(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電波に関する情報は、前記通信部が受信した電波の強度、位相、及び単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数のいずれかを含む、請求項1に記載の位置検出システム。
前記移動部は、前記検出部が検出した前記記憶媒体の位置情報が複数である場合に、検出された複数の前記位置情報により示される複数の方向の間の方向に、前記アンテナの位置を移動させる、請求項3に記載の位置検出システム。
前記検出部が検出した前記記憶媒体の位置情報が複数である場合に、前記通信部が受信した電波の強度、又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数に基づいて、複数の前記位置情報のそれぞれに対応する方向に前記記憶媒体が存在する事前尤度を算出する事前尤度算出部を更に備え、
前記移動部は、前記事前尤度の上位2点の位置と前記アンテナの位置とを結ぶ2つの線分が成す角の間の方向に、前記アンテナの位置を移動させる、請求項4に記載の位置検出システム。
前記出力部は、前記アンテナの位置を複数の前記位置情報のそれぞれに対応する方向へ移動させた時に、受信した電波の位相の変化量が前記アンテナの移動距離の、前記電波の波長に対する割合に整合するか否かの判定結果に基づいて前記最有力候補を出力する、請求項7に記載の位置検出システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態における位置検出システム1は、記憶媒体の一例であるRFIDタグの位置を検出する。
RFIDタグは、外部から、通常はタグリーダから電波を受信することでエネルギーを得て起動した後、受信した電波を自身が記憶している情報に基づいて変調して発信するパッシブ型が、典型的に用いられる。また、RFIDタグには、パッシブ型の他に、電池等の電源を内蔵し、記憶している情報に応じた電波を自発的に発信するアクティブ型も存在するが、本実施形態では、パッシブ型を例示して説明する。
なお、RFIDタグは、パッシブ型かアクティブ型かによらず、通常、ユーザによる情報の読み書きが可能なユーザ領域を有し、記憶している情報の追加、変更、削除といった編集が可能である。
【0022】
図1は、本実施形態における位置検出システム1の機能構成を示すブロック図である。
位置検出システム1は、タグリーダ10と、位置特定装置20とを備える。
【0023】
タグリーダ10は、RFIDタグ30との間で電波による無線通信を行う。無線通信に用いる電波の周波数帯は、例えばUHF(Ultra High Frequency)帯であってよいが、これには限られない。UHF帯の波長は、30cm程度であるため、後述するアンテナ11の移動距離(例えば、5cm〜15cm程度)と近いため好適である。このように、波長がアンテナ11の移動距離と同等又は数倍程度となる周波数帯が選択されることが好ましい。
タグリーダ10は、アンテナ11と、第1通信部12と、電波情報検出部13と、第2通信部14と、移動部15とを備える。
【0024】
アンテナ11は、RFIDタグ30との間で電波の送受信を行う。なお、アンテナ11は、指向性を持ち、その向きに応じた経路の電波を強く受信する。
【0025】
第1通信部12は、所定の周波数による電波を用いた無線による通信を、アンテナ11を介してRFIDタグ30との間で行う。すなわち、第1通信部12は、送信信号を所定の周波数の搬送波に乗せて、アンテナ11によりRFIDタグ30へ送信し、RFIDタグ30に記憶されている情報の信号を乗せて返送された電波を、アンテナ11を介して受信する。
【0026】
電波情報検出部13は、受信された電波に関する情報を検出する。この電波に関する情報は、受信した電波の強度(例えば、Received Signal Strength Indicator、以下RSSI)、位相、及び単位時間(例えば、1秒、0.1秒等)当たりに信号の読み取りに成功した回数の少なくともいずれかを含む。
ここで、電波情報検出部13は、RFIDタグ30から受信した電波を、タグリーダ10の持つ基準波と比較することで位相を算出する。すると、位相は、タグリーダ10とRFIDタグ30との間の距離に応じて決定されるため、電波情報検出部13は、アンテナ11の位置に固有の位相を検出できる。したがって、例えばアンテナ11の移動に伴って、移動の前と後とでそれぞれ検出される位相は、検出のタイミングによらず差が一定となる。
【0027】
第2通信部14は、RFIDタグ30の位置検出処理を担う位置特定装置20との間で通信を行う。通信方式は限定されず、有線又は無線の既存の方式が採用可能であるが、無線を採用する場合、RFIDタグ30との通信を妨げないように、UHF帯とは異なる周波数帯を用いる、例えばBluetooth(登録商標)等であることが好ましい。
【0028】
移動部15は、アンテナ11の向きを変更すると共に、RFIDタグ30に対するアンテナ11の位置を移動させる。移動部15は、アンテナ11のみを移動させてもよいし、タグリーダ10自体を移動させる機構を備えてもよい。
例えば、タグリーダ10は、自動搬送機、又はドローン等に配置されてもよい。
【0029】
また、移動部15は、エンコーダ、又は磁気センサ、加速度センサ、角加速度センサ等の各種センサにより、アンテナ11の位置及び向き(角度)を測定する手段を備え、測定結果を、電波に関する情報と同期させて位置特定装置20へ提供する。
【0030】
位置特定装置20は、タグリーダ10と通信可能な情報処理装置(コンピュータ)であり、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ又はタブレット端末等の汎用のデバイスであってもよいし、専用デバイスであってもよい。
【0031】
位置特定装置20は、タグリーダ10がRFIDタグ30から受信した電波に関する情報を利用して、RFIDタグ30の位置情報を検出する。位置情報は、アンテナ11からRFIDタグ30への方向と距離とを含む。
このとき、位置特定装置20は、直接波と反射波とを判別して、直接波である尤度の高い方向を特定することで、複数検出された位置情報の中から、RFIDタグ30の位置を特定する。
【0032】
位置特定装置20は、第3通信部21(電波情報取得部、移動情報取得部)と、制御部22と、記憶部23と、表示部24と、操作部25とを備える。
【0033】
第3通信部21は、タグリーダ10と所定の通信方式により通信を行う。具体的には、第3通信部21は、制御部22の制御に従って、移動部15に対する指令を送信すると共に、タグリーダ10が検出した電波に関する情報を受信して制御部22に提供する。
また、第3通信部21は、移動部15により測定されたRFIDタグ30に対するアンテナ11の位置の移動量を受信する。
【0034】
制御部22は、CPU等のプロセッサにより構成され、記憶部23に格納された位置特定プログラムを実行することで、位置検出部221(検出部)、尤度算出部222(算出部)、出力部223として機能する。
【0035】
位置検出部221は、タグリーダ10から受信した電波に関する情報に基づいて、RFIDタグ30のアンテナ11からの方向を含む位置情報を検出する。
ここで、位置情報の検出手法は限定されないが、例えば、位置検出部221は、タグリーダ10の向きを変化させたときに、電波の強度又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数が極大となる方向として検出できる。
さらに、位置検出部221は、アンテナ11の移動に伴う位相の変化量に基づいて、特許文献1の手法により、アンテナ11からRFIDタグ30への方向及び距離を検出できる。
【0036】
尤度算出部222は、位置検出部221が検出したRFIDタグ30の位置情報が複数である場合に、これら複数の位置情報のそれぞれに対応する位置にRFIDタグ30が実際に存在する尤度を算出する。このとき、尤度算出部222は、移動部15がアンテナ11の位置を移動させたときの、第1通信部12が受信した電波に関する情報の変化量に基づいて、後述の手法により尤度を算出する。
【0037】
出力部223は、位置検出部221により検出されたRFIDタグ30の位置情報の中から、尤度算出部222により算出された尤度に基づいて最有力候補を選別、又は順位付けして出力する。出力先は、表示部24であってよいが、出力部223は、所定のインタフェースを介して、位置情報を利用する外部装置へデータ送信してもよい。
【0038】
出力部223は、位置情報を表示部24へ出力する場合、例えば、閾値を超える尤度の位置情報を、順位付けの情報と共に、方向及び距離を示す画像により画面表示させる。なお、画像は、静止画には限られず、動画であってもよいし、さらに、音声と組み合わせて提示されてもよい。
【0039】
記憶部23は、位置特定プログラムの他、制御部22が利用する各種の情報を記憶する。
表示部24は、制御部22の制御に応じて、位置検出結果等の情報を画面表示する。
操作部25は、ユーザの操作を受け付けるキー、ボタン、タッチパネル等のデバイスであり、受け付けた操作の情報が制御部22に提供される。
【0040】
次に、検出された複数の位置情報それぞれに対する尤度の算出方法を例示する。これらの算出方法は、組み合わせて利用可能であり、複数の方法が順に実行される度に、ベイズ更新等、所定のルールに従って尤度が更新される。
【0041】
[地図情報の利用]
RFIDタグ30の位置情報が複数検出された場合、尤度算出部222は、まず、アンテナ11の移動を伴わない静的情報を用いて、各位置情報の尤度を算出できる。
【0042】
利用可能な静的情報としては、例えば、RFIDタグ30の位置を検出する空間である工場等の作業場の地図情報が挙げられる。
尤度算出部222は、検出された複数の位置情報のうち、地図情報に基づいて、物理的にRFIDタグ30が存在し得ない位置情報を除外(尤度を低く)し、他の位置情報の尤度を相対的に高く算出する。
【0043】
[指向性に基づく電波情報の利用]
アンテナ11は、その指向性により、特定の方向からの電波を最も強く受信する。したがって、アンテナ11を、複数の位置情報それぞれの方向に向けて電波の強度を検出することで、方向毎の電波の強度を相対的に知ることができる。
ここで、RFIDタグ30からの電波が壁等に反射して受信される反射波は、RFIDタグ30から直接受信される直接波に比べて経路が長いため減衰が大きい。また、壁等の材質によっても反射波が大きく減衰する場合もある。このため、反射波は、直接波に比べて強度が低下している。したがって、尤度算出部222は、検出された電波の強度に応じて、位置情報それぞれに対する尤度を算出する。具体的には、尤度算出部222は、電波の強度が大きい方向に対して尤度を相対的に高く算出してよい。
【0044】
また、電波の強度と同様に、単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数についても、直接波は、反射波よりも多くなる。したがって、尤度算出部222は、この回数が多い方向に対して、尤度を相対的に高く算出する。
【0045】
[移動量と位相の変化量との相関]
マルチパスの電波が検出される場合、互いに位相が異なる複数の電波が合成されることにより、反射のない場合と比べて位相が変動する。
【0046】
図2は、本実施形態におけるマルチパスの影響により位相が変動する様子を例示する図である。
この例は、直接波Ae^(jφ1)及び反射波Be^(jφ2)の2つの電波が合成される場合を示している。ここで、直接波及び反射波は、jを虚数単位として複素表現されている。
【0047】
アンテナ11が直接波の方向を向いており受信される直接波の強度が反射波に比べて強い(A>B)場合、合成波Ae^(jφ1)+Be^(jφ2)における位相の変動Δφは微小である。
一方、アンテナ11が反射波の方向を向いており受信される直接波及び反射波の強度が同等(A≒B)の場合、合成波における位相の変動Δφが大きくなる。
【0048】
図3は、本実施形態におけるアンテナ11の移動に伴う位相の変化を実測した結果を示すグラフである。
グラフの横軸は時間である。yawは、タグリーダ10の向きであり、水平面内の回転角を示しているが、回転軸から離れて配置されているアンテナ11は、その向きと共に位置も移動している。
【0049】
このとき、直接波又は反射波がほぼ単独で受信され、他の電波の影響が小さい場合、他の電波との合成による位相の変動が微小であることから、アンテナ11の位置の変化量(yaw)と位相の変化量(factor_slope)との相関が大きい。すなわち、yawの単調増加又は単調減少に合わせて、factor_slopeも単調増加又は単調減少している。
なお、グラフ中のfactorは、位相差を距離に換算した値であり、factor_slopeは、factorの傾き、すなわち変化率を示す。
例えば、直接波と示した矩形で囲った部分は、ほぼ直接波のみが受信されている向きである。この範囲において、yawの単調増加に伴い、破線で示したfactor_slopeも単調増加している。また、反射波と示した矩形で囲った部分は、ほぼ反射波のみが受信されている向きである。この範囲において、アンテナ11は、一定方向に回転するだけでなく逆回転もしており、yawは増減を繰り返しているが、これに伴って、factor_slopeも同じタイミングで増減していることが分かる。
【0050】
一方、直接波と示した矩形の領域と反射波と示した矩形の領域との間の領域は、マルチパスの影響を受けている領域である。この領域では、yawとfactor_slopeとの間に前述したような増減の相関は得られず、例えば、yawが単調増加している間、factor_slopeは、上昇及び下降を繰り返している。
このように、アンテナ11の位置の変化量と、受信した電波の位相の変化量との相関に基づいて、マルチパスの影響、すなわちノイズが大きい方向を判別できる。したがって、尤度算出部222は、このようなノイズの大きい方向で検出された位置情報の信頼度は低いと判断して尤度を相対的に低くし、相関の大きい方向で検出された位置情報に対する尤度を相対的に高く算出する。
【0051】
[移動量に対する位相変化の理論値との比較]
前述のように、直接波の方向にアンテナ11が向いている場合、反射波の影響は少なく、位相の変動は微小である。一方、反射波の方向にアンテナ11が向いている場合、直接波又は他の反射波が合成されて、反射波の位相は大きく変動する。
このため、マルチパスの影響が微小であれば、例えば電波の経路に沿った1波長分の移動に伴い、位相が2πラジアン(360度)変化するところ、マルチパスの影響が大きい場合、この理論値から乖離する。
【0052】
そこで、尤度算出部222は、アンテナ11の位置を移動させた時に、受信した電波の位相の変化量が理論値と整合するか否かを判定し、判定結果に基づいて尤度を算出する。
ここで、移動の方向は限定されず、アンテナ11の移動方向及び距離が特定される場合、位相の変化量の理論値が定まるため、尤度算出部222は、この理論値と実測値との乖離度合いに応じて、尤度を算出する。
【0053】
特に、検出された位置情報の方向に向けて前後にアンテナ11を移動させた場合マルチパスの影響が微小であれば、電波の位相の変化量がアンテナ11の移動距離の、電波の波長に対する割合に整合する。すなわち、理論的には、位相の変化量の2πラジアン(360度)に対する割合と、アンテナ11の移動距離の、電波の波長に対する割合とが等しくなる。
ところが、アンテナ11が反射波の方向に向いて、この方向の前後に移動している場合、マルチパスの影響により位相が変動し、アンテナ11の移動距離と位相の変化量とが整合しなくなる。
【0054】
そこで、尤度算出部222は、アンテナ11の位置を複数の位置情報のそれぞれに対応する方向へ移動させた時に、受信した電波の位相の変化量がアンテナの移動距離の、電波の波長に対する割合に整合するか否か判定し、この判定結果に基づいて尤度を算出する。
【0055】
[位置情報の間を移動した際の電波情報]
移動部15は、検出されたRFIDタグ30の位置情報が複数である場合に、検出された複数の位置情報により示される複数の方向の間の方向に、アンテナ11の位置を移動させる。
このとき、尤度算出部222は、電波に関する情報として、例えば、強度又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数を利用する。
【0056】
電波が壁又は天井等で反射してアンテナ11に到達する際、反射の箇所に応じて、反射波が強い位置と弱い位置とが混在する。このため、アンテナ11が移動しつつ電波を受信する場合、直接波に比べて反射波の読み取りが安定しない区間が生じる。
これにより、アンテナ11の移動軌跡を挟んだいずれの側から直接波を受信しているかを判別することが可能となる。したがって、尤度算出部222は、電波の強度が強い側、又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数の多い側で検出された位置情報に対して高い尤度を算出する。
【0057】
なお、アンテナ11の移動の方向は、検出された位置情報の数を、半分に分ける方向であってもよい。また、アンテナ11は、複数の位置情報からなる最大角の二等分線上を移動してもよい。
【0058】
さらに、アンテナ11は、事前に算出された尤度の上位2点の間を移動してもよい。
この場合、尤度算出部222は、検出された位置情報が複数である場合に、例えば、受信した電波の強度、又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数に基づいて、複数の位置情報のそれぞれに対応する位置にRFIDタグ30が存在する事前尤度を算出しておく。そして、移動部は、事前尤度の上位2点の位置とアンテナ11の位置とを結ぶ2つの線分が成す角の間の方向に、アンテナ11の位置を移動させる。
【0059】
図4は、本実施形態における尤度の算出方法を例示するフローチャートである。
この例では、RFIDタグ30に対して、事前に複数の位置情報が検出されている。複数の算出方法を組み合わせることで、尤度が更新される。
【0060】
ステップS1において、尤度算出部222は、作業場の地図情報と、検出された位置情報のそれぞれとを照合し、物理的にRFIDタグ30が存在し得ない箇所を除外する。例えば、倉庫内でRFIDタグ30を捜索する際に、壁の中又は屋外等の位置情報が検出されている場合、尤度算出部222は、この位置情報を強制的に尤度=0とする。
【0061】
ステップS2において、尤度算出部222は、各位置情報が示す方向へ向けたアンテナ11により受信した電波の強度(RSSI)に基づいて、位置情報それぞれに対して尤度を算出する。
【0062】
ステップS3において、制御部22は、算出された尤度が閾値を超えたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS10に移り、判定がNOの場合、処理はステップS4に移る。
【0063】
ステップS4において、制御部22は、タグリーダ10の移動部15を制御し、各位置情報が示す方向にアンテナ11を向け、前後のいずれかの方向に移動させる。
【0064】
ステップS5において、尤度算出部222は、アンテナ11の移動に伴って、検出された電波の位相の変化量を、移動距離に整合する変化量の理論値と比較し、乖離の度合いに応じて尤度を更新する。
【0065】
ステップS6において、制御部22は、更新された尤度が閾値を超えたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS10に移り、判定がNOの場合、処理はステップS7に移る。
【0066】
ステップS7において、制御部22は、タグリーダ10の移動部15を制御し、アンテナ11を、複数の位置情報が示す位置とアンテナ11の位置とが成す角の二等分線上を移動させる。
【0067】
ステップS8において、尤度算出部222は、各位置情報の方向に対して検出された電波の強度に基づいて、位置情報それぞれの尤度を更新する。
【0068】
ステップS9において、制御部22は、更新された尤度が閾値を超えたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS10に移り、判定がNOの場合、処理はステップS11に移る。
【0069】
ステップS10において、出力部223は、尤度が閾値を超えた位置情報を、RFIDタグ30が存在する可能性が高い場所として特定し、画面表示する。
【0070】
ステップS11において、出力部223は、更新された尤度に基づいて順位付けされた位置情報を画面表示する。
【0071】
このように、複数の方法で尤度が順に更新される場合、例えば、過去の実験又は実績に基づいて定義された条件付き確率に基づいて、次に例示するようにベイズ更新が利用可能である。
ここでは、簡単のため、2つの位置情報が検出されている場合に、電波の強度と、単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数とを順に用いて尤度を更新する場合を示す。
【0072】
(1) まず、ベイズ更新における事前確率は、理由不十分の原則により、P(直接波)=P(反射波)=0.5とする。
ここで、一方の位置から、他方よりも3dB高い電波の強度が検出されたとする。
【0073】
(2) 過去のデータから、
P(強度が他の位置より3dB高い|直接波)=0.8
P(強度が他の位置より3dB高い|反射波)=0.1
という条件付き確率が得られているとすると、ベイズの展開公式により、事後確率(尤度)が、
P(直接波|強度が他の位置より3dB高い)
=0.8×0.5/(0.8×0.5+0.1×0.5)=0.89
と求められる。
ここで、閾値が0.95とすると、算出された尤度=0.89が閾値を超えていないため、直接波の判定は保留され、次の方法に移る。
【0074】
(3) 事前確率は、P(直接波)=0.89、P(反射波)=0.11に更新される。ここで、2倍の読み取り成功回数が得られたとする。
【0075】
(4) 過去のデータから、
P(読み取り成功回数が2倍|直接波)=0.7
P(読み取り成功回数が2倍|反射波)=0.2
という条件付き確率が得られているとすると、事後確率(尤度)が、
P(直接波|読み取り成功回数が2倍)
=0.7×0.89/(0.7×0.89+0.2×0.11)=0.96
と求められる。
算出された尤度=0.96が閾値=0.95を超えたため、該当の位置から直接波を受信していると判定できる。
【0076】
本実施形態によれば、位置検出システム1は、アンテナ11の位置の移動に応じた電波の情報の変化量に基づいて、複数検出された位置情報の中から、RFIDタグ30が存在する位置の最有力候補を出力する。
これにより、位置検出システム1は、アンテナ11を移動させることにより、直接波を受信した場合と反射波を受信した場合とで電波の情報の違いが顕著になることを利用し、位置情報が複数検出された場合にも、直接波の方向を精度良く特定できる。
【0077】
位置検出システム1は、電波に関する情報として、強度、位相、及び単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数のいずれかを用いる。
これにより、位置検出システム1は、容易に取得可能な指標の変化量に基づいて、複数の位置情報の中から効率的に直接波を特定できる。
【0078】
位置検出システム1は、アンテナ11の位置を移動させる移動部を備えることにより、検出された複数の位置情報の中から直接波を特定するために、アンテナ11を効率良く、自動的に移動させることができる。
【0079】
位置検出システム1は、検出された複数の位置情報を分割する方向にアンテナ11を移動させることにより、移動経路の両側からの電波に関する情報を比較する。
これにより、位置検出システム1は、複数の位置情報から効率的に直接波を受信している方向を選別できる。
【0080】
位置検出システム1は、RFIDタグ30が存在する尤度が高い上位2点が選別された場合に、さらに、これら2点の間の方向へアンテナ11を移動させることにより、2点のいずれの方向から直接波を受信しているかを効率的に特定できる。
【0081】
位置検出システム1は、アンテナ11の位置の変化量と、受信した電波の位相の変化量との相関を判定することにより、アンテナ11が向いている方向以外からのマルチパスの影響度合いを判定できる。
これにより、位置検出システム1は、ノイズが少ない信頼性の高い受信電波を選別し、精度良く直接波の方向を特定できる。
【0082】
位置検出システム1は、アンテナ11を移動させた際に、受信した電波の位相の変化量が理論値と整合するか否かを判定し、この判定結果に基づいてRFIDタグ30が存在する位置の最有力候補を出力する。
これにより、位置検出システム1は、反射波の影響が相対的に少ない直接波の方向を特定でき、精度良くRFIDタグ30の位置を特定できる。
【0083】
特に、位置検出システム1は、検出された複数の位置情報のそれぞれに対応する向きで前後にアンテナ11を移動させることにより、位相の変化量が移動距離と整合するか否か、すなわち位相の変化量の2πラジアンに対する割合がアンテナ11の移動距離の波長に対する割合と等しいか否かを容易に判定できる。
これにより、位置検出システム1は、効率的に精度良くRFIDタグ30の位置を特定できる。
【0084】
位置検出システム1は、複数の位置情報それぞれに対応する位置にRFIDタグ30が存在する尤度を算出することにより、複数の位置情報を順位付けして、容易にRFIDタグの位置を特定できる。
【0085】
また、位置検出システム1は、アンテナ11の移動を伴わない場合にも、電波に関する情報を比較することで、複数の位置情報の中から直接波の方向を特定できる。具体的には、電波の強度又は単位時間当たりに信号の読み取りに成功した回数を比較することで、容易にRFIDタグ30の位置を特定できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0087】
前述の実施形態では、タグリーダ10がアンテナ11を移動させる手段(移動部15)を有している構成を説明したが、これには限られない。アンテナ11を備えたタグリーダ10をユーザが手動で(例えば、手持ちで)移動させてもよい。この場合、例えば、前述のフローチャート(
図4)のステップS4及びS7で「移動させる」と説明した手順は、「ユーザの移動を促す表示を行う」と読み替えて理解することができる。
【0088】
また、タグリーダ10と位置特定装置20とは、通信可能な別デバイスとして説明したが、これには限られない。位置特定装置20は、タグリーダ10と一体、又は組み合わされた構成であってもよい。この場合、アンテナ11の位置は、位置特定装置20の側に配置された各種のセンサ等により検出されてもよい。
【0089】
位置特定装置20による位置特定方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【解決手段】位置検出システム1は、RFIDタグ30との間で、アンテナ11を介して電波により無線通信を行う第1通信部12と、受信した電波に基づいて、RFIDタグ30のアンテナ11からの方向を含む位置情報を検出する位置検出部221と、検出した位置情報が複数である場合に、アンテナ11の位置の移動に応じた、第1通信部12が受信した電波に関する情報の変化量に基づいて、複数の位置情報の中からRFIDタグ30が存在する位置の最有力候補を出力する出力部223と、を備える。