(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品又は飲料(飲食品)等の容器は、その内外面の殺菌が求められる。従来の殺菌方法として過酸化水素水や薬剤を用いる方法が知られているが、それらが残留するなど問題があることから、代替する技術の開発が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、流体中に放電を用いてプラズマ噴流を発生させ、対象物の表面に該プラズマ噴流を接触させて、プラズマ噴流から表面へのエネルギー伝達によって殺菌(消毒)を行う方法が開示されている。ここでのプラズマ噴流は、酸素を含む作動ガス、好ましくは空気内での空中放電によって発生させている。
【0004】
また、特許文献2には、プラズマを発生させてオゾン又は活性種を生成するプラズマデバイスを用いて冷蔵庫内の脱臭殺菌を行う方法が開示されている。より詳しくは、設置した電極の隙間にプラズマを発生させて脱臭を行い、プラズマ中で生成されたオゾン又は活性種を送風により放出することで付着菌の殺菌を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、スーパーオキシドラジカル(・O
2−)、過酸化水素(H
2O
2)、ヒドロキシラジカル(HO・)等の活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROS)は、その強い酸化作用により優れた殺菌作用を奏するが、これらは空気中においては主に酸素分子や水分から生成されている。具体的には、例えば、ヒドロキシラジカルは、水分子にプラズマが反応することにより得られる。
【0007】
一方、特許文献1の殺菌方法では、その効果を高めるためには、消毒物質をプラズマ噴流発生元の作動ガス内に混合する方法が開示されるに留まり(特許文献1の[0025]参照)、また、特許文献2の装置においても、プラズマと接触させる流体の面積を大きくすることで活性種の生成量を増加させるとされており(特許文献2の[0037]参照)、消毒物質として、例えば、活性酸素種の生成に供する水(水蒸気)についてどのような条件のものが好ましいかについては不明であり、更なる技術が求められている。
【0008】
本発明の課題は、殺菌効果に優れる殺菌装置及び該装置を用いた殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ラジカルは温度が高いと寿命が短くなることから、温度を低く保つことでその効果を持続させることが可能になることが知られている。しかしながら、本発明者らは活性酸素種をプラズマ発生装置を用いてより多く生成しようと試みたところ、驚くべきことに、プラズマ発生装置に供給する含水気体を、照射気流の水分量が飽和水蒸気量以上となるように特定温度に加熱した配管を介して供給することで、殺菌作用が顕著に増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、〔1〕〜〔2〕に関する。
〔1〕 交流電流を用いて発生させたプラズマと、水蒸気を含む含水気体との反応物である活性酸素種含有気体を照射する活性酸素種照射ユニットを含んでなる殺菌装置であって、50〜300℃に加熱した前記含水気体を供給する水蒸気供給ユニットを更に含み、ここで、前記活性酸素種含有気体が飽和水蒸気量以上の水分を含むことを特徴とする、殺菌装置。
〔2〕 交流電流を用いて発生させたプラズマと、水蒸気を含む50〜300℃に加熱した含水気体との反応物である、飽和水蒸気量以上の水分を含む活性酸素種含有気体を照射することを含むことを特徴とする、殺菌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の殺菌装置は殺菌効果に優れるという優れた効果を奏する。また、流体による殺菌のため、従来の殺菌に用いられた薬剤等の残留がないことから、工程の簡略化につながり、生産性を格段に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の殺菌装置は、ヒドロキシラジカルを含む活性酸素種を照射して殺菌する際に、プラズマと混合して反応させる含水気体が、照射気流により多くの水分を保持させるべく、照射気流中の水分量が飽和水蒸気量以上となるように特定温度に加熱した配管を介して供給されることに特徴を有する。このように、照射気流が特定の水分量を有するように、含水気体を加熱して供給することによって殺菌効果が増大する理由としては、一概には説明できないが、一般に気体は温度が高くなると飽和水蒸気量も増加することから、含水気体の温度を高くすることで加熱前に比べてより多くの水分を保持させて、それをプラズマを含む気流と混合することにより照射気流中の水分量を多くすることが可能となって、それにより、プラズマと水分子が反応する確率が増加し、その結果、生成される活性酸素種量が増加するため、その効果が高温による活性酸素種の短寿命化の悪影響を補って余りあるからと推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明において、「殺菌」とは、微生物の生体を破壊又は殺菌対象表面から除去することを意味し、例えば、消毒、滅菌、又は除菌することを含むものである。
【0014】
以下に、本発明の殺菌装置を
図1に基づいて詳細に説明する。なお、
図1に記載の殺菌装置は、本発明の一態様に過ぎず本発明を限定するものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の殺菌装置は、交流電流の供給ユニット1(ジェネレータユニット)、昇圧ユニット2(変圧器ユニット)、ガス供給ユニット3(コントロールパネル)、ノズルユニット4、ノズルユニットの冷却ユニット5、ノズルユニットへの水蒸気供給ユニット6(蒸発器ユニット)、ヒーター6a、蒸発器ユニットへの水供給ユニット7(ポンプユニット)の各ユニットを備えて構成される。
【0016】
ジェネレータユニット1は、プラズマ放電の荷電発生源である。供給される交流電流としては、特に制限はなく、例えば、周波数が10〜15kHz、電圧が200〜500V程度のものが例示され、公知技術に従って適宜設定することができる。また、交流電流のアンペア数も特に制限はなく、ジェネレータユニットの仕様によって適宜調整することができ、例えば、11Aの交流電流が用いられる。本発明においては、交流電流の代わりに直流電流を用いることも可能であるが、電圧を調節する観点から、交流電流の方が好ましい。
【0017】
変圧器ユニット2は、ジェネレータユニット1と接続しており、ユニット1から供給された交流電流の電圧を昇圧する装置である。昇圧可能な装置であれば特に問題なく使用できる。また、変圧器ユニットはジェネレータユニット1と一体化したものであってもよい。昇圧後の電圧としては、特に制限はなく、例えば、10〜30kV程度である。
【0018】
コントロールパネル3は、ノズルユニット4及び蒸発器ユニット6のそれぞれへ各種ガスを供給する装置であり、公知のコントロールパネルを用いることができる。
【0019】
具体的には、ノズルユニット4へは、プラズマ発生のためのキャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの混合物を用いることができ、なかでも、空気と酸素の2種類を用いることが好ましい。キャリアガスの供給量は、ノズルユニット4の大きさ、形状等によって一概には設定されない。例えば、空気を6L/minで、酸素を3L/minで供給する態様が例示される。
【0020】
また、蒸発器ユニット6へは、プラズマから活性酸素種を生成する際に必要な水蒸気と混合するための空気を供給する。水蒸気に空気を混合して含水気体として用いることで、プラズマと水蒸気との混合が促進され、効率よく水蒸気からヒドロキシラジカルを生成することができる。蒸発器ユニット6への空気供給量はノズルユニット4への含水気体供給量と同じであり、例えば、3L/minで供給する態様が例示される。なお、ここでの空気とは、相対湿度が20℃において0〜10体積%程度のもののことを言う。
【0021】
ノズルユニット4は、プラズマを発生して活性酸素種を照射する装置であり、活性酸素種照射ユニットともいう。該ユニットには、内部電極及び外部電極が設けられており、両電極間に変圧器ユニット2からの電圧をかけることで電界を発生させることが可能になる。また、内部電極にはコイルが接続されていてもよく、より大きな電界を形成することが可能となる。コイルの形状や大きさ等は当業者の技術常識に従って調整することができる。
【0022】
また、ノズルユニットには、ガス供給口及び活性酸素種照射口が設けられており、ガス供給口は活性酸素種照射口が存在する端部とは反対側の端部に存在する。そして、ガス供給口にはコントロールパネル3からの配管が接続されており、前記のようにして発生させた電界内をキャリアガスが通り抜けることで、プラズマが生成される。このようにして生成されたプラズマは、流体でもあることからプラズマ噴流と記載することもある。一方、活性酸素種照射口は、管状構造又は出口に向かって先細になる円錐構造を有するものであって、出口に至るまでの何れかの部分に水蒸気供給ユニット6から含水気体を供給するための配管が接続されている。
【0023】
本発明においては、蒸発器ユニット6から前記活性酸素種照射口に接続されている配管に連結する加熱装置(ヒーター6a)が備え付けられていることに特徴がある。前記ヒーター6aは、配管全体を加熱するものであっても一部を加熱するものであってもよいが、供給する含水気体を安定的に加熱するためには、配管全体を加熱するものが好ましい。また、ヒーター6aは、蒸発器ユニット6と一体化したものであってもよい。加熱温度としては、より多くの水分を含水気体に保持させる観点から、50℃以上であり、好ましく100℃以上であり、また、300℃以下であり、好ましく200℃以下である。なお、ここでの加熱温度とは、ヒーター6aの設定温度のことである。このようにして加熱された含水気体が、前記生成されたプラズマと反応して活性酸素種が生成され、活性酸素種含有気体として活性酸素種照射口の出口から照射されることになる。
【0024】
ノズルユニット4は、前記パーツを有するのであればその形状や大きさは特に限定されず、例えば、筒状構造の上端部にガス供給口が配置され、下端部に当該装置の径より小さい径を有する管状構造の活性酸素種照射口が配置された構造が例示される。当該筒状構造は層状構造を形成していてもよく、例えば、キャリアガスが通り抜ける管の周囲に、コイルが形成され、必要により、該コイルの周囲に絶縁材料の層が更に形成される構造が例示される。管は通電素材であれば特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。また、絶縁材料も特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0025】
ノズルユニットの冷却ユニット5は、ノズルユニット4に冷却水を供給する装置であり、公知の冷却水供給装置を用いることができる。ノズルユニット4は高電圧がかかることによって発熱するため、冷却することが好ましい。冷却水は、温度が例えば5℃程度のものを用いることが好ましく、ノズルユニット4と冷却ユニット5の間を循環させてもよい。冷却水の流量は、ノズルユニット4の表面温度が25℃以下となるように適宜調整することができる。なお、ノズルユニット4の表面温度は接触式温度計を用いて測定することができる。
【0026】
ノズルユニットへの蒸発器ユニット6は、ノズルユニット4に含水気体を供給する装置であり、前記したようにノズルユニット4の活性酸素種照射口に、ヒーター6aが備え付けられた配管を介して接続されている。含水気体を供給するにあたっては、先ず、ポンプユニット7から供給された水を内蔵された電熱線により加熱して水蒸気を生成し、その後、コントロールパネル3から供給された空気と混合したものを含水気体としてノズルユニット4に供給している。ここで、ポンプユニット7は蒸発器ユニット6と一体化したものであってもよい。電熱線の加熱温度は供給される水の量によって適宜調整することができ、例えば、300℃が例示される。また、ポンプユニット7から供給される水の量は、活性酸素種の生成に必要な水蒸気量に応じて調節することが可能であるが、本発明においては、0.5mL/min以上が好ましく、2.0mL/min以上がより好ましい。また、上限は特に設定されないが、6mL/min以下が好ましく、5mL/min以下がより好ましい。かくして得られた水蒸気をコントロールパネル3から供給された空気と体積比で0.2〜2.5程度で混合して、前記ヒーター6aにより加熱した配管を通じて、ノズルユニット4の活性酸素種照射口に供給する。水蒸気と空気の混合体積比は、例えば、上記した水の供給量を変動させることで変更することが可能であり、水供給量を増加すると含水気体に含ませる水蒸気量を増加させることが可能となる。ノズルユニット4において生成されるプラズマ噴流と蒸発器ユニット6から供給される含水気体の混合体積比〔プラズマ噴流/含水気体(体積比)〕としては、0.8〜2.6が例示される。
【0027】
また、本発明の殺菌装置は前記ユニット以外に、殺菌対象物を載置する照射台8を含んでもよい。かかる台は、殺菌対象物を載置できれば特に限定はないが、ヒドロキシルラジカルを高温により分解しない観点から、当該対象物を好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下に載置できることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の殺菌装置は前記ユニット以外に、他のユニットを更に有するものであってもよい。他のユニットとしては、活性酸素種含有気体の拡散を防止する遮蔽壁等が例示される。
【0029】
かくして、本発明の殺菌装置から活性酸素種含有気体が照射される。照射される活性酸素種含有気体は、特定温度に加熱した配管を通じて供給された含水気体と混合して得られることから、水分量が飽和水蒸気量以上のものとなる。飽和水蒸気量の水分を含有する場合を相対湿度100%とする場合、本発明の殺菌装置から照射される活性酸素種含有気体は相対湿度が100%以上であればよく、好ましくは101%以上、より好ましくは102%以上の相対湿度を呈するものである。なお、水分含有量が同じ気体であっても相対湿度が高い方がプラズマとの反応性が高くなることから、水分含有量は一概には設定することが出来ないが、例えば、0.1g/L以上、好ましくは0.15g/L以上程度含有することが好ましい。このように多くの水分を含むことにより、活性酸素種の生成がより多くなり、ひいては優れた殺菌活性を有するものである。また、活性酸素種含有気体が流体であることから、三次元的な構造のものでも殺菌することが可能であり、エッジや角に残渣が残らないという優れた効果を奏するものである。
【0030】
照射される活性酸素種含有気体は、ノズルユニット4内での放電や蒸発器ユニット6及びヒーター6aからの含水気体によって温かいものであり、温度は好ましくは55〜80℃、より好ましくは60〜80℃である。これにより、照射された対象物の熱負荷は小さいものと考えられる。なお、活性酸素種含有気体の温度とは、活性酸素種照射口の出口における活性酸素種含有気体の温度を熱電対温度計を用いて測定した温度のことである。
【0031】
また、活性酸素種含有気体と殺菌対象物表面との温度差は、ラジカルの反応性を高める観点から、例えば、10℃以上が好ましく、30〜40℃がより好ましい。ここで、殺菌対象物表面の温度とは、殺菌対象物を接触式温度計にて測定した温度のことである。
【0032】
照射スピードは、ガスの供給量及び活性酸素種照射口の形状によって調節することが可能であり、例えば、50000mm/secが例示される。照射時間は、対象物によって一概には設定されず、例えば、0.05〜1秒が例示される。
【0033】
また、活性酸素種照射口と殺菌対象物表面との距離は、例えば、5〜50mmが好ましい。
【0034】
本発明の殺菌装置は、殺菌を要する対象物に活性酸素種を照射するために使用される。対象物としては、例えば、飲食品の容器、容器の口部を封鎖するキャップ、医療器具、野菜や肉などの飲食品等が例示される。
【0035】
本発明はまた、プラズマから発生させた活性酸素種を照射して殺菌を行なう際に、該活性酸素種を含む気流中の水分量を飽和水蒸気量以上にすることに特徴を有する殺菌方法を提供する。
【0036】
具体的には、交流電流を用いて発生させたプラズマに、水蒸気を含む含水気体を50〜300℃に加熱して混合し、飽和水蒸気量以上の水分を含む活性酸素種含有気体を殺菌対象物に照射することを特徴とする方法である。プラズマ(例えば、プラズマ噴流)と含水気体を混合して得られた気体(活性酸素種含有気体)が飽和水蒸気量以上の水分を含むことで、発生したプラズマと水分子が反応する確率が増加し、その結果、生成される活性酸素種量が増加することになる。活性酸素種含有気体に飽和水蒸気量以上の水分を含ませるためには、含水気体を50℃以上、好ましく100℃以上であり、300℃以下、好ましく200℃以下に加熱して供給する。含水気体の加熱方法は公知技術に従って行うことができるが、例えば、含水気体を供給する配管をヒーター等で加温する態様が例示される。なお、プラズマは公知技術に従って発生することができるが、本発明においては交流電流を用いて発生させたものを用いることが好ましい。
【0037】
また、上記殺菌方法においては、活性酸素種含有気体と殺菌対象物表面との温度差が好ましくは10℃以上、より好ましくは30〜40℃程度となるように、殺菌対象物を設置することが好ましい。具体的には、殺菌対象物を表面温度が好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下となる照射台に載置することが好ましい。
【0038】
本発明の殺菌方法の一態様として、本発明の殺菌装置を用いる方法が挙げられる。殺菌装置の仕様や使用方法などは、本発明の殺菌装置の項に記載の通りであり、例えば、含水気体は50〜300℃に加熱した配管を通じて供給される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0040】
試験例1
本発明の殺菌装置における、含水気体の供給温度の検討を行った。
【0041】
<菌液の調製及び菌付けキャップ作製>
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×10
5〜2×10
7CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を
図2に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
【0042】
<活性酸素種の照射>
図1に示す本発明の殺菌装置を用いて、活性酸素種含有気体を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.5秒間を2回(合計1秒間)照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、本発明の殺菌装置の使用条件は次の通りであった。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流のジェネレータユニット1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
変圧器ユニット2:昇圧後の電圧20kV
コントロールパネル3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルユニット4へ)、空気供給量3L/min(蒸発器ユニット6へ)
ノズルユニット4:活性酸素種含有気体照射温度は表1に示す通り、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニット5:冷却水5℃
蒸発器ユニット6:電熱線300℃、含水気体供給量6.7L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/6.7)
ヒーター6a:配管温度は表1に示す通り
ポンプユニット7:水供給量は表1に示す通り
照射台8:表面温度25℃
【0043】
<殺菌活性値の測定>
活性酸素種含有気体の照射を行った樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁った滅菌シャーレ個数を陽性としてボトルキャップ数としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表1に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1より、含水気体を配管を通して供給する際に、配管を加熱し、かつ、水蒸気の混合量が多い場合(実施例1)に殺菌活性が高く、一方、加熱しない場合(比較例1)や加熱しても水蒸気の混合量が少ない場合(比較例2)には殺菌活性が低いことが分かる。なお、表1に記載の活性酸素種含有気体の相対湿度(%)及び水分量(g/L)は、以下のようにして算出した。ここで、水供給量が1mL/minである場合、その水蒸気体積量は、1g/min(水の供給量)/18g(水の分子量)×22.4L(気体1molの体積)=1.2L/minと換算して用い、水分含有量は飽和水蒸気量と相対湿度から求めた値を記入した。例えば、比較例1の場合、気体の温度が51℃の飽和水蒸気量は0.087g/Lであることから、活性酸素種含有気体の相対湿度は、1.2g/min(水供給量)/[〔13.5×(273+51)/(273+25)L/min〕(プラズマ噴流と含水気体の合計流量@51℃)×0.087g/L(飽和水蒸気量)]×100=94%である。また、気体の温度が64℃の飽和水蒸気量は約0.160g/Lであることから、例えば、比較例2の活性酸素種含有気体の相対湿度は、1.2g/min(水供給量)/[〔13.5×(273+64)/(273+25)L/min〕(プラズマ噴流と含水気体の合計流量)×0.160g/L(飽和水蒸気量)]×100=49%であるのに対し、実施例1の活性酸素種含有気体の相対湿度は、3.0g/min(水供給量)/〔15.7L/min×(273+64)/(273+25)L/min〕(プラズマ噴流と含水気体の合計流量@64℃)×0.160g/L(飽和水蒸気量)〕×100=105%であると計算される。相対湿度100%を超えた分の水蒸気は、凝縮していると考えられる。このように活性酸素種照射口から照射される気流が同じ温度であっても、気流中の相対湿度が高い方が殺菌活性が高いことが示唆される。また、活性酸素の照射が僅か1秒間でありながら、優れた殺菌効果が得られることから、生産性の向上が示唆される。