(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜面は、前記可燃性廃棄物流路の軸方向に係る前記吹込口とは反対側の端部が、前記吹込口から150mm〜2000mm離れた箇所に位置しており、仰角が1°〜4°であることを特徴とする、請求項1に記載の可燃性廃棄物吹込装置。
前記可燃性廃棄物流路に前記傾斜面が形成されている箇所において、前記可燃性廃棄物流路の軸心に向かって前記可燃性廃棄物流路内にアシスト空気流を流入可能な、アシスト空気流入口を備え、
前記アシスト空気流入口は、周方向に関して複数の箇所に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物吹込装置。
前記アシスト空気流入口は、前記可燃性廃棄物流路の軸心に対して直交する面で切断したときの前記可燃性廃棄物流路の軸心を含む水平面を、鉛直方向に挟む複数の箇所に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の可燃性廃棄物吹込装置。
前記可燃性廃棄物流路は、前記アシスト空気流入口から流入した前記アシスト空気流によって、前記可燃性廃棄物流を軸心方向に縮小した後、前記可燃性廃棄物流を鉛直方向上向きに噴出可能に構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の可燃性廃棄物吹込装置。
前記アシスト空気流入口が、前記可燃性廃棄物流路の前記吹込口から10mm〜600mmの範囲に設置されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の可燃性廃棄物吹込装置。
前記可燃性廃棄物流路に前記傾斜面が形成されている箇所において、前記可燃性廃棄物流路の軸心に向かって前記可燃性廃棄物流路内にアシスト空気流を流入可能な、アシスト空気流入口を備え、
前記アシスト空気流入口は、周方向に関して複数の箇所に配置されており、
前記水平面よりも鉛直方向下側から流入される上向きアシスト空気流量が、前記水平面よりも鉛直方向上側から流入される下向きアシスト空気流量以上であることを特徴とする、請求項7に記載の可燃性廃棄物吹込装置の運転方法。
前記アシスト空気流入口から前記可燃性廃棄物流路に対して流入される空気流量の合計量は、前記可燃性廃棄物流路を流れる一次空気流量の5体積%〜65体積%であることを特徴とする、請求項8に記載の可燃性廃棄物吹込装置の運転方法。
前記上向きアシスト空気流量に対する前記下向きアシスト空気流量の比が、0.5〜1.0であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の可燃性廃棄物吹込装置の運転方法。
前記可燃性廃棄物流路内を送流する前記可燃性廃棄物流の送流方向を基準としたときの、前記可燃性廃棄物流路内に流入される前記アシスト空気流の流入角が、0°よりも大きく、90°以下であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の可燃性廃棄物吹込装置の運転方法。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチック、木屑、自動車シュレッダーダスト(ASR:automobile shredder residue)等の可燃性廃棄物は、焼成用燃料として利用可能な程度の熱量を有している。そこで、セメントクリンカの焼成に用いるロータリーキルンにおいて、主燃料である微粉炭の補助燃料として、可燃性廃棄物の有効利用が推進されている。以下では、セメントクリンカの焼成に用いるロータリーキルンを、「セメントキルン」と称する。
【0003】
従来、セメントキルンでの可燃性廃棄物の燃料リサイクルは、セメントクリンカの品質への影響が小さい、窯尻部に設置される仮焼炉での利用が進められていた。しかし、仮焼炉での可燃性廃棄物の使用量が飽和に近づいたため、窯前部に設置されている主バーナでの利用技術の開発が進められている。
【0004】
ここで、セメントキルンの主バーナ(以下、「セメントキルン用バーナ」と称する。)において可燃性廃棄物を補助燃料として利用した場合、セメントキルン用バーナから噴出された可燃性廃棄物がセメントキルン内のセメントクリンカ上に着地しても燃焼を継続する現象(以下、「着地燃焼」と称する。)が生じる場合がある。かかる着地燃焼が生じた場合、可燃性廃棄物の着地燃焼が生じた周辺のセメントクリンカは還元焼成され、セメントクリンカの白色化やセメントクリンカ生成反応の異常を生じさせる。
【0005】
セメントキルン用バーナから噴出された可燃性廃棄物を着地燃焼させないためには、いくつかの方法が考えられる。一つの方法は、セメントキルン内での可燃性廃棄物の浮遊状態を長時間継続させて浮遊状態のまま当該可燃性廃棄物の燃焼を完了させることである。別の一つの方法は、可燃性廃棄物の好適な燃焼環境を形成して可燃性廃棄物の燃焼速度を速めることである。更に別の方法は、可燃性廃棄物をセメントキルン内の遠方(窯尻側)に着地させてセメントクリンカ生成反応の主反応域にクリンカ原料が達する前に当該可燃性廃棄物の燃焼を完了させることである。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、セメントキルン内の遠方(窯尻側)に可燃性廃棄物を着地させるためのエネルギー消費量の低減を図る技術として、ロータリーキルンの端部を回転自在に支承する、窯前部の端壁からの突出量が200〜500mmの複数の可燃性廃棄物バーナからなる可燃性廃棄物の投入構造が開示されている。また、下記特許文献2には、可燃性廃棄物の吹き込みに起因する弊害の発生を回避しつつ可燃性廃棄物をより効率良く燃焼させる技術として、主燃料バーナの外周面であって、且つ主燃料バーナよりも鉛直上方位置に、可燃性廃棄物を主燃料バーナに対して上向きの吹き込み角度によって吹き込む補助バーナが併設された、セメント製造用ロータリーキルンが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、セメントキルン用バーナでの主燃料である微粉炭の使用量と補助燃料である可燃性廃棄物の使用量の割合は、それら燃料の入手状況や性状などによって変動する場合があり、そのような燃料構成の変動が生じてもセメントクリンカの品質を変化させないために、セメントキルン用バーナからの火炎の状態を安定化させる技術が求められる。しかし、特許文献1や2の方法では、セメントキルン用バーナからの火炎の状態が、セメントキルン内に吹き込まれる可燃性廃棄物の量及び吹込角度によって大きく変動してしまうという課題を有している。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、セメントクリンカの製造に可燃性廃棄物を補助燃料として使用する場合において、可燃性廃棄物の着地燃焼を抑制すると共に、可燃性廃棄物の使用割合が変動してもセメントキルン用バーナからの火炎の状態が過剰に変化することを抑制できる、可燃性廃棄物吹込装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題についての鋭意検討の結果、セメントキルン用バーナ装置に附設され、セメントキルン用バーナ装置の中心部付近に吹込口が配置された可燃性廃棄物吹込装置において、当該吹込口近傍の可燃性廃棄物の導管(以下、「可燃性廃棄物流路」と称する。)内の鉛直下方側(底部側)に、吹込口に向かって上り勾配を呈した傾斜面を設けた可燃性廃棄物吹込装置であれば、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、固体粉末燃料用流路の内側に少なくとも1つの空気流路を備えるセメントキルン用バーナ装置に附設可能な可燃性廃棄物吹込装置であって、
最内殻の前記空気流路の内側に配置され、前記セメントキルン用バーナ装置の軸方向に平行に設置された、可燃性廃棄物流を送流させるための可燃性廃棄物流路を有し、
前記可燃性廃棄物流路は、吹込口近傍において、前記吹込口に近づくに連れて鉛直方向に係る流路幅が狭くなるように、前記吹込口に向かって上り勾配を呈した傾斜面を有していることを特徴とする。なお、以下では、「吹込口に向かって上り勾配を呈した傾斜面」のことを「上向きスロープ」と称することがある。また、「吹込口」とは、セメントキルン用バーナ装置におけるセメントキルン側の端部に対応する。
【0012】
本明細書内における、「可燃性廃棄物」とは、上述したように、廃プラスチック、木屑、ASRや、肉骨粉又はバイオマス等の有機質を主体とする燃焼性を有する一般廃棄物及び産業廃棄物等からなる、補助燃料としての焼成用燃料であって、固体粉末燃料(主燃料)と共にバーナの燃料として利用されることが想定されているものを指す。より具体的には、可燃性廃棄物の粒径は30mm以下である。また、「バイオマス」とは、化石燃料を除いた燃料として利用可能な生物由来の有機質資源であり、例えば、廃畳の粉砕物、建設廃木材の粉砕物、木粉及びおが屑等が該当する。
【0013】
上述したように、可燃性廃棄物流路は、吹込口(セメントキルン側端部)の近傍において、上向きスロープを備えている。この上向きスロープは、可燃性廃棄物流路を軸心に対して直交する面で切断したときの、軸心を含む水平面から鉛直方向の下側に位置する、可燃性廃棄物流路の底部に設置される。可燃性廃棄物流路内にこの上向きスロープが設置されることにより、可燃性廃棄物はセメントキルン内に上向き方向に噴出される。これによって、可燃性廃棄物吹込装置からセメントキルン内に吹き込まれる可燃性廃棄物(補助燃料)は、セメントキルン内での浮遊状態を長時間継続可能になると共に、セメントキルン内の遠方(窯尻側)に移動させられて、セメントクリンカ生成反応を阻害することなく燃焼を完了することができる。
【0014】
前記傾斜面は、前記可燃性廃棄物流路の軸方向に係る前記吹込口とは反対側の端部が、前記吹込口から150mm〜2000mm離れた箇所に位置しており、仰角が1°〜4°であるものとしても構わない。なお、傾斜面の吹込口側の端部は、吹込口に一致させていても構わないし、吹込口よりも数cm程度軸方向に離れた位置とした上で、この傾斜面から吹込口までの間は平坦面で構成されていても構わない。
【0015】
傾斜面の設置位置及び仰角を上記数値範囲内とすることで、内径が150mm〜200mmの一般的な大きさの可燃性廃棄物流路において、上向きスロープが設置されない場合の吹込口の面積S
0(cm
2)に対して、上向きスロープを設置した場合の吹込口の面積S(cm
2)の比S/S
0を、0.5よりも大きくすることができる。これにより、可燃性廃棄物流は、過剰な圧力損失を受けることなく、可燃性廃棄物流路からセメントキルン内に向けて放出される。
【0016】
前記可燃性廃棄物吹込装置は、前記可燃性廃棄物流路に前記傾斜面が形成されている箇所において、前記可燃性廃棄物流路の軸心に向かって前記可燃性廃棄物流路内に空気流(以下、「アシスト空気流」と称する。)を流入可能な、空気流入口(以下、「アシスト空気流入口」と称する。)を備え、
前記アシスト空気流入口は、周方向に関して複数の箇所に配置されているものとしても構わない。
【0017】
特に、前記アシスト空気流入口は、前記可燃性廃棄物流路の軸心に対して直交する面で切断したときの前記可燃性廃棄物流路の軸心を含む水平面を、鉛直方向に挟む複数の箇所に配置されているのが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、前記傾斜面(上向きスロープ)が形成されている箇所、すなわち、可燃性廃棄物流路の吹込口近傍において、可燃性廃棄物流路の軸心に向かってアシスト空気流が流入されるため、可燃性廃棄物は可燃性廃棄物流路の吹込口から、上向き方向に噴出されつつ、セメントキルン内で上下方向に適度に拡散しながら噴出される。これによって、可燃性廃棄物吹込装置の吹込口を囲むように位置する固体粉末燃料用流路からセメントキルン内に吹き込まれる主燃料と、可燃性廃棄物(補助燃料)との混合状態が良好になると共に、セメントクーラからセメントキルン内に供給される高温空気(二次空気)に対しても、主燃料と共に良好に混合され、これらが同時的に進行することで、可燃性廃棄物と主燃料とが適度に混合しながら効率的に燃焼できる環境がセメントキルン内に形成される。これにより、可燃性廃棄物の好適な燃焼環境が形成されるため、上述したように、セメントキルン内での可燃性廃棄物の燃焼速度が速まり、浮遊しているままで可燃性廃棄物の燃焼を完了させることができる。
【0019】
前記可燃性廃棄物吹込装置は、前記可燃性廃棄物流路の外側の位置において、前記可燃性廃棄物流路に対して平行に設置されたアシスト空気流路を備え、
前記アシスト空気流路は、前記アシスト空気流入口を介して前記可燃性廃棄物流路に連絡される一方、前記アシスト空気流入口よりも上流側においては前記可燃性廃棄物流路に対して遮蔽されているものとしても構わない。
【0020】
アシスト空気流路を通流する空気流量は、可燃性廃棄物流路を通流する可燃性廃棄物流を軸心方向に縮小した後に鉛直方向上向きに噴出させるよう、運転中に独立して制御可能に構成されているのが好ましい。これによって、使用する固体粉末燃料(主燃料)及び可燃性廃棄物(補助燃料)の種類や使用割合に変更が生じても、セメントキルン用バーナの最適な火炎状態を維持するための調整を、セメントキルン用バーナの運転を継続しながらも容易に行うことができる。
【0021】
上記構成において、可燃性廃棄物流路は、吹込口から所定の距離に、アシスト空気流路と連絡される複数個のアシスト空気流入口を備えている。このとき、各アシスト空気流入口を通じて可燃性廃棄物流路内に流入されるアシスト空気の流量は、各アシスト空気流路に連接されるブロアーや流量調整弁によって、アシスト空気流路毎に独立して制御可能に構成されるのが好ましい。
【0022】
更に、より好ましくは、可燃性廃棄物流路の軸心に対して直交する面で切断したときの前記軸心を含む水平面よりも鉛直方向下側に位置するアシスト空気流入口から可燃性廃棄物流路に対して流入される空気流量(「上向きアシスト空気流量」と称する。)は、前記水平面よりも鉛直方向上側から流入される空気流量(「下向きアシスト空気流量」と称する。)以上である。これにより、可燃性廃棄物は、可燃性廃棄物吹込装置の吹込口から、上向きスロープによる仰角よりも更に大きな仰角を持って放出されるため、上述したように、セメントキルン内での可燃性廃棄物の浮遊状態が長時間継続し、浮遊しているままで可燃性廃棄物の燃焼を完了させることができる。
【0023】
特に、アシスト空気流入口から可燃性廃棄物流路に対して流入される空気流量を調整したり、更には、上向きアシスト空気流量と下向きアシスト空気流量との比率を調整することで、セメントキルン用バーナで使用する補助燃料の割合[=(補助燃料)/(主燃料+補助燃料)]、及び/又は、補助燃料として使用される可燃性廃棄物の種類や性状が変化しても、セメントキルン用バーナからの火炎の形状や温度分布が変動しないように制御することができる。
【0024】
また、この上向きアシスト空気流量と下向きアシスト空気流量との比率が調整されることで、可燃性廃棄物をセメントキルン内に放出する際の仰角を実質的に調整することができる。すなわち、傾斜面(上向きスロープ)の仰角が不足している場合には、上向きアシスト空気流量の割合を高めることで、実質的に放出される可燃性廃棄物流の仰角を増加させて、セメントキルン内での可燃性廃棄物の浮遊状態を継続させる効果を高めることができる。
【0025】
更に、アシスト空気流入口は、可燃性廃棄物流路を軸心に対して直交する面で切断したときの、軸心を含む鉛直面を水平方向に挟む複数の箇所に配置されているものとしても構わない。これにより、可燃性廃棄物流が、左右方向からの等しい空気流量のアシスト空気流を受けることで、鉛直方向(上下方向)に加えて左右方向にも絞られ、可燃性廃棄物吹込装置から吹き出された後のセメントキルン内での可燃性廃棄物が浮遊しつつ拡散する状態が上下左右の全周方向で良好に生じる。このことによって、前述の主燃料や二次空気と可燃性廃棄物との良好な混合状態が、全周にわたって、より確実に形成される。
【0026】
前記アシスト空気流入口は、前記可燃性廃棄物流路の前記吹込口から10mm〜600mmの範囲に設置されているものとしても構わない。この範囲であれば、内径が150mm〜200mmの一般的な大きさの可燃性廃棄物流路を備え、一般的な一次空気流量(60m
3/分〜120m
3/分)で運転される可燃性廃棄物吹込装置において、可燃性廃棄物を浮遊状態のままで燃焼を完了促進できる。なお、アシスト空気流入口は、円周状に1周にわたって配置しても構わないし、2周以上にわたって、すなわち複数列に配置しても構わない。
【0027】
アシスト空気流入口は、一次空気によって送流される可燃性廃棄物の流れ(可燃性廃棄物流)を、軸心方向に絞るものであれば、その形状は限定されない。なお、アシスト空気による絞り効果が得られやすいという観点からは、アシスト空気流入口は、直径が5mm〜25mmの円形状か、周方向を長辺とし流路方向を短辺とする短辺3mm〜15mmの長方形状(スリット状)が好ましい。アシスト空気流入口を円形状とする場合、円周上に等間隔に配置しても構わないし、非等間隔に配置しても構わない。後者の場合には、可燃性廃棄物流路を軸心に対して直交する面で切断したときの鉛直軸と可燃性廃棄物流路の内面との交差点(頂部及び底部)付近の分布が高くなるような非等間隔の配置とするのが好適である。
【0028】
更に、前記アシスト空気流入口は、前記可燃性廃棄物流路内を送流する前記可燃性廃棄物流の送流方向を基準としたときの、前記可燃性廃棄物流路内に流入される前記アシスト空気流の流入角を調整可能な、アシスト空気送入具を備えるものとしても構わない。
【0029】
また、本発明は、前記可燃性廃棄物吹込装置の運転方法であって、前記可燃性廃棄物流が、水平面よりも鉛直方向上向きに前記可燃性廃棄物流路から噴出されることを特徴とする。
【0030】
このとき、定常運転時の仰角を上向きスロープで付与しつつ、前記水平面よりも鉛直方向下側から流入される上向きアシスト空気流量が、前記水平面よりも鉛直方向上側から流入される下向きアシスト空気流量以上とするのが好適である。この場合において、前記上向きアシスト空気流量に対する前記下向きアシスト空気流量の比が、0.5〜1.0とするのが好ましい。なお、上向きアシスト空気流量に対する下向きアシスト空気流量の比が1.0の場合には、アシストエアによる前記可燃性廃棄物流への仰角付与の効果は生じないが、かかる可燃性廃棄物流を絞ることによって可燃性廃棄物がセメントキルン内で拡散する効果が得られる。
【0031】
また、前記アシスト空気流入口から前記可燃性廃棄物流路に対して流入される空気流量の合計量(m
3/分)は、前記可燃性廃棄物流路を流れる一次空気流量(m
3/分)の5体積%〜65体積%とすることができる。なお、可燃性廃棄物吹込装置の運転方法において、可燃性廃棄物流路を流れる一次空気流量に制約はなく、通常の運転条件を採用することができる。
【0032】
また、前記可燃性廃棄物流路内を送流する前記可燃性廃棄物流の送流方向を基準としたときの、前記可燃性廃棄物流路内に流入される前記アシスト空気流の流入角は、0°よりも大きく、90°以下であるものとしても構わない。かかる構成によれば、アシスト空気流は、可燃性廃棄物流の送流方向に対して反対向きに衝突することが抑制されるため、可燃性廃棄物流の流れを必要以上に妨げることなく、可燃性廃棄物流を軸心方向に縮小した状態で吹込口から噴出させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の可燃性廃棄物吹込装置、及びその運転方法によれば、セメントキルン用バーナからの火炎の状態を最適な状態に維持しながら、固体粉末燃料(主燃料)と廃プラスチック片などの可燃性廃棄物(補助燃料)の使用割合を任意に変更することが可能であると共に、例えば粒径30mm以下の可燃性廃棄物(補助燃料)を有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の可燃性廃棄物吹込装置及びその運転方法の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面は模式的に示されたものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と一致していない。
【0036】
図1は、本発明の可燃性廃棄物吹込装置が附設されたセメントキルン用バーナ装置の一実施形態の先端部の中心部分を模式的に示す図面である。
図1において、(a)は、附設された可燃性廃棄物吹込装置を含むセメントキルン用バーナ装置の横断面図であり、(b)は、同縦断面図である。なお、横断面図とは、セメントキルン用バーナ装置を、同装置の軸方向に直交する平面で切断した断面図を指し、縦断面図とは、セメントキルン用バーナ装置を、同装置の軸方向に平行な平面で切断した断面図を指す。
【0037】
なお、
図1においては、セメントキルン用バーナ装置の軸方向(一次空気流の方向)をY方向とし、鉛直方向をZ方向とし、YZ平面に直交する方向をX方向として座標系を設定している。以下では、このXYZ座標系を適宜参照しながら説明する。このXYZ座標系を用いて記載すれば、
図1(a)は、セメントキルン用バーナ装置をXZ平面で切断したときの断面図に対応し、
図1(b)は、セメントキルン用バーナ装置をYZ平面で切断したときの断面図に対応する。より詳細には、
図1(b)は、セメントキルン用バーナ装置を、セメントキルン側端部(セメントキルン用バーナ装置の先端面)において、YZ平面で切断したときの断面図に対応する。
【0038】
なお、後述される、
図2A〜
図4B、
図6〜
図7で図示されているXYZ座標系は、いずれも
図1で図示されているXYZ座標系と同じ軸関係である。
【0039】
図1(a)に示されるように、セメントキルン用バーナ装置1に附設される可燃性廃棄物吹込装置2の可燃性廃棄物流路3は、セメントキルン用バーナ装置1において同心円状に配置する固体粉末燃料用流路21と、固体粉末燃料用流路21に隣接して内側に配置された少なくとも1つの空気流路22の内側に配置される。可燃性廃棄物吹込装置2の可燃性廃棄物流路3に隣接して、空気流路22の内側には、重油等を供給するための油用流路31等を配置することができる。
【0040】
なお、
図1では、空気流路22は、セメントキルン側端部(吹込口側近傍)において、旋回手段としての旋回羽根22aを有している。すなわち、空気流路22から噴出される空気流は、固体粉末燃料用流路21から噴出される固体粉末燃料流に対して内側に位置する旋回空気流を形成する。この旋回羽根22aは、セメントキルン用バーナ装置1の運転開始前の時点において、旋回角度が調整可能に構成されているものとしても構わない。
【0041】
図1(b)に示されるように、セメントキルン用バーナ装置1の内部において、鉛直方向(Z方向)に関し、可燃性廃棄物流路3の底面は、吹込口側近傍において上向きスロープ8が形成されている。この上向きスロープ8が「傾斜面」に対応する。更に、本実施形態では、
図1(b)に示されるように、セメントキルン用バーナ装置1の内部において、可燃性廃棄物流路3の外側にはアシスト空気流路4が備えられ、アシスト空気流入口5を経由してアシスト空気が可燃性廃棄物流路3内に流入可能に構成されている。この点については、
図2A及び
図2Bを参照して後述される。
【0042】
上向きスロープ8は、可燃性廃棄物流路3の底面が傾きを有して形成される限りにおいて、その具体的な態様方法については限定されない。一例として、Y方向に係る所定の領域内において、可燃性廃棄物流路3の底部に対応する内壁の厚みが徐々に厚くなるように形成されることで、可燃性廃棄物流路3の内壁面自体が上向きスロープ8を形成するものとしても構わない。別の一例として、Y方向に係る所定の領域内において、可燃性廃棄物流路3の底部に対応する内壁に、Y方向に進むに連れて徐々に高さが変化する別部材が設けられることで、当該別部材の表面が上向きスロープ8を形成するものとしても構わない。いずれの場合であっても、可燃性廃棄物流路3に上向きスロープ8が形成される結果、可燃性廃棄物流路3の鉛直方向に係る流路幅が、吹込口に近づくに連れて狭くなるように形成される。
【0043】
図2A及び
図2Bは、本発明の可燃性廃棄物吹込装置2の一実施形態の先端部を模式的に示す図面である。
図2Aは、可燃性廃棄物吹込装置2の縦断面図であり、
図2Bは、
図2A内のY座標がY1の位置(以下、単に「Y1の位置」と略記する。)における横断面図((a)に対応)、及びY座標がY2の位置(以下、単に「Y2の位置」と略記する。)における横断面図((b)に対応)である。Y1の位置は、可燃性廃棄物流路3の先端部近傍(すなわち吹込口近傍)に対応し、Y2の位置は、Y1の位置よりも上流側であって、可燃性廃棄物流路3の先端部から離れた位置に対応する。
【0044】
図2Aに示されるように、可燃性廃棄物流路3の底面には上向きスロープ8が形成されている。この上向きスロープ8は、水平面(XY平面)に対する仰角φ(傾斜角)が、1°〜4°である。また、この上向きスロープ8は、Y方向に関して、吹込口から150mm〜2000mm離れた箇所から、吹込口に向かって形成されている。
【0045】
更に、本実施形態においては、
図2Bに示されるように、可燃性廃棄物流路3の外側にはアシスト空気流路4が配置される。より詳細には、本実施形態におけるアシスト空気流路4は、円筒形状を呈した可燃性廃棄物流路3の外側に同心円状に配置され、仕切部材6によって、鉛直上側のアシスト空気流路4−1と鉛直下側のアシスト空気流路4−2の2流路に分割されている。
【0046】
図2B(b)に示されるように、Y2の位置には、アシスト空気流路4(4−1,4−2)と可燃性廃棄物流路3とを連絡する、アシスト空気流入口5が設置されており、アシスト空気流路4を流れてきたアシスト空気を、可燃性廃棄物流路3の軸心3cに向かって、可燃性廃棄物流路3内に流入可能に構成されている。本実施形態では、可燃性廃棄物流路3は、Y2の位置において、周方向の10箇所に配置されたアシスト空気流入口5(5−1〜5−10)を備えている。より詳細には、アシスト空気流路4−1側(鉛直上側)には5個のアシスト空気流入口(5−1〜5−3、5−9、5−10)が配置されており、アシスト空気流路4−2側(鉛直下側)には5個のアシスト空気流入口(5−4〜5−8)が配置されている。
【0047】
なお、
図2Aでは、図示の都合上、10個のアシスト空気流入口5(5−1〜5−10)のうちの、アシスト空気流入口(5−1,5−6)のみが図面上に現れている。
【0048】
アシスト空気流路(4−1,4−2)には、それぞれ専用ブロアー(不図示)または流量調整弁(不図示)が連接されており、各アシスト空気流路(4−1,4−2)に送入されるアシスト空気流量を独立して制御することが可能になっている。
【0049】
図3は、
図2Aに示した本発明の可燃性廃棄物吹込装置2の一実施形態の先端部について、アシスト空気流入口(5−1,5−6)の周辺を拡大して模式的に示す図面である。
【0050】
図3に示されるように、可燃性廃棄物流路3とアシスト空気流路4を連絡するアシスト空気流入口(5−1,5−6)には、アシスト空気送入具7が設置されている。このアシスト空気送入具7は、可燃性廃棄物流路3内を流れる可燃性廃棄物RFの方向に対して、可燃性廃棄物流路3内に流入されるアシスト空気AAの方向が作る流入角θ(θ1,θ2)を制御するために備えられている。なお、
図3では、流入角θ=θ1とした場合と、流入角θ=θ2とした場合のアシスト空気送入具7のそれぞれの態様が模式的に図示されている。
【0051】
流入角θは0°よりも大きく90°以下とすることができる。アシスト空気AAの流入角θが0°の場合、アシスト空気AAによって可燃性廃棄物RFの流れを変化させる効果はほとんど得られず、また流入角θが90°を超える場合は、アシスト空気AAによって可燃性廃棄物RFの流れが減速すると共に過剰に撹拌されてしまうために、それぞれ好ましくない。
【0052】
図4A及び
図4Bは、本発明の可燃性廃棄物吹込装置2の別の一実施形態の先端部を模式的に示す図面である。
図4Aは、
図2Aと同様に、可燃性廃棄物吹込装置2の縦断面図であり、
図4Bは、
図2Bと同様に、
図4A内のY1の位置における横断面図((a)に対応)、及びY2の位置における横断面図((b)に対応)である。なお、図示の都合上、
図4Aには、アシスト空気流入口5が図示されていない。
【0053】
図4Bに示す実施形態では、可燃性廃棄物流路3は、Y2の位置において、周方向の6箇所に配置されたアシスト空気流入口5(5−11〜5−16)を備えている。そして、可燃性廃棄物流路3は、それぞれのアシスト空気流入口(5−11〜5−16)毎に、専用のアシスト空気流路(4−3〜4−8)を備えている。これによって、アシスト空気流路4−3〜4−8に対して、それぞれ専用ブロアー(不図示)又は流量調整弁(不図示)を連接することによって、各アシスト空気流路(4−3〜4−8)に供給されるアシスト空気流量を独立して制御可能に構成されている。この点につき、
図5を参照して説明する。
【0054】
図5は、
図4に示す可燃性廃棄物吹込装置の構造の一例を模式的に示す図面である。
図5に図示された可燃性廃棄物吹込装置2は、制御のし易さを重視して構成したものであって、3基の送風ファン(F1〜F3)と、6個の流量調整弁(B113,B114,B118,B135,B136,B137)を備える。流量調整弁(B113,B114,B118,B135,B136,B137)は、例えばガスバルブなどで構成される。
【0055】
可燃性廃棄物搬送配管12に供給された可燃性廃棄物RFは、送風ファンF1によって形成された空気流により、可燃性廃棄物吹込装置2の可燃性廃棄物流路3に供給される。送風ファンF2から供給される空気は、アシスト空気AAとして、空気配管11を介してアシスト空気流路4(4−3,4−4,4−8)へ供給される。より詳細には、空気配管11は、3個の分岐管(113,114,118)によって分岐されており、各分岐管は、前記3本のアシスト空気流路(4−3,4−4,4−8)にそれぞれ連絡されている。同様に、送風ファンF3からアシスト空気AAを供給している空気配管13は、3個の分岐管(135,136,137)によって分岐されて3本のアシスト空気流路(4−5,4−6,4−7)に連絡されている。
【0056】
各分岐管(113,114,118,135,136,137)には、それぞれ可変式の流量調整弁(B113,B114,B118,B135,B136,B137)が設けられており、かかる各流量調整弁の開度を調整することで、各分岐管(113,114,118,135,136,137)を通流するアシスト空気AAの流量を独立して制御することが可能である。
【0057】
すなわち、
図4A、
図4B及び
図5に示す可燃性廃棄物吹込装置2の場合、それぞれのアシスト空気流路4(4−3〜4−8)に対応して、アシスト空気流入口5(5−11〜5−16)が設けられているため、アシスト空気流入口5(5−11〜5−16)毎にアシスト空気AAの流量を独立して制御できる。これにより、セメントキルン用バーナからの火炎の状態を最適な状態に維持しながら、固体粉末燃料(主燃料)と可燃性廃棄物(補助燃料)の使用割合を任意に変更することが容易にできる。
【0058】
更に、可燃性廃棄物流路3の吹込口近傍には、底面に上向きスロープ8が形成されているため、水平面(XY平面)よりも鉛直上向き(+Z方向)に、可燃性廃棄物流路3から可燃性廃棄物流を噴出させることができる。これにより、セメントキルン内における可燃性廃棄物の浮遊状態を長く継続させることが可能となる。
【0059】
すなわち、
図6に示すように、本発明に係る可燃性廃棄物吹込装置2は、可燃性廃棄物流路3の底面に上向きスロープ8を備えつつ、アシスト空気流路4及びアシスト空気流入口5を備えないものとしても構わない。ただし、
図1に示す可燃性廃棄物吹込装置2のように、アシスト空気流路4及びアシスト空気流入口5を備えて、アシスト空気AAを可燃性廃棄物流路3の軸心方向に向かって流入させることで、可燃性廃棄物流を更に鉛直上向きに噴出させる効果を調整できるため、セメントキルン内における可燃性廃棄物RFの浮遊状態を好適な状態にする効果が更に高められる。
【0060】
本発明者らは、可燃性廃棄物吹込装置2が附設されたセメントキルン用バーナ装置1の燃焼シミュレーション(ソフトウェア:ANSYSJAPAN社製、FLUENT)によって、セメントキルン用バーナからの火炎形状、セメントキルン内のガス温度分布、セメントキルン内の酸素濃度分布、セメントキルン内の気流の乱流の程度の解析等を行うことにより、可燃性廃棄物吹込装置2の制御因子を最適化するための基本的な限定領域を見出した。
【0061】
図7は、本シミュレーションで用いられた、可燃性廃棄物吹込装置2を含むセメントキルン用バーナ装置1の構造を、
図1にならって模式的に図示したものである。
図7に示すセメントキルン用バーナ装置1は、
図1に示す構成に加えて、更に、固体粉末燃料用流路21よりも外側に配置され、旋回羽根23aが配置された空気流路23と、空気流路23よりも更に外側に配置された空気流路24とを備えている。空気流路24は、直進空気流を形成する流路である。すなわち、シミュレーションによる検証対象のセメントキルン用バーナ装置1は、
図7(a)に示すように、内側から、旋回空気流を形成する空気流路22、旋回主燃料流を形成する固体粉末燃料用流路21、旋回空気流を形成する空気流路23、及び直進空気流を形成する空気流路24の合計4つの流路を備えた、いわゆる4チャンネル式のバーナ装置とした。
【0062】
なお、後述する実施例1は、
図7に示すセメントキルン用バーナ装置1から、アシスト空気流路4及びアシスト空気流入口5を備えないものとした構造であり、
図6のセメントキルン用バーナ装置1を4チャンネル式としたものに対応する。
【0063】
下記表1は、以下のセメントキルン用バーナ装置1の仕様及び運転条件において見出した、可燃性廃棄物吹込装置2に係る基本的限定領域の一例である。なお、表1は、
図2に例示した可燃性廃棄物吹込装置2の実施形態に対応する。
【0064】
<セメントキルン用バーナ装置1の仕様>
チャンネル数:4チャンネル(最内殻側から、旋回空気流、旋回主燃料流、旋回空気流、直進空気流)
可燃性廃棄物吹込装置2:旋回空気流を形成する空気流路22の内側に配置されており、セメントキルン用バーナ装置1の軸心下側に附設されている。
セメントキルン用バーナ装置1のバーナ先端の直径:700mm
可燃性廃棄物吹込装置2の吹込口の内径:175mm
上向きスロープ8の形成領域:可燃性廃棄物流路3の吹込口(端部)から−Y方向に300mm進んだ位置から、吹込口(端部)までの領域
アシスト空気流入口5:鉛直方向上側及び下側に直径16mmの円形孔を各5個(鉛直軸に対し±60°の範囲に30°間隔)
【0065】
<セメントキルン用バーナ装置1の運転条件>
固体粉末燃料用流路21を流れる主燃料Cの燃焼量:12t/時間
可燃性廃棄物RFとしての廃プラスチック(軟質プラスチック)処理量:5t/時間
可燃性廃棄物RFとしての廃プラスチックの寸法:厚さ0.5mmシートを直径30mmに打ち抜いた円形シート状
一次空気流量(4チャンネルの合計量)と温度:15000Nm
3/時間、30℃
二次空気流量と温度:100000Nm
3/時間、900℃
可燃性廃棄物吹込装置2からの一次空気流量と温度:5000Nm
3/時間、30℃
可燃性廃棄物吹込装置2からのアシスト空気AAの吹込方法と温度:可燃性廃棄物吹込装置2からの一次空気流量は上記値のままでアシスト空気AAを追加する、30℃
【0067】
表1には、基本的限定領域として、上向きスロープ8の仰角φ(°)、アシスト空気AAの流量(可燃性廃棄物吹込装置2の一次空気流量に対する、全てのアシスト空気流量の体積%)、軸心を含む水平面よりも鉛直上側から流入されるアシスト空気流量と軸心を含む水平面よりも鉛直下側から流入される各アシスト空気流量の比率r[(下向きアシスト空気流量)/(上向きアシスト空気流量)]、アシスト空気流入口5の可燃性廃棄物流路3の端部からの距離(mm)、及びアシスト空気流入口5から可燃性廃棄物流路3に対して流入されるアシスト空気AAの流入角(°)が列挙されている。
【0068】
上記各項目の中では、上向きスロープ8の仰角φ、アシスト空気AAの流量、アシスト空気流入口5の位置、及びアシスト空気AA量の上下方向の比率rが重要である。
【0069】
なぜなら、上述したように、セメントキルン用バーナ装置1に用いられる燃料構成に変化が生じても安定した火炎を得るための調整を容易にするためには、可燃性廃棄物RF、主燃料C、及び二次空気の良好な混合状態の形成が必要であるところ、アシスト空気AAの流量を調整することで、可燃性廃棄物流路3を流れる可燃性廃棄物流の絞りの程度を調整でき、これによって可燃性廃棄物吹込装置2から噴出される可燃性廃棄物RFの拡散の程度を運転中に独立して調整することができるからである。
【0070】
かかる事情に鑑み、単位時間にアシスト空気流入口5から可燃性廃棄物流路3に対して流入されるアシスト空気AAの流量V(Nm
3/時間)は、可燃性廃棄物流路3を流れる一次空気流量V
0(Nm
3/時間)の5体積%〜65体積%であるのが好ましい。V/V
0が5体積%未満の場合、アシスト空気AAによる可燃性廃棄物流の絞り効果が得られず、また、V/V
0が65体積%を超える場合、可燃性廃棄物流の拡散の程度が大きくなって、一部の可燃性廃棄物RFがセメントキルンの上部内壁に衝突してしまうことがある。そして、このように可燃性廃棄物RFの一部がキルン内壁に衝突する程に可燃性廃棄物が拡散するような場合は、セメントキルン用バーナの火炎形状が大きく乱れてしまい、セメントクリンカの品質が不安定になると共に、セメントキルン内の耐火レンガの熱損耗が大きくなる。
【0071】
また、可燃性廃棄物吹込装置2から噴出する可燃性廃棄物RFの拡散の程度は、アシスト空気AAの流量が一定の場合には、アシスト空気流入口5の位置(より詳細には、Y方向の位置)を変えることによって調整することができる。
【0072】
かかる事情に鑑み、可燃性廃棄物流路3の吹込口(端部)からアシスト空気流入口5までのY方向に係る距離は、10mm〜600mmの範囲であるのが好ましい。かかる距離が10mm未満の場合、可燃性廃棄物RFの流れの拡散の程度が大きくなって、一部の可燃性廃棄物RFがセメントキルンの上部内壁に衝突してしまうことがある。また、可燃性廃棄物流路3の吹込口からアシスト空気流入口5までのY方向に係る距離が600mmを超える場合、アシスト空気AAによる可燃性廃棄物RFの拡散の効果が消失する場合がある。
【0073】
アシスト空気AAの導入の有無に関わらず、可燃性廃棄物流路3の底面に設けられた上向きスロープ8の仰角φを調整することでも、可燃性廃棄物流路3から噴出される可燃性廃棄物流の噴出角度を調整できる。可燃性廃棄物流の噴出角度が適切に調整されることで、セメントキルン内における可燃性廃棄物RFの浮遊状態を長時間継続することができる。
【0074】
かかる事情に鑑み、上向きスロープ8の角度(仰角φ)は、1°〜4°の範囲であるのが好ましい。上向きスロープ8の仰角φが1°未満の場合、可燃性廃棄物流を上向きにする作用をアシスト空気AAのみで行う必要があり、アシスト空気AAの吹込みに要するエネルギー量が過剰に必要になる。また、上向きスロープ8の仰角φが4°よりも大きい場合、アシスト空気AAによる拡散効果が過剰に加わる結果、一部の可燃性廃棄物RFがセメントキルンの上部内壁に衝突してしまうおそれが生じる。
【0075】
また、アシスト空気AAの流量の上下方向の比率が重要なのは、下向きアシスト空気流量と上向きアシスト空気流量の比率を調整することで、可燃性廃棄物RFが噴出する方向の上下を調整することが可能になり、これによって可燃性廃棄物吹込装置2から噴出される可燃性廃棄物RFの向きを、更に鉛直上向きにできるからである。この結果、アシスト空気AAによって良好な拡散状態で噴出される可燃性廃棄物RFの浮遊状態を、更に好適な状態に調整することができる。
【0076】
かかる事情に鑑み、軸心を含む水平面よりも鉛直下側から流入される上向きアシスト空気流量に対する、軸心を含む水平面よりも鉛直上側から流入される下向きアシスト空気流量の比率rは、0.5〜1.0の範囲とするのが好ましい。比率rが0.5未満の場合、可燃性廃棄物流の下側からの吹き上げが大きくなって、一部の可燃性廃棄物RFがセメントキルンの上部内壁に衝突してしまうことがある。また、比率rが1.0よりも大きい場合、すなわち、上向きアシスト空気流量よりも下向きアシスト空気流量の方が大きい場合には、可燃性廃棄物流に下向きの力が与えられ、上向きスロープによる上向き効果と合わさって、可燃性廃棄物流に大きな擾乱を生じさせる場合がある。
【0077】
以上のように、本発明によれば、可燃性廃棄物吹込装置2の運転前に、上向きスロープ8の仰角φ、アシスト空気流入口5の位置及び流入角θを表1に示した範囲内に設定し、更に、可燃性廃棄物吹込装置2の運転時に、送風ファン及び/又は流量調整弁などによってアシスト空気流量V、及びアシスト空気流量の上下方向からの比率rの調整を行うことにより、可燃性廃棄物吹込装置2の運転条件を最適化して、セメントキルン用バーナの火炎状態を安定化することができる。なお、アシスト空気流路4及びアシスト空気流入口5を備えない、
図6に示す態様の可燃性廃棄物吹込装置2の場合には、上向きスロープ8の仰角φを調整することで、セメントキルン用バーナの火炎状態を安定化することができる。
【0078】
次に、表1の各項目を変化させた場合の、可燃性廃棄物RF(ここでは軟質プラスチック)が着地燃焼する割合(キルン内落下率)に係る燃焼シミュレーションについて説明する。
【0079】
具体的には、前述のセメントキルン用バーナ装置1の仕様と運転条件を固定した場合において、表1の各項目を変化させた場合についてシミュレーション(ソフトウェア:ANSYS JAPAN社製:FLUENT)によって検証した。シミュレーションにおける各項目の設定値を表2に示す。なお、上向きスロープ8を備えず、アシスト空気AAを用いない現状の例(比較例)としては、可燃性廃棄物RF処理量を2水準(5t/時間、2t/時間)設定した。
【0080】
このシミュレーションの結果として得られた、可燃性廃棄物RF(直径30mm、厚さ0.5mmの軟質プラスチック)のキルン内落下率を表3に、実施例1〜5と比較例1〜2のキルン内のガス温度分布を
図8に示す。
【0083】
表3の結果によれば、各実施例1〜5の水準において、可燃性廃棄物RFの処理量の条件を5t/時間で共通とした比較例1の水準よりも、可燃性廃棄物RFのキルン内落下率を十分に低下できていることが確認される。すなわち、アシスト空気AAを利用しない実施例1においても、現状の運転条件である比較例1よりはキルン内落下率が低下できておいるところ、上向きスロープ8を設けることで可燃性廃棄物RFの着地燃焼を抑制する効果が得られることが確認される。更に、上向きスロープ8に加えて、アシスト空気AAを導入した実施例2〜5によれば、いずれも実施例1と比べて更にキルン内落下率が低下されている。
【0084】
実施例3〜5によれば、比較例1と比べてキルン内落下率の値を1/3以下に低減できており、特に実施例5によればキルン内落下率0%が達成されている。これにより、本発明の可燃性廃棄物吹込装置、及び可燃性廃棄物吹込装置の運転方法によれば、可燃性廃棄物RFを有効に燃焼させることができることが確認される。
【0085】
また、
図8に示すセメントキルン内のガスの温度分布において、各実施例1〜5のガスの温度分布は、現状の運転条件で可燃性廃棄物RFの処理量を2t/時間とした、比較例2の場合とほぼ同じである。比較例2の運転条件は、可燃性廃棄物RFの供給量を各実施例よりは少なくしたものであり、可燃性廃棄物RFのキルン内落下率が0.5質量%と、良好なキルンバーナ燃焼状態のものである。一方、現状の運転条件で、本実施例と同じ可燃性廃棄物RF処理量(5t/時間)である比較例1では、セメントキルン内のガスの温度が大きく低下すると同時に、可燃性廃棄物RFのキルン内落下率が3.0質量%と多量の可燃性廃棄物RFが着地燃焼している。すなわち、本発明によれば、セメントキルン内のガスの温度分布を大きく変えることなく、可燃性廃棄物RFを補助燃料として活用できることが確認される。
【0086】
つまり、本発明によれば、セメントキルン用バーナを最適な燃焼状態を保持しつつ、可燃性廃棄物を補助燃料として活用することを容易に行えることが分かる。
【0087】
なお、可燃性廃棄物吹込装置が備えるアシスト空気流入口の設置数や設置場所は、上記実施形態の構成に限定されない。
可燃性廃棄物の着地燃焼を抑制すると共に、可燃性廃棄物の使用割合が変動してもセメントキルン用バーナからの火炎の状態が過剰に変化することを抑制できる、可燃性廃棄物吹込装置及びその運転方法を提供する。
本発明に係る可燃性廃棄物吹込装置は、最内殻の前記空気流路の内側に配置され、前記セメントキルン用バーナ装置の軸方向に平行に設置された、可燃性廃棄物流を送流させるための可燃性廃棄物流路を有し、可燃性廃棄物流路は、吹込口近傍において、吹込口に近づくに連れて鉛直方向に係る流路幅が狭くなるように吹込口に向かって上り勾配を呈した傾斜面を有している。