(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6704566
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】立体網状構造体の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20200525BHJP
D04H 3/02 20060101ALI20200525BHJP
D04H 3/033 20120101ALI20200525BHJP
D04H 3/07 20120101ALI20200525BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H3/02
D04H3/033
D04H3/07
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-148970(P2019-148970)
(22)【出願日】2019年7月29日
【審査請求日】2019年11月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510022680
【氏名又は名称】リッチコミュニケーションズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮
【審査官】
堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−60063(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/168771(WO,A1)
【文献】
国際公開第2018/074075(WO,A1)
【文献】
特開2002−275751(JP,A)
【文献】
特開2016−27222(JP,A)
【文献】
特開2014−51069(JP,A)
【文献】
特開2017−311(JP,A)
【文献】
特開2014−113195(JP,A)
【文献】
特開2006−152502(JP,A)
【文献】
特開2006−273131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
A47C21/04、
27/00−27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度が、他の部分における前記糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体の製造装置において、
複数の糸状樹脂を形成するための複数のノズル孔を有する成形金型と、前記成形金型の下方に配置され、底面形状が前記貫通孔に相当する形状に形成されていて、側面が前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の一部を受けながら斜め下方に案内する傾斜面になっている貫通孔形成体と、前記貫通孔形成体の下方に配置され、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂を冷却して固化する水槽と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の束を所定のシート状に整形する整形機と、を備えたことを特徴とする立体網状構造体の製造装置。
【請求項2】
互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度が、他の部分における前記糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体の製造方法において、
成形金型から複数の糸状樹脂を押し出す工程と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂を相互に絡み合わせる工程と、相互に絡みあわされた前記複数の糸状樹脂の束を所定形状の立体網状構造体に整形する工程と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の一部を前記成形金型の下方に配置された貫通孔形成体で受けながら斜め下方に案内し、前記貫通孔形成体の底面の形状に相当する貫通孔を前記立体網状構造体の内部に形成すると共に前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度を他の部分よりも高める工程と、を有することを特徴とする立体網状構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション材等として使用される樹脂製の立体網状構造体を製造するための製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の立体網状構造体は、成形金型から押し出された複数の糸状溶融樹脂を無秩序に絡み合わせて各糸状溶融樹脂の接触部分を選択的に熱溶着させ、熱溶着されない部分には空隙を形成してクッション性を付与したものである。この種の立体網状構造体は、原料樹脂である熱可塑性樹脂の種類、糸状樹脂の太さ及び断面形状、糸状樹脂の絡み合い状態等を調整することによって、クッション性が異なる各種の製品を製造でき、通気性に優れ、へたり難く、水洗いが可能で、リサイクルが容易であるという優れた特徴を有する。
【0003】
従来、この種の立体網状構造体は、寝具やソファ等のクッション材としてだけでなく、園芸用壁体、衝撃吸収材、吸湿材、吸音材、断熱材、モルタルの割れ防止剤、自動車の内装材等の多様な用途に用いられている。このため、従来、全体が均一の密度となるように仕上げられたものだけでなく、中空部を有するものや、断面内に高密度の部分と低密度の部分とを設けたもの等、各種構造及び各種形状の立体網状構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、寝具に関しては、空気が漏れにくい素材からなるシート部材と、当該シート部材と就寝者の体との間に平行風流通空間を形成するためのスペーサ部材と、平行風流通空間に外気を流通させるためのファンと、を備えた空気流通式寝具が従来知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5270014号公報
【特許文献2】特開2011−245046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の空気流通式寝具は、シート部材と、互いに連結されて面状に並列された多数のスペーサ部材と、を用いて構成されているので、高価なものとなる。このため、安価な立体網状構造体を用いて空気流通式寝具を製造することが望まれている。立体網状構造体を空気流通式寝具のクッション材として利用するためには、特定の方向に向かって延びる空気流路を形成する必要がある。立体網状構造体に空気流路を形成するためには、単に一方向に延びる中空部(本明細書においては、これを「貫通孔」という。)を立体網状構造体に形成するだけでは足りず、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高くすることが求められる。その理由は、単に立体網状構造体に貫通孔を形成しただけでは、貫通孔からその周囲への空気漏れが甚だしく、空気を所定のルートに沿って流通させることができないからである。
【0007】
また、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高くすると、立体網状構造体の内部に管体を事後的に挿入しやすくなるため、管体の内部に熱媒体(例えば冷水又は温水)や電熱線を封入して温度調整するタイプの空気流通式寝具等の製造を容易化できる、という効果もある。
【0008】
即ち、このタイプの空気流通式寝具等を製造するためには、立体網状構造体に形成された貫通孔内に管体をある程度の力で圧入し、立体網状構造体に対する管体の動揺を防止する必要がある。しかしながら、比較的低剛性の立体網状構造体を用いて製造されるクッション材については、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高くしないと、該部の剛性が低いため、管体の圧入時に貫通孔が変形しやすく、貫通孔内に管体を事後的に挿入することが困難である。これに対して、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高くすれば、該部の剛性が高められるため、比較的低剛性の立体網状構造体を用いて製造されるクッション材についてもこのような問題を回避でき、空気流通式寝具等の製造を容易化できる。
【0009】
貫通孔を有する立体網状構造体の製造は、糸状溶融樹脂を形成するための多数の孔が形成された第1領域と、形成しようとする貫通孔に相当する平面形状を有し、糸状溶融樹脂を形成するための孔が形成されていない第2領域と、を有する口金を備えた装置を用いて行うことができる(特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1には、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高めるための立体網状構造体の製造装置及び製造方法が一切記載されておらず、その開発が求められている。
【0010】
なお、引用文献1には、前記第1領域における前記第2領域の周辺部分に糸状溶融樹脂を形成するための孔を他の部分よりも高密度に配置する技術が開示されている。しかしながら、このようにしても、孔から押し出された糸状溶融樹脂が口金の下方に配置された水槽内の水に突入する際、多数の糸状溶融樹脂が高温状態で互いに絡み合いながら水面に沿ってランダムな方向に変形するため、貫通孔を所期の形状に形成できないばかりでなく、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度を他の部分よりも高めることができない。
【0011】
そこで、本発明は、所定の形状に形成された貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度が他の部分よりも高くなるように形成された立体網状構造体を容易かつ確実に製造可能な立体網状構造体の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するため、立体網状構造体の製造装置に関しては、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度が、他の部分における前記糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体の製造装置において、複数の糸状樹脂を形成するための複数のノズル孔を有する成形金型と、前記成形金型の下方に配置され、底面形状が前記貫通孔に相当する形状に形成されていて、側面が前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の一部を受けながら斜め下方に案内する傾斜面になっている貫通孔形成体と、前記貫通孔形成体の下方に配置され、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂を冷却して固化する水槽と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の束を所定のシート状に整形する整形機と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記の課題を解決するため、立体網状構造体の製造方法に関しては、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度が、他の部分における前記糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体の製造方法において、成形金型から複数の糸状樹脂を押し出す工程と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂を相互に絡み合わせる工程と、相互に絡みあわされた前記複数の糸状樹脂の束を所定形状の立体網状構造体に整形する工程と、前記成形金型から押し出された前記複数の糸状樹脂の一部を前記成形金型の下方に配置された貫通孔形成体で受けながら斜め下方に案内し、前記貫通孔形成体の底面の形状に相当する貫通孔を前記立体網状構造体の内部に形成すると共に前記貫通孔の周囲における前記糸状樹脂の密度を他の部分よりも高める工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本構成によると、成形金型から押し出された複数の糸状樹脂が固化するまでの間に相互に絡み合わされると共に、整形機によって所定形状のシート状に整形された立体網状構造体となる。また、成形金型から押し出された複数の糸状樹脂の一部を成形金型の下方に配置された貫通孔形成体で受けながら斜め下方に案内するので、貫通孔形成体で受け止められる糸状樹脂については、貫通孔形成体の斜め下方に案内される過程で積層・集約化され、貫通孔形成体で受け止められない部分よりも糸状樹脂の密度が高くなる。さらに、貫通孔形成体を通過した糸状樹脂は貫通孔形成体の下端部より垂直に落下するので、立体網状構造体の内部に貫通孔形成体の底面形状に相当する形状の貫通孔が形成される。よって、本構成によると、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度が他の部分における糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体を高能率に製造できる。
【0015】
本構成の製造装置及び製造方法により製造される立体網状構造体は、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度が他の部分における糸状樹脂の密度よりも高く形成されているので、多少の漏れはあったとしても貫通孔が空気流路として機能しやすく、高性能の空気流通式寝具等を容易に製造できる。また、本構成の製造装置及び製造方法により製造される立体網状構造体は、貫通孔の周囲の剛性が高められるので、全体が低剛性の立体網状構造体についても貫通孔内への管体の挿入を容易化でき、管体の内部に冷水又は温水等の熱媒体や電熱線を封入して温度調整するタイプの空気流通式寝具等の製造を容易化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂をもって全体形状が貫通孔を有するシート状に形成され、貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度が他の部分における糸状樹脂の密度よりも高く形成されている立体網状構造体を高能率に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る製造装置及び製造方法により製造される立体網状構造体の外観形状と、立体網状構造体を構成する糸状樹脂の絡み合い状態と、を示す図である。
【
図2】実施形態に係る製造装置及び製造方法により製造される立体網状構造体の断面図である。
【
図3】貫通孔内に管体が挿入された立体網状構造体の斜視図である。
【
図4】実施形態に係る立体網状構造体の製造装置を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る立体網状構造体の製造装置に備えられる貫通孔形成体の形状を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る製造装置及び製造方法の説明に先立ち、これによって製造される立体網状構造体の構成を図に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明に係る製造装置及び製造方法によって製造される立体網状構造体1は、全体形状が所定の幅寸法W、長さ寸法L及び厚さ寸法Tを有するシート状に形成されており、その内部には、両端が立体網状構造体1の相対向する端面に貫通するストレート形状の貫通孔2が形成されている。なお、本例の立体網状構造体1は、所定の幅寸法W及び厚さ寸法Tを有する長尺の原反シートを、所定の長さ寸法Lに切断することにより製造される。よって、原反シートから切り出される立体網状構造体1の長さ寸法Lによっては、立体網状構造体1の長さ方向又は幅方向に貫通孔2が形成されたものとなる。
【0020】
本例の立体網状構造体1は、
図1の円内に示すように、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂3をもって構成されており、絡み合わされた複数の糸状樹脂3がその接触部分4において部分的に接合され、接合されていない部分には空隙5が形成されている。本例の立体網状構造体1は、このように構成されているので、厚さ方向に作用する圧縮力に対する弾力を有しており、寝具、椅子、ソファ、マットレス、座布団、ベビーカー用シート、自動車用シートなどのクッション材として利用できる。立体網状構造体1の弾力は、糸状樹脂3を構成する原料樹脂の種類、糸状樹脂3の太さ及び断面形状、それに複数の糸状樹脂3の絡み合い状態を変更することにより調整できる。
【0021】
糸状樹脂3は、原料樹脂を糸状に成形することにより形成される。糸状樹脂3の成形方法、絡み合わせ方法及び接合方法については、後に説明する。糸状樹脂3の原料樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、これらの各樹脂のコポリマーやエラストマー又はこれらの各樹脂のブレンド品等を挙げることができる。また、原料樹脂としては、新生品のほかに再生品も利用でき、廃棄された立体網状構造体1も新たな立体網状構造体1の原料樹脂となり得る。従って、本発明の立体網状構造体1は、環境負荷が小さく、地球の温暖化防止に貢献できる。また、PETボトルを粉砕することにより得られるPETの再生品も利用できる。
【0022】
貫通孔2は、糸状樹脂3の接合されていない部分に形成される空隙5よりも大型の断面積を有し、立体網状構造体1の一端面からこれと対向する他の一端面まで同一の断面形状で一方向に貫通するストレート孔になっている。なお、
図1の例では、円形断面の貫通孔2が開設されているが、貫通孔2の断面形状については円形に限定されるものではなく、三角形、四角形、五角形、楕円形などの他の断面形状とすることもできる。
【0023】
貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度は、
図2に示すように、その他の部分における糸状樹脂3の密度より高くなるように調整されている。
図2において、符号1aは低密度部を示し、符号1bは高密度部を示している。貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度をその他の部分における糸状樹脂3の密度より高くする方法及び装置については、後に説明する。
【0024】
貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度をその他の部分における糸状樹脂3の密度よりも高くすると、貫通孔2からその外周部への空気の漏れを抑制できるので、空気流通式寝具の性能を高めることができる。即ち、空気流通式寝具は、貫通孔2の一端に対向させて送風管を配置し、立体網状構造体1及び送風管をシーツで覆った上で、送風管内の空気をファンで吸引することにより貫通孔2を空気流路として機能させるものであるので、貫通孔2からその外周部への空気の漏れを抑制することにより、貫通孔2内を流れる空気流量を安定化させることができて、貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度をその他の部分における糸状樹脂3の密度よりも高くしない場合に比べて、より実用的な空気流通式寝具とすることができる。
【0025】
また、貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度をその他の部分における糸状樹脂3の密度よりも高くすると、貫通孔2の周囲における立体網状構造体1の剛性を高めることができるので、全体の剛性が低い立体網状構造体1についても貫通孔2内への管体の挿入を容易化できて温度調整機能を有する寝具等の製造を容易化できる。また、立体網状構造体1に外力が作用した際の貫通孔2の変形を抑制できて、貫通孔2内に挿入された管体10の変形を防止でき、温度調整機能を有する寝具等の耐久性が高められる。即ち、管体10は立体網状構造体1に温度調整機能を付与するために貫通孔2内に挿入されるもので、管体10内に冷風、冷水、温風又は温水等の熱媒体を流通させることにより、立体網状構造体1に温度調整機能を付与することができる。また、管体10内に電熱線を挿通することによって、立体網状構造体1に暖房機能を発揮させることもできる。
図3に、貫通孔2内に管体10が挿入された立体網状構造体1の構成を示す。
【0026】
なお、
図1〜
図3の例では、貫通孔2がシート状に形成された立体網状構造体1の厚み方向の中心部に形成されている。このように構成すると、立体網状構造体1に表裏の差が生じないので、これを用いた寝具等の製品の製造や使用を便利にできる。なお、貫通孔2は必ずしも立体網状構造体1の厚み方向の中心部に形成する必要はなく、製造しようとする寝具等の仕様に合わせて適宜の位置に形成できる。
【0027】
また、
図1〜
図3の例においては、3個の貫通孔2がシート状に形成された立体網状構造体1に形成されているが、1枚の立体網状構造体1に形成される貫通孔2の数は3個に限定されるものではなく、1個以上の任意の数とすることができる。1枚の立体網状構造体1に複数の貫通孔2を形成すると、立体網状構造体1における温度調整範囲を広げることができるので、1枚の立体網状構造体1に貫通孔2を1つだけ形成する場合に比べて、より快適性に優れた温度調整機能付きの寝具等を製造できる。
【0028】
次に、本発明に係る立体網状構造体1の製造装置及び製造方法について説明する。なお、本発明の範囲は、以下に記載する実施形態に記載の範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨に反しない範囲で様々な設計変更を加えて実施されるものを含むことは勿論である。
【0029】
立体網状構造体1の製造装置100は、
図4及び
図5に示すように、原料樹脂が貯えられたホッパ101と、ホッパ101から供給される原料樹脂を可塑化して押し出す押出機102と、押出機102から供給される溶融樹脂を糸状に成形する成形金型103と、を備えている。
【0030】
成形金型103は、
図5に示すように、箱形に形成されており、その内部が樹脂溜め用の空間になっている。また、成形金型103の底面には、溶融樹脂を押し出して糸状に整形する多数のノズル孔103aが形成されている。なお、多数のノズル孔103aは、成形金型103の底面に均等に配列すれば足りるが、部位によってその配列に粗密を設けても良い。
【0031】
成形金型103の下面には、下方に至るほど断面積が大きくなる錐形の貫通孔形成体120が連結具121を介して吊り下げられている。成形金型103の下面に吊り下げられる貫通孔形成体120の数は、1枚の立体網状構造体1に形成しようとする貫通孔2の数と同数とする。また、成形金型103に対する貫通孔形成体120の取り付け位置は、立体網状構造体1に形成しようとする貫通孔2の位置に応じて調整される。
【0032】
貫通孔形成体120は、熱伝導率が高く、成形金型103から押し出される糸状樹脂を冷却しやすいことから金属製のものが好適に用いられるが、成形金型103から押し出される糸状樹脂に対して適度の冷却効果を発揮できる場合には、セラミック製のものや樹脂製のものを用いることもできる。また、貫通孔形成体120の内部は、重量を軽減するため、中空とすることもできる。また、貫通孔形成体120としては、立体網状構造体1に形成しようとする貫通孔2の形状に相当する底面形状を有するものが用いられる。即ち、円形の貫通孔2を形成するためには、円錐形の貫通孔形成体120が用いられ、四角形の貫通孔2を形成するためには、四角錐形の貫通孔形成体120が用いられる。
【0033】
なお、貫通孔形成体120を構成する錐体は、
図6(a)に示す完全な形状の錐体だけでなく、
図6(b)に示す切頭錐体、
図6(c)に示す側面が外向きに湾曲している錐体、又は
図6(d)に示すように側面が内向きに湾曲している錐体であっても良い。また、貫通孔形成体120は、成形金型103に固定されていても良いし、成形金型103に対して着脱可能に構成されていても良い。
【0034】
連結具121としては、金属製の棒状体、紐状体又は鎖状体が用いられる。
【0035】
成形金型103の下方の貫通孔形成体120を挟む位置には、製造しようとする立体網状構造体1の厚さ分の間隔を隔てて、2つの整形機104が対向に配置されている。整形機104は、上下に配置された2本の回転ローラ105、106と、これに巻き掛けられた成形シート107と、から構成されており、これら2つの整形機104の間に成形金型103から供給される糸状樹脂3を通して、所定の厚さを有する立体網状構造体1を製造する。
【0036】
また、成形金型103の下方には、冷却水Waを蓄えた水槽108が配置されている。整形機104を構成する下側の回転ローラ106は、冷却水Wa中に配置される。さらに、水槽108の出口側には、上下に配置された2本の引き出しローラ109、110が配置されている。
【0037】
なお、貫通孔形成体120の下端部は、水槽108内に蓄えられた冷却水Waの水面に接する位置又は冷却水Wa内に没する位置に配置される。このようにすることにより、貫通孔形成体120が適度に冷却され、貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度がその他の部分における糸状樹脂3の密度よりも高い立体網状構造体1を容易かつ確実に製造できる。その理由については、後に説明する。なお、貫通孔形成体120の温度を適度に保持できる場合には、必ずしも貫通孔形成体120の下端部を冷却水Waの水面に接したり水面下に没する必要はない。
【0038】
以下、実施形態に係る立体網状構造体1の製造方法について説明する。
【0039】
押出機102を駆動すると、ホッパ101に貯えられた原料樹脂が順次押出機102内に導入され、押出機102内に備えられたヒータによる加熱や、押出機102内に備えられたスクリュの回転に伴って発生する摩擦熱により可塑化される。可塑化された樹脂は、スクリュのねじ送り作用によって成形金型103に送り込まれ、成形金型103の底面に形成された多数のノズル孔103aから糸状に押し出されて、糸状樹脂3となる。
【0040】
成形金型103から押し出されたばかりの糸状樹脂3は、未だ溶融状態にある。また、成形金型103からの糸状樹脂3の押し出し速度よりも整形機104による糸状樹脂3群の送り速度を遅くすると、溶融状態にある糸状樹脂3はループ状又はカール状に変形して互いに絡み合い、絡み合わされた複数の糸状樹脂3がその接触部分4において部分的に接合され、接合されていない部分には空隙5が形成される。立体網状構造体1の弾力は、原料樹脂の種類、糸状樹脂3の太さ及び断面形状のほか、成形金型103からの糸状樹脂3の押し出し速度と整形機104による糸状樹脂3群の送り速度との速度差を調整することによっても調整できる。速度差によって複数の糸状樹脂3の絡み合い状態が変化するからである。
【0041】
図5に示すように、貫通孔形成体120の上方に開設されたノズル孔103aから押し出された糸状樹脂3は、貫通孔形成体120の傾斜面に接した後、傾斜面に沿って順次下方に移動し、次いで貫通孔形成体120の下端部から下方に移動して水槽108内に蓄えられた冷却水Waに達する。そして、貫通孔形成体120の傾斜面に沿って下方に移動する段階においては、当該傾斜面からの抵抗を受けて糸状樹脂3の落下速度が貫通孔形成体120に接しない糸状樹脂3よりも遅延し、そこで糸状樹脂3の絡み合いが強まって互いに積層され、貫通孔形成体120に接しない部分の糸状樹脂3よりも密度が高まる。また、貫通孔形成体120の傾斜面に接することによって糸状樹脂3がある程度冷却されるため、貫通孔形成体120によって密度が高められた部分の安定性が高められる。さらに、貫通孔形成体120によって密度が高められた部分は、貫通孔形成体120の下端部を滑り落ちる段階で所定の貫通孔2の形状に形作られる。
【0042】
これにより、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂3をもって全体形状が貫通孔2を有するシート状に形成され、貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度が、他の部分における糸状樹脂3の密度よりも高く形成されている立体網状構造体1が製造される。
【0043】
2つの整形機104の間に導入された糸状樹脂3群は、2つの整形機104の間を通過する過程で所定の厚さに整形された後、水槽108内に貯えられた冷却水Wa中に浸漬されて固化し、立体網状構造体1の原反シートとなる。糸状樹脂3群の厚さ寸法は、2つの整形機104の間を通過する過程で厚さ方向に縮小されるが、貫通孔2の形状に及ぼす影響は小さく、貫通孔形成体120の底面形状で形状及びサイズが規制される貫通孔2が原反シートの長さ方向に連続して形成される。
【0044】
立体網状構造体1の原反シートは、引き出しローラ109、110によって水槽108から引き出され、図示しない巻回ローラに巻回されて保存される。また、巻回ローラに巻回された立体網状構造体1の原反シートは、適宜図示しないカッタを用いて所定の長さにカットされる。このように、実施形態に係る製造装置及び製造方法によれば、所定形状の立体網状構造体1を自動的かつ連続的に製造でき、立体網状構造体1を安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…立体網状構造体、1a…低密度部、1b…高密度部、2…貫通孔、3…糸状樹脂、4…接触部分(接合部分)、5…空隙、10…管体、W…幅寸法、L…長さ寸法、T…厚さ寸法、100…立体網状構造体製造装置、101…ホッパ、102…押出機、103…成形金型、103a…ノズル孔、104…整形機、105、106…回転ローラ、107…成形シート、108…水槽、109、110…引き出しローラ、120…貫通孔形成体、121…連結具。
【要約】
【課題】貫通孔の周囲における糸状樹脂の密度が他の部分よりも高くなるように形成された立体網状構造体を容易かつ確実に製造可能な製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】成形金型103から複数の糸状樹脂3を押し出す工程、成形金型103から押し出された複数の糸状樹脂3を相互に絡み合わせる工程、相互に絡みあわされた複数の糸状樹脂の束を所定形状の立体網状構造体1に整形する工程、成形金型103から押し出された複数の糸状樹脂3の一部を成形金型103の下方に配置された錐形の貫通孔形成体120で受けながら斜め下方に案内し、貫通孔形成体120の底面の形状に相当する貫通孔2を立体網状構造体1の内部に形成すると共に貫通孔2の周囲における糸状樹脂3の密度を他の部分よりも高める工程、を有する構成とする。
【選択図】
図5