又は、分解可能なリンカーを有し得る。
【0117】
理論によって制限されるものではないが、PEG負荷は、必要とされる比較的低い活性を得るのに適した分子量を提供し且つ別の問題を生じ得るPEGの高すぎる分子量を有さないことを目的としている。
【0118】
未変性ヒトGHに対するPEG化は、Clarkら(本明細書中における参考文献2)によっても第21973頁表IIIにおいて記載されているように、幾つかのリシン基で生じ得るか、又は、N-末端アミン(F1)で生じ得る。位置F1及びLYS-140は、反応性が高い。反応性が中程度の位置は、LYS-115、LYS-38及びLYS-70である。位置LYS-172、LYS-41、LYS-158及びLYS-168は、反応性に乏しい。
【0119】
さらに一般的には、本発明において一時的なリンカーと組み合わせて使用されるPEGは、当該ポリマーを適切に選択することによって脂肪組織萎縮のリスクを低減させ得る。しかしながら、本発明の原理は、さらにまた、PEG以外のポリマーにも適用される。かくして、用語「PEG」は、本明細書中においては、適切なポリマーのための例証としてのみ使用される。
【0120】
かくして、好ましい実施形態では、hGH PEGプロドラッグは、その第1級アミノ基を用いてポリマー鎖S0に対する自己切断可能な官能基Laにコンジュゲートされたモノコンジュゲートである。このポリマー鎖S0は、少なくとも5kDaの分子量を有し、且つ、少なくとも1の分枝構造BS1を含んでいる。この分枝構造BS1は、少なくとも4kDaの分子量を有する第2のポリマー鎖S1を含んでいる。
【0121】
上記で略述したように、少なくとも第3のポリマー鎖S2は、少なくとも4kDaの分子量を有することが必要である。このポリマー鎖S2は、BS1の一部であり得るか、又は、S0若しくはS1のさらなる分枝であることができ、その場合、結果としてS2を含んでいるさらなる分枝構造BS2が生じる。
【0122】
場合により、3を超えるポリマー鎖、例えば、4、5、6、7又は8のポリマー鎖が、本発明のプロドラッグコンジュゲートの中に存在していてもよい。しかしながら、それぞれのさらなるポリマー鎖は、少なくとも4kDaの分子量を有している。ポリマー鎖の総数は、最大で1000Daであるプロドラッグコンジュゲートの総重量(hGH-NHを除く)によって制限される。
【0123】
かくして、本発明の好ましい実施形態は、分枝構造BS1、BS2の少なくとも1が少なくとも4kDaの分子量を有するさらなる第4のポリマー鎖S3を含んでいるか、又はS0、S1、S2のうちの1が少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第4のポリマー鎖S3を含んでいる第3の分枝構造BS3を含んでいる組成物に関する。
【0124】
Laの自己切断に必要な自己切断誘発性基Gaは、分枝構造又はポリマー鎖のうちの1に含まれている。
【0125】
場合により、分枝構造のうちの1は、該分枝構造がGaからなる(該基を含んでいるのではない)ように、基Gaとして機能する。この場合も、用語「含んでいる」に包含される。
【0126】
プロドラッグコンジュゲート(AA)の調製は、通常、コンジュゲートの混合物を生じさせ、その際、hGHの幾つかの第1級アミノ基がコンジュゲートされて、結果として、種々のモノコンジュゲート化プロドラッグ、種々のビコンジュゲート化プロドラッグ、種々のトリコンジュゲート化プロドラッグなどが生じる。対応するモノコンジュゲート化hGH PEGプロドラッグ、ビコンジュゲート化hGH PEGプロドラッグ又はトリコンジュゲート化hGH PEGプロドラッグは、カラムクロマトグラフィーなどの当技術分野で既知の標準的な方法で分離させることができる。
【0127】
hGH PEGプロドラッグのモノコンジュゲートにおいては、少なくとも3のポリマー鎖S0、S1、S2は「ポリマー部分」を含んでおり、そのポリマー部分は、ランダムに、ブロック状に又は交互に分配され得る1以上の反復単位によって特徴付けられる。さらに、少なくとも3のポリマー鎖S0、S1、S2は末端基を示し、その末端基は、典型的には、水素原子であるか又は1〜6個の炭素原子を有する分枝していても若しくは分枝していなくてもよいアルキル基(例えば、特にPEGをベースとするポリマーの場合はメチル基であり、その結果、所謂mPEGを生じる)である。
【0128】
少なくとも3のポリマー鎖S0、S1、S2内のポリマー部分が、さらなる鎖様置換基(ここで、該鎖様置換基は、当該反復単位に由来し、且つ、結果として、ポリマー鎖S0、S1、S2などとは見なされない分子量が4kDa未満の鎖を生じる)を有し得るということは指摘される。好ましくは、少なくとも3のポリマー鎖S0、S1、S2は、分子量1000Da未満の置換基を有する。
【0129】
S0の関連する構造的特徴は、その臨界距離である。臨界距離は、連結されている原子として測定される、Laに対するS0の結合部位と第1の分枝構造BS1の間の最短の距離を画定する。臨界距離の長さは、化合物(33)に関して論じられているように、残存活性に対して影響を及ぼす。臨界距離は、好ましくは、50未満、さらに好ましくは、20未満、最も好ましくは、10未満である。
【0130】
少なくとも3のポリマー鎖S0、S1及びS2は、典型的には、それぞれ、相互結合部分を含んでいる。Gaは、その相互結合部分のうちの少なくとも1の中に存在している。S0以外のポリマー鎖に関しては、該相互結合部分は、例えばS1のポリマー部分とBS1及びS2のポリマー部分とBS2を連結する構造要素である。S0の場合は、該相互結合部分は、LaとBS1を連結する構造要素である。
【0131】
相互結合部分は、C1-50アルキル鎖からなることができ、ここで、該C1-50アルキル鎖は、分枝されているか又は分枝されておらず、そして、場合により、以下のものからなる群から選択されるヘテロ原子又は官能基で中断又は終結されていてもよい:-O-、-S-、N(R)、C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)、1以上の炭素環又はヘテロ環〔ここで、Rは、水素であるか、又は、C1-20アルキル鎖であり、その際、該アルキル鎖は、上記で挙げた原子又は基のうちの1以上で場合により中断又は終結されていてもよく、また、該アルキル鎖は、さらに、末端原子として水素を有しており;ここで、該炭素環は、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキルであり;ここで、該ヘテロ環は、4〜7員のヘテロ環又は9〜11員のヘテロ二環である〕。
【0132】
「C3-10シクロアルキル」又は「C3-10シクロアルキル環」は、炭素炭素二重結合を有していてもよい(少なくとも部分的に飽和している)3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル鎖、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどを意味する。シクロアルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられ得る。用語「C3-10シクロアルキル」又は「C3-10シクロアルキル環」には、ノルボナン(norbonane)又はノルボネン(norbonene)のような架橋二環も包含される。
【0133】
「4〜7員のヘテロシクリル」又は「4〜7員のヘテロ環」は、少なくとも1個の環原子から最大で4個までの環原子が硫黄(これは、-S(O)-、-S(O)2-を包含する)、酸素及び窒素(これは、=N(O)-を包含する)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられている、最大数までの二重結合を含み得る(芳香族環であるか、又は、完全に飽和、部分的に飽和若しくは不飽和である非芳香族環である)4個、5個、6個又は7個の環原子を有する環を意味し、ここで、該環は、炭素原子又は窒素原子を介して当該分子の残部に結合している。4〜7員のヘテロ環の例は、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピン又はホモピペラジンである。
【0134】
「9〜11員のヘテロビシクリル」又は「9〜11員のヘテロ二環」は、9〜11個の環原子を有する2つの環からなるヘテロ環系を意味し、ここで、少なくとも1個の環原子は両方の環に共有されており、該9〜11個の環原子は最大数までの二重結合を含むことができ(芳香族環であるか、又は、完全に飽和、部分的に飽和若しくは不飽和である非芳香族環である)、ここで、少なくとも1個の環原子から最大で6個までの環原子は硫黄(これは、-S(O)-、-S(O)2-を包含する)、酸素及び窒素(これは、=N(O)-を包含する)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、ここで、該環は、炭素原子又は窒素原子を介して当該分子の残部に結合している。9〜11員のヘテロ二環の例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンゾアゼピン、プリン又はプテリジンである。用語「9〜11員のヘテロ二環」には、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカンのような2つの環からなるスピロ構造又は8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタンのような架橋ヘテロ環も包含される。
【0135】
上記炭素環、ヘテロ環及びヘテロ二環は、C1-20アルキルで置換されていてもよく、以下のものからなる群から選択されるヘテロ原子又は官能基で場合により中断又は終結されていてもよい:-O-、-S-、N(R)、C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)〔ここで、Rは、水素であるか、又は、C1-10アルキル鎖であり、その際、該アルキル鎖は、上記で挙げた原子又は基のうちの1以上で場合により中断又は終結されていてもよく、また、該該アルキル鎖は、さらに、末端原子として水素を有している。
【0136】
少なくとも3つの鎖S0、S1、S2のポリマー部分は、当該鎖の大部分を構成し、好ましくは、各鎖の分子量の少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも95%、さらに一層好ましくは、少なくとも97.5%、さらに一層好ましくは、少なくとも99%を構成する。かくして、当該鎖の基礎はそのポリマー部分によって表される。
【0137】
好ましくは、少なくとも3つの鎖S0、S1、S2は、独立して、ポリアルキルオキシポリマー、ヒアルロン酸とその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート及びポリエステルからなる群から選択されるポリマーに基づく。
【0138】
好ましくは、少なくとも3つの鎖S0、S1、S2は、同じポリマーに基づく。好ましくは、少なくとも3つの鎖S0、S1、S2は、ポリアルキルオキシポリマー(polyalkyoxypolymers)に基づく。さらに好ましくは、少なくとも3つの鎖S0、S1、S2は、ポリエチレングリコールに基づく。
【0139】
同様のことは、さらなる鎖S3、S4、S5などにも、それに応じて適用される。
【0140】
鎖S0は分枝構造BS1を含んでおり、その結果、S1はS0に結合している。S2の結合のために、分枝構造BS1が使用され得るか又はさらなる分枝構造BS2が存在し、これは、S0又はS1の一部分であり得る。従って、さらなる鎖が存在する場合、さらなる分枝構造が存在し得る。例えば、鎖S3が存在している場合、それは、BS1、BS2又は分枝構造BS3に結合し得る。分枝構造BS3が存在する場合、それは、S0、S1又はS2の一部分であり得る。
【0141】
一般に、鎖の分枝を可能とする任意の化学的実体を使用することができる。好ましくは、該分枝構造は、少なくとも3重に置換されている炭素環、少なくとも3重に置換されているヘテロ環、第3級炭素原子、第4級炭素原子及び第3級窒素原子からなる群から独立して選択される(ここで、用語「炭素環」及び「ヘテロ環」は、上記で示されているように定義される)。
【0142】
rhGH PEG化プロドラッグ - 一時的なリンカー構造、La、Ga
当技術分野の刊行物においては、自己切断を誘発する基は、それらの構造を担体から区別するために、ときどきリンカーと称される。それにもかかわらず、多くの場合、これらの構造的特徴を明瞭に分けるのは困難である。従って、本発明の意味の範囲内において、自己切断を誘発する基Gaは、少なくともS0、S1、S2、BS1を含み、場合により、BS2も含んでいる担体Sの一部分であると考えられる。Gaの化学的性質は変化に富んでいるので、対応する担体結合プロドラッグの自己切断特性を大幅に作りかえることが可能である。
【0143】
上記で論じたように、PEG化-プロドラッグ(ここで、当該薬物は、例えば、特許出願WO-A 2005/099768に記載されているrhGHである)は、放出特性を有する(これは、前記特許出願の中では、有毒な芳香族化合物を産生しない1,6切断システムとして記載されている)。この文献には、対象となる関連する放出プロフィールを得るための、本発明において関連する適切な多くの一時的なリンカー構造が広範に記載されている。別の一時的なリンカー構造は、例えば、Complex Biosystems GmbHの別の出願、例えば、WO-A 2005/034909、WO-A 2005/099768、WO-A 2006/003014及びWO-A 2006/136586などに、一般的に/広範に記載されている。
【0144】
それ以外の一時的なリンカー構造は、例えば、WO-A 99/30727(Enzon Inc)に、広範に記載されている。
【0145】
本明細書中で論じたGHに関する現在の課題を解決することを目的として、本発明者らは、rhGH PEG化プロドラッグの本明細書中に記載した関連する官能特性を得るために、適切な好ましい一時的なリンカー構造を選択した。好ましいリンカー構造についての本明細書中における詳細な説明に基づいて、本明細書中に記載した関連する官能特性を有するrhGH PEG化プロドラッグをもたらし得る別の適切な好ましい一時的なリンカー構造を作ることは、当業者の知識の範囲内である。
【0146】
特に、適切な一時的なリンカー構造〔これは、自己加水分解可能(自己切断可能)である〕は、S0の中に組み入れることに関して選択することができる。本発明において選択されたリンカー構造に関して、以下において詳述する。
【0147】
理想的には、本発明のコンジュゲートは、現在のrhGHコンジュゲート又は製剤と比較して、以下の特性及び/又は利点のうちの1つ以上を有する:良好な収率で容易に合成することが可能である;好ましい範囲内にある半減期を有する;精製して均質なコンジュゲート組成物を提供することが可能である;自己切断後にインビトロ活性及びインビボ活性などの活性を示す;未変性rhGH及びすでに記載されているrhGHコンジュゲートよりも優れた薬力学的効果を示す;並びに、脂肪組織萎縮を引き起こさない。本明細書中に記載されている構造は、本発明において必要とされる放出特性を示す。
【0148】
一般に、担体結合プロドラッグは、薬物と担体を連結する切断可能な官能基の存在を必要とする。自己加水分解誘導性基が存在しない場合、薬物に提供されているアミノ基を含んでいる官能基、例えば、脂肪族アミド又はカルバメート結合Laは、通常、加水分解に対して極めて安定であり、当該アミド結合の切断速度はプロドラッグシステムにおける治療上の有用性のためには遅すぎるであろう。
【0149】
そのような安定な結合が担体結合プロドラッグ中で使用される場合、生体内変換なしで治療上有効な時間枠内で当該官能基を切断することは不可能である。このような場合、当該リンカーは、対応する内因性酵素によって基質として認識されない構造モチーフを示す。そのような場合、官能性結合Laを切断するには酵素を含んでいる複合体が必要である。その例は、内因性タンパク質分解酵素によって認識されて酵素的に切断されるペプチドリンカーである。
【0150】
酵素レベルは、個体間で有意に異なり得るので、結果として、酵素的な切断によってプロドラッグ活性化の生物学的な変動が生じ得る。酵素レベルは、さらにまた、投与部位に応じても変動し得る。例えば、皮下注射の場合、体の特定の領域が他の領域よりもより予測可能な治療効果をもたらすということが知られている。患者間のそのような高レベルの可変性は望ましいものではない。さらに、そのような酵素依存性担体結合プロドラッグに関して薬物動態学的特性のインビボ-インビトロ相関関係を確立することは困難である。信頼できるインビボ-インビトロ相関関係が存在しない場合、放出プロフィールの最適化は面倒な仕事となる。
【0151】
患者間の可変性及び注射部位による可変性を回避するためには、切断に対する付加的な酵素的寄与を必要とすることなく治療上有効な時間枠内において切断動力学を示す担体結合プロドラッグを用いるのが望ましい。特に、高分子量担体の場合、とりわけ、分枝鎖ポリマー担体の場合、立体的に混み合っていることに起因して、酵素が当該連結する官能基Laに近づくことは制限され得る。従って、自己切断特性を示す担体結合プロドラッグを考案することが求められている。
【0152】
自己切断動力学は、例えば、酵素の非存在下における緩衝溶液中で加水分解速度を記録することによって、インビトロで測定することができる。
【0153】
加水分解に対する不安定性をアミド又はカルバメートのような官能基Lに導入するためには、例えば当該官能基の近くにある隣接する基として機能するために、担体の中に構造的化学成分を作る必要がある。プロドラッグアミド結合の切断能力を制御するような自己切断誘導性化学的構造は、自己切断誘導性基Gaと称される。自己切断誘導性基は、所与の官能基Laの加水分解速度に対して強い影響を有し得る。
【0154】
好ましいLaは、C(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択され、これらは、hGHの第1級アミノ基と一緒に、カルバメート基又はアミド基を形成する。
【0155】
かくして、LaがC(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択されて、それらがhGHの第1級アミノ基と一緒にカルバメート基又はアミド基を形成し、結果として、(AA1)又は式(AA2):
【化3】
【0156】
を生じる、本発明の組成物が好ましい。
【0157】
下記の節に、切断誘導性基Gaとして機能し得るさまざまな構造要素を記載する。
【0158】
基Gaは、自己切断誘導性基を表す。Gaは、そのままで存在し得るか、又は、追加的な加水分解的切断段階又は酵素的切断段階を用いてアンマスキングされることにより有効になるカスケード自己切断誘導性基として存在し得る。Gaがそのままで存在している場合、それは、Laの律速的自己加水分解を制御する。
【0159】
Gaについての例
A.J. Garmanら(A.J. Garman, S.B. Kalindjan, FEBS Lett. 1987年, 第223 (2)巻, p. 361-365 1987年)は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びウロキナーゼ中のアミノ基を可逆的に修飾するためにPEG5000-無水マレイン酸を使用した。pH7.4のバッファーでインキュベーションしたとき、マレイン酸結合が切断されることによりPEG-uPAコンジュゲートから機能性酵素が再生されたが、その再生は、半減期6.1時間での一次速度式に従った。
【0160】
単純な芳香族部分は、連結されているカルバメート結合に対する不安定性を暗示する(WO-A 01/47562)。例えば、置換されているか又は置換されていないフルオレニルメチル基は、プロドラッグアプローチにおいて、さまざまな生理活性剤に対するカルバメート結合を不安定にするために使用された(Tsuberyら, J Biol Chem 第279巻 (2004) p. 38118-24)。WO-A 2007/075534においては、2本のPEG鎖が、フルオレニル部分に結合していた。
【0161】
かくして、Gaは、カルバメート官能基Laに直接結合している芳香族環又はフルオレニルメチルである。
【0162】
従って、Gaが、LaとhGHの第1級アミノ基によって形成されたカルバメート官能基に直接結合している芳香族環又はフルオレニルメチルである本発明の組成物は好ましい。
【0163】
あるいは、Gaの変換は、S0内の分子内転位、例えば、1,4-脱離又は1,6-脱離などを誘発し得る。その転位は、Laを非常に不安定にするので、その切断が誘発される。Gaの変換は、カスケード機序における律速段階である。理想的には、当該一時的な結合の切断速度は、所与の治療のシナリオにおける薬物分子についての望ましい放出速度と同一である。1,6脱離に基づいたそのようなカスケードシステムにおいて、Laの切断は、Gaの変換により不安定性が誘発された実質的に直後であるのが望ましい。さらに、上記で論じた主として酵素的な切断に伴う不利益を回避するために、律速的切断動力学は、追加的な酵素的寄与を必要とせずに治療上有効な時間枠内で進行するのが望ましい。
【0164】
「R.B. Greenwald, A. Pendri, C.D. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999年, 第42巻, p. 3657-3667」及びPCT特許出願WO-A 99/30727には、1,4-ベンジル脱離又は1,6-ベンジル脱離に基づいたアミノ含有低分子化合物のポリ(エチレングリコール)プロドラッグの合成方法が記載された。このアプローチにおいて、該薬物分子のアミノ基は、カルバメート基を介して、PEG化ベンジル部分に結合している。該ポリ(エチレングリコール)は、エステル結合、カルボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合によって、ベンジル基に結合された。当該薬物分子からのPEGの放出は、自己加水分解と酵素的切断の組合せによって起こる。このアプローチでは、放出の引き金となるマスキング基の切断後、古典的な1,4-ベンジル脱離又は1,6-ベンジル脱離が急速に起こる。このリンカーシステムは、タンパク質の放出可能なポリ(エチレングリコール)コンジュゲートに対しても使用された(S. Lee, R.B. Greenwaldら, Bioconj. Chem. 2001年, 第12 (2)巻, p. 163-169)。リゾチームはリシン残基のε-アミノ基においてPEG化が起こった場合にその活性を失うので、モデルタンパク質としてリゾチームが使用された。さまざまな量のPEGリンカーがそのタンパク質にコンジュゲートされた。PEGコンジュゲートからの未変性タンパク質の再生は、ラットの血漿中で又は非生理学的な高pHバッファー中で起こった。F.M.H. DeGrootら(WO-A 2002/083180 及び W0-A 2004/043493)及びD. Shabatら(WO-A 2004/019993)も参照されたい。
【0165】
かくして、Laは、カルバメート官能基であり、そのカルバメート官能基の切断は、S0の1,4-ベンジル脱離又は1,6-ベンジル脱離を介して、Gaのヒドロキシル基又はアミノ基によって誘発され、ここで、Gaは、律速変換を受けるエステル結合、カルボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合を含んでいる。実際、Gaは、加水分解によって切断され得る。
【0166】
従って、LaがhGHのアミノ基と一緒にカルバメート官能基を形成し、そのカルバメート官能基の切断がS0の1,4-ベンジル脱離又は1,6-ベンジル脱離を介してGaのヒドロキシル基又はアミノ基によって誘発される(ここで、Gaは、律速変換を受けるエステル結合、カルボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合を含んでいる)本発明の組成物は好ましい。
【0167】
Gaは、上記前駆物質を表す構造的組合せで構成される、Gaの構成要素によって可能にされるカスケード切断システムを含み得る。Gaの前駆物質は、アミド、エステル又はカルバメートなどの追加的な一時的な結合を含み得る。該前駆物質の一時的な結合(例えば、カルバメート)の安定性又は加水分解に対する感受性は、自己加水分解特性によって制御され得るか、又は、酵素の活性を必要とする。
【0168】
Antczakら(Bioorg Med Chem 9 (2001) p. 2843-48)は、アミン含有薬物分子に関する高分子カスケードプロドラッグシステムのための基礎を形成する試薬について記載している。このアプローチにおいては、抗体が担体として働き、安定な結合によって切断可能なマスキング基を有する活性化基と抗体を連結している。エステル結合マスキング基が除去されると、Laが切断され、薬物分子を放出する。
【0169】
D. Shabatら(Chem. Eur. 3. 2004年, 第10巻, p. 2626-2634)は、マンデル酸活性化基に基づく高分子プロドラッグシステムについて記載している。このシステムにおいては、マスキング基は、カーバメート基によって活性化基に結合している。その活性化基は、アミド結合を介してポリアクリルアミドポリマーに永続的にコンジュゲートされている。触媒抗体によってマスキング基が活性化された後、そのマスキング基が環化によって切断され、薬物が放出される。その活性化基は、薬物が放出された後でも、まだ、ポリアクリルアミドポリマーに結合している。
【0170】
M.-R. Leeら(Angew. Chem. 2004年, 第116巻, p. 1707-17 10)は、マンデル酸活性化基とエステル結合マスキング基に基づく同様のプロドラッグシステムについて記載している。それにもかかわらず、これらのリンカーでは、1,6脱離段階は、やはり、反応性の高い芳香族中間体を生成する。たとえ、その芳香族部分が該高分子担体に永続的に結合したままでいても、潜在的に毒性の又は免疫原性の効果を伴う副反応が生じ得る。
【0171】
Greenwaldらは、2000年に、トリメチルロックラクトン化(trimethyl lock lactonization)に基づいたアミノ含有プロドラッグのポリ(エチレングリコール)薬物送達システムについて公表した(R.B. Greenwaldら, J.Med.Chem. 2000年, 第43(3)巻, p. 457-487; WO-A 02/089789)。このプロドラッグシステムにおいては、置換されたo-ヒドロキシフェニル-ジメチルプロピオン酸を、アミド結合により薬物分子のアミノ基に結合させている。ヒドロキシ基は、エステル基、カルボネート基又はカルバメート基によってPEGに結合している。薬物放出における律速段階は、これら官能基の酵素的切断とそれに続くラクトン化による迅速なアミド切断であり、これは、芳香族ラクトン副産物が遊離する。
【0172】
最近になって、R.B. Greenwaldら(Greenwaldら, J. Med.Chem. 2004年, 第47巻, p. 726-734)は、ビス-(N-2-ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシンアミド)リンカーに基づくPEGプロドラッグシステムについて記述した。このシステムでは、2つのPEG分子を、薬物分子のアミノ基にカップリングさせたビシン分子に結合させている。プロドラッグの活性化の最初の2つの段階は、両方のPEG分子の酵素的切断である。PEGとビシンの間の結合が異なると、異なったプロドラッグ活性化動力学が得られると記述されている。このシステムの主な不都合な点は、薬物分子にコンジュゲートさせたビシンアミドの加水分解速度が遅いことであり(リン酸塩バッファー中で、t1/2=3時間)、その結果、ビシン修飾プロドラッグ中間体が放出され、このビシン修飾プロドラッグ中間体は、親薬物分子と比較して、異なった薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示し得る。
【0173】
さらに具体的には、S0に対する特定のスペーサー部分を有する好ましい基La及びGaについて、以下に記載する。
【0174】
WO-A 2005/099768による好ましい構造は、一般式(I)及び一般式(II):
【化4】
【0175】
〔式中、
Tは、hGH-NHを表し;
Xは、スペーサー部分を表し;
Y1及びY2は、それぞれ独立して、O、S又はNR6を表し;
Y3は、O又はSを表し;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)を表し;
R3は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル基、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニル基又はカルボキサミドアルキルからなる群から選択される部分を表し;
R4は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択される部分を表し;
R7及びR8は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシルアルキル基、アルキルカルボニル基、カルボキサミドアルキル基、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール及び置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される基を表し;
R1は、S0の残部を表し;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される基を表し;
Nuは、求核試薬を表し;
nは、ゼロ又は正の整数を表し;
及び、
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環を表す〕
から選択される。
【0176】
本発明の意味の範囲内において、基LaはY3-C(Y5)NH-(hGHのアミノ基を加えた状態)で表され、GaはNu-W-Y4-C(Y1)Y2で表され、及び、Ar(R4)n-C(R3)XR1はS0を表し、ここで、該S0は、少なくともS1、S2、BS1をさらに含み、場合により、BS2も含んでいる。
【0177】
代替的な実施形態では、S1は、Arを介して結合しているか、又は、R3を表す。従って、XR1で置換されているY3に隣接している炭素原子は、分枝構造 BS1を表し、S1は、Gaを含んでいるArで終結している。この実施形態において、用語「S0」と「S1」が互いに交換可能であることは明白である。
【0178】
好ましくは、式(AA)又は式(AA1)において、S0は、式(AAA1)
【化5】
【0179】
で表され、ここで、上記式中、
Gaは、上記で示されている意味を有し;
S00は、CH2又はC(O)であり;
S0Aは、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、、場合により置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で場合により中断又は終結されていてもよく;
BS1、BS2、BS3は、独立して、N及びCHからなる群から選択される。
【0180】
S0B、S1Aは、独立して、1〜200個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、場合により置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で場合により中断又は終結されていてもよく;
S0C、S1Bは、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3〔ここで、各nは、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕である。
【0181】
S2、S3は、独立して、水素であるか、又は、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3〔ここで、各nは、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕であるが、但し、S2とS3の少なくとも一方は水素以外であり;
R2、R3は、下記式(A)の場合と同様に定義される。
【0182】
用語「ヘテロ環」は、上記で定義されているヘテロ環を意味する。場合による置換基は、例えば、オキソ(=O)〔この場合、当該環は、少なくとも部分的に飽和している〕、1〜6個の炭素原子を有する分枝鎖若しくは非分枝鎖のアルキル鎖又はハロゲンなどである。好ましい置換ヘテロ環は、スクシンイミドである。
【0183】
好ましくは、式(AAA1)中のGaはOC(O)-Rであり、Rは、下記に示されている式(I)の部分構造であり、その際、R1、R4、R5及びnは、下記に示されているように定義される。
【0184】
別の好ましい実施形態は、WO06136586A2に記載されている。従って、以下の構造が好ましい:
【化6】
【0185】
上記式中、
Tは、NH-hGHであり;
Xは、R13-Y1などのようなスペーサー部分であり
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含んでいる任意のヘテロ原子であるか、又は、存在せず;
R13は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され; R2及びR3は、独立して、水素、アシル基、又は、ヒドロキシル基の保護基から選択され;
R4〜R12は、独立して、水素、X-R1、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシル、カルボキサミドから選択され;
R1は、S0の残部であり、ここで、該S0は、少なくともS1、S2、BS1を含み、場合により、BS2も含んでいる。
【0186】
この実施形態では、Laはアミド基であり、Gaは、OR2/OR3を有するN-分枝構造を含んでいる。
【0187】
さらに別の好ましい実施形態では、好ましい構造は、プロドラッグコンジュゲートD-Lによって与えられ、ここで、
・ Dは、NH-hGHであり;及び、
・ Lは、式(I)
【化7】
【0188】
で表される非生物活性リンカー部分構造L1であり;
ここで、
点線は、アミド結合を形成することによるhGHのアミノ基への結合を示しており;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1は、C又はS(O)であり;
X2は、C(R7, R7a)又はC(R7, R7a)-C(R8, R8a)であり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aは、独立して、H及びC1-4アルキルからなる群から選択され;又は、
場合により、対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aのうちの1つ以上は、化学結合を形成してもよく;
場合により、対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aのうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になってC3-7シクロアルキル又は4〜7員のヘテロシクリルを形成してもよく;
場合により、対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R7/R8、R2/R3のうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になって環Aを形成してもよく;
場合により、R3/R3aは、それらが結合している窒素原子と一緒になって4〜7員のヘテロ環を形成してもよく;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキル、4〜7員のヘテロシクリル及び9〜11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され;並びに、
ここで、
L1は、1つの基L2-Zで置換され、場合によりさらに置換されていてもよいが、但し、式(I)中のアステリスクが付けられている水素は置換基で置き換えられず;ここで、
L2は、単一の化学結合又はスペーサーであり;及び、
Zは、S0の残部であり、ここで、該S0は、少なくともS1、S2、BS1を含み、場合により、BS2も含んでいる。
【0189】
この実施形態では、Laはアミド基で表され、Gaは、N(H*)X1(O)及びN(Nの置換基を包含する)に連結する鎖で表される。
【0190】
このタイプのプロドラッグコンジュゲートは、欧州特許出願第08150973.9号に記載されている。
【0191】
従って、La-S0が式(AAA2)
【化8】
【0192】
で表される本発明の組成物は好ましく、ここで、上記式中、
点線は、LaとhGHの第1級アミノ基がアミド結合を形成するように、hGHの第1級アミノ基への結合を示しており;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1は、C又はS(O)であり;
X2は、C(R7, R7a)又はC(R7, R7a)-C(R8, R8a)であり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aは、独立して、H及びC1-4アルキルからなる群から選択され;又は、
場合により、対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aのうちの1つ以上は、化学結合を形成してもよく;
場合により、対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aのうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になってC3-7シクロアルキル又は4〜7員のヘテロシクリルを形成してもよく;
場合により、対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R7/R8、R2/R3のうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になって環Aを形成してもよく;
場合により、R3/R3aは、それらが結合している窒素原子と一緒になって4〜7員のヘテロ環を形成してもよく;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキル、4〜7員のヘテロシクリル及び9〜11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され;並びに、
ここで、
S0は、1つの基L2-Zで置換され、場合によりさらに置換されていてもよいが、但し、式(I)中のアステリスクが付けられている水素は置換基で置き換えられず;ここで、
L2は、単結合又はスペーサーであり;及び、
Zは、式(AAA2)
【化9】
【0193】
〔式中、S00、S0A、S0B、S0C、S1A、S1B、S2、S3、BS1、BS2及びBS3は、上記式(AAA1)に関して示されている意味を有する〕
で表される。
【0194】
「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖の炭素鎖を意味する。アルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられ得る。
【0195】
「C1-4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、例えば、分子の末端に存在している場合、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルを意味し、又は、分子の2つの部分が当該アルキル基によって連結されている場合、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-C(CH3)2-を意味する。C1-4アルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられ得る。
【0196】
「C1-6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、例えば、分子の末端に存在している場合、C1-4アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルを意味し、又は、分子の2つの部分が当該アルキル基によって連結されている場合、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-C(CH3)2-を意味する。C1-6アルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられ得る。
【0197】
従って、「C1-18アルキル」は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、「C8-18アルキル」は、8〜18個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。従って、「C1-50アルキル」は、1〜50個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。
【0198】
「C2-50アルケニル」は、2〜50個の炭素原子を有する分枝鎖又は非分枝鎖のアルケニル鎖を意味し、例えば、分子の末端に存在している場合、-CH=CH2、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、-CH=CH-CH2-CH3、-CH=CH-CH=CH2を意味し、又は、分子の2つの部分が当該アルケニル基によって連結されている場合、例えば、-CH=CH-を意味する。C2-50アルケニル炭素の各水素は、さらに特定されている置換基で置き換えられ得る。従って、用語「アルケニル」は、少なくとも1の炭素炭素二重結合を有する炭素鎖に関する。場合により、1以上の三重結合が存在していてもよい。
【0199】
「C2-50アルキニル」は、2〜50個の炭素原子を有する分枝鎖又は非分枝鎖のアルキニル鎖を意味し、例えば、分子の末端に存在している場合、-C≡CH、-CH2-C≡CH、CH2-CH2-C≡CH、CH2-C≡C-CH3を意味し、又は、分子の2つの部分が当該アルキニル基によって連結されている場合、例えば、-C≡C-を意味する。C2-50アルキニル炭素の各水素は、さらに特定されている置換基で置き換えられ得る。従って、用語「アルキニル」は、少なくとも1の炭素炭素三重結合を有する炭素鎖に関する。場合により、1以上の二重結合が存在していてもよい。
【0200】
「C3-7シクロアルキル」又は「C3-7シクロアルキル環」は、3〜7個の炭素原子を有する環状アルキル鎖〔ここで、該アルキル鎖は、炭素炭素二重結合を有していてもよいが、少なくとも部分的には飽和している〕、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルを意味する。シクロアルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられ得る。用語「C3-7シクロアルキル」又は「C3-7シクロアルキル環」には、ノルボナン(norbonane)又はノルボネン(norbonene)のような架橋二環も包含される。従って、「C3-5シクロアルキル」は、3〜5個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。
【0201】
従って、「C3-10シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル、例えば、C3-7シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルを意味する。用語「C3-10シクロアルキル」には、少なくとも部分的に飽和している炭素単環及び炭素二環も包含される。
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。ハロゲンは、フルオロ又はクロロであるのが一般に好ましい。
【0202】
「4〜7員のヘテロシクリル」又は「4〜7員のヘテロ環」は、少なくとも1個の環原子から最大で4個までの環原子が硫黄(これは、-S(O)-、-S(O)2-を包含する)、酸素及び窒素(これは、=N(O)-を包含する)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられている、最大数までの二重結合を含み得る(芳香族環であるか、又は、完全に飽和、部分的に飽和若しくは不飽和である非芳香族環である)4個、5個、6個又は7個の環原子を有する環を意味し、ここで、該環は、炭素原子又は窒素原子を介して当該分子の残部に結合している。4〜7員のヘテロ環の例は、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピン又はホモピペラジンである。
【0203】
「9〜11員のヘテロビシクリル」又は「9〜11員のヘテロ二環」は、9〜11個の環原子を有する2つの環からなるヘテロ環系を意味し、ここで、少なくとも1個の環原子は両方の環に共有されており、及び、該9〜11個の環原子は最大数までの二重結合を含むことができ(芳香族環であるか、又は、完全に飽和、部分的に飽和若しくは不飽和である非芳香族環である)、ここで、少なくとも1個の環原子から最大で6個までの環原子は硫黄(これは、-S(O)-、-S(O)2-を包含する)、酸素及び窒素(これは、=N(O)-を包含する)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、ここで、該環は、炭素原子又は窒素原子を介して当該分子の残部に結合している。9〜11員のヘテロ二環の例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンゾアゼピン、プリン又はプテリジンである。用語「9〜11員のヘテロ二環」には、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカンのような2つの環からなるスピロ構造又は8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタンのような架橋ヘテロ環も包含される
好ましくは、La-S0は、
【化10】
【0204】
〔ここで、Rは、H又はC1-4アルキルであり;Yは、NH、O又はSであり; R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、X、X1、X2は、上記で示されている意味を有する〕
からなる群から選択される。
【0205】
さらに好ましくは、La-S0は、
【化11】
【0206】
〔ここで、Rは、上記で示されている意味を有する〕
からなる群から選択される。
【0207】
少なくとも1個(最大で4個)の水素は、基L2-Zで置き換えられる。2以上の基L2-Zが存在している場合、各L2及び各Zは、独立して選択され得る。好ましくは、1つの基L2-Zのみが存在している。
【0208】
一般に、S0は、上記式中のアステリスクが付けられている水素の置き換えは別として、任意の場所においてL2-Zで置換され得る。好ましくは、R、R1〜R8によって直接与えられる水素又はC1-4アルキル若しくはさらに別の基及び環(ここで、さらに別の基及び環は、R及びR1〜R8の定義によって与えられる)の水素としての水素のうちの1〜4個が、L2-Zで置き換えられる。
【0209】
さらにまた、S0は、場合により、さらに置換され得る。一般に、当該切断の原理が悪影響を受けない限り、任意の置換基を使用することができる。
【0210】
好ましくは、場合による1以上のさらなる置換基は、独立して、ハロゲン、CN、COOR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、OC(O)N(R9R9a)、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル又はC2-50アルキニルからなる群から選択され、ここで、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく、ここで、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1以上の基で場合により中断されていてもよく;
R9、R9a、R9bは、独立して、H、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル又はC2-50アルキニルからなる群から選択され、ここで、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく、ここで、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1以上の基で場合により中断されていてもよく;
Tは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキル、4〜7員のヘテロシクリル又は9〜11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され、ここで、Tは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく;
R10は、ハロゲン、CN、オキソ(=O)、COOR12、OR12、C(O)R12、C(O)N(R12R12a)、S(O)2N(R12R12a)、S(O)N(R12R12a)、S(O)2R12、S(O)R12、N(R12)S(O)2N(R12aR12b)、SR12、N(R12R12a)、NO2、OC(O)R12、N(R12)C(O)R12a、N(R12)S(O)2R12a、N(R12)S(O)R12a、N(R12)C(O)OR12a、N(R12)C(O)N(R12aR12b)、OC(O)N(R12R12a)又はC1-6アルキルであり、ここで、C1-6アルキルは、同一であるか又は異なっている1以上のハロゲンで場合により置換されていてもよく;
R11、R11a、R12、R12a、R12bは、独立して、H又はC1-6アルキルからなる群から選択され、ここで、C1-6アルキルは、同一であるか又は異なっている1以上のハロゲンで場合により置換されていてもよい。
【0211】
用語「中断され(interrupted)」は、2個の炭素の間に基が挿入されていることを意味するか、又は、炭素鎖の末端においては、炭素と水素の間に基が挿入されていることを意味する。
【0212】
L2は、単一の化学結合又はスペーサーである。L2がスペーサーである場合、それは、好ましくは、L2はZで置換されているという条件のもとで、上記で定義されている1以上の場合による置換基として定義される。
【0213】
従って、L2が単一の化学結合以外である場合、L2-Zは、COOR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、OC(O)N(R9R9a)、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル又はC2-50アルキニルであり、ここで、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく、ここで、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、-T-、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1以上の基で場合により中断されていてもよく;
R9、R9a、R9bは、独立して、H、Z、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル又はC2-50アルキニルからなる群から選択され、ここで、T、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく、ここで、C1-50アルキル、C2-50アルケニル及びC2-50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1以上の基で場合により中断されていてもよく;
Tは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキル、4〜7員のヘテロシクリル又は9〜11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され、ここで、Tは、同一であるか又は異なっている1以上のR10で場合により置換されていてもよく;
R10は、Z、ハロゲン、CN、オキソ(=O)、COOR12、OR12、C(O)R12、C(O)N(R12R12a)、S(O)2N(R12R12a)、S(O)N(R12R12a)、S(O)2R12、S(O)R12、N(R12)S(O)2N(R12aR12b)、SR12、N(R12R12a)、NO2、OC(O)R12、N(R12)C(O)R12a、N(R12)S(O)2R12a、N(R12)S(O)R12a、N(R12)C(O)OR12a、N(R12)C(O)N(R12aR12b)、OC(O)N(R12R12a)又はC1-6アルキルであり、ここで、C1-6アルキルは、同一であるか又は異なっている1以上のハロゲンで場合により置換されていてもよく;
R11、R11a、R12、R12a、R12bは、独立して、H、Z又はC1-6アルキルからなる群から選択され、ここで、C1-6アルキルは、同一であるか又は異なっている1以上のハロゲンで場合により置換されていてもよく;
但し、R9、R9a、R9b、R10、R11、R11a、R12、R12a、R12bのうちの1つは、Zである。
【0214】
さらに一層好ましい一般的な芳香族構造を以下に記載する:
【化12】
【0215】
ここで、
NH-rhGHは、一時的なリンカーに結合しているrhGH残基を表し;
R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチルから選択され;
PEGは、一時的なリンカーに結合しているPEG化残基を表し;
nは、1又は2であり;及び、
Xは、C1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択される。
【0216】
用語「C1〜C12ヘテロアルキル」は、上記で定義されているヘテロ原子、官能基、炭素環又はヘテロ環で場合により中断されていてもよい1〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。
【0217】
好ましい実施形態では、式(A)において、LaはrhGHに結合しているカルバメート基によって表され、Gaは芳香族酸素基、それに結合しているカルボニル及び式Iに示されているようなそのカルボニルに結合している置換基によって表される。
【0218】
さらに好ましい構造は、一般式I:
【化13】
【0219】
で与えられ、それは、上記一般的な芳香族リンカー構造に包含される構造(A)の一部分であり、ここで、式Iの好ましい例としては、
【化14】
【0220】
などがある。
【0221】
さらに好ましい芳香族構造は、式II
【化15】
【0222】
で表され、それは、上記一般的な芳香族リンカー構造に包含される構造(A)の一部分であり、ここで、式IIの好ましい例としては、
【化16】
【0223】
などがある。
【0224】
さらに好ましい構造は、式IIIで表され、それは、上記一般的な芳香族リンカー構造に包含される構造(A)の一部分であり、ここで、PEG-Xは、
【化17】
【0225】
であり、PEG-Wとしては、以下の置換基:
【化18】
【0226】
などがある。
【0227】
好ましいプロドラッグコンジュゲートの一例を以下に示す:
【化19】
【0228】
ここで、
Rは、水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され;
Xは、C1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択される。
【0229】
さらにまた、好ましい実施形態及びさらに好ましい実施形態においても、PEGは、好ましくは、S0の残部を意味し、ここで、該S0は、少なくともS1、S2、BS1を含み、場合により、BS2も含んでいる。
【0230】
好ましい実施形態では、本発明のプロドラッグは、
【化20】
【0231】
〔ここで、mは、200〜250の整数であり、nは、100〜125の整数である〕
【化21】
【0232】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
【化22】
【0233】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
及び、
【化23】
【0234】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
からなる群から選択される。
【0235】
本発明のプロドラッグは、当技術分野で既知の方法で調製することができる。しかしながら、特に式(AA1)で表される化合物の場合、当該プロドラッグ分子は、1以上のチオール基と活性カルボネート基を含んでいる第1の前駆体分子及びマレイミド基を含んでいる第2の前駆体分子を提供し、付加反応において反応させてチオスクシンイミド基を形成させ、その結合して一体となった前駆体分子をhGHと反応させて、式(AA1)で表される化合物を生成させることにより、収束的合成で調製するのが好ましい。
【0236】
従って、本発明の別の態様は、式hGH-NH-C(O)O-S0(AA1)〔式中、S0は、上記で示されている意味を有し、少なくとも1の基
【化24】
【0237】
を含んでいる〕
で表される化合物を調製する方法であり、ここで、該方法は、以下:
(a) 式ROC(O)O-S0'-SH(AA1')で表される化合物を、式
【化25】
【0238】
で表される化合物と反応させて〔ここで、Rは、活性化カルボネート基のための適切な残部であり、S0'及びS0''は、少なくとも1の基
【化26】
【0239】
を含んでいるS0を生成するように選択される〕、式ROC(O)O-S0で表される化合物を生成させる段階;及び、
(b) 式ROC(O)O-S0で表される化合物をhGH-NH2〔ここで、hGH-NH2は、その複数の第1級アミノ基のうちの1つを伴ったhGHを表している〕と反応させて、式(AA1)で表される化合物を生成させる段階;
を含む。
【0240】
カルボネート官能基のための適切なR基としては、置換されているアルキル基又は炭素環式基若しくはヘテロ環式基(例えば、アリール又はシクロアルキル)、例えば、ペンタフルオロフェニル基又はNHS基などがある。
【0241】
rhGH PEG化プロドラッグの機能特性を決定するためのアッセイ
コンジュゲートの活性及び半減期
本明細書中に記載されているプロドラッグコンジュゲートの活性及び半減期を測定するためには、「永続的」コンジュゲート〔これは、自己加水分解を受けない - 即ち、永続的なコンジュゲート〕を合成することが必要である。
【0242】
これは、自己切断を開始するリンカー構造の一部分を修飾することは別として、当該rhGH PEG化プロドラッグと同一の分子を合成することによって達成される。そのような対応する化合物は、該rhGH PEG化プロドラッグと同様のコンジュゲートの残存活性及び循環半減期を有するだろう。さらに一般的に、任意の自己加水分解可能な(自己切断)一時的なリンカーコンジュゲート化プロドラッグに関し、リンカー構造に僅かな修飾を施すことにより、自己切断を受ける能力は別として、当該プロドラッグと同一の分子を合成することを考えることができる。
【0243】
対応するコンジュゲートを使用する理由は、本明細書中に記載されている自己加水分解可能な(自己切断)一時的なリンカーを実施例1に記載されているアッセイに適用した場合、そのコンジュゲートは、明らかに、直ぐに未変性の薬物の放出を開始し、その未変性の薬物は、アッセイの結果に影響を及ぼすからである。即ち、変化していない未変性薬物(例えば、rhGH)が放出されて測定された活性に寄与するので、永続的なコンジュゲートを調製することなしに残存活性を測定することは不可能である。
【0244】
上記で説明した理由により、自己加水分解可能な(自己切断)一時的なリンカーコンジュゲート化プロドラッグの残存活性は、対応する永続的なコンジュゲートの活性として表される。永続的なコンジュゲートは、そのリンカー構造に僅かな修飾を施すこと以外は、自己加水分解可能な(自己切断)一時的なリンカーコンジュゲート化プロドラッグ(実施例20〜実施例23)と同様の方法で調製され、その結果、そのリンカーは、もはや自己切断を受けることはできない。永続的なコンジュゲートの調製については、実施例10〜実施例19に記載されている。
【0245】
本発明の一実施形態によれば、本明細書中に記載されているrhGH PEG化プロドラッグは、
(1) PEGが当該プロドラッグコンジュゲート内のrhGHに結合された場合、該プロドラッグは、注入側の脂肪組織萎縮を回避するためのPEGを有していない未変性成長ホルモンの5%未満のGH活性しか有していないこと;及び、
(2) PEGは自己加水分解可能な(自己切断)一時的なリンカーを介してrhGHに結合され、その場合、該リンカーの自己加水分解速度は、インビボでの半減期が10時間〜600時間であるような速度であること;
を特徴とする。
【0246】
特性(1)を確認するためのアッセイは、本明細書中の実施例1に詳細に記載されている。これらの詳細な説明に基づいて、プロドラッグの残存活性を測定することは当業者にとって日常業務である。
【0247】
好ましい実施形態では、特性(1)の残存活性は、5%未満であり、さらに好ましくは、3%未満であり、さらに一層好ましくは、1%未満であり、最も好ましくは、実質的に不活性である。
【0248】
特性(2)を確認するためのアッセイは、本明細書中の実施例2に詳細に記載されている。これらの詳細な説明に基づいて、プロドラッグの一時的なリンカーの自己切断速度を測定することは当業者にとって日常業務である。
【0249】
好ましい実施形態では、自己切断速度は、インビボ半減期が、20時間〜300時間、さらに好ましくは、20時間〜150時間、さらに一層好ましくは、30時間〜150時間、さらに一層好ましくは、30時間〜100時間、さらに一層好ましくは、40時間〜100時間、さらに一層好ましくは、50時間〜75時間、同様にさらに一層好ましくは、30時間〜75時間であるような速度である。
【0250】
インビボとインビトロの相関関係
インビトロとインビボのリンカー切断速度の間に良好な相関関係があることは、会社Ascendis Pharma(Complex Biosystems Company)による先の特許出願から知られている。インビボでの放出動力学は、インビトロでの実験データから容易に予測することができる。
【0251】
脂肪組織萎縮
上記で記載したように、脂肪組織萎縮は、注入部位の近くで起こる脂肪分解である。従って、成長ホルモン及び成長ホルモンコンジュゲートによるインビトロ脂肪分解の測定を用いて、該コンジュゲートの脂肪組織萎縮効果を推定することができる。
【0252】
本明細書中に記載されているプロドラッグコンジュゲートの脂肪分解効果を測定するためには、「永続的」コンジュゲート〔これは、自己加水分解を受けない - 即ち、永続的なコンジュゲート〕を合成することが必要である。
【0253】
脂肪組織萎縮を測定するためのアッセイは、本明細書中の実施例3に詳細に記載されている。これらの詳細な説明に基づいて、脂肪組織萎縮を測定することは当業者にとって日常業務である。
【0254】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載されているrhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートは、実施例3の脂肪組織萎縮を測定するためのアッセイ及び別の同一の投与計画条件に従って測定して、ヒト成長ホルモンに匹敵する脂肪組織萎縮効果を有する。
【0255】
GH関連疾患
本発明における第2の態様の用語「GH関連」疾患は、ヒトがGHから恩恵を受け得る状態及び疾患に関する。
【0256】
これには、限定するものではないが、成長ホルモン欠乏症、成人期発症成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、プラーダー‐ヴィリ症候群、短縮小腸症候群、慢性腎機能不全、体内発育遅延児(SGA)、AIDS消耗、アンチエイジング、慢性関節リウマチ、突発性低身長、低身長ホメオボックス遺伝子及びソマトポーズが包含される。とりわけ、ヌーナン症候群、骨系統疾患、ダウン症候群、長期ステロイド使用に関連する低身長、アールスコグ症候群などの別の低身長状態も包含される。
【0257】
さらにまた、以下のものも包含される:慢性腎疾患、若年性関節リウマチ、嚢胞性線維症、HAART治療を受けた小児におけるHIV感染(HIV/HALS小児)、SGAを除く出生時超低体重で生まれた子供における低身長、骨系統疾患、軟骨低形成症、軟骨形成不全症、突発性低身長(ISS)、成人におけるGHD、長骨〔例えば、脛骨、腓骨、大腿骨、上腕骨、橈骨、尺骨、鎖骨、中手骨(matacarpea)、中足骨(matatarsea)及び指〕の骨折又はその内部の骨折、海綿状骨(spongious bones)〔例えば、頭蓋骨(scull)、手の基部(base of hand)及び脚の基部(base of food)〕の骨折又はその内部の骨折、腱又は靭帯の手術〔例えば、手、膝、又は肩の腱又は靭帯の手術〕の後の患者、仮骨延長術(distraction oteogenesis)、臀部若しくは円盤の置換術(hip or discus replacement)又は半月板修復又は脊椎固定術又は人工関節固定〔例えば、膝、臀部、肩、肘、手首又は顎における人工関節固定〕に起因する障害、骨接合材料〔例えば、釘、ネジ及びプレート〕を固定したことに起因する障害、骨折の非癒合又は異常癒合、骨切除術(osteatomia)〔例えば、脛骨又は第1足指からの骨切除術〕に起因する障害、移植片移植に起因する障害、外傷又は関節炎に起因する膝の関節軟骨変性症、ターナー症候群を患っている患者における骨粗鬆症、男性における骨粗鬆症、長期間透析を受けている成人患者(APCD)、APCDにおける栄養不良性関連心血管疾患、APCDにおける悪液質の逆転、APCDにおける癌、APCDにおける慢性閉塞性肺疾患(chronic abstractive pulmonal disease)、APCDにおけるHIV、APCDの高齢者、APCDにおける慢性肝疾患、APCDにおける疲労症候群、クローン病、肝機能障害、HIVに感染した男性、短縮小腸症候群、中心性肥満、HIV関連脂肪異栄養症症候群(HALS)、男性不妊症、主要な待機手術後の患者、アルコール/薬物の解毒後又は神経学的外傷後の患者、加齢、虚弱な高齢者、変形性関節炎、外傷的に損傷を受けた軟骨、勃起不全、線維筋痛症、記憶障害、鬱病、外傷性脳損傷、くも膜下出血、出生時超低体重、代謝症候群、グルココルチコイド筋障害、並びに、小児におけるグルココルチコイド治療に起因する低身長。
【0258】
図面において、以下のものが示されている。
【0259】
図1は、精製された永続的PEG-hGHコンジュゲートのSDS-PAGE分析を示す図である。ここで、レーン1:HiMark(登録商標) Pre-stained High Molecular Weight Protein Standard;レーン2:化合物23;レーン3:化合物23;レーン4:化合物25;レーン5:化合物26、レーン6:化合物33;レーン7:化合物32;レーン8:化合物28;レーン9:化合物28;レーン10:化合物28;レーン11:化合物30;レーン12:化合物34;レーン13:化合物34;レーン14:化合物27;レーン15:化合物29。
【0260】
図2は、コンジュゲート28の合成のクエンチされた反応溶液のサイズ排除クロマトグラム及び精製された28のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
【0261】
図3は、コンジュゲート35のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された35のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
【0262】
図4は、コンジュゲート36のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された36のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
【0263】
図5は、コンジュゲート37のカチオン交換クロマトグラフィー精製及び精製された37のサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
【0264】
図6は、バッファー(pH7.4, 37℃)中でインキュベートされたコンジュゲート35のサンプルのさまざまな時点におけるサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
【0265】
図7〜10は、本発明の好ましいプロドラッグコンジュゲートを示す図であり、その図には、S0、S1、S2、La、Ga、BS1、BS2、BS3及び臨界距離が示されている。
【0266】
図11は、コンジュゲート36の薬力学的応答曲線を示す図である。
【0267】
詳細には、図7及び図8は、タイプ(AA1、AAA1)の代表的な構造35及び38を示しており、ここで、Ga並びにBS1及びBS2を含んでいるS0の少なくとも5kDaのポリマー鎖はS0として印が付けられており、LaとhGHの第1級アミノ基から生じたカルバメート基はLaとして印が付けられており、BS1はS1として印が付けられている少なくとも4kDaのポリマー鎖を含んでおり、ここで、S1はBS3を含んでおり、そのBS3はS3として印が付けられている少なくとも4kDaのポリマー鎖を含んでいる。BS2は、S2として印が付けられている少なくとも4kDaのポリマー鎖を含んでいる。臨界距離は、図7では18原子によって与えられており、図8では、4原子によって与えられている。
【0268】
図9及び図10においては、タイプ(AA2、AAA2)の代表的な構造が示されており、ここで、LaとhGHの第1級アミノ基から生じたアミド基はLaとして印が付けられており、Laに結合している残部にはS0が付けられており、これは、Gaと「PEG」を含んでおり、ここで、PEGは少なくともBS1、S1及びS2(どれも示されていない)を含んでいるS0の残部を表している。
【実施例】
【0269】
方法
分析的RP-HPLC及び分取RP-HPLC
分析的RP-HPLC/ESI-MSは、2695 サンプルマネージャー、2487 二波長吸光度検出器、及び ZQ 4000 ESI 機器〔これには、5μm Reprosil Pur 300Å ODS-3 カラム(75×1.5mm)が取り付けられている〕からなるWaters 装置で実施した(Dr. Maisch, Ammerbuch, Germany;流速:350μL/分、典型的な勾配:5分間かけて、水中の10-90%アセトニトリル、0.05%TFA)。
【0270】
分取RP-HPLCに関しては、Waters 600 コントローラー及び2487 二波長吸光度検出器を使用し、これには、以下のカラム(Reprosil Pur 300 Å ODS-3)が取り付けられていた:(A):100×20mm、流速10mL/分、典型的な勾配:11分間かけて、水中の10-90%アセトニトリル、0.1% TFA;
又は、
(B):100×40mm(10μm 粒子)、流速40mL/分、典型的な勾配:11分間かけて、水中の10-90%アセトニトリル、0.1% TFA。
【0271】
カチオン交換クロマトグラフィー
カチオン交換クロマトグラフィーによるコンジュゲートの精製は、Macrocap SP カラムが取り付けられているAKTA Explorer システム(GE Healthcare)を用いて実施した。20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4)の中のそれぞれのコンジュゲートを、20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4)(バッファーA)の中で予め平衡化させたカラムに適用した。そのカラムを3カラム容量のバッファーAで洗浄して、未反応PEG試薬を全て除去した。20カラム容量での10-60%バッファーB(20mM酢酸ナトリウム、1M塩化ナトリウム、pH4.5)又は20カラム容量での0-40%バッファーBの勾配とそれに続く3カラム容量での40-80%バッファーBの勾配を用いて、コンジュゲートを溶離させた。流速は7mL/分であり、溶出液は280nmで検出することによりモニターした。
【0272】
アニオン交換クロマトグラフィー
アニオン交換クロマトグラフィーによるコンジュゲートの精製は、Source Q カラムが取り付けられているAKTA Explorer システム(GE Healthcare)を用いて実施した。20mMトリス/HClバッファー(pH7.5)(バッファーC)の中のそれぞれのコンジュゲートを、バッファーCの中で予め平衡化させたカラムに適用した。そのカラムを3カラム容量のバッファーCで洗浄して、未反応PEG試薬を全て除去した。25カラム容量での0-20%バッファーD(20mMトリス/HCl、1M塩化ナトリウム、pH7.5)の勾配を用いて、コンジュゲートを溶離させた。流速は5mL/分であり、溶出液は280nmでのUV検出によりモニターした。あるいは、バッファー系20mMビス-トリス/HCl(pH6.5)(バッファーE)及び20mMビス-トリス/HCl(1M塩化ナトリウム、pH6.5)(バッファーF)を使用した。
【0273】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
分析的サイズ排除クロマトグラフィーによる分析は、AKTA Explorer (GE Healthcare)システムで実施した。Superdex 200 又は Sepharose 6 カラム(10×300mm)を用いてサンプルを分析し、移動相としては以下のものを使用した:20mMリン酸ナトリウム、135mM塩化ナトリウム、pH7.4。当該カラムに関する流速は0.75mL/分であり、溶出したhGH及びポリマー-hGHコンジュゲートは215nm及び280nmで検出した。
【0274】
pfp-活性化mPEG-リンカー試薬の活性の測定
定められた量のpfp-活性化mPEG-リンカー試薬(3-5mg)を100μLの水に溶解させた。10μLの0.5M NaOHを添加し、その反応混合物を40℃で60分間反応させた。1.5μLのTFAを添加し、得られた混合物の10%を分析的RP-HPLCで分析した。そのクロマトグラムを260nm及び280nmで記録した。ペンタフルオロフェノールに対応するピークを積分した。求められた値を、定められた量のpfpを分析的RP-HPLCで分析することにより得られた適切な校正曲線並びに260nm及び280nmで記録されたクロマトグラムと比較した。
【0275】
SDS-PAGE分析
永続的mPEG-hGHコンジュゲートを、NuPAGE(登録商標) Novex Tris-Acetate ゲル(厚さ1.5mm, 15レーン)、NuPAGE Tris-Acetate SDS-Running Buffer、HiMark(登録商標) Pre-stained High Molecular Weight Protein Standard 及び Simply Blue(登録商標) SafeStain(Invitrogen)を用いて分析した。各レーン中に、0.2-0.6μgのコンジュゲートを適用し、供給業者のプロトコルに従って、電気泳動法及びそれに続く染色を実施した。
【0276】
実施例1: hGH PEG化プロドラッグとhGHの活性を測定するためのアッセイ
hGHの生物学的活性は、当業者には既知の標準的なアッセイを用いて測定される。EP1715887B1に記載され、また、上記でも論じられているように、未変性hGH又は変性hGH(例えば、PEG化hGH)に関連した生物学的活性は、標準的なFDC-P1細胞増殖アッセイ(Clarkら, Journal of Biological Chemistry, 第271巻: p. 21969-21977)又は受容体結合アッセイ(US5057417)を用いて測定することができる。
【0277】
特許EP1715887B1の第8行目(第14頁)には、好ましいインビトロ活性は、可能な限り高くなければならず、最も好ましい変性hGHは、同等の又は改善されたインビトロ生物学的活性を有しているということが記載されている。本発明においては、その生物学的活性は、未変性hGHと比較して可能な限り低くなければならない。かくして、本発明は、EP1715887B1に記載されている従来技術と比較して正反対のことを行った。
【0278】
インビトロアッセイ
下記実施例に記載されている永続的PEG-hGHコンジュゲートのインビトロ活性は、インビトロでの生物学的活性を評価するための1種類以上の標準的なアッセイを用いて求められる。使用し得る標準的なアッセイとしては、細胞増殖アッセイ、例えば、FDC-Pl細胞を使用する細胞増殖アッセイ(例えば、「Clarkら, Journal of Biological Chemistry, 第271巻:p. 21969-21977, 1996年」を参照されたい)、又は、Ba/F3-hGHR細胞〔これは、hGH、hGHデルタ135-146に対する受容体を発現する〕を使用する細胞増殖アッセイ、又は、Nb2ラットリンパ腫細胞〔これは、乳腺刺激ホルモン受容体(lactogenic receptor)を介してhGHに応答して増殖する〕を使用する細胞増殖アッセイ(例えば、「Alam, K. S.ら, J. Biotech, 2000年2月28日, 第78(1)巻, p. 49-59」を参照されたい)などがある。受容体結合アッセイ(例えば、米国特許第5,057,417号を参照されたい)も用いることができる。
【0279】
Nb2-11は、長期にわたるエストロゲン治療の後で雄Noble(Nb)系統ラットの胸腺/リンパ節において発生したリンパ腫の移植から誘導されたNb-2ラットリンパ腫系統のクローンである。その細胞はプレT細胞起源であり、その増殖は哺乳動物のラクトゲン(例えば、プロラクチンなど)に依存する。Nb2-11は、さらにまた、IL-2によって分裂促進的に刺激され得る。NbラットにNb2細胞を注入すると、ビンカアルカロイド類での治療に対して高い感受性を示す悪性腫瘍が生じる。核型分析によって、該細胞系統が5つだけの充分に発達した染色体異常を有していることが示された。該細胞は、表面免疫グロブリンを発現せず、それらのラクトゲン依存性が確認される。バイオアッセイにおいてNb2-11細胞を使用するためのプロトコルは、申し込みによりECACCから入手可能である。
【0280】
WO2006102659の第74頁段落0240実施例7に記載されているように、hGHと本明細書中に記載されているコンジュゲートの生物学的活性は、NB2-11ラットリンパ腫細胞増殖アッセイを用いてインビトロで評価する。簡潔に言えば、ラットリンパ腫から誘導されたNB2-11細胞をhGHと一緒にインキュベートして、該細胞表面にあるその受容体にhGH分子を結合させる。受容体に結合することによって、シグナル伝達カスケードが誘発され、その結果、細胞が増殖する。アッセイの結果は、測定されたタンパク質含有量及び未変性hGHの生物活性100%に基づく。
【0281】
結論
この実施例1の詳細な指示に基づいて、該プロドラッグのこの残存活性を測定することは、当業者にとって、日常業務である。
【0282】
実施例2: プロドラッグの一時的なリンカーの自己切断速度を測定するためのアッセイ
インビトロ半減期の測定
PEG-リンカー-hGHコンジュゲートのインビトロリンカー切断速度を測定するために、化合物をpH7.4のバッファー(例えば、10mMリン酸ナトリウム、140mM NaCl、3mM EDTA)に溶解させ、溶液を0.22μmフィルターを通して濾過し、37℃でインキュベートする。サンプルを時間間隔を空けて採取し、RP-HPLC又は215nmでのサイズ排除クロマトグラフィーで分析する。遊離hGHに対応するピークを積分し、インキュベーション時間に対してプロットする。曲線当てはめソフトを適用して、一次切断速度を求める。
【0283】
インビボ半減期の決定とインビトロ/インビボ半減期相関関係
インビボにおけるリンカー切断速度は、ラットに静脈内注射した後で、永続的PEG-hGHコンジュゲートの薬物動態学を同じPEG部分を有しているそれぞれの一時的PEG-リンカー-hGHコンジュゲートと比較することにより求められる。
【0284】
第1に、永続的PEG-hGHコンジュゲートをラットに静脈内注射し、時間間隔を空けて血液サンプルを採取し、血漿を調製し、ELISAを用いてhGHに関して分析する。
【0285】
第2に、一時的PEG-hGHコンジュゲートをラットに静脈内注射し、時間間隔を空けて血液サンプルを採取し、血漿を調製し、ELISAを用いてhGHに関して分析する。
【0286】
それぞれの時点における永続的コンジュゲートの測定されたhGH濃度で一時的コンジュゲートのhGH濃度を割った比及び曲線あてはめからインビボ半減期を計算する。データをインビトロ半減期測定値と比較する。
【0287】
結論
この実施例2の詳細な指示に基づいて、該hGH-PEG化プロドラッグのインビボ半減期を測定することは、当業者にとって、日常業務である。
【0288】
実施例3: 脂肪組織萎縮を測定するためのアッセイ
上記で述べたように、化合物PHA-794428は、PEG化-hGHであり、そして、会社Pharmaciaの特許EP1715887に記載されている。「www.clinicaltrials.gov」によれば、試験は2007年12月10日に終了した。当該プログラムを終了させるというPfizer(Pharmacia)の決定は、PHA 794428を単独注入した後の臨床第2相試験において報告された注入部位脂肪組織萎縮の症例が原因であった。脂肪組織萎縮は、脂肪組織が局所的に失われることを表す用語であり、ヒトにおいて、皮膚内の穴として現れる(肉眼で見ることができる)。
【0289】
アッセイ
脂肪組織萎縮の測定に関し、従来技術で記載されている幾つかのインビトロ方法がある。1つの案は、刊行物「J. Anim. Sci (1972), 第35巻: p. 794-800 (L.J. Machlin)」の第795頁に記載されている。もう1つの記述は、「Int. J. Cancer; 第80巻, p. 444-47 (1999)」の中に見いだすことができる。
【0290】
概して、脂肪組織萎縮は以下に提案されているように測定することが可能である。
【0291】
脂肪分解効果は、単離された哺乳動物脂肪細胞(好ましくは、ネズミの脂肪細胞)で構成されるインビトロアッセイを用いて確認され得る。アッセイ対象のサンプルを、適切な栄養素を含んでいるクレブス-リンゲル重炭酸緩衝液中で、生理学的に関連する条件下に、所定数の脂肪細胞と一緒に最大で6時間インキュベートした。放出されたグリセロールの濃度を、標準的な方法で、例えば、酵素的に、又は、放射測定検出によって、測定する。脂肪細胞のみを含んでいる対照サンプルを分析して自発的なグリセロール放出を測定する。
【0292】
未変性非修飾組換えヒト成長ホルモンと永続的PEG化組換えヒト成長ホルモンの脂肪分解効果を一時的PEG化組換えヒト成長ホルモンの脂肪分解効果と比較する。
【0293】
結論
この実施例3の詳細な指示に基づいて、脂肪組織萎縮効果を測定することは、当業者にとって、日常業務である。
【0294】
実施例4: 永続的リンカー試薬12a並びに一時的リンカー試薬12b及び12cの合成
化合物6の合成
【化27】
【0295】
6-アミノ-ヘキサン-1-オール(2.85g、24.3mmol)を水性HBr(48%、10mL、89mmol)に溶解させ、80℃で3時間撹拌した。余分なHBrを50-65℃及び15Torrで蒸発させ、その残渣を減圧下に乾燥させた。
【0296】
1:収量6.07g(96%)
MS[M+H]+=180.3g/mol(MW+H 計算値=180.0g/mol)。
【0297】
DCM(25mL)とDMSO(13mL)の中の6-ブロモヘキシルアミン臭化水素酸塩1(3.03g、11.6mmol)とトリフェニル-メタンチオール(2.14g、7.74mmol)の懸濁液に、DBU(3.5mL、23.2mmol)を添加した。その反応混合物を室温で30分間撹拌し、水(150mL)で希釈した。
【0298】
その水層をエーテルで抽出し、有機相を合して蒸発させた。2をRP-HPLCで精製した。
【0299】
2:収量1.17g(40%)
MS[M+H]+=376.7g/mol(MW+H 計算値=376.2g/mol)。
【0300】
DCM(40mL)中の6-ブロモ-ヘキサン酸(3.90g、20.0mmol)とトリフェニル-メタンチオール(11.1g、40.0mmol)に、DBU(4.56mL、30.0mmol)を添加した。室温で1時間撹拌した後、氷で冷した1M H2SO4(50mL)を添加し、その混合物をDCMで抽出した。有機相を合してNa2SO4で脱水し、減圧下に濃縮した。化合物3を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(4/1、Rf=0.2)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200mL)で精製した。
【0301】
3:収量5.83g(75%)。
【0302】
DCM(100mL)中の6-トリチルスルファニル-ヘキサン酸3(5.83g、14.9mmol)、チアゾリジン-2-オン(3.56g、29.9mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(3.08、14.9mmol)に、DMAP(37mg、0.31mmol)を添加した。室温で1時間撹拌した後、1M HCl(0.6mL)を添加し、その混合物を濾過した。その濾液を減圧下に濃縮し、4を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(1/1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(180mL)で精製した。
【0303】
4:黄色の油状物として収量7.15g(97%)。
【0304】
DMSO(1mL)とTHF(5mL)の中の6-トリチルスルファニル-ヘキシルアミン2(1.17g、3.11mmol)に、THF(13mL)中の1-(2-チオキソ-チアゾリジン-3-イル)-6-トリチルスルファニル-ヘキサン-1-オン4(1.53g、3.11mmol)の溶液を2分間かけて添加した。トリエチルアミン(435μL、3.11mmol)を添加した後、その反応混合物を室温で90分間撹拌した。エーテル(200mL)及び水(100mL)を添加し、相を分離させた。その水相をエーテルで抽出した後、有機相を合してNa2SO4で脱水し、減圧下に濃縮した。化合物5を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(2/1、Rf=0.1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(150mL)で精製した。
【0305】
5:収量1.23g(53%)
MS[M+Na]+=770.6g/mol(MW+Na 計算値=770.4g/mol)。
【0306】
窒素下、THF中のLiAlH4の1M溶液(1.2mL、4.8mmol)を乾燥フラスコの中に入れ、10mLのTHF中の5(509mg、0.680mmol)の溶液を4分間かけて添加した。その混合物を、出発物質が完全に変換したことが薄層クロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 1:1)によって示されるまで、還流下に2時間撹拌した。その反応混合物を、ガスの発生が止むまで、ジエチルエーテル中の水の懸濁液(10:1)で注意深くクエンチした。その混合物を、酒石酸カリウムナトリウムの飽和溶液50mLの中に注ぎ入れ、90分間撹拌した。90mLの酢酸エチルを添加し、相を分離させた。その水相を酢酸エチル(4×20mL)で抽出し、有機相を合して飽和食塩水(30mL)で洗浄し、MgSO4で脱水し、濾過し、濃縮して、透明な油状物を得た。6をシリカに吸着させ、フラッシュクロマトグラフィー(30gシリカ、CH2Cl2/MeOH 20:1(v/v)+0.1%NEt3)で精製した。当該生成物が、オフホワイトの粘性の油状物として得られた。
【0307】
6:収量270mg(54%)
MS[M+H]+=734.4g/mol(MW+H 計算値=734.4g/mol)
Rf=0.28(CH2Cl2/MeOH 19:1)。
【0308】
化合物9の合成
【化28】
【0309】
アニソール(85mL、781mmol)中のグルタル酸無水物(10.0g、86.2mmol)に、AlCl3(23.0g、172.3mmol)を添加した。その反応混合物を2時間110℃に加熱し、室温まで冷却し、3N HCl/氷の上に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。その水相をジクロロメタン(4×20mL)で抽出した。その有機画分を合して飽和食塩水(30mL)で洗浄し、MgSO4で脱水し、濾過し、濃縮して、赤色の油状物を得た。その赤色の油状物をトルエンから再結晶させた。生成物7がオフホワイトの固体として得られた。
【0310】
7:収量5.2g(48%)
MS[M+Na]+=245.8(MW+Na 計算値=245.1g/mol)。
【0311】
1,2-ジクロロエタン中の7(5.0g、23mmol)に、AlCl3(9.0mg、68mmol)を添加した。その反応混合物を85℃で14時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。氷で冷やした1N HCl(50mL)を添加し、その混合物を酢酸エチル(4×30mL)で抽出した。有機画分を合してNa2SO4で脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、薄赤色の固体を得た。その薄赤色の固体は、それ以上精製することなく次の段階で使用した。
【0312】
8:収量3g(62%)
MS[M+H]+=209.1(MW+H 計算値=209.1g/mol)。
【0313】
DCM(10mL)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(532mg、2.6mmol)、酸8(403mg、1.9mmol)、HOSu(297mg、2.6mmol)及びコリジン(1.0mL、7.8mmol)を、室温で90分間撹拌した。濾過によりジシクロヘキシル尿素を除去した後、その濾液に、DCM(5mL)とDIEA(450μL、2.6mmol)の中のアミン6(947mg、1.3mmol)を添加し、その混合物を室温で14時間反応させた。1N H2SO4(2×50mL)を添加し、相を分離させた。その水相を酢酸エチル(4×20mL)で抽出した。その有機相を合して飽和食塩水(30mL)で洗浄し、MgSO4で脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。その残渣を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(1/2、Rf=0.66)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(150mL)で精製した。
【0314】
9:収量819mg(69%)
MS[M+Na]+=946.4(MW+Na 計算値=946.4g/mol)。
【0315】
永続的リンカー試薬12a並びに一時的リンカー試薬12b及び12cの合成
【化29】
【0316】
9(1当量、175mg、0.19mmol)を乾燥THF(1.5mL)に溶解させ、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.1当量、42mg、0.21mmol)及びDIPEA(2当量、66μL、0.38mmol)を添加し、その混合物を室温で60分間撹拌した。ジエチルアミン(R1=R2=Et、2当量、39μL、0.38mmol)を添加し、撹拌を15分間継続した。減圧下に溶媒を除去し、100μLのAcOHを添加した。10aをRP-HPLCで精製した。
【0317】
MS[M+Na]+=1045.9(MW+Na 計算値=1045.5g/mol)。
【0318】
10aを含有しているHPLC画分(アセトニトリル/H2O〜3/1(v/v)+0.1%TFA)にNaBH4(5当量、37mg、0.95mmol)を添加し、その混合物を室温で10分間反応させた。追加分のNaBH4(5当量、37mg、0.95mmol)を添加し、その反応混合物を、出発物質が完全に変換したことがLC/MS分析(室温で10分間)で示されるまで、撹拌した。11aをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0319】
11a:収量95mg(9に基づいて49%)
MS[M+Na+H]+=1047.7(MW+Na 計算値=1047.5g/mol)。
【0320】
9(1当量、175mg、0.19mmol)を乾燥THF(1.5mL)に溶解させ、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.1当量、42mg、0.21mmol)及びDIPEA(2当量、66μL、0.38mmol)を添加し、その混合物を室温で60分間撹拌した。N,N,N'-トリエチル-エタン-1,2-ジアミン(R1=Et、R2=2-(ジエチルアミノ)エチル、2当量、68μL、0.38mmol)を添加し、撹拌を15分間継続した。100μLのAcOHを添加し、減圧下に溶媒を除去した。10bをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0321】
10b:TFA塩として収量147mg(65%)
MS[M+Na]+=1116.4(MW+Na 計算値=1116.6g/mol)。
【0322】
ジアミンとしてN,N,N'-トリメチル-プロパン-1,3-ジアミン(R1=Me、R2=3-(ジメチルアミノ)プロピル、56μL、0.38mmol)を使用し、上記と同様にして、10cを合成した。
【0323】
10c:TFA塩として収量134mg(59%)
MS[M+Na]+=1088.4(MW+Na 計算値=1088.6g/mol)。
【0324】
MeOH/水=95:5(v/v)(3mL)中の10b(147mg、0.12mmol)に、NaBH4(46mg、1.2mmol)を2回に分けて添加し、その混合物を室温で1時間撹拌した。AcOH(300μL)を添加し、濃縮した後、生成物11bをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0325】
11b:TFA塩として収量107mg(73%)
MS[M+Na]+=1118.4(MW+Na 計算値=1118.6g/mol)。
【0326】
同じプロトコルに従って、11cを合成した。
【0327】
11c:134mgの出発物質からHCl塩として収量65mg(54%)
MS[M+Na]+=1090.4(MW+Na 計算値=1090.6g/mol)。
【0328】
窒素雰囲気下、乾燥アセトニトリル(0.5mL)中の11a(1当量、26mg、26μmol)に、ビス-ペンタフルオロフェニル-カルボネート(2.5当量、25mg、63μmol)、DMAP(1mg)及びDIEA(5当量、22μL、127μmol)を添加した。その反応混合物を室温で30分間撹拌し、0℃まで冷却し、AcOH(200μL)で酸性化した。生成物12aをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0329】
12a:収量13mg(42%)
MS[M+Na]+=1258.2(MW+Na 計算値=1257.5g/mol)。
【0330】
上記に準じて、それぞれ、11b(56mg、48μmol)及び11c(88mg、73μmol)から12b及び12cを調製した。
【0331】
12b:TFA塩として収量63mg(93%)
MS[M+H]+=1306.3(MW+H 計算値=1306.6g/mol)
12c:TFA塩として収量41mg(41%)
MS[M+H]+=1278.4(MW+Na 計算値=1278.5g/mol)。
【0332】
実施例5: 永続的リンカー試薬14a及び一時的リンカー試薬14cの合成
【化30】
【0333】
13a及び13cは、WO2005/099768A2に記載されているのと同様にして合成した。
【0334】
窒素雰囲気下、乾燥アセトニトリル(5mL)中の13a(364mg、0.64mmol)に、ビスペンタフルオロフェニルカルボネート(631mg、1.6mmol)、DMAP(20mg、0.16mmol)及びDIEA(556μL、3.2mmol)を添加した。その反応混合物を室温で15分間撹拌し、0℃まで冷却し、酢酸(1mL)で酸性化した。生成物14aをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0335】
14a:収量379mg(77%)
MS[M+Na]+=800.4(MW+Na 計算値=800.3g/mol)。
【0336】
上記に準じて、13c(97mg、130μmol)から14cを調製した。
【0337】
14c: TFA塩として収量114mg(94%)
MS[M+H]+=821.5(MW+H 計算値=821.3g/mol)。
【0338】
実施例6: 永続的リンカー試薬15の合成
【化31】
【0339】
グルタル酸無水物(0.41mmol)、アミン6(200mg、0.27mmol)、DIPEA(72μL、0.41mmol)及びDMAP(11mg、0.09mmol)を、アセトニトリル(3mL)中で、80℃で2時間撹拌した。その混合物を室温まで冷却し、酢酸(200μL)を添加した。生成物15をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0340】
15:収量130mg(57%)
MS[M+Na]+=870.2(MW+Na 計算値=870.4g/mol)。
【0341】
実施例7: 活性化mPEG-リンカー試薬の合成
mPEG-マレイミド出発物質:

【化32】
【化33】
【化34】
【0342】
チオール基(下記構造中のR3)との反応後におけるmPEG残基:
【化35】
【化36】
【化37】
【0343】
縦の点線は、それぞれの構造におけるチオール基への結合部位を意味する。
【0344】
永続的なpfp-活性化mPEG-リンカー試薬17aa、17ab、17ac、17ad並びに一時的なpfp-活性化mPEG-リンカー試薬17b、17ca及び17cbの合成
【化38】
【0345】
カルボネート12a(13mg、10μmol)を、10μLのAcOH、700μLのHFIP、1μLのTFA及び2μLのTESの中で、室温で10分間撹拌した。窒素流の中で揮発性成分を除去し、16aをRP-HPLCで精製した。
【0346】
16a:収量3.8mg(5μmol)
MS[M+H]+=751.3(MW+H 計算値=751.3g/mol)。
【0347】
上記に準じて、それぞれ、12b(7.7mg、5.4μmol)及び12c(2mg、1.5μmol)から16b及び16cを調製した。
【0348】
16b:収量2.5mg(2.7μmol)
MS[M+Na]+=845.1(MW+Na 計算値=844.3g/mol)
16c:収量0.5mg(0.6μmol)
MS[M+Na]+=816.6(MW+Na 計算値=816.3g/mol)。
【0349】
3/1(v/v)アセトニトリル/水+0.1%TFA(4mL)中の3.5mg(3.9μmol)の16cに、mPEG-マレイミド1B(NOF、日本)(521mg、12.7μmol)を添加した。200μLの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、その混合物を室温で10分間反応させた。1μL(13μmol)のメルカプトエタノールを添加し、その反応混合物を、TFAを添加することによりpH4-5に酸性化した。17caをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0350】
17ca:収量220mg(pfp-カルボネート活性 82%)。
【0351】
16c(3.5mg、3.9μmol)及びmPEG-マレイミド2B(656mg、16μmol)を使用し、17caに関して記載されているのと同様にして、17cbを合成した。
【0352】
17cb:収量130mg(pfp-カルボネート活性 85%)。
【0353】
1/1(v/v)アセトニトリル/水+0.1%TFA(4mL)中の16a(2.0mg、2.7μmol)に、184mg(8.8μmol)のmPEG-マレイミド1A(NOF、日本)を添加した。200μLの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、その混合物を室温で10分間反応させた。0.2μL(1.6μmol)のメルカプトエタノールを添加し、その反応混合物を、TFAを添加することによりpH2-3に酸性化した。17aaをRP-HPLCによって未反応PEGから分離し、凍結乾燥させた。
【0354】
17aa:収量90mg(pfp-カルボネート活性 88%)。
【0355】
16a(3.8mg、5.0μmol)及び680mg(16μmol)のmPEG-マレイミド1B(NOF、日本)を使用し、上記で記載されているのと同様にして、17abを合成した。
【0356】
17ab:収量250mg(pfp-カルボネート活性 83%)。
【0357】
16a(2.5mg、3.3μmol)及び200mg(9.5μmol)のmPEG-マレイミド2A(Jenkem、PR China)を使用し、上記で記載されているのと同様にして、17acを合成した。
【0358】
17ac:収量80mg(pfp-カルボネート活性 80%)。
【0359】
17adは、16aとmPEG-マレイミド2Bを使用し、上記で記載されているのと同様にして合成することができる。
【0360】
17bは、16bとmPEG-マレイミド1Bを使用し、17cbに関して記載されているのと同様にして合成することができる。
【0361】
実施例8: pfp-活性化永続的mPEGリンカー試薬19aa及び19ab並びに一時的な永続的mPEG-リンカー試薬19cの合成
【化39】
【0362】
カルボネート14c(20mg、21μmol)を、10μLのAcOH、400μLのHFIP及び5μLのTESの中で、室温で10分間撹拌し、0℃まで冷却した。氷で冷やしたアセトニトリル/水=9/1(v/v)を添加した。18cをRP-HPLCによって分離し、凍結乾燥させた。
【0363】
18c:TFA塩として収量5.0mg(7.2μmol)
MS[M+H]+=579.6(MW+H 計算値=579.2g/mol)。
【0364】
カルボネート14a(24mg、31μmol)を使用し、上記で記載されているのと同様にして、18aを合成した。
【0365】
18a:収量8.0mg(15μmol)
MS[M+H]+=536.2(MW+H 計算値=536.5g/mol)。
【0366】
1/1(v/v)アセトニトリル/水+0.1%TFA(2mL)の中の18a(4.0mg、7.5μmol)に、205mg(5μmol)のmPEG-マレイミド3A(NOF、日本)を添加した。100μLの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、その混合物を室温で10分間反応させた。その反応混合物を、TFAを添加することによりpH2-3 に酸性化した。19aaをRP-HPLCによって未反応PEGから分離し、凍結乾燥させた。
【0367】
19aa:収量125mg(pfp-カルボネート活性 85%)。
【0368】
上記に準じて、410mg(5μmol)のmPEG-マレイミド3B(NOF、日本)と18a(4.0mg、7.5μmol)から19abを調製した。
【0369】
19ab:収量265mg(pfp-カルボネート活性 87%)。
【0370】
上記に準じて、205mgのmPEG-マレイミド3Aと18c(5mg、7.2μmol)から19cを調製した。
【0371】
19c:収量120mg(pfp-カルボネート活性 88%)。
【0372】
実施例9: 80kDaの永続的4-アーム分枝mPEG-NHSエステル誘導体22の合成
【化40】
【0373】
酸15(12mg、14μmol)を、1mLのTFA、1mLのDCM及び10μLのTESの中で、室温で10分間撹拌した。窒素流の中で揮発性成分を除去し、ジチオール20をRP-HPLCで精製した。
【0374】
20:収量2.9mg(8μmol)
MS[M+Na]+=386.8(MW+ Na 計算値=386.2g/mol)。
【0375】
1/1(v/v)アセトニトリル/水+0.1%TFA(4mL)中のmPEG-マレイミド1B(NOF、日本)(380mg、9.2μmol)に、170μLのアセトニトリル中の20(1mg、2.8μmol)を添加した。200μLの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、その混合物を室温で10分間反応させた。0.6μL(7.8μmol)のメルカプトエタノールを添加し、その反応混合物を、TFAを添加することによってpH4-5に酸性化した。その緩衝液を0.005%HCl(HiPREP Desalting column、26/10 GE healthcare)に換え、21を、それ以上精製することなく凍結乾燥させた。
【0376】
21:収量320mg。
【0377】
21を50mLのトルエンに溶解させ、そのポリマー溶液を、Dean-Stark trapを用いて、還流下に、2時間共沸的に脱水した。次いで、そのポリマー溶液を室温まで冷却した。脱水したmPEG-リンカー試薬21を、冷却されたエーテル(60mL)を添加することにより沈澱させた。
【0378】
DCM(3mL)中の21(240mg、3μmol)とN-ヒドロキシ-スクシンイミド(0.7mg、6μmol)の溶液に、DCM中のジシクロヘキシルカルボジイミド(1.2mg、6μmol)を添加した。その反応混合物を室温で14時間撹拌し、冷エーテル(20mL)を添加して22を沈澱させた。生成物22を減圧下に乾燥させた。
【0379】
22:収量200mg。
【0380】
実施例10: 40kDaの直鎖mPEG-スクシンイミジルヘキサノエート誘導体を用いることによる永続的なアミド結合mPEG-hGHモノコンジュゲート23及びmPEG2-hGHビスコンジュゲート24の合成
【化41】
【0381】
hGHの緩衝液を50mMのホウ酸ナトリウム(pH8.5)に換えた〔代替的に、ホウ酸ナトリウム(pH8)又はホウ酸ナトリウム(pH9)を使用することも可能である〕。hGHの濃度は、約2.5mg/mLであった。hGHの量に対して3倍モル過剰の40kDaのmPEG-スクシンイミジルヘキサノエート誘導体(NOF、日本)を水に溶解させて、20%(w/v)試薬溶液を形成させた〔代替的に、4倍モル過剰又は5倍モル過剰を使用することも可能である〕。その試薬溶液をhGH溶液に添加し、混合した。その反応混合物を室温で2時間インキュベートし、ヒドロキシルアミンを用いて、室温、pH7で2時間クエンチした。そのクエンチした反応混合物をサイズ排除クロマトグラフィーで分析した。モノコンジュゲート23及びビスコンジュゲート24をカチオン交換クロマトグラフィーで精製した。あるいは、アニオン交換クロマトグラフィーを精製に用いることもできる。精製されたコンジュゲートをSDS-PAGEによって分析した(図1)。
【0382】
実施例11: 40kDaの分枝鎖mPEG-NHSエステル誘導体を用いることによる永続的なアミド結合mPEG-hGHモノコンジュゲート25及びmPEG-hGHビスコンジュゲート26の合成
【化42】
【0383】
40kDaの分枝鎖mPEG-NHSエステル誘導体(NOF、日本)を使用し、実施例10に記載されている手順に従って、永続的mPEG-hGHモノコンジュゲート25及びビスコンジュゲート26を合成した。精製されたコンジュゲートをSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0384】
実施例12: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-NHSエステル誘導体を用いることによる永続的なアミド結合mPEG-hGHモノコンジュゲート27の合成
【化43】
【0385】
80kDaの4-アーム分枝mPEG-NHSエステル誘導体22を使用し、実施例10に準じて、永続的mPEG-hGHモノコンジュゲート27を合成した。精製された27をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0386】
実施例13: 40kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17aaを用いることによる永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート28の合成
【化44】
【0387】
hGHの緩衝液を50mMのホウ酸ナトリウム(pH9)に換えた〔代替的に、ホウ酸ナトリウム(pH8.5)又はホウ酸ナトリウム(pH8)を使用することも可能である〕。hGHの濃度は、約2.5mg/mLであった。hGHの量に対して4倍モル過剰の40kDaの永続的な4-アーム分枝mPEG-リンカー試薬17aaを水に溶解させて、20%(w/v)試薬溶液を形成させた。その試薬溶液を該hGH溶液に添加し、混合した。その反応混合物を室温で1.5時間インキュベートし、100mMのヒドロキシルアミン(pH7、室温)中で2時間インキュベートすることによりクエンチした。そのクエンチした反応混合物をサイズ排除クロマトグラフィーで分析した(図2上)。永続的mPEG-リンカー-hGHモノコンジュゲート28をアニオン交換クロマトグラフィー(pH7.5)で精製し、SDS-PAGE(図1)及びサイズ排除クロマトグラフィー(図2下)で分析した。
【0388】
実施例14: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体を用いることによる永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート29の合成
【化45】
【0389】
80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17abを使用し、実施例13に準じて、永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート29を合成した。精製された29をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0390】
実施例15: 40kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17acを用いることによる永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート30の合成
【化46】
【0391】
40kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17acを使用し、実施例13に準じて、永続的なmPEG-hGHモノコンジュゲート30を合成した。精製された30をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0392】
実施例16: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体を用いることによる永続的なmPEG-hGHモノコンジュゲート31の合成
【化47】
【0393】
80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17adを使用し、実施例13に準じて、永続的なmPEG-hGHモノコンジュゲート31を合成することができる。
【0394】
実施例17: 40kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体を用いることによる永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート32の合成
【化48】
【0395】
40kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体19aaを使用し、実施例13に準じて、永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート32を合成した。精製された32をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0396】
実施例18: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体を用いることによる永続的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート33の合成
【化49】
【0397】
80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体19abを使用し、実施例13に準じて、永続的なmPEG-hGHモノコンジュゲート33を合成した。精製された33をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0398】
実施例19: 40kDaの分枝鎖mPEG-プロピオンアルデヒド誘導体を用いることによる永続的なアミン結合mPEG-hGHモノコンジュゲート34の合成
【化50】
【0399】
hGHの緩衝液を50mMのMES緩衝液(pH6)に換え(あるいは、HEPES緩衝液(pH7)を使用した)、hGHの濃度を1.5mg/mLに調節した。hGHの量に対して3倍モル過剰の40kDaのmPEG-プロピオンアルデヒド(GL2-400AL3、NOF、日本)を水に溶解させて、25%(w/v)試薬溶液を形成させた。その試薬溶液をhGH溶液に添加し、混合した。シアノホウ水素化ナトリウム水溶液の1M原液のアリコートを添加して、その反応混合物中の最終濃度25mMとした。その溶液を、暗黒下、室温で18時間インキュベートした。その反応物を、トリス緩衝液を添加することによりクエンチした。その反応混合物をサイズ排除クロマトグラフィーで分析し、コンジュゲート34をカチオン交換クロマトグラフィーで精製した。精製されたmPEG-hGHモノコンジュゲート34をSDS-PAGEで分析した(図1)。
【0400】
実施例20: 40kDaの一時的な4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体19cを用いることによる一時的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート35の合成
【化51】
【0401】
hGHの緩衝液を50mMのホウ酸ナトリウム(pH9)に換え〔代替的に、ホウ酸ナトリウム(pH8.5)又はホウ酸ナトリウム(pH8)を使用することも可能である〕、hGHの濃度を2.5mg/mLに調節した。hGHの量に対して4倍モル過剰の一時的mPEG-リンカー試薬19cを水に溶解させて、20%(w/v)試薬溶液を形成させた。その試薬溶液をhGH溶液に添加し、混合した。その反応混合物を室温で1時間インキュベートし、100mMのヒドロキシルアミン(pH7、室温)中で2時間インキュベートすることによりクエンチした。mPEG-リンカー-hGHモノコンジュゲートをアニオン交換クロマトグラフィー(pH6.5)で精製し(図3上)、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した(図3下)。
【0402】
実施例21: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体を用いることによる一時的mPEG-リンカー-hGHモノコンジュゲート36の合成
【化52】
【0403】
hGHの緩衝液を100mMのホウ酸ナトリウム(pH9)〔代替的に、ホウ酸ナトリウム(pH8.5)又はホウ酸ナトリウム(pH8)を使用することも可能である〕、hGHの濃度を10mg/mLに調節した。hGHの量に対して4倍モル過剰の一時的な80kDaの4-アーム分枝mPEG-リンカー試薬17caを水に溶解させて、25%(w/v)試薬溶液を形成させた。その試薬溶液をhGH溶液に添加し、混合した。その反応混合物を室温で45分間インキュベートし、100mMのヒドロキシルアミン(pH7、室温)中で2時間インキュベートすることによりクエンチした。mPEG-リンカー-hGHモノコンジュゲート36をカチオン交換クロマトグラフィーで精製し(図4上)、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した(図4下)。
【0404】
実施例22: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17cbを用いることによる一時的mPEG-hGHモノコンジュゲート37の合成
【化53】
【0405】
活性化mPEG-リンカー試薬17cbを使用し、実施例21に記載されている手順に従って、mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート37を合成した。
【0406】
カチオン交換クロマトグラフィー及び分析的サイズ排除クロマトグラフィーは、それぞれ、図5上及び図5下に示されている。
【0407】
実施例23: 80kDaの4-アーム分枝mPEG-ペンタフルオロフェニルカルボネート誘導体17bを用いることによる一時的なカルバメート結合mPEG-hGHモノコンジュゲート38の合成
【化54】
【0408】
一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート38は、80kDaの一時的な4-アーム分枝mPEG-リンカー試薬17bを使用し、実施例21に記載されているのと同様にして合成することができる。
【0409】
実施例24: hGH PEG化プロドラッグとhGHの活性を測定するためのアッセイ
対応する永続的なポリマーコンジュゲートの活性によって表される高分子プロドラッグの残存活性を実施例1に記載されている標準的なアッセイを用いて測定することは、当業者にとって日常業務である。
【0410】
具体的にいえば、NB2-11細胞を100ng/mLのhGHを補足した無血清培地中で増殖させた。インビトロ増殖アッセイのために、2×105細胞/mLを含んでいる細胞懸濁液を、血清もhGHも含んでいない培地で2回洗浄し、96-ウェル平底マイクロタイタープレートの中に分注した(104細胞/ウェル)。化合物は、一連の滴定段階(9段階、各段階間で3倍希釈を使用)において3反復で試験した。当該細胞を化合物溶液と一緒に48時間インキュベートした後、細胞増殖試薬WST-1と一緒に2.5時間インキュベートした。NB2-11の増殖をELISAリーダー中で読み取られる光学密度によって測定した。その応答を濃度の関数としてプロットし、EC50値を求めた。結果は、未変性hGHに対する残存インビトロ生理活性(%)として表され、表1に記載されている。
【0411】
上記で記載したインビトロ実験において、未変性hGH(入手先 Novo Nordisk, Denmark)を基準化合物として用いた。同じhGH調製物を永続的なPEG-hGHコンジュゲートの合成にも使用した。
【表1】
【0412】
結論
表1から分かるように、適切なPEG分子をhGHにコンジュゲートさせることにより、そのPEG化hGHのインビトロ活性は、コンジュゲートされていない未変性hGHの活性の5%未満まで低減され得る。例えば、4×20kDaの分枝鎖PEGをhGHにコンジュゲートさせると、その残存活性は、コンジュゲートされていないhGH標準の0.7%まで低減される。
【0413】
さらに、これらの結果から、驚くべきことに、PEG化成長ホルモンの残存活性が、結合させたPEGのサイズにのみ関連しているのではなく、分枝の程度及びPEG構造中の分枝点とhGHの間の間隔にも関係しているということが見いだされた。
【0414】
直鎖PEG
具体的には、40kDaの直鎖PEGをhGHに結合させると、未変性hGHと比較して、インビトロ活性は10.3%になる(化合物23)。
【0415】
分枝鎖PEG
2×20kDaの分枝鎖PEGを結合させた場合(化合物25)、未変性hGHと比較して、インビトロ活性はさらに低減されて4.4%になる。
さらに、PEG試薬内の分枝点とhGHの間の間隔が短い4×20kDaのPEGを結合させた場合(化合物27及び化合物29)、未変性hGHと比較して、インビトロ活性はさらに低減されて、それぞれ、0.7%になる。
【0416】
驚くべきことに、PEG試薬内の第1の分枝点とヒト成長ホルモンの間に比較的長いスペーサーを有する4×20kDaのPEGを結合させた場合(例えば、化合物33)、インビトロ活性はあまり低減されない(2.2%)。このことは、分枝したPEG試薬内の第1の分枝点とhGH官能基の間にあるスペーサーの重要性を示している。
【0417】
2以上のPEG部分をhGHにコンジュゲートさせてビスPEGコンジュゲートを形成させると、インビトロ活性は0.5%未満まで低減される(例えば、化合物24及び化合物26)。
【0418】
実施例25: コンジュゲート35、36、37及び38のインビトロ自己切断速度の測定
pH7.4、37℃におけるコンジュゲート35、コンジュゲート36及びコンジュゲート37の自己切断速度を実施例2に記載されているのと同様にして測定した。これらのコンジュゲートに対して、約75時間の自己切断半減期が求められた。図6は、インキュベートされた35のサンプルを0時間後、8時間後、47時間後、97時間後及び168時間後に分析したサイズ排除クロマトグラムを示しているが、これは、hGHがコンジュゲート35から長時間にわたりゆっくりと放出されることを示している。コンジュゲート38の自己切断速度は、上記の方法に準じて測定することが可能であり、そして、約50時間の半減期が得られる。
【0419】
実施例26: 対応する永続的コンジュゲートのインビボ半減期によって表されるhGH PEG化プロドラッグのインビボ消失半減期を測定するためのアッセイ
0.25mg(hGH相当)をラットに静脈内注射した後で、永続的コンジュゲートの薬物動態学を測定した。ヒトにおいて週1回の注入に適したコンジュゲートを選択するためには、上記ラットにおいて10時間を超える血漿半減期が望ましい。
【0420】
ラット1匹当たり0.25mgのhGH又は0.25mgの永続的なPEG-hGHコンジュゲート(投与量はhGH基準)の単一投与量を、雄Wistarラット(200-250g)に静脈内投与した。各化合物に対して、2匹の動物からなる2つの群をそれぞれ用いた。動物1匹当たり及び1時点当たり、200-300μLの全血を舌下から採血して、100μL Ca-Heparin血漿を得た。群1については、0.5時間後、3時間後、24時間後、48時間後、72時間後及び96時間後にサンプルを採取し、群2については、5時間後、8時間後、32時間後、56時間後、80時間後及び168時間後にサンプルを採取した。血漿サンプルは、アッセイまで-80℃で保存した。
【0421】
hGH ELISAキット(DSL)を用いて、hGH及びPEG-hGHコンジュゲートの濃度を測定した。血漿濃度をそれぞれのコンジュゲート又はhGHの校正曲線から計算し、時間に対してプロットした。消失半減期(t1/2)は、シングルコンパートメントモデルを用いて計算した。半減期測定の結果は、表2中に要約してある。
【0422】
ヒトにおいて週1回の注入に適したコンジュゲートを選択するために、ラットにおける薬物動態学的研究を行った。ラット体内におけるPEG化コンジュゲートの半減期は、ヒト体内における半減期よりも5倍短い範囲内にあるので、PEG化hGHのラット体内における半減期は、約10時間又はそれ以上であるべきである。リンカーの切断が無い場合のコンジュゲート化hGH PEG化プロドラッグの半減期を推定するために、永続的にコンジュゲート化された対応するコンジュゲートをラットに注射する。
【0423】
インビボ半減期測定の結果は、表2に要約してある。
【表2】
【0424】
結論
表1及び表2から、残存活性が半減期と逆の相関を有していること、例えば、残存活性の程度が高いとより早く除去されるということは、明らかである。このことは、受容体が介在するクリアランス機序によって除去されるコンジュゲートの場合に典型的である。
【0425】
さらに、ヒトに週1回投与可能で残存活性が低いhGH PEG化プロドラッグを得るためには、1以上の分枝点を有し且つ分子量が40kDa以上であるPEG分子が好ましい。あるいは、hGH上の2以上の部位にPEGをコンジュゲートさせてビスPEG-hGHコンジュゲートを形成させると、長い消失半減期が得られる。
【0426】
実施例27: 一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36とヒト成長ホルモンのカニクイザル(Cynomolgus Monkeys)体内における薬力学的研究
本研究の目的は、1回投与された一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36のカニクイザル体内における薬力学的な応答を1週間の間1日1回投与されたヒト成長ホルモンと比較することであった。
【0427】
以下の投与群について試験した。
【表3】
【0428】
一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36は80kDaのPEG基を用いて一時的にPEG化されているので、5mg/kg及び10mg/kgの一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36投与群におけるhGHの量は、それぞれ、約1mg/kg及び約2mg/kgであった。従って、一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36の10mg/kgの群におけるhGHの量は、0.3mg/kgのhGHの1日1回の投与と同等であった。
【0429】
各被験物質を、1mL/kgの投与体積を用いて、2匹のカニクイザル(1匹雄、1匹雌)に皮下注射した。当該動物の年齢及び体重は、それぞれ、2.5-3歳及び2.0-2.5kgであった。
【0430】
ヒト成長ホルモンに関する薬力学的マーカーであるIGF-1の血清濃度を測定するために、血液サンプルを大腿動脈/静脈から採取した。血液サンプルは、以下の時点で採取した:第1日における投与の0時間後(投与前)、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後及び144時間後。
【0431】
血液サンプルを採取し、凝固させ、次いで、遠心分離まで氷塊又は湿氷の上で保存した。遠心分離後、その血清サンプルを等分して予めラベルが貼られているバイアルに入れ、蓋をきつく閉めた。等分してバイアルに入れた後、直ぐに、そのバイアルを-70℃で保存した。
【0432】
血清サンプル中のIGF-1のレベルは、カニクイザル血清中のIGF-1レベルの測定において使用するために適応され且つ実証されたQuantikine Human IGF-1 ELISA キット(R&D systems)を用いて測定した。
【0433】
被験物質の薬力学的応答は、図11に示されている。1日1回のhGHの投与及び1回の一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36の投与の両方により、IGF-1のレベルは、ビヒクル群において測定されたレベルと比較して増大した。5mg/kgの一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36の1回の投与は、1日1回のhGHの投与と同等であったが、10mg/kgの一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36の1回の投与は、1日1回のhGHよりも勝っていることが示された。このことによって、一時的なカルバメート結合mPEG-リンカー-hGHコンジュゲート36の週1回の投与がhGHの1日1回の投与よりも勝っているか又はそれと同等であるということが明瞭に示された。
【表4】
【0434】
参考文献のリスト
1. Buyukgebiz A. et al J. Pediatr. Endocrinol. Metab. 1999 Jan-Feb;12(1):95-7 2. Clark et al, 1996, Journal of Biological Chemistry 271: 21969-21977
3. Girard, J. Mehls, O., J. Clin Invest. 1994 March; 93(3): 1163-1171
4. Philip Harris et al. Horm. Res. 2006; 65(suppl. 4): 1-213, CF1-98 GH/IGF Treatment with title "First in-human study of PEGylated recombinant human growth hormone"
5. Veronese, F.M. "Enzymes for Human Therapy: Surface Structure Modifications," Chimica Oggi, 7:53-56(1989)
【0435】
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
適切な医薬品賦形剤を含有し、さらに、ヒトのインビボにおいて臨床上有効な量の組換えヒト成長ホルモン(rhGH) PEG化プロドラッグコンジュゲート〔ここで、PEGは、自己加水分解可能な(自己切断)一時的リンカーを介してrhGHに結合している〕も含んでいる医薬組成物であって、ここで、当該プロドラッグコンジュゲートが:
(1): 該コンジュゲートは、PEGを有さない未変性の成長ホルモンの5%未満のGH活性しか有していないこと;及び、
(2): 該リンカーの自己加水分解速度は、インビボでの半減期が10時間〜600時間であるような速度であること;
を特徴とする、前記医薬組成物。
[実施形態2]
前記自己加水分解速度が、インビボでの半減期が対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも最大で5倍短いような速度である、実施形態1に記載の医薬組成物。
[実施形態3]
前記インビボでの半減期が、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも最大で3倍短い、実施形態2に記載の医薬組成物。
[実施形態4]
前記インビボでの半減期が、対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期よりも最大で2倍短いか又は対応するhGH PEG化プロドラッグコンジュゲートのインビトロでの半減期と殆ど同じである、実施形態2又は3に記載の医薬組成物。
[実施形態5]
前記組成物が、皮下投与、筋肉内投与又は静脈内注射のための組成物である、実施形態1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態6]
前記PEG化プロドラッグが、成長ホルモン1分子当たり合計で少なくとも25kDaになる総PEG負荷を有する、実施形態1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態7]
前記プロドラッグコンジュゲートが、化学構造(A):
【化55】
〔ここで、
NH-rhGHは、一時的なリンカーに結合しているrhGH残基を表し;
R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチルから選択され;
PEGは、一時的なリンカーに結合しているPEG化残基を表し;
nは、1又は2であり;及び、
Xは、C1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択される〕
を有する、実施形態1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[実施形態8]
実施形態7の構造(A)の中の式(I)で表される部分構造〔ここで、該部分構造は、
【化56】
である〕
が、
【化57】
からなる群から選択される、実施形態7に記載の医薬組成物。
[実施形態9]
実施形態7の構造(A)の中の式(II)で表される部分構造〔ここで、該部分構造は、
【化58】
である〕
が、
【化59】
からなる群から選択される、実施形態7に記載の医薬組成物。
[実施形態10]
実施形態7の式(A)の中のPEG-Xが、式(III)
【化60】
で表されるPEG-Wであり、ここで、PEG-Wは、
【化61】
からなる群から選択される、実施形態7に記載の医薬組成物。
[実施形態11]
前記プロドラッグコンジュゲート構造が、
【化62】
である、実施形態1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態12]
前記プロドラッグコンジュゲート構造が
【化63】
〔ここで、
PEG及びNH-rhGHは、実施形態7で示されている意味を有し;
Rは、水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され;及び、
Xは、C1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択される〕
である、実施形態1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態13]
インビボにおける前記リンカー自己切断速度が、該インビボ半減期が20〜300時間であるような速度である、実施形態1〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態14]
インビボにおける前記リンカー自己切断速度が、該インビボ半減期が20〜150時間であるような速度である、実施形態1〜13のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態15]
インビボにおける前記リンカー自己切断速度が、該インビボ半減期が30〜100時間であるような速度である、実施形態1〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態16]
インビボにおける前記リンカー自己切断速度が、該インビボ半減期が30〜75時間であるような速度である、実施形態1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態17]
ヒトにおけるGH関連疾患の治療方法において使用するための、臨床上有効量の実施形態1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態18]
適切な医薬品賦形剤を含み、さらに、式(AA):
【化64】
〔式中、
hGH-NHは、hGH残基を表し;
Laは、自己切断を誘発する基Gaによって自己加水分解可能(自己切断可能)な官能基を表し;
及び、
S0は、少なくとも5kDaの分子量を有し且つ少なくとも第1の分枝構造BS1を含んでいるポリマー鎖であり、少なくとも第1の分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含んでおり、ここで、S0、BS1、S1のうちの少なくとも1は自己切断を誘発する基Gaをさらに含んでおり、ここで、分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2をさらに含んでいるか、又は、S0、S1のうちの少なくとも1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2を含んでいる少なくとも第2の分枝構造BS2を含んでおり、ここで、hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量は少なくとも25kDaで且つ最大で1000kDaである〕
で表されるヒト成長ホルモン(hGH)のプロドラッグコンジュゲートも含んでいる医薬組成物。
[実施形態19]
hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの前記分子量が、少なくとも30kDaで且つ最大で120kDaである、実施形態18に記載の組成物。
[実施形態20]
hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの前記分子量が、少なくとも40kDaで且つ最大で100kDaである、実施形態18又は19に記載の組成物。
[実施形態21]
hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの前記分子量が、少なくとも40kDaで且つ最大で90kDaである、実施形態18〜20のいずれかに記載の組成物。
[実施形態22]
LaがC(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択されて、それらがhGHの第1級アミノ基と一緒にカルバメート基又はアミド基を形成し、結果として、(AA1)又は式(AA2)
【化65】
を生じる、実施形態18〜21のいずれかに記載の組成物。
[実施形態23]
LaがhGHのアミノ基と一緒にカルバメート官能基を形成し、そのカルバメート官能基の切断がS0の1,4-ベンジル脱離又は1,6-ベンジル脱離を介してGaのヒドロキシル基又はアミノ基によって誘発される(ここで、Gaは、律速変換を受けるエステル結合、カルボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合を含んでいる)、実施形態18〜22のいずれかに記載の組成物。
[実施形態24]
Gaが、LaとhGHの第1級アミノ基によって形成されたカルバメート官能基に直接結合している芳香族環又はフルオレニルメチルである、実施形態18〜21のいずれかに記載の組成物。
[実施形態25]
分枝構造BS1、BS2の少なくとも1が、少なくとも4kDaの分子量を有するさらなる第4のポリマー鎖S3を含んでいるか、又は、S0、S1、S2のうちの1が少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第4のポリマー鎖S3を含んでいる第3の分枝構造BS3を含んでいる、実施形態18〜24のいずれかに記載の組成物。
[実施形態26]
少なくとも3つの鎖S0、S1、S2が、独立して、ポリアルキルオキシポリマー、ヒアルロン酸とその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート及びポリエステルからなる群から選択されるポリマーに基づく、実施形態18〜25のいずれかに記載の組成物。
[実施形態27]
少なくとも3つの鎖S0、S1、S2が、ポリアルコキシポリマーに基づく、実施形態26に記載の組成物。
[実施形態28]
連結されている原子として測定される、Laに対するS0の結合部位と第1の分枝構造BS1の間の最短の距離が50原子未満である、実施形態18〜27のいずれかに記載の組成物。
[実施形態29]
前記最短の距離が20原子未満である、実施形態28に記載の組成物。
[実施形態30]
S0が、式(AAA1)
【化66】
〔式中、
Gaは、実施形態18で示されている意味を有し;
S00は、CH2又はC(O)であり;
S0Aは、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、、場合により置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で場合により中断又は終結されていてもよく;
BS1、BS2、BS3は、独立して、N及びCHからなる群から選択され;
S0B、S1Aは、独立して、1〜200個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、ここで、該アルキレン鎖は、場合により置換されていてもよいヘテロ環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される1以上の基、環又はヘテロ原子で場合により中断又は終結されていてもよく;
S0C、S1Bは、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3〔ここで、各nは、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕であり;
S2、S3は、独立して、水素であるか、又は、(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3〔ここで、各nは、独立して、100〜500の整数であり、各n1は、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、n2は、0又は1である〕であるが、但し、S2とS3の少なくとも一方は水素以外であり;
R2、R3は、式(A)に関して実施形態5において定義されているように定義される〕
で表される、実施形態18〜29のいずれかに記載の組成物。
[実施形態31]
Gaが、OC(O)-Rであり、Rが、実施形態6に示されている式(I)の部分構造であり、その際、R1、R4、R5及びnは、実施形態7で定義されているように定義される、実施形態30に記載の組成物。
[実施形態32]
La-S0が、式(AAA2)
【化67】
〔式中、
点線は、LaとhGHの第1級アミノ基がアミド結合を形成するように、hGHの第1級アミノ基への結合を示しており;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1は、C又はS(O)であり;
X2は、C(R7, R7a)又はC(R7, R7a)-C(R8, R8a)であり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aは、独立して、H及びC1-4アルキルからなる群から選択され;又は、
場合により、対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aのうちの1つ以上は、化学結合を形成してもよく;
場合により、対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aのうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になってC3-7シクロアルキル又は4〜7員のヘテロシクリルを形成してもよく;
場合により、対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R7/R8、R2/R3のうちの1つ以上は、それらが結合している原子と一緒になって環Aを形成してもよく;
場合により、R3/R3aは、それらが結合している窒素原子と一緒になって4〜7員のヘテロ環を形成してもよく;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3-10シクロアルキル、4〜7員のヘテロシクリル及び9〜11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され;並びに、
ここで、
S0は、1つの基L2-Zで置換され、場合によりさらに置換されていてもよいが、但し、式(I)中のアステリスクが付けられている水素は置換基で置き換えられず;ここで、
L2は、単一の化学結合又はスペーサーであり;及び、
Zは、式(AAA2a)
【化68】
[式中、S00、S0A、S0B、S0C、S1A、S1B、S2、S3、BS1、BS2及びBS3は、実施形態30において式(AAA1)に関して示されている意味を有する]で表される〕
で表される、実施形態18〜22及び25〜26のいずれかに記載の組成物。
[実施形態33]
適切な医薬品賦形剤を含み、さらに、式(AB):
【化69】
〔式中、
nは、2、3又は4であり;
hGH(-NH)nは、hGH残基を表し;
各Lは、独立して、永続的な官能基Lpであるか、又は、自己切断を誘発する基Gaによって自己加水分解可能(自己切断可能)な官能基Laであり;
及び、
各S0は、独立して、少なくとも5kDaの分子量を有するポリマー鎖であり、ここで、S0は少なくとも第1の分枝構造BS1を含むことによって場合により分枝しており、少なくとも第1の分枝構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含んでおり、ここで、S0、BS1、S1のうちの少なくとも1は自己切断を誘発する基Gaをさらに含んでおり、ここで、hGH-NHを除いたプロドラッグコンジュゲートの分子量は少なくとも25kDaで且つ最大で1000kDaである〕
で表されるヒト成長ホルモン(hGH)のプロドラッグコンジュゲートも含んでいる、医薬組成物。
[実施形態34]
nが2である、実施形態33に記載の組成物。
[実施形態35]
実施形態18〜34のいずれかで定義されているプロドラッグ。
[実施形態36]
プロドラッグであって、
【化70】
〔ここで、mは、200〜250の整数であり、nは、100〜125の整数である〕
【化71】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
【化72】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
及び、
【化73】
〔ここで、nは、400〜500の整数である〕
からなる群から選択される、前記プロドラッグ。
[実施形態37]
式hGH-NH-C(O)O-S0(AA1)〔式中、S0は、実施形態18で示されている意味を有し、及び、少なくとも1の基
【化74】
を含んでいる〕
で表される化合物を調製する方法であって、ここで、該方法は、以下:
(a) 式ROC(O)O-S0'-SH(AA1')で表される化合物を、式
【化75】
で表される化合物と反応させて〔ここで、Rは、活性化カルボネート基のための適切な残部であり、S0'及びS0''は、少なくとも1の基
【化76】
を含んでいるS0を生成するように選択される〕、式ROC(O)O-S0で表される化合物を生成させる段階;及び、
(b) 式ROC(O)O-S0で表される化合物をhGH-NH2〔ここで、hGH-NH2は、その複数の第1級アミノ基のうちの1つを伴ったhGHを表している〕と反応させて、式(AA1)で表される化合物を生成させる段階;
を含んでいる、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11