特許第6704436号(P6704436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704436
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】光ハイブリッド回路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20200525BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20200525BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G02B6/125 301
   G02B6/125 311
   G02B6/122 311
   G02F2/00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-152966(P2018-152966)
(22)【出願日】2018年8月15日
(65)【公開番号】特開2020-27212(P2020-27212A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2018年8月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡山 秀彰
【審査官】 井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/194349(WO,A1)
【文献】 特表2012−518202(JP,A)
【文献】 特開2017−219668(JP,A)
【文献】 特表平08−508351(JP,A)
【文献】 特開昭51−057457(JP,A)
【文献】 特表2018−505449(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/010528(WO,A1)
【文献】 岡山 秀彰、他,MMIカプラ接続を利用したSi導波路90°光ハイブリッド,第65回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,応用物理学会,2018年 3月,18p−B201−11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 − 6/14
G02F 1/00 − 1/125
G02F 1/21 − 7/00
H04B10/00 −10/90
H04J14/00 −14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路コアと、
前記光導波路コアを包含するクラッドと
を備え、
前記光導波路コアは、
一端側にこの順に並列に配置された第1〜第4入力部と、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第4出力部を備え、第1入力部と第1出力部とが互いに対向し、第2入力部と第2出力部とが互いに対向し、第3入力部と第3出力部とが互いに対向し、第4入力部と第4出力部とが互いに対向する4×4カプラと、
一端側にこの順に並列に配置された第1〜第3入力部と、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第3出力部を備え、第1入力部と第1出力部とが互いに対向し、第2入力部と第2出力部とが互いに対向し、第3入力部と第3出力部とが互いに対向する3×3カプラと、
入力部と出力部とを備える接続導波路部と
を含み、
前記4×4カプラの第1出力部は、前記接続導波路部の入力部に接続され、
前記4×4カプラの第2出力部は、前記3×3カプラの第1入力部に接続され、
前記4×4カプラの第3出力部は、前記3×3カプラの第2入力部に接続され、
前記4×4カプラの第4出力部は、前記3×3カプラの第3入力部に接続され、
第1の光が、前記4×4カプラの第1入力部に入力され、
第2の光が、前記4×4カプラの第3入力部に入力され、
前記4×4カプラは、多モード干渉カプラとして構成されており、第1入力部に入力される光と第3入力部に入力される光との干渉光を、第1出力部及び第4出力部から出力し、かつ第1入力部に入力される光と、第3入力部に入力される光に対しπ/2の位相回転を与えた光との干渉光を、第2出力部及び第3出力部から出力し、
前記3×3カプラは、多モード干渉カプラとして構成されており、第1入力部に入力される光を第3出力部から、第2入力部に入力される光を第2出力部から、第3入力部に入力される光を第1出力部から、それぞれ出力し、
前記接続導波路部は、入力部に入力される光を出力部から出力し、
前記3×3カプラに入力された光が該3×3カプラから出力されるタイミングと、前記接続導波路部に入力された光が該接続導波路部から出力されるタイミングとが揃っている
ことを特徴とする光ハイブリッド回路。
【請求項2】
前記接続導波路部が、シングルモード導波路である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項3】
前記4×4カプラの第1入力部に接続された第1入力導波路部と、
前記4×4カプラの第3入力部に接続された第2入力導波路部と、
前記接続導波路部の出力部に接続された第1出力導波路部と、
前記3×3カプラの第1出力部に接続された第2出力導波路部と、
前記3×3カプラの第2出力部に接続された第3出力導波路部と、
前記3×3カプラの第3出力部に接続された第4出力導波路部と
をさらに備え、
前記第1入力導波路部は、前記4×4カプラと接続された端に向かって連続的に幅が拡大する入力テーパ部を含み、
前記第2入力導波路部は、前記4×4カプラと接続された端に向かって連続的に幅が拡大する入力テーパ部を含み、
前記第2出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記第3出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記第4出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記接続導波路部は、前記4×4カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小するテーパ部を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項4】
前記接続導波路部が、多モード干渉カプラとして構成された1×1カプラであり、
前記接続導波路部の入力部は、該接続導波路部の一端側に配置され、前記接続導波路部の出力部は、該接続導波路部の他端側に配置され、
前記接続導波路部の入力部と出力部とは、互いに対向して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項5】
前記接続導波路部が、この順に直列に接続された第1部分と第2部分とを備え、
前記第1部分は、前記接続導波路部の出力部に向かうにつれて前記3×3カプラから離間するように形成されており、
前記第2部分は、前記接続導波路部の出力部に向かうにつれて前記3×3カプラへ接近するように形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項6】
前記接続導波路部が、多モード干渉カプラとして構成された1×1カプラであり、
前記接続導波路部の入力部は、該接続導波路部の一端側に配置され、前記接続導波路部の出力部は、該接続導波路部の他端側に配置され、
前記接続導波路部の入力部と出力部とは、互いに点対称となる位置に配置されており、
前記接続導波路部は、前記3×3カプラと共通の設計で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記4×4カプラの第1入力部に接続された第1入力導波路部と、
前記4×4カプラの第3入力部に接続された第2入力導波路部と、
前記接続導波路部の出力部に接続された第1出力導波路部と、
前記3×3カプラの第1出力部に接続された第2出力導波路部と、
前記3×3カプラの第2出力部に接続された第3出力導波路部と、
前記3×3カプラの第3出力部に接続された第4出力導波路部と、
をさらに備え、
前記第1入力導波路部は、前記4×4カプラと接続された端に向かって連続的に幅が拡大する入力テーパ部を含み、
前記第2入力導波路部は、前記4×4カプラと接続された端に向かって連続的に幅が拡大する入力テーパ部を含み、
前記第1出力導波路部は、前記接続導波路部と接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記第2出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記第3出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含み、
前記第4出力導波路部は、3×3カプラと接続された端から離れる方向に向かって、連続的に幅が縮小する出力テーパ部を含む
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記光導波路コアが、シリコンを材料として形成されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光ハイブリッド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば光コヒーレント検波を行う装置に用いて好適な、光ハイブリッド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化と量産性に優れることから、シリコン系素材を導波路材料として用いるシリコン(Si)導波路が注目されている。Si導波路では、実質的に光の伝送路となる光導波路コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ等を材料としたクラッドで、光導波路コアの周囲を覆う。このような構成により、光導波路コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、光導波路コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、光デバイス全体の小型化に有利である。
【0003】
また、Si導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
【0004】
このSi導波路を光コヒーレント検波に用いる際に有用な回路が光ハイブリッド回路である。図8を参照して、光ハイブリッド回路の従来例を説明する。図8は、光ハイブリッド回路の従来例を説明する模式図である。なお、図8では、光導波路コアのみを示してある。
【0005】
光ハイブリッド回路は、第1及び第2の入力分岐素子402及び404と、それぞれ長手方向に延在する第1〜第4の光導波路412、414、416及び418と、位相回転素子420と、第1及び第2の方向性結合器432及び434とを備えて構成される。第1の入力分岐素子402に、第1及び第2の光導波路412及び414が接続されており、第2の入力分岐素子404に、第3及び第4の光導波路416及び418が接続されている。第2の光導波路414と第3の光導波路416とは交差し、第1及び第3の光導波路412及び416が第1の方向性結合器432に接続され、第2及び第4の光導波路414及び418が第2の方向性結合器434に接続されている。また、第4の光導波路418には、位相回転素子420が設けられている。位相回転素子420は、第4の光導波路418を伝播する光に90度(π/2)の位相回転を与える。
【0006】
この光ハイブリッド回路には、これまで多くの改良が加えられている。先ず、構成要素を少なくするために、2×4型の多モード干渉(MMI:Muli−Mode−Inteference)カプラを使用することが考えられた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1に開示されている光ハイブリッド回路は、1つのMMIカプラで実現される。
【0008】
しかも、入力分岐素子と方向性結合器の間をつなぎ、90度の位相回転を発生させるためのシングルモード導波路が存在しない。このため、シングルモード導波路で生じがちな位相誤差を回避できる。
【0009】
しかし、必要な位相関係を得るためには、4本の光導波路のうち3本を交差配置する必要がある。光導波路の交差には、ある程度の角度の保持が必要になるなど、回路の小型化が難しかったり、設計が面倒であったりする。
【0010】
この特許文献1の課題を解決するために、2×4MMIカプラの4つの出力ポートのうち、2つの出力ポートに2×2MMIカプラを接続し、さらに、MMIカプラとして幅テーパMMIカプラを用いる技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
また、90度の位相回転をシングルモード導波路で生じさせるのではなく、入力分岐素子として1×2MMIカプラと2×2MMIカプラを使用する技術がある(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の光ハイブリッド回路では、位相回転をシングルモード導波路で生じさせない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−518202号公報
【特許文献2】特許第5287527号
【特許文献3】特許第5243607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2の光ハイブリッド回路では、光導波路の交差が生じないため、構造は簡単であるが、幅テーパMMIカプラの設計が難しい。また、特許文献1及び3のいずれの光ハイブリッド回路でも、構成要素間などにシングルモード導波路を多用するため、幅誤差に弱くなる欠点がある。
【0014】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、設計が容易で、かつ幅誤差に強い光ハイブリッド回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、この発明の光ハイブリッド回路は、光導波路コアと、光導波路コアを包含するクラッドとを備えて構成される。
【0016】
光導波路コアは、4×4カプラと、3×3カプラと、接続導波路部とを含む。4×4カプラは、一端側にこの順に並列に配置された第1〜第4入力部と、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第4出力部を備え、第1入力部と第1出力部とが互いに対向し、第2入力部と第2出力部とが互いに対向し、第3入力部と第3出力部とが互いに対向し、第4入力部と第4出力部とが互いに対向する。3×3カプラは、一端側にこの順に並列に配置された第1〜第3入力部と、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第3出力部を備え、第1入力部と第1出力部とが互いに対向し、第2入力部と第2出力部とが互いに対向し、第3入力部と第3出力部とが互いに対向する。接続導波路部は、入力部と出力部とを備える。
【0017】
4×4カプラの第1出力部は、接続導波路部の入力部に接続される。4×4カプラの第2出力部は、3×3カプラの第1入力部に接続される。4×4カプラの第3出力部は、3×3カプラの第2入力部に接続される。4×4カプラの第4出力部は、3×3カプラの第3入力部に接続される。
【0018】
この発明の光ハイブリッド回路では、第1の光が、4×4カプラの第1入力部に入力され、第2の光が、4×4カプラの第3入力部に入力される。
【0019】
4×4カプラは、多モード干渉カプラとして構成されており、第1入力部に入力される光と第3入力部に入力される光との干渉光を、第1出力部及び第4出力部から出力し、かつ第1入力部に入力される光と、第3入力部に入力される光に対しπ/2の位相回転を与えた光との干渉光を、第2出力部及び第3出力部から出力する。3×3カプラは、多モード干渉カプラとして構成されており、第1入力部に入力される光を第3出力部から、第2入力部に入力される光を第2出力部から、第3入力部に入力される光を第1出力部から、それぞれ出力する。接続導波路部は、入力部に入力される光を出力部から出力する。
【0020】
3×3カプラに入力された光がこの3×3カプラから出力されるタイミングと、接続導波路部に入力された光がこの接続導波路部から出力されるタイミングとが揃っている。
【発明の効果】
【0021】
この発明の光ハイブリッド回路では、図8を参照して説明した従来の光ハイブリッド回路と等価な機能を有する。しかも、この発明の光ハイブリッド回路では、幅テーパMMIカプラを含まないため、設計が容易である。
【0022】
また、この発明の光ハイブリッド回路では、シングルモード導波路を用いる場合であっても、シングルモード導波路を利用するのは接続導波路部のみであるため、この発明の光ハイブリッド回路は、シングルモード導波路を多用する従来の光ハイブリッド回路と比べて、幅誤差に強い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の光ハイブリッド回路を示す概略的平面図である。
図2】第1の光ハイブリッド回路を示す概略的端面図である。
図3】(A)及び(B)は、第1の光ハイブリッド回路の特性を示す図である。
図4】第2の光ハイブリッド回路を示す概略的平面図である。
図5】第2の光ハイブリッド回路の変形例を示す概略的平面図である。
図6】(A)は、第2の光ハイブリッド回路の特性を示す図であり、(B)は、第2の光ハイブリッド回路の変形例の特性を示す図である。
図7】第3の光ハイブリッド回路を示す概略的平面図である。
図8】光ハイブリッド回路の従来例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0025】
(第1の光ハイブリッド回路)
図1及び図2を参照して、この発明の第1実施形態に係る光ハイブリッド回路(以下、第1の光ハイブリッド回路とも称する)を説明する。図1及び図2は、第1の光ハイブリッド回路を説明するための模式図である。図1は、第1の光ハイブリッド回路を示す概略平面図である。また、図2は、図1に示す構造体をI−I線で切り取った概略的端面図である。なお、図1では、光導波路コアのみを示してあり、後述する支持基板及びクラッドを省略して示してある。
【0026】
なお、以下の説明では、各構成要素について、光伝播方向に沿った方向を長さ方向とする。また、支持基板の厚さに沿った方向を厚さ方向とする。また、長さ方向及び厚さ方向に直交する方向を幅方向とする。
【0027】
第1の光ハイブリッド回路100は、支持基板10とクラッド20と光導波路コア30とを備えて構成されている。
【0028】
支持基板10は、例えば単結晶Siを材料とした平板状体で構成されている。
【0029】
クラッド20は、支持基板10上に設けられている。クラッド20は、支持基板10の上面を被覆し、かつ、光導波路コア30を包含して形成されている。クラッド20は、例えば酸化シリコン(SiO)を材料として形成されている。
【0030】
光導波路コア30は、クラッド20よりも高い屈折率を有する例えばシリコン(Si)を材料として形成されている。その結果、光導波路コア30は、光の伝送路として機能し、光導波路コア30に入力された光は、光導波路コア30の平面形状に応じた伝播方向に伝播する。
【0031】
ここで、光導波路コア30を伝播する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、光導波路コア30は、支持基板10から少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
【0032】
光導波路コア30の厚さは、シングルモード条件を達成できる厚さ、例えば200〜500nmの範囲内の厚さであることが望ましい。例えば、当該第1の光ハイブリッド回路100を1550nmの波長帯域で用いる場合は、光導波路コア30の厚さを200nmにすることができる。
【0033】
光導波路コア30は、第1入力導波路部110、第2入力導波路部120、4×4カプラ40、3×3カプラ50、接続導波路部60、第1出力導波路部210、第2出力導波路部220、第3出力導波路部230、及び第4出力導波路部240を備えて構成される。第1出力導波路部210、第2出力導波路部220、第3出力導波路部230及び第4出力導波路部240は、この順に互いに並列に配置されている。
【0034】
4×4カプラ40及び3×3カプラ50の各カプラは、光導波路コア30の平面形状に応じて、所謂多モード干渉(MMI)カプラとして構成される。
【0035】
4×4カプラ40は、一端側にこの順に並列に配置された第1〜第4入力部41a〜41dと、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第4出力部42a〜42dを備えて構成される。4×4カプラ40では、第1入力部41aと第1出力部42aとが互いに対向し、第2入力部41bと第2出力部42bとが互いに対向し、第3入力部41cと第3出力部42cとが互いに対向し、第4入力部41dと第4出力部42dとが互いに対向している。
【0036】
4×4カプラ40は、第1入力部41a及び第3入力部41cに入力される光をミキシングして、第1〜第4出力部42a〜42dから出力する。4×4カプラ40は、第1入力部41aに入力される第1の光と第3入力部41cに入力される第2の光との干渉光を、第1出力部42a及び第4出力部42dから出力する。また、4×4カプラ40は、第1入力部41aに入力される第1の光と、第3入力部41cに入力される第2の光に対し90度(π/2)の位相回転を与えた光との干渉光を、第2出力部42b及び第3出力部42cから出力する。
【0037】
3×3カプラ50は、一端側にこの順に並列に配置された第1〜第3入力部51a〜51cと、他端側にこの順に並列に配置された第1〜第3出力部52a〜52cを備えて構成される。3×3カプラ50では、第1入力部51aと第1出力部52aとが互いに対向し、第2入力部51bと第2出力部52bとが互いに対向し、第3入力部51cと第3出力部52cとが互いに対向している。
【0038】
3×3カプラ50は、所謂ミラーイメージ型のカプラとして構成されており、第1〜第3入力部51a〜51cに入力される光を、第1〜第3出力部52a〜52cから出力する。3×3カプラ50は、第1入力部51aに入力される光を第3出力部52cから、第2入力部51bに入力される光を第2出力部52bから、第3入力部51cに入力される光を第1出力部52aから、それぞれ出力する。
【0039】
第1入力導波路部110は、直列に接続された入力ポート部111及び入力テーパ部112を備えて構成される。入力ポート部111は、例えばシングルモード条件を達成する幅に設定されている。従って、入力ポート部111は、基本モードの光を伝播させる。入力テーパ部112は、4×4カプラ40の第1入力部41aに接続されている。入力テーパ部112は、入力ポート部111と接続された一端から4×4カプラ40と接続された他端まで(すなわち、4×4カプラ40と接続された端に向かって)、連続的に幅が拡大するテーパ形状で形成されている。
【0040】
第2入力導波路部120は、直列に接続された入力ポート部121及び入力テーパ部122を備えて構成される。第2入力導波路部120の入力ポート部121及び入力テーパ部122は、第1入力導波路部110の入力ポート部111及び入力テーパ部112と同様に構成することができる。第2入力導波路部120の入力テーパ部122は、4×4カプラ40の第3入力部41cに接続されている。
【0041】
4×4カプラ40の第1出力部42aは、接続導波路部60の入力部65に接続されている。4×4カプラ40の第2出力部42bは、3×3カプラ50の第1入力部51aに接続されている。4×4カプラ40の第3出力部42cは、3×3カプラ50の第2入力部51bに接続されている。4×4カプラ40の第4出力部42dは、3×3カプラ50の第3入力部51cに接続されている。
【0042】
接続導波路部60の出力部66は、第1出力導波路部210に接続されている。
【0043】
3×3カプラ50の第1出力部52aは、第2出力導波路部220の出力テーパ部221に接続されている。3×3カプラ50の第2出力部52bは、第3出力導波路部230の出力テーパ部231に接続されている。3×3カプラ50の第3出力部52cは、第4出力導波路部240の出力テーパ部241に接続されている。
【0044】
接続導波路部60は、この順に直列に接続されたテーパ部61、第1アーム導波路部62、直線導波路部63及び第2アーム導波路部64を備えて構成される。
【0045】
テーパ部61は、4×4カプラ40と接続された一端から第1アーム導波路部62と接続された他端まで(すなわち、4×4カプラ40と接続された端から離れる方向に向かって)、連続的に幅が縮小するテーパ形状で形成されている。
【0046】
第1アーム導波路部62は、直線導波路部63に向かうにつれて3×3カプラ50から離間する曲線導波路として形成されている。直線導波路部63は、第1アーム導波路部62及び第2アーム導波路部64を結ぶ直線状の導波路として形成されている。第2アーム導波路部64は、第1出力導波路部210に向かうにつれて3×3カプラ50へ接近する曲線導波路として形成されている。第1アーム導波路部62、直線導波路部63及び第2アーム導波路部64は、シングルモード条件を達成する幅に設定されている。従って、第1アーム導波路部62、直線導波路部63及び第2アーム導波路部64は、基本モードの光を伝播させる。
【0047】
ここでは、テーパ部61の、4×4カプラ40と接続された一端部を、入力部65としている。また、第2アーム導波路部64の、直線導波路部63と接続された一端とは反対側の他端部を、出力部66としている。
【0048】
第1出力導波路部210は、例えばシングルモード条件を達成する幅に設定されている。従って、第1出力導波路部210は、基本モードの光を伝播させる。
【0049】
第2出力導波路部220は、この順に直列に接続された出力テーパ部221及び出力ポート部222を備えて構成される。出力テーパ部221は、3×3カプラ50と接続された一端から出力ポート部222と接続された他端まで(すなわち、3×3カプラ50と接続された端から離れる方向に向かって)、連続的に幅が縮小するテーパ形状で形成されている。
【0050】
第3出力導波路部230は、この順に直列に接続された出力テーパ部231及び出力ポート部232を備えて構成される。また、第4出力導波路部240は、この順に直列に接続された出力テーパ部241及び出力ポート部242を備えて構成される。第3出力導波路部230の出力テーパ部231及び出力ポート部232、並びに第4出力導波路部240の出力テーパ部241及び出力ポート部242は、第2出力導波路部220の出力テーパ部221及び出力ポート部222と同様に構成することができる。
【0051】
次に、上述した4×4カプラ40、3×3カプラ50及び接続導波路部60の設計について説明する。
【0052】
MMIカプラの長さLは、幅をW、等価屈折率をn、及び波長をλとして、下式(1)で表すことができる。
【0053】
L=4nW/(Nλ) ・・・(1)
上式(1)において、Nは、像形成のパラメータである。MMIカプラにおいて、入力光を4等分する場合にはN=4である。4×4カプラ40の幅をWとして、上式(1)より、4×4カプラ40の長さLは、L=nW/λとなる。
【0054】
3×3カプラ50の幅Wは、4×4カプラ40の幅Wのほぼ3/4である。また、所謂ミラーイメージ型のカプラではN=1である。上式(1)より、3×3カプラ50の長さLは、L=4nW/λ=4n(3W/4)/λ=(9/4)Lとなる。
【0055】
従って、3×3カプラ50の長さLは、4×4カプラ40の長さLに対して2.25倍となる。
【0056】
接続導波路部60は、上述したようにシングルモード導波路として形成される。このため、接続導波路部60とMMIカプラである3×3カプラ50では、群屈折率に差が生じ、それぞれを伝播する光の速度にも差が生じる。そこで、接続導波路部60の光路長を調整することによって、3×3カプラ50に入力された光が3×3カプラ50から出力されるタイミングと、接続導波路部60に入力された光が接続導波路部60から出力されるタイミングとを対応させることができる。
【0057】
第1の光ハイブリッド回路100をコヒーレント検波に用いる場合、第1入力導波路部110には、第1の光として信号光が入力される。信号光は、入力ポート部111及び入力テーパ部112を順次に経て、4×4カプラ40の第1入力部41aに送られる。また、第2入力導波路部120には、第2の光として局発光が入力される。局発光は、入力ポート部121及び入力テーパ部122を順次に経て、4×4カプラ40の第3入力部41cに送られる。
【0058】
4×4カプラ40に送られた信号光と局発光とは、4×4カプラ40においてミキシングされる。そして、これら信号光及び局発光の干渉光が第1〜第4出力部42a〜42dからそれぞれ出力される。なお、第2出力部42b及び第3出力部42cからは、信号光と、90度(π/2)の位相回転を与えられた局発光との干渉光が出力される。第1出力部42a及び第4出力部42dからは、信号光と、位相回転を与えられない局発光との干渉光が出力される(JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL.28, NO.9, MAY 1, 2010 pp.1323-1331参照)。
【0059】
4×4カプラ40の各入力部41a〜41dに入力される光に対する、各出力部42a〜42dから出力される光の位相差φ(x、y)は、共通する位相分を除いて、下式(2)及び(3)で表される。ここで、N=4である。また、ψは、入力光の位相を示す。また、xは入力部41a〜41dの番号を示し、yは出力部42a〜42dの番号を示す。従って、ここでは、xは1〜4の整数であり、yは1〜4の整数である。そして、第x入力部41から入力される光に対する、第y出力部42から出力される光の位相差について、x+yが偶数の場合は下式(2)で表され、x+yが奇数の場合は下式(3)で表される。
【0060】
φ(x、y)=π+φN−(y−x)/2=ψ+π+{π(y−x)(2N−y+x)}/4N ・・・(2)
φ(x、y)=π+φN−(y+x−1)/2=ψ+{π(y+x−1)(2N−y−x+1)}/4N ・・・(3)
また、第1入力部41a及び第3入力部41cに入力される光を干渉させた場合の、第y出力部からの出力パワーP(y)は、下式(4)で表される。
【0061】
P(y)=[P1/2exp{iφ(1,y)}+P1/2exp{iφ(3,y)+iφ}][P1/2exp{−iφ(1,y)}+P1/2exp{−iφ(3,y)−iφ}]/4=[P+P+2(P1/2cos{iφ(1,y)−iφ(3,y)−iφ}]/4 ・・・(4)
ここで、φは、第1入力部41aに入力される光と第3入力部41cに入力される光との位相差を、Pは、第1入力部41aに入力される光の入力パワーを、Pは、第3入力部41cに入力される光の入力パワーを、それぞれ示す。
【0062】
上式(4)から、上式(4)のcos中の、第1〜第4出力部42a〜42dの出力パワーP(y)の位相は、それぞれ0+φ00、π/2+φ00、3π/2+φ00及びπ+φ00となる。ここで、φ=−3π/4−φ00としている。
【0063】
この結果、第1出力部42aからの出力光の位相に対して、第2出力部42bからの出力光では+π/2、第3出力部42cからの出力光では+3π/2、及び第4出力部42dからの出力光では+πの位相差の関係となる(Appl. Opt 33, pp.3905)。
【0064】
従って、第1出力部42aからの出力光と第4出力部42dからの出力光との間にはπの位相差が生じる。また、第2出力部42bからの出力光と第3出力部42cからの出力光との間にはπの位相差が生じる。そして、第1出力部42aからの出力光と第2出力部42bからの出力光との間にはπ/2の位相差が生じる。また、第3出力部42cからの出力光と第4出力部42dからの出力光との間にはπ/2の位相差が生じる。
【0065】
4×4カプラ40の第1出力部42aから出力される光は、接続導波路部60の入力部65に送られる。接続導波路部60の入力部65に送られた光は、テーパ部61、第1アーム導波路部62、直線導波路部63及び第2アーム導波路部64を順次に経て、出力部66から出力される。
【0066】
4×4カプラ40の第2出力部42bから出力される光は、3×3カプラ50の第1入力部51aに送られる。第1入力部51aから3×3カプラ50に入力された光は、第3出力部52cから出力される。また、4×4カプラ40の第3出力部42cから出力される光は、3×3カプラ50の第2入力部51bに送られる。第2入力部51bから3×3カプラ50に入力された光は、第2出力部52bから出力される。また、4×4カプラ40の第4出力部42dから出力される光は、3×3カプラ50の第3入力部51cに送られる。第3入力部51cから3×3カプラ50に入力された光は、第1出力部52aから出力される。
【0067】
接続導波路部60の出力部66から出力される光は、第1出力導波路部210に送られる。また、3×3カプラ50の第1出力部52a〜第3出力部52cから出力される光は、それぞれ第2出力導波路部220〜第4出力導波路部240に送られる。
【0068】
第1出力導波路部210〜第4出力導波路部240に送られた光は、第1バランス受光器80及び第2バランス受光器90に送られる。第1バランス受光器80及び第2バランス受光器90は、それぞれ一対のフォトダイオード(PD:Photodiode)を備えて構成される。ここでは、第1バランス受光器80がPD81及び82を、第2バランス受光器90がPD91及び92を備えている。第1バランス受光器80が備えるPD81及び82、並びに第2バランス受光器90が備えるPD91及び92は、並列に配置される。第1バランス受光器80及び第2バランス受光器90は、PD81及び82並びにPD91及び92に光が入力されることによって、これら光を受光する。第1出力導波路部210に送られた光は、第1出力導波路部210を経て、第1バランス受光器80の一方のPD81に入力される。第2出力導波路部220に送られた光は、出力テーパ部221及び出力ポート部222を経て、第1バランス受光器80の他方のPD82に入力される。また、第3出力導波路部230に送られた光は、出力テーパ部231及び出力ポート部232経て、第2バランス受光器90の一方のPD91に入力される。また、第4出力導波路部240に送られた光は、出力テーパ部241及び出力ポート部242経て、第2バランス受光器90の他方のPD92に入力される。
【0069】
4×4カプラ40と第1〜第4出力導波路部210〜240との間に、接続導波路部60及び3×3カプラ50を備えることにより、第1バランス受光器80のPD81及び82に入力される各光の位相差はπとなる。また、第2バランス受光器90のPD91及び92に入力される各光の位相差はπとなる。そして、第1バランス受光器80のPD81及び82に入力される光と、第2バランス受光器90のPD91及び92とに入力される光との位相差はπ/2となる。
【0070】
従って、第1の光ハイブリッド回路100は、図8を参照して説明した従来の光ハイブリッド回路と等価な機能を有する。
【0071】
しかも、第1の光ハイブリッド回路100では、光導波路の交差が生じないため、製造が簡単であり、さらに、幅テーパMMIカプラを含まないため、設計が容易である。また、第1の光ハイブリッド回路100では、第1入力導波路部110及び第2入力導波路部120と、第1〜第4出力導波路部210〜240との間において、接続導波路部60にのみシングルモード導波路を用いる。このため、シングルモード導波路を多用する従来の光ハイブリッド回路と比べて、幅誤差に強い。
【0072】
また、第1の光ハイブリッド回路100では、入力テーパ部112及び入力テーパ部122を用いて、第1入力導波路部110及び第2入力導波路部120と4×4カプラ40とを接続する。また、第1の光ハイブリッド回路100では、テーパ部61を用いて、4×4カプラ40と接続導波路部60とを接続する。また、第1の光ハイブリッド回路100では、出力テーパ部221、出力テーパ部231及び出力テーパ部241を用いて、3×3カプラ50と第2出力導波路部220、第3出力導波路部230及び第4出力導波路部240とを接続する。これによって、第1の光ハイブリッド回路100では、構成要素間の入力強度及び出力強度のバラつきを抑えるとともに、伝播損失を低減することができる。
【0073】
さらに、第1の光ハイブリッド回路100では、接続導波路部60が第1アーム導波路部62及び第2アーム導波路部64を含むことによって、接続導波路部60と3×3カプラ50とのギャップを大きく確保することができる。これによって、接続導波路部60を伝播する光と3×3カプラ50を伝播する光との、不所望な結合を防止することができる。
【0074】
(特性評価)
発明者は、3次元ビーム伝播法(BPM:Beam Propagation Method)を用いて、第1の光ハイブリッド回路100の特性を評価するシミュレーションを行った。
【0075】
このシミュレーションでは、第1入力導波路部110及び第2入力導波路部120から光を入力し、第1〜第4出力導波路部210〜240のそれぞれから出力される光の強度を取得した。また、このシミュレーションでは、光導波路コア30はSiを材料として、クラッド20はSiOを材料として、それぞれ構成した。光導波路コア30は、全体的に厚さを200nmとした。第1入力導波路部110及び第2入力導波路部120に入力する光は、波長1550nmのTE偏波を想定した。
【0076】
シミュレーションの結果を図3に示す。図3(A)及び(B)は、構成要素のサイズが異なる2つの第1の光ハイブリッド回路100における、各出力導波路からの出力と位相差の関係を示す図である。図3(A)及び(B)では、横軸に位相差(度)を取って示し、縦軸に出力光強度を取って示している。図3(A)において、曲線301は第1出力導波路部210からの出力強度を、曲線302は第2出力導波路部220からの出力強度を、曲線303は第3出力導波路部230からの出力強度を、曲線304は第4出力導波路部240からの出力強度を、それぞれ示している。また、図3(B)において、曲線311は第1出力導波路部210からの出力強度を、曲線312は第2出力導波路部220からの出力強度を、曲線313は第3出力導波路部230からの出力強度を、曲線314は第4出力導波路部240からの出力強度を、それぞれ示している。
【0077】
なお、図3(A)に係る第1の光ハイブリッド回路100では、4×4カプラ40の幅を5.6μm及び長さを49.6μmとした。また、3×3カプラ50の幅を4.2μm及び長さを112.6μmとした。また、入力テーパ部112、入力テーパ部122及びテーパ部61について、4×4カプラ40と接続される側の端の幅を1μmとした。また、出力テーパ部221、出力テーパ部231及び出力テーパ部241について、3×3カプラ50と接続される側の端の幅を1μmとした。
【0078】
一方、図3(B)に係る第1の光ハイブリッド回路100では、4×4カプラ40の幅を6.787μm及び長さを75μmとした。また、3×3カプラ50の幅を5.09025μm及び長さを168.75μmとした。また、入力テーパ部112、入力テーパ部122及びテーパ部61について、4×4カプラ40と接続される側の端の幅を1.2μmとした。また、出力テーパ部221、出力テーパ部231及び出力テーパ部241について、3×3カプラ50と接続される側の端の幅を1.2μmとした。
【0079】
図3(A)及び(B)によれば、第1〜第4出力導波路部210〜240からの出力光は、上述した所望の位相関係を示している。また、図3(A)及び(B)を比較すると、4×4カプラ40及び3×3カプラ50の幅が小さい第1の光ハイブリッド回路100では、各出力導波路部からの出力強度のピークにバラつきが生じているのに対し、4×4カプラ40及び3×3カプラ50の幅が大きい第1の光ハイブリッド回路100では、出力導波路部からの出力強度のピークが揃っている。従って、4×4カプラ40及び3×3カプラ50の幅を大きく設定することによって、出力強度のピークを均等にできることが理解された。
【0080】
なお、4×4カプラ40のみに対して同様のシミュレーションを行った場合においても、幅を大きく設定することで、出力強度のピークを均等にできることがわかった(図示せず)。また、入力テーパ部112、入力テーパ部122、テーパ部61、出力テーパ部221、出力テーパ部231及び出力テーパ部241を設けない場合、出力強度のピークにバラつきが生じることもわかった(図示せず)。
【0081】
(第2の光ハイブリッド回路)
図4を参照して、この発明の第2実施形態に係る光ハイブリッド回路(以下、第2の光ハイブリッド回路とも称する)について説明する。図4は、第2の光ハイブリッド回路を示す概略的平面図である。なお、図4では、光導波路コアのみを示してあり、支持基板及びクラッドを省略している。また、なお、第2の光ハイブリッド回路は、接続導波路部が1×1カプラである点において、上述した第1の光ハイブリッド回路と相違する。第1の光ハイブリッド回路と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
第2の光ハイブリッド回路200では、接続導波路部260が、MMIカプラとして構成された1×1カプラである。なお、以下の説明では、接続導波路部260を1×1カプラ260と称することもある。
【0083】
1×1カプラ260では、一端側に入力部261が配置され、他端側に出力部262が配置される。入力部261は1×1カプラ260の一端側における3×3カプラ50に近い側に配置され、出力部262は1×1カプラ260の他端側における3×3カプラ50に近い側に配置され、入力部261と出力部262とは、互いに対向して配置されている。
【0084】
1×1カプラ260の入力部261は、4×4カプラ40の第1出力部42aと接続されている。また、1×1カプラ260の出力部262は、第1出力導波路部210に接続されている。1×1カプラ260は、4×4カプラ40の第1出力部42aから送られる光を、第1出力導波路部210に送る。
【0085】
ここで、1×1カプラ260において、入力部261から入力された光を対向する出力部262から出力させる場合、上式(1)における像形成のパラメータNは1/2である。従って、1×1カプラ260の幅をWとして、1×1カプラ260の長さLは、L=8nW/λとなる。また、上述したように、3×3カプラ50の長さLは、L=4nW/λである。従って、1×1カプラ260の長さLと3×3カプラ50の長さLとを等しくする場合、1×1カプラ260の幅は、3×3カプラ50の幅の1/√2となる。
【0086】
また、第2の光ハイブリッド回路200では、第1出力導波路部210が、第2〜第3出力導波路部220〜230と同様に、この順に直列に接続された出力テーパ部211及び出力ポート部212を備えて構成される。出力テーパ部211は、1×1カプラ260の出力部262と接続される。出力テーパ部211は、1×1カプラ260と接続された一端から出力ポート部212と接続された他端まで(すなわち、1×1カプラ260と接続された端から離れる方向に向かって)、連続的に幅が縮小するテーパ形状で形成されている。
【0087】
第2の光ハイブリッド回路200では、接続導波路部260が、1×1カプラで構成されている。このため、接続導波路部260及び3×3カプラ50がともにMMIカプラで構成される。この結果、接続導波路部260をシングルモード導波路として形成した場合と比べ、接続導波路部260と3×3カプラ50との群屈折率差が小さく、これらを伝播する光の速度の差も小さい。このため、接続導波路部260の光路長を調整することなく、接続導波路部260及び3×3カプラ50を共通の長さで設計することができる。従って、第2の光ハイブリッド回路200は、設計が容易である。
【0088】
ここで、第2の光ハイブリッド回路では、図5に示すように、1×1カプラ260が第1部分263と第2部分264とを備える構成とすることもできる。図5は、第2の光ハイブリッド回路の変形例を示す概略的平面図である。なお、図5では、光導波路コアのみを示してあり、支持基板及びクラッドを省略している。
【0089】
この変形例に係る光ハイブリッド回路250では、1×1カプラ260が、この順に直列に接続された第1部分263と第2部分264を含んで構成される。第1部分263は、第2部分264に向かうにつれて(すなわち出力部262に向かうにつれて)3×3カプラ50から離間するように形成されている。また、第2部分264は、第1出力導波路部210に向かうにつれて(すなわち出力部262に向かうにつれて)3×3カプラ50へ接近するように形成されている。この結果、変形例に係る光ハイブリッド回路250では、1×1カプラ260と3×3カプラ50とのギャップを大きく確保することができる。これによって、1×1カプラ260を伝播する光と3×3カプラ50を伝播する光との、不所望な結合を防止することができる。
【0090】
(特性評価)
発明者は、3次元BPMを用いて、第2の光ハイブリッド回路200及び変形例に係る光ハイブリッド回路250の特性を評価するシミュレーションを行った。
【0091】
このシミュレーションでは、第2の光ハイブリッド回路200及び変形例に係る光ハイブリッド回路250について、第1入力導波路部110及び第2入力導波路部120から光を入力し、第1〜第4出力導波路部210〜240のそれぞれから出力される光の強度を取得した。
【0092】
シミュレーションの結果を図6に示す。図6(A)及び(B)は、第2の光ハイブリッド回路200及び変形例に係る光ハイブリッド回路250における、各出力導波路からの出力と位相差の関係を示す図である。図6(A)及び(B)では、横軸に位相差(度)を取って示し、縦軸に出力光強度を取って示している。図6(A)において、曲線501は第1出力導波路部210からの出力強度を、曲線502は第2出力導波路部220からの出力強度を、曲線503は第3出力導波路部230からの出力強度を、曲線504は第4出力導波路部240からの出力強度を、それぞれ示している。また、図3(B)において、曲線511は第1出力導波路部210からの出力強度を、曲線512は第2出力導波路部220からの出力強度を、曲線513は第3出力導波路部230からの出力強度を、曲線514は第4出力導波路部240からの出力強度を、それぞれ示している。
【0093】
なお、図6(A)に係るシミュレーションでは、図4に示す第2の光ハイブリッド回路200を想定した。そして、1×1カプラ260の幅を3×3カプラ50の1/1.42、及び長さを3×3カプラ50と共通とした。その他の条件については、上述した図3(B)に係るシミュレーションと同様である。
【0094】
一方、図6(B)に係るシミュレーションでは、図5に示す変形例に係る光ハイブリッド回路250を想定した。そして、1×1カプラ260の幅を3×3カプラ50の1/1.42とした。また、1×1カプラ260の4×4カプラ40と接続された一端と、3×3カプラ50の4×4カプラ40と接続された一端との面位置を揃え、かつ1×1カプラ260の第1出力導波路部210と接続された他端と3×3カプラ50の第2〜第4出力導波路部220〜240と接続された他端との面位置を揃えた。さらに、1×1カプラ260について、3×3カプラ50と最も近接する部分と最も離間した部分とのギャップGが2μmとなるように、第1部分263及び第2部分264を設計した。
【0095】
図6(A)及び(B)によれば、第2の光ハイブリッド回路200及び変形例に係る光ハイブリッド回路250ともに、第1〜第4出力導波路部210〜240からの出力光は、上述した所望の位相関係を示している。
【0096】
(第3の光ハイブリッド回路)
図7を参照して、この発明の第3実施形態に係る光ハイブリッド回路(以下、第3の光ハイブリッド回路とも称する)について説明する。図7は、第3の光ハイブリッド回路を示す概略的平面図である。なお、図7では、光導波路コアのみを示してあり、支持基板及びクラッドを省略している。また、なお、第3の光ハイブリッド回路は、接続導波路部としての1×1カプラを3×3カプラと共通の設計で形成する点において、上述した第1及び第2の光ハイブリッド回路と相違する。第1及び第2の光ハイブリッド回路と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
第3の光ハイブリッド回路300では、接続導波路部360が、MMIカプラとして構成された1×1カプラである。なお、以下の説明では、接続導波路部360を1×1カプラ360と称することもある。
【0098】
1×1カプラ360は、一端側に入力部361が配置され、他端側に出力部362が配置される。入力部361は1×1カプラ360の一端側における3×3カプラ50に近い側に配置され、出力部362は1×1カプラ360の他端側における3×3カプラ50から遠い側に配置され、入力部361と出力部362とは、互いに点対称となる位置に配置されている。
【0099】
1×1カプラ360の入力部361は、4×4カプラ40の第1出力部42aと接続されている。また、1×1カプラ360の出力部362は、第1出力導波路部210に接続されている。1×1カプラ360は、4×4カプラ40の第1出力部42aから送られる光を、第1出力導波路部210に送る。
【0100】
1×1カプラ360は、所謂ミラーイメージ型のカプラとして構成された3×3カプラ50と共通の設計で形成されている。そして、1×1カプラ360の入力部361は、3×3カプラ50の第3入力部51cに対応する。また、1×1カプラ360の出力部362は、3×3カプラ50の第1出力部52aに対応する。従って、1×1カプラ360は、3×3カプラ50と同様に機能し、入力部361から入力された光を、点対称となる位置に配置された出力部362から出力することができる。
【0101】
第3の光ハイブリッド回路300では、接続導波路部360が、3×3カプラ50と共通の設計で形成された1×1カプラで構成されている。このため、接続導波路部360と3×3カプラ50とで群屈折率が共通となり、これらを伝播する光の速度も共通となる。このため、1×1カプラ360の光路長を調整することなく、3×3カプラ50に入力された光が3×3カプラ50から出力されるタイミングと、1×1カプラ360に入力された光が1×1カプラ360から出力されるタイミングとを対応させることができる。また、第3の光ハイブリッド回路300では、1×1カプラ360を3×3カプラ50と共通に設計するため、設計が容易である。
【0102】
なお、第3の光ハイブリッド回路300では、上述した第1の光ハイブリッド回路100及び第2の光ハイブリッド回路200と比べて、1×1カプラ360の出力部362と、3×3カプラ50の第1出力部52aとの離間距離が長くなる。そこで、第1出力導波路部210の出力ポート部212及び第2出力導波路部220の出力ポート部222を引き回し導波路として用いることによって、1×1カプラ360の出力部362及び3×3カプラ50の第1出力部52aからの出力光を、共通の第1バランス受光器80に送ることができる。この際に、第1出力導波路部210の出力ポート部212及び第2出力導波路部220の出力ポート部222、並びに第3出力導波路部230の出力ポート部232及び第4出力導波路部240の出力ポート部242の光路長を揃えることによって、第1バランス受光器80及び第2バランス受光器90それぞれへの光の到達タイミングを合わせることができる。
【0103】
(製造方法)
上述した各光ハイブリッド回路は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、光ハイブリッド回路の製造方法の一例を説明する。
【0104】
まず、支持基板層、SiO層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばドライエッチングを行い、Si層をパターニングすることによって、光導波路コアを形成する。次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、SiO層上に、SiOを、光導波路コアを被覆して形成する。その結果、SiO層のクラッドによって光導波路コアが包含され、光ハイブリッド回路が得られる。
【符号の説明】
【0105】
10:支持基板
20:クラッド
30:光導波路コア
40:4×4カプラ
50:3×3カプラ
60、260、360:接続導波路部
61:テーパ部
62:第1アーム導波路部
63:直線導波路部
64:第2アーム導波路部
80:第1バランス受光器
90:第2バランス受光器
100:第1の光ハイブリッド回路
110:第1入力導波路部
111、121:入力ポート部
112、122:入力テーパ部
120:第2入力導波路部
200、250:第2の光ハイブリッド回路
210:第1出力導波路部
211、221、231、241:出力テーパ部
212、222、232、242:出力ポート部
220:第2出力導波路部
230:第3出力導波路部
240:第4出力導波路部
300:第3の光ハイブリッド回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8