(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の関節をそれぞれ屈曲及び伸展させる指体と、前記関節毎に設けられたモータと、該モータ毎に設けられモータ側から入力部に加わる動力を出力部に伝達可能で且つ出力側から前記出力部に力が加わった際には前記出力部をロックする一方向動力伝達機構と、前記出力部の動力によって対応する前記関節を屈曲及び伸展させる屈伸機構と、前記指体が把持対象物を把持した際に把持力が作用する部分に設けられた弾性部と、前記関節毎に設けられて該関節が屈曲した際の反力を受けるのを感知する触覚センサ手段とが具備されたハンドロボットの制御方法であって、
前記指体の複数のモータを所定の順番で通電することにより、各モータに対応する前記関節を屈曲させる第1ステップと、
前記触覚センサ手段による感知がある毎に、その感知のあった触覚センサ手段に対応する関節のモータを非通電にして該関節を前記一方向動力伝達機構によりロック状態にする第2ステップと、
全てのモータが非通電になったことを条件に、所定のモータを通電して該モータに対応する関節を屈曲させる第3ステップと、
前記触覚センサ手段の検出値に基づく把持力が目標把持力になったことを条件に、前記所定のモータを含む全てのモータを非通電にして、全ての関節をロック状態にする第4ステップとを含むことを特徴とするハンドロボットの制御方法。
前記第1ステップでは、前記指体における複数のモータを指根本側から順番に通電することにより、前記指体の関節を指根本側から順番に屈曲させてゆくことを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載のハンドロボットの制御方法。
前記第1ステップでは、前記指体における複数のモータを指先側から順番に通電することにより、前記指体の関節を指先側から順番に屈曲させてゆくことを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載のハンドロボットの制御方法。
前記指体に対する把持対象物の相対的な移動を検出する移動検出手段を備え、前記第4ステップの後、前記移動検出手段により把持対象物の移動があるか否かを判断し、移動がある場合にはその移動に応じて前記目標把持力を大きくなるように補正し、前記第3ステップに処理を戻すことを特徴とする請求項1〜5何れか1項記載のハンドロボットの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態の第1の特徴は、複数の関節をそれぞれ屈曲及び伸展させる指体と、前記関節毎に設けられたモータと、該モータ毎に設けられモータ側から入力部に加わる動力を出力部に伝達可能で且つ出力側から前記出力部に力が加わった際には前記出力部をロックする一方向動力伝達機構と、前記出力部の動力によって対応する前記関節を屈曲及び伸展させる屈伸機構と、前記指体が把持対象物を把持した際に把持力が作用する部分に設けられた弾性部と、前記関節毎に設けられて該関節が屈曲した際の反力を受けるのを感知する触覚センサ手段とが具備されたハンドロボットの制御方法であって、前記指体の複数のモータを所定の順番で通電することにより、各モータに対応する前記関節を屈曲させる第1ステップと、前記触覚センサ手段による感知がある毎に、その感知のあった触覚センサ手段に対応する関節のモータを非通電にして該関節を前記一方向動力伝達機構によりロック状態にする第2ステップと、全てのモータが非通電になったことを条件に、所定のモータを通電して該モータに対応する関節を屈曲させる第3ステップと、前記触覚センサ手段の検出値に基づく把持力が目標把持力になったことを条件に、前記所定のモータを含む全てのモータを非通電にして、全ての関節をロック状態にする第4ステップとを含む(
図4のステップ3〜9参照)。
ここで、前記「一方向動力伝達機構」における一方向とは、前記入力部から前記出力部へ向かう動力伝達の方向を意味する。
また、前記「該関節が屈曲した際の反力」には、前記関節の屈曲により前記指体が把持対象物に押圧させた際の反力や、前記関節が可動限界まで屈曲した際の反力などを含む。
また、前記「所定のモータ」は、その数は限定されず、必要な把持力や把持対象物の形状等に応じて、単数又は複数とすることができる。
【0009】
第2の特徴として、前記指体は、前記各関節を屈曲させた際の可動限界を有し、前記第2ステップでは、前記触覚センサ手段が、前記可動限界による反力、又は前記指体が把持対象物に押圧させた際の反力を受けるのを感知する毎に、その感知のあった触覚センサ手段に対応する関節のモータを非通電にして該関節を前記一方向動力伝達機構によりロック状態にする。
【0010】
第3の特徴としては、把持対象物の初期位置を検出する初期位置検出手段と、複数の前記指体が具備されたハンド部を移動するハンド移動機構とを備え、前記第1ステップよりも前に、前記初期位置検出手段により把持対象物の初期位置を認識し、該初期位置に応じて前記ハンド移動機構を動作させて、前記ハンド部を、前記把持対象物を把持可能な位置に移動する(
図1及び
図4のステップ1〜2参照)。
【0011】
第4の特徴は、特にハンド部に比較して大きめの把持対象物を把持するのに好ましい態様として、前記第1ステップでは、前記指体における複数のモータを指根本側から順番に通電することにより、前記指体の関節を指根本側から順番に屈曲させてゆく(
図5参照)。
【0012】
第5の特徴としては、特にハンド部に比較して小さめの把持対象物を把持するのに好ましい態様として、前記指体における複数のモータを指先側から順番に通電することにより、前記指体の関節を指先側から順番に屈曲させてゆく。
【0013】
第6の特徴としては、前記指体に対する把持対象物の相対的な移動を検出する移動検出手段を備え、前記第4ステップの後、前記移動検出手段により把持対象物の移動があるか否かを判断し、移動がある場合にはその移動に応じて前記目標把持力を大きくなるように補正し、前記第3ステップに処理を戻す(
図4のステップ11以降参照)。
【0014】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るハンドロボットAの一例を模式的に示している。
このハンドロボットAは、基台11上に固定された支持杆12に、関節部13を介して複数のアーム14を屈曲伸展可能に接続してなるハンド移動機構10と、このハンド移動機構10の最先端側のアーム14に接続されたハンド部20と、これらハンド移動機構10及びハンド部20を制御する制御部30と、把持対象物Xの初期位置や移動等を検出する把持対象物検出手段40とを備える。
【0015】
複数のアーム14は、図示しないモータ及びギヤ機構等により隣接するアーム間や、アーム14と支持杆12との間を屈曲・伸展させるように構成される。
これらのアーム14のうち、その一部又は全部は、屈曲伸展運動の他、必要に応じて、長手方向を軸とした回転運動をするようにしてもよい。同様に、支持杆12も、必要に応じて、長手方向を軸とした回転運動をするようにしてもよい。
【0016】
なお、ハンド移動機構10は、ハンド部20を目標とする位置まで移動する機構であれば図示例に限定されず、他例としては、関節部13及びアーム14の数が図示のものと異なる態様や、人腕型に構成された態様、図示しない周知のXYテーブルやリンク機構等を組み合わせた態様等とすることが可能である。
【0017】
上記ハンド移動機構10における複数のアーム14の最先端部には、ハンド部20が接続される。このハンド部20は、必要に応じて、アーム14に対し屈曲伸展あるいは回転駆動するように設けられる。
【0018】
ハンド部20は、複数の関節を屈曲及び伸展させる複数の指体21と、これら指体21を支持する掌部22とから構成される。
ここで、関節とは、指体21の根本と掌部22が連結された部分、各指体21において隣接する節部1,2同士が連結された部分を意味するものとする。
【0019】
指体21は、物体の把持のために最低3本必要であり、本実施の形態の好まし態様では、把持操作性を向上するために4本設けている。
これら指体21は、それぞれ、屈曲方向を掌部22中央側へ向けるようにして掌部22に連結されている。
【0020】
これら指体21により3次元の任意の力を発生するには、
図2に示すように、1指について、少なくとも能動な3つの回転軸a,b,cを設けることが好ましい。
回転軸aは、指体21の最も根本側の関節に設けられ、隣接する指体21を互いに近づける方向へ内転したり、その逆方向へ外転したりする。
回転軸bは、指体21の最も根本側の関節に設けられ、指体21を掌部22中心側へ屈曲させたり、その逆方向へ伸展させたりする。
回転軸cは、指体21の隣接する節部1,2間の関節に設けられ、節部1に相対し節部2を掌部22中心側へ屈曲させたり、その逆方向へ伸展させたりする。
【0021】
各指体21は、
図2及び
図3に例示するように、節部1,2内において、関節毎に、駆動源となるモータ21aと、モータ21aの回転力を調整して伝達する調速機構21bと、一方向のみに動力を伝達する一方向動力伝達機構21cと、一方向動力伝達機構21cの動力によって対応する関節を屈曲及び伸展させる屈伸機構21dと、当該指体21が把持対象物Xを把持した際に把持力が作用する部分(図示例によれば指先側)に設けられた弾性部21eとを具備している。
【0022】
隣接する節部1,2は、内部が中空の略筒状の部材であればよく、その一方に対し他方が回動するように接続されている。
これら節部1,2は、剛性材料から形成してもよいが、把持対象物Xを把持した際の密着性を向上する観点からは弾性材料(例えば、ゴムやエラストマー樹脂、その他の弾性樹脂材料等)から形成するのが好ましい。
【0023】
モータ21aは、出力軸を突出させた電動の回転式モータである。このモータ21aの具体例としては、回転角を制御するようにしたステッピングモータや、DCブラシレスモータ等が挙げられる。
【0024】
調速機構21bは、モータ21aの出力軸の回転を、予め設定された適宜な比率で減速し、一方向動力伝達機構21cの入力部に伝達する機構であり、例えば、遊星歯車機構により構成される。
この調速機構21bの他例としては、複数の歯車を適宜に組み合わせた機構や、直動ねじ機構、ハーモニックドライブ(登録商標)を用いた機構、これらの機構を適宜に組み合わせた機構等とすることも可能である。
【0025】
一方向動力伝達機構21cは、モータ21aの出力軸から入力部に加わる双方向の回転力を出力部に伝達可能で且つ出力側から前記出力部に回転力が加わった際には前記出力部をロックする機構であり、前記出力部の回転力により、対応する関節(
図3によれば節部1,2間)を屈曲させる。
この一方向動力伝達機構21cには、例えば、再公表特許WO2013/133162号公報に開示される発明を用いることが可能である。
なお、一方向動力伝達機構21cの他例としては、ウォームギア機構や、すべりねじ機構、あるいは、これらの機構を適宜に組み合わせた態様等とすることも可能である。
【0026】
屈伸機構21dは、一方向動力伝達機構21cの出力部の回転力により各関節を屈曲させる機構であり、
図3に示す一例によれば、一方向動力伝達機構21cの回転力により回転するギヤ21d1及び雄ネジ状部材21d2、雄ネジ状部材21d2に螺合されたナット状部材21d3、ナット状部材21d3に枢支されたリンク部材21d4、リンク部材21d4の進退により回動するパラレルリンク機構21d5等から構成される。
この屈伸機構21dは、各関節を屈曲伸展させる機構であれば、図示例以外の周知の機構とすることが可能である。
【0027】
弾性部21eは、指体21の最先端側における指腹部寄りに配置され、屈伸機構21dの先端側に枢支された受け部材21fに固定されている。
この弾性体21eは、例えば、ニトリルゴムや、シリコン樹脂、ウレタン樹脂等、適宜な弾性を有し、且つ把持対象物Xを滑らせないように適宜な摩擦係数の材料が選定される。
この弾性体21eは、指体21全体のバックラッシュによる変位量と、指体21全体において弾性体21eよりも駆動源側の弾性変形の量とを加えた変化量よりも大きい必要最小限の弾性変形をするように、その弾性率が適宜に設定されている。
【0028】
なお、図示を省略するが、指体21の最根本側と掌部22の間には、上述したのと同様の機構により指体21を回転軸a周りで屈曲及び伸展させる駆動機構や、指体21を回転軸b周りで内転及び外転させる周知の駆動機構が設けられ、これら各機構の駆動源であるモーターが制御部30によって制御されている。
【0029】
制御部30は、例えば、電源、モータドライバ等を含む制御回路、及びコンピュータ等によって構成され、記憶装置に記憶したプログラムに基づき、ハンド移動機構10及びハンド部20等の動作を制御する。
【0030】
この制御部30は、モータ21a毎に負荷電流に応じた信号を出力する電流センサ(図示せず)と協働することで、各指体21の各関節が屈曲した際の反力を受けるのを感知する触覚センサ手段として機能する。
また、この制御部30は、把持対象物検出手段40から転送されるデータに基づき、把持対象物Xの初期位置を検出する初期位置検出手段として機能し、さらに、指体21に対する把持対象物Xの相対的な移動を検出する移動検出手段としても機能する。
【0031】
把持対象物検出手段40は、単数又は複数の撮像素子(例えば、CCDやCMOS等)であり、把持対象物X及びハンド部20等を撮像し、その位置座標や姿勢(角度)等のデータを制御部30へ転送する。
【0032】
なお、この把持対象物検出手段40の他例としては、赤外線センサや超音波センサ等の非接触センサを用いた態様や、ハンド部20の掌部22や、その他の部分に配置された態様とすることも可能である。
【0033】
次に、上記構成のハンドロボットAの制御方法について、
図4に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
先ず、制御部30は、把持対象物検出手段40によって把持対象物Xの初期位置と、ハンド部20の初期位置とを検出する(ステップ1)。そして、その検出値に応じてハンド移動機構10を動作させて、ハンド部20によって把持対象物Xを把持可能な相対的位置関係になるまで、ハンド部20を移動する(ステップ2)。
なお、前記相対的位置関係は、予め計算又は実験等により求められ、制御部30の記憶装置に記憶してある。
【0034】
次のステップ3では、各指体21の複数のモータ21aを所定の順番で通電することにより、各モータ21aに対応する関節を屈曲させる。
なお、指体21は、複数又は全部を動作させることが好ましいが、例えば、一本の指体21のみを動作させる態様とすることも可能であり、この場合、この一本指体21と、他の動作しない指体21との間に把持対象物Xを把持することになる。
【0035】
前記順番については、
図5(I)〜(III)に例示する態様によれば、各指体21における関節毎の複数のモータ21aを指根本側から順番に通電することにより、この指体21の関節を指根本側から順番に屈曲させてゆく。
【0036】
ステップ4では、同指体21におけるモータ21a毎に、触覚センサ手段による感知があるのを待ち、感知がある場合には次のステップ5へ処理を進める。
詳細に説明すれば、制御部30は、同指体21におけるモータ21a毎に、モータ21aの負荷電流を電流センサによって監視しており、該負荷電流に特定の変化がある場合(例えば負荷電流が所定の閾値を超えた場合等)に、前記触覚センサ手段による感知があったものとみなし、次のステップ5へ処理を進める。ここで、前記「負荷電流に特定の変化がある場合」の状態には、モータ21aに対応する関節の先側の節部2(又は1)が把持対象物Xの外表面に押圧された状態や、該関節が可動限界まで屈曲した状態等を含む。
【0037】
ステップ5では、ステップ4にて触覚センサ手段による感知がある毎に、その感知のあった触覚センサ手段に対応する関節のモータ21aを非通電にして、該関節を一方向動力伝達機構21cによりロック状態にする。
【0038】
ステップ3〜5について、図示例に基づいてより具体的に説明すれば、先ず、指体21の最も根本側のモータ21aを駆動させることで、節部1を屈曲方向へ回動させる。そして、節部1が把持対象物Xに当接して、節部1の根本側の関節に対応する触覚センサ手段による感知があった場合には、この感知に応じて、モータ21aを非通電にし、節部1の根本側の関節を、該関節に対応する一方向動力伝達機構21cによってロック状態にする(
図5(I)〜(II)参照)。
次に、指根本側から2番目のモータ21aを駆動させることで、節部2を屈曲方向へ回動する。そして、節部2が把持対象物Xに当接して、節部1,2間の関節に対応する触覚センサ手段による感知があった場合には、この感知に応じて、モータ21aを非通電にし、節部1,2間の関節を、該関節に対応する一方向動力伝達機構21cによってロック状態にする(
図5(II)〜(III)参照)。
【0039】
これらの動作の後、制御部30は、全てのモータ21aが非通電になったか否かを判断し(ステップ6)、全て非通電であれば次のステップ7へ処理を進め、そうでなければ、ステップ4へ処理を戻す。
なお、全てのモータ21aが非通電になることにより、全ての関節が同時にロック状態になる時間は、1秒未満の極短い時間とする。
【0040】
次に、ステップ7では、所定のモータ21aを通電して、該モータに対応する関節を屈曲させながら、処理を次のステップ8へ移行する。
ここで、前記所定のモータ21aは、把持対象物Xの形状や、弾性等に応じて予め決められた位置のモータとすればよい。
なお、前記所定のモータ21aは、複数のモータ21aのうちの一つに限定されるものでなく、複数のモータ21aのうちの一部や全部とすることが可能である。
【0041】
次に、制御部30は、前記所定のモータ21aに対応する前記触覚センサ手段の検出値に基づき、把持力を算出し、この把持力が目標把持力になるのを待つ(ステップ8)。
そして、制御部30は、前記把持力が目標把持力になったら、前記所定のモータ21aを含む全てのモータ21aを非通電にして、全ての関節をロックする(ステップ9)。
上記ステップにおいて、前記把持力が目標把持力になるまでの指体21の把持動作は、モータ21aをPID制御することにより、素早く且つ高精度に行われる。
【0042】
次のステップ10では、ハンドロボットAの動作を終了する終了指令があるか否かを判断し、終了指令がある場合には当該フローチャートの全ての処理を終了し、そうでなければ、ステップ11へ処理を進める。
【0043】
ここで、前記終了指令は、例えば、ハンドロボットAの外部から制御部30に入力される信号や、図示しない終了ボタンの操作に応じて制御部30に入力される信号等とすることができる。
また、前記終了指令の他例としては、前記ステップ9の後に経過時間が所定時間に達したことを条件に自動的に発せられた信号や、後述するステップ11以降の処理が所定回数行われたことを条件に自動的に発せられる信号などとすることも可能である。
【0044】
次のステップ11では、制御部30が、把持対象物検出手段40を用いて、ハンド部20に相対する把持対象物Xの移動(位置変化)を検出する。
ここで、前記「移動」は、具体的には、把持対象物Xの移動量(位置変化量)や移動速度等とすることが可能である。この「移動」は、ハンド部20が把持対象物Xを把持し前記ステップ9により全ての関節をロックした後に、把持対象物検出手段40によって検出される把持対象物Xの位置座標や姿勢(角度)の変化に基づき、制御部30によって算出される。
【0045】
次のステップ12では、前記移動があったか否かを判断し、前記移動があった場合にはステップ13へ処理を移行し、そうでなければ当該フローチャートによる処理を終了する。
【0046】
ステップ13では、前記移動に応じて、前記目標把持力(ステップ8参照)を大きくなるように補正し、処理をステップ6へ戻す。
この際の補正は、例えば、把持対象物Xの重力方向への移動が検出された場合に、その移動量又は移動速度に応じて前記目標保持力を大きくする。
また、例えば、把持対象物Xの姿勢変化(回転)が検出された場合に、その回転量又は角速度に応じて前記目標保持力を大きくする。
また、把持対象物Xの移動方向が、例えば、掌部22側へ向かう方向等、落下可能性の少ない特定方向である場合には、前記補正を行わないようにする。
【0047】
なお、フローチャートを省略するが、把持対象物検出手段40の検出値に基づく把持対象物Xの移動方向や移動角度等に応じて、指体21を回転軸aにて内転又は外転させ、その後に、前記ステップ6へ処理を戻し、ハンド部20による把持対象物Xの把持を再実行するようにしてもよい。
【0048】
よって、上記構成のハンドロボットAによれば、指体21を根本側の関節から順番に屈曲させて、把持対象物Xを包み込むように把持するため、把持動作によって把持対象物Xに局部的な強い刺激が加わるようなことを防ぐとともに、ソフトで確実な把持動作を期待することができる。
しかも、一旦把持された把持対象物Xが、自重や振動、他の物体との当接等により、最初の把持位置から移動した場合でも、その移動が継続することのないように、指体21を再動作させて、把持対象物Xをより強く把持することができる。
その上、ハンド部20により把持対象物Xを把持した後は、モータ21aを非通電にするため、消費電力を低減することができる。
【0049】
また、従来技術のように、指体の根本側に行くにしたがってモータトルクを大きくする必要がないので、各指体21及びハンド部20全体を小型化することができる。
例えば、
図6に例示する指体21’のように、一番指先側の関節に最もトルクが大きいモータM4を設け、他の関節には、略同等のトルクのモータM3.M2,M1を設け、これらモータにそれぞれ一方向動力伝達機構21cを具備した態様とすることも可能である。
この指体21’によれば、指根本側のモータM3.M2,M1を屈曲させた後、比較的制御領域の大きいモータM4を高精度に制御して動作させることができ、上記ステップ7以降の制御をきめ細かに行うことができる。
【0050】
<他の変形例>
なお、上記実施態様によれば、弾性部21eを指体21の最先端側に単数設けたが、この弾性部21eは、掌部22から指体21最先端部までの間で指体21が把持対象物Xを把持した際に把持力が作用する部分に設ければよく、他例としては、隣接する節部1,2間の関節に設けた態様、節部2と掌部22の間の関節に設けた態様、指体21の先端部以外の動力伝達経路中に設けた態様、複数箇所に弾性部21eを設けた態様等とすることが可能である。
さらに、他例としては、指体21の機構や節部1,2等の弾性のみを弾性部とし、弾性材料からなる弾性部21eを省いた態様とすることも可能である。
【0051】
また、上記実施態様によれば、特にハンド部20に比較して大きめの把持対象物Xを包み込むように把持するのに好ましい態様として、指体21における複数のモータ21aを指根本側から順番に通電するようにしたが、把持対象物Xの大きさや形状等に応じて前記順番を適宜に変更することが可能である。
例えば、特にハンド部20に比較して小さめの把持対象物Xを把持するのに好ましい態様としては、各指体21における複数のモータ21aを指先側から指根本側に順番に通電することにより、各指体21の関節を指先側から指根本側にかけて順番に屈曲させてゆく。
さらに他例としては、複数のモータ21aを、予め設定された前記以外の順番で通電するようにした態様等とすることも可能である。
【0052】
また、上記実施態様において、触覚センサ手段は、モータ21aの負荷電流から屈曲時の反力を感知する態様としたが、この触覚センサの他例としては、モータ21aの負荷電流を検知するものではなく、別体のトルクセンサによりモータ21aの負荷トルクを測定して屈曲時の反力を感知する態様とすることも可能である。
さらに、触覚センサ手段の他例としては、圧力センサ、ひずみゲージ、角度センサ、触覚センサ、又は力覚センサなどを用いた態様とすることも可能であり、例えば、各節部1(又は2)の指腹部側の表面に、把持対象物Xに対し押圧されたことを感知する周知の触覚センサを設けた態様等とすることが可能である。
【0053】
また、上記実施態様によれば、把持対象物検出手段40を用いてハンド部20に対する把持対象物Xの移動を検出する構成としたが、他例としては、ハンド部20における掌部22や指腹部の接触圧力を触覚センサにより検出し、その接触圧力分布に応じて、把持対象物Xの移動を認識する態様とすることも可能である。
さらに、他例としては、ハンド部20とアーム14の接続部分や指体21等の動力伝達経路中の力やモーメントを、トルクセンサや負荷電流値等から検出し、その検出値に基づき把持対象物Xの移動を認識する態様とすることも可能である。
【0054】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。