特許第6704557号(P6704557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704557樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンク
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  • 特許6704557-樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンク 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6704557
(24)【登録日】2020年5月14日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンク
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20200525BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20200525BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20200525BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20200525BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B32B27/00 D
   B32B27/32 C
   B32B27/32 101
   C08L23/26
   C08L59/00
   C08K5/3492
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-512059(P2020-512059)
(86)(22)【出願日】2019年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2019033622
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-160611(P2018-160611)
(32)【優先日】2018年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】藤本 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】松本 律哉
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−109401(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051881(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/026259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00− 23/36
C08L 59/00− 59/04
C08K 3/00− 13/08
B32B 27/00− 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられ、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体と、それぞれ接している中間層とを有し、
前記中間層が樹脂成分とメラミンとを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂成分が、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、
前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20〜49:80〜51であり、
前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度が5〜25μmol/gである、樹脂組成物から形成される、複合成形体
前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度とは、無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度(μmol/g)とメラミン由来のアミノ基のモル濃度(μmol/g)の内、小さい方の値または同値の場合はその数値を指す。
【請求項2】
メラミンの含有量が組成物中0.005〜1質量%である、請求項1に記載の複合成形体。
【請求項3】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の無水マレイン酸変性率が0.10〜1.0質量%である、請求項1または2に記載の複合成形体。
【請求項4】
前記ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが60g/10分以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項5】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが10g/10分以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項6】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の密度が0.954g/cm3以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項7】
ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の質量比率が20〜40:60〜80である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法であって、
前記ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体と、中間層とを、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体との間に中間層が配置されるように積層することを含む、複合体形成体の製造方法。
【請求項9】
脂組成物から形成された中間層の一方の表面に、ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程と、前記中間層の他の一方の表面にポリエチレン樹脂成形体を成形する工程とを含む、複合体形成体の製造方法であって、
前記樹脂組成物が樹脂成分とメラミンとを含み、
前記樹脂成分が、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、
前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20〜49:80〜51であり、
前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度が5〜25μmol/gである、複合成形体の製造方法;
前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度とは、無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度(μmol/g)とメラミン由来のアミノ基のモル濃度(μmol/g)の内、小さい方の値または同値の場合はその数値を指す。
【請求項10】
前記ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程は、ポリアセタール樹脂を含む組成物を溶融状態で前記中間層に接触させて成形する工程であり、
前記ポリエチレン樹脂成形体を成形する工程は、ポリエチレン樹脂を含む組成物を溶融状態で前記中間層に接触させて成形する工程である、請求項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項11】
メラミンの含有量が組成物中0.005〜1質量%である、請求項9または10に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項12】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の無水マレイン酸変性率が0.10〜1.0質量%である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項13】
前記ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが60g/10分以下である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項14】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが10g/10分以下である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項15】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の密度が0.954g/cm3以下である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項16】
ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の質量比率が20〜40:60〜80である、請求項9〜15のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項17】
前記ポリアセタール樹脂成形体と、前記中間層と、前記ポリエチレン樹脂成形体を、3色成形またはインサート成形によって成形する、請求項9〜16のいずれか1項に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合成形体を含むタンク。
【請求項19】
燃料およびアルコール類の少なくとも1種を保存するために用いられる、請求項18に記載のタンク。
【請求項20】
ガソリン、軽油またはバイオディーゼルを含む燃料を保存するために用いられる、請求項19に記載のタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物、ペレットおよび複合成形体に関する。特に、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体を接合するための樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックであるポリアセタール樹脂は、機械的特性、電気的特性、摺動性および耐薬品性に優れているため、例えば自動車部品、電気・電子機器部品、OA部品などに広く利用されている。これらの中で、特にポリアセタール樹脂の優れた耐薬品性を生かした用途として、自動車の燃料タンクに接続されるフランジ、バルブ、チューブ等、ガソリンなどの燃料と直接接触する燃料タンク接続用部品が挙げられる。
【0003】
一方、近年、車体を軽量化して燃費を向上させる目的で、自動車の燃料タンクの材料としてポリエチレン樹脂が使用されるようになっている。
【0004】
ここで、ポリエチレン樹脂を使用した燃料タンクに上記のポリアセタール樹脂製の燃料タンク接続用部品を取り付ける方法としては、例えばポリアセタール樹脂とポリエチレン樹脂とを溶接させる方法等が知られている。しかしながら、ポリアセタール樹脂とポリエチレン樹脂との界面の溶着性は通常は低く、溶着部分が外力によって容易に剥離し、樹脂間の界面から揮発燃料が漏洩してしまうという問題があった。特に、燃料は高い揮発性を有し、大気汚染の原因となり得るため、このような燃料の漏洩は世界的に規制されつつある。そこで、ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体とを接着して一体化することができる技術の開発が強く望まれていた。
【0005】
ポリアセタール樹脂と異種材質材料が一体化された例として、下記特許文献1には、以下の構造体が記載されている。
2種以上の樹脂成分から構成される熱可塑性樹脂接合構造体において、となりあった2つの成分が下記に示す(A)成分および(B)成分である構造を、少なくとも1つ以上有することを特徴とする熱可塑性樹脂接合構造体。
(A)成分;(A)成分の総質量に対して、5〜80質量%のポリアセタール樹脂(以下(A−1)成分という)と、(A)成分の総質量に対して20〜95質量%のポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー、或いは、水素添加されたブタジエン系のエラストマーから選ばれる1種以上の樹脂組成物(以下(A−2)成分という)とからなる樹脂組成物。
(B)成分;熱可塑性樹脂
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリアセタール樹脂の成形体とポリエチレン樹脂の成形体とを一体化する技術として、両者の間に中間層を設ける技術に着目し、その中間層を構成する材料について研究を進めた。そして、その材料として、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂とを含有する樹脂組成物が高い効果を示すことを確認した。しかしながら、上記の配合の樹脂材料においては、樹脂成分の配合比率により接着性において十分な性能が発揮されないこと、ホルムアルデヒドが発生してしまう場合や、成形時の金型に付着物が残存してしまうモールドデポジットの問題が発生する場合があることが分かってきた。
本発明は、上記課題を解決することを目的とするものであって、ポリアセタール樹脂の成形体とポリエチレン樹脂の成形体の強固な接着および一体化を実現することができ、かつ、ホルムアルデヒドの発生やモールドデポジットの発生を抑制することができる樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<16>により、上記課題は解決されることを見出した。
<1>樹脂成分とメラミンとを含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分が、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20〜49:80〜51であり、前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度が5〜25μmol/gである、樹脂組成物;前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度とは、無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度(μmol/g)とメラミン由来のアミノ基のモル濃度(μmol/g)の内、小さい方の値または同値の場合はその数値を指す。
<2>メラミンの含有量が組成物中0.005〜1質量%である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の無水マレイン酸変性率が0.10〜1.0質量%である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが60g/10分以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが10g/10分以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の密度が0.954g/cm以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の質量比率が20〜40:60〜80である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されたペレット。
<9>ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられ、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体と、それぞれ接している中間層とを有し、前記中間層が<1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成される、複合成形体。
<10><9>に記載の複合成形体の製造方法であって、前記ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体と、中間層とを、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体との間に中間層が配置されるように積層することを含む、複合体形成体の製造方法。
<11><1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された中間層の一方の表面に、ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程と、前記中間層の他の一方の表面にポリエチレン樹脂成形体を成形する工程とを含む、複合体形成体の製造方法。
<12>前記ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程は、ポリアセタール樹脂を含む組成物を溶融状態で前記中間層に接触させて成形する工程であり、前記ポリエチレン樹脂成形体を成形する工程は、ポリエチレン樹脂を含む組成物を溶融状態で前記中間層に接触させて成形する工程である、<11>に記載の複合成形体の製造方法。
<13>前記ポリアセタール樹脂成形体と、前記中間層と、前記ポリエチレン樹脂成形体を、3色成形またはインサート成形によって成形する、<10>〜<12>のいずれか1つに記載の複合成形体の製造方法。
<14><9>に記載の複合成形体を含むタンク。
<15>燃料およびアルコール類の少なくとも1種を保存するために用いられる、<14>に記載のタンク。
<16>ガソリン、軽油またはバイオディーゼルを含む燃料を保存するために用いられる、<15>に記載のタンク。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリアセタール樹脂の成形体とポリエチレン樹脂の成形体の強固な接着および一体化を実現することができ、かつ、ホルムアルデヒドの発生やモールドデポジットの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の複合成形体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分とメラミンとを含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分が、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20〜49:80〜51であり、前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度が5〜25μmol/gであることを特徴とする。このような構成の樹脂組成物をポリエチレン樹脂の成形体とポリアセタール樹脂の成形体の間に介在する中間層の材料として用いることにより、ポリアセタール樹脂の成形体とポリエチレン樹脂の成形体の強固な接着および一体化を実現することができ、かつ、ホルムアルデヒドの発生やモールドデポジットの発生を抑制することができる。
【0013】
<樹脂成分>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリアセタール樹脂および無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂(以下、単に「無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂」と称することがある。)を含む。
前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の質量比率は、20〜49:80〜51であり、20〜40:80〜60であることが好ましい。無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の量を上記上限値以下とすることにより、隣接するポリエチレン樹脂成形体およびポリアセタール樹脂の成形体との接着性を向上させることができる。さらに、ポリアセタール樹脂の量を上記上限値以下とすることにより、隣接するポリアセタール樹脂の成形体との接着性を向上させることができる。
本発明において樹脂成分は、ポリアセタール樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。また、本発明において樹脂成分は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上記ポリアセタール樹脂および無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の合計が、組成物を構成する樹脂成分の95質量%以上を占めることが好ましく、97質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上であってもよい。本発明の樹脂組成物は、その90質量%以上が樹脂成分であることが好ましく、95質量%以上が樹脂成分であることがより好ましく、97質量%以上が樹脂成分であることがさらに好ましい。
【0015】
<<ポリアセタール樹脂>>
本発明において樹脂成分は、ポリアセタール樹脂を含む。ポリアセタール樹脂は2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよいが、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであることが好ましい。ポリアセタール樹脂が2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであると、熱安定性に優れるため、複合成形体もより熱安定性に優れる。
【0016】
上記ポリアセタール樹脂が2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーである場合、ポリアセタール樹脂において、オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合(コモノマー量)は特に制限されるものではないが、1.0mol以上であることが好ましい。この場合、オキシメチレン基100molに対してオキシエチレン基が1.0mol未満の割合で含まれている場合と比べて、中間層が、ポリエチレン樹脂成形体に対してより優れた接着性を有することが可能となり、ポリアセタール樹脂成形体と中間層との剥離をより十分に抑制することができる。オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合はさらに好ましくは1.2mol以上であり、特に好ましくは1.4mol以上である。また、オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合は5.5mol以下であることが好ましく、4.0mol以下であることがより好ましく、3.0mol以下であってもよい。
【0017】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソランまたはエチレンオキシド等をコモノマーとして用いればよい。
【0018】
ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイト(MFR)は特に制限されるものではないが、40g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましく、5.0g/10分以下であることが一層好ましく、3.0g/10分以下であることが特に一層好ましい。ポリアセタール樹脂のメルトフローレイトの下限値は、特に定めるものではないが、好ましくは0.02g/10分以上であり、より好ましくは1.0g/10分以上であり、さらに好ましくは1.3g/10分以上である。
ポリアセタール樹脂のメルトフローレイトを上記上限値以下とすることにより、中間層としたときに、ポリエチレン樹脂の成形体およびポリアセタール樹脂の成形体に対してより優れた接着性を発揮し得る。図1で述べれば、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層20との接合がより効果的に向上する傾向にある。
ここで、メルトフローレイトは、ISO1133に準拠した方法により測定される値をいう。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を組成物の10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を組成物の49質量%以下の割合で含むことが好ましく、45質量%以下の割合、40質量%以下の割合、35質量%以下の割合であってもよい。
【0020】
<<ポリエチレン樹脂>>
本発明の樹脂成分に含まれる無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン樹脂であれば、特に、制限されることなく用いることができる。無水マレイン酸変性されるポリエチレン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂あるいは超低密度ポリエチレン樹脂などを用いることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂としては、下記式(2)で表される2種の構成単位を含むポリエチレン樹脂が例示される。本発明における無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、下記式(2)で表される2種の以外の構成単位を含んでいてもよいが、下記式(2)で表される2種の構成単位の合計が無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を構成する全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましい。
式(2)
【化1】
式(2)において、mおよびnは、それぞれ、0を超える数である。mとnの範囲は特に定めるものではないが、一例をあげると、mは0.02〜5.5であり、nは830〜970である。
本発明における無水マレイン酸基とは、ポリエチレン樹脂に結合している、無水マレイン酸基をいう。
【0021】
無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂における無水マレイン酸の変性率は特に制限されるものではないが、前記無水マレイン酸変性率が、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂)の0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.10質量%以上である。また、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の無水マレイン酸変性率は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.50質量%以下であることがさらに好ましく、0.30質量%以下であることが一層好ましい。無水マレイン酸変性率を上記下限値以上とすることにより、中間層が、ポリアセタール樹脂成形体に対してより優れた接着性を有するため、ポリアセタール樹脂成形体と中間層との剥離をより十分に抑制することができる。無水マレイン酸の変性率が上限値以下であることで、後述するメラミンの作用と相まって、モールドデポジット性やホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【0022】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン樹脂と、無水マレイン酸と、ラジカル発生剤とを均一混合しポリエチレン樹脂に対して無水マレイン酸をグラフト変性することにより製造できる。このような製造方法としては、具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、あるいはいわゆる気相グラフト法等が挙げられる。処理温度としては、ポリエチレン樹脂の劣化、酸または酸無水物の分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、処理温度は通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃であることが好適である。
【0023】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を製造するにあたっては、加熱や洗浄などによって未反応モノマー(不飽和カルボン酸やその誘導体)や副生する諸成分などを除去する方法を採用することができる。
【0024】
グラフト変性に用いるラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160〜200℃のものが好ましい。分解温度が160℃以上であると、原料のポリエチレン樹脂が押出機内で十分可塑化しないうちに分解反応が始まるということを十分に抑制できるため、反応率がより高くなり、逆に分解温度が200℃以下であると、押出機内等で反応が完結しやすくなる。
【0025】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、0.970g/cm以下であることが好ましく、0.954g/cm以下であることがより好ましい。0.970g/cm以下とすることにより、中間層が、ポリアセタール樹脂成形体に対してより優れた接着性を有することが可能となる。上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、さらに好ましくは0.940g/cm以下である。また、上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、0.912g/cm以上であることが好ましく、0.925g/cm以上であることがさらに好ましい。ここで、上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、JIS K7112に準拠した方法により測定される値をいう。
【0026】
上記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトは、10g/分以下であることが好ましく、2.5g/10分以下であることがより好ましく、2.0g/10分以下であることがさらに好ましく、1.0g/10分以下であることが一層好ましく、0.7g/10分以下であることがより一層好ましい。ポリエチレン樹脂のフローレイトの下限値は、特に定めるものではないが、好ましくは0g/10分より大きく、より好ましくは0.1g/10分以上であり、さらに好ましくは0.2g/10分以上である。特に、ポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトを上記上限値以下とすることでこれを超える場合に比べて、樹脂組成物としたときの適度な流動性が確保され、中間層としたときに、ポリエチレン樹脂成形体およびポリアセタール樹脂成形体に対してより優れた接着性を有する傾向にある。
【0027】
本発明では、また、樹脂成分に含まれるポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトの差が1.0g/10分以上であることが好ましく、1.5g/10分以上であることがより好ましい。上限値としては、メルトフローレイトの差が3.0g/10分以下であることが好ましく、2.5g/10分以下であることがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を組成物の30質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましく、60質量%以上含むことが一層好ましく、65質量%以上含むことがさらに一層好ましい。また、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を組成物の97質量%以下の割合で含むことが好ましく、90質量%以下の割合で含むことがより好ましく、80質量%以下の割合、75質量%以下の割合で含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物は、組成物1g当たりの無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル数、つまり無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度が5μmol/g以上であることが好ましく、10μmol/g以上であることがより好ましい。上限としては、40μmol/g以下であることが好ましく、35μmol/g以下であることがより好ましく、30μmol/g以下であることがさらに好ましく、25μmol/g以下であることが一層好ましく、20μmol/g以下であることがより一層好ましい。無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度を上記の下限値以上とすることで、中間層としたときにポリエチレン樹脂およびポリアセタール樹脂との良好な接着を実現するこができる。上記上限値以下とすることで、後述するメラミンの作用と相まって、モールドデポジット性やホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
なお、本発明の樹脂組成物は、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂以外のポリエチレン樹脂を含んでいてもよい。本発明の一実施形態として、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂が、本発明の樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂の90質量%以上、さらには99質量%以上である形態があげられる。
【0029】
<メラミン>
本発明の樹脂組成物は、メラミンを含有する。本発明の樹脂組成物における、メラミンの含有量は、特に限定されないが、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましく、0.05質量%以上であってもよい。上限としては、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であってもよい。
メラミンの含有量を樹脂成分との関係で規定すると、樹脂成分100質量部に対して、メラミンを0.005質量部以上で配合することが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.02質量部以上であることがさらに好ましく、0.05質量部以上であることが一層好ましい。上限としては、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることがさらに好ましい。
メラミンの量を上記下限値以上とすることで、上述したポリエチレン樹脂の無水マレイン酸の作用と相まって、隣接するポリエチレン樹脂およびポリアセタール樹脂との良好な接着性を維持しつつ、ホルムアルデヒドの発生の抑制やモールドデポジットの抑制を効果的に達成することができる。メラミンの量を上記上限値以下とすることで特にホルムアルデヒドの発生を効果的に防ぐことができ好ましい。
本発明の樹脂組成物において、メラミンは、これに由来のアミノ基が、ポリエチレン樹脂に付加された無水マレイン酸基と反応する。樹脂組成物の系内に無水マレイン酸基が多すぎると、無水マレイン酸基が水と反応して開環してカルボキシル基(COOH)が生成し、当該カルボキシル基によりポリアセタール樹脂がダメージを受けることがある。そうなると、ホルムアルデヒドの発生量が増加したり、モールドデポジットが劣ったりする。一方、メラミン由来のアミノ基の量が多すぎると、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の架橋が過度に進み、樹脂組成物の粘度が高くなり、流動性が下ってしまう。上記の本発明において規定される有効カルボニル基モル濃度とすることにより、上述した複数の特性を同時に高いレベルで満足することができる。
【0030】
メラミンが有するアミノ基の数は通常3つであるが、必要によりアミノ基に置換基を導入していてもよい。すなわち、本発明において「メラミン」というときには、本発明の効果を奏する範囲でそのようなメラミン誘導体も含む意味である。かかる観点から、メラミンのアミノ基の数は、1〜3の整数であることが好ましく、2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。メラミンのアミノ基が3である、つまり置換基を有さないことで、メラミン本体の作用が奏されるため好ましい。メラミンの化合物としては、メラミン、メラミンシアヌレート、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)、メチロールメラミン等が挙げられ、中でもメラミンが好ましい化合物として挙げられる。
なお、上記有効カルボニル基モル濃度はもとより、メラミンの配合量、ポリエチレン樹脂中の無水マレイン酸の比率(変性率)は、製品において、あるいは使用を継続することにより、上記の量と異なるものとなることがありえる。言うまでもないが、このような場合も、配合の時点で規定の範囲を満たせば、本発明の範囲もしくはその好ましい範囲に含まれるものである。
本発明では、本発明の樹脂組成物から形成されるペレットが一実施形態として挙げられる。
【0031】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分以外の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、他の成分として、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
顔料としては、カーボンブラックが例示される。カーボンブラックは例えばマスターバッチに添加する態様や樹脂組成物に直接添加することで、樹脂組成物中に含有させることができる。
着色剤(例えば、カーボンブラック)の含有量は、樹脂組成物中で、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、本発明の効果を妨げないよう、1質量%以下であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、本発明の樹脂組成物の無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
【0032】
<樹脂組成物>
本発明においては、前記樹脂組成物中に含まれるメラミンと反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度(本明細書においては、このモル濃度(組成物単位質量当たりの無水マレイン酸基の数)を「有効カルボニル基モル濃度」と称することがある。)が5〜25μmol/gである。ここで、有効カルボニル基モル濃度は、無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度とメラミン由来のアミノ基のモル濃度の内、少ない方の数値または同値の場合はその数値である。無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度は樹脂組成物の単位質量当たりの無水マレイン酸基由来のカルボニル基の数である(μmol/g)。メラミン由来のアミノ基のモル濃度は樹脂組成物の単位質量当たりのメラミン由来のアミノ基の数である(μmol/g)。本発明において、通常、有効カルボニル基モル濃度は、アミノ基2当量に対して無水マレイン酸基が1当量(カルボニル基として2当量)とが反応するものとして計算される。有効カルボニル基モル濃度は5μmol/g以上であるが、7μmol/g以上であることが好ましく、10μmol/g以上であってもよい。上限値としては、25μmol/g以下であるが、20μmol/g以下であることが好ましく、15μmol/g以下であることがより好ましい。有効カルボニル基モル濃度を上記の下限値以上とすることで、中間層としたときに、ポリエチレン樹脂およびポリアセタール樹脂との良好な接着性を実現し、かつ、ホルムアルデヒドの発生とモールドデポジットの発生を極めて効果的に抑制することができる。なかでも、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制できるため、上記下限値以上とすることが好ましい。上記の上限値以下とすることで、かえってポリエチレン樹脂およびポリアセタール樹脂との接着性を低減してしまうことを防ぐことができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物の190℃、10kg荷重で測定したメルトレフローイト(MFR)は、0.3g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であってもよい。上記メルトフローレイトの上限は、20.0g/10分以下であることが好ましく、15.0g/10分以下であることがより好ましく、さらには10.0g/10分以下、5.0g/10分以下、4.0g/10分以下であってもよい。樹脂組成物のメルトフローレイトを上記の下限値以上とすることで、押出成形時に成形性が確保されるため好ましい。また、メルトフローレイトを上記の上限値以下とすることで、同様に、押出成形時の押出が容易になり成形性が高まるため好ましい。
本発明の樹脂組成物のメルトフローレイトは特に断らない限り、ISO1133に準拠して、測定した値を言う。
本発明の樹脂組成物は接着性樹脂組成物として用いることができる。例えば、上述した樹脂組成物からなり、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体とを接着する機能をもつ接着剤とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂成形体に対し、接着強度が17N以上であることが好ましく、20N以上であることがより好ましい。上限値としては、例えば、40N以下である。ポリアセタール樹脂成形体に対する接着強度は、後述する実施例に記載の接着性の評価に従う。
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂成形体に対し、接着強度が18N以上であることが好ましく、20N以上であることがより好ましい。上限値としては、例えば、40N以下である。ポリエチレン樹脂成形体に対する接着強度は、後述する実施例に記載の接着性の評価に従う。
【0034】
<複合成形体>
本発明では、また、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられ、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体と、それぞれ接している中間層とを有し、前記中間層が本発明の接着性樹脂組成物から形成される、複合成形体を開示する。
以下、本発明の複合成形体の実施形態について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の複合成形体の一実施形態を示す断面図である。
【0035】
図1に示すように、複合成形体100は、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体10と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体30と、ポリアセタール樹脂成形体10およびポリエチレン樹脂成形体30の間に設けられる中間層20とを有する。
【0036】
中間層20は、本発明の樹脂組成物から形成される。
【0037】
この複合成形体100によれば、液体有機化合物と接触した後の反りおよび膨潤を十分に抑制することが可能となる。
ここで、液体有機化合物中に含まれる有機化合物は、炭化水素、アルコール類、またはこれらの混合物などが挙げられる。
炭化水素としては、例えばトルエンのような芳香族炭化水素やイソオクタンのような脂肪族炭化水素が挙げられる。
また、アルコール類としては、例えばメタノールやエタノールなどが挙げられる。
より具体的には、ガソリン、軽油、バイオディーゼルなどの燃料をはじめとする、炭化水素、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、またはこれらの混合物などの有機化合物を含む液体が例示される。
【0038】
<ポリアセタール樹脂成形体>
ポリアセタール樹脂成形体10に含まれるポリアセタール樹脂は2価のオキシメチレン基を有するポリアセタール樹脂であれば特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、例えば2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0039】
上記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合は特に限定されるものではなく、例えば0〜5molであればよい。
【0040】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソランまたはエチレンオキシド等をコモノマーとして用いればよい。
【0041】
上記ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトは特に限定されるものではなく、メルトフローレイトの値は、例えば0.1〜200g/10分であればよい。
【0042】
ポリアセタール樹脂成形体10は、ポリアセタール樹脂を含んでいればよい。ポリアセタール樹脂成形体10は、ポリアセタール樹脂を含む組成物から形成される。ポリアセタール樹脂を含む組成物は、ポリアセタール樹脂のみで構成されていてもよいし、ポリアセタール樹脂のほか、添加剤をさらに含んでいてもよい。ポリアセタール樹脂成形体におけるポリアセタール樹脂の割合は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。添加剤としては、例えば、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、顔料等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
また、本発明では、ポリアセタール樹脂成形体は、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、ポリアセタール樹脂成形体中の無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
本発明では、ポリアセタール樹脂成形体に含まれるポリアセタール樹脂と接着性樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂の一部または全部が共通していてもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
<ポリエチレン樹脂成形体>
ポリエチレン樹脂成形体30に含まれるポリエチレン樹脂はポリエチレン樹脂であれば特に限定されるものではない。このようなポリエチレン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂あるいは超低密度ポリエチレン樹脂などを用いることができる。ポリエチレン樹脂成形体に含まれるポリエチレン樹脂は、酸変性されていないか、酸変性率がポリエチレン樹脂の総質量の0.01質量%未満であることが好ましい。
ポリエチレン樹脂成形体30はポリエチレン樹脂を含んでいればよい。ポリエチレン樹脂成形体30は、ポリエチレン樹脂を含む組成物から形成される。ポリエチレン樹脂を含む組成物は、ポリエチレン樹脂のみで構成されていてもよいし、ポリエチレン樹脂のほか、添加剤をさらに含んでいてもよい。ポリエチレン樹脂成形体におけるポリエチレン樹脂の割合は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。添加剤としては、例えば、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、顔料等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
また、本発明では、ポリエチレン樹脂成形体は、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、ポリエチレン樹脂成形体中の無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
本発明では、ポリエチレン樹脂成形体に含まれるポリエチレン樹脂と接着性樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂の一部または全部が共通していてもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
<複合成形体の製造方法>
本発明は、また、本発明の樹脂組成物から形成された中間層を用いた複合成形体の製造方法に関する。
具体的には、複合成形体の製造方法であって、ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体と、中間層とを、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体との間に中間層が配置されるように積層することを含む、複合体形成体の製造方法を開示する。
また、本発明の樹脂組成物から形成された中間層の一方の表面に、ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程と、前記中間層の他の一方の表面にポリエチレン樹脂成形体を成形する工程とを含む、複合体形成体の製造方法を開示する。ポリアセタール樹脂成形体を成形する工程は、ポリアセタール樹脂を含む組成物を溶融状態で中間層に接触させて成形する工程であり、ポリエチレン樹脂成形体を成形する工程は、ポリエチレン樹脂を含む組成物を溶融状態で中間層に接触させて成形する工程であることが好ましい。このような構成とすることにより、ポリアセタール樹脂成形体と中間層とポリエチレン樹脂成形体の密着性が向上する傾向にある。ポリアセタール樹脂成形体と、中間層と、ポリエチレン樹脂成形体は、3色成形またはインサート成形によって成形することが好ましい。
以下に、複合成形体100の製造方法について詳細に説明する。
【0045】
複合成形体100の製造方法は、ポリアセタール樹脂成形体10と、ポリエチレン樹脂成形体30と、中間層20とを、ポリアセタール樹脂成形体10とポリエチレン樹脂成形体30との間に中間層20が配置されるように積層して複合成形体100を得る積層工程を含む。
【0046】
具体的には、複合成形体100は、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層20およびポリエチレン樹脂成形体30をそれぞれ成形した後、これらを互いに積層して溶着する方法、ポリアセタール樹脂成形体10および中間層20を2色成形して2色成形体を形成した後、2色成形体にポリエチレン樹脂成形体30を溶着する方法、ポリエチレン樹脂成形体30および中間層20を2色成形して2色成形体を形成した後、2色成形体にポリアセタール樹脂成形体10を溶着する方法、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層20およびポリエチレン樹脂成形体30を3色成形(3色連続成形)する方法、および、ポリエチレン樹脂成形体30を準備した後、ポリエチレン樹脂成形体30を金型キャビティにインサートし、このポリエチレン樹脂成形体30上に中間層20およびポリアセタール樹脂成形体10を2色成形により形成するインサート2色成形等により製造される。この中では、生産性の観点から、特にポリアセタール樹脂成形体10、中間層20およびポリエチレン樹脂成形体30を3色連続成形して複合成形体100を形成する方法が好ましい。
【0047】
ここで、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層20およびポリエチレン樹脂成形体30を3色連続成形することにより複合成形体100を製造する方法の一例について説明する。
【0048】
まず同一形状を有する3個の共通金型を回転板上に配置する。一方、互いに異なる形状を有する1次金型、2次金型および3次金型を用意する。1次金型は共通金型とともにポリアセタール樹脂成形体10を製造するためのものであり、2次金型は、共通金型およびポリアセタール樹脂成形体10とともに、中間層20を製造するためのものである。3次金型は、共通金型、ポリアセタール樹脂成形体10および中間層20とともにポリエチレン樹脂成形体30を製造するためのものである。
【0049】
はじめに、1個の共通金型と、1次金型とでポリアセタール樹脂成形体10を製造する。次に、回転板を回転させ、ポリアセタール樹脂成形体10、共通金型および2次金型によって形成される空間内に中間層形成用原料を加熱しながら導入した後、冷却する。
【0050】
こうしてポリアセタール樹脂成形体10上に中間層20が形成され、構造体が得られる。
【0051】
次に、回転板を回転させ、ポリアセタール樹脂成形体10、共通金型、2次金型および3次金型によって形成される空間内にポリエチレン樹脂成形体30を形成するための原料を加熱しながら導入した後、冷却する。こうして構造体の中間層20上にポリエチレン樹脂成形体30が形成される。
【0052】
以上のようにして複合成形体100が得られる。
【0053】
あるいは、上記複合成形体100の製造方法のうち、複合成形体100における層間剥離を抑制する観点からは、ポリエチレン樹脂成形体30を準備した後、ポリエチレン樹脂成形体30を金型キャビティにインサートし、このポリエチレン樹脂成形体30の上に中間層20およびポリアセタール樹脂成形体10を順次2色成形により形成するインサート2色成形が好ましい。ここで、この製造方法について詳細に説明する。
【0054】
この製造方法では、まずポリエチレン樹脂成形体30を準備する。一方、同一形状を有する2個の共通金型を回転板上に配置する。他方、互いに異なる形状を有する中間層形成用金型およびポリアセタール樹脂成形体形成用金型を用意する。
【0055】
次に、1個の共通金型および中間層形成用金型によって形成される金型キャビティ内にこのポリエチレン樹脂成形体30をインサートする。次に、金型キャビティ内に中間層形成用原料を加熱しながら導入した後、冷却する。こうして、ポリエチレン樹脂成形体30上に中間層20が形成され、構造体が得られる。
【0056】
次に、回転板を回転させ、もう1個の共通金型およびポリアセタール樹脂成形体形成用金型によって形成される金型キャビティ内にポリアセタール樹脂成形体形成用原料を加熱しながら導入した後、冷却する。こうして、構造体の中間層20上にポリアセタール樹脂成形体10が形成される。
【0057】
本発明の複合成形体は、例えばバルブ装置、リサーキュレーションライン、ベントライン、フューエルセンダーモジュール用フランジ、および、燃料タンクの内壁面に接着される旋回槽等の燃料タンク接続用部品などに適用することが可能である。
【0058】
本発明の複合成形体の一実施形態は、燃料タンクである。すなわち、本発明の複合成形体は燃料やアルコール類等を保存するために用いられる。燃料タンクの詳細は、特開2019−105253号公報、特許第6505289号、特許第6350781号等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0060】
<ポリアセタール樹脂(POM)>
POM−1:オキシエチレン基がオキシメチレン基100molに対して1.6molの割合で含まれており、メルトフローレイト(ISO1133規格:190℃、2.16kg)が2.5g/10分であるアセタールコポリマー
POM−2:オキシエチレン基がオキシメチレン基100molに対して1.6molの割合で含まれており、メルトフローレイト(ISO1133規格:190℃、2.16kg)が9.0g/10分であるアセタールコポリマー
POM−3:オキシエチレン基がオキシメチレン基100molに対して1.6molの割合で含まれており、メルトフローレイト(ISO1133規格:190℃、2.16kg)が27g/10分であるアセタールコポリマー
【0061】
<ポリエチレン樹脂(PE)>
PE−1:密度が0.933g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.21質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
PE−2:密度が0.933g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.11質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
PE−3:密度が0.933g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.05質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
PE−4:密度が0.933g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が1.8g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.21質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
PE−5:密度が0.933g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が9.7g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.21質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
PE−6:密度が0.922g/cm(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.21質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
【0062】
無水マレイン酸の変性率の測定は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を180℃で熱プレスして、100μmのフィルムを作製し、赤外吸収スペクトルを測定する方法により得た。具体的には赤外吸収スペクトルの1790cm−1のピークの吸光度と4250cm−1のピークの吸光度との比を求め、予め準備しておいた赤外スペクトルによる吸光度比の値とH−NMRによる無水マレイン酸変性率測定値との相関による検量線から得た。組成物中の無水マレイン酸基由来のカルボニル基の数は、無水マレイン酸変性率から算出した。
【0063】
<カーボンブラックマスターバッチ>
ポリアセタールベースマスターバッチは、MFR=27のポリアセタールコポリマー(製造元:三菱エンジニアリングプラスチックス社、品番:F30−03)にカーボンブラック(製造元Orion engineered carbons社、品番:Printex P)を10質量%添加して混練することによって得た。
ポリエチレンベースマスターバッチは、MFR=9、密度0.925g/cmのPE(製造元:日本ポリエチレン社、品番:Z50MG)にカーボンブラック(製造元Orion engineered carbons社、品番:Printex P)を25質量%添加して混練することによって得た。
<メラミン>
メラミン:下記化合物
【化2】
ベンゾグアナミン:日本触媒社製
【0064】
<実施例1〜18および比較例1〜7>
ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエチレン樹脂(PE)、表に示すメラミン、および、必要に応じて、マスターバッチ化したカーボンブラックを、表1〜3に示す配合量にて川田製作所社製、スーパーミキサーで混合して混合物を得た。その後に、この混合物を2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」、スクリュー径30mm)で210℃溶融混練して押出を行い、押出機から吐出されるストランドを水槽で冷却しペレタイザーでカットして、実施例1〜18および比較例1〜7のペレットをそれぞれ得た。
【0065】
<<接着性の評価(接着強度)>>
1)ポリアセタール樹脂成形体に対する中間層の接着性試験
射出成形機(日精樹脂工業社製DCE−140)を用いて2色成形法にて積層体Aを得た。具体的には、まず実施例1〜18および比較例1〜7で用いた中間層形成用原料のペレットを、樹脂温度230℃、金型温度100℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の試験フィルム(中間層)を成形し、続けて金型を回転した後に、その試験フィルムの上にポリアセタール樹脂成形体の一部(積層部)を試験フィルムに積層させ、残部(屈曲部)を積層部に対して90°屈曲させてL字型になるように形成した。積層部の寸法は63mm×13mm×2.0mm(厚さ)とし、屈曲部の寸法は15mm×13mm×2.0mm(厚さ)とした。また、積層部と試験フィルムとは、長手方向が一致するように積層した。
こうして得られた積層体Aを、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の上側治具(固定側)にポリアセタール樹脂成形体の屈曲部を固定し、下側治具(可動側)に試験フィルム(中間層)を固定した。次いで、上側治具を上方向に速度200mm/minで変位させることにより積層体Aにおいて試験フィルムからポリアセタール樹脂成形体を剥離させた。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張力をポリアセタール樹脂成形体に対する試験フィルム(中間層)の接着強度とした。単位は、Nで示した。
【0066】
(2)ポリエチレン樹脂成形体に対する中間層の接着性試験
また、射出成形機(日精樹脂工業社製DCE−140)を用いて2色成形法にて積層体Bを得た。具体的には、実施例1〜18および比較例1〜7で用いたポリエチレン樹脂成形体形成用原料のペレットを、樹脂温度200℃、金型温度100℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の試験フィルム(ポリエチレン樹脂成形体)を成形し、続けて金型を回転した後に、その試験フィルムの上に中間層の一部(積層部)を試験フィルムに積層させ、残部(屈曲部)を積層部に対して90°屈曲させてL字型になるように形成した。積層部の寸法は63mm×13mm×2.0mm(厚さ)とし、屈曲部の寸法は15mm×13mm×2.0mm(厚さ)とした。また、積層部と試験フィルムとは、長手方向が一致するように積層した。
【0067】
こうして得られた積層体Bを、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の上側治具(固定側)に中間層の屈曲部を固定し、下側治具(可動側)に試験フィルム(ポリエチレン樹脂成形体)を固定した。次いで上側治具を上方向に速度200mm/minで変位させることにより積層体Bにおいて試験フィルムから中間層を剥離させた。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張強度を中間層に対する試験フィルム(ポリエチレン樹脂成形体)の接着強度とした。単位は、Nで示した。
【0068】
<<モールドデポジット(MD)>>
住友重機械工業社製ミニマットM8/7A成形機を用い、特開2012−233129号公報の図1に示すようなしずく型金型を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度40℃で1,000ショット連続成形を行った。連続成形終了後の金型表面の付着物の状態を肉眼で観察し、下記のA〜Dの4段階の基準で評価した。B以上が実用レベルである。
A:金型付着物が殆どなく、金型汚染性は極めて良好
B:金型付着物が少しあるものの、金型汚染性は良好
C:金型付着物が多く、金型汚染性が不良
D:金型付着物が全体におよび、金型汚染性が極めて不良
【0069】
<<ホルムアルデヒド発生量>>
上記で得られたペレットを、温度80℃の熱風乾燥機を用いて4時間乾燥させ、日精樹脂工業社製、射出成形機PS−40を用い、シリンダー温度215℃、金型温度80℃にて100mm×40mm×2mmの平板試験片を成形した。得られた平板試験片を、その成形翌日に、ドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法によりホルムアルデヒド発生量(HCHO発生量)を測定した。
具体的には、ポリエチレン容器中に蒸留水50mLを入れ、試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて、3時間加熱し、ついで、室温で60分間放置後、試験片を取り出し、ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、紫外線(UV)スペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定した。
なお、ホルムアルデヒド発生量は、比較例1のホルムアルデヒド発生量を100としたときの、各実施例、比較例のホルムアルデヒド発生量の割合(質量比)として示した。
【0070】
<<メルトフローレイト(MFR)>>
ISO1133に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件でMFRを測定した。ただし、調製した樹脂組成物のメルトフローレイトは190℃、10kg荷重の条件で測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】

表の注記
*1 コモノマー量:オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合
*2 有効カルボニル基モル濃度:組成物単位質量当たりのメラミンと反応し得る無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度:無水マレイン酸基由来のカルボニル基のモル濃度(組成物単位質量当たりの無水マレイン酸基由来のカルボニル基の数)とメラミン由来のアミノ基のモル濃度(組成物単位質量当たりのメラミン由来のアミノ基の数)の内の小さい方の数値また同値の場合はその数値
*3 比較例1のホルムアルデヒド発生量を100としたときの、各実施例、比較例のホルムアルデヒド発生量の割合(質量比)
【0074】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂成形体およびポリエチレン樹脂成形体に対し、高い接着性を発揮し、しかもモールドデポジットが抑制され、かつ、ホルムアルデヒドの発生が抑制されたものであることが分かった(実施例1〜18)。
これに対し、メラミンを配合せず(比較例1)、あるいはその配合量が少なく(比較例2)、有効カルボニル基モル濃度が規定を下回る場合は、いずれもモールドデポジットが悪化してしまった。また、ホルムアルデヒドの発生量も多かった。
また、有効カルボニル基のモル濃度が規定の範囲を上回る場合(比較例3、比較例4)、MFRが大幅に低下してしまった。一方、有効カルボニル基のモル濃度が規定の範囲を下回る場合(比較例7)、ポリアセタール樹脂の成形体に対する接着性が大幅に低下してしまった。
他方、樹脂組成物の配合において、ポリエチレン樹脂に対するポリアセタール樹脂の比率が高く、規定の範囲以下の場合は(比較例5)、ポリエチレン樹脂の成形体およびポリアセタール樹脂の成形体に対する接着性が大幅に低下してしまった。一方、樹脂組成物の配合において、ポリエチレン樹脂に対するポリアセタール樹脂の比率が低く、規定の範囲外の場合は(比較例6)、ポリアセタール樹脂の成形体に対する接着性が大幅に低下してしまった。
【0075】
複合成形体の製造
上記実施例1で得られたペレット、ポリアセタール樹脂成形体形成用原料のペレットおよびポリエチレン樹脂成形体形成用原料のペレットを用い、インサート2色成形によって複合成形体を成形した。得られた複合成形体は各層が接着され一体化されていた。
ポリアセタール樹脂成形体形成用原料のペレットは、三菱エンジニアリングプラスチックス製、ユピタールF20−01を用いた。ポリエチレン樹脂成形体用原料ペレットは、日本ポリエチレン製、ノバテックHJ221を用いた。ポリエチレン樹脂成形体用原料ペレットに用いられているポリエチレン樹脂は、酸変性されていないものである。
【符号の説明】
【0076】
10 ポリアセタール樹脂成形体
20 中間層
30 ポリエチレン樹脂成形体
100 複合成形体
【要約】
ポリアセタール樹脂の成形体とポリエチレン樹脂の成形体の強固な接着および一体化を実現することができ、かつ、ホルムアルデヒドの発生やモールドデポジットの発生を抑制することができる樹脂組成物、ペレット、複合成形体、複合成形体の製造方法およびタンクの提供。樹脂成分とメラミンとを含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分が、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20〜49:80〜51であり、前記樹脂組成物中に含まれるメラミンのアミノ基と反応し得る無水マレイン酸基のモル濃度が5〜25μmol/gである、樹脂組成物。
図1