【実施例1】
【0022】
(本発明の成形装置の概略)
先ず、本発明のフローフォーミング成形装置10(以下、単に「成形装置」や「装置」とも呼ぶ。)は、
図1に示すように、被加工物(ワーク)としての円筒素材Wを上下方向(図示の上下方向)から保持する第1型1及び第2型2と、円錐状の外周部3a,4aを備えた第1・第2ローラー3,4とを備える。なお、円筒素材Wの軸方向(長手方向)のいずれかの一端(図示では、第1型1側の一端WE1)は、図示のように、第1・第2型1,2のいずれかの型(図示では、第1型1)によって当接(固定)されており、該一端WE1は軸方向に変位しないことが望ましい。
【0023】
(被加工物の形状および組成)
本発明の加工対象(被加工物)として、金属製の中空円筒素材Wの使用を前提とする。アルミニウムや炭素鋼など、従来のFF技術でも比較的加工が容易な材料を原料として使用しても良く、金属製であれば原料組成は限定されない。しかしながら、従来のFF技術では比較的加工が困難で、加工の際に余肉や欠肉等の不具合T1〜T4が顕著に起こりやすい高合金特殊鋼(例えば、SUS303、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS403、SUS440C、SUH660、SUH3)製の素材を被加工物として使用する場合に、本発明の長所及び作用効果をより一層享受するものと思われる。高合金特殊鋼は、例えば、鍛造(好適には、リングローリング鍛造)品を利用することが好ましい。
【0024】
(予備加熱)
また、本発明の成形装置10にて成形される直前に、高周波加熱装置等の予備加熱装置20(
図1を参照)の加熱部20aを用いて円筒素材Wを短時間で所望の温度(1000〜1200℃)に加熱しておくことも好ましい。これにより、加温状態で装置10内に投入された円筒素材W(例えば、上述の高合金特殊鋼)の変形抵抗が大幅に下がり、成形中の加工荷重を低減することができるようになる。
【0025】
(目標とする製品の加工形状)
上述の被加工物Wから、本発明の成形装置10を用いて成形される製品は、上下両側にフランジが周方向外側に張り出したフランジ付きの円筒部品Pである(例えば、
図2を参照)。それぞれのフランジは、
図2に示すように、その張出し長さやフランジ高さが異なるよう成形されてもよいし、フランジ間の胴部(薄肉部)の厚みが上下方向に一定のものに限らず、段差が付くようにしてもよい。
【0026】
(加工ローラーの形状および組成)
第1・第2ローラー3,4は、前述のとおり、円錐状の外周部3a,4aを備える。ここで、本発明における「円錐状」の形状には、
図1に示すように、通常の円錐の頂点を含む先端領域が除去され、第1・第2ローラー3,4の軸方向の断面形状が中心軸O1,O2を基点に対称な台形となるものを含んでもよい。また、円錐状の外周部3a,4aの傾斜角度θ1,θ2の勾配が、図示のように、外周部3a,4aの全長に亘って一定となる(直線状の傾斜面を有する)ものや前記勾配が全長に沿って変化する(例えば、曲線状の傾斜面を有する「お椀状」)ものを第1・第2ローラー3,4に採用しても良い。なお、図示の第1・第2ローラー3,4は、互いに対称な断面形状を成すが、この図示の例に限定されず、互いに異なる厚みや傾斜角度を有するものを採用しても良い。
【0027】
なお、第1・第2ローラー3,4は、被加工物Wの素材より機械的強度の高く、耐摩耗性及び耐蝕性に優れた金属素材(例えば、SKD61等の熱間工具鋼)から作られていることが望ましい。なお、本実施例では、説明の便宜のため、第1・第2ローラー3,4からなる2つの加工ローラーだけを使用しているが、3つ以上の加工ローラー(図示せず)を使用して円筒素材Wの外側に均等に離間するように配置してもよい。
【0028】
(加工ローラーの保持及びモーション制御を行うための手段)
成形装置10には、さらに、制御手段5と、ローラー保持・移動手段6(6a,6b)とが、設けられる。制御手段5は、第1・第2ローラー3,4の加工前後及び加工中のモーションを制御するための指示をローラー保持・移動手段6(6a,6b)に送る。なお、
図1では、制御手段5やローラー保持・移動手段6の具体的な構造を省略しているが、後述の目的や役割を果たすことが可能なあらゆる公知の手段を採用可能である。
【0029】
また、ローラー保持・移動手段6(6a,6b)は、第1・第2ローラー3,4を円筒素材Wの周方向外側に保持し、制御手段5の指示に応じて第1・第2ローラー3,4を移動可能である。より具体的には、ローラー保持・移動手段6(6a,6b)は、第1ローラー3の外径D1が下方向に減少しかつ第2ローラー4の外径D2が上方向に減少するように第1・第2ローラー3,4の外周部3a,4aを対向させた状態で(つまり、互いに逆さまの配置となるように)第1・第2ローラー3,4を保持する。
【0030】
制御手段5は、
図1等に示すように、第1ローラー3を比較的上方に移動して円筒素材Wにおける第1型1側に近い第1フランジ形成部位WF1と胴部形成部位WBとの境界位置(第1境界B1)に接触させるとともに、第2ローラー4を比較的下方に移動して第2型2側に近い第2フランジ形成部位WF2と胴部形成部位WBとの境界位置(第2境界B2)に接触させるようローラー保持・移動手段6(6a,6b)に指示する。
【0031】
次に、制御手段5は、
図4(b)及び5(b)に示すように、第1・第2ローラー3,4の外周部3a,4aにより円筒素材Wの投影断面において相補的に上下の傾斜面WS1,WS2が拘束された拘束加工領域WCを形成するために第1・第2ローラー3,4を円筒素材Wの中心軸Oに向けて移動して円筒素材Wを押圧するようローラー保持・移動手段6(6a,6b)に指示する。これにより、円筒素材Wにおける第1・第2フランジ形成部位WF1,WF2の間の胴部形成部位WBには、加工の際に、投影断面視において、上下方向のいずれの側面にも第1・第2ローラー3,4のいずれかの外周部3a,4aによって確実に接触(拘束)された拘束加工領域WCが形成され、このような拘束が不十分な場合に発生しがちな余肉や欠肉等の成形不良の発生が大幅に抑えられる。
【0032】
更に、制御手段5は、
図4(c)及び
図5(c)に示すように、第1・第2ローラー3,4を上下方向に接近させるようローラー保持・移動手段6(6a,6b)に指示する。これにより、2つの外周部3a,4aによって確実に拘束された拘束加工領域WCが徐々に減少し、除去されるとともに、円筒素材Wの軸方向の一端WE1が変位しないように拘束されているので、反対の他端WE2側に(図示では下方向に)、その減少・除去の体積分だけ胴部形成部WBが目標の肉厚のまま伸びる。
【実施例2】
【0033】
(本発明の成形方法)
次に、本発明を成形方法(製造方法)の観点から、詳述する。
図3は、本発明の成形方法の各工程を示したフローチャートである。
【0034】
(素材用意工程S1)
先ず、円筒素材Wを用意して、
図1に示すように、この円筒素材Wを第1型1と第2型2とにより上下方向に保持する(素材用意工程S1)。円筒素材Wは、事前に鍛造(特に、リングローリング鍛造)されていることが好ましい。
【0035】
(回転工程S2)
次に、図示しない回転手段(例えば、第2型2より下方に設置された図示しない回転モーター)により、第1型1と第2型2とこれらに一体的に保持された円筒素材Wを所定の回転速度で中心軸Oを基点として回転させる(回転工程S2)。円筒素材Wに比較的高い強度を有した素材を選択した場合には、回転速度を比較的小さい100〜200rpmに設定することが好ましい。一方、円筒素材Wに比較的低い強度を有した素材を選択した場合には、回転速度を比較的大きい200〜500rpmに設定することが好ましい。
【0036】
(配置工程S3)
外周部3a,4aを備えた円錐状の第1・第2ローラー3,4を用意し、
図1に示すように、第1ローラー3の外径D1が下方向に減少しかつ第2ローラー4の外径D2が上方向に減少するように外周部3a,4aを対向させつつ円筒素材Wの周方向外側に配置する(配置工程S3)。なお、この配置工程S3や後述の工程での第1・第2ローラー3,4の移動や保持には、前述した成形装置10の制御手段5やローラー保持・移動手段6を利用することにより、実行可能となる。
【0037】
(接触工程S4)
この後、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、第1ローラー3を比較的上方に移動して円筒素材Wにおける第1型1側に近い第1フランジ形成部位WF1と胴部形成部位WBとの境界位置(第1境界B1)に接触させるとともに、第2ローラー4を比較的下方に移動して第2型2側に近い第2フランジ形成部位WF2と胴部形成部位WBとの境界位置(第2境界B2)に接触させる(接触工程S4)。
【0038】
(押圧工程S5)
その後、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、第1・第2ローラー3,4を円筒素材Wの中心軸Oに向けて移動して円筒素材Wを押圧し、第1・第2ローラー3,4の外周部3a,4aにより円筒素材Wの投影断面において相補的に上下の傾斜面WS1,WS2が拘束された拘束加工領域WCを形成する(押圧工程S5)。つまり、円筒素材Wが中心軸Oを基点に一回転する間に、円筒素材Wの上側傾斜面WS1が第1ローラー3の外周部3aによって接触・押圧されるとともに、下側傾斜面WS2が第2ローラー4の外周部4aによって接触・押圧される。この上下からの拘束により、押圧による素材の自由な(成形不良等の原因となる望ましくない)塑性変形を抑制できる。
【0039】
(胴部作成工程S6)
次に、
図4(c)及び
図5(c)に示すように、拘束加工領域WCを減少(除去する)ように第1・第2ローラー3,4を上下方向に接近させる(胴部作成工程S6)。これにより、2つの外周部3a,4aによって確実に拘束された拘束加工領域WCが徐々に減少し、除去されるとともに、円筒素材Wの軸方向の一端WE1が変位しないように拘束されているので、反対の他端WE2側に(図示では下方向に)、その減少・除去の体積分だけ胴部形成部WBを目標の肉厚tのまま伸ばすことができる。なお、所望の肉厚tでもって精度良く胴部形成部WBを伸ばすためには、後述の予備計算工程S11を加工前に実行し、この予備計算工程S11で予め求められた加工パスでもって押圧工程S5及び胴部作成工程S6の第1・第2ローラー3,4を移動させることが好ましい。
【0040】
(仕上げ工程S7)
上述の工程S6によって胴部形成部WBが除去されて(塑性変形により移動し)、上下方向に目標のフランジが形成されるようになる。もし、胴部形成部WBの一部が削り残しのように残存している場合は、この残存部分に対して第1・第2ローラー3,4(又は、
図4(d)及び
図5(d)に示すような別の加工ローラー3N,4N)を再度押し当てるか、別途、図示しない切削又は研磨等の加工技術により仕上げを行うようにしてもよい(仕上げ工程S7)。
【0041】
次に、本発明の成形方法の好適な例について説明する。
【0042】
(温度モニタリング工程S10)
一例としては、成形装置10に熱画像計測装置30(
図1参照)を更に設けて、本発明の成形方法に、加工中の円筒素材W(特に、拘束加工領域WC)の温度を常時計測する工程(温度モニタリング工程S10)を加えることも好ましい。具体的には、加工(回転)中の円筒素材Wの外周面の計測温度が所定の温度範囲(例えば、1000〜1200℃)内であれば、加工及び温度計測を続行する一方、所定の温度範囲から逸脱した場合には、加工を停止する。この工程S10により、円筒素材Wの変形抵抗(成形装置10への負荷)の変化を常時モニタリングできるため、温度条件が適切に管理された状態で成形を実現できるだけでなく、加工による成形装置10の故障を未然に防止することができるようになる。
【0043】
(第1・第2ローラーのオーバーラップ)
配置工程S3において、互い違いに配置された第1・第2ローラー3,4が上下方向に部分的に重なる(
図5(a)に示すように、第1・第2ローラー3,4の投影断面がオーバーラップする)ように配置することが好ましい。これにより、その後の押圧工程S5で形成される拘束加工領域WCの上下の傾斜面全てを第1・第2ローラー3,4の外周部3a,4aによって完全に拘束することができる。加えて、胴部作成工程S6においては、第1・第2ローラー3・4が加工と拘束を同時かつ繰り返すため、加工中の拘束加工領域WCを集中的に加工発熱させることができるようになる。加工領域WCの昇温は、円筒素材Wの変形抵抗の減少、ひいては、加工荷重(成形装置10への負荷)の抑制に貢献する。
【0044】
(外周面の熱画像解析の検討)
ここで、
図6(a)〜(d)は、本発明の成形方法及び従来技術によって加工中の円筒素材Wの温度状態を示した画像である。より具体的には、
図6(a)及び(b)は、従来のFF技術を用いて成形を開始した時点と成形が進んだ時点で計測された円筒素材の外周面の温度画像である。これらの図より、円筒素材Wの外周面(加工ローラーによって接触される加工箇所を含めた外周面全て)の温度がドラスティックに下がってしまっていることが判る。一方、
図6(c)及び(d)は、本発明の成形装置10を用いて成形を開始した時点と成形が進んだ時点で計測された円筒素材Wの外周面の温度画像である。これらの図より、本発明の成形装置10では、第1・第2ローラー3,4によって完全に拘束された円筒素材W(特に、拘束加工領域WCの部分)が発熱(
図6(d)では白く発光)しており、第1・第2ローラー3,4によって接触・拘束された加工箇所付近の温度が、成形開始時よりも上昇していることが確認された。
【0045】
(予備計算工程S11)
また、本発明の成形方法は、以下の予備計算工程S11をさらに含むことが好ましい。具体的には、目標の胴部厚さtを予め決定し、該胴部厚さtから押圧工程S5において第1・第2ローラー3,4の進入により円筒素材Wの一部が除去される第1体積V1a,V1b(
図1参照)と、胴部作成工程S6において減少する拘束加工領域WCの第2体積V2(
図1参照)と、を求め、第1・第2体積V1a,V1b,V2の合計から円筒素材Wの上下方向の胴部伸びδを算出する(予備計算工程S11)。
【0046】
そして、素材用意工程S1では、目標の円筒部品Pの高さから、予備計算工程S11において算出された胴部伸びδを差し引いた高さを有した円筒素材Wを用意すればよい。これにより、計算上は材料ロスを全く生み出さないで、円筒素材Wからも目標のフランジ付円筒部品Pを成形できるようになり、製造のニアネットシェイプ化が実現する。
【0047】
(予備計算工程S11におけるローラーの加工パスの決定)
また、上述の予備計算工程S11では、第1・第2ローラー3,4の加工パスを以下のように予め決定しておくことが好ましい。
【0048】
図4(a)及び
図5(a)に示すように、接触工程S4では、第1・第2ローラー3,4を円筒素材Wに接触させる位置(第1・第2境界B1,B2)から円筒素材Wの中心軸Oに向けて互いに徐々に接近させるのであるが、その直後の押圧工程S5では、第1・第2ローラー3,4の外周部3a,4aが円筒素材Wに入り込んだ分だけ、拘束されていない第2フランジ形成部位WF2側へ円筒素材Wが徐々に伸びる。
【0049】
ところで、第1・第2ローラー3,4の当初(接触時)の高さ位置のままで互いに接近させていくと、これに従い徐々に増大するこの伸びδを有した伸長部分を第1・第2ローラー3,4で適切に拘束できず、当該伸長部分では所望の厚みで成形・管理できなくなる。言い換えれば、成形時の円筒素材Wにおいて随時除去(塑性変形)されるべき体積を除去予定体積(例えば、V1a,V1b)と呼び、かつ、押圧工程S5において当初の高さ位置のまま平行に第1・第2ローラー3,4が進入させてしまうと、拘束加工領域WCの体積V
WCが、成形前の胴部形成部WBの体積V
WBから除去予定体積の分だけ小さくなる。
【0050】
【数1】
【0051】
このため、本発明では、徐々に伸びていく伸長部分をも、所望の胴部厚みtに制限しながら第1・第2ローラー3,4によって完全に拘束されるように、円筒素材Wが伸びていく側(非拘束側、図示では第2フランジ形成部WF2側)に押し当てられる加工ローラー(図示では、第2ローラー4)の高さ位置を徐々に非拘束フランジ側WE2(図示では下方)へ移動させる(つまり、伸長部分の伸びδに追随させる)ことが好ましい。別言すれば、第2ローラー4については、第1ローラー3と同様に円筒素材Wの中心軸0へ向けて移動させるだけでなく、同時に、塑性変形により新たに生じた伸長部分に追随して該部分も拘束加工領域WCに取り込めるように下方向(伸び方向)に移動させる(
図5(b)の黒塗矢印を参照)。
【0052】
つまり、円筒素材Wの一部が常に塑性変形が行われる押圧工程S5において、拘束加工領域WCの体積V
WCが、成形前の胴部形成部WBの対応する体積V
WBと同一となるだけでなく、成形中(押圧工程S5)も拘束加工領域WCの体積V
WCが常に同一となり、かつ、該工程S5の各時点において常に所望の胴部厚みtが維持されるように、非拘束側WE2のローラー(図示の例では、第2ローラー4)を、押圧方向のみならず、高さ方向下側(非拘束フランジ側WE2に接近する方向)にも移動させることを特徴とした加工パスに設定する。
【0053】
なお、胴部形成工程S6では、
図4(c)及び
図5(c)に示すように、第1・第2ローラー3,4を互いに高さ方向(軸方向)に互いに接近させていくことで、拘束加工領域WCがさらに狭まるのであるが、この胴部形成工程S6では、第1・第2境界B1,B2間の両側に伸びる伸長部分の体積と拘束加工領域WCとの合計体積を、成形前の胴部形成部WBの対応する体積V
WBと同一にしつつ、所望の胴部厚みtを維持するように第1・第2ローラー3,4を移動させる(加工パスにする)ことが好ましい。
【0054】
以上のように、予備計算工程S11において、押圧工程S5と胴部形成工程S6とにおける第1・第2ローラー3,4の加工パスを決定し、各段階で決定された加工パスに従って第1・第2ローラー3,4を操作することが好ましい。
【0055】
(予備加熱工程S12)
また、素材用意工程S1の直前(円筒素材Wが第1・第2型1,2によって保持される直前)に、高周波加熱装置等の予備加熱装置20(
図1を参照)の加熱部20aを用いて円筒素材Wを短時間で所望の温度(1000〜1200℃)に加熱しておくことも好ましい(この工程S12を含んだ成形方法を「熱間FF成形」とも呼ぶ。)。これにより、加温状態で装置10内に投入された円筒素材W(例えば、上述の高合金特殊鋼)の変形抵抗が大幅に下がり、成形中の加工荷重を低減することができるようになる。
【0056】
以上、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明した。なお、
図9は、従来のFF技術と本発明との成形方法や作用効果等を比較したものである。従来技術では、対置させる加工ローラーは同一形状のものを使用し、基本的に上下方向に同じ位置(軸方向の同じ高さ位置)で接触させていたため、左右から円筒素材Wを潰すように同じ高さの領域を成形していた。このため、上述の成形不良が発生していた。また、従来技術では、加工の際のローラーを動作させる加工パスも操作者の勘と繰り返しの経験に基づいて決定されていた。
【0057】
これに対して、本発明の加工ローラー3,4では、上下の円錐の向きが逆さまの配置であれば、ローラー3,4での形状(傾斜角度や厚さ)は異なる組み合わせを採用することができる。また、本発明は、両側のフランジ部を最初に分離する形で成形し、その後、接触位置(高さ)が異なる第1・第2ローラー3,4でもって胴部形成部位WBを上下から拘束して該拘束加工領域WCの周方向外側への逃げ場を無くしながら(かつ、ワークWの伸び部分に追随・捕捉しながら)、該拘束加工領域WCを徐々に狭めていき、軸方向にフランジ部を拘束・固定していない型(図示の実施例では第2型2)側へ塑性変形させていく。これにより、従来技術で問題とされていた成形不良が全くと言ってよい程、無くなり、また、勘と経験で培われていた加工パスも、本発明の場合は、事前に予備計算により決定できてしまうのである。